シナリオ詳細
ライランド廃教会の大掃除依頼
オープニング
●ライランド教会
『幻想』国内のとある地域にはライランドという田舎町がある。
ライランドは『ライ』と名前が付くだけあり、元々はライ麦の農業で栄えた町だった。
地元では信仰に厚い人も多く、『ライランド教会』という教会がかつては町のシンボルだった。
ライランド教会は、できた当初は大変な人気だったが、時代が進むと共に人気は下がった。
なぜならこの教会は町外れのちょっと不便な所に建造されていたからだ。
創設者や設計者が、『ライ麦畑が見渡せる素敵な場所にある教会』という意味を込めていた事は、今となっては知る人の方が少ない。
時が経ち、新しいライランド教会が町の中心部にできた。
最初のうちは『新ライランド教会』と呼ばれていたが、次第にこちらの方が『ライランド教会』そのものに入れ替わってしまった。
新しいライランド教会はとても便利な立地にあったり、地元の名士が力を入れて宣伝したり、あるいは若い人達が積極的にイベントを開催したりなんかして、今ではすっかり『ライランド教会』として定着している。
本家本元の『旧ライランド教会』の方はそういった経緯で次第に人々から忘却された。
そんなある日、町長がふと思い出し『古くなったライランド教会の方は既に使われていないので取り壊しをしよう』と言い出す。
誰も反対する訳がなく、むしろ覚えていた人の方が少なかったぐらいだ。
頼まれた解体業者達が『旧ライランド教会』へ向かったら、そこには……。
『ぎゃー!! いてー、ネズミに噛まれたー!』
『うおー! コウモリ共に突っつかれた、しっし、あっち行け!』
『げ! 墓場にゾンビがいっぱいいるぞ! ひー、逃げろー!』
と、いった具合に魔物がわんかさ出ていた。
困った町長は、とある情報屋に教会の清掃依頼を相談する。
●ライランド廃教会の最後の大掃除
ローレットのギルドで『黒猫の』ショウ(p3n000005)は寂しげにため息をついていた。
そんな彼から依頼情報を受け取る約束だったあなた達は彼と合流する。
一同がテーブル席に着くと、ショウは熱いミルクティーを一口啜った後、話し始める。
「まず、確認したいんだけれど。キミ達の中には、『ライランド教会』という教会を聞いた事がある人はいるかい?」
ライランドそのものがまず、ど田舎なので知っている人の方が少ないようだ。
「うん、その『ライランド教会』なんだけれどね。『新』と『旧』の2つの教会がある事までは……。そう、知っている人はいないかな? 実は今回、キミ達に相談したい依頼ってのが、その『旧』教会の清掃業務についてなんだ……」
ショウはまず、『新』と『旧』の『ライランド教会』の違いから解説してくれた。
そして今、『旧』の方を取り壊す話が町では出ているが、既に廃墟となった無人の教会には多数の魔物が住み着いている事も教えてくれた。
「……そう、そういう事なんだよ。言い換えると、この依頼は多数のザコ魔物達の討伐依頼とも言えるよね。どうだい、引き受けてくれるかい? 廃教会は解体される事が既に決まっているから、今回の大掃除が『旧ライランド教会』にとっても最後の清掃作業となるだろうね……」
繊細な情報屋は、物憂げに締め括る。
「切ない依頼だよね……。みんなから忘れ去られた教会に魔物が住み着いてしまい、もういらないから最後の掃除をしてくれ、なんてさ……」
- ライランド廃教会の大掃除依頼完了
- GM名ヤガ・ガラス
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年06月04日 21時55分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●準備
偵察隊は、ライランド町からの馬車で一足先に廃教会に着いた。
『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)は持ち前の身軽さや跳躍力をもって、外から障害物を伝って廃教会の屋根へ、ささっと飛び乗る。
大きな穴が空いている屋根から真下を覗き込み、こんな事を考えていた。
(いらないから壊されるってのも分からねぇ話ではないっスけど、いざそうなると中々、心に響くんスよね、こういうの。……でもソレはソレっス、やる事はきちっとやらねぇとな)
本日、教会内部で暴れている魔物達との戦闘がある。葵は、魔物が騒めく教会内を覗きながら、戦場の広さを確認し、動きやすい場所とそうでない場所を見極めた。
(うん、こんなもんっスよね。戦場の地図が頭に入ったから皆に伝えるっス)
教会墓地の方へ偵察に行ったのは『D1』赤羽・大地(p3p004151)だ。
