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シナリオ詳細

<夏祭り2019>蛍爛漫
<夏祭り2019>蛍爛漫

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ここは海洋のとある村。清い小川から命の恵みを授かっている。
 小川の精霊に報いるために、この村では毎年蛍を放流している。
 緑に、あるいは黄色に、ついては消え、消えてはつく蛍の光は、ここを訪れる人も癒すだろう。

 丸い提灯へ火を入れて、さくりさくりと獣道を行けば、せせらぎの音が聞こえてくるだろう。
 夜、道は暗く、灯りはない。手元の提灯だけが、かろうじてあなたに次の一歩を知らせる。
 暗くて、でも真夏の情緒にあふれていて、どこかどきどきする細い道。
 気を抜けば森の精気にあてられて迷ってしまいそう。
 耳をくすぐるせせらぎの旋律をしっかりとつかんで、離さないで。
 森の声、虫の吐息、木々のささやき、そんなものに惑わされないで。
 連れがいるなら手をつないで。
 この暗闇に負けぬよう。提灯の灯りとつないだ手だけを信じて。
 藪を抜ければほら、待ちわびた小川が流れている。
 その川底の丸くて白い小石が、月の光を反射し白々と冷たく光ってあなたを迎える。

●だったんだけどね
 場所は変わって、いらっしゃいませローレット。
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はあなたを見かけると手招いた。
「やあきれいな浴衣だね。そんなキミにぴったりの依頼があるんだけど、一口どうだい?」
 あなたが近寄るとショウは椅子を勧めた。
「海洋のある村で、毎年この時期に小川へ蛍の放流をする村があるんだけど、今年は蛍が用意できなかったらしいんだ。そこで仕方なく練達を頼ったらしいよ」
 そういいながらショウはリングケースくらいの小箱をとりだした。ふたを開けると宝石のような虫と地味な甲虫が一匹ずつ、せわしなく動き回っている。
「蛍の雄と雌だ。これを……」
 ショウはケーキボックスくらいの虫かごを横へどんと置いた。
「クローン技術で千匹に増やしたのがこちら」
 なんかみちみち言ってるぞおおおおおお!
「これがまだまだたくさんあるんだよ」
 わあ。早く解放してあげなきゃ。
「だろう? というわけで、前述の小川でこの蛍たちを放流してくれ。その後は自由時間だ。軽く散歩でもしながら蛍狩りをするといい。夏の夜を楽しんでおいで」
 ああ、それと、とショウは続けた。
「小川の底にある白い石は魔よけのお守りになるんだって。大事な人へのお土産にいいかもね」
 それじゃ、あとよろしく。と、ショウは大量の虫かごを置いて立ち去った。

GMコメント

みどりです。
暑い! 夏は! 浴衣!
このシナリオでは2019サマーフェスティバルの『浴衣イラスト』を可能な限り参照して描写します。

>同行者
ご一緒したい皆さんと同じタグ、またはフルネームとIDをプレイングの一行目に入れてください。
ない場合はてきとうにまぜくります。
独りで参加したい方は【ソロ】と記入してください。

>小川
幅2m、水深30cm程度。ひんやりしていて気持ちがいいです。

プレイング簡略化のため、蛍はすでに放流されていてもよしとします。
あなたは虫かごを持っていてもいいし、持っていなくてもかまわない。
ただ提灯は忘れないで。森の夜気に惑わされて帰り道がわからなくなっちゃいますよ。

下記NPCは自由に呼び出せます。
 12才男ベネラー おどおど
 10才男ユリック いばりんぼう
 8才男ザス おちょうしもの
 8才女ミョール 負けず嫌い
 10才女『無口な雄弁』リリコ(p3n000096)
 5才女セレーデ さびしがりや
 5才男ロロフォイ あまえんぼう
 3才女チナナ ふてぶてしい
 院長イザベラ くいしんぼう

