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シナリオ詳細

奢ってやるよ焼肉をな!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●漢気じゃんけん
 その日の依頼は、ある幻想の田舎町に現れた魔物を退治すると言う物だった。
 現れた魔物は三体。
 一体は豚の姿をした筋骨隆々の魔物。その名を豚足魔獣ブーラオウ。三叉槍を振るう強力な魔獣だ。
 次の一体は肥大化したミノタウロスにそっくりな牛魔獣モーレス。悪魔染みた鼻息であらゆるものを吹き飛ばす。
 そして最後の一体は空を自由に駆ける鳥獣コケートス。鋭い嘴と赤い鶏冠から放たれる怪光線は触れる物すべてを破壊してしまう。
 恐るべき力を持つ三体の魔物が、傍若無人に振る舞い田舎町を恐怖のどん底へと陥れようとしていた。
 止められるのはイレギュラーズしかいない!
 今、八人の戦士が魔物を退治せんと、田舎町に足を踏み入れた――

 それはそれとして。
「なんか、人の金で焼肉食べたくね?」
 始まりは『おにいちゃん』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)の放った一言だ。
「確かに腹が減ったな。どうにも肉を食いたくなる見た目の魔物達だし。人の金で焼肉が食べれるならなおよしと言った所か?」
 話に乗っかった『神に抗う者』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)。目の前の強大な魔物達を前に恐れもおくびにも出さない態度だ。
「肉は確かに食いてぇけど、誰が金出すんだ? この面子じゃ結構懐具合を気にしなきゃならんだろ」
「俺は払わないぞ……この面子に好きに食われたらいくら金があっても足らんし。それになんか奢るって負けた気にならないか?」
 『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)と『黒のガンブレイダー』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が揃って懐の財布を押さえる。だが当然二人も誰かが奢ってくれるなら、好きなだけ肉を食う心算である。
「では、ここで発想を逆転させましょう。
 奢ることは大変な名誉であり、逆に奢られる方は不名誉であると。そういうルールにしてしまえばいいのです。
 ええ、私はこういった場面に相応しい決め方を知っています。
 『漢気じゃんけん』。勝ち抜いた者が全員分を奢るというものです」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の提案に七人は戦慄する。
 勝者の権利が反転し奢らされることになるなど、あって良いのかそんなルール……!
「勝者は名誉、敗者は不名誉なんだから、負けて喜んだ奴には別途罰ゲームを課そうぜ」
 『幸運と勇気』プラック・クラケーン(p3p006804)の追加ルール提案にさらに戦慄する七人。
 これでは負けて奢ってもらっているのに気持ち良く肉が食べられないではないか……!
「恐ろしいルールですが、逆にいえば気持ち良く奢れるルールでもありますね。良いんじゃないですか」
 『未来偏差』アベル(p3p003719)が納得するように頷くと、他の七人も思案し頷き合う。
「決まりだな。悪いけど勝って気持ち良く奢らせてもうらぜ!」
 早速ルールに則って気合いを入れる『夜闘ノ拳星』シラス(p3p004421)。そう戦いはもうこの時点で始まっているのだ。
「絶対に勝つ! 正義は我にあり!!」
 高らかに宣言するカイト。続く七人のイレギュラーズ。
 そんな彼等に業を煮やした魔物達が、今、襲いかかろうとしていた――!

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 シナリオリクエストありがとうございました。
 奢って貰う焼肉は最高ですが、今回はそうも行きません。
 漢気じゃんけんに勝利し焼肉を奢りましょう。

●達成条件
 焼肉をお腹いっぱい食べる。

●情報確度
 このシナリオの情報精度はBです。
 戦闘において想定外の事態は起きませんが、お財布にとっては想定外の事態が起こるかもしれません。

●このシナリオについて
 全員が漢気じゃんけんに参加します。
 グーチョキパーなどの宣言は不要です。勝利をもぎ取るという強い意思と熱量をもったプレイングを書いて下さい。
 GMの判定で勝者と敗者が決定されます。
 そして焼肉も全力で食べて下さい。財布の事情なんて気にすること無くとにかく食べて下さい。
 焼肉屋さんは食べ放題メニューがありませんが、漢気じゃんけんの勝者であればそんなことはちっぽけなことでしょう。
 飲み放題はあります。

