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シナリオ詳細

カルネと鉄蹄きのこたけのこ戦争

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●カフェ『スギノ』にて
 ガラスによるの涼やかなウェルカムベルが女性ボーカルによるボサノヴァミュージックに重なった。
 白を基調とした清潔な店内には観葉植物がちらほらと並び、コーヒー豆を煎った美しい香りが漂っている。
「やあ、依頼書を見て来てくれたんだね。君と一緒に仕事ができて嬉しいよ」
 コーヒーカップを手に振り返るカルネ(p3n000010)。
「もう知ってると思うけど、今日の依頼内容は代理戦争だよ」
「そう、コトの始まりは二人の男による恋のさや当てであった!」
 カウンターの裏からニュッと生えてくるババア。
 両目をかっぴらいて、突然解説を始めた。

 町の東を牛耳るは男の中の男、ドン・マッシュー。
 奴は無類の山きのこ派で毎日三色山きのこを食べるだけでなくいちごあじやクリームサワー味の山たけのこが見つかれば金を積んで手に入れた。
 一方西を牛耳るはダンディズムリーダー、竹田仁源。
 三度の飯より里たけのこが好きな彼は里たけのこのおいしさを高める研究に余念が無く人生の半分を里たけのこに捧げていると言われたのじゃ。
 そんな二人が、ある日一人の女に恋をした。
 女は言った。
 きのこもたけのこもどっちも好きだけど……もし戦って勝ったなら、買った方を好きになる、と。
 そして奴らは戦った。
 腕相撲、大食い、熱湯風呂、ツイスターゲーム、あっち向いてホイ、バーリトゥード……しかし何をやっても決着は付かなかった。
 そう、奴らは町の東西をそれぞれ牛耳る男。力もまた互角だったのじゃ。
 だから今、最後の勝負を『自分たちの力の及ばないもの』……つまり運命に賭けることにしたのじゃ。
 特異運命座標(イレギュラーズ)……貴様らになァ!!!!

 一連の説明を両目かっぴらいたままするババア。
 説明を全部もっていかれたカルネは涼しい顔でコーヒーに口をつけていた。
「まあ、そういうわけなんだ。
 僕らは4対4に分かれてチーム戦を行なって、勝敗をつける。
 ローレットとしてはどっちも依頼人だしどっちが勝ってもいい勝負だから、この際戦ってみたい相手を指名したり実力のバランスをとったりしていい勝負になるように工夫してみるのもいいかもしれないね。
 じゃあ早速組み分けをしようか、ここに9人いるから……………………ん?」
 端から指で数え、カルネはぴたりと動きを止めた。
「まって、9人じゃ一人余――」
「カルネや、貴様はワシのチームじゃ!」
 ガッとカルネの首根っこが掴まれた。
 ババアの小枝のような腕に掴まれた。
「奴らが惚れた女というのはワシの孫! だが奴らにやるには孫はチョー可愛すぎるのじゃ。カルネ、貴様は今から村スギノコ派となり他の8人を倒すのじゃ!」
「無理いわないで!?」
「にがさん! なぜならこの依頼と勝負の見届け人は……このワシじゃからなあ!!」
 ヒーッヒッヒと高笑いするババアと何かを諦めたカルネ。
 そんな二人をよそに、イレギュラーズたちは今回のチーム分けを始めるのであった。

GMコメント

●成功条件:いい勝負をすること!
 これは直接の依頼人であるスギノババアによる条件設定です。
 山きのこ派も里たけのこ派も双方が納得するようないい勝負をして欲しい、ということだそうです。
 要するに白黒つけるための演出が欲しい、ということなのだそうです。
 じゃあなんでカルネだけをはずした?

●チーム分け
 相談掲示板を使って『ぼくきのこ!』『わたしたけのこ!』といった具合にチーム分けを行ないましょう。
 このとき必ず『4:4』になるようにしてください。別にきのこ派がたけのこチームにいても何ら問題はありません。それが依頼っちゅーもんだ。
 チーム分けが済んだらいい勝負になるようにお互いの手の内を明かし合ったり、これとこれでぶつかると派手じゃね? みたいな話し合いをしていきましょう。

 尚、カルネはこの依頼に参加していますが強制的に一人だけ『村すぎのこ派』として参戦します。
 皆さんにとって敵でも味方でもない勢力が……この戦いにいかなる風を吹き込むのか!?(開始直後ボコボコにされる方に100スギノコ)

 あ、戦場は荒野かなんかです。
 希望があれば好きなところを確保できますが、ラド・バウみたいな超有名どころ無理かなあと言っています。ババアが。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • カルネと鉄蹄きのこたけのこ戦争完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年08月05日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
真打
アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)
鋼鉄の村娘
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

