シナリオ詳細
夢を詠む寓話
オープニング
●寓話『セレナータ』
いとしいいとしい人の為に奏でる小夜曲に合わせる様に、夢は紡がれる。
そう言ったシータにペトロは「どうしてそんなに嬉しそうに歌うの?」と訊きました。
「だって、だってよ。あなたの夢が叶うのだとしたらそれってどうして嬉しいことかしら。
わたしったら、それだけで舞い上がってしまうし、踊りだしたい気分なの」
シータはそう言って歌います。
ペトロは「おかしいの」と呟きました。
だって、シータというおんなの夢が叶ったわけではないのです。ペトロだったなら、夢半ばで敗れたかなしみを糸にして布を織りたい位に苦悩することでしょう。
それなのに恋だとか愛だとか。都合のいい一時の感情を永遠のように彼女は歌います。
「ねえ、ペトロ」
「なにかしら、シータ」
「わたし、この嬉しさを本にするわ。それにあなたの苦しみと悲しみもつれてってあげる。一緒にそんな感情、綴じてしまいましょう」
●
何時か聞いた御伽噺。その寓話を思いだしてからアレクシア・アトリー・アバークロンビー (p3p004630)は「セレナータの魔導書っていうのがあるの」と思いだしたように手にしていた絵本を膝の上に置いた。
「セレナータの魔導書?」
「そう。さっきね、ローレットのコルクボードにべたっと貼り付けられてた依頼書のひとつなんだけど」
アレクシアのオススメだという絵本を手にしていたシラス (p3p004421)は「ひょっとしてその仕事を受けたいって?」と彼女に聞いた。なんだかんだで共に居る時間が長い二人は『次の言葉を想像』できるのだろう。
「素敵だと思わない? 寓話『セレナータ』に出てくる魔導書が存在したなんて!」
曰く、恋と夢を叶える素晴らしい魔導書なのだそうだ。瞳を輝かせたアレクシアに「オーッホッホッホ! その言葉、聞きましてよ!」と指パッチンが響く。
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――のわたくしがその魔導書探しを手伝いますわー!」
おでをこぴかりと輝かせた御天道・タント (p3p006204)が胸を張った。
「恋を叶える。ええ、乙女には必要な事ではありませんか!」
「あら、タントにも叶えたい恋があるのかしら? それとも全人類の平和でも願って?」
くすくすと笑いながら椅子を軋ませ立ち上がったヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)。「クラースナヤ・ズヴェズダー」の司教は敬虔なる信仰心を胸に「しかし、魔導書というからには神の思し召しあってことですわね」と頷く。
「本?」
ぴくりと耳を澄ませたドラマ・ゲツク (p3p000172)。本の虫――ではなく、書架守は未だ見ぬ本という響きに「ご一緒してもいいですか?」と立ち上がった。
「恋も叶うんですってぇ、素敵じゃなぁい?」
「こ、恋は兎も角ッ」
くすくすと笑ったアーリア・スピリッツ (p3p004400)にドラマの頬が赤く染まり、ふいと視線が逸れる。恋――それは乙女ならば誰もが胸に抱く物だろう。
リア・クォーツ (p3p004937)は恋ね、と小さく呟いた。
「探しに行くのも楽しそうだけれど、その本ってどこあるの?」
「ええと……これは、見間違えかしら」
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク (p3p003593)は不安げにアーリアを見上げる。ミディーセラの言葉に「どれどれぇ?」と首を傾いだアーリアは、その視線の意味を分かったと言う様にぎこちなく笑った。
「これってェ……」
「『迷宮森林』の古代遺跡?」
声に出してリアはアレクシアとドラマを振り返った。幻想育ちの幻想種はそれに「がんばりましょう」と頷くだけ……なのだった。
- 夢を詠む寓話完了
- GM名夏あかね
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2019年09月20日 22時40分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
それは何時の日か聞いた御伽噺のセレナータ。寓話に出て来た『魔法の本』が存在しているすれば?
