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シナリオ詳細

<果ての迷宮>遺構地下線路メトロポリタン

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●迷宮の最果てへ
 果ての迷宮――。
 幻想王都メフ・メフィートの中心に存在する、前人未到の迷宮は、レガドイルシオン国王フォンデルマンが、その攻略と管理を代々使命として託されたものであるという。
 長らく踏破する者なく、置かれているだけであったその迷宮は、しかし今、イレギュラーズ達という挑戦者を得、にわかにその注目を帯びていた。
 様々な勢力が、その迷宮の果てに栄誉とカネの匂いを嗅ぎつけ、イレギュラーズという競走馬たちに援助とベットを重ねる。
 さて、様々な思惑を乗せ、歩みを進めるイレギュラーズ達。その先に待つのは、栄光か、絶望か――。

●廃棄路線の冒険
「ぎゃーっ! 撃ってきただわさ!!」
 総隊長ペリカ・ロジィーアンは悲鳴を上げ、走り出した。ぱらぱらという乾いた断続音は、連続発射される銃声である。
 その銃声の主は、まるで寸胴の鍋をひっくり返したような物体であった。その鍋のような胴体を囲むような線の上に、赤いガラスのような一つ目がぐるぐると回転していて、侵入者であるペリカ、そしてイレギュラーズ達を追い回す。
 灼熱のフロアを突破した調査隊を待ち受けていたのは、一転して、人工的なものを思わせる空間であった。
 まず継ぎ目のない石のような床と壁で構成された大きな部屋が、調査隊を出迎えた。少し見て見れば、一段、低くなった場所には、大小さまざまな石とレールが敷かれており、そのレールの端は、先も見えぬ巨大なトンネルの奥へと消えていく。
 もし、調査隊の中に地球世界よりの出身者がいるのならば、ここは地下鉄のホームの様だ、と思ったかもしれない。もちろん、地球に存在するどの地下鉄路線とも、一致するような場所ではない。何者かがこのようにフロアを作り上げたのか、あるいは自然にこうなったのか――まったくもって経緯は不明であるが、その異常なことが起こりえるのが、この果ての迷宮が前人未到の迷宮であるゆえんである。
「こ、ここまでくれば追ってこないようだわね」
 ひいひいと息を吐きながら、ペリカが嘆く。
 調査隊が、偵察の後に戻ってきたこの場所は、最初に降り立ったフロア、仮称として1番ホームと名付けられたところである。ここには敵の類はおらず、一応の安全地帯と言えた。しかし、線路を降り、次の小部屋へと向かおうとすれば、先ほどの寸胴鍋のようなからくり仕掛けの防衛装置や、光る棒を持って殴り掛かってくる、これまた機械仕掛けのマネキンが襲い掛かってくる。
「エネミーは、大体この二種類っぽいわさ。後は――」
 と、ぼやくペリカの声をかき消すように、遠くの方から聞こえてくるのは、がたん、がたん、と言う、何かがレールの上を走る音であった。そしてこれこそが、調査隊の最大の悩みの種である。
 一言でいえば、列車である。
 一両編成の列車が、地下鉄のレールの上を、ランダムに走り回っているようだ。現状、小部屋(ホーム)がいくつあるかは不明ではあったが、その小部屋――この安全地帯は除くようだが――と、それを繋ぐ路線を、ひたすらに走り回る。問題は。
「まさか、あいつの体の中に、階段があるとはねぇ」
 ペリカの言葉通り――。
 その原理も意味も不明であったが、列車は、その腹の内に、先の階へと向かう階段を抱えていた。
 つまり、この列車を、破壊するなりなんなりをして止めなければ、ここより先に向かう事はできない……という事なのだ。
「無尽蔵に湧いてくる、寸胴鍋とキモいマネキンを捌きながら、列車の動きを読んで止めて、先に向かう……言うのは簡単でも、実行するのは難しいわさ」
 嘆息するペリカ。とはいえ、多くの人々の期待と欲望を一身に背負っている身である。いや、それ以前に、自らに溢れる好奇心が、ここで諦めたくはないと、声高に叫んでいる。
「ま、困難はいつもの事だわさ。皆、準備はいい? さぁ、ここも突破するだわさ!」
 隊長の号令に、イレギュラーズ達は力強く、頷くのであった――。

GMコメント

 お世話になっております。
 洗井落雲です。
 果ての迷宮、今回は、異常な地下線路からお送りいたします。

●成功条件
 暴走する「すばるべくん」を無力化し、次の階への階段を確保する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●本シナリオのルールについて
 本シリーズ共通の、いくつかのルールが存在します。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