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <夏祭り2019>蛍爛漫完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年07月28日 23時00分
  • 参加人数 30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白い烏
ラダ・ジグリ(p3p000271)
静謐なる射手
上谷・零(p3p000277)
出張パン屋さん
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
白綾の音色
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
リゲル=アークライト(p3p000442)
死力の聖剣
ウェール=ナイトボート(p3p000561)
守護する獣
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
武器商人(p3p001107)
闇之雲
マルク・シリング(p3p001309)
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
舞蝶刃
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる白狼
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ヘリオトロープの黄昏
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
玲瓏の壁
蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アニー・メルヴィル(p3p002602)
お花屋さん
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
桜咲 珠緒(p3p004426)
吐血の方
メイメイ・ルー(p3p004460)
さまようこひつじ
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
沁入 礼拝(p3p005251)
足女
道子 幽魅(p3p006660)
拒絶聖域
フィーア・プレイアディ(p3p006980)
CS-AZ0410
スィフィー=C=シェイル(p3p007015)
空の天蓋
グランツァー・ガリル(p3p007172)
大地賛歌
ネーヴェ(p3p007199)
うさぎのながみみ

リプレイ

「それじゃいきますよ……」
 ベネラーが虫かごを開けると、噴水のように蛍が溢れでた。青に薄い白の縦線が入った浴衣を着たグレイルがそれを眺めて言った。
「…蛍…綺麗だね…やりすぎかと…思ってたけれど…これはこれで…。そういえば…小川の小石が…お守りになるんだって……。…ベネラーさんには…大切な人って…きっと孤児院の子たちだよね…お土産に白い石を…持って帰ったらどうかな…?」
「そう、ですね……」
 ベネラーは小川の底を探っていたが、やがて白い石をグレイルへ差し出した。
「今日、僕が一緒に過ごしたいと思ったのは、グレイルさんだから……友情の証として受け取ってください……」
「…ありがとう…」

「雪ちゃん、暗がりやで足元気ぃつけて?」
「はい、蜻蛉さんも、お気をつけて」
 長い髪を太い三編みにし、それを結い上げている蜻蛉。白地の浴衣に散る椿模様がどこか愛らしい。雪之丞は普段おろしている髪をポニーテールにして、桃色の浴衣を身に着けていた。帯に挟んだ薔薇の根付が華やかだ。
「ほな、この辺で……ええやろか? この子たちも箱からはよ出たいやろし」
 二人は虫かごを開いた。ありえない量の蛍が絡み合いながら夜空へ舞い上がる。言葉もないとはこのことだろう。ふたりはしばらく蛍が織りなす光の乱舞に見とれていた。
 やがてそれも終わり、蛍たちが小川の川岸にそれぞれの居場所を定めた頃、ふと二人は小石の伝説を思い出した。
「石、探しませんか」
「せやねえ」
 蜻蛉はゆるゆるとほほえみ、雪之丞の提案にうなずいた。浴衣のすそをめくりあげ、ひょいと入った小川はひんやりと冷たく心地よい。二人はそれぞれ腰をかがめ、小川の底を見て回る。雪之丞は平たく丸い小石を見つけた。
「蜻蛉さん。よかったら、これを」
 小石の水気を拭き取り、蜻蛉へ差し出す。厄除けになるならば蜻蛉に持っていてほしい。雪之丞はそう願っていた。
「……ほな、うちはこれを」
 代わりに差し出されたのは小さいけれど星の形をした白い石。雪之丞の手のひらへ握らせ、その上からぎゅっと小さな手を包む。相手を大事に思う気持ち、それこそが……何よりのお守り。

 自分たちを包むように踊る蛍たち。
 蛍は真っ白な花が美しい浴衣を着て、珠緒は深い紺に蝶が舞い飛ぶ浴衣に身を包んで、色違いの狐のお面をひっかけて。どこか怪しく笑う狐面を蛍が照らしている。
「綺麗なのは心地よいですね」
 と、珠緒が言った。
「うん、壮観ねぇ。ボクの故郷の物語ではね。昔の人が、「人の魂は蛍となって飛び去るもの」って書いてるものが結構あるんだ。だからかな、このすごくきれいな景色が少し怖く感じるのは……」
「虫も命ですが、人と思うとまた違って見えますね。魂人生とは、また考え出すと深そうなのです」
「案外フリーダムな魂人生を楽しんでたりしてね」
「蛍さんのお名前は、やはりここから?」
「うん、親が何を思ってこの名前にしたのか、結局聞けずじまいだなぁ。強く長く輝くでもない、儚く舞って、光って消えるこの虫に、何を託したかったんだろう……」
 珠緒は顎をひいて、ゆっくりとまばたきをした。
「……これは、桜咲の推測でしかないのですが。魂の光というお話、よく触れられていたのは偶然ではないのやも」
 そう言って珠緒は包むように蛍を一匹捕まえた。
「魂魄と言う言葉がありまして……大雑把に、精神と肉体です。魂、つまり精神面の輝きを大切にする方であってほしい。そう、思えました」
 珠緒が手を開き、蛍が飛んでいく。
「心の輝きかぁ。蛍と違って目に見えないから、難しいね……。名前負けしないようがんばらないと!」

