PandoraPartyProject

シナリオ詳細

本当の幸運をあなたに

完了

参加者 : 10 人

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オープニング


 深緑、アルティオ=エルム。
 その集落の一つに今、魔種が滞在している。
 ハンネスという名の元幻想種は、狂気の影響によって魔種となってしまった元幻想種。
 彼はしばらく前、旅人の少女を連れて、その集落へとやってきた。
 人々は魔種の到来に怯えていたはずだったが、ハンネスは少女、エミーリエ・シュトラールの持つギフトの効果で、魔種となった自らの帰郷を喜ばしいものだと住民達へと認識させた。
 ハンネスは以降、大きな動きを見せてはいない。
 ただ、彼は時折、とある女性の家を頓に訪問していたようである。
「こんにちは、ハンネス」
 その女性、金髪碧眼の娘、ルシールは多少顔を引きつらせた笑みを浮かべる。
 喜ばしいはずなのに、何処か腑に落ちない。そんなもやもやした感情。
 そして、胸の内からこみ上げる怒りの感情。
 ルシールはハンネスから顔を背ける。
「……悪いけれど、気分が優れないの。また、後日でいいかしら?」
 部屋の奥へと移動するルシールの姿に、ハンネスはにやりと笑ってからその家を後にする。

 ハンネスはそのまま自宅へと戻り、地下にいるエミーリエの様子を見に向かう。
「ほら、食事だ」
 昼食を差し出すと、エミーリエはそっと手を伸ばして口にし始めた。
「…………」
 エミーリエはハンネスが上機嫌なのを気にかけつつ、食事をとる。
 別に食事に毒など盛られないことは、エミーリエにも自信がある。
 彼は自分の能力が目的であるからこそ、自分に害は絶対に及ぼさないとこれまでの生活で確信していたのだ。
 ハンネスは部屋の隅を見て、小さく笑って。
「もう少しだ。もう少しで、あの女も堕とすことができる……」
 そんなハンネスを哀れむように見つめながらも、エミーリエはしっかりと食事を口にする。
(お姉ちゃん……)
 腕につけたままのミサンガへと、エミーリエは視線を落とす。
 姉にもらったそれは、少しずつ切れかけていたのだった。


 幻想、ローレット。
 ついに、エミーリエの救出作戦の決行と知ったメンバー達が集まる。
「危険な作戦になると思います。ご覚悟はよろしいですか?」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は彼らを一通り見まわし、説明を始める。
 目標は2つ。魔種ハンネスの討伐。そして、旅人、エミーリエの救出。
 エミーリエは、ユーリエ・シュトラール(p3p001160)の実の妹だ。
 ユーリエもこの一連の事件で、妹がこの無辜なる混沌に飛ばされていたことを知ったようだ。
 そして、その妹、エミーリエの持つギフトも。
「魔種ハンネスがエミーリエさんを拘束している理由ですね」
 ギフト『不幸なる幸運』。
 本人の不幸な記憶を幸運だったと、都合よく書き換えてしまう能力。
 一見すれば、ポジティブでいい能力ではある。
 しかし、その実、相手に自分の都合よく物事を解釈させてしまう恐ろしい力。
 魔種はそんなエミーリエに目を付け、終焉の地へと攫った。
 彼女にギフトを使わせることで、同族に魔種であることが幸運だと認識させ、魔種としての力を高めさせていた。
 今回、こうして、幻想まで連れてこられていたのは、あくまでハンネスの独断らしい。
 それがザントマンにも漏れており、秘密として握られていて、前回の奴隷商人達へと幻想種を引き渡した1件に繋がっている。
「ただ、エミーリエさんはこう望んでいます」
 ――誰も争わなくなって笑顔が絶えない世界になれば、と。
 その為に、彼女は魔種すらも救うことができればと考えていた。
 だが、現実は……。
「改めて、お願いします。彼女を……エミーリエさんを救い出してください」
 詳細は資料に纏め、アクアベルは今回参加するメンバー達へと差し出す。
 過去2度、今作戦の為に下準備してきた依頼を無駄にしない為にも。
 そして、本当の意味で、ユーリエとエミーリエを再開させる為にも。
 改めて、アクアベルはイレギュラーズ達へと頭を下げ、今作戦の成功を願うのである。

GMコメント

イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
関係者依頼ですが、どなたでもご参加いただけます。
お待たせいたしました。
エミーリエさんの救出に力をお貸しくださいませ……!

