シナリオ詳細
あの貴族が卵生ってことは、いつも無精卵うんでるんだよね?
オープニング
●一行目からトバすぜ! ついてきな!
「海洋貴族『白無垢大権現様』は全長3mの烏骨鶏だが立派に島を納めている優秀な政治家でもあらせられるのだ」
グルメ貴族サウザント・リキュール氏は両手を腰の後ろで組みながら、眉間に皺を寄せて立ち止まった。
「彼女の治めるメンドリー島の平和なこと……そして彼女の生む無精卵の美味なこと……!」
なんか雲行きがあやしいなと思ったイレギュラーズたちだが、依頼人の話を遮るのもアレなので一旦ショウ(p3n000005)のほうをみた。
ショウはリキュール氏から出されたまんじゅうをもっふもっふ食べてるだけでなにも言わなかった。つまり『いまは見に徹しろ!』ということである。もしくは『こしあんまんじゅうおいちい』である!
「むろん、同じ海洋貴族としてレディのうみたてたまごをパクるなど言語道断。マナーに反する悪行である。
しかしあの卵ご飯にかけてバター醤油で食べるとほんと美味しいからァ……!」
顔のパーツ全部を中央に寄せてキューって顔をするリキュール氏。
ショウのほうを見ると、湯飲みに口をつけてどこか遠くを見ていた。
『貴族のやることに口を出すな』という意味である。もしくは『ぎょくろまじデリシャス』という意味である。
「我らは耐えきれず過去七十七回パクったのだが我を含め部下全員の面が割れてしまっていまや島中出入り禁止なのだ……!」
ザッと一斉にショウのほうを見る。
ショウはタピオカドリンクを太いストローで探りながらすこすこ小刻みにすっていた。『貴族同士の問題はローレットに関わりなし!』という意味である。もしくは『タピオカだけスプーンですくって食べるのってダメなの?』である。
「そこで諸君……! メンドリー島の白無垢大権現屋敷へ忍び込み、白無垢無精卵を一パックだけパクってくるのだ……!」
●盗みにも色々あらぁな
依頼人の去った料亭の和室。残り少なくなったミルクティーをずぞぞーってやりながら、ショウは皆を振り返った。
「今回の仕事はシンプルだよ。貴族の屋敷に『突然の暴徒!』を装って騒ぎを起こして職員の注意を大幅に引きつけつつ、裏から忍び込んだ別働隊が卵貯蔵庫から白無垢無精卵を一パック盗み出してくるんだ。
けど、途中で割れたり盗みに失敗したりってリスクもあるからね。
念のため五つある貯蔵庫のそれぞれにトライしたいところかな。といっても、相応のスキルなしに挑むのは危険だし、最大一人一箇所が限度だろうから、挑めるひとだけ、できるだけ、ってことにしよう。少なくとも一パック手に入ればいいわけだしね」
ショウはそこまで言うと、最後にコップの端っこに残ったタピオカをすこっと吸い上げて、皆に手を翳した。
「じゃあ、後は頼ごっほ!?」
喉のへんなとこ入ったらしい。
- あの貴族が卵生ってことは、いつも無精卵うんでるんだよね?完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常(悪)
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年09月16日 22時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●卵の思考実験
「最近ユリーカが僕に距離を置いている気がする」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)はノートにお絵かきをしながら呟いた。
ユリーカちゃんから生まれた卵を割って目玉焼きにしてアトが食べるという図解であった。
「卵丼を食べたがっただけなのに」
「うん……うん……妥当じゃね?」