「ふわあ~、とってもキラキラしてて綺麗……!! なんだか心が温まるね…!!」
「ほんとだねシオンちゃん! なんだか光の中を泳いでるみたい!」
 紺地に水玉模様の入ったシックなシオンの浴衣に対して、焔は紫の入った布に猫さんマークがバランスよくプリントしてあるポップなものだった。
「ね、せっかくだから川にも入ってみようか」
「うん…! 溺れる心配もないしね…!!」
 焔を見習い、シオンは下駄を脱いで、浴衣が濡れないようにめくりあげた。ちょっとはしたない? でもここにはシオンと焔だけ。
「ほらほら、シオンちゃん、あっと、と」
「焔! だいじょーぶ…?」
 転びかけた焔の腕をシオンが掴んで支える。
「危なかったら俺がしっかり焔の手を掴んで助けるからね…!!」
「ありがとう。転んじゃわないようにしっかり掴んでてね」
 ふたりは手をつないだまま石探しに興じる。
「シオンちゃん、この小川の白い石って魔除けのお守りになるんだって」
「そーなんだ…! とっても綺麗だしご利益ありそー…!」
 二人は同時に、気に入った石を見つけた。
「シオンちゃんは大事なお友達だし、元気でいてほしいから持っててくれると嬉しいな!」
 そう差し出されたのは丸みを帯びた長方形の石。シオンはそれを受け取ると、おにぎりみたいな小石を返礼に出す。
「じゃあ俺からは、大好きな焔が元気で、どんな依頼でも無事でいられますよーにって祈りをこめて…!!」

 舞い飛ぶ蛍のなんと幻想的なことだろう。礼拝はまるで金魚の尾ひれのようなドレープたっぷりの浴衣を風に遊ばせている。浴衣のすそに蛍が止まって、鱗のようにきらめいた。
「あ……と、ごめんなさい。転んでしまいそうですね。よろしければ、その、転ばぬ先の杖に、手を握らせていただいても?」
「もちろんですとも」
 ジョセフは紳士的に手を延べた。
(うふふふふ、うれしいな。礼拝殿からの誘いだ。断るなんて考えられんな!)
 ジョセフは提灯を下げ、足元を明るく照らす。もちろん礼拝のためだ。
 ふとジョセフが立ち止まった。
「魔除けの小石を見つけたので、川に入ってとってきても?」
 ジョセフは小川へ降り、碁石ほどの白い石を礼拝へ見せる。
「我々はイレギュラーズ。今は平穏なひと時を過ごせているが、その身に何が降りかかるか分からない。気休めかもしれないがせめて、この私の気持ちが貴女と共にありますように」
 礼拝は両手で包むようにそれを受け取ったが、その表情は曖昧なものだった。
「恋し恋しと鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす……なんてジョセフ様はご存知かしら?」
「今、なにか?」
「いいえ……」
 礼拝は拗ねたように笑った。もとより聞かせるつもりなどない。白い石の礼は袖にとまった蛍。
「灯を、貴方に」
 大切にされて、大切にするだけでは少しだけ不満なのです。だから少しだけ意地悪をします。石よりも脆く不確かな恋を、貴方に……。

