シナリオ詳細
<グラオ・クローネ2018>ハートフル・チョコレイト
オープニング
●あまいあまぁい物語
あまいあまぁいチョコレイト。
わたしとあなたと彼と彼女。
一緒に食べるのはだれとだれ?
小指を絡めて約束しましょ。
これは2人の秘密のお味。
●秘密のお約束をしましょう
「チョコレイトを作りに行きましょう!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がイレギュラーズたちを集めて声を張り上げた。
その音色は弾んで明るく、うきうきとした彼女の瞳はきらきらと輝いている。
彼女がもたらした情報は、とある村でのイベントだ。
グラオ・クローネに合わせて催される、特別なイベント。
昼間は多くの人々が集まり、村の中央の広間に設置された調理場でチョコレイトを使ったお菓子を作る。作られるお菓子は多種多様で、溶かして固める簡単なものから、ちょっと手を加えて本格的なものまで、自分に合わせたチョコレイト・スイーツを作ることができる。材料や道具はすべて揃っているため、手ぶらで参加できるのも気軽な要素となっている。
そして、その日の夜はお祭り騒ぎ。
縁を紡ぎたい者同士で、昼間に作ったチョコレイト・スイーツを食べさせ合う。
新たに繋ぎたい縁。さらに深めたい縁。一歩先に進みたい縁。
村の伝統として、こうして食べさせ合った者たちはさまざまな縁を紡ぐと言われている。
騒ぎに乗じてもよし、少し離れた場所で秘めやかに過ごすもよし。
夜の時間は好きなように過ごすことが出来る。
最後に、ユリーカがにこりと微笑む。
「ぜひ、みなさんにとって、良い日になりますように!」
彼女の笑顔を見て、イレギュラーズたちは思わず笑いあった。
- <グラオ・クローネ2018>ハートフル・チョコレイト完了
- GM名久部ありん(休止中)
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年03月04日 20時50分
- 参加人数30/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 30 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(30人)
リプレイ
●あまいあまぁい物語
あまいあまぁいチョコレイト。
わたしとあなたと彼と彼女。
一緒に食べるのはだれとだれ?
小指を絡めて約束しましょ。
これは2人の秘密のお味。
●ほんの少しのビター・スイーツ
その村には甘い香りが立ち込めていた。
今日はグラオ・クローネのお祭りだ。
この村ではささやかな、けれど盛大にその日を祝う。
そのため、村の中央の広場には、チョコレイト・スイーツを作るためのさまざまな道具や材料が取り揃っていた。
そこにまずやってきたのは旅団【路地裏カプリチオ】の面々だ。
「本日はグラなんとかという事でチョコを作ろうと思います!」
そう宣言したのは、ルル家だった。しかし彼女の状態はその高らかに爽やかな声明に比べて尋常ではない。
そう、嵌っているのだ。どろどろに溶けたチョコの鍋に。
「ええと……オーナーがチョコレートまみれになっているような気がしますが、あれは何かのパフォーマンスでしょうか」
「ものすごく熱いので出来れば助けてください」
クラリーチェの不思議そうな言葉に、ルル家は真顔で返す。
「とりあえずオーナー殿は後でちゃんとお風呂に入れて服も洗濯しておかないといけないね」
それと1人で厨房に入るのも禁止にしよう。そう言ってメートヒェンはひとり何度も頷いた。
「こういう時は皆の様子を見ながら……店長さんんんんっ?!」
普段自炊をしないため、そもそもお菓子の作り方がわからないことに不安を抱いていたジルも、その不安を吹き飛ばすほどルル家の状況を見て目が飛び出るほど驚いた。
「今助け……ぎゃぁぁぁぁぁっす!」
熱々の鍋に直接手を突っ込むという暴挙に及んだジルに二次災害が発生する。