●魔物達について
 田舎町を襲った悪い魔物達三体です。
 戦闘は要望通り三行で終わりますが、魔物の設定はあります。

■豚足魔獣ブーラオウ
 豚の姿をしていながら筋骨隆々の身体を持ち、大型の三叉槍を振り回す猪八戒タイプ。
 戦闘ではアタッカーを担当し、並み居る者共をその槍で薙ぎ払います。
 高いCT値とEXA値を持つ動けるデブ。
 豚トロと豚バラが美味しい。

■牛魔獣モーレス
 牛の頭をもつ魔獣。鼻息が超荒く、近づくだけで普通の人は三十メートルは吹き飛ばされます。
 戦闘では盾役であり、前にでて敵視を受け持ちます。
 高いHPに、防御技術を持ち、並の相手では防御を突き崩せないでしょう。
 焼肉と言えば牛。
 カルビにロースにハラミ。そしてタンにホルモン。タレでも塩でもお好みで。
 
■鳥獣コケートス
 大空を舞う怪鳥。鋭い嘴と怪光線によるヒット&アウェイ戦法が得意。
 戦闘ではレンジポジションで仲間を支援する。
 高い機動力と回避を持ち、放っておくとジワジワと削られていってしまうでしょう。
 主役ではないが食べたときの幸せ指数上昇ポイントは一番高い鳥。
 パリパリに焼いた鶏皮にジューシーなもも肉。なんこつなんかも良いですね。
 
●戦闘地域について
 田舎町の畑と、近くの街の焼肉屋での戦闘となります。
 着席ポジションにも気をつけながら、戦いに望みましょう。
 肉だけじゃ無くサイドメニューも頼めます。〆のつけ麺には注意しましょう。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 奢ってやるよ焼肉をな!完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年10月02日 23時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
傲慢なる黒
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
アベル(p3p003719)
失楽園
シラス(p3p004421)
竜剣
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年
カイト・C・ロストレイン(p3p007200)
天空の騎士

リプレイ

●さあ決めようか勝者を
 突撃する牛、槍を振り回す豚、そして飛びかかる鳥。
 恐るべき魔物の攻撃は、しかし、腹を空かせ肉を求める捕食者の前に無力であった。
 約束通り、奴等は死んだ! 豚、牛、鳥の順で! たった三行で!
「恨むなら美味そうな部位をもった自分の身体を恨むんだな」
 恐るべき捕食者(イレギュラーズ)達は魔物の肉まで食おうというのか。あまりにも無慈悲である。
 だが、彼等の戦いは終わっていない。むしろここからが本番だ。
 漢達が円陣を組み顔を付き合わせる。
 互いに視線を送り合い、牽制する。
 本番――そう、この減りに減った胃袋を満たすため、己が食欲を満たすため、これより戦いが始まるのだ。
 漢気じゃんけん。
 勝利者が全員に焼肉を奢る。
 敗者は己の無力さを呪い、慚愧の念に堪えながら、涙ながらに肉を”奢って貰う”のだ。
 言わばこの勝負はイレギュラーズとしての格を決める。番付けなのだ。
 漢として、負けるわけにはいかなかった。
 イレギュラーズの覇気が田舎町を震撼させる。魔物が倒されたというのに、その事を喜べる村人はいなかった。この戦いが終わるまで、それをしてはならないと感じたのだ。
 全員が拳を固める。
 戦いが始まる――

