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シナリオ詳細

<薄明>三下魔物達の逆襲

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●怒れ、スライムよ!
 バシバシ。スライムが倒されました。勇者のレベルが上がりました。
 バシバシ。スライムが死にました。村が平和になりました。
 バシバシ。スライムが……。結局、スライムなんてやっつけられる為の三下魔物でした。

***

 とある冒険者達は弱い魔物を倒してすっきりしたいが為にスライム達を倒す。
 弱いスライム達はなす術もなく皆殺しにされている。
 もはや勝てない事がわかったスライム達は逃亡を試みていた。
「ぐはは! バカなスライムだ! 生き残れる訳ねえだろう?」
 戦士が巨大な斧を振り下ろしてスライムがぐちゃり。
「うふふ! 死になさいよ、この三下!」
 魔法使いが神秘攻撃を放ちスライムを爆発させる。
「これで終わりだ、悪い魔物め!」
 剣士の必殺剣でスライムはめためたに殺された。

***

 と、こんな話、スライムの世界では日常茶飯事だ。
 どこからか変な声がする。
 とあるスライムはぼろぼろになりながら、すがるように声を聴く。
 言葉を理解するだけの知能はなくとも、導かれたように感化される。

――立ち上がるのだ、スライムよ……。
――おまえは決して、三下魔物なんかではない……。
――どうした? 万年、三下の役目をやらされて己の誇りを失ったのか?
――それならば……私がおまえに力を授けよう……。
――さあ、怒り狂え、獰猛で果敢な魔物よ!
――そして、逆襲して暴れるのだ……おまえがおまえである為に。魔物が魔物である為に!

●三下魔物達の逆襲
「うわー!」
「きゃー!」
「助けてー!」
 突然だが、今、『幻想』南部に位置する小さな町、コモノタウンが大ピンチだ。
 突如現れた謎の魔物軍団に襲われて、今、まさに町が壊滅しようとしていた。

「冒険者様! お助け下さい!」
「あんたらスライム狩りの達人なんだよな? 先日も自慢話していたじゃないか?」
 戦士、魔法使い、剣士の3人は昼間から飲み屋で酒をあおっていた所、町人から呼び掛けられた。
「あん? なんだと? 魔物の奇襲だ?」
 戦士は酔った顔でそう聞く。
「どんな奴かしら?」
 魔法使いもだるそうだが興味はあるようだ。
 聞く所によれば……。
「は!? スライムに襲われているだと? バカか、おまえら? 自分で倒せよ!」
 剣士がバカ笑いすると、仲間達も大笑いする。
 だが、様子がおかしい……。
 魔物達は、所々で爆発を起こし、町を破壊し、人々を襲っている。
 真っ赤な大きなスライムが怒りを振り撒いて町人の闘争心を煽ったようだ。
 そして、スライム達と殴り合っている町人が次々と殺害されていく。

 ともかく、冒険者3人は武器を構えて謎のスライムを倒しに行くが……。
「な、そんなバカな……」
 剣士達は想定外の事態になる。
 大きなスライムは危うい爆撃を放ち、3人の冷静さを奪う。
 戦場で冷静さを失った彼らをスライム達が囲み爆発を起こす。
 自称スライムハンターの3人は爆死してしまった。

●出番です、イレギュラーズの皆さん!
『黒猫の』ショウ(p3n000005)は急いであなた達をローレットのギルドに集めた。
 そして、冷静な彼が少し慌てた様子で、依頼の話を始める。