そしてPandoraはそのチョコ鍋の周りでぴょんぴょんと兎のような動きで跳び踊っている。その様はまるで何かの儀式のようで、遠巻きに見ていた村人たちが何やら恐れおののいている。
「って、心配してたら案の定じゃない! 早くそこから出て! 妙な儀式みたいなこともしないの! もー、なにやってるのよ!」
ヴィエラがその光景に対して盛大にツッコミをいれる。
「ひとまず濡れたタオルで綺麗にしないといけませんね」
アンジェリーナが溜息を零しながら呟く。
それに連なるように、竜胆が同じく溜息を吐いて頭を抱えた。
「……あの子、この前手解きしたばかりなのに、何をどうしたらこんな事になるのよ、本当に……」
ひとしきり周囲を巻き込んでハプニングを起こしたものの、ようやくルル家は鍋から救出されたのだった。
「いいですか。今日はグラなんとかではありません。グラオ・クローネです。これは遥かな昔の2月14日――深緑における大樹ファルカウと幻想種の成り立ちに大いに影響を与えた出来事です。混沌に伝わる古い御伽噺として……」
アルプスがその惨事に対して呆れたように語り始める。しかしその語りも長々と冗長で、なかなか終わりを見せない。くどくどと続くその語りは、止める者がいなければ延々と続いていただろう。
そう例えば。
ルル家が忍法ギャラクシー焔式でドーンと盛大な火力でチョコを燃やすとか。
「夢見さん!それ、チョコレートは湯煎で温めるものです!! 直接火にかけたら大変な事になってしまいますよ!! しかも火力強ッ!!」
「あ、ごめんなさい! つねらないでください!」
「……不安だし、私はルル家についておいた方がいいのかしら?」
竜胆が頬に手を添えながら肩を竦める。確かに、このままルル家を放置すれば他の参加者にも迷惑をかけかねない。お目付け役が必要だろう。
それはさておいて、一方で他のみんなはチョコレイト・スイーツ作りに取り掛かる。
クラリーチェは日頃の感謝を込めて、チョコレートケーキを作ってみた。よく冷まして切ってみると、断面も申し分ないほど美味しそうな仕上がりだ。
メートヒェンはチョコを固めるための型をあらかじめいくつか用意していた。花に猫、兎にバイクや剣、そしてなぜかトカゲの型。これは本人もあるとは思っていなかったものだ。
そしてジルは小さな丸薬型のチョコに挑戦した。ラッピングなどは特に考えていなかったが、ひとつひとつを丁寧に、まるで薬のように紙に包んでいく。これは今日一緒に参加したメンバーへのプレゼントだ。
一方で、リースリットは緊張した面持ちでスイーツ作りに挑んでいる。あらかじめ調理方法は調べていたため、準備は万全だ。あとは自分の腕次第。戦うよりもずっとずっと緊張する。気持ち多めに作って、みんなで分け合いたい。そう思っていた。そして、叶わぬ願いと知りながらささやかに祈るのは、お父様の姿。いつか、と、そう願った。
Pandoraはニンジンを一口サイズに切り、チョコ鍋で煮立てた。そうして最後にもうひと工夫とばかりにさらにチョコでコーティングする。ニンジン・チョコレイトの完成だ。見た目はとても美味しそうだが、味の方はわからない。
「さすが、料理が出来る子達は違うわね。これ、美味しいわ。形が悪いのも食べちゃえば一緒よ、たぶん」
そう言ったのはヴィエラだった。ハート型のチョコをラッピングしながら、他のメンバーの作品を横目で眺める。その言葉を聞いた竜胆は、不格好でもそれもまた洒落込みだ、と微笑んでみせた。
「……たまには、大勢でこういう風にすごすのも悪くありませんわね」
アンジェリーナもみんなの手伝いをしながら、スイーツ作りにいそしんだ。持ち帰り用に一口チョコを作っている。出来栄えは上々で、小さいながらも美味しそうなスイーツが出来た。
その少し離れた場所でスイーツ作りにチャレンジしていたのは、【Chocolat Tiara】の面々だ。
紫乃は元の世界で販売されていた誰が見てもわかる義理チョコとして有名なそのチョコバーを再現しようと奮闘していた。
「だが紫乃はホワイトチョコの方が好きなのッ! ビターなヤツよりもっと甘いのが欲しいッ!」
「こんびに、って何アル? お菓子屋さん?」
「これ私のいた世界でもコンビニで見たことあるー!!」