『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)が葉巻きを加えたまま振り返った。
途中までフォローしようって気分になっておいて、一言目から既に放り投げた。
「大体純種なのに卵を産まないのが悪いんだ! そうだよねエマァ!」
「ひいぃ!? こっち来た……!」
我関せずの顔でお茶を飲んでいた『こそどろ』エマ(p3p000257)がのけぞってお茶をこぼした。
ちゃんとした所が知りたかったら公式Q&A362番あたりを見てね。
「もうエマが産んでよ!」
「産めませんよ!?」
「じゃあキドーを煮込んでよ!」
「『じゃあ』の意味がわかんねえよ!」
「うわあああああああん!!」
アトは椅子から転げ落ち、叫びながらじたばた暴れた。
「たべたいたべたいー! 親子丼にしてたべたいー! 頑張ろうみんな! 頑張って食べよう!」
「おいやめろ、その目的に俺まで巻き込むな」
フレイ・カミイ(p3p001369)がアトを追い払うようにシッシッとつま先で蹴り転がした。
うわーんと言いながら縁側の外へ転がっていくアト。
フレイは気を取り直すようにコーラ飲料の瓶を飲み干すと、ワンスローでくずかごへと投げ入れる。
「ったく……『レディの大切なものを奪いに行く』とか言うからめかし込んできたっつーのに、なんでこう……こうな……」
依頼書をあらためて見てみると、全長3mの雌鳥が描かれていた。
海洋貴族『白無垢大権現様』。年齢不詳種族不明。
「ねえ、でもさ……」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)が白無垢大権現様のプロフィールを見てサーッと青ざめた。
「マダムじゃなく『レディ』って書いてあるってことは、白無垢大権現様……独身なんだよね。ねえ、種族は? ウォーカーなの? 飛行種なの?」
「え、しらねー。貴族だし純種なんじゃねーの」
『猫派』錫蘭 ルフナ(p3p004350)がなんでもいーじゃねーかって顔で煙草(五本目)に火をつけていたが、言ってからふと気づいた。
「あ、ちげーや。ウォーカーでも貴族になるケース全然あったな」
頭上にほわほわーっと浮かぶリーゼロッテ嬢(ウォーカー)の顔。
より一層悩みを深めるルフナ。
「え、えー……じゃあ、あの、例えるとだよ? 僕たち今からリーゼロッテ様の卵を盗み出そうとしてるの? HENTAIなの?」
「やめろよ喰いづらくなるだろ」
「このひとナチュラルに食べようとしてる!」
「まあまあ」
彼岸会 無量(p3p007169)が穏やかな笑みで両手を翳した。
っていうか無量はどんなときもこの顔をしてるのでほぼ無表情みたいなもんだが。
「私たちだってたまにお仲間を食べるじゃありませんか。食材適正持ちを」
「あえて触れないようにしてたのに……」
「で、もう割り振りは決まったの?」
メロンソーダにアイスクリームのっけたやつをつんつんしながら、『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)は作戦表のチェックリストの『卵盗むマン』のところに丸をつけていた。
「もう未婚貴族の卵だろうがゴブリン煮込みだろうが、なんでもいいからパクって来ればいいのよ」
「ゴブリン煮込みはやめろ」
「あとなんでここ料亭なのにタピオカミルクティーとかメロンソーダとかあるの。ファミレスなの?」
「笑止。ここに僕の食べたいものはない。僕はレディを親子丼したいんだ」
どっかにぶつけて頭から血ぃ流したアトがヌッて縁側から出てきた。
「言い方」
「あとナチュラルに依頼主を食べようとしないで」
「じゃあ卵だけでいい! エマ! うんで!」
「だから『じゃあ』の意味が分かりませんよぅ……!」
