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シナリオ詳細

貴方の昨日、彼女の明日
貴方の昨日、彼女の明日

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●貴方の昨日が聞きたくて
 ギルド・ローレット。特異運命座標となった者達の受け皿である場所であり、様々な依頼が集まる場所であり、同時に、多くの報告書が積もり積もった場所でもある。
 日々、人々が情報を交換し合うその場所で、情報屋の外見も様々であるが……その日、依頼から戻った日向葵(p3p000366)を待ち構えていたのは、それでも一際特異……というか、心配になる外見をしていた。
「あおにぃー、今度はどこに行ってきたの?」
 目の下には深いクマ、メッシュの入った髪の色艶は贔屓目にみてもよろしくなく、声に覇気がない。別世界の学生がよく着ている『制服』を身にまとうこと、葵を兄と呼ぶことからそれなり若いことは分かる……彼女の名前は日向 陽(ひゅうが ひなた)。15歳の少女である。
 普段はローレットで事務作業を片付けながら生活している彼女が見るからに不健康なのは、元の世界の名残である。これでも相当、改善されているようだが……。
「実は、あおにぃと皆さんを待ってたんっすよ。ちょっとした依頼を頼みたくて」
 それもアタシからですー、と続けた彼女をまじまじと見た一同は、続く彼女の依頼内容に得心がいった……のかは定かではないが、快く引き受けることになった。

●理想を蒐める
 で。
 イレギュラーズの前にコトンと置かれたのは、箱型の……オルゴールのようなものだ。だが、パンチシートを引き込む構造になっており、どちらかというと『音を紙に記録する』タイプの物体であることが分かるだろうか。
 陽の説明によれば、これは人々の希望を蒐集する……いわばパンドラ蒐集器の亜種であり、ハンドル部分を回しながら語った内容が記録され、音楽として残るのだとか。
 それを再生することによって、(話の内容と程度によるが)聞いた者の士気を上げたりやる気を増す効果をもっている……の、だとか。
「効果は限定的なんですけどねー、私がハンドル回すんで皆さんに色々……そうですね、依頼の話ならなんでもいいっす。印象に残ったこと、危なかったこと、楽しかったこと。教えて欲しいんですよー。で、それを踏まえて今後どうしていきたいか、どんな依頼で全力出すか、頑張るか。そんなカンジの話を教えてほしいなって」
 アタシが聞きたいんで。そう続ける陽の目は、クマが浮いていながらもキラキラと輝いていた。さぞや冒険話に飢えているのか、それとも報告書ではないナマの声が聞きたいのか。
 せがまれた一同は、さて何を話したものか……と悩み始めた。

GMコメント

 そんなカンジの緩めの関係者依頼です。
 イージー? そうイージーなんだ、すまない。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●目的
 日向陽と『エクスプローラー・レコード』に冒険譚と今後のアレコレを伝える

●エクスプローラー・レコード
 紙巻き式オルゴール、及び録音機。
 情報を記録し、その内容に見合った『希望』を再生するオルゴール。
 録音時の『希望』の度合いによるが、聞いた人間に強い希望や良い感情を賦活する効果を持つらしい。現在は記録されていないガラクタ。

●話すこと
 主に『今までの冒険(参加してきた依頼)で感じたこと』ならなんでもOK。ただし複数依頼に跨りすぎる内容はマスタリングを受ける可能性が高くなります。
 基本、どのGMのシナリオでも大丈夫っちゃ大丈夫ですが、『幻想で〇〇を退治した』みたいな本文検索が煩雑になる内容のみだと追えないので、括弧書きでいいんで依頼ID(シナリオ個別ページを開いた時の末尾数字)を入れていただけるとより正確に採用できます。
(コレがない場合、『アレしてこうなってそう思ったのねハイハイ』のような具体性のない話が仕上がり、書く方としても味も素っ気もない代物になります)
 次にそれを踏まえて『今後俺(私)はこんな感じで生きていきたいんだ!』と思いを叩きつける内容になります。
 どっちも冗長なくらいで丁度いいです。文字数いっぱい使って熱意を叩き込む感じでどうぞ。でもあんまり他GMへのラブコールをうちのシナリオでやったら私が泣くぞ。書くけど。

 なお、『過去の冒険を語る』という特性上、『天義決戦はいってんべ』『幻想でちょっとくらい依頼入ってんべ』みたいなクソ雑基準のため、両国でEASY1本分程度の名声縛りを設けております。
 ご了承いただけますと幸いです。

