PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ニュー・ソルジャー・キッズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●傭兵団『灰猫』の問題児達
『傭兵』の首都ネフェルスト郊外には『灰猫』(グレイキャット)という傭兵団の本部がある。
 その名の通り、団長のグレイシャドウという灰色の猫獣人が団長を務めているのだ。
 創業理念は「猫のように気ままに生きる。猫のように気高く生きる」である。

 毎月、『灰猫』には新入りの傭兵が入って来る。
『灰猫』はそんなに大きな団体ではないので、団長自らが新米達に教える事も多い。
 だが、傭兵団の運営も楽しい事ばかりではなく、時には辛い事や大変な事もある。
 例えば、毎月、それなりに問題児が出るのだ。

「はぁ……。また、こいつらかよ!!」
 グレイシャドウは部下達から報告書を受け取り、ざっと目を通すと苛立った。
 それもそのはず、問題児の中でも飛び抜けた問題児が先月入って来たのだ。
 しかも1人のみならず、4人もいるのだから本当に手が掛かる。

「で、まずジェッシーか。彼は、魔物討伐で中衛のガンナーを任されていたはずなのに、戦闘開始と同時に逃亡してパーティ全体が敗走、と……。
 そして、フレアか。彼女は、魔物討伐で後衛の弓使いの位置にいながら、弓矢を引かなかった、だ? 連携を拒否して、仲間が怪我をした、と……。
 さらに、ケイトも。彼女の場合は、どんなに簡単な討伐依頼でも拒否を続けているのか? 引きこもりかぁ?
 最後に、アックスだ。彼は、護衛依頼等、誰かを守る系の依頼を進んで受けるまではいいが……。毎回、ぼこぼこの重症判定で負けて帰って来て、足手まといになっているだと!?」

 はぁ、ダメだこりゃぁ、とグレイシャドウは報告書を机に叩きつけて頭を抱える。
 そして、教官達をにらむ。
「おい、おめえら、何だよ、この様は!? ちゃんと指導していてこれなのかよ!?」
 食って掛かる勢いだが、教官達は、ごめんなさい、精一杯やっています、と平謝りだ。
 だが、最終的に責任問題は団長に回ってくる。彼が組織のトップなのだから……。

「よし! 今回は、特別教官制度を使う!」
「な、なんと!?」
 教官達は声を揃えて上げて驚いた。ついに、切り札を使う時が来たからだ。
「そう、あの制度だ。改善の見込みが全くない問題児達に対して、一時的に他の組織の教官から指導をして貰う特殊な教育方法を使う! 外部からの刺激を入れる事で内部の閉塞感を打破するあれだ!」
 しかし、特別教官制度を使うには、外部から優秀な先生を連れて来るという難題がある。
「実は、俺の古い仲間にローレットの情報屋がいてな……。あいつに頼んで優秀な先生達を送って貰おうと考えている……」

●キミ達、先生にならない?
 今日は『黒猫の』ショウ(p3n000005)がなぜか機嫌が良いらしい。
 ローレットのギルドに集めたあなた達にアイスティーを奢ってくれた。
「さて、早速だけれど、依頼の話をしてもいいかな?」
 わざわざ冷たくて美味しいドリンクを奢ってくれたからにはそれなりの訳がある。
 きっと、大変な依頼の話なのだろう……。
「まあ、大変と思うかどうかはキミ達次第だと思うよ? で、本題に入るけれど……。突然で悪いけれど、先生になる気はない?」
 先生? 色々な意味があるが、まさか、教師の類になって何かを教えるのか?
「うん、察しがいいね。実は猫獣人仲間で『灰猫』という傭兵団を率いている男がいてさ。今、新米傭兵を臨時で教育してくれる特別教官を探しているそうなんだよ。で、オレはキミ達を推したいと思うんだけれど?」
 なるほど、しかし、なぜ、特別教官?
「ははは、そうだね、特別教官とはまた特殊な待遇だよね? うん、ずばり言っておこう。今回の相手は問題児だ。しかも普通の問題児ではなく、それこそ外部の特別教官の指導まで必要になってしまうレベルの問題児だよ。だからこそ、キミ達に白羽の矢が立った訳さ」
 ショウは、その問題となる子達4人分のプロフィールが記された紙を渡してくれた。あなた達は、その紙とにらめっこしながら、ちょっと考えてみる……。