足に飛びついてくるアトをげしげし払いのけるエマ。刺しますよ! と言いながらナイフを振りかざす。
「エマ! 僕の(玉)子を産んでよ!」
「イヤー!」
血しぶき効果音。
ことほぎは煙草(六本目)に火をつけて吸い込むと、頭から血を吹き上げるアトを背に歩き出した。あとに続く無量。
「さーて、話がややこしくなる前に片付けっか」
「もう充分ややこしいですしね」
そうやって料亭を出て、馬車に乗り込むイレギュラーズたち。
目指すは――。
●時間を稼げば卵がとれる
「っしゃ! まずは俺らの出番だな!」
フレイはスパンと自らの拳を叩くと、馬車を降りてひとり白無垢大権現屋敷へと歩き出した。
ジャパニーズ武家屋敷って感じの門構え。
左右には槍を持った衛兵が立ち、『何やつ。ここは白無垢大権現様のお屋敷なるぞ』みたいなことを言っていた。
「へえ、そうかい」
フレイはニヤニヤと笑いながら、両手をポケットに入れてチャラチャラとした足取りで門へと近づいていく。
が、直接手は出さない。およそ15メートルという半端な位置で立ち止まり、尻ポケットから火薬筒を取り出した。いわゆるフィリピン爆竹というやつで、二十本ほどの小さい加薬筒を導火線がたどっていき連続で破裂させるというものだ。
殺傷力は皆無。しかし――。
「投げつけられたらたまんねーよなー!? オラー!」
火をつけ、投擲。
門前で鳴り響く爆竹の音に、門番のみならず屋敷内の衛兵たちが手に武器を取って飛び出してきた。
「誰だテメー!」
「またリキュールんとこの奴かテメー!」
「出禁つっただろうがテメー!」
「何言ってるか全然わからんが俺は花火をやってるだけだ!! そして滅茶苦茶に機嫌が悪い!!! 俺を止めたかったら美女を連れてこい美女を!!」
更に爆竹を取り出しては投げるフレイ。
「何言ってんだテメー!」
「この屋敷に白無垢大権現様以外の美女がいるかテメー!」
「えっ美女なのかよ雌鳥だろ!」
「美雌鳥なんだよテメー!」
すごく痛そうな棒を振りかざし突進してくる衛兵。
フレイは即回れ右。
「殺されたくなかったら俺を追ってこないことだな!! ガーッハッハ!」
高笑いしながら猛ダッシュで逃げ出した。
「逃げたぞ! 追えー!」
「白無垢大権現様の美しさとかわいさを分からせてやれ!」
何人かの衛兵が出て行ったのを見計らって、秋奈は茂みの中からにゅっと顔を出した。
「『どうせお前も陽動係なんだろ。名乗り口上からの豪鬼喝なんだろ』って思ったんじゃないかしら。ふふふ……甘いわね」
頭に刺していた枝葉を放り捨てると、秋奈(スニークスタイル)が立ち上がった。
「ついに私も、スニークミッションをこなす時が来たのよ! 早速GO!」
屋敷の塀をよじ登って越えると、第一貯蔵施設の窓めがけてジャンプ。
両足からの鋭いきりもみドロップキックで窓をかち割り屋内へと侵入した。
「なんの音だ!?」
「であえであえ!」
衛兵がダッシュで屋内を駆け回る――が、秋奈を見つけることはできない。
刀を二本こう、逆手につっかえるみたくして秋奈が通路の天井に張り付いていたからである。
『石でも投げ込まれたのかな?』と言って衛兵が戻っていくのを確認。よーく耳を澄ませて足音が遠ざかるところまで確認すると、音も無く床に着地。
「慌てて様子を見に来たようだけど……私にタダ貯蔵庫の場所を教えたようなものよ」
音も無く走り、貯蔵庫の扉に手をかける。
あかない。
力を込めてドアノブを回す。
あかない。
ドアノブに『おねがい☆』する。
あく。
ドアノブは秋奈の女子力に屈してどっかに転がっていったが気にせず侵入。
軽く60センチくらいある卵を担ぎ上げると……。
「え、でかっ! えっなんで? でか!」
秋奈は軽く困惑しながらも来た道を戻り、施設の脱出を謀ったのだった。
●ねこちゃんねこちゃんねこちゃ……ねこじゃない!