●注意
 この依頼に参加する純種は『原罪の呼び声』の影響を受け、反転する危険性があります。

●状況
 とある幻想の集落に居座り、住人達を狂気に陥れようとしている魔種がいます。
 彼……魔種ハンネスは旅人の少女、エミーリエ・シュトラールさんを連れてきており、彼女のギフトによって何事もなく生活し、とりわけ自らを袖にした女性を魔種に堕とそうと躍起になっているようです。
 現状はまだ、住民達は無事のようですが、徐々に狂気に捕らわれる者が出始めており、油断ならない状況です。

 集落にローレットのメンバーが現れることで、ハンネスは自らの使役する影や鳥を嗾けてきます。
 自らは集落民よりもエミーリエさんを優先して確保に動き、彼女を奪われぬよう自宅へと移動しようします。

●敵
〇魔種……ハンネス
 見た目は幻想種、銀髪に肌が褐色の青年。
 鞭を所持。ビーストテイマーといった様相ですが、彼自身の能力は動物達とは比べ物になりません。

・サウザンドウイップ……(A)物至単・出血
・キャプチャードラッグ(A)物遠単・命中した相手を自身の手前に移動させます。
・マジックロープ……(A)神遠単・麻痺
・ロベリアの花……(A)神遠範・呪殺・毒・窒息
・狂気の伝達……(A)神中範・怒り
・憤怒の狂気……(P)怒り無効

○狂える猛禽×1体
 全長4m程、ハンネスが従える巨大な鳥。

・クチバシ……(A)物至単・出血
・フェザーレイン……(A)物遠列・乱れ
・飛び掛かり……(A)物中単・ブレイク
・羽ばたき……(A)神中扇・崩れ・飛
・飛行……(P)飛行可能

○影鮫×2
 全長、3m程
 普段はハンネスの影に潜む鮫。
 ここぞという場面で出現させるようです。

・突撃……(A)物中単・移・ブレイク
・尾ヒレ……(A)物近列・飛
・食らいつき……(A)物中貫・流血・HP吸収
・地中潜伏……(A)神中単・溜1(溜め時は攻撃不能)

○影狼×6体
 全長2m程。
 普段はハンネスの影に潜んでいる狼達。
 彼の意に従い、敵対する者達へと襲い掛かります。

・食らいつき……(A)物中単・HP吸収
・鋭い爪……(A)物近列・痺れ・出血
・影で覆う……(A)物中単・窒息・麻痺

●NPC
〇旅人……エミーリエ・シュトラール
 魔種が連れてきた少女。
 ユーリエ・シュトラール(p3p001160)さんの実の妹です。
 戦闘能力は皆無。体はさほど強くはないようです。
 ギフト『不幸なる幸運』を所有。本人の不幸な記憶を幸運だったと、都合よく書き換えてしまう能力です。
 集落の住民にギフトを使うことをハンネスに強要され、魔種に堕ちたハンネスが常駐している状況が幸運だと認識させてしまっています。
 彼女はハンネスの自宅地下に軟禁されています。

○ルシール
 この集落の住人。金髪碧眼、年頃の美女。
 ハンネスが執心している女性のようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 関連依頼は、拙作、「森の集落で始まる侵食」、「浸食される村に来訪する奴隷商人達」をご確認下さいませ。

それでは、よろしくお願いいたします。

  • 本当の幸運をあなたに完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2019年10月07日 22時35分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
傲慢なる黒
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
アト・サイン(p3p001394)
観光客
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
ダークネス クイーン(p3p002874)
悪の秘密結社『XXX』総統
ヴォルペ(p3p007135)
満月の緋狐

リプレイ


 深緑のとある集落。
 この地に現れた魔種の討伐の為、ローレットから10名ものイレギュラーズ達が派遣されてくる。
「ようやく、妹さんの救出らしいな……」
 全身鎧を纏う旅人の青年、『かくて我、此処に在り』マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は、軍馬のごとき巨躯を持つ狼を駆っての参加。
 マカライトは、雇い主である少女がこの日をどれだけ待ち望んでいたかを知っている。
「ようやく妹に会えるんだな、ユーリエ」
 半身を魔物と化した『会う為に、救う為に』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)も妹がいる為か、少女の心情を慮る。
「三度目の正直。今度こそエミ―リエを助け出そう!」
 先の天義の戦いの後、結婚した『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)は過去の関連依頼に全て参加し、成功に導いてきており、今作戦にも強い意気込みを示す。
「ユーリエにはこの世界で数えきれない程助けられてきた。今度は俺が力になる番だ!」
 そして、そのポテトの伴侶である銀髪の青年、『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)もこれまでの恩義を返そうと、ユーリエの妹の救出に注力を誓う。
「ここはお兄ちゃんとして、かっこつけねぇとなァ……!!」
 そんなリゲル、ポテト、そして、クロバと一緒の依頼とあり、『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は兄貴風を吹かす。
「いつ、俺が弟分になったんだ」
 そんなクロバのツッコミはさておき。
「ついに、ユーリちゃんの力になれる機会が巡って来た」
 今回、親友の助けになることができると、狼の獣種の少女『白い稲妻』シエラ・バレスティ(p3p000604)は魔種を止めると気合を入れていて。
「絶対、エミーリエちゃんを助けようね、ユーリちゃん!」
 そのユーリちゃんこと、『愛の吸血鬼』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)。
 木々の間を吹き抜ける風に茶色の長い髪を靡かせる彼女は普段、柔和な笑みを浮かべているのだが、今日だけはややその顔が強張っている。
 ――エミーリエと笑って帰る為に。
 あの集落に捕らわれている血を分けた大切な妹を取り返す為、ユーリエは決意を漲らせて。
「皆が力を貸してくれる。絶対に助け出すよ!」
 ――例え、この体が動かなくなったとしても、妹を救い出す。
 ユーリエの誓いに応えてか、彼女の手にする鎖が緑色に輝いていた。
「全力を以てハンネスを討伐する、か」
 家族を持たぬ『観光客』アト・サイン(p3p001394)には、そんなユーリエの必死さがあまり理解できぬようではある。
 とはいえ、達成できれば全ての憂いは断つことが出来る。
「……まあ、となれば、弱い僕が足を引っ張っちゃうんだけどねー」
 自ら自虐の言葉も口にしながらも、アトはあれこれと事前準備に動いていた。
 そして、ノリの軽さを感じさせる緋色のスーツの男性、『満月の緋狐』ヴォルペ(p3p007135)も、救出に臨む仲間達を一歩引いた立ち位置で見つめていて。
「『理不尽な世界に復讐を』なんて最高の言葉だけど、おにーさんはその理不尽すら愛しているよ」
 助けるのは彼らの仕事。自身は全力で彼らを護ろうと気合を入れるのである。