●状況
 迷宮の外見は、いわゆる「地下鉄のホームと線路」によく似ています。迷宮全体の構成もそれに準じており、『大きく楕円形を描く主線路』『主線路を突っ切ったり、外れたりして伸びる副線路』が存在します。
 この線路をランダムに走り回っているのが、『すばるべくん』と名付けられた列車です。この列車は、内部に『次の階に進むための階段』が設置されているため、このすばるべくんをどうにかして無力化することが、この階を攻略する上での目標になります。
 『第一番ホーム』を除くすべての小部屋(ホーム)には、3~4体の『みがくくん』と『まもるくん』と言う警備ロボットが存在します。この二種類の敵は、全滅させても、数時間後に再度ランダム数が補充されます。
 なお、現状、小部屋(ホーム)の総数は不明です。また、ホームには、『線路の行き先を切り替えるスイッチ』などが存在するようです。
 メタ的な話ですが、基本的に、全体を調査しつつすばるべくんを止めるために必要な最低限のホームを制圧、様々な手段によってすばるべくんを止めて、次の階に進む……と言うような手順になるかと思います。
 なお、第一番ホームは絶対に安全なため、ここで休憩をとることは可能です。
 ですが、全体の損耗がひどくなったり、あるいは時間がかかり過ぎた場合は、ペリカ隊長から探索ストップの声がかかる可能性があります。

●同行NPC
 ペリカ・ロジィーアン
  タフな物理系トータルファイターです。
  基本的には、皆様の指示に従いますが、本音は調査に専念したいようです。
  戦闘に参加させた場合、戦闘面では楽になりますが、調査面で多少の不利が発生するかもしれません。 

●エネミーデータ
 『すばるべくん』×1
  特徴
   線路を走り回る一両編成の列車です。白と黒のカラーリングから、
  ツバメを意味するとある世界の言葉、『シュヴァルベ』が名付けられています。
   基本的に、線路をランダムに走り回っています。
   使用スキルは、主に『飛』属性を持つ近~中距離理攻撃を使用。
   EXA、EXF共に高めで、かなり素早いです。
   もし、何らかの手段で足を止めていない場合、戦闘開始から10ターンで逃走、見失います。

 『みがくくん』
  OP中に登場した寸胴鍋のようなからくりです。
  どうやら掃除ロボットだったようで、
   洗剤銃撃=中~超遠距離、範囲の毒付き神秘攻撃
  を仕掛けてきます。
  単体の戦闘能力は、さほど高いものではありません。

 『まもるくん』
  OP中に登場した『キモいマネキン』です。
  どうやら警備ロボットだったようで、
   光る棒=至~近距離、単体の火炎付き物理攻撃
  を仕掛けてきます。
  単体の戦闘能力は、さほど高いものではありません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • <果ての迷宮>遺構地下線路メトロポリタンLv:7以上、名声:幻想30以上完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年07月19日 22時20分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●遺棄されし地下線路
 がたたん、がたたん、と音がする。
 闇の向こう、深い深いトンネルの向こうから。
 光のある小部屋(ホーム)には、今はもう、なぜそうするのかすら覚えていない機械たちが、歪んだルーティンを繰り返し続ける。
 此処は遺構。
 かつて、何処かに在ったであろう景色の幻影。

「すごいな。ここが果ての迷宮か……入ったのは初めてだよ」
 感心するような声をあげるのは、『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)だ。ウィリアムの常識を超えるような光景が、目の前には広がっている。技術的な面、という意味合いはもちろんそうだが、仮に前階層、溶岩地帯や、水没した区画を目にしたとしても、同じ感想を抱いただろう。
 此処は未踏の地、果ての迷宮。そこに常識など通用しないのだ。
「まるで……というか、やっぱり地下鉄だよね、これ」
 声をあげる『魔法騎士』セララ(p3p000273)の言葉に、ウィリアムはぎょっとした。
「地下鉄? これ実在するの?」
「うん。電車って言う……うーん、電気って言うエネルギーで動く、馬車みたいなのがあってね? 電車が走る線路を、地下に作ったのが、地下鉄だよ」
 こともなげに説明するセララに、ウィリアムは眩暈を覚える心地だった。異世界の技術は、やはり計り知れない。そこに近いのは、やはり練達だろうか。
「とはいえ……乗客を排除し、拒否する地下鉄などは聞いた事がないがね」
 『イルミナティ』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)は肩をすくめて見せた。
「やはり何がしかが狂っているのだろう。それが、元から狂っていたのか、長い年月を経て狂ったのかは、調べてみないことにはわからないが」
 しかし、とラルフは呟くと、
「……何か皮肉なものだな。科学世界にて神秘を探求していた俺が、神秘的な世界で科学技術の調査とは。いや、それもまた、神秘、と言ったものかもしれないな」
 どこか楽し気に笑む。
「なんにしても! まずは足で調査! ですわねっ! 初めての地下迷宮ではありますが、ご心配なく。すべてこの、」
 パチン、と指を鳴らせば、どこからともなく声が響く。そう、すなわち、
   \きらめけ!/