三毛猫に赤い鈴つきの首輪をつけて、よいしょと抱っこするルフナ。
「平和な島だっていうからには治安もいいんだろうし、衛兵も子供の頼みをむげにするような人たちじゃあないよね」
ルフナはうんうんと二度頷いてから、抱えたネコをそいやーといって塀の内側へと投げ込んだ。
「ウワーネコチャン!? ナンデネコチャン!?」
塀の内側から聞こえてきた衛兵の悲鳴に『すまんな』って顔をしたあと、ルフナはほっぺをぱしぱし叩いて気合いを入れた。
そして。
「ふえーん」
今時そんな泣き方する? ってくらい露骨な声をあげ、屋敷の門へとやってくるルフナ。
門番も『なにやつ!?』までは言ったが、泣いてる子供に槍を構えるほどスレてはいないようで『どうしたんだいボクー』って言いながら身を屈めてくれた。
「僕の猫がお屋敷の中に逃げていっちゃったの」
目元をぬぐいながら言うルフナに、門番は『そっかー』て言ってから門の方へ戻っていった。
なにやら内側の衛兵と話をしているらしい。
ややあってから、門番がルフナのもとへ戻ってくる。
「中でおじさんがネコちゃんが入ってくるのを見たらしいから、捕ま――連れてきてくれるって。ここで待ってるかい?」
「うん。待っ――」
「トッタドー!!」
門をバーンと開き、衛兵さんが赤い首輪をした三毛猫を高く翳した。
「早っ」
「うん?」
「ううんなんでもない! ありがとうおじさん!」
手を伸ばしてネコを受け取ろうとするルフナ。
そんなルフナの顔をじっと見るトッタド衛兵。
「ボク」
「なあに」
「もしかしてだけど、リキュールんとこのスパイとかじゃないよね?」
「…………」
ンーって言いながら三歩後じさりするルフナ。
置いておいたコイン式パカ田倉くんカーに百円玉(?)をじゃこーんと投入すると、カートに飛び乗りもんのすげー速さで走り出した。
「うわあの子スパイかよ!」
「ファミリアーは泥棒の基本だぞわかっとけテメー!」
「追え追えー! であえー!」
衛兵たちが馬に飛び乗ってルフナを追いかけていく……のを、木の上から確認するアトとことほぎ。
「おー、いったいった。忍び込むなら今だな」
「逃走用の罠とか仕込む余裕あるかな。ロープで転ばせるとか、衛兵馬屋の土をゆるくするとか」
「100%みつかるわ。つかそれに左右されるくらいギリギリになること自体もうアウトだろ」
「だめ? わかったよ! じゃあことほぎが卵産――」
「オラァ!」
次の台詞を言う前に頭をマジカルステッキで殴りつけることほぎ。
「そういう手間かかるやつじゃなくて、もっとサッと仕掛けられるやついっとけ。消化器のピンをひっかけるとかなんかあんだろ」
「あっそれ採用。じゃあやってくるね!」
わーいと言って(頭から血ぃ流しながら)馬屋に忍び込んでいくアト。
ことほぎは『まあいいか』と呟いてから、自分が担当する貯蔵施設へと忍び込んでいった。
「よ……っと」
塀を乗り越え、軽やかに屋内へ着地。
「ウワ!」
「うわ?」
したところで、振り返る。
塀に寄りかかって煙草吸ってた衛兵と目が合った。
慌てて武器に手をかけるか煙草を捨てるかそれとも携帯灰皿に押し込むかで判断に迷った衛兵に、ことほぎは急速に詰め寄って相手の口を手で塞いだ。
「シーッ」
唇に指を立て、網膜に魔方陣を展開。
口づけが可能なほど顔を近づけて催眠術を仕掛けると、目をとろんとさせた衛兵から距離をとった。
「よーしよし、むやみに殺すにゃ面倒く――可哀想だからよ。ここで大人しく煙草吸ってろや、な?」
新たに自分の煙草を取り出し相手にくわえさせると、頭をぐしゃっと撫でてからその場を離れた。
で、それからすぐのこと。
ネコ程度の小さな式神(十五年くらいの年季が入ったマスコットキャラ)を作り僅かに空いた窓から屋内へ放り投げる。
ややあって、すぐ近くの扉が内側からガチャリと開いた。
煙草をくわえたネコだか鏡餅だかわかんねーやつを踏みつけて消すと、ことほぎはそのまま貯蔵庫へと侵入。
して、から。
「まあ、雌鳥が3メートルあるんだもんなあ……」
くそデカい卵をよいしょと担いで、現場からの離脱を開始した。
一方こちらはアト。
下準備を終えた彼は足音を殺しながら貯蔵施設へと侵入。
パルクール移動を用いて窓からするすると入り込むと、いくつかの手順を経て貯蔵庫へと到達した。
「おお、これが……噂の純種の卵。ユリーカたちも産むのかな、これ」
ごくりとつばを飲み込み、60センチくらいあるくそでか卵を抱え上げる。
『1パック』という指定通り、卵一個ずつは透明なプラスチックパックで包装されていた。