 ところで、イレギュラーズになってから誰かに戦い方を教えた事はあっただろうか?
 もしかしたら、今回の依頼は、誰かを教える事で何かの気付きを得られる良いチャンスかもしれない。

GMコメント

●目標
 特別教官となって傭兵団『灰猫』の問題児達を鍛え直す。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
『傭兵』首都ネフェルスト郊外に傭兵団『灰猫』(グレイキャット)の本部があります。
 今回、皆さんは特別教官(先生)として『灰猫』本部まで赴き、問題児達を教育します。
 日中は本部にある施設で自由に訓練して、夜はここの寮に無料で宿泊できます。
 主な訓練場所は本部の道場が使えます。訓練道具も一通り揃っていて借りられます。
 野外で実戦の訓練をした方が良い場合は、沙漠地帯で魔物NPCとも戦えます。
(今回、魔物の戦闘データは事前にない為、野外でやる場合、お互いにアドリブ入れます)

●NPC紹介
 鍛え直すべき問題児は4人います。
 8PCの参加を想定していますので、2人でペアになって、教える子を1人選びます。
 以下、問題となる4人のNPCを紹介します。

・ケース1「逃亡癖があり、依頼で失敗ばかりするのをどうにかしたい」
 名前:ジェッシー
 種族:獣種(猫)
 性別:男
 年齢:10歳
 性格:真面目だが臆病
 レベル:1程度
 クラス傾向:銃士
 経歴:首都郊外にある傭兵の家の子。父みたいに身を立てる為にも傭兵になりたい。
 本人コメント:いらいが上手くこなせないっす。こわい、どうしたらいいっすか?
 団長コメント:依頼で、途中で逃げ出す事が多い。当然、依頼は失敗ばかりして皆の足を引っ張る。敵の倒し方とかを何かしら学ばせてはどうか? 自信さえつけば……。

・ケース2「仲間が信頼できない。仲間と連携を取りたくない」
 名前:フレア
 種族:獣種(猫)
 性別:女
 年齢:10歳
 性格:優しいが人間不信
 レベル:1程度
 クラス傾向:弓使い
 経歴:首都で商売をする小さな商家の子。家族や家業に反発して傭兵になりたい。
 本人コメント:なんか、みんな信用できないのよね。どうして力を合わせてたたかうの?
 団長コメント:後方支援であるが依頼で連携を取ってくれない。それで依頼が失敗する事が多い。少なくとも、仲間を信じて戦う戦い方を教えたいのだが?

・ケース3「そもそも戦いたくない。この道で合っているのか?」
 名前:ケイト
 種族:獣種(猫)
 性別:女
 年齢:11歳
 性格:平和的だがぼおっとしている
 レベル:1程度
 クラス傾向:魔法使い
 経歴:首都郊外の孤児院の子。孤児院が貧乏な為、傭兵を志願。
 本人コメント:戦いが嫌いです……。お金がありません……。でも戦うしか……?
 団長コメント:家の事情でやむを得ず傭兵に。だが、傭兵になった以上は傭兵として働き、戦うべきだが、その心がまだまだ未熟。依頼も全然受けてくれない。自分自身と向き合うきっかけでも与えてはどうか? 最悪、違う道へ進んで貰ってもかまわない。

・ケース4「少しでも強くなりたい、守りたい。だが、おっちょこちょい」
 名前:アックス
 種族:獣種(猫)
 性別:男
 年齢:11歳
 性格:元気溌剌だがおっちょこちょい
 レベル:1程度
 クラス傾向:戦士
 経歴:キャラバン等を転々として『灰猫』が身元を引き受けた。本人は強い傭兵志望。
 本人コメント:うおー! 俺は、守りたい! 守るため戦いたい!!
 団長コメント:いわゆる孤児であり最終的にうちが引き受けた。本人は弱い立場にずっといたみたいなので何かとか誰かを守りたがる。だが実力が伴っていない上におっちょこちょいで依頼をよく失敗する。方向性を示してあげられないだろうか?

