PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ゴールドラッシュ☆ダークネス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ふんどしは男の正装
 八人の男がいた。
 六人掛けの頑丈な長方形テーブルを囲むようにして、椅子に座る男たちがいた。
 その全員が、ふんどし一丁であった。
「「………………」」
 目元が隠れるほどの影を纏い、テーブルの表面だけをじっと見つめる八人。
「誰だよ、メカ花子V3はニトロついてるから勝つって言ったのは……」
 最初に口を開いたのは『褌一丁』シラス (p3p004421)であった。
「ア゛……ア゛ア゛……ワーイ……オオアナダー……オカネモチダーイ……」
 魂が鬼怒川旅行にいっちゃった『褌一丁』キドー(p3p000244)が、乾いた笑いをいつまでも浮かべている。
 『褌一丁』プラック・クラケーン (p3p006804)が一切顔を上げること無くぽつりとつぶやいた。
「こいつはもうダメだ。今のうちにモツ引き抜いて売ろう」
 自らの顔に手を当てグッとなにかをこらえる『褌一丁』シュバルツ=リッケンハルト (p3p000837)。
「なんで話に乗っちまったんだ……ゴールドが十倍になるなんて与太話……酔ってなかったら信じなかった……」
「HA……HAHA……ミーも乗っちまったんだ……仕方ないさ……」
 同じくグッと顔を押さえる『褌一丁』郷田 貴道 (p3p000401)と『褌一丁でごめんね』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
 見るに見かねたのか、酒場の店主が『俺からのおごりだ』という風にそっとテーブルに料理を置いていった。なんかケシズミに泥をかけたような世にもマズそうな料理だった。それを素早く自分の隣にシュッと押しのける『褌一丁?』アベル (p3p003719)。
「まあ、無くなったものは仕方ないでしょう。今考えるべきは――」
「ぐおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
 『褌一丁』グドルフ・ボイデル (p3p000694)が料理の皿に顔から突っ込んだ。
 ぼずんという謎の音を立てて料理に顔を埋めると、オヴァヴァヴァヴァーと叫び始める。
 その奇行を、誰も止めることなどできなかった。
 まだやってないだけで、今からでもやっちゃいたいくらいだからだ。
「すまねえ……ほんとに十倍になると思って……」
 『褌一丁』シラス (p3p004421)が両手で顔を覆った。
 そんな彼のポケット(ポケットだよ)にスッと『ミノファイナンス』という社名と番号が書かれた名刺を差し込む、牛獣種の男。
 彼は肩をぽんと叩いて耳元で囁いた。
「前にも言ったよな。ワガママな貴族が新鮮な臓器移植をしたがってる。未成年のカオスシードじゃないとダメなんだそうだ」
 シラスがカタカタふるえはじめた。
「すまんシラス」
「アンタのことは忘れませんよ」
 テーブルに手を突いて立ち上がろうとするアベルとプラックの肩を、別の獣種男がぽんと叩いて座らせた。
「ディープシーとオールドワンの臓器も、欲しがってる奴がいてよぉ……」
「そ、そうかぁ……? おれはもうトシだからよ、きっと誰も欲しがら――」
 同じく机に手を突いて立ち上がろうとしたグドルフの肩にもポン。
「お前賞金首かかってたよな」
「グッ……!」
「ぶ、ぶはは……俺らは悪いが」
「そそそそそういうのねえし」
「ミーたちはお先に失礼させて――」
 それぞれ立ち上がろうとするゴリョウ、キドー、貴道の肩にも別の獣種男たちがポンとやった。
「海洋のド田舎にさあ、ゴブリンとオークとボクサーを飼いたいってオバサンがいるんだよねぇ」
「ボクサーを!?」
「……」
 暫く周囲を観察してから、自分の後ろにも誰も居ないことを確認し、だまーってその場から椅子ごとゆっくり下がろうとしていたシュバルツ……を、キドーとゴリョウが両サイドからガッと捕まえた。
「おいおいどこ行くんだよぉ? な?」
「俺たちその……アレだろぉ? な?」
「HANASE!!!!」
 EXA確率五割の男を二人がかりで押さえつつ、キドーが目で訴えた。
 訴えの内容は当事者たちしか知らないことだが……。
「よし、いいだろう」
 ミノファイナンスの社長ことミノザウワーはテーブルに書面を一枚置き、それを縫い付けるかのようにナイフをガンと突き立てた。
「この仕事が出来れば借金はチャラにしてやる。なんなら依頼料を払ってやってもいい。ただし失敗したら……」
 それぞれの肩越しに男たちがぬぅーっと顔を出し、それぞれの顔を笑顔で振り返り、そして小さく二度頷いた。
「「はい!!!! 全力でやらせていただきます!!!!!!!!!!!!!」」
 こういうとき、キャラにかかわらず誰でも背筋は伸びるものである。