そしてその本が『恋を叶える魔導書』だなんて言われていれば――?
「オーッホッホッホッ! 恋を叶える魔導書…なんとも夢に溢れておりますわね!
良いでしょう! このわたくし!」
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「は! いつだって乙女の味方ですわーー!」
ドリームパフュームフレイムポーズ! を決めて見せたのはお馴染み『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)である。おでこをきらりと輝かせ、「それにしても」とタントは首を傾ぐ。
「ヴァリューシャ様がこういった依頼に関心があるとは意外も意外ですわ?」
「ふふ、だって気になるでしょう? 寝物語に聞いたセレナータが本当にあったかも知れないだなんて」
敬虔なる教派「クラースナヤ・ズヴェズダー」の司教。その教えを綴った聖書を手に『俗っぽい』ことを言う『祈る暴走特急』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は「他にも理由はあるにはあるけれど、まだ言えませんわね!」とそう『悪戯めかした』。
恋が叶う。タントがそう言ったその部分がどうにも頭から離れないままの本の虫、月曜九時のシンデレラ。『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は首をふるふると振る。
「御伽噺の中の、想いが形作った魔導書の実在、ですか……。
とても興味がそそられる依頼ですね。依頼者が『匿名』なのは少し気になりますが、本のことなら私にお任せ下さい!」
何を差し置いても本の事なのですとドラマが胸を張る。そう、これは御伽噺の中で『想いを綴じた』と言われた寓話セレナータの書。実在しているとなれば書庫守はぜひとも蔵書に加えたいという所だろう。
「ふうん。確かに聞いたことあるかもしれない御伽噺だわ。……?」
仕事だもの、とツンとした態度をとってみた『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)の隣で「お仕事よぉ~!」と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が笑みを溢す。
「ふふ、恋と夢が叶う魔導書なんてなんて素敵なのかしらぁ。
かわいい妹分はじめ恋する乙女達の為にも、おねーさん頑張っちゃうんだからぁ!」
恋が叶うと聞いたならば、と唇に指先宛てて、くるりとリアを振り返ったアーリア。「ちょっ」と思わず声を漏らしたリアは頬を赤くしてふい、と視線を逸らす。
「べ、べつに本を読みたい訳じゃないから! ちょっと、ちょーっと見てみてもいいかなって!
ちょちょちょっと! にやにやしないでよ! おねーちゃん!」
慌てるリアにアーリアが「あらあらぁ」と『お姉さん』な笑みを溢す。実は叶えたい夢はアーリアにもあるのだけれど――それは『秘密』なのだ。
「まあ……迷宮森林の。まあ、まあ……古代遺跡の。まあ、まあ、まあ……魔導書。
それも、おとぎ話の中にでてきたものなんて。気になるものが盛りだくさん」
きょとりと、美しい月色の瞳を細めた『キールで乾杯』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)に「ミディくんも興味があるのぉ?」とアーリアは瞬き問い掛けた
「とても楽しみで……だって、世界が綴じられた本なのですよ。夢に恋に憧れに……こころがつまったひとつのせかい。本物なら、こぼれおちたものだけでも願望機になるのかもしれません……すてきな物語だと思いますわ」
そう。そえは想いを綴った魔法の書。ミディーセラの云う通り『本物であるだけで願いを叶える効力がある』だけでも強力なものには違いない。野放しはできず、願望機として興味をそそるものはある。
「寓話に出てくる魔導書! 遺跡探検! これはもう興奮するなっていうほうが無理だよ!」
何時もよりもハイテンションである『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。明るい蒼穹に嬉々とした色を乗せ、ふんすふんすとやる気を漲らせている。
「ね!? シラス君!」
「……へえ、寓話の本ね。魔法で恋やら夢やら叶う世話ないぜ。
与太話だろうけどアレクシアが行きたいっていうなら、ね」