●GMより
 今回は、皆さんに先生になって頂きます。
 傭兵団の問題児達を相手に青春してみましょう。
 夜空に輝く星になれ! グッド・ラック!

  • ニュー・ソルジャー・キッズ完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年09月07日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ロゼット=テイ(p3p004150)
砂漠に燈る智恵
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

リプレイ

●ジェッシー
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)はジェッシーのプロフィールを事前に知っていたが、内心複雑だ。
(まだまだ幼い子どもといえ、ラサでは独り立ちをせねばならないのですねー。賛同はしませんが、せめてこの環境でも生き残っていけるよう、お手伝いをさせていただきますわー)
 ジェッシーは臆病だ。先生を見ても物陰に隠れてしまう。ユゥリアリアは指導といえば、弟や妹を昔教えたぐらいだ。どう接するべきか迷っていた所……。
「この子は臆病な子みたいね~。自信をつけて貰う為に、一緒に射的の練習をしてみたらどうかしらね?」
 もう一人の特別教官である『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)が助ける。自称おばさんで百歳越えのレディが微笑んで手を差し伸べるとジェッシーが出て来た! どこか母にでも似ていたのだろうか?
 実は、今回の特別教官役に彼女自身、最初は戸惑いもあった。
(えっ、おばさんが先生……? んふふ~、何だか照れくさいわね~。とはいえ、これは子供達の将来を大きく左右する問題だもの。素敵な先生になっちゃいましょうね)
「よろしくおねがいしまっす!」
 ジェッシーは元気に挨拶する。根は真面目な子なのだ。

 レストはギフトで呼んだ鳥の足にロープを括り付けた。
 さらにロープの先には射撃の的が括り付けられている。
 鳥がぱたぱたと飛び回り、ロープの先の的もひらひらと空中を舞う。
「は~い、ジェッシーちゃん! 鳥さんを追って、的を狙って撃ちましょうね~」
 一方、ユゥリアリアは訓練用の空気銃を構えて岩陰に隠れる。
「走っては撃ち、撃っては走る。それをずーっと続けていただきますー。的は鳥さんと移動していますのでちゃんと狙ってくださいねー。時々、敵役のわたくしが岩陰から撃ちますので、ご注意くださいませー」
 説明を受け、ジェッシーは「がんばりまっす!」と叫んだ。

 さて、訓練スタート!
 ジェッシーは的を狙って空気銃を撃つがなかなか当たらない!
 ユゥリアリアからの銃撃を何発も受けてしまう。
 途中で嫌になってジェッシーは泣いて逃げ出した。
 それをレストが追い駆ける。
「おばさんもね、お仕事で怖いなぁって思う事はあるのよ? けれど、仲間を置いて逃げてしまってはいけないわ。だって、信じて一緒に行動してくれた子に怖い思いをさせてしまうんだもの……。それって可哀想でしょう? ね?」
 そう説得されてしまうとジェッシーも考える事があったようだ。
 涙を拭いて訓練に戻った。
 やがて……。
 何とか1発、的に当てられた!
「まあ! 上手上手~! よくできました~」
 レストが手を叩いて褒めてあげた。褒めて伸ばす方針である。
「これでおわり?」
 ユゥリアリアはにこりと首を横に振る。
「どんなに疲れていても、体が反射的に動くようになるまで、ですわー。どんな時でも反射的に動けるという自信さえつけば、あとは自分で学んでいけると思うのですー」
「ひえ~!」
 青くなるジェッシーだったがそこで事故が起こる。
 魔鳥が空から降りて来たのだ!
「あらー? これも訓練ですかしらー?」
 いいえ、とレストが首を傾げる。
「はぐれ魔物かしらね? 訓練は中止だわ。追い出すわよ~」
「ぼく、やりまっす!」
 折角の機会だ。ジェッシーも加えて3人で魔物と実戦になる。
 向かってくる魔鳥をレストが引き付けてパラソルでぶっ叩く。
 ジェッシーは後ろから援護射撃だ!
 ユゥリアリアが最後に衝撃波を撃ったら、魔鳥はどこかへ飛んで行ってしまった。
「か、勝ったっす!」
 ジェッシーは大喜びだ。先生方も素直に褒めてあげた。