GMコメント

 ご用命ありがとうとうございます。『褌一丁』黒筆墨汁でございます。
 闇市(ぎゃんぶる)でスッた!? よっしゃあ、手っ取り早く稼ごうぜ!
 稼げなかったら………………………………と、とにかく稼ごうぜ!!!!!!!!!!!

 皆さんにはそれぞれやばげな仕事が割り振られました。
 どうやら拒否権はないらしく、遂行すれば逆に金が儲かるそうです。
 では、それぞれ個別に解説していきましょう。

■貴道、シュバルツ、プラック、シラス:地下闘技場の八百長
 非公認地下闘技場のファイターとして2対2のバトルを開催します。
 ですが勝利する側は決まっており、試合結果もその通りにしなければなりません。
 皆さんはまず2人ずつにわかれ、どちらが『勝利予定』になるかを決めます。
 そして『見てる人間が八百長だと分からないくらいギリギリまで善戦してから』予定通りに勝敗を決してください。
 なぜならそのギリギリまで賭けが続き、胴元は掛け金を限界まで巻き上げたいからだそうです。
 そういった事情から、ファイトが盛り上がれば盛り上がるほどよく、それぞれのスペックの良さやキャラの良さが出れば出るほど喜ばれます。
 (逆に手を抜いたりするとヤバいめにあいます)

■キドー、ゴリョウ、グドルフ、アベル:貴族の襲撃
 ある貴族に対して脅しをかけるべく、貴族とその護衛の馬車を襲います。
 ここでのオーダーは『護衛を皆殺しにすること』と『貴族夫婦を絶対に生かすこと』 と『貴族の一人娘を拉致ること』です。
 拉致したあとは遠くに待機している別グループに引き渡すため、そこで終了となります。
 依頼人のオーダーのニュアンスとしては、できるだけワルそうに、話の通じないイカれた感じを出して馬車を襲って欲しいとのことです。
 護衛の人数は5人おり、戦力差としてはこちらと同等くらいです。ガチガチの作戦で挑みましょう。
 構成は――剣と盾の甲冑騎士、拳銃とライフルを使いこなすスナイパー、大柄でハンマーをもった力持ち、素早いニンジャ、大宇宙赤斑吸血アルパカです。

■おまけ解説
 このシナリオは実質的に悪っぽいですが『バレなきゃ犯罪じゃない』の原理から通常通りの名声が入ります。
 逆にバレるといけないので、全員プレイングに何も書かなくても仮面やら覆面やらしているものとします。

  • ゴールドラッシュ☆ダークネス完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2019年08月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
アベル(p3p003719)
失楽園
シラス(p3p004421)
超える者
プラック・クラケーン(p3p006804)
昔日の青年