 集落へと突入していくイレギュラーズ達。
 突然何事からと振り返る集落民も多いが、メンバー達は構わず一直線に道を駆けていく。
 目的地が近づいてくると、ヴォルペが保護結界を展開してこれから始まる戦いによる集落への被害を極力抑えようとする。
 その場所とは、魔種ハンネスの自宅。
 家の地下に、捕らわれの少女エミーリエ……ユーリエの妹がいるはずだ。
 その場の手前へと急いで駆けつけ、一行は外を出歩くハンネスが軟禁されるエミーリエとの接触を断とうと動く。
「さて、弱い人間は弱いなりに頭を働かせよう」
 そう言うアトとて、知識と冒険の経験は豊富だ。
 奇襲に当たるメンバーと連携をとる彼は太陽の位置を考え、3m棒を立てて伸びる影を見て、ハンネスの影が真後ろになるような奇襲ルートを組み立て、仲間達へと伝達していた。
 その情報を元に、ハンネスと接触を当たるメンバーはローレット勢の出現を察して近づいてくる敵が影を背にするよう近づいていく。
「ローレット……やらせはせんぞ」
 こちらの狙いは非常に分かりやすい。ハンネスもすぐエミーリエ奪還と察して、接近してくる。
「こんの妹泥棒~~~!!!!」
 それもあり、シエラはタイミングをずらしながらも、全力移動で敵へと一気に近づいていく。
 鞭を手にする敵を食い止めるべく、真正面に敵を捉えたシエラはハンネスの自宅を背にしつつブロックし、進行を食い止める。
 しかしながら、ハンネスとて単騎で戦うつもりなど毛頭なく。
「行け、奴らを存分に食らうがいい」
 鞭を地面に叩きつけた敵は早速、影の狼どもを自らの影から出現させる。
 すると、シエラの後ろから続いていたユーリエが対応に動く。
 彼女は元々、ハンネス目がけて闇の鎖で縛り付けようと考えていたのだが、シエラへと襲い掛かろうとしてきた影狼の対処が先と判断していた。
 ユーリエは自らの体力を削って生み出した赤黒い鎖「VBC」……ヴァンパイア・ブラッディ・チェーンで、最も近づいてきた狼を縛り付けていくのである。

「モンスターを影に潜ませると言うが、まあそいつは魔法の領域の話だ」
 アトは予め、仲間達へとこう話していた。
 影は影、直進する光を遮ることで、出来る領域を暗いと自身の眼が感じているだけ。
「だから、そこから何かが飛び出るなら、そういう生物、ではなく、そういう魔法のはずだ」
 そうなら、この魔物は魔法の発露、つまり飛び出す予兆があるとアトは見ていたのだ。
 影から飛び出す魔物をアトが後方から観察する中、ハンネスの使役する魔物討伐を中心に立ち回るメンバーが駆け込んで。
「やはり、影狼が来たか」
 自らの読みが正しかったと真横から抑えに当たるリゲルが叫ぶ。
「影達は任せろ! ユーリエ! 思い切りハンネスを叩いてやれ!」
 正面の2人へと襲い掛かろうとした狼目がけて真一文字に銀閃を走らせ、影狼を切りつけながらも相手を引きつける。
「身内を助けようとする人の為だ。多少の無茶は承知で行かせてもらう……!」
 逆側、家のある方からは、ティンダロスに跨って疾走するマカライトが回り込んでくる。
 ハンネス対応に集中したいメンバーでは、影狼まで処理はできない可能性をマカライトは想定していたのだ。
「行くぞ、犬っころ供」
 相手が群がっていることもあり、マカライトは一直線に鎖を伸ばす。
 先端に付けた苦無型の刃が影狼2体を纏めて貫いてみせた。
「ほらほら、こっちこっちー」
 マイペースに笑うヴォルペが口上によって、狼2体を引きつける。
 うまく敵を抑えれば、彼の思惑通り。
「ここはおにーさんに任せて先へ行け! ……てね?」
 すると、ハンネス狙いのメンバー達が後続として攻め込んでいく。
(現状のメンツは、ハンネスを討伐するには十分な戦力のはずだ)
 過去2度の依頼によるデータからアトはそう判断し、仲間達を脅かすモノの一切を断ち切ろうと刃を抜く。