他の誰でもないアレクシアが信じて居て、アレクシアが行きたいと言うならば『夜闘ノ拳星』シラス(p3p004421)に断る余地はない。アレクシアが瞳を輝かせ「がんばろうねー!」と気合MAXな調子を見ながらタントは未だ、ヴァレーリヤの『本意』を探っていたのだった。
「あっ、それはそれとしてヴァレーリヤ君の願いは私も気になるな!」
おでましですわね、と告げてヴァレーリヤは首を振る。残念だけど『今は秘密』ですわー。
●
「なんの話だったかしら。…ええ、ええ。そう。罠に気を付けて、でしたっけ」
ミディーセラは気もそぞろに周囲をきょろりきょろりと見回した。ふんわりとした調子の彼にアーリアは「さて迷宮! 罠に仕掛け、な探検は初めてだからわくわくしちゃう!」と嬉しそうに笑みを溢す。
「みでぃーくんは罠と言ったら何があると考えるのかしらぁ。あ、水分補給しなくちゃ」
水分補給と称して酒をハイペースで飲み続けるアーリア・スピリッツおねいさん。
「そうね……例えば壁を触ると岩が飛び出す……?」
「あらあ、私はね。この前、いちゃついたら爆発しちゃう怪人に出会ったのよねぇ……。
壁を触るとだめ。あるあるだわぁ! 絶対にこういうのは押しちゃだめよね……って押したの誰ー!?」
「……あら?」
ミディーセラです。魔法が関連したりするなら得意だけれど肉体でアレソレとなると苦手なのですと言わんばかりのミディーセラが首を傾げればアーリアが「へべれけ根性に任せなさい!」と彼の手を引き走りだす。
「岩!? なんだこの遺跡、罠で出来てるみたいだ。何だってこんな馬鹿みたく厳重なの。
これは例の本、ひょっとするんじゃないかな。本物のレジェンドってやつ?」
後ろから音を立てて迫りくる岩を避ける様に走るシラスはアレクシアに手を引かれ壁際へと避けた。
「まっ、まずは『小手調べ』ってやつ? 遺跡も悪い奴ね。先に行っておくけどさ! 全力で逃げる系とかあたし無理だから!」
フィジカル値3である。リアの叫びを聞きながらアレクシアとタントが顔を見合わせにやりと笑う。
「よーしタント君! 宝探しをしたときみたいにばっちりいこう!
『最悪ちょっと怪我しても回復すればなんとかなるよ』作戦!」
「ええ、ええ! アレクシア様! あのとき身につけた我ら最強ヒーラーコンビ必勝の型! 『回復しながらゴリ押し作戦』ですわね!」
タントとアレクシアの言葉を聞きながらリアは「それ全然解決になってなくない?」と呟いたのだった……。
「ふっふっふ、探し物こそは私の隠された特技の一つ! 張り切っていきますわねー!
ほら! この壁、周囲と微妙に色が違いますわね 押してみたら何かが起こるかも? でも罠かも知れないので慎重に……えっ、あのちょっと!?」
そのヴァレーリヤの言葉に「なるほど!」と頷いた最強ヒーラーコンビ。同時にボタンを押したのだった。
「「あ」」
まるで本棚から同じ本を取り出すときに手が重なったかのような、そんな反応だった。
「このお馬鹿ばかばか! どうしていきなり押すんですのー! ぺしゃんこになってからでは遅いんですのぶぎゅっ!」
べしゃりとこけたヴァレーリヤに「ヴァレーリヤ!?」とリアが慌てて振り返る。
「……ええい、何やってんの! ほら立って! っていうか! 皆楽しんでない!? あたし、マジで死ぬ……!」
フィジカル3にはきついのだ。
「……ごめんなさーい! 逃げろーーー! シラス君!」
手を引いて逃げるアレクシアに連れられながらシラスが難を逃れる。
「みでぃーくん! ぼんやりしちゃぺちゃんこよぉ~!」
慌ててミディーセラを抱え上げたアーリアが走り始めた。
「行き止まり? ……いいえ、これは扉ですね。スイッチは……随分と高いトコロにありますね……。お任せ下さい! 遠隔術式はお手の物なのです!」
ドラマの一撃で扉が開けば突然矢がひゅ、と飛び込んでくる。
「ちょあー!」
鶴のポーズで飛んでくる矢をはたき落としてドヤ顔をしたタント。
それを見ながらシラスは「今の凄い」と頷いた。
「見て。あれは石像?」
岩に追いかけられてぜいぜいとしていたリア。その後ろではデコを輝かせながらるんるんで進むタントが居た。
「なんか、この石板に振れれば魔力かなんかで動かせるみたい。……チッ、めんどくせーわね」
2mのチェス盤でクリアすればいいらしいのだが――態度が悪かった。
「ねぇ、チェスって相手のキングを討ち取ればいいってルールよね?