リプレイ

●悪党たちの復活戦
 テーブルに並べられたのは、男たちが一旦巻き上げられた装備群だった。
 肩ぽんされていたアベル(?)がぽふんと煙のように消え、酒場の奥からジョッキを手にした『未来偏差』アベル(p3p003719)がやってくる。
「いやあ、大変なことになりましたねえ」
「他人事みたいに言ってるけど失敗したらお前もモツ抜かれるんだからな」
 服を着込んで振り返る『夜闘ノ拳星』シラス(p3p004421)。
「逆に、成功すれば装備も取り戻せて金も手に入る。こいつは敗者復活戦だ
。生半可は許されない、最後のな」
 カタカタ震えるシラスの横で、アベルはハッハーといいながらガスマスクの上からビールを飲み干した。どうやったのかぜんぜんわかんねえけどマスクには泡一つついていない。
「まあ、黒い仕事はいつものこと。俺は誘拐で、そちらは八百長でしたっけ?」
 テーブルに並べられた裏依頼書をくるりとまわして読み直すアベル。
 未だに褌一丁の『拳闘者』郷田 貴道(p3p000401)がHAHAHAと笑って屈強な大胸筋を揺らした。
「まあプロレスみたいなものだな。ショービジネスだ、マネーマネー!」
「簡単に言ってくれるぜ……」
 常にリングにいた貴道にとって、生きるか死ぬかの瀬戸際での『取引』は慣れっこだったのやもしれない。
 しかし、誰もが彼のようにできるならプロレスに誰も金など払わない。
 今回の八百長は、狂気の向こう側にあるものなのだ。
「ある意味じゃあ、『実戦以上』の真剣勝負だ。覚悟を決めろよ」
「決めろってもなあ……マジの喧嘩ってわけじゃあねえんだろ?」
 しおれていたリーゼントに再びクシを入れる『幸運と勇気』プラック・クラケーン(p3p006804)。
「そうだ。誰からもマジに見えるがマジじゃねえ……つまり、剣で相手をぶっさして貫くが殺すなっていわれてるようなもんだ。もしくは拳銃の弾を全弾ぶち込んでおいて殺すな、かな」
「……お、おう」
 プラックの脳内ではナイフで自分を滅多差しにするシュバルツと、マウントとって笑いながら自分をボコボコにする貴道が連想された。
 死なない方がおかしい光景だった。想像上の自分はなんか地面に落としたミネストローネみたくなってるし。
「ま、まあ……いいとすっか! 貴道さんたちとマジな拳を交えるチャンスだぜ!」
 プラックはポジティブな効果音を流すと、リーゼントをすいっと撫で上げた。

「「…………」」
 『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)と『狂えるオークナイト』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は、プラックとは別の想像にとらわれていた。
 自分たちが犬小屋から顔を出し、『キドーちゃん』『ゴリョウちゃん』と書かれた皿に乾燥フードが流されるのを待っている光景である。
「ゴブリンってこういうのだっけ? つーかオークとゴブリンとボクサーって取り合わせおかしいだろ!」
 ドンとテーブルを叩くキドー。空想上の犬小屋の隣にボクサーちゃんの家があり、顔を出した想像上の貴道がHAHAHAと笑っていた。
 天井をあおぐように見上げるゴリョウ。
「何事も経験……ってやつだぁな」
「飼われる経験はしたくねえ!」
「それは俺もしたくねえ! そうだろ山賊ゥ!」
 同時に振り返る、と。
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が目をかっぴらいてテーブルを見つめていた。
 顔に真っ黒い料理の残骸をくっつけたまま、めちゃくちゃ線の多いタッチで顔をしかめている。
「何だっておれがこんな目に……くそ、おれの命も掛かってんだ、気乗りはしねえが、やるしかねえ」
 今からギャンブルで一発逆転しようとしてる人みたいな顔になってたし心なしか顎と鼻がとがってきたような気がしたが、ゴリョウたちは一旦見なかったことにした。
 なぜなら。
「……………………」
 『神に抗う者』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)がもっとやべえ目でこっちを見ていたからである。
 ここ最近人生がジェットコースターしているシュバルツ氏である。
 敗者復活戦には必要だとふんで引き留めたが……。
「覚えてろよ……」
 ぼそっと漏れた心の声の一部が聞こえ、キドーたちはサッと顔を背けた。
「トットトトトとにかく行こウゼ」
「ソウダナ! 貴族のお嬢ちゃんを待たせちゃイケネエナ!」
 変装セットを手に取り、ダッシュで酒場を出て行くキドーとゴリョウ。
 仮面をつけ、修羅みたいなオーラを出しながら店を出て行くグドルフ。
 貴道はプラックの肩に手を回し、気楽に行けばいいと陽気にアドバイスしながら店を出て行った。
 すっくと立ち上がり、コーヒーを飲み干してから覚悟をきめた目で口元をぬぐうシュバルツ。と、シラス。二人は頷きあうと、それぞれ店を出て行った。
 彼らを右から左へ無言で見送っていた酒場のマスターはフライパンを置き、最後に残った一人へと伝票をピッと翳した。
 結構な額が描いてあった、が。
「やれやれ」
 アベル(?)は肩をすくめて首を振り、ぽふんと煙になって消えた。
 立派な食い逃げであった。