 本日の訓練に対してユゥリアリアは以下のようにまとめた。
「能力は比べることにあまり意味がありません。個性を伸ばす方が重要ですものー」
 レストも頷いた上、今後のアドヴァイスをする。
「ジェッシーちゃんは危険に対して、とても敏感なのね。でもそれは強みにもなりうると思うわ。怖い思いをしない為に人一倍考える事が出来るんだもの。将来は皆の為に安全で的確な作戦を考える指揮官を目指してみるのはどうかしら?」

 後日、ジェッシーは『灰猫』の若手指揮官の一人として活躍する事になる。
 特別教官との訓練は、彼の指揮官としての始まりの一歩だったと言えよう。

●フレア
「折角だから、喫茶店でご飯食べながらやろうか?」
『月の旅人』ロゼット=テイ(p3p004150)がフレアに提案する。
「え? いいけれど?」
 戸惑っているフレアに『いいひと』ヨシト・エイツ(p3p006813)がキラリと笑って答える。ゴツイ見た目に反して、なんかいい人っぽい。
「ま、戦いの話なんて、なんだ? 飯でも食いながら楽しくやろうぜ?」
 小さな者を和ませるカリスマの彼はほんわかとしたオーラを放っていた。
 ふふ、とフレアが笑う。

 皆で楽しくハンバーグを食べ終えた後、ロゼットが咳払いする。
「本題だけど、なんで人と協力しないといけないのか分からない、って話だっけ?」
 紙とペンも取り出す。いよいよ訓練の話だ。
「うん? そうね。教えて」
「戦いで1番大変なことはなんだと思う?」
 フレアは悩んだ末、答える。
「仲間を信じる事?」
「うん。それも大事だ」
 ヨシトが笑顔で相槌を打つ。ロゼットも否定はしない。
「この者はね、『時間』を考えに入れるのが1番大変だと思うんだ。例えば、弓を引く時間」
 ロゼットは紙上で丸から丸に線を引いた。
「同じだけの時間、相手も動けるんだよ」
 そして片方の丸から横に矢印を引いた。「避けられた」の意味だ。
「手の数が同じだと、どうしてもうまくいかない。でも、誰かに動きを止めてもらえば、もしくはたくさんの矢で攻撃出来れば、相手の時間を削れるわけさ」
 紙上の戦場では味方側に丸が増え、線が引かれる。
「こういう変化が一瞬で起こるのが戦いなんだよ。……って言ってもすぐにピンと来ないか?」
 フレアは、う~ん、と悩んだ。
 そこでヨシトがとある紙を取り出してフォローに入る。
「ほら、ギルドからの依頼だ。砂蟻の討伐依頼があるんだぜ。今から外出てやらねぇか?」