リプレイ

●代理戦争はカフェから始まる
 ボサノヴァミュージックの流れる落ち着いたカフェ。
 観葉植物とモノクロ写真の額縁が並ぶ店内に、『僕はすぎのこ派です』と札を首から提げられたカルネが何か言いたげにこっちを見た。
 サッと視線をそらす『白綾の音色』Lumilia=Sherwood(p3p000381)。
「すみません……私にできることはなにも……」
「そうだよね。今回はLumiliaと戦えるだけでも嬉しいよ」
 色々諦めたらしいカルネを一旦意識の外に置いてから、Lumiliaは手元のコーヒーカップに手をつけた。
「しかし、このような方法で婚約を決めてしまっても良いものかどうか、とも思いますよね。本人たちがいいならそれで……ん?」
 口元までカップを持って行ってから、Lumiliaは話の違和感を見つけたような気がして手を止めたが、しかしなんのことだか分からずにそのままコーヒーに口をつけた。
「なに、オレたちにとってはいい試合を演じると同時に全員の力を測れるちょうどいい機会だ。
 楽しく明るく、キノコタケノコが両方満足するようなものを魅せてやろうじゃないか」
 『時空を渡る辻斬り刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は刀を抜いて各部の点検をしながら話に乗ってきた。
 刀身の曲がりや刃こぼれがないことを確認して、鞘に改めて収める。
 するするすとんというよく研がれた刀特有の美しい滑り音がした。
「たまには、普段のキャラを忘れて小物ぶってみるのもおもしろいかもしれんな?」
「恋の鞘当てと聞いたときには何をやらされるかと思ったが……確かに、うむ」
 『海侠』ジョージ・キングマン(p3p007332)は羽毛豊かな腕をグッと組み、体格のよい胸をはる。
「新参者としてローレットの実力を見るには、いい機会だ。
 模擬戦とはいえ、相手は歴史の節々に携わってきた手練れ。こちらも全力で相手することにしよう」
 ただのチーム戦ではなくあくまで見せ試合。実力を試そうとする者もあれば、演技を楽しもうとする者もある。
 そんな中で、『雲水不住』清水 洸汰(p3p000845)はいつも通りに純粋だった。
「きのこもたけのこも美味しいんだけどなぁ。けどちょっと両陣営の気持ちも分かるぜー。
 オレ達こそが唯一無二の存在って言いたくなる! なんでか知らねーけど!」
 な! と笑顔で振り向くと。
 そこには魔境が広がっていた。
「里たけのこおいしいですよね。……というわけでたけのこ派です」
「は?」
「あ?」
 テーブルから里タケノコをつまみあげ、さくさく食べ始める『鋼鉄の村娘』アニーヤ・マルコフスカヤ(p3p006056)。
 その様子を『壺焼きにすると美味そう』矢都花 リリー(p3p006541)と『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)が両サイドからにらみ付けていた。
「たけのこって野菜じゃん。野菜まずいじゃん。きのこ一択じゃん……将来の子供のためにたけのこ滅ぼさなきゃ……」
 ラブジョイ論法でうざがらみしていくリリー。
 その一方ではデイジーが山きのこをさくさくしながら威嚇の構えをとていた。
「悪しき里タケノコが二度と世迷い言を申さぬよう圧倒的火力と戦力を持って徹底的に殲滅し根絶やしにするしかないのじゃ……」
「おやおや、穏やかじゃありませんね」
 ジャコンと携行レールガンを手に取るアニーヤ。
 きのこたけもの問題はどこへいってもこれだよ。
 その一方では『幸福を知った者』アリア・テリア(p3p007129)がデイジーのかごから山きのこをさっさか奪っては袋に詰めてるし。
「今回の勝負、楽しみだね。どんな戦いになるかな」
「たけのこ派が消し炭になるんじゃないかのぉ。オォ?」
「にんじんくらい食べられるようになったし。ねェ?」
 わりといわれの無い(リリーに関してはほぼ関係ない)理由でキレちらかす二人に、テリアはバスケットの蓋を閉じてにっこり笑った。