大地は最初、気が進まなかった。
(教会か。……はっきり言って、俺は信心深い方じゃない。ましテ、神の存在も信じちゃいねェ。だかラ、この手の場所は苦手な部類なんだけどナ。だけど、幸い今回は廃になる予定の教会。少しは気負わずに済むかもしれない)
墓地でのそのそ歩いているゾンビ達に気付かれないように木陰へ走って移動する。
木陰には霊魂達がいたらしい。彼には、『感じられる』のだ。
「すまない、そこの霊魂達! 悪いけれど、死角になりやすい場所や足場の悪い場所を教えてくれないか? 俺ハ、墓地を掃除してやるのサ」
霊魂達は掃除してくれる信仰のある者が来たと思ったらしく、快く問題の場所を教えてくれた。
(よし、ひとまず脱出して合流だ。うム、ゾンビは避けテ、急ごうナ)
後発組はライランド町からの馬車に乗って、そう遅くならないうちにやって来た。
何やら、馬車には荷台に何かがある。皆で準備をしていたらしい。
『わるいおおかみさん』グリムペイン・ダカタール(p3p002887)は御者に指示を出している。彼は本日、なかなかに上機嫌だ。
「フハハ!! 狼が教会へ掃除に来るとは! 世も末というのは本当なのだな!! 暖炉に火を灯してカップ一杯のクリームではどうにもこうにもならんらしい!! ああ、いや。神が居たから他の者達が祓われたのか?」
●内部戦
教会内部の掃除に入る前に、葵が偵察の情報を仲間と共有した。
内部はやや広く、所々荒れているが、全体の配置が分かれば移動は割と楽だ。
陣形は、回復役である『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)の周囲に3人が囲んで守りながら戦う形だ。
ポテトから見て、北側に『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が。東側に葵が。西側に『寝湯マイスター』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)が就く。4人は出入り口から突入すると、すぐに攻撃を仕掛けた。
北側を担当する汰磨羈は、二刀の刃を抜刀する。
(旧き教会には魔が巣食う。『世話になったモノを放逐すると碌な事にならない』とは、私の世界での格言だが。……この世界でも通用するようだな、うむ)
そして、至近で群がるラットの群れに斬撃の乱撃を容赦なく浴びせる。
妖刀と黄金ナイフの二刀流を駆使して、ラットを血祭に倒して行く。
「やたらと数が多いな。ちょうど良い餌場でもあったか? 群がられると、状況把握が難しくなる。声を掛け合っていくとしよう!」
西側を担当するウィリアムは浮かない表情だが、詠唱を始める。
(『ライ麦畑が見渡せる素敵な場所にある教会』……か、良い響きの言葉だね。教会としては使えなくても、他に使い道がない物かな? 何だか惜しいけど……せめてこれ以上、荒らされないよう掃除をがんばろうか)
詠唱が決まり、鎖状の雷撃が蛇のようにうねりながらラットやらバットやらを感電させては倒して行く。
「もう何て言うか、どこから手を付けていいのか分からないよ? とにかく、目の前の敵から片付ける感じになりそうだね?」
東側を担当する葵は両手でエネルギー弾を生成すると、得意なサッカーの技のように、弾を蹴り上げ、バット達へ向かって次々とシュートを決めて行く。弾は敵対象にヒットすると、続々と爆発を起こし、鮮やかな血が破裂したかのような爆撃風景を生み出す。
「へへん、必殺の一撃はどうっスか? このまま上手く行けば、割と速攻で終わりそうっスね?」
敵勢もやられてばかりではなく、時には素早く攻撃を仕掛けに来る。
それでもまだ友軍のダメージが少ないので、ポテトは味方の体力よりも行動力を気にかける。
「フレ~♪ フレ~♪ ガ・ン・バ・ダ!! 目指せ、行動力切れ、ゼロ運動♪」
ポテトの励ましの声援によって味方の行動力が回復して行く。順番だが、特に消耗が激しい汰磨羈や葵が優先だ。
ポテトは回復の手を休めずに、こんな事が脳裏に過る。
(かつてはシンボルだった場所を解体か……。素敵な所だったとしても、実際に通うのが大変だと人が遠退くのは仕方ない。忘れられてしまったのは寂しいが、このまま放置して魔物の住処にして、町に被害が出たら困る。しっかりと魔物を倒そう)
教会内部の魔物は全部で30匹いた。
前衛3人のがんばりにより、数は今では半数まで減った。
しかも葵の偵察があったお陰で、今の所、教会内部でも下手な動きはしていない。
誰かが床の穴に落ちたり、大きな十字架でこけたりする事なく、無事だが……。
異変は急に起きた。
天井からコウモリが急降下して来てポテトを襲う!