   \ぼくらの!/

 \\\タント様!///
 である。
「……にお任せくださいまし!」
 『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)腰に手を当て胸を張る。わぁ、という歓声が鳴り響き、『総隊長』ペリカ・ロジィーアンは不思議気にあたりを見回した。ふむふむ、と頷きつつ、
「……興味深いわさ……それはさておき、タント、それから皆! よろしくたのむわよ!」
 にっこりと笑いつつ、ペリカが言う。すでに幾度の冒険を共にし、イレギュラーズという集団にも、その実力にある程度の信頼を寄せていることだろう。
「……さて。事前の調査で、少なくとも、このフロアには一つの大きな線路……これを『主線』と呼ぶわね。それから、外れたいくつもの『副線』と、それぞれに小部屋(ホーム)が存在することが分かっているわ」
 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が告げる。その眼は、どこかしら、わくわくとした輝きが見える。未知の遺跡の探求、命の危険は付きまとうが、やはり好奇心がわくと言う物だ。
「次のフロアへ向かう『階段』は、動く電車……この『目標』の中、という異常さよ」
 がたたん、がたたん、とトンネルの向こうから、音が聞こえた。これが、電車の走る音なのだろう。対象はこの線路をランダムに、滅茶苦茶に走っており、捉えることは簡単ではないだろう。
「それで――司書君。何か手はあるのかな?」
 『観光客』アト・サイン(p3p001394)が言うのへ、イーリンは頷いた。
「まず、この主線に沿って、二班に分かれて探索を始めるわ。ここ……私たちがいる安全地帯から、次に進むホームには、左右に伸びる主線がある。だから、右回りと左回りの二班よ」
「それで、主線をメインに観光……探索していくわけだね」
 頷くアト。
「電車って言うのは、この線路の上でなきゃ走れない……のよね?」
 尋ねるイーリンへ、セララ、そしてラルフは頷いた。
「となると、ある程度の道筋は見えて来たな。相手がどんだけ滅茶苦茶に走ってようが、走れる道は決まってる、ってわけだ」
 『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が言葉を続ける。
「滅茶苦茶な技術で目くらましされてるが、単純に考えれば、基本的にはトロッコみたいなもんだと思えばいいんだ。道を変えるには、レールを切り替えるスイッチがある。そいつをいじってやれば」
「こちらの思う通りの場所へ誘導できる、か……!」
 『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)の言葉に、イレギュラーズ達が頷いた。
「とはいえ、誘導した後はどうしても力押しだけれどな」
 肩をすくめて見せるレイチェル。
「それは覚悟の上だぜ」
 『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)が声をあげた。
「力仕事は任せてくれ、ってな。道中にはちょうど良くスクラップもできる予定だ。そいつらも使って、どうにか足止めしてやらぁ」
 豪快に笑うマグナ。スクラップとはつまり、道中邪魔となる『寸胴鍋』と『マネキン』のような自律機械の事である。
「決まったね」
 『平原の穴掘り人』ニーニア・リーカー(p3p002058)が笑う。方針はここに決定した。これより始まるは、死と隣り合わせ――さりとてロマンあふるる探索の旅路だ。
 イレギュラーズ達は、手早くそれぞれの班員を決定する。
「っとと、あたしはどうすればいいわいね?」
 尋ねるペリカへ、
「ペリカが良ければA班でどうかな? 調査への専念を頼むよ」
 と、告げるのは、リゲルである。
「了解だわさ! それと、撤退条件は、事前にしっかり決めさせてもらうわね。無理をし過ぎて死人が出るのは……ごめんだわさ」
 その言葉に、イレギュラーズ達は反発することなく頷いた。ここは前人未到の地、慎重すぎて損をすることもあるまい。それに、ペリカに仲間を失わせる苦しみを味合わせるような真似をする必要はないだろう。
「でも、なんだかワクワクするよ。幻想と言えば果ての迷宮、だからね。そんな有名な場所に入れるなんて、夢にも思わなかったかな」
 ニーニアの言葉に、ペリカは笑って返した。
「そう! 無理はせず……でも、探索を楽しむのがコツだわね」
「なら、さっそく楽しむとするか」
 マグナの言葉に、イレギュラーズ達は頷く。かくて安全地帯を抜け、一つ目のホームへと向けて、出発した。
 道中……トンネル内部は、ほのかな明かりが点々と灯り、決して暗くはないが、満足に明るいわけではない、という塩梅だった。通過する列車のライトがあることが前提の明るさなのだろう。
「しかし……凄い技術だな。石をこんなに綺麗にくりぬくなんて」
 壁面に手をやりながら、リゲルが言うのへ、
「石じゃなくて、コンクリートだと思うよー」
 と、セララが言った。首をかしげるリゲルへ、答えたのはラルフだ。
「細かい石や砂利を、セメントという、接着剤のようなもので固めた物だ」
「なんにせよ、オレ達にとっちゃ訳の分からん技術って事は確かか。練達あたりだとつかわれてるのかなァ?」
 苦笑しつつ、マグナが言う。
「いやはや、良い観光地だね。目を楽しませてくれるよ」
 アトが微笑む。アトの言う通りに、様々な理由で見るものを楽しませてくれるのは事実だろう。とはいえ、その楽しみは命と天秤にかかっているのもまた事実ではあるのだが、アトにとって、それは織り込み済みだ。
 程なくして、最初のホームが見えた。このホームには3本の線路が合流している。主線への2本と、安全地帯へと向かう1本だ。
「ここから別れるんだね」
 ニーニアの言葉通り。ここから調査隊は、右回りと左回りへと別れて調査することになる。
「くれぐれも! 無理は禁物だわさ! お宝も名誉も、命あってのものだわいね」
 念を押すペリカに、
「承知の上ですわ! このわたくしが、Bチームの皆様の命、しっかり預からせていただきますわよ!」
 きらめく高笑いなぞをかましつつ、タントが答える。その身体がぴっかぴかに輝き、謎の頼もしさを感じさせた。実際、雰囲気のみではなく、タント様は頼りになるのだ。
「さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……まぁ、出る奴らは分ってるんだが」
 と、呟くレイチェル。
「寸胴鍋にマネキン、それに電車……鬼でも蛇でもないけれど、強敵なのは確かだね」
 ウィリアムの言葉に、レイチェルが頷く。
「それじゃ、行きましょう?」
 イーリンの言葉に、仲間達は頷いて返した。
「神がそれを望まれる……突破するわよ、この階層も」
 自身にベットするスポンサーは違えど、迷宮の突破、その想いは皆が同じくするところだ。
 かくして果ての迷宮へと、探索者たちは挑戦を開始した。

