PandoraPartyProject

シナリオ詳細

いちばんの、ひとさら

完了

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●……あるよ。
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦 (p3n000097)はある日、ローレットに集まっていたイレギュラーズに集まってくれるよう、頼み込んだ。
 何人、という制限を設けず。まあ、居るだけいればいい。そんなニュアンスだ。集合場所は料理店。そこそこの規模で、フロアは2つ。ある程度の人入りも見込める場所……そこは今、貸し切りになっている。
「いらっしゃいませ。ご自由におかけ下さい」
 店に入ったイレギュラーズは、一瞬だけ思考がフリーズした。フリル混じりのウェイトレス姿をした三弦という、いささかキツ、不似、じゃなかった個性的な格好をした彼女が待っていたからだ。
 背後には、大柄な男が背中で語るとばかりに後ろを向いていた。こちらを向く様子はない。
「ああ、この格好は今日だけです。別に副業じゃありませんよ。今日は皆さんを接待する立場、というだけですから」
 三弦はそんなことをいうと、訝しみつつ腰掛けたイレギュラーズに水を差し出す。メニューの所在を確認しようとした彼の前に、何を言うでもなく太い指が伸びてくる。指というか、主人の男が料理を差し出したのだ。
「これでも飲むといい」
 友好的には聞こえがたい声で差し出されたのは、レモネード。一見するとどこにでもあるものに見えるが、受け取った相手――旅人だそうだ――はひどく驚いた表情をしていた。
 思い出深い店のものに近い、少しだけ味は落ちるが、確かに『その店』の輪郭を感じるものだ……と。
 にわかに驚きが広がる一同に、三弦は説明する。
「こちらのご主人、ギフト……とは違うんですけど、『相手が今口にしたいもの、一番思い出に残る料理』を提供できる、という特技をお持ちなんです。幻想には旅人の方も居ますし、『傭兵』との交易で料理関連の情報も入ってくるから、なんでしょうけど。今のはちょっと例外として、大体は『食べたいもの』を聞けば出して下さりますよ」
 それが思い出にまで食い込んでくるのは、多分偶然だとしても。
 求められたものを出せないのは料理人の恥とでも言わんばかりに、色々できる、ということのようだ。
「近頃色々ありましたから、『思い出の料理』に舌鼓を打つことで、今までのことを思い返すもよし。故郷の味に思いを馳せるもよし。奇天烈な料理を食べるもよし。領収書は切っておきますので、遠慮なく」
 ――その領収書がどこにいくかは、別にして。
 思い出を語らいながら食事に集中する、というのも悪くはあるまい。

GMコメント

 食べて盛り上がるだけのお話です。
 気楽にいきましょう。

●目的
 食事をする。
 思い出に浸ることをメインに据えた食事に興じても、今食べたいものを食べてもいい。
 食事とともに思い出を語ってもいい。自由とはそういうものだ。

●プレイング書式
 1行目:同行者or同行タグ
 2行目:フロア(1For2F)
 3行目以降:自由(料理内容、どんな思い出があるか、何を話すかなど。フリーダムに)

 単なる食事シナリオとしてワイワイやってもいいです。
 しんみりしてもいいです。そのあたりのさじ加減は私がやりますのでご安心下さい。

 では、皆さんの楽しい食卓を。

  • いちばんの、ひとさら完了
  • GM名ふみの
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年07月28日 23時15分
  • 参加人数25/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 25 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(25人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
銀城 黒羽(p3p000505)
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
フレイ・カミイ(p3p001369)
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ナハトラーベ(p3p001615)
黒翼演舞
マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)
黒鎖の傭兵
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
リナリナ(p3p006258)
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
橘花 芽衣(p3p007119)
鈍き鋼拳
グランツァー・ガリル(p3p007172)
大地賛歌
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
スピネル(p3p007274)
特異運命座標
ファレル(p3p007300)
修行中
ジェイ・カーンズニュイ(p3p007307)
特異運命座標