そうよね、よし……くたばれ! レオン・ドナーツ・バルトロメイーーーー!!!!」
フィジカルは3だが物理攻撃で何とか超えたのだった……。
その様子を眺めながらアーリアは「進みましょ~!」と棒でかつかつと地面を確認し続ける。隣のミディーセラが「あら」と呟くそれに首を傾げば、アーリアの体が宙に放り出された。
「ああああああ!?」
「あら……何か踏んだら落ちていってしまいました」
凡そミディーセラのせいだがきょとりとしている。
「もしもし、生きていたらお返事下さいましー! 返事がありませんわね。もう諦めて先に進むべきかしら?」
諦めの早い司教なのである。「死んでないわぁ~~」とへべれけパワーで復帰したアーリアを見てミディーセラが「大丈夫かしら」と近寄れば、その隣でヴァレーリヤがにんまりと笑っている。
「ぶ、無事で何よりですの。貴女をどうやって助けるか相談していましたのよおほほほ」
すい、と視線を逸らしたヴァレーリヤが何かを見つけたと言う様にバツの悪さから逃れる様に宝箱へと走り寄っていく。
「あっ、宝箱ですわよ! 目当ての物はこれではなくて?
こういうのは早い者勝ち!宝物は私が頂き……あれっ? 手が抜けませんわー!」
シラスはふと、アレクシアの隣から顔を出して「なぞかけみたいだぜ」と石板を眺めた。
「『1人、また1人と逃げ出してしまった小さな奴隷。
新しくやってきた大きな奴隷は決して逃がさない。
揃えて繋いで何年も何十年も働かせてやるとしよう』……」
「恋心ですわー!?」
違うらしい。タントは「あらっ」と小さく呟く。アレクシアは閃いたと手を上げる。
「謎掛けはー……ニワトリ!
卵が小さな奴隷でニワトリが大きな……あれ、どっちが先だ?」
アレクシアの答えも違うようだ。むむむと唇を尖らせていたドラマは「シラスさん!」と手を上げる。
「シラスさん、それは『時計』でしょうか?
最近錬達の方で流行っているでじたる? 式のだと当てはまらないようですが……」
さあ、答えはと言えば――シラスはドヤ顔で「ははーん、閃いたぜ! こいつは歯だ!」
どこかで、扉が開いた音がした。
●
それは最後の試練だった。
――汝、想いを叫べ――
「お、思いの丈を……お、大声でですか!?」
ドラマ・ゲツクのスキル一覧に特筆すべきものがあるので記載しておこう。
スピーカーボム:半径100メートル以内全てに届く大きな声を出します。この声は苦痛やダメージにはなりません。
本人の(心のパンドラの)苦痛やダメージとは誰も言ってはいないのだ。
「ええ、任せてくださいまし! 飲んでも無くならないお酒の泉が欲しいですわー!」
「それは趣旨と違って居そうですわ!」
本日の司教様は俗っぽさばっちりなのだ。タントがツッコミに回ったそれにヴァレーリヤは違う!? とショックを受けた様に彼女を見遣る。
「え? これって全員言わなきゃ開かない系……? ホント? ホント?? ま、まじでやるの? うー……」
本当は誰か一人でもよかったけれど――みんなやるよね? ねっ!?