 おぼつかない蛍の光と、ゆらめく提灯の灯りだけがすべて。
「ふふ、風情があるわね。魔法とかに頼らない光というのも趣深いわ」
「はい…この…煌びやかさは…魔法では…表現…できません…」
 レジーナは一歩後ろを歩く幽魅へ手を伸ばしした。
「ゆみ、離れないように手をつなぎましょうか」
「…て、手を……!? で、では…し、失礼…します……」
 提灯の薄明かりでもわかる、ほんのり染まった幽魅の顔。
 やがて虫かごから解き放たれる蛍たち。
「飛んでいきますね…蛍…。あっ……わぁっ……蛍って、こんなに…光る…のですね」
 うねるようにさざめくように、蛍たちの光のカーテンが二人を包む。しばらくそれを目で追っていたレジーナは幽魅へ視線を戻した。
「綺麗なのだわ」
「うぇっ…!? 綺麗って……その…急に……」
「ふふ、蛍のことよ。あら、なんの事だと思ったのかしら?」
 意地悪な笑みを浮かべて善と悪を敷く天鍵の女王は笑う。幽魅は驚きと恥じらいとがっかりとその他諸々の感情を眉を寄せて表した。
「んもぅ…レジーナさん…わざと…紛らわしく」
「ふふふ。ゆみは蛍に似ているわね」
 それって……。今度こそ真っ赤になった幽魅にレジーナは蛍の舞い散る中、ステップを踏んでみせた。
「ゆみも一緒に踊ってみない?」
「え? 私も…? お、踊りは…初心者なので……その…リード…お願い…します…」
 それは二人だけの秘密の舞台。

「ふうりゅう」。
 それは人間の感覚を理解する上で重要な事項であるらしい。季節は限定されないが、コストを考えると、今の季節が最も「ふうりゅう」であるようだ。
 フィーアは手にした虫かごを眺めた。うぞうぞと蛍が蠢いている。これらはすべてクローニングされたものだそうだ。自分の体に不具合が生じたら練達に頼るのが良いかもしれないとフィーアは思った。
 虫かごから虫を放流し、愛でる。愛でると言っても何をすればいいかわからないから眺めているだけだが。今はまだ何も感じない。けれど経験を積んでいけば、何かが彼女の中で芽吹くだろう。
 ひとまず今日のところは。
「状況「ふうりゅう」を終了。帰投します」

 孤児院の子供たちが小川の脇ではしゃいでいる。
 あ、こけた。ザスが膝小僧をすりむいたらしい。
 ウェールは手早く消毒と手当をし、念の為治癒符を使った。
「おおすげえ! 痛くねえや! ウェールのおいちゃん、ありがとな!」
「おいちゃんはやめてくれないかなあ。俺まだ32だよ」
「じゃ、ウェールさん!」
 はじける笑顔がまぶしい。
(……息子ともっと早く会うか、俺が洗脳で悪役にされなければ、こんな風にもっと元気に笑ってくれたのかね……)
 いかんいかんと頭を振る。今年の浴衣は梅のうちわを合わせた漆黒に銀糸で勿忘草。そのせいか、つい感傷的になる。そんなウェールにポポが寄り添う。
「心配してくれてるのか、ありがとう」

 Lumiliaとスィフィーは小川のほとりで楽器を演奏していた。ひっそりと、物静かな、なめらかな旋律の楽曲だ。題名はない。二人の即興だからだ。音楽は蛍の乱舞をいやまし、夏の夜を彩る。
(夜空で蛍に捧ぐ歌というのも、中々ロマンチックなものだ。二重奏のお相手が素敵なお嬢さんなら尚更というものだし)
 スィフィーはLumiliaの横顔を盗み見る。演奏に熱中するLumiliaの姿は浴衣。淡い桃色の布地に金魚を泳がせて、帯にも金魚の尾ひれを思わせる帯飾りをしている。帯と伊達襟だけはシックな色で全体を引き締めて。
 Lumiliaは慎重に丁寧に、森の静けさを壊さぬよう銀のフルートを吹いている。スィフィーはそれに合わせてギターで伴奏した。重なる音は森の夜気を清浄なものに変え、あたりを快い風で満たした。
 一休みに入ったLumiliaが呟く。 
「……蛍、夏の風物詩ですね。師の故郷でもよく見られたとか。長い……永い旅に出た貴方にも、この曲は届いていますか? なんて」
「……おや? 師匠は旅にでも出ているのかい?」
「ええ、まあ」
 Lumiliaは言葉を濁す。
「まあ、蛍は生霊とか、夢を見ている人が顕れたもの、なんて言い伝えを聞いたことがある。もしかしたらひょっこり夕涼みに来ていることもあるだろうさ」
「そうですね。……だと、いいな」
 Lumiliaが夜空を見上げる。星々と見まごうほどに蛍が光っていた。