 突然、集落へとやってきたイレギュラーズ達。
 集落民達も驚きを隠せず、距離をとってこの戦いを見守ろうと近づいてくる。
「欲張りかもしれないけど、エミ―リエも住民もみんな助けよう」
 そこで、ポテトが改めて、集落民を巻き込みたくはないと仲間達へと意志表示して。
「勿論、私たちも全員揃って帰るぞ?」
 ハンネスの思い通りにはこれ以上させぬとポテトが叫ぶと、応じたクロバが敵の側面から前に出て。
「全力で君を……ユーリエをエミーリエと再会できるよう、道を切り開く――!!」
 前進するクロバは移動しながらも、白銀の剣でハンネスの体を切り裂く。
「プランBってことだったな。さっさとぶち殺すとするかね」
 一行は事前に、いくつか作戦を用意していたらしい。
 正面からハンネスに近づくアランは、脈動する大剣「Code:Demon」に魔を浄化する炎を纏わせる。
 ――偽製・ヘリアンサスの奇蹟。
 燃え上がる刃を、やや細身な魔種へとアランは向けて。
「悪いが、姉妹の感動の再開を邪魔させるわけにはいかないのでねぇ!!」
 大きく振るった刃がその体を業火に包み込む。
「……正直に言おう。我はエミーリエという娘に対して何の思い入れもない」
 そして、ここまでなりを潜めていた、長い銀髪に軍服姿の『悪の秘密結社『XXX』総統』ダークネス クイーン(p3p002874)が颯爽と戦場に現れる。
「ハンネス、貴様がそやつを利用する。それも良かろう」
 ハンネス宅前に陣取りながらも、ダークネスは敵へと言い放つ。
 彼女も元居た世界では多数の怪人悪人を従え、世界征服を目論んで活動していた。
 それもあって、自らの目的の為に村一つを陥れるという所業に関しては、ダークネスは理解すら示していた。
「しかし、我には一つだけ許せぬことがあってな」
 自在兵器『D.M.C』を剣とし、構えを見せるダークネスは相手を睨みつけて躍りかかる。
「貴様の存在、その全てが許せん」
 直接ハンネスを切りつけたダークネスは強い衝撃を与え、相手を大きく吹き飛ばしたのだった。


 ハンネス宅周辺で始まる交戦。
 魔種ハンネスとの戦い、そして、彼の使役する影狼との交戦の2組が繰り広げられることとなる。
 アラン、マカライト、ヴォルペの3人が交戦するハンネスの使役する影狼達。
 そんな中、ダークネスの一撃で大きく吹き飛ばされたハンネス。
 彼はイレギュラーズ達の人数を見て劣勢と感じたのか、さらに獣を呼び寄せる。
「来い、俺の敵を排除しろ」
 空に向けて呼びかけるハンネス。
 ヒョー、ケッケッケ……。
 すると、空から彼の従える鳥……狂える猛禽が鳴き声を上げて急降下してきた。
 それを察したヴォルペは、飛び掛かってくる敵へと名乗りを上げて。
「おにーさんが相手になるよ」
 彼はしばしの間、狼2体と合わせ、飛び掛かってくる猛禽を相手にすることになるのだった。