●主線・右回り
「うぉらぁっ!」
 マグナが叫び、マネキンへと殴り掛かる。ぐしゃり、とアルミがひしゃげる感覚が、クラブハンマーを通してマグナへと伝わった。
「退去、退去してください、退去退去退去……」
 機械音声が徐々に弱まり、途絶える。死んだ……というより、壊れたのだろう。マグナはふぅ、と一息。
「こいつで終わりか?」
 声をあげてあたりを見回してみれば、セララの一撃により、横に倒れた寸胴鍋の姿が見えた。寸胴鍋の裏側には、何やら白いブラシのようなものが見える。
「うわー、これ、お掃除ロボットだったんだ……」
 セララが声をあげる。
「掃除? 何で掃除で毒を吐き出すんだ?」
 まっとうなマグナの問いに、答えたのはイーリンだ。
「おそらく、強力な洗剤なのよ」
 ふむ、と口元に手をやるイーリン。
「薬も過ぎれば毒になるからなァ」
 さもありなん、頷くレイチェルである。なるほど、とマグナは頷いた。
「二つの洗剤を混ぜ合わせると、毒ガスが発生する……なんてこともあるからねぇ」
 セララが言う。それ以前に、洗剤を人体に注入すれば大ごとであろう。
「ううん、なかなか怖い技術を使っているんだね……」
 ウィリアムがさすがに恐怖感をあらわにするのへ、レイチェルは笑った。
「何事も、過ぎたるは猶及ばざるが如しってな。使い方さ、要は」
「いやはや、もうみんなの戦いを見るのも何度目かになるけど、鮮やかだわいね」
 危なげなくエネミーを排除するイレギュラーズ達の姿に、ペリカは感心した様子で声をあげた。
「あら、ありがとう。でも戦闘面だけじゃなくて、調査面でも感心させて見せるわ?」
 くすりと笑うイーリン。ペリカは楽し気に笑い声をあげた。
「それは楽しみだわいね! じゃあさっそく、このホームを調べてみるとするさね」
 このホームも、他のホームと変わらぬ形状をしていた。ホームに乗っての視線から、まず正面に線路。ここには主線である一つの線路のみがある。
 ホーム上の幅は狭く、人が3~4人、横に並べば埋まってしまうほどだろうか。その分縦に長く、数十メートルは優にあるだろう。
「階段みたいなところはあるけれど……やっぱり埋められているね」
 ウィリアムが声をあげる。他のホームもそうであったが、階段と思わしき設備がいくつか見受けられたが、そのどれもが、途中で巨大な壁に遮られ、上にも下にも行けなくなっていた。まるで、そこから先は再現できていない、とでも言うように。
「これ、改札だよ! となると、ここは駅長室かなぁ?」
 セララが声をあげる。ホームの壁面の一部がぽっかりと大きく開き、そこにはいくつかの1mほどの高さの機械――セララが言うには、改札――があった。改札の間には、通せんぼをするように板が張り出されている。
「通行禁止、って事?」
 イーリンが声をあげるのへ、セララは笑った。
「切符がなければね」
「入場チケットか」
 ふむふむ、とレイチェルが頷く。
 さて、セララが窓から中を覗き込んでいるのは、その改札に併設された小部屋である。セララの言によれば、ここは駅長室。
「つまり、従業員の詰め所だね。なら、ここに何か手掛かりになるようなものがあるかもしれないよ」
 ウィリアムが言う。なるほどその通りだろう。イレギュラーズ達は駅長室へと入り込んだ。
 内部は、些か事務的な小部屋である。アルミフレームの机やいすなどが散乱しており、壁にはよくわからないポスターや張り紙などが残されている。
「切符を拝見しまーす」
 切符を切るための鋏を見つけたセララが、カチカチとそれを鳴らして見せる。
「ハサミか? 変わった形だな」
 マグナも合わせるように、カチカチと自身の鋏を鳴らして見せた。
「これは……時間帯か。となると、こいつが時刻表って奴か」
 レイチェルが指し示す、壁の張り紙には、細かな数字が記載されている。
「けれど、私たちにとっての体感時間と、このフロアの時間が一致しているかどうかは妖しいわね」
 イーリンが答えた。そもそも、暴走する電車がこの予定表通りに走っているかどうかも怪しいのだ。参考にはなっても、全幅の信頼を置けるものではないかもしれない。
「あ、これ! この紙! 見てください!」
 と、ウィリアムが指で指し示した先には、
「これ……『目標』……?」
 イーリンの呟きの通り、そこには黒と赤、そして白にカラーリングされた電車の姿があった。それは、新型の列車の運転開始を告げる広告用のチラシの様だ。
「一応読める……な。何々?」
 レイチェルが、声をあげ、チラシを読み上げた。
「……年、7月より、登場? この子の名前は、『すばるべくん』……一般公募で、……国の、りょうじ君(9)が命名……」
「すばるべくん、って言うんだね!」
 セララが声をあげる。どうやら電車の名前は『すばるべくん』という名前の様だ。
「聞き違いじゃなければ、ツバメ、みたいな名前だね」
 ウィリアムが言う。
「妙な名前ね……他には何か書いてある?」
「いや、有益なそうなことは無いな……この、隣にいる動物みたいなのがいないのは幸いだな。なんだこの……なんだ、こいつァ?」
 イーリンの問いに、レイチェルが指さす先には、すばるべくんを模した着ぐるみ、いわゆる『ゆるキャラ』の姿があった。どうやら、このゆるキャラは徘徊していないようである。
「あとは……こいつは、このフロアの地図になるのか?」
 マグナが取り出したのは、いわゆる路線図である。そこには複雑な線がいくつも折り重なって描かれており、一見しただけでは、とてもではないが自分がどこにいるのかすら把握できないだろう。
「うげぇ、こんなホームがあるのかよ」
 さすがにうんざりした様子で、マグナが言った。
「でも、よく見れば繋がっている主線は把握できるわ。この、ぐるっ、と回っているのが、主線よね」
 イーリンが指さす先には、確かにぐるりと環状になっているラインが見える。
「なるほど、どうやらホームごとに名前がついてるな。って事は、このホームの名前が分かれば……どっかに名前が書いてないか?」
 マグナがあたりを見回すと、先ほどの時刻表に、どうやらそれらしいものを見かけた。
「ふぇぶらり……駅? 此処は『ふぇぶらり』か」
「じゃあ、現在地はここだね」
 セララが指さすその先には、主線の線上にある一つのホームがある。
「主線から外れず、ちゃんと進んでこれたみたいね。ええと、これまで通過したホームは……」
「ここを含めて、6つだ。間違いない。目印は6つ配置してあるからな」
 イーリンの問いに、マグナが答えた。マグナは、通過したホームへ自身のギフトを使い、赤い目印を残してある。
「となると、形状から考えて、ここが安全地帯ね。……まだ半分も調査してない、か。手ごたえがあるわね」
 くすり、と笑うイーリン。
「だけど、地図が手に入ったのは、一歩前進だね。すばるべくんを止めるためのルートも確認できるから」
 ウィリアムの言葉に、仲間達は頷いた。
「ウィリアム、Bチームに連絡と報告をお願いできる?」
「了解。任せて」
 イーリンはウィリアムにそう告げる。ウィリアムは交換していたファミリアへ向けて、報告を始めた。
「……ねぇペリカ、今回で五回目だけど。私の穴掘りぶりはどうかしら?」
 茶目っ気たっぷり。くすりと笑いながらそう言うイーリン。ペリカは、
「あはは! そうだわね、本格的にスカウトしたいくらいだわいね!」
 楽しげに笑うのであった。