「……と、いうのが、『幻想』南部のコモノタウンで昨日起きた事件だね。怒り狂ったスライム達が人々を殺し、爆発攻撃までしていたなんて、何とも奇妙な話だけれど。ちなみにコモノタウン周辺の森ではそんな魔物は今まで生息していなかったらしい。では、なぜ、今回、そんな魔物が出たかって? そう、オレは今、それを調査中なのさ。もしかしたら、魔種が関与している事件かもしれないからね……」
 それで、だ、とショウは念を入れて確かめる。
「この依頼、引き受けてくれるかい? 今回の相手はスライムの大群だが、油断はしない方がいいだろう。さしずめ、怒り狂っているスライムなので、バーサーカー・スライムとでも呼んでおこうか。ちなみにコモノタウンは現在、町人が既に避難して無人らしい。無人の町中では、占領している謎の魔物達とガチバトルになるだろうから本当に気を付けてね?」

 三下魔物のスライム達の逆襲はどこまで続くのだろうか?
 もし、ここで放置したら、次はコモノタウン近辺の町や村まで襲い出すかもしれない。
 なにせ、相手は既に己を失って怒り狂って暴れているスライム達だ。
 所詮は三下魔物の起こす暴動だが、ぜひとも抜かりなく討伐して頂けないだろうか?

GMコメント

●目標
 バーサーカー・スライム100体の討伐。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
『幻想』南部に位置するコモノタウンという町が今回の戦闘舞台です。
 昨日、コモノタウンはバーサーカー・スライムに襲われました。
 現在、町はスライム達に占領されています。
 そして、町人は隣の町へ既に逃げています。
 無人となった町でスライムさん達とガチバトルです。

●敵
 バーサーカー・スライム(ボス)×1体
『原罪の呼び声』を聞いて反転した最初の1体であり、そのままボスになりました。
 狂気感染していて能力も上がりましたが、元が三下なので実はそこまで強くありません。
 色は赤系(怒りとか爆発とかの比喩)です。
 大きさと形状は、手下達に比べて大きく、大きめのゴムボールみたいな感じです。
 戦闘方法は以下。
・スライムアタック(A):体当たり等のなんて事ない攻撃です。物至単ダメージ。
・ルサンチマン(A):三下魔物のルサンチマンが文字通り爆発します。物自域ダメージ。BS怒り。
・自爆(A):自身の戦闘不能と引き換えに怒りで爆発して攻撃です。物自域ダメージ。BS火炎。
・統率?(A):即席でボスになり即席の部隊を率いているのでちょっと怪しい統率をします。通常通りに事が運ばないかもしれません。
・バーサーク(P):怒りの力で命中、物攻、CT、FBが高くなります。その一方で回避、防技、抵抗が低くなります。
・怒り無効(P):既に怒っている状態なのでBS怒りや挑発等が効きません。

 バーサーカー・スライム(手下)×99体
 最初のバーサーカー・スライムに続き、続々と狂気感染したスライム達です。
 所詮は三下なので、デフォルト攻撃1発で倒れるぐらいの強さです。
 色は赤系で、大きさと形状はやや大きめなゴムボール程度です。
 戦闘方法は以下。
・スライムアタック(A):体当たり等のなんて事ない攻撃です。物至単ダメージ。
・自爆(A):自身の戦闘不能と引き換えに怒りで爆発して攻撃です。物自範ダメージ。BS火炎。
・バーサーク(P):怒りの力で命中、物攻、CT、FBが高くなります。その一方で回避、防技、抵抗が低くなります。
・怒り無効(P):既に怒っている状態なのでBS怒りや挑発等が効きません。

●その他
・この依頼には魔種は登場しません。
・バーサーカー・スライムと名称が呼び難かったら(文字数も使いますので)「プレイング」では、「スライム」と略して書いてもかまいません。このシナリオには他のタイプのスライム等の敵は登場しません。

●GMより
 自身のペンネームが既に魔物そのものであり、魔物大好きGMのヤガ・ガラスです。
 魔物って偉いですよね、いつも人々を楽しませる為にバシバシやられてくれて。
 という訳で、今回はそんな三下魔物が怒り狂って逆襲するお話を書いてみました。
 ぜひまた皆さんの方でも、魔物をバシバシ倒してくださいね。