リプレイ

●思い出と日々の糧
「あ? 飯? ……ったく、いきなりだな」
 フレイは招かれた先で食事を促され、馬鹿馬鹿しいと感じつつも店主に注文すると階段を上がっていく。2階の隅に腰を落ち着けると、深く息を吐く。
「おー、リナリナ、肉! 肉! 肉料理!」
「……もう肉食ってるじゃねえか」
 そんな彼の隣には、マンモの肉を手にしたリナリナがいた。彼女に供された料理は、彼女の言葉をなぞるように肉料理のフルコースだ。焼き、蒸し、揚げ、煮、そして新鮮で危険ではない生肉まで。
 とにかく肉まみれだ。
「じゃあ俺は……って、なんだよこれ」
 フレイのもとに供されたのは、希望通りのサラダと肉、そして炭酸が多少効いたジンジャードリンク(エールではない)。ただし、サラダも肉も、砂や土混じりの殺風景なものに見える。(尤も、それが本当に土なのか、それを模した調理なのかは一見しても食べてもわからないが……)
「天義の話もクソッタレだと思ったが、この料理も大概だぜ……印象深いからいい話ってワケじゃねえんだがな」
 それでもフレイはすべて食べきると、椅子を蹴るようにして立ち上がる。リナリナは「肉が足りないか? 食うか?」と聞くが、彼は相手を一瞥しただけで帰っていく。
 女を連れてこようとしたのに、居るのはイレギュラーズばかりときた。……なんとも冴えない、と。
 リナリナは意にも介さず、肉を堪能していた。

「昔から、体が弱いのです。……今も、強いわけでは、ないのですが」
「なるほどねー、体が弱いのは大変だよねえ」
 ネーヴェはしみじみと過去を口にしつつ、並べられたコンソメスープを口に運ぶ。芽衣は彼女の話を聞きながら、うんうんと頷きを返す。
 仲間の境遇、過去、そして今。それらを垣間見ることは芽衣にとって得難いことだ。生活と深く結びつく食あっての語らい、とも言える。彼女の前に供されたピーマンの卵とじは、ベーコンをくわえたことで塩気と食感に変化を与え、ピーマンの甘みを引き立てている。
「ワタシ、ピーマンは苦手だったけど自然とこれは食べられたんだよね~」
「……きっと、橘花様のためを思って作った味だから、だと思います。わたくしも……このコンソメスープにお母様の面影を感じてしまって」
 ネーヴェはコンソメスープを味わいながら、ほう、と息を吐く。他人が作ったはずのものなのに、どこか母を思い出す味。失礼では、と感じた彼女の気持ちも尤もだが、『そう』作られたなら仕方ない。
「あたしはアレが食べたい! 戦いに勝てる様になるっていうスーパーフード!」
 2人の横に座ったスピネルが、「ね!」と微笑みかけると力強く注文する――『ガシンショウタン』と!
「変わった名前です、ね……どんな味なんでしょうか」
「苦くて美味しいって聞いたからゴーヤみたいな?」
 周囲がにわかにざわついていたが、ネーヴェとスピネルはその辺り詳しくない為、『臥薪嘗胆』を食事と捉えていたようだ。……そしてその『臥薪嘗胆』が並べられた時、スピネルは目を瞠った。
 熊の肝を炒り、硬めの根菜を混ぜたもの。『固い薪に寝そべり、肝を嘗める』の意を上手く(?)解釈した逸品である。でも普通に美味しいらしい。
「不思議な料理もあるんだね~、これも美味しい!」
 芽衣にとってもこの食事は美味しかったらしい。これを食べた彼女達の躍進が期待できる……かもしれない。

「これ全部、私が故郷でよく食べていたお料理とそっくりなの!」
「びっくりだよな……話には聞いてたが、まさかここまでとは……」
 アニーと零は、目の前に並べられた料理の数々に驚きを隠せずにいた。
 ……というのも。
 アニーは『故郷の料理』、零が『ふわとろのオムライス』という注文に対して、出てきたのはチーズやベーコン、芋や豆をまとめて調理した質素な家庭料理と素朴なクリームシチュー、そして絶妙な半熟加減と濃厚なチキンライスを合わせたオムライスだったのだ。
「私は母さまの作るシチューが大好きだった……この味も故郷のものとそっくりなの」
「ああ、店で食べるヤツとはちょっと違う味付けとか、本当に『あのまま』だ……」
 感慨深げに語る零を見て、アニーはふと疑問を浮かべた。ここまでの感動を覚える料理は、元の世界で出た『だけ』のものか、と。
「零くんのそのお料理も元の世界で食べていたものなの? やっぱりお母様の作ったお料理なのかな?」
 アニーの問いかけに、零は目を細めて(もとより細目だが)頷く。店屋物とは微妙に違うそれは、思い出を深く思い出させる。
「そうなんだ、母さんに頼んで作ってもらってな、……ほんと、懐かしいや」
 旅人である零は、家族と会うことが叶わない。それだけに、この味の感慨深さは一際強いものだといえた。互いの料理を分け合って食べ、アニーは「この料理が作れれば」、と強く願ったのは確かだろう。