示し合わせた訳ではないだろうが、床からラットも牙を剥いて襲って来た!
「うわあああ!」
上下からの偶然の挟み撃ち攻撃でポテトが負傷して、その場に倒れた。
もっとも、防御も効いていたので直撃は避けられた。
前衛でポテトを囲っていた3人は、はっとした。
死角はなかったはずだ。いや、天井と床下が空いていたのか……。
(まずい……。敵はまだまだ多いな。ここで回復役を落される訳にはいかない。ならば……)
汰磨羈はポテト周辺に群がって来た敵勢に向かって刀を差し向けて叫ぶ。
「よもや、こういう形でケリをつける事になるとはな、魔物共。さあ、死にたい奴から掛かって来い!」
名乗り上げた汰磨羈の言葉は魔物達に直接伝わる事はない。
いや、彼女の敵意や殺意、そういった物は魔物だからこそ敏感に伝わる事もある。
怒り狂ったラットが、バットが、汰磨羈を襲う。
単純に攻撃力ならば汰磨羈がずっと上だろう。
しかし、ラットやバットはとても素早い上にまだまだ数がいる。
総勢10匹以上の軍勢が集中して攻撃を仕掛けに来た。
ラットの連続攻撃やヒット&アウェーがぎらぎらと冴え渡る。
空中からはバットの落下攻撃、中距離からの超音波攻撃すらも炸裂する。
ポテトを守る事はできたが、猛攻を浴びた汰磨羈はそのまま倒されてしまった。
(落ち着こう、冷静になろう……。まとめて仕留めるチャンスでもあるからね……)
ウィリアムは雷撃の呪文を間違わず詠唱し、至近距離から近距離で飛び交う魔物の群れに制裁を下す。
鎖状の蛇の雷撃が戦場を蠢きながら魔物を仕留める。
識別機能付きの神秘攻撃なので味方に当たってしまう事はなく敵のみを撃退した。
今ので5、6匹はざっと感電死させただろう。
この一撃にびびったバットやラットは、ぱっと飛び散った。
汰磨羈が倒されるや否や、ポテトはすぐに彼女を気にかけた。
「大丈夫か、汰磨羈! すまない、今すぐに回復してやるからな!」
ポテトがそう声を掛けると、パンドラ復活していた汰磨羈が、ふぅ、ふぅ、と息をして答える。
「ああ、これぐらい、なんて事ない……」
やっと立ち上がる汰磨羈に向かい、ポテトは全力で優しい歌を歌う。
「るるる~♪ 天使よ~♪ 傷つき者達を祝福し給え~♪」
汰磨羈はもちろん、ポテト周辺にいる仲間達は、天使の歌声に癒されて回復して行く。
回復で忙しいポテトに向かって、新手のバットが襲撃に来る。
そこに葵のサッカーボールがかっ飛んで来て、バットを撃退する。
「邪魔っスよ、アンタ。んじゃ、がんがん『ワイズ』打つっスから、覚悟するっスよ?」
遠くへ逃げ回るバットやラットに向かって、葵はシュートでびしばしと追撃した。
ポテトの治療の力によって持ち直した汰磨羈が反撃に出る頃には、ほとんど決着は着いていた。汰磨羈が業火で焼き殺したラットを最後に敵は出て来なくなった。敵は全滅したようだ。
皆で相談した所、回復処置が終わったら、教会墓地へ駆けつける事になった。
●墓地戦
大地の偵察によって墓地の状況も十分に把握する事ができた。
奥手にボスのゾンビが控えていて、前方に9体もの手下ゾンビがいる。
ゾンビの様子をグリムペインはじっと観察していた。
そして、襲撃のタイミングがつかめた所で仲間達に合図をする。