 猛禽を呼び寄せるハンネスには、シエラが再度仕掛けていく。
 仲間がすでに彼の使役へと張り付いてくれているので、「リミットヴァーチュ」を抜いたシエラは魔種目がけて駆けていく。
「月に狂いし獣の咆哮と共に葬り去る 滅びの一撃を受けよ 狼牙月光斬!!」
 獣の闘争本能を解放し、跳び上がったシエラはハンネス目がけて空中回転斬りを浴びせかけていく。
 斬撃を浴び、血を流す敵へとユーリエが近づいて。
「お前がユーリエ・シュトラールだな……」
 ハンネスの問いかけに、ユーリエが頷く。
「これからも自分の野望の為に妹を利用し、悲しませ続けるのなら、私を殺してからにしなさい!」
「ふっ……」
 鼻で笑う敵は一度鞭を地面に打ち付けてから、再び自らの自宅を目指そうとした。
 そこで、ユーリエの髪が茶色から先がほんのり赤くなった銀髪に変わり、腰から吸血鬼の羽根を生やす。
 彼女は闇に染めた鎖にハンネスを追わせ、その体を絡めとった。
「ただ……、簡単に私の妹を渡す気は無いけど」
 妹の元にはいかせぬと、ユーリエが睨みつけて威嚇する。
 そのハンネスへとアトが近寄り、マークしながらも観察を続けて。
(まだ、相手は鮫を温存している……)
 アトは先程の所作を見るに、呼びかけが必要なのではと見ながらも、手にする刃でハンネスへと切りかかり、少しずつ傷を増やす。
 クロバは己の身体と魔力を極限にまで高め、一気に仕掛ける。
「取り戻すさ……家族が家族と会って何が悪い!」
 短期決戦に臨む彼は間合いへと入ったハンネスへ、握る白銀のガンブレードと黒刀で一気に切りかかり、爆炎を浴びせかける。
「その絆を阻む事は誰であろうと俺が許さない!!」
 まるで嵐のごとく、クロバは目の前の優男目がけて自らの全火力をぶつけていく。
「ちっ……」
 魔種となった体は耐久力も上がっている。ハンネスは堪えながらも、慣れた鞭捌きで反撃してきた。
 見た目軽そうにも見える鞭だが、威力ある一撃は肉をも削ぎ落とす。
 それを、シエラが全力防御の態勢で抑えてくれるが、さすがに魔種相手では苦しい。
(最後まで必ず皆を癒し、支えて見せる)
 彼女をメインにサポートすべく、ポテトは調和の力を賦活の力へと転化し、癒しを振りまいていく。
 ハンネスは隙あらば、邪魔なメンバーのブロックを振り切り、自宅を目指そうとする。
 エミーリエさえ押さえれば、優位に立てるという考えに間違いはない。
 だからこそ、イレギュラーズ達もそれを全力で阻止しているのだ。
 だが、その前にアランが立ち塞がって。
「ここは死んでも通すわけにはいかねーからな……!」
 使役する影や猛禽は仲間が抑えてくれているので、アランもハンネスの行く手を塞ぎつつ、再び炎の一撃を浴びせかけてハンネスの体に傷を増やし、その身を焦がしていく。
 ダークネスもまたハンネスを通すまいと前に出て。
「食らえ……奥義、『クイーン・ストラッシュ』!」
 振り上げた刃で、彼女は暗黒の×の字斬りを叩き込む。
 ダークネスもまた速攻での討伐に臨んでおり、他の使役には目もくれてすらいない。
 時にハンネスがこちらを鞭で打ち付け、または纏めて発してくる鞭や殺傷の霧による傷は、ダークネス自身で練達の治癒魔術を癒やす。
「皆、手一杯なのでな。これくらいは自分でやらせてもらう」
 自分に攻撃が及ぶ頻度は、前線の仲間達が抑えてくれる分だけ低いとダークネスも察していたのだ。

 使役の影や猛禽を相手にするメンバー達は、順調に交戦を繰り広げて。
 ティンダロスに跨り、戦場を駆けるマカライト。
 彼は猛禽の位置を気掛けながらも、攻め来る影狼を纏めて鎖で貫いて1体を霧散させてしまう。
 リゲルもまた任せろと言った影狼の数を減らそうと、火球を嵐のように降らせ、影狼を纏めて焦がし、相手の注意を引きつけようとする。
 銀閃の一撃を加え、自らの影を覆い被らせようとしてくる敵を、リゲルは剣で切り裂いて止めを刺す。
 メインは影狼対応だが、リゲルは時折、ハンネスが仲間を突破していないかとも警戒は行っている。
 同時にジョーカー的な存在の猛禽も気にはなるが、それはヴォルペが抑えてくれている形だ。
 空から襲い来る猛禽は現状、鋭いくちばしで襲い来る。
 一度、飛び立てば危険な相手。
 翼を活かして羽根を広範囲に飛ばしたり、大きく翼を羽ばたかせたりして皆を吹っ飛ばして布陣を崩してしまう。
 影狼と合わせてそいつを相手にするヴォルペは、些か押されかけてはいる。
「まいったねー」
 それでもノリの軽さを崩さぬヴォルペは壁役としての人をこなし、時折ポテトが発する天使の歌声に助けられながら立ち回って。
 チーム1高い自らの意思抵抗力の力を破壊力に変え、ヴォルペは赤と青の鎖「満月の桃兎」を強く打ち付け、影狼1体を撃破していたのだった。