 梢を飛ぶ鳥、森の夜気、あるかなきかの獣道。グランツァーは提灯を片手にそこを歩いていた。ねっとりと重たい夏の夜。だが深く息を吸い込めば、自然の香りが鼻腔を抜ける。遠くから聞こえる、あれはせせらぎの音。街の喧騒とは無縁の、自然音だけの場所。まるで世界に自分だけになった気がする。
「すばらしいですねえ。ええ、こういうのが堪能できるのであれば、時には獣道も悪くないというもの。すべからく整地し、道を敷くのも無粋というものですよお」
 小川へたどり着いた彼は蛍を放つ。淡い光の旋風が巻き起こり、前髪を揺らす。もう一度大きく息をして、ただただこの大自然へおわす精霊へ感謝をし、彼は帰途についた。

「やーん、ネーヴェの浴衣、とっても素敵? こんなことならアタシも着てくればよかったわ」
「あ、ありがとうございます……少し、恥ずかしいですが、…ふふ、嬉しいです」
 ジルーシャの言葉にネーヴェは恥じらってうつむいた。
 ネーヴェの浴衣は白に淡い緑の入ったストライプ。そこへ挿すように入れられた椿と蝶の赤い柄が彼女らしい。普段はおろしたままの髪も二箇所で留めて、気持ち凛として見える。
「はい。転ばないように、アタシと手、繋ぎましょ♪」
 夜の森は足元が見え辛くて危ないもの。可愛い格好の子を怪我させるなんて男がすたるってもんじゃない。ジルーシャは提灯で獣道を確かめつつ前を進む。せせらぎの音が大きくなってきた頃。
「グレイ様、グレイ様。上を、見てください。あれは……」
 あちこちで淡い光が明滅している……。
(この綺麗な光は、グレイ様の元いた世界でも、同じものだったのでしょうか)
 ネーヴェがジルーシャを見た。聡いジルーシャはすぐに彼女の言いたいことを掴んだ。
「ええ、そうよ。……実を言うとね、アタシもこっちの世界で蛍を見るのは初めてだったの。同じものを見て綺麗と感じられるのって素敵なこと。だから、アンタと見られてよかったわ♪」
 す、と指先を差し出すと蛍がとまった。まるで指輪のよう。それをネーヴェへと差し出す。ネーヴェもそれを受けて指を差し出した。
「…はい。わたくしも。グレイ様と一緒に見られて、良かったです」

「夜道の先導は任せてちょうだい、暗いほうが私、よく見えるの」
 そうリノは笑ってラダの手をとった。リノは黒と鶯色を半々に織り込んだ縦縞の浴衣。闇夜に溶け込むようなその姿が、かろうじて提灯の灯りにきらめく髪飾りで見分けがついた。ラダは色違いのおそろい。こちらは落ち着いた白に茶鼠を合わせた縦縞。闇夜の中ではよく目立つ。長い白髪はゆるい三編みにして、歩くたびにぽんぽんと揺れる。
 リノの先導もあって小川へはすぐについた。蛍たちを空へ帰してやる。光の噴水が降り注ぎ、リノとラダは幼子のような瞳でその光景を見守った。
「蛍ってこんなに光るのねェ。メスの方はどうして光らないのかしら、不思議だわ」
「一応メスも光るみたいだけど……」
「へえ。それにしても綺麗ね……水の良い匂いもするし、ステキな場所」
「提灯がいらないくらいの蛍の数だな。この季節特有の風情がある」
「連れて帰りたいけど……私、世話する自信ないのよね。せっかく放流したんだし、このまま眺めてるだけにするわ」
「ははっ。この灯りだけを持って帰れたら一番だったな。今夜限りだからなお綺麗に見えるのかもしれないが」
 ふたりは静かに蛍の鑑賞をした。リノがまばたきをして笑みを浮かべる。
「あら、ラダったらステキなブローチね?」
「ブローチ? そんなのつけて――おや、これはいいな」
 ラダの浴衣に蛍が止まっていた。
「リノもどうだ、きっと黒にはいっそうよく映えるぞ」