最初に攻撃を仕掛けたのは、『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)だ。
「ライランドの皆さんや、役目を終えたこの教会が安らかでいられるよう……。お掃除、開始です! いきます、ファイア・ボルト!」
『ファイア・ボルト』と名付けられた『遠術』という神秘攻撃が火花を散らす。
前方をのそのそ歩くゾンビの1体に派手に被弾する。
慌てふためく敵陣の姿を見てシズカはにこりと笑う。
(ふふ、『魔女』の二つ名を冠する私が教会の大掃除というのも、何だかおかしな響きですが……)
前衛のシズカに対して、後衛は3人いる。
比較的前にいた後衛の大地は、苦しそうに己から黒い何かを取り出していた。
「既に死んだアンタ達は、大人しく死んでてくれ。……なんテ、俺が言えた立場じゃあねぇけどナ」
大地の奥に潜むどろどろとした悪意は殺傷力を持った霧となりゾンビ達を包む。
ゾンビ2体が黒い霧によって毒に冒され膝をつく。
大地に続くのは、すうっと、大きく息を吸い込むグリムペインだ。
「それなら俺は腹をたて、ゾンビをひと吹きで吹き飛ばしてやるぞ! アオオオ!!」
凄まじい勢いで息を吐いて敵前衛を吹き飛ばす。
暴風で飛ばされたゾンビ3体は、後衛まで飛んで下がる。
ショックを受けた者、麻痺を受けた者は、抵抗力やら動きやらが悪くなる。
最後尾にいるのは『幸福を知った者』アリア・テリア(p3p007129)だ。
遠距離から青い衝撃波を生成し、前方のゾンビに向かって、かっ飛ばす。
「教会と共に忘れられ、魔物になった死者に対し哀悼の意をもって挑むよ。せめて、再びの安息があらん事を!」
最初の攻撃は成功したようだ。
近接攻撃しかできないゾンビの群れに対して、遠方から飛び道具の攻撃だ。
敵陣は前衛の数を減らしながらも、ボスを最後尾に置いてのそのそと向かって来る。
サーベルを構えたシズカが立ち塞がる。
「ここは通しませんよ!」
『シュリッツァー・タンツ・シュトゥルム』の大技が冴える。
猛速度の鋭い大気をまとった格闘術が襲って来るゾンビの先頭を叩きのめす。
後続の何体かは戦闘中の前衛を抜け、イレギュラーズの後衛に迫る。
「来るか? ふン、やってやるヨ!」
「さあ、次の攻撃のページを開こうじゃないか!」
この時点で大地とグリムペインの戦術が被った。
毒や麻痺等といった症状を受けたゾンビ達に呪い殺しの神秘攻撃が襲い掛かる。
さらなる追加のダメージがゾンビ達を蝕む。
グリムペインの追加攻撃も決まると、敵勢には魅了された者もいて仲間割れをする。
この呪わしい展開を見て、「赤羽」とグリムペインは、くくっと、笑っていた。
アリアも加勢しようと思ったその時……。彼女はある事に気が付く。そして、叫ぶ!
「シズカさん! 気を付けて!」
「はい?」
声を上げた時、ぎりぎりで遅かったようだ。
対戦中だったシズカは隙を突かれた。
3体ものゾンビが突然、シズカを囲み、飛びかかり、集中攻撃を繰り出す。
単純に殴り蹴る者。
壊れている柵を持ち上げてシズカに叩きつける者。
至近距離で肩にかぶりついて毒を与える者。
連続で悪い所に攻撃が入り、シズカはその場で倒れる。
なぜ、こういう事が起きたのか?