●リスカット男爵令嬢を誘拐せよ
 幻想でもそれなりの金持ちで知られるリスカット男爵は身代金保険に入っている。誘拐犯が保険屋の設定した暗号を提示できれば保険金が下り比較的安全に取引ができるというものだ。
 治安が悪く貧富の差が激しい幻想ならではの商売だが、そういう所にもしっかり需要と供給が生まれる。
 つまりは、金で雇われる誘拐代行である。

「…………」
 深い森の中。馬車が走るに十分な道を、黒い男爵家の馬車がはしっている。
 その道中で、青年がひとり、道ばたにシートを広げて座り込んでいた。
 やってくる馬車に手を振り、止まるように求める。
 馬車は要求通り青年の前にとまり、御者兼ボディガードが銃をとって声をかけた。
「誰だ、お前は」
「はあ……」
 生返事をして立ち上がる青年。
 が、次の瞬間。
「ケケーッ!!」
 木陰から飛び出したゴブリンが青年を背中から刺した。
 更に首筋にナイフを走らせ、壊れたスプリンクラーのように血が吹き上がっていく。
「死ねェ、死ねよォ……! てめぇ等の命が俺の明日に繋がるんだよ! 死んでくれるよな! 死んでくれ! ありがとう!!」
 目ぇかっぴらいて叫ぶゴブリン。
 御者のガンマンは飛び退き、仲間を馬車から呼び出した。
「こいつイカれていやがる! パウダージャンキーか!?」
「曲者」
 途端、馬車から黒いゴムボールがはねた。
 否。ゴムボールのように見えたのは人間の残像であり、『彼?』はあたりの木々や地面を跳ね回って予想外の角度からキドーへと襲いかかっていった。
 黒衣に覆面。忍者刀を逆手に構えた護衛兵である。
「ホホホ――!」
 刃が迫る、その一瞬。
 翁面の和装山賊が割り込み、山賊刀で忍者の斬撃を受け止めた。
「ホホホホ……飛んで火に入る夏の虫。恐れを知らぬ愚か者よ喃……汝ら、刀の錆となる覚悟をするが好い」
「狂人め」
 面覆の裏で顔をしかめる忍者。
 そうこうしていると、木陰から奇声をあげなら一匹のオークが突進してきた。
 泥まみれの汚れた鎧を身に纏い、ごつごつとした棍棒を振りかざした姿。まさに猛獣のそれである。
 馬車から飛び出した巨漢がタックルによってせき止めると、オークは『BuaaHAAAaaa!』と叫んだ。
「な、なにが起こっているんだ。暗殺か!?」
 馬車の中で叫ぶリスカット男爵と男爵妃。娘を間に挟んで抱きかかえると、幕の内側から外を見た護衛の一人が小さく頷いた。
「どうやらモンスターのようです。ウォーカーのたぐいかも知れませんが、あそこまで狂えばどのみち獣と変わりませぬ」
 護衛の者は『ここから動かぬように』と告げると、馬車から出て堂々と胸を張った。
「そこまでだ! 我は大宇宙赤斑吸血アルパカである! アルパカ三兄弟三男の実力、とくと見るがいい!」
 身体が宇宙でできてる赤斑模様のアルパカが口を開け、ハイパカ粒子砲を発射。
「Buaa――まじかよ!」
 一瞬だけ素に戻ったオーク(ゴリョウ)が咄嗟に背負っていた盾を翳して防御。
 あまりの威力にオークは吹き飛び、近くの幹を数本へし折った。
「パーカパカパカ! パーリナイ!」
 大宇宙赤斑吸血アルパカは宇宙牙を剥きだしにすると、オークへと狙いを定め……ようとしたその時! 山賊(グドルフ)がボウガンを発射。
 アルパカは首に突き刺さったそれを引き抜き、翁面をぎろりとにらんだ。
「パーーーリナーーーーイ!」
 人間よりも大きな口を開いて飛びかかる大宇宙赤斑吸血アルパカ。
「うおっホホホ……強者との闘い、咽ぶ程に滾る喃! 今宵の儂は、血に飢えておるわ!」
 翁面は回れ右してダッシュすると、とんでもねー速度で追いついてくるアルパカを引き連れて森の奥へと離れていった。
「アルパカ! 隊列を乱すな! クソッ、兄貴に似て自分勝手やつだ」
 ガンマンは拳銃での射撃で加勢しようとした所で、明後日の方向から飛来する射撃を感知した。
「スナイパーだ!」
 わかっていても避けきれない精密な射撃がガンマンたちを襲い、馬車が激しく崩れていく。
 横転した馬車の中で貴族たちこそ無事であったが、茂みの奥にあるガスマスク男(アベル)の驚異は変わらない。
 ガンマンは彼を最大の脅威とみなし、射撃による対抗を始めた。