●突然の電流デスマッチ
「両チーム、入場じゃあ!!!」
 両目かっぴらいたババアがキノコとタケノコの描かれた旗を振り上げ、そばに立っていた孫娘が大きな銅鑼を打ち鳴らした。
 すり鉢状の観客席に座ったギャラリーは皆ドン・マッシューと竹田仁源の名を叫び、両チームを応援している。
 彼らの中央には強固な金網で作られた半径50mほどの筒状ステージが形成され、ババアがキエーといいながら事故損害を確かめるためのダミー人形を投げ込んだ。
 金網に触れた途端ばちばちと電流が流れ、人形が黒焦げになって崩れ落ちる。
「まて、電流デスマッチとは聞いてない」
「よもや屋内とは」
 ステージにあげられたジョージとアニーヤが周囲を見渡した。
「私はリクエストしていませんよ?」
「オレもどこでもいいっていったぞ?」
 きょろきょろするLumiliaと洸汰。
「ということは、誰かがリクエストしたということか」
 アレンツァーが振り返ると……。
 同じくステージに上がったデイジーがピッと親指を立てた。
「わしじゃ!」
「なにしてくれてんの」
 リリーが『触ったら焼けるじゃん』て言いながら金網に木の棒をぺいぺい投げていた。
「最近暑い日が続く故、屋外だとデリケートな妾の白磁の肌が焼けてしまうのじゃ」
「より陰惨な焼け方すると思うけどね、これ」
 テリアが『まあ皆盛り上がってるしいいか』みたいな顔でステージへあがっていく。
 そこへ嫌がるカルネが簀巻き状態で天井から投下さて、むぐうといって地面をはねた。
「全員そろったようじゃのう!
 この戦いはきのこ派マッシューとたけのこ派竹田による代理戦争。
 勝者のほうを我が孫娘は好きになるという約束じゃ。
 皆の者、良いな!?
 ――試合、開始じゃあ!」