ゾンビボスが手下達に命令を下したからだ。
友軍の誰もがボスの相手をしていなかったので、ガードががら空きだったのだろう。
仲間が襲われたその瞬間、戦場に戦慄が走る。
皆、瞬時の判断力が求められ、行動する。
大地が走った。
暴れているゾンビの群れを抜いて、ボスの至近距離まで走り込む。
指揮系統を潰すのだ。
「俺に触れるな、近づくな! さもなくバ、お前に待ち受けているのハ、死のみダ!」
大地は、鳳仙花の紋章が刻まれた呪符をボスの足元に思い切り叩きつける。
強烈な破裂を巻き起こした呪いは、ボスを爆発させ、吹き飛ばす。
グリムペインは走り、詠唱を急いだ。
シズカは、何とか起死回生のカムバックを果たし、ふらふらだ。
次の攻撃が来たら、彼女はそのまま再び倒されて無惨にも叩きのめされるだろう。
「嗚呼、鐘が鳴る。鐘が鳴る。魔法が解ける、音がする……」
がらん、がらん♪ ごろん♪
グリムペイン周辺の味方のみに聞こえる癒しの鐘の音が鳴り響いた。
シズカは何とか体調を取り戻したようだ……。
アリアが少しだけ前に出て、詠唱を続ける。
ともかく今、目の前でゾンビがシズカに群がっている。
群がっているゾンビを1体でも倒して、止めさせなくては。
「シズカさんから離れてよ!」
アリアの手元には氷状の鎖が生成され、生成と同時にゾンビの1体に向かって飛んで行く。鋭利さを持つ氷の先端がゾンビの背中を突き刺し、絡め取り、膝をつかせる。
ボスとタイマンを張っていた大地は、ひたすら呪符で爆破を仕掛ける。
ボスの方も命令を出す暇もなく、被爆しながらも近接格闘で大地を襲う。
やがてボスの方が猛攻に耐えられなくなり、倒れて動かなくなった。
「ふぅ……。やっタ、カ?」
ボス戦の決着が着くと残り少ない手下達は迷走した。
もはや前衛も後衛もないので、体力が削られているシズカは木陰に一時離脱する。
代わりにグリムペインが前に出て呪いを歌う。
「蒼き、呪わしき♪ 絶望の海よ~♪」
その少し後ろからアリアが追撃する。
「グリムペインさん、加勢するよ! そろそろ終わりにしようか!?」
氷の鎖が血迷ったゾンビを討ち果たした。
敗走したゾンビが全滅した後、仲間達は回復に急いだ。
相談した上で、教会内部の助けに回ろうという話にまとまった。
●記念
内部戦の班と墓地戦の班が教会の出入り口で鉢合わせになった。
どちらも助けに行くつもりだったが、その必要がなくなったようだ。
思わず、平和的に笑いがこぼれてしまう展開だった。
戦場だった廃教会を見上げて葵が一言。
「いよいよ解体かぁ。かつてはここも神父がいて、人が通ってたんスよね……。いやでも、まぁ……仕方ねぇよな、決まっちまったもんだし」
残念そうな葵に向かって、グリムペインが馬車の荷台を指でさす。
「墓地の草刈りでも皆でやらないか? あの荷台に町人から借りた鎌等がある。墓地というからには死者も居るのだろうに。放置されているのは忍びないからね」
大地が嬉しそうに頷く。
「うん、後腐れなく、全てを綺麗にしてやらないとな。もちろン、俺も草刈り手伝うナ」
ポテトもライ麦畑を見渡しながら会話に加わる。
「墓地も綺麗にしたら、町人に言って、埋まっている者達の処理も要請しよう。せっかくの良い景色なんだ、ここでピクニックだってできそうだ」
シズカも荷台から掃除道具を取り出して来た。
「そうですね。お別れの前に、きちんと墓地を掃除しておきたいですね。素敵な場所があったという事を解体前に省みられるように、最後の清掃に力を尽くしましょう」
汰磨羈は思い出したかのように、ある事を提案する。
「草刈りも良いが、私は内部に戻るな。あれだけ魔物がいたのだ。探せば巣や魔物の子なども見つかるかもしれない。やれやれ。早く帰って、ひと風呂浴びたい気分だが、もうひと仕事するか」
そういう事に決まり、今度は草刈り班と巣駆除班に分かれての行動となった。
ウィリアムは、巣駆除の手伝いが終わると荷台から道具を取り出した。
椅子に座り、立てているキャンバスに向かって、筆を執る。
彼は旧教会とライ麦畑を眺めながら、ゆっくりと絵を描き始める。
仲間達が集まり、何をしているのかと質問する。
「絵でも描いておこうかな、と。本物そっくりとはいかないけれど、こうして形に残しておけば、昔、ここには素敵な教会があった事の証になるかなと思って。このまま何もかも忘れ去られるのは何だか寂しいからね」
風景画の描写が始まると同時に、アリアは愛用の楽器を手に取り、歌う準備をする。
何を歌うのか、と聞かれると……。