 ここで全員の心理、そして心理戦を見ていこう。
「よーし、んじゃ、気持ちよく奢りたいんで、俺はグーを出しますよ。皆はチョキでも出してください」
 すでに称号からして本音が漏れ出てる『他人の金で焼肉食べたい』プラック・クラケーン(p3p006804)が心理的ジャブを放つ。
 高い基礎反応値から自身が不利な気配を悟りつつも、反応値の応用的実用を模索する。
(そうだ、純粋な速さなら機動力、秒間に複数行動出来るのがEXA!
 なら反応は――真っ先に動ける瞬発力だ!)
 やるべきことは見えた。
 誰よりも”遅く”動きだし、誰よりも”速く”手を出す。この一見矛盾しているかのような戦法こそ、プラックの導き出した解だ。
 懸念すべきは複数行動によって後出しを可能にする『神に抗う者』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)のみ。であれば、八人という人数を考えれば、勝ち組(負け組)に入る確率は高い。プラックは勝利(敗北)を確信していた。
 さて、そんなプラックの横に立つのは『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)に他ならない。
 だが、彼はこんなときだというのに、致命的に上の空だった。きっと色々なことに忙殺されてしまったのだろう。ただ漫然とじゃんけんするしかなかった。
 この時点で世界のルール的に罰ゲームは決まったようなものだが、それはそれで美味しいかもしれない。漢気じゃんけんでなければ寛治が支払い持ちになったであろうが、それは面白くないので却下だ。
「あ、俺グー出すわ。
 お前ら俺漢気見せたいだからパー出してくださいよ」
 漢気じゃんけんというルールを逆手に取った見事な心理戦を行うのは『未来偏差』アベル(p3p003719)だ。
 こう言われれば、当然アベルはチョキを出すだろうと思われる。勝たなければならないのだから当然だ。よって、言われた通りパーを出せばそれば自ら敗北を選び取ったと同義である。だからといって相子狙いでチョキを出すのは躊躇われる。アベルがグーを本当にだしたら――それは漢気じゃんけんとして、漢としての敗北を意味するからだ。
 さらに心理戦だけでなく技術的にもアベルには勝算があった魔物を倒した得意のインターセプトを駆使すれば、相手の腕の動き、指の動きから未来予測が可能なはずなのだと。
 必勝(必敗)は頂きだと、内心ほくそ笑んでいた。
「ありきたりな言葉なんて俺たちの間には必要ないだろう?
 俺たちがやるべき事はたった一つ。それもこの世で最もシンプルかつ絶対な答えだよ」
 『黒のガンブレイダー』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は飛び交う心理戦を遮断する。
 そうだ、この場に存在するルールはただ一つ。
 ――勝つ。誰の屍を超える事になっても。
 脳裏を過ぎる上タン塩。最高の価値――勝ちをもぎ取るのだ。
 両の手を握りしめる。愛用の武器を握るように握りしめ、全身の力を――魔力を最大限にまで高める。
 自身が持つ最高の攻撃力、クロスエッジ・フルバーストを叩き込むのだ。
 あとは――”クリティカル”を引き寄せるのみだった。
「いいかシュバルツくん、EXAで常人が見えない速度で二度だしとかは駄目だからな」
 この場において誰もが警戒するシュバルツへと釘を刺す『六枚羽の騎士』カイト・C・ロストレイン(p3p007200)。言い出しっぺである彼は実に絶妙に、己を本音を隠していた。
 多くの者が肉を奢って貰いたいという本音を内心漏らしつつあるなか、カイトはそれをこの場においてひた隠しにする。汚い――いや、見事と言うべきか。
「俺は……俺様は次、パーを出そう、宣言してやる。オマエラ全員、グーを出せ!!!」
 カイトの力強い言葉が本当かどうか、居並ぶ一同は思考の渦に囚われていく。
 『夜闘ノ拳星』シラス(p3p004421)は今、全感覚を集中させていた。
「コォォォォ……」
 全員の動きを見失わない。全神経を通る電流が加速していた。
 淀みない息吹。
 ――分かる、分かるぞ。七人のライバル達の動きが。
 そう、この時シラスは魔物の討伐にも用いなかった零域を解禁していた。むしろこの勝負のために温存していたに違いない。
 零域は一瞬にすべてを賭ける消耗の大きい技だ。だが、この勝負に勝てれば後の事など考える必要はない。
 頭から薄平らな財布のことも消去して、今、戦いに望む。
「おいお前ら、人の手元を凝視するんじゃねぇ。(EXAで後出し)不正とかしねぇから」
 多くの者に警戒されてるシュバルツは、そう断言した。
 高いEXA値を誇るシュバルツであれば自分に有利な形を後出しという形で作ることができる。だが、当然その事は誰もがわかっていることだ。
 故に、あえて”ここ”ではEXAを封印する。
 ――名誉は金じゃ手にはいらねぇんだ……!
 そうだ、名誉ある戦いを不正行為で穢すことなどできないのだ。
 聖戦である。負けられない戦いが、此処にある。
 そう強く思うシュバルツの目は虚ろに揺れていた。
「さぁ、最初はグーだ。捻り潰してやる」
 最後に、音頭を取ったのは『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)だ。
 熱量を高める面々の中、太陽の勇者としては至極冷静に、戦略を立てていた。
(初手はチョキ。八人もいれば高確率で相子となるはずだ)
 であれば、次手、そして更にその次を考える必要がある。
 ――周りに流されるな。ここは決め打ちでいく。
 グー、パー、チョキ、パー、グー……頭の中で順番が組み上がっていく。
 冷静なアランの立ち居振る舞いに、一同はどのような手段を用いてくるか注視した。