●主線・左回り
 タントの輝きを明かりに、一行は線路の上を行く。追従するのはアトの馬車、そして御者たる『人工妖精「メルカート」』である。
「『すばるべくん』っていう名前なんだって」
 ニーニアが、Aチームからの報告を、仲間達へと告げる。
「名前があったのか」
 リゲルがふむ、と唸るのへ、タントが続けた。
「ならば! 此方も『みがくくん』と『まもるくん』という名前を教えて差し上げましょう!」
 と、タントが手に持ちひらひらと振るのは、掃除ロボットと警備ロボットの操作説明書である。とはいえ、肝心の所はほとんどがボロボロになっていて読めなかったため、せいぜい名称が分かった程度の事なのだが。
「名前があるというなら、それをつける必要のある存在がいた、という事になるね」
 アトの言葉に、リゲルが首をかしげた。
「それって……此処には昔、人がいた、っていう事なのか?」
「そうとは限らないだろう」
 答えたのは、ラルフである。
「これはあくまで仮説なのだが……あるいはここは、様々な世界の……旅人の記憶が集まる場所なのではないか、と考えている」
「記憶?」
 尋ねるリゲルへ、ラルフは続けた。
「そうだ。例えば、実際にこのような世界がどこかに存在し、その世界より現れた旅人の記憶が、このような光景を再現しているのではないか、という事だ。現に、まるでこのような世界が実在しているかのような設備やアーカイブが、ここには残されている」
 足元の砂利を持ち上げてみる。其れ一つとってみても、明確に加工された跡が見える――つまり、人の痕跡が残っているのだ。
 だが、仮定、ここが人の作りしものだとしても、これまでの階層の統一性のなさが、その説に違和感を与える。本当に人が、何らかの目的で作ったのであれば、続く階層には規則性が存在するはずだ。
「もしもここに地下鉄のホームを作りたかったのであれば、運搬する存在が容易くここへ来られるような作りにするはずだ。だが、それはない。となれば、これらはまるで夢……人の夢のように、不規則で、でたらめな場所である、と」
「夢かぁ。確かに、浅い夢みたいに、でたらめに場面が切り替わっている……そんな感じだね」
 ニーニアは、過去の階層の情報を思い浮かべながら、唸った。
「私は、その原因が、旅人の記憶から構成されたものがでたらめに折り重なっているからではないか、と考えている。もちろん、仮説も仮説だ。この地が特異点であることは間違いないだろう。そして、おそらく、ここが――この地下鉄が、かつてどこかの世界に、似たような光景が存在したのであろうことも。だが、この光景が映し出された、その原因が旅人の記憶であるか、というのは、断定はできない」
 くっくっ、とラルフは笑った。
「実に興味深いよ。そしてまだまだ、その全容も答えも、私達には見せてくれるつもりはないらしい」
 手にした砂利を、ラルフは放った。その石が、何かを応えてくれることは無い。だが、調べることを、ラルフは諦めないのだ。
「つまり……なんだかわからないけれど、すごい所! という事ですのね!」
 ぴかり、と輝きながら、タントが言うのへ、ラルフは笑って頷いた。
「まぁ、そうさ。よくわからんよ、まだまだね」
「なんにしても、観光地としては一級品だね」
 アトは笑う。まだまだ全容を見せぬこの洞窟は、ロマンと畏怖を湛え、挑戦者たちを待ち受けているのだ。
「っと、次のホームだ」
 リゲルが声をあげる。果たして次なるホームの明かりが、前方へと見えていた。
 ホーム上には、三体の『みがくくん』と、一体の『まもるくん』がうろついているのが見える。
「数が多いな……厄介なのは、みがくくん、だったな」
 リゲルの言葉に、アトが頷いた。
「そうだね。毒持ちとなると、こちらの体力を徐々に削られかねない」
「ですが! 毒も、この――」
   \きらめけ!/