よーし持ち帰って提出だ。そしてあわよくば食べよう。とか思って、ふと違和感に気づいてパックを見返してみる。
パックにはハッキリと『賞味期限』が記載されていた。
「……………………自分も食べるんじゃん!」
無精卵を貯蔵するってのはそういうことよな。
●食レポに命を賭けろ
門番がこぞって出て行ったせいで、その日非番だったはずの衛兵がかり出されていた。
ふわーあとあくびをしながら壁によりかかり、同じく立てかけた槍をテキトーに掴んだ状態で立つ。
おそらく門番って呼べる最低限の仕事っぷりを見せつけていた彼……のもとへ。本日三人目の珍客が現われた。
「もし」
張り付いた笑顔で語りかける女。
もとい、無量。
彼女は謎のプレッシャーを放ちながら一歩また一歩と門番へと近づいていく。
その異様さに思わず槍をとった門番――の眼前にシャッて急接近すると、両手を彼の両肩に乗せて思い切り掴んだ。
「ヒイッ!」
さて。
ここから始まる無量のマシンガントーク。どうかしてるっていうかよく出来ているので是非コピペでお楽しみ頂きたい。
いいか、いくぞ。
「私先日初めて白無垢大権現様の卵を頂きました。私の故郷でも一年に数度卵を一つ、麦飯に乗せて醤油とかつぶしを掛けて頂いたりしておりまして。故郷は貧しかったものですから、生で頂ける卵などは上等も上等で風邪を引いた時等にしか頂けずそれはそれは美味であったと覚えております。しかしこちらの白無垢大権現様の卵はその思い出すら霞む程で是非、是非にこの思いを伝えさせて頂かねばと思い馳せ参じた次第で御座います。何より卵の甘味、私卵掛けごはんは卵と醤油の調和に薬味を添えて楽しむものと心得ておりましたが今や恥ずかしい限り、真に美味なるものには余計な物は不純物でしかないと痛感致しました。満月の様にまあるく黄色みの強い大権現様の卵を炊き立てのご飯の湯気が包み隠す様はまるで中秋の名月、そしてそれが混ざり合う様はまるで男女の営みの如く艶やかでございます。調味料を掛けずとも黄身とご飯の甘味が絡み合い咥内に広がる至福に私が如何に酔いしれたかご存知でしょうか?いえこの地に住まう貴方方に彼の美味を問うのは栓無き事、然してこうして想いを吐き出さねば居られぬ程にあの卵は私の心を打ったのです。そもそも卵が半年も保つ等は理外の範ち(文字数!)」
「ヒイッ……!」
遠くから様子を見ていたキドーは無量の鬼気迫る食レポに引いていた。
これを至近距離からくらった門番がどうなったのかは言うまでも無かろう。
「えひひ……隙だらけですねえ……。聞きつけた他の衛兵が見物に出てますよ……」
エマは引きつった笑い(いつもの笑顔)を浮かべ、慣れた様子でぴょぴょんと音も無く屋敷の敷地内へ潜入。
貯蔵施設の扉を指でピンとはじくだけで解錠すると、キドーに手を振って屋内へと忍び込んでいった。
ぶっちゃけ3mほど先に見回り中の衛兵がいたにも関わらず、まるで気づかれる様子が無い。恐らく、暫くは盗まれたことすら気づかないだろう。
「やるねぇ……さすが」
キドーはケタケタと笑い、屏の上から屋敷の屋根へと跳躍。音を殺してごろんと着地すると、そのまま自分が担当する貯蔵庫まで這うようにして進んでいく。
暫く進んだら石を投げて衛兵の注意をひき、自分は全く別の場所から侵入をはかった。
屋根から逆さにぶら下がったまま窓の内鍵をサムターン回しの要領で開き、滑るように侵入。
――したかと思えば、通路の天井側を壁につっかえる形でわしわしと静かに進んでいく。
貯蔵庫前に衛兵が立っているのが見えたが、なあに……。
「悪いが金のために死んでくれ」
天井からストンと落ちたキドーに喉を裂かれ、衛兵は声も上げずに絶命した。
その一方で、エマは神がかった気配の消し方で衛兵たちから逆スルーを受け続け、もうなんか普通に『ちょっと借りていきますよー』くらいの自然さで卵を持ち出していた。
鮮やかすぎてかえって言うことが無いくらいの優秀さである。
「さーて、盗んだ卵はこのくらいでいいですかねえ」
パカダクラによいしょと卵を積み込みむエマ。
その隣では、キドーが騎乗犬の頭をわしわし撫でていた。
「屑ちゃん! んー、いい子してたか?待ってる間拾い食いとかしてねぇだろうな! どれどれ……クッサ! カメムシくっさ!」
とかいいながら、エマとキドーは盗んだことすら気づかれずにその場を逃走。
残るメンバーも多少あとから見つかったり見つからなかったりしたが、アトの仕掛けや逃走時の工夫によって無事に脱出。
後に料亭には巨大卵五個分の『白無垢大権現様御膳』ができあがったという。
めでたしめでたし?