 そして、戦いが始まった。
「「――さぁぁぁいしょぉぉはぁぁぁ、グゥゥウウウウ!!!!!!!!!!!!!!」」
 八人の漢達の、空前絶後の気合いの唱和。この気合いであれば七罪すら倒してしまえるのではないかと思うほどの。
「「ジャン――!!!!!!!」」
 シラスが飛翔し、自らのギフトを発現させる。クロバがクリティカルを引き寄せようと両の手を構える。プラックの目が見開き、早出しを我慢する。シュバルツの腕が待機状態からすでに複数回動こうと目にも留まらぬ速さでブレ始める。
「「ケェェェェェェェン――!!」」
 アランが決め打ちの指の形を作り始める。アベルがそれに反応してインターセプトを開始する。寛治がクイッとメガネを上げる。カイトが待ち受ける運命に歯を剥き出しにして笑う。
「「ポイ!!!!!!!!」
 八人の手が一斉に形を作った。
 名誉を賭けた、漢達の熾烈な戦いが、幕を開けたのだ――

●まずは何から食べようか
 大激戦だった。
 まさに天を裂く究極の戦いと言って良かっただろう。
 八人が四人となり、四人が三人に。一人の勝者が決まるかと思えば、三人は二人となった。
 頂上決戦の主役となったのは――クロバとシラスだ。
 そして、戦いは一手で決まった。
 勝者は――

「クソッ……悔しいな……勝てたはずなんだが(ああ、たまらねえぜ、この匂い!)」
 ここは幻想で有名な焼肉屋さん。持ち込みの肉すら出してくれるサービスの効いたそこそこ、いや結構、否、かなりお高いお店だ。
「あそこでチョキを出さなかったらなぁ……残念だなぁ(チョキを出して正解だったぜ!!)」
「それにしてもこんなお高い店を選ぶなんて、さすがだぜ(まじ肉美味そう。値段見ずに頼みまくるか!)」
「……ぐっ……ぐぐぐ……」
 悔しがる顔がどこなく嬉しそうな面々を前に、”勝者”であるクロバが顔を引き攣らせた。
(いやいやいやいやいやいやいや!!!!? どこでも良いとは言ったけど、なんでよりにもよってクソ高い店なんだ!?!!? 死んじまうぞ、主に俺の財布が……!!!)
 メニューに並ぶ数字を前に、クロバの額から脂汗が垂れた。
(クソっ、運任せの勝負で本当に運(クリティカル)任せにしたら勝っちまった……というかクリティカル出過ぎだろ!!)
 内心毒づくクロバにアランが背を叩く。
「お前はすげぇよ……あの技の冴え、魔種だって尻尾巻いて逃げ出すだろうぜ(焼肉太郎さんゴチ、サンキュー!)」
 仲間達の内心が透けて見えるが、それを口に出すわけにはいかない。クロバは覚悟を決めた。
「ああ、もう! わかった、覚悟を決めた! 好きなだけ喰え!!」
「さすが漢の中の漢! そこまで言われたら遠慮するのも失礼ってものだ! クロバの顔を立てて敗北の味を噛み締めようぜ!(いぃぃぃやっほぉぉぉぅう!!)」
 喜びを噛み締めながら、イレギュラーズ達は早速注文するためにメニューを見始めた。
 テーブルに二つの穴が空いていて、そこに十分に熱せられた炭が投入されている。
 上に置かれた網が、熱によって肉の旨味を存分に引き出す準備を整えていた。
 まずは飲み物からだ。
「飲み放題? ドリンクバー? 何寝言を言ってるんだ。
 男なら大人しくカルトで金を積み上げていこうぜ!!」
「飲み物はまず酒だ! ビールを持って来い!」
「不正義者!! ロストレインは悪だ!!」
 クロバの抗議にそしらぬ顔のカイト。
「知らんなあ、他人の金だから知らんなあ、とりあえず生を全員分ください」
「あ、俺未成年なんで海洋コーラにしときますね。乾杯は生でしますけど」
「肉も頼んでおこう。
 まずはそうだな、上タン塩に上カルビ、上ロース、三秒炙りとろカルビなんてのもいいね。二人前を皆で分けるなんてみみっちい真似はしないさ、とりあえず今言ったのを人数分!!」
 それだけで既にとんでもない金額になっているが、これはまだ始まりに過ぎないのは誰の目にも明らかだ。
「ごはんとサンチュ、つまみ系に塩キャベツとキムチももらっておくか」
 注文すると、すぐに飲み物と肉類が運ばれてくる。
 言い出しっぺであるカイトが音頭を取った。
「それじゃ名誉ある戦いの勝者クロバ=ザ=ホロウメアを称えて――」
「「乾杯!!!!」」
 グラスの重なる音が響き、酒池肉林な宴が始まった。