 赤と青、豪奢な紐飾りで彩られた水着の上から羽織を引っ掛けて、虫かごを抱えた人物が提灯片手に夜道を行く。その顔はどことなく強張っている。
 せせらぎの近くについたその人物は虫かごを置き、蓋を開けると同時にバッと飛び退いた。かごからは花火みたいな勢いで蛍が飛び出してくる。
「おひゃアあああヒェえええええ!!!」
 悲鳴を上げたその人物は姫喬。ばくばくする胸を撫でながら、提灯でガード。
「あああああほんっとびっくりしたーーー!」
 じつは姫喬、虫は苦手。でも絵本で見た蛍舞う景色をこの目でという誘惑には勝てなかったのだ。一呼吸置いて川へ素足を突っ込む。
「……なんだ、案外綺麗じゃん。いっひひ」

 リゲルとポテトは小川への道を急いでいた。
 提灯の明かりに照らされた、リゲルの浴衣は青一色と見せかけて流水文をちらし、笹の葉をいれた一枚。千鳥格子の帯に扇子を添えて。黒い下駄が粋だ。
 ポテトは長い髪をゆるく結い上げて、しゃらりと飾りのなる簪で押さえ、要所は髪飾りを使っている。その髪飾りと同じ深い藍色の浴衣には流水紋と六花紋が染め入れられ、高めにとった帯は翡翠と萌黄色のツートンカラー。さりげなく伊達襟とも色味を合わせている。
 放した蛍の乱舞に見とれていると、ポテトがリゲルを振り返った。
「この小川の白い石は魔除けのお守りになるそうだ」
「なんだって、それは拾うしかない。ポテトはそこで見守っていてくれ!」
 言うなりリゲルは腕まくりをし小川へ入った。形の良い小石を選び抜く。
「リゲル、いくつも探してるが、誰のものだ?」
「孤児院の子どもたちと院長へ9個だろう? それからもちろんポテトとノーラの分。ついでに俺もひとつ」
「合わせて12個かぁ。がんばれー」
 やると決めたらやるのが漢。リゲルは見事12個の丸い小石を探しだした。岸に上がってきた彼へタオルを渡し、小石を預かって水気を取るポテト。作ってきた巾着袋に小石を入れて。
「おつかれさま。あっちに孤児院の子たちがいたからあとで渡しにいこうな」
 そう言ってポテトはリゲルへ、銀の星の刺繍入りの青い巾着を渡す。
「お守りありがとう、私のお星さま」

 帯をだらりと垂らして、武器商人は歩く。青い蝶が炎のように宿るカンテラを片手に。もう片方の手には、小さな灯りが鬼灯のように連なる提灯を持って。
 すいと顔を上げた武器商人は闇の中、転んでいる少女を見つけた。たしかミョールと言ったはずだ。
 武器商人は彼女を助け起こすと、鬼灯をひとつ与えた。
「ふん、ありがと。一応お礼は言っておくわ」
 ミョールはじっと武器商人を見つめた。
「あのさ、言っとくけど、リリコのことあまり信用しないほうがいいわよ。あの子、優しくされるところっといっちゃうから」
「おや……我(アタシ)がリリコと仲がいいから妬んでいるのかい?」
「ばっ、馬鹿言わないでよ! そんなわけないから!」