風蘭と姫月が口々に、紫乃が作り上げたそれに対して興味を示す。
だが、気になるのは他にもあった。
風蘭が作ったチョコレイトである。
見た目は黒いチョコレイトに白いチョコレイトで笑顔マークを描いた愛らしいものだ。しかし、風蘭がもう一捻り欲しいと考えたが後の祭り。呪力を込めた札が貼り付けられたそれらは、ゲラゲラと笑いだしたのだ。
「あけびんのチョコはのーさんきうですなの」
「この笑顔……気持ち悪くない……?」
紫乃と姫月がその笑うチョコレイトを見て引きつった笑いをこぼす。
そして、姫月がようやく作り上げた一品は、すごかった。
「知ってる? 日本という国の『愛』って字だよ!」
正しくその通り。姫月の身丈と同じくらいの大きさのある『愛』だった。
「お姫ちんのチョコは愛が重い! というか金型がすげぇわ」
「漢字は知ってるヨ、ていうか元々ウチの字アル」
「あ、二人共食べる時は両端から二人で齧ってね!」
「これどんなポッキーゲーム!? 食べにくいぃぃぃぃ!!」
「食べやすい食べにくい以前に、この量は入らないアル!」
チョコレイト・スイーツ作りの広場では、阿鼻叫喚がよく響く。
●ささやかなハッピィ・スイーツ
その一角では、リオネルとセティアがスイーツ作りをしていた。
リオネルはファミリィみんなにチョコを渡したいが、お菓子作りの経験は少ない。それゆえ、セティアに助力を借りることにした。
「無理に難しいのに手ぇ出してられんからな。簡単なヤツで!」
「地元じゃお料理一度もしたことない腕前だけど、まじでぱない所、見せてあげる」
料理はしたことはないが、刻んだり味見をするくらいは出来る、と胸を張るセティア。チョコレイトを細かく刻む作業に集中する。どこか危なげな気配があったものの、チョコは無事に細かく刻まれた。それをリオネルが生クリームと一緒に丁寧に溶かしていく。色んな型のタルト型に流し込み、仕上げにココアパウダーを少々。あとは固まれば完成だ。
「味見は、得意だから、まかせて」
セティアが残ったチョコレイトを掬ってぺろりと舐める。その蕩けるような美味しさに、思わず、ぱぁ、と顔が明るくなった。
「よし、んじゃひとつ好きなの選んでくれ。アンタの分だ」
「ありがとう。一個もらう。リオネルさんの、やさしさ、ぱない」
そう言って、二人は顔を見合わせて笑いあった。
とある一方では、エトとティスタの姿があった。
エトは、自分よりもティスタに任せた方が美味しいスイーツが出来ることは重々承知だった。それでも、普段わがままを聞いて貰っている身として、このお祭りの日くらいは感謝の気持ちを伝えたい。そう思って、スイーツ作りに奮起した。
「えっとまずは湯煎にチョコを……え? 湯煎ってお湯に溶かす事じゃないの? 本当に?」
危なげなエトを見てティスタは少々ハラハラとさせられたものの、今日ばかりは彼女の従者としてそっと見守るべきだと身を引いた。
やがてチョコをうまく固めるところまで持っていくと、エトの表情も真剣なそれから徐々に頬が緩んでくる。
喜んでくれるだろうか。
そう考えるだけで、少しだけ心の奥が暖かくなった。
「……あの、受け取ってくれたら嬉しいの」
完成したチョコレイト・スイーツ。丁寧にラッピングされたそれを、ティスタへ差し出す。
「お疲れ様でした、お嬢様。確かにお嬢様のチョコは受け取りました、ティスタは幸せ者ですわ」
こうして大事にされているのですから。そう言って、彼女はそっと何かを取り出した。
「私も用意してあるんですよ、この日の為にちょっと頑張りました!」
ティスタがサプライズで作っていたスイーツ。それを受け取ったエトは、驚きながらも嬉しそうにしている。
「では、早速二人でチョコを食べましょうか?」
「ええ!」
そう言って、二人はお互いのチョコレイトの封を開けた。
「今回は材料が用意されて至れり尽くせりだから、凝ったものに挑戦しちゃうよ。地球のスイーツに刮目せよ!」
そう宣言したのはセララだった。材料がバッチリ揃っていて、何を作っても許される?ならば作るしか無いだろう。スイーツの王様、チョコレイト・パフェを!