  • <薄明>三下魔物達の逆襲完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ニル=エルサリス(p3p002400)
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)
ロクデナシ車椅子探偵
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
オジョ・ウ・サン(p3p007227)
戒めを解く者

リプレイ

●開戦
『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)は、戦場に入ると同時に思わず笑いが零れてしまった。
「ふふ……。狩られる雑魚がそれでも闘志を失わず、群れて逆襲してきたか。良いね……好きだよ。そういうのは面白いじゃないか。では……面白い舞台を整えたスライム共に敬意を払いつつ、駆逐するとしようじゃないか」
 シャルロッテは友軍の陣形の中央に車椅子で位置取り、周辺の仲間達をエスプリで支援する。開戦と同時に浄化の鎧を召喚し、前衛のニル=エルサリス(p3p002400)にすっとまとわせる。

 ニル=エルサリス(p3p002400)は戦場を見渡し、ちょっと驚いていたようだ。
「うへ、この数が集まると流石にゲンナリなんだお。でも、狂っちゃったスライムがおるし、見過ごせね~んだぬ。ってなワケでちゃちゃっとお片付けだお!!」
 神秘の鎧をすっと装着すると、向かって来たスライム共にでーえすしーの格闘を仕掛け、前衛の役目を果たすべく突撃だ!

 味方との距離を気にして近くで戦うのは『RafflesianaJack』オジョ・ウ・サン(p3p007227)だ。開戦と同時にウツボカズラの奥から蒼く呪われた海の歌を奏で始める。
「スライム共が『怒って』るンデスネ……フーン……。フシギダネーフシギデスネー。デモ……ウン……一杯イッパイ、怒っテイイヨ……。最後にオイシク、タベテあげマスカラ……v」

 勇敢に戦い始める仲間達がいる一方、『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)はちょっとだけ震えていた。
「ううう、ぶるぶる。ぷよぷよしたのがうじゃうじゃいるのです! これ服とか溶けたりしませんよね? え? そういうのじゃない? ……し、知ってます!」
 スライムはラクリマが弱いと勘違いしたのだろうか、早速アタックして来た。
 だが白薔薇の鞭裁きで返り討ちにあった。
「さて、まずは小さいのをある程度減らさなければですね。数の暴力は脅威です」

 数が多くて気が引けていたのは彼だけではなく、『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)もだ。
「スライムデスかぁ……。3体くらいまでなら『RPGの始まりかなぁ?』で済みそうなんデスけれどぉ……。いやぁ100体は多いデスぅ、これは早々にお片付けしないといけないデスねぇ」
 向かって来るスライム達に対して魔のガトリング砲の乱れ撃ちで着実に仕留めていく。
 戦いながら調子を取り戻すのであった。

 数が多くても怯まずに進軍するイレギュラーズ。『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)は武装形態に切り替わり曲刀の一撃を浴びせ撃破して行く。中衛に位置取りながら後衛を庇えるように気を配りながら。
「どこにでもいるようなスライムも、これだけ集まって襲ってくるとかなりの脅威だなあ……。きみらに恨みはないけれど、町の人たちのためには倒すしかないね」
 進軍しつつも保護結界も展開し、これ以上不利な戦闘にさせない為に町の被害も抑える。

 それにしてもスライム達は何をそんなに怒っているのだろう? 戦う相手の怒りの理由を知りたいのは『お道化て咲いた薔薇人形』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)だ。
「さんしたまもの……? スライムって、弱いのね? ……お話したら、止まって下さらないかしら? ……怒っていては、聞く耳も持ってもらえないわよね。魔物とは元来あまり相容れないけれど……やっぱりちょっと寂しいわ」
 ギフトを発動し問い掛けるが今は反応がない。
 ヴァイスは魔法の花を武器にして構え直すが、戦うしか他がないのだろうか?