●肉肉つまみ肉つまみ
「いいですか、この網の四分の一は俺の領地だから。奪わないでくださいよ」
 男子高校生的焼肉バトルを危惧してプラックが領地宣言をする。
 自分の育てた肉は自分が余すことなく喰おうという考えだが、宣言しておかないとこのメンバーだ、いつ奪われるかわかったものじゃない。
 その考えは的中していた。
 シュバルツの封印されたEXAがここでついに解放され、網の上の肉を根こそぎ奪おうと高速で箸が動いていたのだ!
「徹底死守っすぞ、ゴラァ!」
 肉を庇うプラックと、連続の攻め手で肉を奪おうとするシュバルツの熱い攻防戦が繰り広げられる。
 その隙を縫ってアランが動いた。
「うめぇ……口の中で肉が溶けるぜ……」
「おいアラン! 人の肉奪っていくんじゃねぇ!」
「俺の肉奪うとは良い度胸ですね。これは高く付きますよ」
「おい、アラン。人の肉食ってる暇あったら火の管理しろよ、太陽の勇者だろ」
 クロバとアベル、そしてカイトが抗議の声を上げてアランを攻め立てるが、アランは素知らぬ顔だ。
「あ? 肉を取っただ? 自分でとっくに食ったんだろ、変な言いがかりつけんな!!」
 収奪スキルを披露していながらすっとぼけるアラン。新たな戦いが勃発していた。
「シラスくんもっと食べないと、どの肉を焼いてほしいんだい?」
「食べてる、食べてる。成長期をなめんなよ!」
 薄いタン塩ならば片面から火を通せば食べられるだろうが、この店のは中々に分厚い。しっかりと火を通してから噛み締めると、よく効いた塩気とともに弾力ある肉の食感が、肉汁とともに溢れた。
 また店秘伝のタレも絶品で、カルビやロース、ハラミにはよく合う。塩ダレも海洋の有名な塩とレモンを使っているらしい。こちらも特にタン塩に合うようだ。
「ホルモンも美味いみたいだな。塩ホルモンにコリコリ、センマイとギアラを追加で!」
 鮮度の良い肉を使っているようだ。ホルモンであってもさっと焼くだけで食べられるという。
 漬け込まれたタレの味に、歯ごたえのある食感。脂の旨味が凝縮されて、焼いているときから涎が止まらなくなる。
 十分に店の肉を堪能したあとは、本日のメインディッシュの登場だ。
「来た来た! 魔物の原始肉!」
「すげぇ……完全にマンガ肉じゃん」
 ジックリと網の上で焼き上げながら、ナイフでカットしていく。人数分あれば良かったが、三体の魔物から取れた食用の部位はそう多くはなかった。
 その分肉はかなり上質で稀少なものと言って良いだろう。
 カットされた肉をそれぞれが箸でとり頬張る。
「うんめぇ……豚臭さがない肉厚の歯ごたえに旨味が凝縮されてる……」
「牛はやばいな。まじで口の中で溶けていくぞ……ほとんど火が通って無くても溶ける。なんだこれ……」
「鳥は鳥で、パリパリな皮と脂が溢れるもも肉が美味すぎる。塩だれとよく合うぜ」
 あまりの美味さに、あっという間に肉は完食された。
「実に美味でした。あの魔物の数が多く分布しているのであれば、新しいビジネスチャンスな気もしますね」
 口元を拭う寛治がいう。場合によっては罰ゲームで肉”だけ”食べれない目に遭うかもしれなかった寛治だったが、持ち前の機転を活かしてひっそりと肉を喰らっていた。運が良かったと言うべきだろう。
 店にあるメニューを順に制覇していくように、次々と皿が現れては消えて行く。
 特上ステーキも、スキヤキ風に食べる上ロースも、全ては胃の中に収まった。同時に、クロバの顔も青ざめていった。
 肉肉つまみ肉つまみ。野菜なんて軟弱なものは此処にはなく、漢の生き血となる大量の肉が消費されていったのだった。

