PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<クレール・ドゥ・リュヌ>ウルフスベイン

冒険中

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

オープニング


 無謬の都フォン・ルーベルグ。
 白亜の街並みには一点の曇りもなく、品行方正で信心深い人々が暮らしている。
 だが光ある所に影があるように。そんな都にも暗部と呼ぶものもあった。

 大通りから西部の街道方面へ進み、幾度も路地を曲がった所に『贖罪の修道院』と呼ばれる場所がある。
 購いを以て弔いと為すというのが教えなのだそうだ。
 小さな寺院の下に巨大な地下墓所(カタコンベ)を有し、罪を犯した者達が眠っている。

 そんな地下墓所の中で、大理石の床にひざまずき祈りを捧げる男が居た。
 低くうねる告解の聖唱と共に、祈りの句を紡ぐ。

 ――さすれば汝、正義たらん。

 男が祈るのは亡き母の為だった。
 貧しい暮らしぶりの中で、母は一度だけ盗みを犯したのだ。
 汚れなき都の住人とて、その全てが潔白な訳ではなかったのだろう。
 母は断罪の鞭を一度だけ背に浴び、傷が祟って死んだ。

 潔白でない点には二重の意味があろう。
 一つは盗みそれ自体。悪は悪である。
 一つはそうせざるを得なかった環境自体。

 だがかつて、そんな環境に深く心を痛めた貴族の娘が居た。
 名をマルティーナ・ディ・パッティと言う。男爵家の娘だ。
 彼女は生前、貧しさ故に罪を犯したという者を庇い、私財をなげうって人々を救った。
 無論、堅物揃いの天義上層部とて、現実というものは認識している。
 彼女の行動を好意的に捉えられていたであろう。

 そんな折、一つの事件が起こる。
 貧しい人々の蜂起だ。
 事件はカマル・フェンガリーという騎士によって解決され、首謀者とされたマルティーナは異端審問の末に処刑された。
 名家パッティは事件を機に没落し、今やその名を継ぐ者すら居ない。

 ――

 ――――その筈だった。

「あまり……そのように自分を責めるものではありません」
「しかし聖マルティーナ、私は何か出来たのではないかと悔やんでならないのです」
 彼女は涙を流す男の背を撫で「どうか。どうか安らぎを」と応じた。

 聖唱が止み、歌い手達がローブの白いフードをあげた。
 男に女、年齢も様々。ただ唯一の共通点は瞳の昏さで――いずれも武器を帯びていた。

 やがて人々は去り、地下墓所には聖女だけが残った。
 そう見えた。
「汝が――木偶人形風情が何を想おうが、何を言おうが、何も変わらんよ」
 あざ笑うような少女の声音に、マルティーナが肩を震わせる。
 闇夜からにじむように姿を見せたのは、枢機卿の紅い装束を纏った少女だ。
「いつまで冒涜を。その服を今すぐお脱ぎになって……!」
 声を荒げる。
「ずいぶん強欲になったものじゃ」
 嘲笑されたマルティーナが頬を染める震える。瞳に燃えるのは羞恥など通り越した嫌悪と怒りだ。
 だが少女はお構いなしにマルティーナへ近づき、唇を重ねた。

 なぶるような口づけの後、少女は喉の奥で笑う。
「人は皆、汝の姿を見、声を聞き。望んで居る――」
 マルティーナが膝をつき俯いた。
 瞳からこぼれ落ちる水滴が、大理石の床を濡らした。
「――最愛の者が汝のように黄泉返る事を」
 そして。
 天義そのものへの鬱屈した想いを燃え上がらせる事を。
 己が止める度、声をかける度、人々の心には暗い情念が燃えさかってゆく。
 あたかも全てを飲み込まんとする強欲を解き放たんとするかのように。

 いっそ死すら望んだ。
 だが自死は禁じられている。
 この魔種はなぜ。この哀れな操り人形の自我だけを奪わなかったのか。

 なぜ。
 ――なぜ。

「欲しかったからじゃよ、木偶人形」

 汝が。汝等が。
 そう――総てが!