 開戦直後、地上はとても混み合っていた。一足早く、上空へ逃げたのは『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)だ。
「雑魚と侮っておったら大群による逆襲のう……。そのへんの創作と侮りかねないシチュエーションじゃが、やはり遭遇すると散々じゃな。専門のハンターもやられておるんじゃっけ? 気合い入れぬといかんのう」
 基本的に飛び道具がないスライム達の攻撃が直接届く事はないが、それでも屋根や塔の上等にも奴らは沢山いた。上空を飛行している魔女から魔弾がびゅんびゅんと飛んでいく!
「こういうのはいかに近づかせないかじゃよなあ」

***

 戦闘が開始されて、最初の進撃はイレギュラーズ優位で事が運んだ。
 以後も友軍が有利なまま討伐を遂行できるか、と思っていたら……。
 奥から一回り大きな真っ赤なスライム、そう、ボスがのそのそとやって来る。
 ボスは周辺の部下達に向かって指令を叫び飛ばす。
「ギャー!」(敵の陣形を崩せ!)
 指令を受けて部下達が答える。
「ギャー!?」(敵を全滅させろと!?)
 そして……。
 大勢いた敵勢の実に1/4が突然自爆して大爆発を起こす!
 初撃で捨て身の自爆連鎖攻撃とは一体どういう了見か?
 爆撃を受けて苦しむイレギュラーズにさらに次の1/4が攻めて来る!

●ボス戦
 突然の連鎖大爆発に見舞われた味方陣営の中で美弥妃は逃げ回っていた。
 大爆発が終わったかと思ったら次はさらなるスライム達が怒り狂って突撃して来る。
 半ば戦意を失いつつも美弥妃はスライム達に追い回されて……。
 気が付けば、味方陣地からだいぶ離れた場所に一人で来ていた。
「ん? ここどこデスかぁ? うわぁん、またやっちゃたデスよぉ……」
 美弥妃はどういう訳だが天性の素質で迷子になりやすい。
 そして、迷子になった先、いつも起こる展開もあって……。
「うわあデスぅ! ボス登場デスかぁ!?」
 不運の中でも幸運に巡り合うという天性なのだ。
 さらにボス周囲には取り巻きもいた。
 次の自爆攻撃が掛かって来るか……と、思っていたら!?

「あちっ、あっっちちちちっ!?」
 上空から魔女が燃えながら降って来た。
 しかも落下してパンドラをキラキラと散らしながら……。
「あ、あなたはぁ!?」
 美弥妃が驚くのも無理はない。クラウジアが降って来たのだ。
「はぁ、はぁ……。おお、お主は美弥妃殿か!? 実はのう、上空で爆破被害を受けたらのう、飛行も誤ってコケてのう、気が付いたらここに落ちていたのじゃ……」
 再会を喜ぶ間もなくスライム達は詰め寄って来る。
 敵が2人になった所で問題はない。そう、爆破さえしてしまえば……!

 態勢を立て直した2人が攻撃を繰り出す前にボスからの爆発攻撃が炸裂した。
 三下魔物のルサンチマンが大爆発を起こす。
 真っ赤な大きなスライムがさらに真っ赤になりどかんと一発、怒りの炎を飛び散らせる。
「な、なんデスかぁ!? ぬおおぉ……なんかムカつくデスよぉ!」
 美弥妃が怒り狂い始めた。霊力の乱れで髪の色が薄紅藤色に変わる。
「く、くおお……!! なんか頭にくるのう!? ああ、腹立たしい!」
 クラウジアも怒りで我を忘れそうだ。
 そして、その怒りをぶつける先は……。
「ん~、ぐおおぉ、バシバシいっちゃいマスよぉ!」
 美弥妃の怒りのガトリング砲が扇状に敵勢を撃ち殺していく。
 ボスも被弾して痛そうだが、なぜか嬉しそうだ。
「ふおお、ぐぬぬ、狂気感染とかめーわくなのじゃ、とくくたばるのじゃぁ!」
 クラウジアの魂から猛烈な怒りが煌めき、ボスを強烈な神秘の弾丸で撃ち抜いた。
「ギャー!?」
 あろう事か、ボスはわずかスキル2発で倒れ、ぐちゃりと潰れて死んでしまった。
 これにはとどめを刺した2人も呆気にとられた事だろう。
 しかし、なぜか、死に際にもボスは笑っていた。
「え、嘘? 弱すぎデスよねぇ?」
「ああ、弱すぎるのう? 三下魔物と聞いていたが、ここまでだったとはのう!?」
 ボスが死んだ後でも2人の怒りは……。
「くるか? ……そうそう囲ませはしないのじゃ」
 魔女の呪い歌が飛翔し、未だに収まらぬ怒りでスライム達を抹殺していく。
「やらせないデスぅ! 広めに行っちゃいマスよぉ!」
 霊能者の堕天の杖に疑似神性が冴え渡る。
 列に群れていたスライム達が危うい怒りを受けて死に絶える。