 砂蟻は通常の蟻に比べてずっと大きい。しかも数もいる。
「勝負だ、砂蟻!」
 ロゼットが名乗り上げ、戦闘開始!
 猫科のサンドムーンは踊るように短刀を振り回し砂蟻の前衛を倒していく。
「そっちへ行った!」
 砂蟻の何匹かは前衛を抜けて後衛へ向かう。フレアに突進して行く蟻もいるが……。
「落ち着きなフレア。一発二発じゃ俺は倒れねぇし、オメェさんに攻撃も通させねぇ。じっくり構えて、しっかり当てな。……信じてるぜ!」
 ヨシトがフレアを庇ってくれたのだ。砂蟻に食われてちょっと痛そうなヨシトだが、キラリと笑う。
「やってみるわ!」
 フレアが砂蟻に向けて弓を引く。
 なかなか当たらなかったりするが、ヨシトはあえて指摘せず心の中で応援する。
(相手を子供だと見なさず、一人の戦友として信じることで初めて信じてもらうことが出来るだろうよ。そうして前衛や『守ってくれる』存在の重要性に気付くことが出来れば……)
「それ!」
 矢が命中して、ヨシトと奮闘中だった砂蟻が倒れた。
「カカカッ、やるじゃねぇか! いい一矢だったぜ」
 フレアはこの調子で砂蟻の数を減らしていく。
 ロゼットは先程の座学を証明するかの如く、フレアに活躍の場を多く与えた。
 時間差戦術の実戦だが、砂蟻は弱くて数がいるので丁度良い練習相手になった。
 たまにヨシトからの回復や援護攻撃も入りつつ、砂蟻は全滅した。

 実戦も終わりロゼットが本日のまとめを話す。
「実はこの者は、信頼は七割打算で出来ていると思っているんだ。それ言うなら、生き死にも損得計算だけれどね」
 ヨシトも同僚のドライさに感心してカカカッと笑う。
「それもまた一つの正解だな。色んな奴の考えを知れば、人を見る目も鍛えられるだろうさ。そういう意味ではフレアの慎重さはいいことだぜ?」

 後日、フレアは『灰猫』で後方支援の名手として名を上げる事になる。
 ローレットと『灰猫』の共同作戦という場で、この3人が再会を果たすのはまた別の話。

●ケイト
 おどおどしているケイトに『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)が優しく話し掛ける。
「僕も元々どこにでもいる庶民だったけれど、急に召喚されちゃって戦うことになったんだよ。戦うのが怖いっていう感覚はなんとなく分かる気がするよ」
 俯いているケイトに『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)が好々爺の笑みで語り掛ける。彼の肩の上には小鮫のポチがぴょこぴょこしていた。
「戦う事が嫌なのは全然構わんよ。ただいつか、大切な誰かを守れるように色々と探してみようかのう? まずはお互いの自己紹介からじゃ」
 ケイトの悩みはプロフィール通りだった。孤児院にお金がなく出稼ぎをしなければならないが、仕事が貰えたのは『灰猫』だけであったようだ。魔法の素養が少しある為、それなら傭兵の仕事が良いだろうと言われて現状に至るらしい。
 ニーニアは変化を入れる為、質問をする。
「好き嫌いに、得意なこと苦手なこと色々教えてよ。そこから、ケイトちゃんがやりたいことも見えてくるかもしれないよ?」
「え? 好きや得意? ……特にないです。あ、嫌いと苦手は……戦う事です」
 話が行き詰る。潮が別の角度から質問をする。
「楽しかった事、心に残っている事、誰かに喜んでもらえた事、やってみたい事。今までになかったかのう?」
「ない……です」
 そうか。ここまできっぱり言えるぐらいだから相当自信がないのだろう。
 潮は年の功から場の切り替えという案を思いつく。
「ここは郊外じゃったな? ちょいと町の方まで歩いてみようかのう?」