   \ぼくらの!/

 \\\タント様!///
「――にお任せなさいな!」
 ぴっ、とかっこいいポーズをとるタント。
「頼りにしてるよ。でも、あんまり消耗するのもよくはないから、手早く行こう」
 リゲルは『銀の剣』を抜き去り、握りしめた。
「――さぁ、行こう!」
 リゲルの合図に、仲間達は頷きつつ、一気にホームへ向けて駆けだした。先行したのは、リゲルだ。リゲルが走りながらその刃を振るうと、現れた無数の火球が、エネミーたちへと一気に降り注ぐ。
「汚れがあります! 汚れがあります!」
 機械音を喚き散らすみがくくんが、反撃の洗剤をまき散らす! がきぃっ! 金属音を響かせ、リゲルはそれらを片っ端からはたき落す!
「今だ!」
 リゲルの号令に、ラルフは頷いた。
「残念だが、お前たちと遊んでいるほど暇ではない」
 言って、義手を構える。義手の内部には砲が仕込まれていて、ラルフはそこに己の全身の魔力を集中させた。刹那、解き放たれた魔力は一筋の光線となって空を走る!
「汚れがありりりりりりり」
「退去たいたいたいたい」
 光線はみがくくんを貫き、その後ろに控えていたまもるくんも同時に貫いた。エネルギーの飽和に耐えきれず、二体は同時に爆発、四散。
「毒のお手紙……届けるよ?」
 ニーニアの投げつけた手紙には、ヴェノムクラウドが仕込まれている。その身体を蝕む毒素は、機械であるみがくくんにも十分に聞いたようだ。毒素により急速に体をさび付かせたみがくくんは、バチバチと身体をショートさせて、そのまま動かなくなる。
「君で終わりだよ」
 アトの『観光客流剣術奥義『盜火線』』。それにより生み出された弾丸を、『黒坑人のピースメーカー』の弾倉へと詰め込み、狙いを定めてみがくくんへと撃ち放った。
 次々と乱射されるその銃弾は、ぱんっ、と音を立ててみがくくんの外装を破壊し、内部へと侵入。銃弾に込められた『物質を自己複製させる魔術』が一気にさく裂し、増殖した内部機構が、みがくくんの装甲をぶち破り、内部から破壊せしめた。
「おつかれさまですわ! さ、皆さま! わたくしが治療して差し上げますわよ!」
 ぴかぴかと輝きながら、タントが仲間に治療の術式を施していく。傷を完治させた仲間たちが、油断なくホームへと侵入していく。
 果たして、他に障害はないようだ。
「さて、ホームの探索を始めよう。ここには複数の線路が入り込んでいる……おそらく、路線の切り替え装置があるはずだ」
 ラルフの言葉に、仲間たちは頷く。
「そうだ、僕は残骸を、馬車に搭載しておくとするよ。終わったら合流する」
 アトは残骸――みがくくんとまもるくんの残骸へと視線を送りつつ、告げる。
「お願いいたしますわ!」
 輝きながら、タントが言う。
「このペースで行くと、Aチームと合流できるのももうすぐだね」
 ニーニアのいう通りだろう。両チームは環状線を逆側から進んでおり、ほどなく中間点に到達するであろうと言った所だ。
「油断せず、最後まで行こう」
 リゲルの言葉を合図に、ホームの探索は始まるのであった。