「雪之丞、浴衣がよく似合っているな」
「そちらも、とても似合っておりますね」
 汰磨羈と雪之丞は、互いの浴衣を褒めあいつつ料理の到着を待っていた。いずれも淡色メインの静かな色合いで、どちらかといえば色素薄めの両者にはよく似合う。
 そうこうしているうちに並べられたのは、雪之丞のみたらし団子と汰磨羈の黒ごまあんまんである。後者は蒸したてらしく、湯気が漂っている。
「私が人の姿を得て仙人となった後、初めて人助けをした時に頂いたものでな」
「似ていますね。拙は人化を覚えて間もない頃、人里に降りた時に頂きました」
 お互いが思い出を語りつつ一口頬張ると、口の中に広がるのは質素ながらも、もち米や小麦粉の甘さをしっかりと引き立てた味わいだ。互いに人との交わりを契機として覚えた『甘味』が激烈な印象を残さぬわけもなく、その思い出を呼び起こす『手のかからなさ』がまた絶妙なのである。
「ほれ。一口食すといい」
「……むぐ。美味しいです。では、こちらもどうぞ」
 一口ふた口と食べてから、汰磨羈は雪之丞の視線を感じ取り、すっとあんまんを差し出す。小さく頬張った雪之丞は、おかえしにとみたらし団子を差し出した。
 似た思い出、似たような和風の味わい。それでいて全く違う両者の甘味が、彼女らにいっときの安らぎを与えたのも無理からぬことであろう。
「ふむ、団子も良いな。やはり、甘味は素晴らしい」

 ……ところで。
 みたらし団子を注文したのは、なにも雪之丞だけではなく。
「あ、あの、蜻蛉さまの、思い出の味、食べてみたいな、なんて」
「そうやねえ、メイメイちゃんの希望なら、食べてみてほしいなあ」
 メイメイと蜻蛉は、ともにみたらし団子を注文していたのである。
 2人分のみたらし団子は、雪之丞が食べたそれと若干味わいが異なる。……少々、言わなければ分からぬ程度に、醤油の味が強いのだ。
「素朴で、やさしい味で…いくらでも食べられそう、です」
「向こうの世界におるときにね、ある人に、よお食べさせてもらったの……」
 美味しそうに食べるメイメイを前に、蜻蛉はぽつぽつと思い出話を始める。食べたきっかけは元の世界の住人で、折を見て何度も食べた味だけに思い出深いものだということ。
 ただの団子にたれをかけただけのこれが、忘れられない位に印象深い味になったのだ、ということを。
「……って、うちの話ばっかりで、ごめんなさい」
「いえ、大好きなひとと過ごす時間や、一緒に食べる料理は……いっそう美味しく感じます、から」
 蜻蛉がわたわたと手を振ると、メイメイは問題ないとばかりに手を振り返し……僅かにのこった団子のたれが飛び散り、慌てて身を翻す。
「お洋服に零さんように、気ぃ付けてね?」
 心配そうに自分を見つめてくる相手の目が、元の世界では別の人と刻んだ思い出を見ているのだろうか……そんな感慨を覚えたメイメイにとって、そのみたらし団子は彼女の姿とともに刻んだ『新しい思い出の味』なのであった。

「……クリームシチューを」
 リゲルは控えめな声で注文を済ませると、静かに食事の到着を待つ。
 天義での一大決戦。ベアトリーチェ・ラ・レーテ撃破と前後して一度は剣を交え、次の機会に轡を並べた父との記憶。
 自らの誕生日を祝い去っていった彼のことを思い出す……暖かな記憶の味である。
 静かに供されたそれを口に運び、彼の記憶に去来するのはやはり、父の記憶である。家族の団らん、父の笑顔とともに口に運んだそれは、少しだけ塩気が強い気がした。
 否、それは自分の涙か。優しい味とともに思い出されるそれは、彼の現実を露わにするもので……それすら織り込み済みの味付けに思えたのだ。
「……有難う。とても美味しい料理でした」
 席を立ち、階下のマスターに声をかけた彼の顔が晴れやかに映ったのは、誰の目にも明らかだっただろう。