 ハンネスは変わらず自らを邪魔するメンバーの突破を狙い続けながらも、鞭で打ち付けていた。
 突破を目指す以上、彼の使うスキルは制限される。
 多くは、最大火力であるサウザンドウイップだ。
 シエラも相手の攻撃力が低ければと考えていたのだが、さすがにそこまで甘い敵ではなかった。
 連打してくる鞭の攻撃は彼女を痛め、たちまちのうちに体力を削って意識までも奪ってしまう。
 だが、シエラも仲間が揃うまではとパンドラの力を使ってふんばり、堪えてみせた。
 状況を危険視するポテト。癒しの力を振りまきながらも、回復が追いついていないと察して。
「ユーリエ、救援を頼む」
「了解だよ!」
 ポテトの言葉によって危機を察し、ユーリエはポーションを振りまく。
 抑えのメンバー達も苦しい状況だとクロバは見るが、攻めの姿勢を崩さず相手へと告げる。
「貴方にどのような目的があろうとも関係ない……」
 アラン、ダークネスが攻撃を繰り返す中、クロバは攻撃に注力して。
「もたらしたその悪夢、俺が! 俺たちが終わらせる!!」
 両手の刃で切りかかるクロバ。発する爆炎の中、ハンネスは全身を傷つけながらも、彼を睨みつけていた。
 その間にも狼の討伐は進んで、リゲルが1体を切り裂く。
 ほぼ同タイミング、傷つくヴォルペも2体目の影狼を叩き潰していた。
 だが、そこで一度空中を旋回した猛禽が彼目がけて飛び掛かってくる。
 傷つくヴォルペに加勢するように、マカライトが近づいてくる猛禽を衝撃で吹き飛ばし、窒息させてしまう。
 残る使役の数に、ハンネスは小さく嗚咽を漏らして。
「こうなれば……。来い、我が最強の影よ!」
 追い込まれかけていたハンネスがそこで、自らの影へと呼び掛ける。
「影の鮫が来るよ」
 仲間の攻撃の合間、剣戟をハンネスに浴びせていたアトが仲間達に呼びかける。
 ゆらりと影から分離するように現れ、空中を泳ぐ影鮫2体。
 それらの力はハンネスがここまで出現させなかったこともあり、力は未知数。
 だが、ハンネスと対する仲間に向かうことを警戒したクロバは、大きく牙を剥いた鮫の攻撃をその身で受け止める。
 同じく、ユーリエを悲しませぬよう犠牲を防ごうと、リゲルが前に出て。
「俺を倒さなければ、宿主が危険に晒されるぞ。放っておいていいのか?」
 そう声をかけることでリゲルは鮫達の気を強く引きつけ、ハンネスから引き剥がしていくのである。


 猟兵達は力を尽くし、ハンネスの撃破を目指す。
 ただ、魔種となった敵は憤怒の力を原動力とし、全力で応戦し続ける。
 影鮫を一度抑えたクロバはそのまま、ハンネスとの戦いへと戻るが、深手を負うクロバをハンネスは見逃さない。
「俺の狂気、とくと味わうがいい……!」
 自らが狂っていることを自覚しながらも、ハンネスは自らの狂気をイレギュラーズ達へと振りまいてくる。
 この世界の原種であれば、反転の危険すらある狂気……原罪の呼び声。
 クロバは旅人であり、反転の危険はないものの。
 魔種の及ぼす精神汚染は、彼の残り少ない体力を削り取ってしまい、パンドラの力に頼らせることとなってしまう。
 同じく、アトも再生能力で何とかしようとしていたのだが、マークし続けていた影響は大きく、こちらもパンドラを削って意識を繋ぎ止めていた。
 再び起き上がったアトだが、さすがに深い傷はすぐには言えそうにない状況だ。
 次々にパンドラを使う仲間達を、ポテトが全力で天使の歌声を響かせて癒やすが、ハンネスの力は想定以上だ。
 そこで、温度視覚を働かせていたユーリエが周囲に多数の人々が駆けつけてきていたことに気づく。
「皆さん、集落の人達がこちらに集まってきてしまっています!」
 騒ぎを聞きつけて、野次馬のようにやってきた人々。
 ただ、この状況では人々に危害が及ぶだけでなく、狂気に堕ちるのを速めてしまいかねないとリゲルは察して。
「危険です、離れて下さい! 俺達が皆さんを守ります!」
 リゲルがそう呼びかけるが、その中にハンネスが執心している女性ルシールもいた。
「なら、先にお前を……!」
 ハンネスは彼女へと接近する。ルシールを狂気で包み込み、一気に堕としてしまうつもりなのだろう。
 そこで、最後の影狼の体を切り裂いて撃破したリゲルが告げる。
「魔へ堕とそうとも、心を奪えるわけではない」
 寧ろ、反転することで性格が一転することだって珍しいことではないと、リゲルはハンネスに再考を促そうとする。
「好きであった頃のルシールさんを、貴方自身が殺そうとしているのは理解しているのか!?」
「それがどうした。あの女が苦しむ様さえ見られれば、俺は満足だ」
 もはや話にならないと判断し、リゲルがそちらへと近づこうとするが、影鮫が邪魔をしてくる。
 同じタイミング、空を飛ぶ猛禽の体を2本の鎖で射抜いて止めを刺していたヴォルペが声を上げて。
「危険だよ。早く家屋の中へ入ってね」
 人心掌握術を使いながら集落民へと呼び掛けるヴォルペは、ルシールを発見して庇いに当たろうとする。
「邪魔を……するな!」
 しかし、そんなヴォルペを鞭で縛り付け、自らの傍へと引きつけたハンネスは、彼の体へと鞭を叩きつけていく。
「早く……!」
 パンドラに力に頼りながらも、ヴォルペは血を流しながらもルシールへと視線で訴えかける。
 それもあって、ルシールもまたこくこくと頷き、この場から離れていたようだ。
「自分が欲しい女より、そっちが優先か。聞いて呆れる」
 心底呆れながらも呼びかけるマカライトは、邪魔をしてくる鮫目がけて突撃する。
 怯んだ鮫が地中に潜ろうとしたのだが、アランがそれを許さない。
 脈動する大剣でアランが殴りつけたことで、地面へと落下した影鮫はどろりと地面に溶けていった。