●乗車権を得るために
「がたたん! がたたん!」
 トンネルを、それは走る。
 なぜ走っているのか。それは分らない。
 いつまで走るのか。それは分らない。
 とにかく走る。走る。ただただ走る。線路のあるままに。線路の続くままに――。
 がきり。
 と。
 それの――すばるべくんの足元で、何かが鳴った。
 それは、線路の切り替えポイントが、すばるべくんの速度、重さ、それらに耐えられずに発した悲鳴であった。
 何故、そんな声をあげるのか。
 すばるべくんにはわからない。
 ぐらり、と。
 すばるべくんの巨体が、傾いた。
 倒れるか――。
 いや、まだだ。
 すばるべくんはどうにか態勢を立て直し――ようとしたところで、第二波の衝撃が、すばるべくんを襲った。
 線路上にうずたかく積まれた無数の瓦礫が、彼の足元を狙ったのだ!
 その上、よく見れば、車輪には無数のワイヤーとトリモチが絡みつき、すばるべくんは上手くく速度を出せずにいた。
 減速したすばるべくんの巨体が、大きく宙を飛ぶ。
 がぎり、と音を立てて、天井に、機体の上部がこすれて瓦礫を散らせる。
「逃げる奴を追っかけんのは面倒なんでな――」
 その正面に、一人の人影があった。
 巨大な赤い鋏。
 マグナ=レッドシザーズ。
「真正面から、ぶん殴る!」
 がごん! 正面から叩きつけられる、巨大な鋏が、すばるべくんの顔面を殴り飛ばした。結果、すばるべくんは脱線! ホームに横転し、壁面に叩きつけられる!
「やったわさ……!?」
 ペリカが叫ぶ。そう、すべては、イレギュラーズによる仕掛けなのだ。
 分岐点の線路を脆くし、体勢を大きく崩させた後に、トリモチとワイヤを用いて速度を落とさせ、ダメ押しの瓦礫とマグナの一撃で大きく脱線させる。
 探索の結果、路線図と、線路の切り替えスイッチを確認、確保したイレギュラーズ達は、地の利を得、今ここに、動き回る列車を捕獲せしめたのだ。
「緊急! 緊急!」
 だが、すばるべくんの先頭、運転席にあたる個所から赤く輝きが放たれるや、すばるべくんの体中からマニピュレータのようなものが飛び出し、線路上の瓦礫を掻きだし、自らの巨体を持ち上げんと行動を始める!
「い……インチキだわさッ!」
 たまらず悲鳴を上げるペリカ。
「ペリカ、下がってくれ!」
 リゲルが叫び、真正面から切りかかる。流星の如き斬撃が、踊るマニピュレータを次々と切り裂くが、斬り捨てた端から次々とマニピュレータは生えて回る。
「くそっ、本当に、滅茶苦茶な奴だ!」
 悔しげにうめくリゲル。だが、走る列車と真正面から打ち合いにならなかっただけ、はるかにマシであると言えるだろう。
「すばるべくーん! のーせーてっ♪」
 セララは楽し気に声をあげ、聖剣ラグナロクを振るう。マニピュレータと激しく切り結び、
「切符が確認できません! 無賃乗車はいけません!」
「えーっ! だって、売ってなかったし、電子カードは持ってないんだよ!」
 振るわれるマニピュレータの隙をついて、フック付きロープを投げつける。フックが窓ガラスを破壊し、内部に引っ掛か科った。
「おっけーだよ! アトさん、イーリンさん!」
「アト、中から攻撃するわよ!」
「了解、司書君。じゃあ、中を堪能させてもらおうかな」
 ロープの端をとイーリンとアトへと放り、セララは内部へと侵入する。遅れて、アトとイーリンが内部へとやってきた。電車内部には幾つかの座席が見えた。運転席にあたる場所には、どういう原理なのか、地下へと向かう階段があるように見受けられた。運転席の制圧=次の階層へ向かう為の道、と考えて間違いはないだろう。
「興味深いわね……本当に、乗合馬車みたいな内装だわ」
 イーリンが思わず、感想を述べる。
「よし、中を制圧しちゃおう!」
「……だけど、やっぱり妨害は入るよね……!」
 と、呟くアト。すばるべくんはその身を震わせて、中の人間が立っていられぬようにし、ついでに内部にもマニピュレータを出現させ、
「無賃乗車です! 現行犯です!」
 3人を追い出すべく、その手を振るう。
「足を狙え! 少しでも復帰を遅らせるんだ!」
 ラルフが叫び、放つ魔力の光線がすばるべくんの車輪を薙ぎ払う。だが、ボロボロになった車輪が落下すると、内部から徐々に新しい車輪が生えて来るのが見えた!
「黒鴉っ!」
 ウィリアムが放つ式神が、マニピュレーターとドッグファイトを繰り広げるのを見ながら、
「信じられない……電車って、すごいんだね……!」
 たまらず呟く。偏見を生み出してしまうほどの非常識な行動を見せるのは、さすが果ての迷宮の怪物と言った所だろう。
「だけど、勢いは弱まってるよ……!」
 ニーニアが声をあげて、小包爆弾を放り投げる。受け取ったマニピュレーターが爆散していく中、新たなるマニピュレータが生まれるのに、僅かながらの隙が生じるようになって行った。
「ダメ押しだ! 吹っ飛べッ!」
 マニピュレーターの隙間を縫って、放たれるレイチェルの精神の弾丸が次々とすばるべくんのボディに着弾。その外装をへこませ、起き上がろうとしていたその身体を再び地へと縫い付ける。
「っと! あんまりやりすぎると、中の3人の足を引っ張るか……!?」
 舌打ちしつついうレイチェルへ、
「ですがっ! あまり加減をしていられる余裕もありませんわ!」
 タントの輝きが仲間たちの傷を次々と癒していく。だが、仲間たちの傷も決して浅くはない。戦いは総力戦の様相を呈しており、手を抜けば、そのまま離脱される恐れもある。
 内部でも激しい戦闘音が響いており、操縦室を制圧するための一進一退の攻防が繰り広げられていた。
 どちらが手を抜いても、この均衡は崩れ去れるだろう。
「ひとまずこっちとしては、延々と殴り続けるほかねぇッ!」
 マグナの鋏が、すばるべくんの外装を激しくぶち抜いた。内部フレームがむき出しとなり、バチバチと火花が散る。
 一方、内部ではセララがマニピュレーターを翻弄しつつ、アトとイーリンが操縦室への侵入を試みていた。
「二人とも! そろそろきついかも!」
 次々とマニピュレーターを切り裂くセララだが、敵の攻撃もし烈だ。
「司書君、催促だよ!」
 近寄るマニピュレーターを『波間に没したる国の剣』にて切り裂きながら、アトが声をあげる。
「待って! もう少し……! もう、力づくってのはガラじゃないけど!」
 手にしたい戦旗、その柄を扉へと差し込む、てこの要領で無理矢理開く。しばし力を込め、扉は徐々に開いていった。イーリンが運転席に飛び込み、
「この……止まりなさいっ!」
 運転席へと、戦旗を叩き込む――。
「いい加減……倒れろッ!」
 一方、外ではリゲルが叫び、火花散らす内部フレームへと、その銀の剣を叩き込んだ! 内と外からによる内部への攻撃が、すばるべくんの身体に衝撃となって駆け巡る!
「緊急! 緊急、きん……きゅう」
 ばらばらと音を立てて、マニピュレータが地へと落下していく。横転した車体が力なく身震いをして、地に深く沈んでいく。
 やがて、まるでその力を失ったかのように、車両側面の扉がぷしゅう、と音を立てて次々と開いていった。そしてそこから、内部に侵入した3人の仲間が手を振っているのが見えた。
 イレギュラーズ達は、その力を結集し、地を走るツバメをついに討ち取ったのであった。