●賑やかに新しい日々を
「ええ、隅のほうで結構ですのでえ……」
 グランツァーは控えめに頭を下げると、奥の方の椅子に静かに座る。彼は質素倹約を美徳として志すが、それでも食事にこだわるのは無理からぬ事。そしてオーダーは『土のフルコース』だ。
 トリュフとバターを加えた芋に土をコーティングしたものを始め、土の味わい、ミネラル感を強く前に出した料理が並ぶ。
「お金持ち向けの料理……是非にと思っていたんですよぉ」
 聞くだけだと珍奇なものだが、味わえばなかなかどうして奥が深い。彼の食への興味をより深く感じさせ、地の精霊との繋がりを強く思わせる逸品だった。
「おっ、それも美味そうだな! オイラのアジフライ1枚やるからちょっと食べさせてくれよ!」
 と、メインの魚料理の隅に差し出されたのは、ワモンの注文したアジフライだ。イカとアジを食べたい、と注文した彼は、イカリングとアジフライにありつけたのである。
「そちらも美味しそうですねぇ。ええ、是非どうぞ」
「うひょー! なんかザラザラして薄味だけど、これはこれでたまんねえな!」
 グランツァーはワモンの口に鯛の土ソースがけを運び、自らはアジフライに口をつける。土の味から油の激しさへと変じるそれは、相手同様、なかなか刺激の強い体験だった。
「とーちゃんのことを思い出すぜぇ……もっと名前を売らねえとな!」
「美味しいごはんにありつけるなら、是非そうしたいですねぇ」
 この両者、おとなしそうな顔で意外と野心的だ。

「何故だかこっちの世界にも地球の料理に溢れてるから、ありがたいことにそこまで懐かしい味に浸りたいってわけでもないのだけど……」
 蛍は珠緒とテーブルを囲み、質素な家庭料理を注文する。
 彼女の言葉通り、元の世界の料理に困ることはない。それでも、細かい味付けや料理は気になるところで……。
「蛍さんは朝もきちんと食事されるご家庭だったのですね。健康的で実によろしいと存じます」
 珠緒はそう言ってから、自分が健康を語ることに不思議な気持ちを覚えていた。元の世界では健康と不健康の別を語ることも許されなかった彼女が、それを口にできるという幸運。
 そして、蛍のもとに運ばれてきた日本食……味噌汁、米、焼き魚、そして漬物。
「うん、この風味。ボクの家のお味噌汁を思い出すわ……」
「なるほど、これが蛍さんの世界の味なのですね」
 蛍の食事を分けてもらった珠緒は、彼女の故郷の味を口にし、どこか懐かしいものを感じていた。味を楽しめるような肉体になってから初めて食べる味でも、どこか心に残るものがあるのだろう。
 そして、珠緒が頼んだ料理は『すき焼き』だ。蛍の世界にあった料理を素直に楽しめるということは、本当に幸運なのである。
「確か、鍋にはお作法があるのですよね。改めて、ご教授いただけますか?」
「すき焼きはね、お肉と野菜を交互にバランス良く……」
 蛍は珠緒にすき焼きの作り方を教えながら、今この時間に思いを馳せる。故郷との絆を感じられる世界で、信頼できる仲間と食事できる、その喜びを。

「えっ! なんでも食べて良いのか!? じゃあ……肉が食べたい!」
「俺は鹿のステーキが食べたいな。自分で狩って食うから、たまには人が焼いたのが食いたい」
 ファレルとジェイは、異口同音に肉を所望していた。彼らは互いに知り合いではないが、たまさか隣の席についただけである。
 ファレルは『お師さま』と食べた肉の味を、ジェイは自分じゃない誰かが焼いた肉に興味があったのだ。
 ……果たして、両者の前に並べられた肉の味は、互いにとって感慨深いもので。
「お師さまと食べた味だ! ……だけど、やっぱり1人で食べるより美味しいし、楽しい!」
「そうだな、俺も……この味わいはどこか懐かしい感じだ」
 ファレルにとっては、一番のスパイスは『誰かと食べること』だったのかもしれず。
 ジェイすらも自分の記憶にない味、それも懐かしさを覚える味付けを出してくる……なかなか得難い機会だったのかもしれない。