 一方で、ハンネスには再びシエラが近づいていて。
「好きな女子がいるなら、女の子を利用せず勝負するもの! このヘタレ魔種め~~!!」
 なんとか、体力を戻したシエラは、気力の補填も兼ねて目の前の敵目掛けてバレスティ流剣術を見せつける。
「命脈は無常にて生と死を別つするものなり──刻輪斬!」
 相手の至近にまで迫ったシエラは、直接回転斬りを浴びせかけていく。
 ユーリエもまた、相手の動きを止めようと近づいて。
「妹を……、皆を人質になんてさせない。逃がしたりもしない!」
 再び、ユーリエは体のあちらこちらから流れ出す自らの血を使い、赤黒い鎖でハンネスの体を縛り付けようとする。
 だが、ハンネスはそんなユーリエを睨みつけて。
「そうだ、貴様が……貴様が来なければ……!」
 逆にマジックロープを使って、ユーリエの体をきつく締めあげてしまう。
 長引きかけていた戦いもあり、パンドラの力で倒れることを拒絶するユーリエが叫ぶ。
「こんなところで、あの子を間近にして倒れるわけにはいかない……!」
 ――この声は、エミーリエに聞こえているだろうか。
 妹のことを思えば、不思議と内から力が湧いてくるような。ユーリエにはそんな気すらしていた。
 互いに、ロープで縛り付けられた状態のユーリエとハンネス。
 だが、彼女が抑えている間に、他メンバーも近づいてきて。
 自身溢れるダークネスが駆けつけながらも叫ぶ。
「貴様に掛ける慈悲はない! 何も得ず何も与えず、無に還れ!」
 ダークネスは再び、『ダーク・ミーティア・カラミティ』の刃でハンネスの体へと暗黒の×の字霧を浴びせかけていく。
「ぐはっ……!」
 その衝撃に、ハンネスが吐血する。
 さらに追撃をとダークネスが刀身を煌めかせるが、それよりも速くハンネスが自らの狂気を周囲へと振りまいてきた。
「ぐ、うううっ……」
 目を血走らせるハンネスは、度重なる攻撃で足をぐらつかせてきている。
 仲間の回復を続けていたポテトは、サメの相手を続けていたリゲルの手を握って。 
「心を強く持ってくれ」
 リゲルは混沌の人間種だ。
 折角、彼と添い遂げたというのに、反転してしまうなど、ポテトには耐えられない。
「あっ……ああっ」
 同じく、前線で耐え続ける獣種のシエラも、幾度も狂気に晒されると、ポテトは彼女にも呼びかける。
「シエラも大切な人がシエラの帰りを待っているんだ! こんな声に惹かれるな!」
 この場にいない恋人を想い、シエラも全身傷だらけにしながらも堪えていた。
 抵抗しなければ、本当に堕ちてしまいかねない恐ろしい感情の流れ。
 それに、皆体力を削られながらも、抗い続ける。

 その時だ。
 使役を相手にしていた面々が残っていた影鮫を追い込み、ティンダロスに乗るマカライトが鎖で相手の体を貫通して霧散させてしまう。
 そこで、リゲルがハンネスの対応へと駆け付けると、同じくアランが呼びかける。
「リゲル、クロバ!! 『合わせ』ろ!」
 とはいえ、事前に連携など考えてはいなかったアランだが、気の合う仲間達であれば、合わせて仕掛けてくれると信じ、駆けていく。
 この集落で好き勝手な振舞いを続け、さらにユーリエの妹を拘束し続けていた魔種を、アランはあらん限りの憎悪を爪牙で深く傷つける。
 応じたリゲルもまた真一文字にハンネスの体を切り裂き、大きくその体を吹き飛ばすと、クロバがなおも近づいて。
「心は嘘をつけられない。真実を歪めた想いに何の意味もない!!」
 エミーリエを利用し、人の気持ちを踏みにじり、己の望みを押し付けるハンネス。
 怒りを漲らせたクロバは体勢を崩した魔種目がけ、ガンブレードと黒刀の刃を振り下ろす!
「アンタはそれを認められなかったただの怠惰な男だ!!」
 嵐のごとき剣戟と爆炎がハンネスの体を包み込む。
「がはっ……」
 それまで耐えていた魔種がついに、白目を向く。
 力を失った彼は地面に落ちることなく、黒い靄のように爆ぜ飛んで消えていった。
「か、勝った、勝ったよ……」
 長く続いた戦いの終わり。
 ユーリエはようやくそれを実感し、少しだけ脱力してしまうのである。