 オアシスの池周辺までやって来た。
 ニーニアもそろそろ話を再開する。
「そういえば、ケイトちゃんは孤児院ではどんな事して過ごしてたのかな? 孤児院の生活での経験も活かせることあるかもしれないよ?」
 潮は、こうも聞く。
「もし孤児院が行ける距離にあるなら、今から皆で行ってみようかのう?」
 ケイトは泣きそうな顔で首を横に振った。
「ごめんなさい……。孤児院の話は……したくないんです……」
 どうやら聞く所によると、孤児院は借金をしていてそう遠くない内に潰れるとの事。それでケイトが外ですぐに仕事を見つけ独り立ちしないといけなかったらしい。
 いよいよ手詰まりだ。でも特別教官達はあきらめない。
「なら、せめてわしの昔話でも聞いてくれんかのう? 他人の過去の経験が役に立つ事もよくあるんじゃよ」
 これにはさすがにケイトも、嫌です、とは言わず、黙って話を聞いてくれた。
「ギルドの依頼の話をしようかのう? わしは、得意分野の海や水辺で戦う仕事を受ける事も多いが、旅館の手伝い、猫の捕獲、お芝居、お祭りの補助といった戦闘以外の仕事もした事があるんじゃよ。そうじゃ、戦闘系以外の仕事なんてお勧めじゃな?」
 ニーニアも潮に続いて楽しそうに話す。
「そうだね? 怖いのに無理に戦うのも、それはそれで危ないしね。非戦闘系の仕事がいいんじゃないかな? 魔法使いなら前に立って戦わなくても、傷ついた人を治療するなんてこともあるよ……」
 と、3人が話し込んでいると、あろうことか、銃声と悲鳴が聞こえて来た。
「おらおらあ! 道あけろや! 金出せや!」
 池前の商店街を襲う盗賊3人組が突如現れ、襲撃していた。
 治安のあまり良くないこの辺りではたまにある光景だ。
 ケイトの相手中だが、さすがにイレギュラーズの2人は黙って見過ごせない。
「これ、若造! 覚悟はいいかのう?」
 潮は錫杖を振り回し最前線に立って盗賊の相手をする。ポチは隠れた。
 一方、路上には刺されたり撃たれたりした人達が血を流して倒れていた。
 ニーニアが回復の神秘で怪我人を助けようとしたら……。
「大丈夫……ですか!? 今……助けます……死なないで!」
 ケイトが癒しの光で怪我人の1人を手当していた。しかも真剣に。
 ニーニアから思わず笑みが零れる。
「やればできるんだね?」
 なお、盗賊は潮に討伐された後、当局へ引き渡された。

 事が終わり、本日のまとめに入る。
 ケイトにある事を気付かせる為に特別教官達が最後の教鞭を振るう。
「さっき怪我人を手当して分かったでしょう? ああやって人の力になることもできるんだよ?」
「一度決めた職業を貫き通さないといけない道理などない。何かを始めるのに遅すぎるという事はないからのう。わしみたいにな」