 2人でこのエリアのスライムを全滅させたはいいが、もうぼろぼろだ。
 なぜ、2人はこんなにも怒ってスライム達を殺さなくてはならなかったのか?
 それは、笑いながら死んで行ったボスならこう言うだろう。
 怒りに身を任せた殺りくがいかに楽しいかという事を……。
 そんな答えは、冷静に戻った2人は受け取らないだろうが。

●残党戦
「はぁ、はぁ……。なんて事だろう。何なんだよ、今の戦術は……」
 大爆発を受けてパンドラの欠片を散らしたシャルロッテは苦しんでいた。
 だが、彼女は軍師だ。
 戦場において誰よりも冷静沈着になり五感を研ぎ澄まして次の一手を読まなければならない。
 神秘的なひらめきの力で徐々に冷静さを取り戻し、火の粉も振り払う。
 集中しろ、集中しろ、ボクよ……。
 敵の戦術が読めなくても次の一手を読まないと、次は車椅子程度じゃないからね……。
 次の総勢1/4の軍団が向かって来て、真っ赤なスライムがさらに赤く発光する。
(ふ、ワンパターンだね? 次も爆発する気か!? ならば……)
 シャルロッテは周辺にいる仲間達に呼び掛ける。
 あれ? 仲間が何人かいない? だが、今、それどころではないので、やはり叫ぶ!
「悪いな、非常手段に出るよ!? ほら、一斉に自爆されるよりは余程マシだろう?」
 シャルロッテは味方を巻き込むのを覚悟で苦悶しながらも巨大な稲妻を発生させる。
 轟音が鳴り響き、敵味方問わず周辺にいる数十もの数の者達が雷撃を喰らう。
 味方も被害を受けたが、次の連鎖大爆発はこれで免れた。
 だが、敵陣はワンパターンで愚直だ。さらなら自爆攻撃が追撃でくるのか?
 ごろごろ、ぴしゃあああん……!
 シャルロッテの近くから発生したのは爆発ではなく稲妻だった。
 一体、誰が?
 ウツボカズラが大口を開けて稲妻貫通攻撃を敵陣にお見舞いしたのだ。
「皆、ダイジョウブデスカ? オジョウサンは強いイイオジョウサンデスヨ!」
 頼もしくも可愛く、サンの擬態がVサインで健在だ。

 チャロロはあらゆる意味で英雄の男だ。
 付近で戦っていたサンとヴァイスの2人を庇った。
 3人分の連鎖爆発攻撃を受けたので、幾ら防御技術が手堅くても、大きな被害は避けられなかった。
 火炎攻撃は効かないが、パンドラという火の粉はキラキラと振り払われる。
 超人的な回復力を発揮して、雷撃も直撃を避け、チャロロは再び戦場に戻る。
 そして、今、友軍の連撃によって陣形を乱された敵陣が流れ込んで来るが……。
「何をそんなに怒っているのかな? だったら、その怒りごと焼き尽くしてやる!」
 チャロロは激しい火炎を燃え上がらせながら敵陣へ突進する。
 右手からは強烈な爆裂攻撃が放たれて、彼の周辺にいるスライム達は爆死していく。