 ジョージはシャツを豪快に脱ぎ捨てると、両腕を激しくパンプアップさせた。
 ギラリと目を光らせると、デイジーめがけて突撃を開始した。
「実戦経験の差はあれど、負けるつもりは――無い!」
 羽毛に覆われた腕と胸板を見せつけるように腕組みをし、地面を盛大に蹴って跳躍。
 カモメのように、もしくはペンギンのように頑丈な素足を晒すかのように、デイジーめがけて猛烈なドロップキックで先攻した。
「ぬおお!?」
 ガード姿勢をとるも、腕組み姿勢のまま激しい螺旋回転を始めたジョージによってデイジーは派手にフェンスまで吹き飛ばされてしまった。
 そして走る電撃。
「ギャーーーーーーーー! だれじゃフェンスに電撃を流せと言ったのは!」
「アンタだ!」
「妾じゃった!?」
 キック後の反動でムーンサルトをきめ、拳を地に着けながら着地するジョージ。
「清水とSherwoodは防御の要。このチームの手札で撃墜するのは至難の業。
 であれば……それをすり抜けてクラークと矢都花を倒し、数の利をもって押しつぶす! それしかないだろう!」
「ぐぬっ、案外分析が的確! ニューフェイスだと思って侮っては足下をすくわれるぞ!」
 デイジーは両手を腰の辺りに溜めるようにあわせ、手の間に詰めたい小さな月を生み出した。
「であれば、打ち崩すのみ!」
 デイジーの誘月波(エネルギーを溜めて上下に手首をあわせるかんじで深夜自室でハーッてやったら案外出たというデイジーの必殺技である)が発射された。
「ぐおお……っ!」
 両腕をクロスしてエネルギー衝撃に耐えるジョージ。
 そこへ、明後日の方向からバールが回転しながら飛んできた。
 防御しようと片腕を翳すも、腕にバールのとんがったとこがざっくり刺さった。
「何ッ――」
「伊達にバールばっかり使ってないし」
 リリーは左手のカニハンドに巻き付けたワイヤーを引っ張り、投げたバールを回収する。
 手元に飛んできたバールをキャッチすると、再び投擲体勢に入った。
「次もねぇ……刺さるように投げるから……」
 目は軽く死んでいるが、フォームと気合いはなかなかのものだ。
「投げ斧の原理でバールを的確に相手に刺すとはな。さすがは歴戦の戦士、といったところか」
「知らないし……キレたし……」
 目を見開いて再び投擲をしかけるリリー。
 ――が、そこへ。
「絶好の位置、いただきました」
 いつのまにか高所のバーに膝をひっかけて体勢を固定していたアニーヤが、レールガンの狙いをデイジーとリリーにまとめてつけていた。
「いかん! 離れるのじゃ!」
「遅いですね」
 アニーヤの放ったレールガンシェルは空中で分離、内部の粒を拡散してステージの床に大量の穴を打ち込んだ。
 デイジーやリリーとて例外では無い――と、おもいきや。
「二人に手出しはさせないぜ! 出遅れちまったけど、巻き返していくからな!」
 素早く二人の間にジャンプで割り込んだ洸汰は、豪快なバットのスイングによって弾をまとめて吹き飛ばしてしまった。
 三割ほど飛ばしきれずに身体で受けたが、元気にニカッと笑ってアニーヤを見上げた。
 『かばう』選択時範囲攻撃を受けた際『かばう』選択者と非『かばう』対象者のダメージは重複しない。――公式Q&A340番より。
「オレはいつだって元気な清水クン! これくらいじゃへこたれねぇぞー!」
 ビッとバットを向けてくる洸汰。
 アニーヤは相変わらずの冷静な表情で、さらなる狙いをつけて連射していく。「二人同時に庇う防御型タンク。豊富なHPもあってワンターンキルは困難。なるほど、厄介ですね」
 銃弾を撃ち込んでいくたびに洸汰は防御を繰り返すが、そのせいで逆にデイジー・リリー・洸汰の三人が離れられなくなっていた。
「厄介ですが、こちらはそれにかぶせることで陣形の選択肢を奪うことができる。これがどういう意味を持つか……おわかりでしょうか」
「いててっ……!」
 バットを振り回しまくって防御を続ける洸汰。
 そんな彼の横をすり抜けるように、螺旋飛行したLumiliaがフルート演奏を高く響かせた。
 音の力が洸汰に宿り、彼に打ち込まれた弾が次々に排出。傷口が白い光によってふさがれていく。
 アニーヤはステージ上を所狭しと飛び回るLumiliaを視界におさめこそしたものの、射撃をピンポイントであてて撃墜するのは難しいように思えた。
「前に出て味方を癒やし、そのうえで攻撃をかわして居座る。この手法でチームを勝利へと導いてみせましょう」
「倒せないヒーラー……これもまた、厄介ですね。彼女だけは陣形に縛られない」
「いいだろう、ならば教えてやる!」
 アレンツァーは大地を踏みつけ、片目から青白いスパークを発した。
「お前に足りないもの! それは! 五月雨機動力逃走疾風迅雷飛燕天舞再行動Ⅱ一気呵成超反射神経絶影そして何よりもォォォォ!」
 洸汰の眼前にまで瞬時に接近し、刀の柄を握り込む。
「反応が足りないッ!!!! 喰らえソニックエッジィ!!!!」
 引くほど露骨なあおり顔で繰り出された斬撃が、青い稲妻となって洸汰を襲う。
 恐ろしい威力に洸汰は吹き飛ばされそうになるが、なんとかその場に踏みとどまった。
 右腕のしびれと全身の強烈な冷え。洸汰の身体を走り抜けた電流が、わずかに残ってばちばちと走った。
「ま、まだまだ……!」
「頑張ってるね! ねえ、戦いの途中だけどお菓子どう?」
 めっちゃシリアスにやってる中で、急にテリアが洸汰のそばでバスケットを開いて見せた。
 中にぎっしり詰まった山きのこ。
「お主たけのこ派のくせにきのこを差し入れするとは……なかなか見上げた奴じゃの」
「えっ、いいのか? いまか!? じゃ、じゃあ一個だけ……」
 善良100%の洸汰はそのピュアさからか黒塗りのバスケットに手を伸ばしてしまう。その瞬間繰り出されたテリアの奇襲とは。
「いけません、洸汰さん! 罠です!」
 Lumiliaの警告よりも早く、テリアの手のひらは洸汰の額にぴったりとつけられていた。
「やべっ――」
 瞬間、洸汰が宙を舞った。
 激しく後方縦回転をかけながら飛び、金網に激突する。
 はしった電流にしびれながら、洸汰はその場へ崩れるように倒れた。
「か、身体の自由が……付与効果が……」
「私と洸汰さんの間には埋められない数字の差があったよね。だから工夫をして、その差を埋めさせて貰ったよ」
 テリアはわざとバスケットを逆さにすると、山きのこをばらばらと床へお年始めた。むろん、挑発によって相手の混乱をさそうためのパフォーマンスである。よい子はまねしちゃダメだぞ。
「純粋な人ほど善意に弱い。そして洸汰さんのようなタイプのタンクは『ショウ・ザ・インパクト』が刺さる」
「おのれー! きのこを捨てるとは――」
 ツボを振り上げて襲いかかろうとしたデイジー。その横にいたリリーがハッとして振り返る。
「やばいじゃん。今洸汰っち離れてるから――」
「そうです。それがタンクの隙であり――陣形の穴」
 アニーヤが、再び拡散レールガンを連射した。