  • 貴方の昨日、彼女の明日名声:幻想3以上、天義3以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年08月12日 21時40分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
サンディ・カルタ(p3p000438)
アニキ!
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
守護する獣
アト・サイン(p3p001394)
観光客
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸に根差す
アルメリア・イーグルトン(p3p006810)
かつての隠者
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
繋ぐ命
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
海のヒーロー

リプレイ

●漂白された日々のこと
「随分と陽にお似合いの物を見付けてきたじゃねぇの? ホントオレ以上にこの世界楽しんでるな」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は、妹が用意したオルゴールを一瞥して笑みを零す。混沌に引き込まれた妹が、自分とは違う形で『混沌』にいることを満喫している彼女を見るのは、複雑な気分があるだろう。
「ふーん。私、このマジックアイテムに興味があるわ」
「ふふん、ローレットには色々集まりますからねー。ちょっと無理いって借りてきたんすよー」
 『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)はオルゴールを軽くつつき、興味深げに凝視する。自分の選別は間違っていなかった、とばかりに自慢げに胸をそらした陽の姿は、イレギュラーズ一同から見ても微笑ましいそれである。
「アルちゃんは勉強熱心だね! あたしもそれに興味ある!」
「オイラも変わったモンは大好きだぜ!」
 『繋ぐ命』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はアルことアルメリアと親しい間柄にある。彼女が興味を持った物は自分も気になる、そんな思考回路で(或いは別の理由で)同調したのだろうが、そこに乗っかってきたのが『オイラは〇〇〇』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)である。
 なんやかんやで、この2人も仲がいい。ワモンが召喚されてほどなくして受けた依頼で距離が縮まった……のかもしれないが。
「俺達の話なんテ、聞きたい奴がいるのか知らないガ」
「そう邪険にするなよ。俺の体験談でもあるんだぜ?」
 『彼岸に根差す』赤羽・大地(p3p004151)がどこか自嘲気味にためらいを見せると、『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)が肩を叩いて気持ちを整える。
 大地が話そうかと考えている依頼には、ちょうどサンディも同行していたのだ。決して、甘い思い出では無いのだが、それもまた経験であり成長の証だ。正面から向き合うことは、大事だろう。
「皆、経験豊富なんだな」
「お互い様なんじゃないの? ま、積み上げて溜まったモノを吐き出すには丁度いいでしょ」
 『追憶に向き合った者』ウェール=ナイトボート(p3p000561)がしみじみと語ると、『観光客』アト・サイン(p3p001394)は飄然とした調子で返す。彼は彼で積み上げてきた日々と経験が殊更に多い。
 当然、記憶に残る出来事を数多く通ってきた訳でもあり……決して一筋縄では行かない出来事だって多かったはずだ。
「いやー、皆さんみたいな素晴らしいメンツを連れてくるなんてあおにぃも隅に置けないっすねえ」
「いいだろ、そういうのは……早速回してくれ」
 陽が眼福とばかりにため息をつくのを見て、葵はオルゴールの起動を促した。
 『エクスプローラー』の名を冠するその道具が最初に聞き届ける話といったら……やはり、彼だろうか?

●アトの昨日と明日
「メルカート・メイズって子供を知ってるか?」
 アトの質問に、陽はこくりと頷いた。「僕は、彼女を殺した」と淡々と告げられたことに対しても、彼女は表情を固くしつつ(言葉を出さぬよう努め)頷く。
「ん、まあ、そうだね……正確には僕が殺したわけじゃないという話なんだが」
 迷宮に挑みたいから、『迷宮(かのじょのせかい)』を壊す。ダンジョンブレイカーとして積み上げる名声を、淡々と。……彼女だけを残して。逃げ回ることに理由をつけて。
「でも、いつかはそういう日が来るかと思っていた」
 逃げることの出来ない『いつか』、先延ばしにした『その日』。
「彼女は常に苦しそうだったのさ。
 勇者にもお姫様にもなれない、ましてや僕のようなローグ(人でなし)にもなれない彼女は、まあ、そうだね。……不憫と思わなかった、というのなら嘘になる」
 助けることも助けてもらうこともできず。嗜虐を尽くすというよりは拒絶の為の暴威を振るい。
 誰の物語(えいえん)にもなれない少女は、ただただ彼を罵ったわけだ。それを拒否する権利、否定する道理がアトにあったかといえば否である。
「だから、僕はこう返すしかない。
 『君が選ばれた人間を厭うのならば、僕は只人として剣を取ろう』。ま、実際に剣を突き立てたのは僕じゃないけどね」
 あとは、ここにいる者達の多くが知り得る物語だ。彼は命をベットし、その不公平を分け(スプリット)た『馬の骨』がいて、彼の代わりに手を下した仲間がいた。
「僕には助けてくれる人がいるらしい、これは大発見だった」
 哀れな少女との出逢いから別れまで。1人で何もかもを背負おうとして、誰かの肩を借りるまでの……彼の自立の物語だ。