 チャロロが盾になってくれた事により、一度は助かったヴァイス。
 最初の内は、薔薇の神秘攻撃で応戦していたが、次第に虚しさも募る。
 彼らは何をそんなに怒っているの?
 そしてなぜ、私達は怒りに怒りをぶつけるかのように戦わないといけないのかしら?
 彼女は天性のギフトを駆使して、怒り狂う者達に語り掛ける。
「ねぇ、お話ししましょう? それとも、どうしても私達は相容れないというの?」
 彼女のギフトの力は申し分なく、通常のスライム達であれば話を聞いた事だろう。
 だが、彼らはとある事情によって怒り狂うスライムに変えられてしまった変種だ。
 彼らは怒るしかない。しかも怒って敵を倒す事こそが本能になってしまったのだろう。
 必死で対話を試みた勇敢なヴァイスは、数体分の自爆攻撃を受けて無念にも倒れてしまった。

 今回の戦場でラクリマが果たした役割は特に大きかったであろう。
 初撃の連鎖爆発によって燃え上がり、パンドラの欠片も弾けてしまったものの……。
 それでも彼は怯まずに果敢に戦場でヒーラーの役を絶えず務めた。
 パンドラ復活した直後、彼は付近にいる仲間達に回復の術を飛ばす。
「白く優しく♪ 舞い散る、幻の雪♪ それは、花のように~♪」
 真っ白に透き通ったような歌を天性の力で歌うラクリマの付近で粉雪が降る。
 淡い粉雪は解けると癒しの光となり自分含め友軍を一人ずつ癒していく。
 敵は未だに多い。どうするべきだろう?
(敵の数も多いですが、こちらも仲間の数を減らすわけにはいかないのです。ここはぐっと我慢して回復に力を注ぎましょう……)
 そして、あの瞬間がやって来た。
 敵が再び押し寄せて来て、二度目の連鎖大爆発を起こすあの瞬間だ。
 シャルロッテは叫んでいた。
「悪いな、非常手段に出るよ!? ほら、一斉に自爆されるよりは余程マシだろう?」
 ラクリマは焦る。俺達は選択しなくてはなりません。次の連鎖爆発攻撃で全滅するか、それとも、あえて仲間から撃たれて全滅を避けるか。
 冴えている軍師の腹は決まっている。ならばビショップの自分はそれを支えるまで。
 仲間の思いやりとも言える雷撃を喰らいながらも、食いしばる。
(今が踏ん張り時です……。この一線さえ乗り越えれば必ず……)
 どうやら軍師の雷撃で倒れた仲間はいなかった。
 ほっと一安心した所でまた仲間達の治癒へ向かう。

 ニルは最初から最後まで前衛で戦っていた。
 浄化の鎧や全力防御等が効いていたせいか、敵の攻撃にファンブルでも多かったのだろうか、未だに戦場に立てている。
 元気に立てているならば、やる事は一つだ。敵を全滅するのみ!
「しゃしゃしゃのしゃ~! へびの動きだお!」
 ニルはまるでへびにでもなったかのように、にょろにょろと動く。
 にょろりながらも華麗な足技も加えて、敵陣をばたばたと倒していく。
 ヨルにーちゃん、ありがとだお。にーちゃんの技が役に立ったお。
 時にラクリマの回復も有り難く受け取っておく。
 もりもり元気が出たぬ。
 そしてシャルロッテの雷撃を避けた後、サンの稲妻で道が開けた。
 きらりん。ニルの眼が輝き視界が冴え、戦場に道しるべが見えた。
「うちのいてえ鉄拳をくらって沈むといいぬ!」
 クルねーちゃん直伝の鉄拳制裁が真っ赤に怒っているスライムを粉々に打ち砕きに行く。