 魔種ハンネスを討伐したイレギュラーズ達。
 とはいえ、念の為とシエラやマカライトは警戒を続けていて。
 最悪、生き残りの影や獣がいないかと気にかけていたマカライトは周囲を確認しながらも、この場へと集まっていた集落民の被害チェックを行う。
 直接の外傷はほぼないが、やはり狂気の影響で理性を失いかけた者がちらほらいたようで、魔種が居なくなったこともあってゆっくりと休ませていたようだ。
 深手を負っていたシエラもセンスフラグを働かせ、周囲の流れに注意する。
 武器を構えたままシエラは仲間に討伐数を聞き、完全に事前情報と同じ数だけ狩ったことを確認していた。
 安全を確認した彼女は一息つき、戦闘態勢を解いていたようである。

 そして、ハンネス宅へと駆け込むメンバー達は地下へと向かって……。
 そこにいた少女エミーリエへと、戦いでボロボロになっていたユーリエがゆっくりと歩み寄る。
「……わかるかな? お姉ちゃんだよ」
「うん、わかるよ、お姉ちゃん……」
 混沌に飛ばされてから、音信不通だった彼女達は先日の依頼で顔を合わせこそしたが、その時はユーリエも自らの素性を明かさなかった。
 だから、今回が本当の意味での再会となる。
「良かった、本当に……」
「お姉ちゃんも……てっきり、人質に」
 およそ2年ぶりの姉妹の再会。
 彼女達は、堰を切ったかのように涙を流す。
「ううっ……」
 そばにいたシエラももらい泣きし、一緒になって心から再会を喜び合う。
 しばらく、メンバー達も様々な想いを抱いて。
「無事で良かった」
 進み出たポテトはこれまで1人で魔種に対してきた彼女を労い、チョコレートを差し出す。
「もう大丈夫だから、今はゆっくり休んでくれ」
「あ、ありがとう」
 戸惑いながらも、エミーリエはそれを受け取る。
 ユーリエが彼女の為にと、他のメンバー達の紹介をしていたようだ。
 そんな姉妹の再会を優しく見守っていたヴォルペは、穏やかな笑みを浮かべつつ一礼する。
 同じく、姉妹を見つめていたアラン。
「俺とリゲルもああなったりしたら……おもし、いやキモいな」
 ふと呟き、途中で大きく首を横に振る。
(そもそも、俺もリゲルも強すぎて、助けられるお嬢様ポジにはならんのでは……?)
 どうやら、あの妹は全く戦う力を持たないらしい。
「姉妹の無事の再会、我は心から祝福しよう。……しかし、言いたい事はある」
 それを確認したダークネスが紹介と共に、エミーリエへとこう語る。
「魔種さえも救おうと言うその心意気は見事。……しかし、だ! 優しさだけでは何も救えぬ!」
「ちょっと……えっ?」
 そんなダークネスをユーリエが止めようとしたが、エミーリエは最後まで聞きたいと姉に願う。
「貴様が真に全てを救おうと言うのならば、先ずは強くなれ! 自分すらも救えぬ者に、何一つ救える物は無い!」
 優しいだけでは、この混沌では生きていけない。
 それは、エミーリエも実感していたのだろう。
「それにしても、お姉ちゃん。その髪は……」
 前回顔を合わせた時も、姉だと確信できぬほどに変貌していたのは、ユーリエが吸血鬼化した影響が大きい。
 ただ、それを説明するには別の女性を紹介したいとユーリエは考えている。
「まずは帰ってからにしよう」
 この2年の間に起こったことを話したいし、色々聞きたいこともたくさんあるけれど。
 エミーリエが精神的に消耗していることを姉は察して。
「もう我慢しなくていいから。後はお姉ちゃんたちに任せて」
「うん……」
 安心したのか、エミーリエはユーリエの腕の中で眠りについてしまう。
 そのユーリエの手には、エミーリエがずっとつけ続けていた、切れたミサンガが握られていたのだった。

 この集落の事後処理もしばらくかかりそうだ。
 ポテトがこれまでの経緯について、現状、リュミエに保護されている集落民の話も含めて住民達へと語る。
 この地の人々も理解を示してくれ、辻褄の合わぬ自分達の記憶に折り合いをつけ始めていたようだ。
 イレギュラーズ達の活躍もあり、最悪の事態は避けられた。
 しばらくは混乱が残り続けるだろうが、この後どうするかは彼ら次第とポテトは語る。
 事件の原因を叩いたイレギュラーズ達は仲睦まじく語らう姉妹と共に、程なくこの集落を去ることにする。
 何事も起こらぬことを確認し、ヴォルペは仲間を追うようにして最後にこの集落を後にしていったのだった。

成否

成功

MVP

シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士

状態異常

シエラ・バレスティ(p3p000604)[重傷]
バレスティ流剣士
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)[重傷]
優愛の吸血種
アト・サイン(p3p001394)[重傷]
観光客
ヴォルペ(p3p007135)[重傷]
満月の緋狐

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは序盤からハンネスの抑えに当たり続けていたあなたへ。
 無事、エミーリエさんを救出できて、何よりです……。
 これにて、シリーズ完結です。ご参加ありがとうございました!

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