「好きな人に伝えたいことを叫べばいいんだね、任せて! 大声でいくよー!」
アレクシアがにっこりと笑ったそれにアーリアは「そうねぇ」と笑った。
「きっと、リアちゃんもドラマちゃんも知られたくない事もあるでしょうし、おねーさんが大声でいくわよ~」とやる気満点のアーリアなのである。
「わたし、こう見えてとてもよくばりなのです。とても。あれも、これも手に入れたくて。
伝えたいことなんて、選べないぐらい。たくさん、たくさんです。好きな人? 好きな人は……たった一人ですけれど。その分つまっているのです。ぎゅっと」
難しいと尾を揺らしたミディーセラに「なら、おねーさんがみでぃーくんの代わりに叫ぶわあ」とやる気満載。ちなみにこの時皆に聞こえるなんてへべれけおねーさんは忘れているのです。
「シラス君ーーー! いつも遊んでくれてありがとうー! 大好きーー!」
「ずっと手を繋いでいられますように!」
重ねた言葉、試練を前にしてアレクシアと手を繋いでいたシラスはそう叫ぶ。
「みでぃーくん、だいすきよぉーーー!!」
――「あら」とミディーセラが顔を上げた。
「レオン君! す……す……き、き……らいじゃないです!」
「は、伯爵……ガ、ガブリエル様ぁー!! 貴方のお姿も! 貴方の強さも! 全部全部まとめて!す……尊敬しておりますー!!」
――ちなみに、誰にも負けじと声を張ったアーリアは「あっ」と隣のミディーセラを見遣り、スピーカーボムを爆発させたドラマが「あああっ」と叫び、そもそも『す』とまで続けてしまったリアは羞恥に打ち震えているのだった。
余談だが、恋愛とは別に「友人としての好き(そうであるかは定かではないのです)」を伝えたらしきアレクシアが「シラス君も同じで嬉しい! ……ふう、なんでかちょっとドキドキした!」なんて笑ってくれるのだから、シラスだってなんだか居ても立っても居られないのだった。
「愛を包み隠すのはわたくしの性には合いませんの! いきますわよ!
クローネ先輩! 愛しておりますわーーー!!」
クローネ先輩、見て! 愛を包み隠さないタント様を!
遺跡の試練を無事にクリアしたのか、大仰な音を立てて扉が開き、その奥には一冊の本が鎮座していた。
●
「――で?」
アレクシアが抱き締めている魔導書をちらりと見たドラマはそれが魔的なものではないと感じ取っていた。無論、それはミディーセラだってそうだ。
「見つけられなかったのは少し、残念ですけれど。
きっと、まだどこかに眠っているのかもしれませんね」
中身を見遣ってヴァレーリヤは「あーあ」と肩を竦めた。シスターとして余りにも『俗っぽい』彼女は表情を曇らせ「残念ですわあ」と語尾を伸ばした調子で呟く。
「これで好きなだけお酒を飲めると思いましたのに」
――本当の願いがそれだったのなら魔導書も「偽物でよかったですわあ」と思って居る事だろう。
「そんな『残念』がるようなもんなのか!? ちょ、ちょっと、俺にも貸せって!」
握りしめたままの手をパッと話したのは僅かな気恥ずかしさだったのかもしれない。アレクシアが探したいというからという理由で探しに出た筈のシラスが我先にとヴァレーリヤから本を受け取り中身をぱらぱらと確認していく。
「……そんなもんだよな、分かってたって」
「そ、そうですか。叶わない……。ま、まぁそんな凄い恋と夢が叶う魔導書なんてモノが本当にあったなら私の耳にもそれとなく入ってきているでしょうし、こんなモノですよね……」
それが『偽物』であるなら仕方がないとでも言う様に視線を逸らしながらドラマは「分かってました」と繰り返す。
シラスの手にしていた本をアレクシアと眺めたタントはアレクシアを顔を見合わせる。
「ええ! ええ! ……確かに、恋を叶える導きの書ですわね!