●勝者は背中で涙を流す
 満腹感とは突然やってくるものだ。
 まだいけると注文するも、皿が来るまでに急に腹が膨れあがる。
 食べ残しは御法度なので、全員がほどよいところで、注文は終わると思われた。
 クロバにとって誤算だったのは、この店のサイドメニューが充実していたことだろう。
「ちなみに俺は肉だけじゃなくデザートもたらふく食べさせていただきますよ?
 それだけじゃなくお土産貰って帰りますから」
「おみやもかよっ!?」
 アベルの言葉に乗っかって、全員がデザートを注文する。
 ……デザートと言いつつプラックとカイトは楽しみに取っておいたお茶漬けとビビンバだ。まだ喰うのか。
 はち切れんばかりの腹を押さえ、全員が見事に完食する。
 満腹。満足。大満足である。
 実に半年、いや一年分は食べたのではなかろうか。怖いところはこれが食べ放題ではないところだ。
 少しの小休止を挟んだ所で、「さて」と、全員がクロバに注目した。
 いよいよ恐るべき会計の時である。
「お会計を……」
 恐る恐る店員に伝えると、ややあってから伝票を持ってきた。伝票は数枚に分かれていた。
(見たくねぇ……一体どれだけ喰ったんだ……)
 複数枚伝票がある時点で、完全に財布が死亡するわけだが、わかっているようにこの店は周辺の中でトップクラスに高いお店だ。天国のような満足感から地獄を覗き見るようであった。
 伏せたままの伝票の端をチラリとあげる。下から覗き込むように目を細めて見ると――目を疑うような金額が記されていた。
(……やべぇ、足りるのかこれ)
 財布の中の金貨を数える。伝票に記された額は五桁は余裕であり、貴族だったら六桁をポンと出しそうな額であった。
 血の気の引くクロバを置いて、一同は席を立つ。そして揃って声をあげた。
「「焼肉太郎さん、ゴチになります!!」」
 引くに引けないクロバ。勝者であり名誉を勝ち取ったというのに、その背は涙を流していた。
 寛治が、そんなクロバの肩を叩く。
「……ご入り用ならいつでも言ってください」
「グゥ……!」
 暗に金を貸すと言ってるわけだが、それは何か不吉さを感じさせる悪魔の囁きのように思えた。
 借りればどのような贄を差し出さねばならないのか。自己の尊厳が掛かっているような気がした。
 クロバがどのように答えたか。それは二人の秘密となるだろう。
 こうして、イレギュラーズは、最高の焼肉を楽しんだのであった。

成否

成功

MVP

クロバ・フユツキ(p3p000145)
傲慢なる黒

状態異常

なし

あとがき

 焼肉お疲れ様でした。

 MVPは名誉を勝ち取ったクロバさんに送ります。

 リクエストありがとうございました。とってもお腹が減るシナリオでした。

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