成否
大成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
今夜はオムレツにしようかな!
あまりの濃密さに盗みと陽動パートが9割以上を占め、逃走パートが軽く割愛されております。
リザルトはそれを反映してのボーナスとなっております。えらい!
GMコメント
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『海洋』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
■貴族の卵を盗み出せ!
このシナリオでは『陽動班』と『泥棒班』に分かれます。
陽動には2~7人、泥棒には1~5人いればよいでしょう。結構人数の幅は広めなので、好みで選んでもよいでしょう。
・陽動班
陽動の仕事はそのままズバリ、屋敷の人たちの注意をひいてひいて引きまくること。
そして尚且つひきすぎないこと。
人数がいるなら一人一スタッフくらいの割合で捕まえてしつこく離さないでいれば充分役割を果たせるのではないでしょうか。
いっそ、屋敷に生卵投げつけてスタッフが棍棒もって飛び出してくるのを待つのもいいでしょう。
ガチでケーサツ呼ばれたら困るので、スタッフだけで対応できるなあくらいのラインにとどめておくのがコツです。
(例えばスタッフを惨殺したりするとケーサツ案件になります)
・泥棒班
白無垢大権現様の屋敷には無精卵を生んだ曜日に分けてひとつずつ貯蔵庫が設けられています。
この表現からおわかりかと思いますが白無垢大権現様は週五日の割合で卵を産み、卵は大体半年もつというフシギ生物なのです。そういうギフトなんだとおもう。でもって主人の卵なので大事に管理されています。
不届き者が盗みにこないように、それぞれの貯蔵庫には見張りがついています。
この見張りがゼロになることはありません。(表の騒ぎが大きくても、最後まで警戒するやつは一人くらいはいるようです)
隙を突いてそっと忍び込んだり、見張りを黙らせたり、いっそ戦って殴り倒したりして卵を盗み出しましょう。
盗みには入れるのは色々な問題から『1PCにつき1箇所まで』とします。
■ずらかれ!
盗んだことは割とすぐにバレます。屋敷のスタッフもまあそれなりのスキルを備えているのでいつまでもばれねえってことはないようなのです。
そんなわけで、皆さんは盗んだらすぐに撤退せねばなりません。
陽動担当も頃合いを見てサッと逃げ出しましょう。(多分関与したこともすぐバレます)
※馬に乗ったまま戦闘する場合回避と防御にいくらかペナルティがかかります。これは『軍用馬(かそれ相当のアイテム)』『騎乗』『騎乗戦闘』といった要素で軽減できます。
※『馬車』を用いる場合使用者がアクセサリーアイテムとして装備している必要があり、自動的に馬が引いているものとします。ただし馬への搭乗や貸し借り、普通やらないような応用等は不可とし、馬車に同乗できる人数は御者含めて3人までとします。
※今回に限っては「俺が馬だ」「バイクは俺だ」といった自分が乗り物系のウォーカーは自動で『軍用馬』を使用したのと同じペナルティ軽減がおこるものとし、味方を騎乗させられるものとします。また細かい説明ははぶきますが、移動判定や機動力計算が省略されたりします。(おおむね不自然なことはスルーし、できそうなことはできる仕様です)
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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