●サンディの昨日と明日
「折角だから、俺もすげー話でも聞かせてやるか」
 サンディがよし、と腰を据えると、陽を含めた一同は興味津津といった空気になる。特に、『その話』の頃に召喚されたアルメリアとフランには殊更興味深い話であろうか。
「サンディ様は今じゃまーそこそこベテランイレギュラーズって言えるとは思うが、実を言うと失敗自体は少なくねえんだ」
 英雄とは量産品だ。量産品に求められるのは安定性。そういう意味で、彼はそこそこの成功を保証された者である。だが、それは『常に』ではない。
「そりゃーもうひでぇ扱いだったぜ。繋ぎっぱなしだもんな。看守が麗しのレディじゃなかったらとっとと脱出してたところだ」
 どこまで本当でどこからが嘘か、今は彼のみぞ知るところで。罠として捕まり、命を『半分』刻まれ、抵抗も許されないときた。
「戦略的にゃ、俺を救出に向かうやつが出た時点で戦力ロスで向こうの狙い通りだからな。逆に言えばだれ一人来なくてもそれは正しい判断だ」
 どちらに転んでも一長一短。自分の命を差し出して、大勢が有利に働くならそれは重畳。彼はそう、思ったのかもしれない。
 ……だが、仲間は彼を見捨てなかったし、運命は彼の祈りを見逃さなかった。一歩間違えばイレギュラーズの被害は甚大だったろうに、危機一髪はさながら『髪一本程度の際で』逃れ得たのである。
「不思議なもんだよな。赤子の時すら俺は親に捨てられてるってのに、俺の牢やフギンの許に捨て身で切り込む奴があんだけいたんだ」
 人生とは分からないものだ。生まれたばかりの彼にはなかったものが、今の彼にはあるということ。自分も仲間も世界もなにもかも、捨てたもんじゃないという事実。
「もーちょっとだけ、ヒーローって奴を続けようかと思ったぜ」

●フランの昨日と明日
「ちょうどいい機会だし、いっぱいお話するね!」
 重めの話が続いたのを感じ取ってか、はたまたサンディの話に興奮してか。フランは元気よく挙手し、ひーふーみー、と思い出話を指折り数えて話し始めた。
「この前はねー、練達で不思議な薬飲んだの! ワモンさんもいたんだけど、なんかもうすっごかったんだよー!
 一日バイブス高めの超YEAHな感じでいたら、翌日筋肉痛だったよ!」
 ワモンは「あれかぁ」と言った感じで頷く。終始パリピった彼女は全体の雰囲気を盛り上げていたが、体力(フィジカル)もダンスの腕(テクニック)も心許ない彼女の末路はといえばそうなる。
「あとは子ロリバイアサンってすごい生物をやっつけたり、目からビーム出したいって男の子の為にビームが出る方法を考えたり。ローレットって色んな仕事するんだよねぇ」
 待って。一同が声を上げかけたが、『フランの物語』を止めるわけには行かず、押し黙る。だってロバなのにウミヘビだよ? 7体目だよ? ツーバイフォーが口に合わないクソグルメ野郎だよ? 性別不明だけど。……現場の証拠写真がある? マジで?!
 あとビームて。マジで出たって何。
「天義が大変だった時のお仕事はすっごく思い出深いんだぁ……」
 本題はこっちだったらしい。ウェールがぴくりと反応するのも、さもありなん。
「救護所にもうぎゅうぎゅうに怪我した人がいて、いっぱい治して。
 隊長さん、って人が伝えたいことがあるって言ってくれたのに……それ、最後まで聞けなく、て、」
 『もし償いたいと思うなら』。その続きが語られることはなかった。ずるずると、涙から生まれた鼻水をすすりながらフランは語る。心が動くことを否定してはならない。耐えきったあの日の追憶を、眉一つ動かさず語らねばならぬルールなどここにはない。
「やっぱりもっと回復の力を身につけて、一人でも多くの人の命を救いたい! 天義のことがあって、こんなことが深緑で起きてたらって思うと……まだまだ強くならなきゃって思うんだ」
 それは『フランの物語』だ。まだ白紙の、ページの続きだ。