 実力的に優勢と思われていたきのこ派が戦術的な隙をつかれてピンチに陥る。その様に、観客たちは興奮していた。
 その興奮に混じってひっそりと動く者が、あった。
「ふふふ……卑怯な手を使って妾の盾を遠ざけたようじゃが、どうやら忘れておるようじゃのう」
 デイジーがどっからか取り出した眼鏡をすちゃっとかけ、知的に不敵にニヤリと笑った。
「このデイジー・リトルリトル・クラーク様がいることをのォ!」
 どやあと胸を張るデイジー。
 すると壺の中から里タケノコ(今夏限定バージョン)を出した。
「な、なにを……」
「のう、妾は思うのじゃ。伴に手を取り合り歩むことは出来ると!」
「いまさらそんなことを!」
「聞くのじゃ。キノコだタケノコだと争うのは愚かなこと。ここは一つ妾のような純粋な幼女の涙に免じて……山きのこが一番美味いということで各々武器を下ろさぬかの?」
 突っ込みどころ満点の煽りに、アレンツァーが剣を振りかざす。
「下ろすわけがないだろう! 死ねィ!」
 と、その瞬間。
 デイジーの後ろから何かがきらりと光った。
 光はピンポイントでアレンツァーの目を覆い、ほんの僅かに視界をくらませる。
「遅いのじゃ」
 ニヤリと笑ったデイジーが渾身の煽り顔と共にディスペアー・ブルーを繰り出した。
 自分の攻撃よりも早く打ち込まれたことで、アレンツァーが膝を突く。
「馬鹿な……オレが、遅い(スロウリィ)……?」
 崩れ落ちるアレンツァー。
 転がる刀。
「紫電さん!」
 駆け寄ろうとするテリア。手のひらを向けるデイジー。
 テリアは迷い無くディスペアー・ブルーの魔術を音波の卵に変えて発射し、デイジーもまた同じように発射した。
 交差、着弾。同時に爆破。
 直撃をうけたテリアとは対照的に、デイジーへの攻撃は洸汰が割り込むことで肩代わりしていた。
「お主、身体は……」
「Lumiliaのおかげでぴんぴんしてるぞ!」
「ここからはオレにまかせとけ!」
 追撃の音波卵をミットグローブでキャッチして握りつぶすと、洸汰はバットを構えた。
「その意気や、よし!」
 ジョージは洸汰めがけて猛烈に走り込むと、ジャンプと同時に大きなコウテイペンギンへ変身。ペンギンヘッドバッドミサイルを繰り出した。
「けど清水、アンタの相手は俺がさせてもらう!」
「うおっ!」
 ジョージのヘッドバッドミサイルによって派手に吹き飛ばされた洸汰。
 しかし二度同じ攻撃は食らわない。空中でバットを振って強制的に勢いを逃がすと、耐電シューズで金網を蹴ってジョージめがけて殴りかかった。
 バットと拳が交差する。
「あたいを忘れて貰ったら困るし……洸汰っちシールドが使えないなら、もうこれしかないじゃんねぇ……」
 リリーはバールを放り出し、凄まじい鋭さで大地を踏みつけた。
 ただ足踏みをしただけではない。鍛え抜かれた動きによって振動が波のように広がり、ジョージが思い切り吹き飛ばされていったのだ。
「タケノコ死すべし」

 猛烈なぶつかり合い。
 互いに一人また一人と倒れ、残ったのは……。
「まさか、私になるとは」
 Lumiliaはフルートをホルダーにしまい込み、代わりに桜色に輝くエストックを出現させた。魔糸によて編み込まれた剣はきわめて柔軟できわめて鋭い。そしてLumiliaの身体能力を直接引き上げる効果ももっていた。
 対するは、弾切れになったレールガンを捨てて腰からサブウェポンの拳銃を抜くアニーヤ。
「あなたの魔力はつき、こちらにはまだ拳銃の弾がある。勝負はついたと思いませんか」
「いいや、まだだね」
 そこへ!
 現われる!
「ここまで君たちがスルーしてくれたおかげで、最後の戦いにねじ込めたよ。今日は見せてあげる、僕の――」
 カルネ――がアニーヤの射撃とLumiliaの斬撃によって飛んでいった。
 電撃フェンスにぶつかってあがががといったあと、頭から地面に落ちる。
 それをゴングに――Lumiliaとアニーヤが同時に動く!
 勝敗は――。

●後日談
 激戦の末、きのこ派の勝利に終わった代理戦争。
 ドン・マッシューと竹田仁源による恋のさや当ては終わったかに見えたが、とうの娘はこう言った。
「私、きのこを好きになるとはいったけどマッシューを好きになるとは言ってないわよ?」
 そして、男たちは崩れ落ちたという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

『女は言った。
 きのこもたけのこもどっちも好きだけど……もし戦って勝ったなら、買った方を好きになる、と』

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