生クリームを丁寧に立てて、チョコアイスにビスケットを添える。そしてフルーツとしてバナナをトッピングすれば、誰が見ても賞賛するであろう王様の完成だ。
「あらあら、お上手ね~」
スガラムルディがその王様を見て微笑む。その言葉を受けて、セララは少し照れくさそうに笑ってみせた。
スガラムルディが作ったのは、トリュフ・チョコ。ころころと可愛らしいそれらがテーブルに並んでいる。簡単にラッピングすれば、プレゼントとしての見栄えも抜群だ。
「よかったら受け取ってくれるかしら~」
「いいの? ありがと!」
セララが差し出されたチョコレイトを嬉しそうに受け取る。その笑顔を見て、スガラムルディはより微笑みを深くした。
「わ、私チョコレート作るの、というか料理全般苦手なんですけど……大丈夫かなぁ」
そう不安そうに口にしたのは、ユーリエだ。けれど、こういうイベントは気持ちが大事。それをよく理解している彼女は、一生懸命頑張る、と拳を握った。
「大丈夫ですか? それは、こうすると良いですよ」
「わわっ、ありがとうございます!」
そんな彼女の様子を見て、ティミが優しく声をかける。自身もそこまで料理上手という自負なないものの、誰かの役に立てるならば幸いだ。
ティミは以前は極度の人見知りで対人恐怖症に近しい意識を持っていたこともある。けれど、いまは違う。周囲に友達がいてくれたおかげで、笑顔も増えた。そんな人達に、お礼がしたくて。このスイーツ作りに参加したのだ。
そして、会場の隅の方では、幽邏がひとり黙々と作業をしている。作っているのは保存ができるチョコクッキーだ。手先の器用さからか、その作業はスムーズでよどみない。誰が見ても美味しそうなクッキーは、それがもったいないほど、幽邏だけの胃に収まった。
それをちらりと横目で見ていたのは純白だ。
誰に渡すという明確な対象はいないものの、いつまでも苦手なことから逃げ続けるのも何だと思って参加した。チョコレイトを溶かして固める程度なら、いくら苦手分野であろうとも可能だろうと感じられた。作る型は妖精と虎。普通のハートや星型と違い、なかなか難しいジャンルを選択してしまった。しかし、そのハードルを自ら上げたことに気付くのは、それが完成してからだった。
妖精はヒトデのように、虎は謎の角の生えた生物Aに。
「…………食べれば一緒だ、うん」
そう自分に言い聞かせた。
「本日はお邪魔致します、よろしくお願い致します」
村人たちに深々と丁寧にお辞儀をしたのは、アルファード。その丁寧な姿に、村人たちは、ようこそ、と笑顔で歓迎してくれた。
チョコレイト・スイーツと言っても種類は多岐に渡る。何を作ろうかと考えた結果、チョコレイトにドライ・フルーツやナッツを乗せたものを作ることに決めた。見栄えもよく、きっと贈り物としても最適だろう。
そうしていると、不意に近くにいた雪の手元が気になった。
雪は火加減がまったくわからないと自覚している。今までも料理をしたことはあるが、全て焦げついた。だが、ここには幸いにも器具も材料も揃っている。慎重に、丁寧にやれば……。
「そこは弱火の方がいいですよ」
「えっ、えっ」
アルファードが優しく声をかける。雪は慌てて火を調節した。そしてアルファードに対して礼を言う。もう少しで鍋の中が黒焦げになるところだった。
一枚のチョコレイト。それを作るのに普段の依頼ひとつ並の難しさを感じている。
緊張も相まって雪の手付きは危なげだったが、そこはアルファードがうまく手伝ってくれた。これで、少なくとも食べられるものは完成するだろう。
「おー、材料も道具もきっちりある。ふふふ。これならあれが作れるんじゃないか……?」