「綺麗な景色を維持するには、影でいろんな努力があるんだなあ……」
「それはわかるけどこの数は……小川の精霊様は欲張りなのかしら」
 かごの中でうぞうぞする蛍たち。小川についたことだし、さっさと放流してあげよう。マルクとアンナはかごをあけた。すると思いもよらなかった光のショーが見れて、アンナは一瞬我を忘れた。意外と元気そうに飛ぶ蛍達を眺める。
(蛍の光は人の霊魂と信じている場所もあるようだけど。先の戦いで散った魂だと思うと少し感傷に浸れるわね)
 明滅する黄緑の灯りたち。水面に写り、まるで違う世界の扉を見つめているような気になれる。
 ふと視線を感じ、アンナは隣を見た。そこには物言いたげな目をしたマルクがいた。マルクは、そっと、しかしきっぱりと言い放った。
「ねえ、アンナさん。キミが好きだ、と言ったら、迷惑かな……」
 アンナの気持ちはここにいない彼女にあるのだろうとわかっていたけれど、言葉にせずにはいられなかった。アンナは少し迷って、正直に答えることにした。
「迷惑ではないわ。でも…少し、困ってしまうわね」
 正直嬉しい気持ちはある。私が彼女に会わずにいたら、なんて、ありえない仮定……意味のない。
「……ごめんなさい。その気持ちには応えられないと思う」
「多分、そうだと思ってた。それを確かめられて良かったよ」
 答えをくれて、ありがとう。マルクはどうにか、笑顔で取り繕えた。

 暗い道を歩くアニー。ハーモニアは木々のささやきが聞こえてしまう。彼女は獣道からふらり、森の中へ。
「アニー!」
 同道していた零がアニーを抱きしめた。アニーの意識が戻る。
「あ、ごめんね、つい、…私ちょっとどうかしてたよね…」
「してたよ。なんかもう、戻ってこなさそうだった」
 零がアニーを抱きしめなおす。
「零くん、苦しいよ」
「だめだ。離さない。……消えちゃいそうだから」
 伝わってくるのは不安と焦燥。アニーは零の背をポンポンと叩く。
「零くん、手、つないで。そしたらきっと迷わない」
「うん、あっ、ああ! うん! わかった!」
 ようやく自分が何をしていたかを理解した零は、のけぞるようにしてアニーから離れた。おそるおそるアニーと手を繋ぐ。零の手の乾いて暖かく、心地よくて、森の悪いものは引き潮のように引いていく。
 ようやく森を抜け、小川へたどり着いた。蛍を放し、まるで夢のようなひと時を過ごす。
「蛍……キレイだね。小川の音がとっても心地いいなあ。ぁ……白いこの石が魔除けになるんだね」
「せっかくだし、俺もひとつもらっていくかな。…お土産…」
 ちらりとアニーを見ると、なにやら思案顔。
(これがあれば迷わない、かも。でも私は……)
「零くん…あの、帰りも…手繋いでくれるかな……?」
「……っ! ……あ、あぁ、良いよ。君が良いなら…喜んで。…手、繋いで帰ろうか…っ」
 彼女のことだから他意はない。わかってはいる、でもきっと自分はその手を離さない。

 クリスティアンはのんびりと川沿いを散歩していた。つかの間の宝石のごとく光り輝く蛍の群れ。視線を上げれば流れるミルキーウェイ。
(うーん、この夏の香りと小川の流れる音……。夏本番という感じだね。風にすら風情を感じる。しかしながら、この森が音を吸い込んでしまうような不思議な感覚……。まるで異世界にでも迷い込んでしまったかのように感じるよ)
「って、ボクはそもそも異世界人(ウォーカー)なんだけどね! ハハハハ!」
 返事はない。と、思ったら、川底で何かがきらめいた。近くに寄って覗いてみると、白い小石だ。
「特別輝くものではないはずだけど……。この石になにか運命があるのかも知れない。なーんてね」

 森の中で迷うメイメイ。提灯の明かりは消えたまま。だけどいいのです。なんだか高揚して、気持ちが良くて、ほら妖精が手を鳴らしてこちらへおいでと招いている。らるらるるぅ、らるるる、るぅ。森の奥へ奥へ、メイメイは分け入っていく。

成否

成功

MVP

桜咲 珠緒(p3p004426)
吐血の方

状態異常

なし

あとがき

ホタルの放流おつかれさまでした。
MVPは蛍の伝承を美しく伝えた珠緒さんへ。
称号「孤児院顔パス」をウェールさん、グレイルさん、ポテトさん、リゲルさんへ。
「鳴かぬ蛍」を礼拝さんへ。「大自然の申し子」をグランツァーさんへ。
その他小石を拾った方々へ「白い小石」をお送りしております。ご査収ください。

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