「地獄に着いたら転倒骨折からの殺処分されたメカ花子二号によろしく伝えてくれよ!!」
 ケケーッと叫びながら導火線に火をつけ、忍者めがけて投げつけるゴブリン。
 忍者は飛来する爆弾を切断しまき散らされる毒や炎を振り払うが、実際的な衝撃までは完全に防げなかったようで派手に吹き飛ばされていく。
「なんの!」
 空中で反転し、クナイを発射する忍者。
 ゴブリンはそれをぱしりと掴み取……ったが、直後に炸裂したクナイによって吹き飛ばされた。
「このテクは……こ、この野郎!」
 ナイフを逆手に握り、地面に手を突くゴブリン。
 樹幹に足をつけ、跳ね返るかのように飛びかかってくるニンジャ。
 二人は空中で激突し、激しい金属音をうちならした。
 一方では、アルパカに迫られた山賊が煙を噴いて迫る大量のマルチアルパカミサイルを斧によって打ち落とす。
「愉快、愉快……儂をこうも滾らせてくれるとは……」
 山賊は斧と刀を持ち直して反転。
 全力で迎え撃つ姿勢をとった。
「その強さ、その姿勢……貴様さては、かの大山賊のファンであるな? 御仁の猿真似をする小悪党が増えだしたと聞く。フン!」
 アルパカは首をごきりと鳴らすと、腕を七本同時に振り上げて牙をむき出しにして見せた。
「だが本物には遠く及ばぬ。夢朽ち果て骨を野にさらすがいい!」
「ホホホ……!」
 迫る牙。唸る斧。
 交差する衝撃と衝撃。
「ボボボ……!」
 黒金のハンマーを頭めがけて振り下ろす大男。
 オークは盾でハンマーを受け止めると、獣のように吠えてハンマーを押し返した。
 さらには大地に拳をつけ、豪快なショルダータックルを浴びせる。
 オークのねっとりとした視線と猛烈な力を受けた大男は鼻息を荒くし、ハンマーをまるで棒きれのように振り回しながら襲いかかる。
 常人ならばミンチになっていそうなラッシュを、オークは棍棒と盾を駆使して打ち払っていく。
 オークの防御力もさることながら、森の中という障害物のおおい場所でハンマーの振りが制限され、大男は戦いづらい状況に陥っていたようだった。
「ボボボボ……!」
「BuaaHA!」
 棍棒とハンマーがぶつかり合う。
 周囲の雑草が土ごと吹き飛ぶような衝撃が、波紋のように走った。
 一方。
 ガスマスクはガンマンと騎士に追い回されていた。
「くそ、すばしっこいやつめ! 思うように回り込めん!」
「あせるな、こいつは確実に仕留めろ!」
 騎士甲冑の男が走ってガスマスク男へ追いつき、なんとか斬撃を飛ばすことでダメージを与えていく。それを援護するようにガンマンはライフルに持ち替え、ガスマスクの動きを少しでも止めようと足を重点的に狙って射撃していた。
 射撃によって足を打たれ、転がるガスマスク。
 そのとき、ガスマスクが笑ったように見えた。
 彼の放つ銃弾が、騎士の頭を抜けていく。