 後日、ケイトは『灰猫』に辞表を出して、病院のヒーラーとして再就職した。
 特別教官達からの一押しが判断の決め手となったようだ。

●アックス
 特別教官の話を受けた時、『チアフルファイター』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は昔の自分を思い出し、期待を胸に抱いていた。
(新米の傭兵クン達かー。ふふっ、懐かしいな、アタシの孤児仲間の子達は今頃どーしてるかな? ケド先生なんて初めてだなー……)
 その一方で『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)は懸念もあった。
(ふむ、傭兵団の問題児か……。子供でも、こうやって傭兵をしないと生きていけないというのは世知辛いものだな。何とかフォローしてやれないものか)
 だが、アックスの登場により期待も懸念もぶっ飛んだ。
「うおお! 教えて下さーい! どうすれば俺は、守れるのですかあー!」
 ミルヴィはまず、言ってやりたい事があった。
「アンタが仲間を守りたいのはわかった。それでアンタが他より偉くなるなんて大間違い! 仲間はアンタに守られるためにいるんじゃない。仲間だってアンタを守ってくれてるの。それを忘れないで。
 それにアタシはね、戦いが嫌い。傷つけるのはもっと嫌い。だから敵も味方も守るために戦うの。馬鹿げてるって言われても戦うの。全部を失わせたくないから。それがアタシの守る心意気と覚悟って奴!」
 アックスは唖然とした。ゲオルグは咳払いした上で伝えるべき事を伝える。
「守るといっても色々な形がある。前に出て、敵の攻撃を引きつけることで仲間を守ることもあれば、仲間を敵の攻撃から庇うことで守ることもある。見方を変えてみれば、敵の数を減らしたり、敵の特技を妨害したりすることだって仲間を守ることに繋がるだろう。アックスはどういう形で守りたいのか?」
 アックスは即答する。
「何もかもです!」
 あちゃあ~、と思ったが、ゲオルグは問題児へ語り掛ける。
「しっかり考えてみるといい。体は1つしかないからあれもこれも出来はしないぞ?」
 ゲオルグはある書類を取り出して提案する。
「ギルドから砂熊の討伐依頼を預かっていてな。今から沙漠の魔物相手に実地訓練を行うぞ?」
「おっす!」
 張り切って行くアックスだったが、ミルヴィは「ちょっと待ちな」と引き留める。
「その砂熊との戦闘だが、アタシは、一切の装備を身に付けずに非戦闘用の普段着のままでいるな。襲われても技術を使った防御は一切せず、アンタに任せる!」
 アックスは一瞬、呆気に取られた。
「は? なんでまた?」
 そこでミルヴィのギフトが発動する。幸運の約束が一瞬、輝いた。
「アタシ達が信じたアンタがアタシを守ってくれる事を信じてる」
 アックスに勇気が湧いた。
「おっす! 守ります!」

 討伐依頼では、砂熊は1頭だけだが、熊の一種なので大きいし強い。
 3人が危険地帯に入って間もなく、例の砂熊がうろうろと歩いていた。
「おらぁ!」
 戦闘が開始されると同時に、ミルヴィが走り出して砂熊に拳の一撃を打つ。
 そして攻撃と同時に離脱。見事なヒット&アウェーが決まった。
 砂熊から反撃だ! ミルヴィめがけて走って来る!
「さぁ、アックス? アタシを守っておくれ?」
「う、うっす!」
 砂熊は巨体でありケダモノ特有の迫力がある。
「ギャア!」
 雄叫びを上げて、ミルヴィに向かって砂熊パンチを放つが……。
「ぐ、ぐはぁ!」
 アックスがパンチを受け止め……る事ができず、そのまま叩きのめされる。苦しそうだ。
「俺は……守る!」
「よし。ガンガンいきな!」
 次の連続打撃を死ぬ程浴びせられると……アックスが血相を変えてギブアップした。
「ご、ごめんなさい! やっぱり無理です! 俺には……守れません!!」
 ふぅ、とミルヴィは一息入れてから怒鳴る。
「コラァ! まだお山の大将になりたい願望が抜けてねーのか! 守るってのは誰かより優れる事じゃないんだ! 誰かを支える事なんだ! 踏ん張って目の前と後ろをちゃんと見ろ! アンタの後ろには今何がある!?」
 見ていられなくなったゲオルグは後方から天使の歌を奏でてアックスを支援する。
「守る上で大事なことがある。それは、自分が倒れてしまったら、それ以上守ることは出来なくなるということ。だからこそ、敵の攻撃を確実に防ぎ、自らの被害を少なくすることが守り続けられる秘訣なのだ」
 結局、アックスは砂熊に勝てなかったので特別教官の2人で討伐した。
 彼はぼろ負けしたものの、確実な何かを掴んだようだ……。

 その後、成長したアックスは『灰猫』の中でも優秀なボディガードに化けた。
 苦しい時はいつでも、ミルヴィやゲオルグとの特訓を思い出す事で乗り切っているそうだ。

 了

成否

成功

MVP

ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

状態異常

なし

あとがき

この度はシナリオへのご参加ありがとうございました。

今回、皆さんに「傭兵団の特別教官」をやって頂きました。
こういう設定の発想はPPPの世界観らしいかもしれませんね。

実は私、学園ものも好きなのですが、
どうにかしてPPP風にアレンジできないかと考えました。
それでたどり着いたのが今回みたいな形だったりします。

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