如何しましょう? ドラマ様、要りますかしら?」
「んー、そうだね。恋を叶える導きの書だっ。私もいつか欲しいって思うときが来るのかな?
あっ、読みたい人はどうぞどうぞ! ドラマ君は未だ見てないもんね?」
アレクシアとタントに『進められて』藪から棒だと言いながらドラマが魔導書(らしき恋の指南書)を手にする。
「わ、わ私は……」
ぱらぱらぱらと勢いよくめくりながら瞬間記憶で内容を覚える。『大人の男性に翻弄されないテクニック5選』? いえ、レオン君とならこちらが大人で――いえいえ、違います。
「……要りませんよ別に!! ……あらあらー!? リアさん興味深々じゃないですかとりあえずリアさんが持っておくと良いのではないですか!!」
「えっえっ!? ま、まあね! これが報酬だし!?
ね、ねぇドラマ? ちょっとあたしにも読ませてもらっても?」
欲しいなんて言っていないとリアがドラマから受け取って勢いよく確認していく。『食いしん坊な彼の胃袋を掴むなら』? 確かに食いしん坊だけれど――……。
「ほ、ほら、ドラマ? 持って帰ったら!?」
「いえいえいえ!? リアさんこそどうですか!?」
大慌ての乙女二人を見ながら大声を発した事で大人の困り顔を見せていたアーリアは「結局恋も夢も叶えるのは自力で、ってことなのかしらね?」と微笑ましそうに眺める。
ちら、とアーリアを見上げてミディーセラは「さあ」と肩を竦めた。
「そもそも、この依頼をおくってきたのが件の魔導書だったのかもしれない……とか。よくあるお話ですこと」
――真実は如何に?
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでしたイレギュラーズのみなさん!
この度はリクエストありがとうございました。
主に皆さんが叫んでる所、太字で表示したいレベルですね!いやあ、楽しいものです。
今回はニセモノでした……が、本物があるかもしれませんね!
GMコメント
リクエストありがとうございます。
恋と夢が叶う素敵な魔導書ですって!
●成功条件
魔導書を手に入れろ!
●セレナータの魔導書
寓話『セレナータ』にてシータとペトロ(※登場人物)が作ったという感情(こころ)の本。
それが夢と恋への憧憬を孕んだことで魔導書に変化したと言われています。
迷宮森林の古代遺跡の奥に眠ると言われるそれを手に入れましょう。
(※PL情報:実際は『セレナータ』を元にした恋愛ノウハウ指南書でした。恋が叶いそうでしょ?)
●古代遺跡
深緑は迷宮森林。その中の古代遺跡を調査しましょう。ある程度人が調査したあとであり、そこにあるけれどいろんな罠や仕掛けがあって手を焼いたので特異運命座標に魔導書を確保してきて欲しい! という依頼が『匿名で送られてきました』
遺跡の罠は
・転がってくる岩 ・迫ってくる壁 ・スイッチを押すと飛んでくる武器 などオーソドックスなものから
・鷲の彫像(動く)とのバトル ・岩の巨人に追いかけまわされる ・本の魔物が飛んでくる
などなど……多岐にわたります(こういう罠がある!という決め打ちOKです)
ドタバタ楽しい探索を楽しみましょう
・遺跡の試練
好きな人や伝えたいと『一番思って居る』事を未成年の主張のように誰か叫べという者です。
叫ぶのはーー! 一人だけでもーー! いいけどーー! 皆叫ぶよねーー!?
●その他
こういう罠があればいいな、こういう試練があればいいな、というのは大歓迎です!
メルヘンな魔導書を探して沢山の冒険をしましょう!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
(PLの)想定外の事態は絶対に起こりません。
では、楽しい本ゲットを!
Tweet