●バレたら即死の八百長試合
 誰もが殺せと叫ぶ金網ばりの闘技場。
 マスクを被った四人の男たちは両サイドから投入され、まぶしいほどのスポットライトを浴びせられた。
「悪いが此方も命と生活がかかってんだ、大人しくぶん殴られてくれや」
 BGMを流しながら、ビッとリーゼントをなで上げるプラック。
 一方のシュバルツはポケットに手を入れたまま、ともすればリラックスしたような姿勢でゆっくりと歩いてくる。
 真正面からにらみ合い、額がぶつかるかというほどまで近づく二人。
「なんだコラ、あ?」
「あぁ……?」
 歪んだリーゼントを押さえ、プラックはシュバルツにメンチをきった。
 対抗して目を剥くシュバルツ。
 そんな二人を横目に、貴道とシラスはどこか余裕そうに互いを眺めていた。
「おいおいなんだい、このホビットどもは? 大人を連れて来いよ大人を、HAHAHA!」
「ヘイヘーイ、達者なのはお口だけかよ、その図体は飾りなのかあ?」
 両手の拳を鋼のような音で打ち鳴らす貴道。片手をポケットに入れたまま胸を反らし中指でくいくいと手招きするシラス。
 お互いに煽りあい、顔を凶悪に歪めていく。
 ゴングは、すぐに鳴った。
 中でも最も早く動けたのは、プラックであった。
「速さだけは誰にも負けねぇこのリーゼント仮面。速さだけには負ける気はしねぇよ!」
 凄まじい勢いで金網を駆け上がると、高所からサマーソルトキックを繰り出すプラック。蹴り出された空気が砲弾になって飛び、貴道へと飛んでいく。
 直撃!
 にも、関わらず。
「HA‐HAHAHA!!」
 貴道は腕組みしたまま豪快に笑って見せた。
 歯を見せて笑う貴道。
 目に走る真剣な光に、プラックが本能的に死を連想した。
「下がれリーゼントぉ!」
 シラスが割り込むように飛びかかる。シラスは自らの心臓の行動を早め、目を大きく見開いた。
 血液が恐ろしい速さで巡り、筋肉が鋼のように硬くなり、拳で鉄をも打ち抜けそうな気がした。
 そのうえ、目の前にいるボクサーの考えていることが手に取るようにわかるのだ。
「こいつが本物のパンチってもんさ。音なんざ置き去りだ、HAHAHA!(まあ本気で殴り殺してもシラスなら死なないだろう! HAHAHA!)」
「おいマジかよ」
 知りたくなかった。
 直後、貴道の殺人パンチがシラスの顔面に直撃した。
 象に踏まれても牛に突かれても平気な自信があったシラスだが、その瞬間に視界が急速に縦回転し、内臓がなんかおかしなねじれ方をした。
 そして気づいたときには金網を突き破り闘技場の天井に身体がめり込んでいた。
 あまりの事態に沈黙する観客たち。
「あ……が……」
「はん、クソガキが。そろそろ本気で行かせて貰うぜ」
 更に迫るシュバルツ。
 天井から抜け落ち空になった観客席をバウンドして転げ落ちるシラスに、シュバルツが瞬間移動のような速度で迫っていた。
 ナイフがシラスの胸に突き刺さる。刺さったと思った瞬間には十字に切り裂かれ、切り裂かれたとわかった時には頸動脈が切断されており、そうとわかった時には全身十二箇所が無残に切り裂かれ当のシュバルツは彼の後ろでナイフを逆手に振り抜いていた。
「――lycoris」
「ばかお前本k――」
 シラスは、常人なら十回くらい死んでるダメージを受けて崩れ落ちた。
「次はテメェだ」
 振り返り、再び瞬間移動をかけてプラックの眼前へ迫るシュバルツ。
 が、プラックは恐れずに回し蹴り。
 現われたばかりのシュバルツは側頭部に直撃をうけ、『何ッ!?』といいながら金網に自らめり込んでいった。
「俺に速さじゃ勝てねえぜ。次はアンタだ、ボクサー!」
「HAHAァァァッ!!」
 暴風のごとく迫る貴道。
 その圧力だけで死にそうだったが、プラックは歯を食いしばって拳を繰り出した。
 ぶつかる拳と拳。そしてプラックの骨と肉が砕けて散った。
 右肩から先がなくなったことに気づいたが、貴道はまるで拳を緩めない。
 笑いながら今度は顔面めがけて拳を打ち込んできた。
 死。
 だが、プラックは目を見開き、猛烈なハイキックを繰り出した。
 身体をそったことで貴道の拳は空をきり、かわりにプラックのキックが貴道の顔面に直撃。
 貴道は歯を見せて笑い、そして大きな音をたてて倒れた。

●報酬と死闘
 傷だらけで帰ってきた男たち。
 ミノザウワー氏はコイン袋をテーブルに置き、『また金借りたくなったら連絡しろよ』といって去って行った。
 男たちは椅子に座り。重々しい声で言った。
「「もうギャンブルはやらん」」
 そんな彼らに、マスターは掲げようとしたツケ伝票を、一旦下ろしたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 もうギャンブルはやらない!!!!(たぶんまたやる)

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