広場に設置されたブースを眺めて、ルーニカがにやりと笑う。
これだけの準備があるのであれば、あれが作れるのではないかと。
そう。高い高いチョコレイト・タワー。
塔のように力強くそびえ立ち、目にする者を圧倒し、笑顔にさせる力を持つそれを。
「今こそ僕の全身全霊をもって作成する時が来たようだ……!」
しかし、実のところ悲しいかな、ルーニカにそのような技術は無かった。
だが作れるかどうかじゃない、作るのだ。
「きみはチョコレイト・タワーを作るのか? すごいな」
ルーニカに話し掛けてきたのは、白秋だった。白秋もまた、普段作ったことのないスイーツを作ってみたいと思っていたのだ。ブラウニーやフォンダンショコラ。少し趣向を凝らして抹茶を使ったタルトなんかも美味しそうだ。そんなことを考えていた。
「そうだ! 僕の魔王と勇者としての勘がそう告げている……! ははは、ははは。気合入れていくぞー! おー!」
「元気だな……」
ルーニカの掛け声に、白秋は苦笑する。しかしそのやる気を見て、こちらもまた奮起できるというもの。ルーニカに続いて白秋もまた、スイーツ作りに取り掛かった。
●ひとくちでまるで夢のよう
空はすっかり日が落ちていた。夜の帳が下りて、普段ならば街の明かりが細々と灯る時刻ではあったが、今日はお祭りだ。広場には灯りが設置され、木々にはイルミネーションが連なっていた。周囲は明るく、みんなが笑顔でチョコレイトを食べている。
そんな中で、ルドルフはリュグナートに生チョコをプレゼントしていた。
「普段料理とか作ってるリューちゃんには敵わないだろうけどさ」
頑張って作った生チョコレイト。その味はきっと、ほろほろと蕩ける味わいであることだろう。
「さ、ルド様。というわけで折角の機会ですからどうぞ召し上がって下さいませ。不肖この俺が僭越ながらご用意させて頂きました」
打って変わって、リュグナートがトレイを差し出す。その上にはオペラ、ザッハ・トルテ、ムース、クッキー、タルト、エトセトラ。様々なチョコレイト・スイーツが用意されていた。
「リューちゃんのは……って、何でこんないっぱい作れるの!? いやすごいしどれもおいしそうだから有難くいただくけど!」
ルドルフは目を見張って驚いた。料理をすることはもちろん知っていたが、ここまで本格的なスイーツを、それも複数用意しているとは考えてもみなかった。
「ええ、決して俺以外の匂いがまだするのが気になるとか、甘ったるい香りで上書きしようとか微塵も考えていませんから」
しれっとリュグナートが言う。はは、とルドルフが引きつって何とか笑顔を見せる。外出時に偶然、という言い訳をしようと思ったものの、この従者には全てお見通しであろう。遊び歩いているのがバレている。これ以上怒らせないうちに謝ってしまうのが建設的だ。
「ああ、でも決して残さないで下さいね?」
「の、残さないようにって……やっぱり持って帰って食べちゃダメ?」
いくら美味しいスイーツとはいえ、この量をひとりで食べるのは難しい。そうは言ってみたものの、動けなくなったら俺の家に来ればいい、というリュグナートの一言で一蹴された。
そうして、ルドルフはリュグナートへ生チョコレイトを、リュグナートはルドルフへオペラを、お互い食べさせ合った。
より深い縁が繋げますように。
ほのかに甘い願いは、夜空に溶けて星を流した。
「これまた妙なイベントもあったもんだ。縁を紡ぐねぇてまぁ、趣旨としてはロマンチックで良いんじゃねぇの?」