●次なる階層へ
「不思議だな……どういう原理でこうなってるんだ?」
 『階段』を目にしたリゲルが、思わず声をあげる。
 横転したすばるべくんの内部に侵入したイレギュラーズ達が見た物は、運転席の壁面――今は地面に接触している――から地下へと続く、大きな階段だった。
「最初に見た時は、こっち……車体の足元側についてたよ」
 と、セララが言う。まったくもって、奇妙なフロアだった。
「この列車を止めること自体がスイッチになっているのか……まったく、そこが知れないな」
 ラルフが肩をすくめる。
「なんにしても、フロア突破、だよね?」
 ニーニアの言葉に、
「ですわね! みごとこの――」
   \きらめけ!/

   \ぼくらの!/

 \\\タント様!///
「――そして仲間たちの大勝利! ですわ!」
 喝采の声をバックに、タントは満足げに笑った。
「さて。次はどんなフロアが待ってるやら」
 レイチェルが呟くのへ、
「常識が通用しないような場所……って言うのは、もう充分思い知らされたよね」
 ウィリアムが苦笑しつつ応える。
「まぁ、何が来ようと、まとめてぶち抜くだけだぜ」
 マグナが笑うのへ、
「たのもしいわさね。でも、くれぐれも油断は禁物だわよ!」
 ペリカも笑って答えるのだ。
「分かってるわ、総隊長」
 イーリンも茶目っ気たっぷりに、『隊長』と言って見せる。
「次の観光地も楽しみだね」
 アトも静かに微笑する。
 かくて、奇妙なフロアはイレギュラーズ達によって踏破された。
 次なるフロアもまた、イレギュラーズ達の足を阻むだろう。
 だが、イレギュラーズ達の知恵と勇気があれば、それすらも突破することは可能なはずだ。
 期待と不安、そして好奇心を胸に。
 調査隊たちは、次なるフロアへと足を踏み入れる――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 かつて電車の走る音の響いていたこのフロアは、
 今は嘘のような静けさに満ちているそうです。

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