「元は市井の人だったはずの彼等への手向けとして鎮魂歌を奏でてあげたいのよね……」
と答え、ライランドの町人から教えて貰った旧教会の歌を奏でる。
「安らかに眠り給え~♪ 初夏の美しきライ麦に囲まれて~♪」
その後、ライランド旧教会は間もなく取り壊された。
だが、イレギュラーズという仲介があった事により、旧教会は町人の皆に祝福されながら安らかに解体を終えられたのであった。
了
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
シナリオへのご参加ありがとうございました。
『ライ麦畑でつかまえて』なんていう古典的名作もあったりしますが、中世ファンタジー世界の『幻想』でも、きっと、そんなふうなお話もあったはず。
その文学的な舞台が、ライランドだったんですよ、と勝手にGMが妄想していたのは、制作裏話だったりします。
GMコメント
●目標
『教会内部』にいる魔物達と『教会墓地』にいる魔物達の両方を討伐。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ロケーション
『幻想』のとある地域の田舎町ライランドの町外れにある廃教会が今回の舞台です。
ライランド廃教会はその名の通り、既に廃墟と化した教会建築です。
規模は田舎町にしてはちょっと大きい程度です。
魔物が出現している場所は『教会内部』と『教会墓地』の2か所です。
8人参加を予想していますが、どちらかの戦場に分かれて戦います。
【A】か【B】のどちらかに「プレイング」をかけて頂けるとGMが助かります。
選択肢を絞り込まれた方が「リプレイ」も充実する傾向にあります。
【A】『教会内部』
既に無人になってから年月が経っています。
天井、床、祭壇、ステンドグラス、十字架等が壊れてそのままになっています。
多数の魔物が暴れています。
【B】『教会墓地』
教会の裏に回ると墓地が一面に広がっています。周辺は木々に囲まれた環境です。
手入れされていませんので、草木がぼうぼうで墓も荒れています。
多数の魔物が暴れています。
なお、清掃(=戦闘)の時間帯はどちらの班も朝から昼にかけての明るいうちに行われます。
●敵
戦場が2つに分かれますが、戦場別に出現する魔物が違います。
【A】は『キラーラット』と『キラーバット』が出ます。
【B】は『ゾンビ』が出ます。
【A】『教会内部』
『キラーラット』×16匹
いわゆるドブネズミが少し大きくなって狂暴化したような魔物です。
ザコですが、すばしこいので気を付けましょう。
戦闘方法は以下。
・牙攻撃:物理至近単体ダメージ。
・連続攻撃:牙攻撃を2回以上連続で放ちます。
・ヒット&アウェー:攻撃を放った直後に逃げます。
『キラーバット』×14匹
いわゆるコウモリが少し大きくなって狂暴化したような魔物です。
こちらもザコですが、すばしこいです。
戦闘は以下。
・落下攻撃:物理近接単体ダメージ。
・超音波攻撃:物理中距離単体ダメージ。
・飛行:歩いている事もありますが、飛行している事もあります。
どちらの勢力にも明確なボスはいません。
また魔物の2つの勢力は共闘関係でも敵対関係でもありません。
つまり、烏合の衆が好き勝手に暴れている感じです。
【B】『教会墓地』
『ゾンビ』のボス×1体
荒れた墓場の下にいた死体が『ゾンビ』になってしまった魔物です。
『ゾンビ』の群れにはボスがいます。ボスは一回り大きくて他の手下達より強いです。
生きていた頃の自我や知能はありません。
戦闘方法は以下。
・近接格闘:物理近接単体ダメージ。
・毒噛みつき:物理至近単体ダメージ。ランダムでBS毒。
・命令:他のゾンビに命令します。
『ゾンビ』×9体
同じく、荒れた墓場の下にいた死体が『ゾンビ』になってしまった魔物です。
また、生きていた頃の自我や知能はありません。
戦闘方法は以下。
・近接格闘:物理近接単体ダメージ。
・毒噛みつき:物理至近単体ダメージ。ランダムでBS毒。
【A】と違い【B】は明確なボスがいてゾンビ達同士は共闘関係にあります。
ですが、【A】の魔物達と共闘関係な訳ではありません。
●GMより
今回は大掃除(主に魔物を清掃)のお話で登場のヤガ・ガラスです。
時期的にそろそろ6月ですが、6月といえば大掃除。
年末もいいですが、年の半ばにやる大掃除もいいものです。
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