***

 先ほどの戦術は実に奇妙だった。
 シャルロッテは戦略眼で考察も続けていたが……。
(どうにも聞いた事のない戦術だったね……。開戦とほぼ同時に部下の1/4を自爆突撃させて、さらに1/4を投入して攻めて来る……。しかも指揮官自身は後退すると……)
 それもそのはずだ。なぜなら彼らの戦術とは……。
(ああ、そういう事だったのか……)
 遠方でボスが仲間2人に討ち取られたのを強化視力で見た時、彼女は全てを悟った。
 そして、友軍に向かって推理を叫ぶ。
「『さて』敵将は倒れた! だが、残党に油断するなよ? こいつらには、そもそも作戦も戦術も計算もなかったんだよ! 怒り狂った指揮官がでたらめをやっていただけさ! だからあえて言おう! 指揮官よりも残存兵達の方がずっと脅威だね! 気を引き締めて最後まで戦おう!」
 戦場に残っている友軍は、勝利がすぐ近くにある事がわかり士気を高めた。
 前衛に立つ者は最後まで進軍し、中後衛は終始前衛を支えた。
 ボスを討ち取った2人も帰って来て、残党を清掃する。
 100体もいたスライム達だったが、所詮は三下。
 まもなくして、敵勢は全滅し、反乱は失敗に終わったのであった。

●事後
 討伐を無事に完遂し、各自治療を受けたイレギュラーズは、ローレットのギルドに集まる。
『幻想』南部で起きた反乱の一つを無事に鎮圧できたので、ちょっとした祝賀会だ。
 この祝賀会はサンのある行動から始まった。
「スライムっテ、死体残ってタラ、チョットくらイ……タベテモ、いい、デスヨネ?」
 戦闘終了後、戦場で落ちていたスライムの欠片を拾ってサンは食べてみたが……。
「ウエエ……。まずい、デスネ?」
 見ていたニルがにっこりと助言する。
「たしかに、スライム見てたらむしょ~にゼリーが食いたくなってきたんだお。でも本物は食べづれえかもしれんぬ」
 ラクリマからもこんな一言。
「なんかこうスライムをいっぱい潰してると……プチプチと出して食べるゼリーを思い出しません?」
 と、いう訳で祝賀会ではローレットの特製ゼリーを皆で食べる事になった。
 赤く燃えるような冷たいゼリーを食べる上記3人の隣でチャロロもぱくぱくと食べる。
「オイラが元いた世界ではスライムは蛙みたいな存在なんだよ。もし、本当にスライムを食べるのなら、蛙のから揚げみたいな料理になるのかな?」
 一部の女子達はゼリーにトッピングを加えた。
「ふふん、冷えて甘くて可愛いゼリーの出来上がりデスよぉ」
 美弥妃は萌えなゼリーを可愛らしく召し上がった。
「儂の方は魔女っぽいゼリーじゃ」
 クラウジアのゼリーは、味はそのままだが南瓜のお化けの顔みたいにトッピングした。
「たまには嗜好品を愛でるのも良いかもしれないわね」
 ヴァイスは食事不要の体質だが、祝賀会を供養と位置づけ参加もしているのだろう。
「『さて』ゼリーを頂くとするか……」
 シャルロッテはつい口癖でギフトを発動してしまった。
 発動を受け、皆、続々とゼリーをおかわりする。
 でも、こうして平和に皆でゼリーが食べられる日々も良い物かもしれない。

 了

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)[重傷]
白き寓話
村昌 美弥妃(p3p005148)[重傷]
不運な幸運
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)[重傷]
宝石の魔女

あとがき

この度はシナリオへのご参加ありがとうございました。

スライムがゼリーに見える、スライムを食べたい……。
いやいや、仰ることは、よ~くわかります!

こういう暑い季節だからこそ、ひんやりとしたゼリーはまた格別に美味しいですよね。
もちろん、私はスライムではなく、ゼリーを食べます。

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