黒羽が星の流れた空を見上げながら呟く。周囲はお互いに食べさせ合う者たちで賑わっていた。広場にはスイーツの甘い匂いが立ち込めている。こんな平和なお祭りがあるのも、たまにはいいだろう。そうすることで、平和、というものを認識できる。嗚呼、平和だな、と考えるための装置だ。そんなことを考えた。
「お、ユリーカ。何やってるんだ?」
「あ、黒羽さん! こんばんは!」
ユリーカを見つけて、話しかける。すると、彼女はぺこりと丁寧に頭を下げた。それからぱっと顔を上げると、笑顔で黒羽の手を引いていく。
「こっち、こっちに来てくださいです!」
ぐいぐいと手を引っ張られる。何事かと思う間もなく、黒羽はただ彼女の背中を追った。
「ほら、見てください!」
そこには、大きなチョコレイトの噴水があった。
中央のタワーから、チョコレイトが絶え間なく流れ出ている。
そして周囲にはマシュマロやいちごなどのフルーツが並んでいる。
「チョコレイト・フォンデュです! 一緒に食べましょう!」
「はは、これまた凄いな」
黒羽は思わず苦笑する。けれど、きらきらと目を輝かせるユリーカを見て、いちごを串に刺してやる。それにチョコレイトをたっぷりかけて、彼女の口元に持っていく。
「ほら。あーん」
「あー……ん! おいしいです!」
ユリーカは子供のようにぴょこぴょこと跳ねて喜んだ。
その笑顔を見て、再び思う。
嗚呼、平和だな、と。
「ほら、次は黒羽さんの番ですよ!」
「はいはい」
平和だ。こんな日が続くのなら、きっと明日も馬鹿にできないくらい平和なのだろう。みんなで笑いあって、幸せをわけあって……。そうして、未来に繋がっていく。
チョコレイトの夜はまだまだ終わらない。
誰もが笑顔になれる、そんな嘘みたいな現実を映し出して。
あまいあまぁいチョコレイト。
わたしとあなたと彼と彼女。
一緒に食べるのはだれとだれ?
小指を絡めて約束しましょ。
これは2人の秘密のお味。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。
この度はご参加いただきありがとうございました。
チョコレイトのお祭り、お楽しみいただけましたでしょうか。
もしもほんのちょっぴりでも心に残る思い出となりましたらば、幸い至極にございます。
素敵なひとときをありがとうございました。
次回もご縁がありましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
GMコメント
初めまして。久部ありん(キューブ・アリン)と申します。
ご閲覧いただきまして、ありがとうございます。
今回はグラオ・クローネ、バレンタインのイベントです。
以下の情報をご確認ください。
●参加する前に ― そのいち
【A】か【B】、いずれに参加するかを明記してください。
・【A】チョコレイト作り
昼間に行われます。
材料や道具はすべて揃っているため、あらかじめ準備する必要はありません。
好きなスイーツを作ってみてください。
・【B】食べさせ合い
夜に行われます。
仲間内で食べさせ合うイベントです。
初見同士でもよし、仲間同士でもよし、恋人同士でもよし、これから恋人へなる者同士でもよしです。
●参加する前に ― そのに
誰かと一緒に、あるいはグループで参加する場合は、必ず相手の【氏名】と【ID】、または【グループ名】を明記してください。
ここに不備があると迷子になって一人で参加してしまう可能性があります。
以上です。
ご縁がございましたら、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
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