「わぁいごはんごはん! 吾、お腹空かせてきたのである!」
「――――」
 諸手を挙げて食事を楽しみにする百合子の傍ら、ナハトラーベは静かに食事を待っていた。
 百合子は「吾好みの料理」とだけ語り、何がでてくるのか心待ちにし。ナハトラーベは静かに「唐揚げ」とだけ。
「よう、ここいいか?」
「勿論である!」
 そんなカウンター席に腰掛けたのは義弘。既に注文は済ませたらしく、腰を落ち着けて注文を待っている。
 そんな三者の元に運ばれてきた料理を見て、三者三様の……感慨深そうな表情を並べる。
「これは、握り飯ではないか。確かに嫌いではないが些か拍子抜けであるな……」
 不思議そうな顔で握り飯を口に放り込み、深く感じ入る百合子と。
「――――」
 注文した時同様、静かに山盛りのからあげを次々と放り込むナハトラーベ。
「ああ、香りでわかるぜ。あの店の味そのままだ……いただきます」
 『混沌』でありつけるとは思わなかった、チープながら思いのこもったラーメンの味に舌鼓を打つ義弘。
「吾の古馴染み……従妹が持たせてくれた握り飯の味なのである。嬉しいとか悲しいとか教えてくれたのは奴なのである」
「――――」
「地元で食ってた安いラーメン屋がこんな味でよ。……なあ、その唐揚げ一つくれよ。俺のラーメンもやるからさ」
 ナハトラーベは無言ながら、2人の話を聞きながら――聞いているかも分からぬが――義弘と百合子に唐揚げを渡し、2人からお裾分けをもらい、互いに満足いくまで食事を楽しむのであった。

「……シチューか。なんか、拍子抜けだな」
「そんなもんか? 俺にはちょっとわからないが」
 ソアはたまたま席をともにしたマカライトと卓を囲みながら、目の前に並べられた料理に首をひねっていた。マカライトはといえば、フィッシュ&チップスとラザニア、生ビール……ジャンクだが素朴さを併せ持つ品々だ。
 ソアは『美味しい料理を』と頼んだだけに、美食を楽しんだ彼女には物足りなさを感じたのかもしれず。マカライトはどこか満足げに頬を緩め、両者はそれぞれ口をつけた。
「懐かしい味だ。個性豊かな仲間達と何度食べて、馬鹿騒ぎしたもんか……ん?」
 微笑ましい記憶を口にするマカライトをよそに、ソアは涙すら零しそうな様子で表情を緩めていた。
「まだヒトの姿をしていない頃に人間から貰ったシチューの味……なんだ……」
 人に歴史あり、彼女にも……『銀の森』の住人たる彼女にも歴史あり、ということか。恐らくは相当に遠い日の、気が遠くなるほど昔の記憶。それを思い出せる味は、どんな美食にもまさることだろう。
「……あいつらとは何度も何度も馬鹿騒ぎして、後輩が結局フラれるの繰り返しでさ。楽しい時間だったことを思い出せたよ。……ソア殿もそうなんだろう?」
「ああ、ここが人前じゃなかったら……はしたないことをしてしまいそうなくらいだ」
 マカライトとソアは、互いに思い出を語り合い。思いがけぬ記憶との再会を語り合っていたのだった。

「記憶のねぇ俺には、『思い出に残るような一皿』をお願いしてぇな」
「では、私は故郷の味を……」
 黒羽が注文するのと、シズカが注文するのはほぼ同時だった。前者の注文はなんとも難しいものに感じられたが……それはそれとして、両者の前に並べられたのは、同じ料理だった。
「……この魚は?」
「『山乙女』っていう魚を塩焼きにして、川小蟹の素揚げを添えたものですね♪」
 一見すればなんの変哲もない魚を眺め、黒羽は不思議そうに問う。シズカはすかさず説明を加え、大丈夫とばかりに口に運ぶ。故郷の川の香りすら漂う清涼感が鼻を抜け、彼女は思わず声を上げる。
「なるほど、素朴だけど美味いな」
 黒羽の素直な感想に、でしょう!? とシズカは詰め寄らんばかりに顔を寄せる。近い近い。続けざまに供されたのは、無骨な塊肉に琥珀色のソースがかかったものだ。
「冬に穫れるイノシシ肉にりんごのソースをかけたものですね。故郷ではごちそうでした……どちらも食べられるなんて!」
「そんなに美味いのか?」
 感激に身をよじるシズカに、黒羽はおずおずと手を付ける。獣肉はそのくさみを上手く処理しなければ、なかなか食えたものではないが……ソースの甘みが肉の味に深みを出し、臭みを旨味に変えているのがわかるだろう。
 無言でフォークを動かす彼の態度が、何より雄弁であったことは語るまでもない。

 ――イレギュラーズはそれぞれの思い出を食事とともに飲み込んで。
 次の依頼へと邁進することになる。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お待たせいたしました。食事を書くのはそこまで得手ではないですが、楽しんでもらえれば幸いです。
 (テンプレはそこまで文字数割かないので守ってもらえれば凄く助かりますが)概ね問題ないプレイングでしたし、全体的に個性を強く感じられました。
 また機会があれば宜しくおねがいします。

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