●アルメリアの昨日と明日
「そうそう、フランとは幼馴染なのよ。召喚タイミングも偶然ほぼ全く同じっていう奇跡だったわね……」
 フランの話が終わるなり、アルメリアは語り出す。彼女に触発された、というか。幼馴染ゆえの共感もあるのだろう。語らねば、目の奥からの刺激に耐えられまい。
「召喚されてすぐ戦場に駆り出されて、手習いで覚えていたライトヒールをかけながら走り回ってた……それが最初だったわ」
 野ロリババアの二体を見やり、お手柄だったわよと笑む。
「それからはヒーラーとして数々の経験を積んで……。印象に残ってるのだと、あの事件ね」
 山岳地帯に居を構える幻想貴族、その遊興めいた叱咤を交えた『研修』。善悪は飽く迄、その地で偉い者が決めるのだ。そんな傲慢。
「そこで私は言ってやったのよ、善悪くらいは自分で決めるってね」
 イレギュラーズは依頼と国家に平等であり、善悪は主観でしか受けられない。だが、内心の自由は保証されている。国家から後ろ指をさされようと、彼女は己の信念を曲げることはないだろう。癒し手として伸ばす手は、己が救いたいものを違えることはないはずだ。
「最初は向いてないと思って、すぐにでも帰りたかったんだけど。なんだかんだ冒険者として世界を見るってのもいいと思い始めたのよね」
 誰だって最初は無力だ。自分は何者かになれると息を巻く者は、それこそ少ない。……だが、誰かの為に何かが出来たという経験は、無力感と虚勢の薄衣を剥がすには十分すぎる。
「これからは、ヒーラー以外の分野も勉強してみるつもり」
 彼女の伸び代は潤沢だ。……来たるべき世界のうねりにも、立ち向かえる程度には。

●ワモンの昨日と明日
「印象に残ってる仕事なら色々あるぜ! その中でも最近受けた印象深い仕事の話をさせてもらうな!」
 ワモンは鼻を鳴らし、つい先日の依頼について語り出す。
 ……『マッチョ足りてますか?』なんて聞き方をされるのは普通ではない。だが、ムキムキでかっこいいアザラシを目指して二つ返事で受ける彼もまた普通ではなかった。
「仕事の前に仲間が一人マッチョ風邪で倒れるハプニングがありながらも、オイラ達は森にはえるマッチョリニウムを求めて捜索を始めたんだぜ……弾ける大胸筋、唸る上腕二頭筋、そして荒ぶるアザラシのポーズ!」
 再現するかのように雄々しい姿を見せたワモンに、一同は「うん……うん?」なリアクション。そりゃそうだ。だが、と続けた彼の口から「驕れるマッチョ、バルク控えめ」とかいう諺が聞こえた時は一同、耳を疑った。
「荒ぶるアザラシのポーズの角度が甘かったのか、ダウナーな胞子の影響で『オイラはマッチョじゃなかった……?』と自覚してしまったオイラはそこで力尽きてしまった……」
 つまり思い込みが大事だったんだろうか。否、多分覚悟とかそういう度合いで一歩至らずだったのかもしれない。乱数だったのかもしれない。知る者は多分いない。
「依頼は成功に終わったが、オイラとしては課題が残る仕事だったんだぜ。そう、もっとマッチョを足らさなくてはという課題がな!」
 マッチョ(男らしさ)を足すという強い語彙。そんなスパイス感覚で足せるモンなんだろうか。
「マッチョリニウムに頼ることなく立派なむきむきマッチョアザラシになるために、これからはよく食べてよく動くのをがんばるんだぜ!」
 そんな草に頼らなくてもワモンは十分可愛……じゃなかった立派だよ、と。誰かフォローしてやってはくれまいか。

●ウェールの昨日と明日
「依頼で感じたことか……俺、息子に刺されて気を失って、気づいたら混沌に召喚されててな」
 ウェールの口から語られた話は衝撃的だったが、混沌ではそう珍しくもない。悲しいくらいに『ありきたり』だ。尤も、道具にされ、子の名を口にできぬまま敵同士として刺されるというのがありきたりか、と聞かれれば否だろうが。
「そして息子にかっこいいパパと呼ばれる為に、戦闘は苦手じゃないから色んな依頼に入ってな……助けられた人もいるけど、助けられなかった人もいて」
 ――原罪の呼び声で狂った少年と出会ったんだ。楽にしてやるべきだったかもしれない。
 彼の独白は偽りなき迷いである。罪を山と重ねて救済の道を断たれた少年に、どのような価値があろうか。それを本人も、ウェールも測りかねている。
「未来はどうなるか分からない。善悪や罪の有り無しは関係ない。だから明日は昨日よりいい日になると、信じて生き続けてほしいと思ったんだ」
 それが彼のターニングポイントか。癒やしの術を得て、その後訪れた天義での大きなうねりの中を、癒し手としてかき分けた。
 救えぬ命、聞けぬ言葉、果たせぬ約束もあっただろう。その無力感は、フランが雄弁に語った通りに。
「俺は悲しみを少しでも減らせる人になりたい。全てを救う事を、助ける事が無理でも。この癒しの術で言葉を伝える時間を作ってやりたい」
 すべてを救う傲慢さはない。ただ、それでも誰かの人生を無為にさせたくはない。己に名を与えてくれた人のように、見知らぬ誰かの盾となりたいのだ……と、彼は語った。

●大地の昨日と明日
「随分昔。ここに召喚される前。俺は一度、殺された」
 大地は首をさすり、当時の記憶を掘り起こす。『三船大地』として逃げて逃げて、倒れた己の両肩から迫る刃、おちょくるような口調、嘲笑うように響くアスファルトを削る音。
 そして結局、無力だった頃の大地は命を落とした。落とすはずだった。
「……それでモ、俺達は死にたくなかっタ。
 だかラ、こうして手を組んデ、生き延びる事にしタ」
 『赤羽』が言葉を継ぐ。魂を傷つけられた彼と肉体を不可逆的に死へ導かれた彼。手を組んで生き延びようとしたあり方を誰が否定できよう。
「で、つい先日。そいつと再会する機会があった。……あァ、俺を殺した女。首狩り兎。正真正銘、そいつがそこに居たんダ。そウ、今そこに居るサンディとモ、一緒に戦っタ」
 サンディと大地の視線が絡む。互いにどこか口惜しそうな、謝りたいような、複雑な心境が垣間見える。
「でも、こちらが相手を削る以上に、こちらも相手に消耗させられ……結局、そいつは取り逃してしまった」
 強敵が相手だったのだ、どうしようもなかったのだ、言い訳はいくらでも利く――だがそれ以上に。彼は、安堵していたのだ。『その場では誰も死ななかったこと』に。
 今までもこれからも積み上げられる死はあろうに、その場の命だけを物差しとしてしまった自分自身の感情に。
「またいずれ、俺達の前に現れる。
 その時までに、あいつを殺す力を身につけて、仲間を死なせないための実力を手にしてもう一度……いや、必要ならば何度でも、あいつと戦ってやる」
 それまでは死ねなイ。拳を握った彼の決意は、血の滲むほどの覚悟を交えて。

●葵の昨日と明日
「結構前の話なんだけど、怪魚を釣ろうって事になったんだ。たしか……頭部はマグロ、胴体はシャチ、尾にかけてはサメの背びれみたいな歪な形、人のような逞しい腕と脚が生えたヤツでな?」
 葵がそう語ると、一部の者は疑いを交え、多くの者はありうる、と首肯した。でなきゃ子ロリバイアサンの説明がつかない。
「エサで釣ってみたり、潜って直接仕留めてみたりで、あの手この手で何とか釣り上げようと頑張ったわけだ。中々釣れない上に船のメンバーが意図せず海に放り出されるってのもあったな。
 最終的には何とかなったけど、アレはなんというか……面白かったな」
 開始後八分の奇跡。仲間のギフトのお陰なのだが、そう思いたくないという感情もあり。
 釣り針を操って混乱を招く相手にはあれこれ試す必要あり。酷い激闘あり……思い出すに笑いは絶えない。
「ここには色んなものがありすぎて、常識なんて速攻でぶっ飛ぶ世界だ。だからこそ、ここでの生活はすげぇ楽しいのかもな」
 彼の経験はそれに限らない。数多く、それこそ数え切れぬほどの『異常』を見てきた。
 今後どうしたい――というより、その経験が今の葵の原動力だ。
「漠然とこなすくらいなら、何事も楽しみのひとつやふたつくらい持っとかないと長続きしないだろ?」
 陽に冒険話を語るのも楽しいしな、と続けた兄の顔は、陽が知るそれよりずっと輝いていたかもしれない。

 オルゴールを閉じた陽は、心からの感銘を受けた表情で一同を見回した。
 笑いあり涙あり、恐怖あり怒りあり、そして明日への希望があり。再び開かれたオルゴールが奏でた音楽は――彼らだけの特権か。
「アルちゃんケーキ食べに行こ!」
「いきましょっか!」
 アルメリアとフランが出ていくのに引っ張られるように、仲間達も扉を開ける。その先に明日があると信じて。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 ……取捨選択してくださいって言ったじゃないですかー! 作業の8割くらいリプレイの読み込みでしたよ! いや楽しかったけども!
 しかしなんですね、皆さん波乱万丈の人生っぽく。通常シナリオじゃなかったら書ききれませんでした。
 今回語ったこととかその辺を糧に、次の依頼も頑張っていってらっしゃい。

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