「やあ。天義からのご指名だよ」
 いつもの情報屋――『黒猫の』ショウ(p3n000005)が腕組みしている。
 難しい仕事の予感がした。

「指名?」
 依頼ではなく指名。首を傾げた『冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)に、ショウは依頼書を見せる。
 内容をかいつまめば『暴徒の鎮圧』だ。

 そして――ローレットの勇者に助力願いたい旨。たとえばと添えた上で、この場に居る者やシュテルン(p3p006791)等の名が具体的に記されていた。
「だから呼んだのね」
 まだ記された者が全員揃った訳ではないが。
「そういうこと。もちろん受けるか受けないかは個人の自由だけどね」
 けれど。
「なんでかな?」
「それがね。分からないんだ」
 たとえばシュテルンであれば魔種イーグルハートと直接対峙し、仲間と共に討伐して生還している。
 魔種討伐の勇者という存在に敏感な天義であれば、その武名を重んじる者が居るのはいささかも不思議ではない。
 だがやはり、まだなんとも言えない話だ。

「先に少し説明しておくよ」
 ともかく今日は何が起きたのかと訪ねたイレギュラーズへ向かい、ショウは説明を始めた。
 天義首都フォン・ルーベルグを中心に、このところ狂気に侵された多発し始めているのは既知であろう。
「フォン・ルーベルグの市民は善良で規律正しい。その辺りの説明はいらないよね」
 勿論だ。だからこのような事件など起きようはずもないのだ。
「なら、それってまるで」
 応じたアルテナにイレギュラーズが頷く。

 この異常事態は――<嘘吐きサーカス>が居た頃のメフ・メフィートでの事件を思わせる。

「それでね」
 表情を引き締めたイレギュラーズを前にショウが続ける。
 レオンがざんげに確認した所によれば<滅びのアーク>の急激な高まりが観測出来たということだ。
 その事実は尚更に、あの事件と同様の何かを思い起こさせた。
 おそらく――否、間違いなく『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』が強く生じてる。
 だがサーカス公演のようにわかりやすく人を集め、広く人々を感染させる旗印は見えないのだが――
 イレギュラーズの疑問にショウが答える。

 おそらく狂気を電波させる『アンテナ』が居るのだと。

 まあ。
「これはレオンの推測だけどね」
 ぞっとしない。
 その『アンテナ』とは、もしかしたら『黄泉返った愛する者』なのではないか。
 知性、人間性すら感じさせる存在が。己の復活を喜ぶ者を、知ってか知らずか狂気に堕とす。
 それが強大な邪悪による操り人形だとしたら――
「どうにか出来るのは、キミ等しか居ない事になる」
 無責任な物言いを情報屋は詫びた。

 さて。
 このメンバーが受ける仕事は、そんな風に同時多発している事件の一つだ。
「依頼の内容自体は単純なんだ」
 ショウが言うには、依頼内容そのものは『黄泉返った死者』と『暴徒』の討伐ということになる。
 しかし持って回った言い方をするということは、何かあるのだろう。
「オレが調べた所、どうも暴徒達の影に何らかの魔物か何かが居るみたいなんだよね」
 魔物と来たか。
「ひょっとしたら……魔種(デモニア)かもしれない」
 それは人類の――世界にとって不倶戴天の敵の名。
「その情報は天義から?」
「依頼書には魔物の可能性については触れられていない」
 それは、どこかきな臭さを感じるが、単に天義側では調査出来ていないだけかもしれない。
 なにせ全体を見渡せば、フォン・ルーベルグはとんでもない事態なのだ。

「それにこの依頼。とある貴族のお抱え騎士達と共闘することになるみたいなんだ」
「とある?」
「それがね、誰なのか書かれてないんだよ。だから何者なのかが分からない」
 ショウが依頼書を差し出す。
 言われてみれば確かにそこが曖昧だ。

 ショウが首を振る。
「ちょっと臭うだろ?」
 依頼内容そのものは『黄泉返った死者と暴徒の討伐』だけ。
 依頼自体はきちんとした天義の依頼。
 それだけならローレットだけ、あるいは天義の騎士達だけでも解決出来そうな内容ではある。
 手が回らないであろうに、わざわざ共闘などとは。
「それって、魔物の存在が意図的に伏せられてるってこと?」
 アルテナの問い。
「考えたくはないけれどね」
 だが一体何のために。そこが不明だ。

「以上の詳細な情報がつかめなかったんだ」
 ごめんねとショウは続ける。
「だから一気に沢山の依頼が舞い込んだ中で、こいつの情報精度はとても低い」
 ならば格別の注意が必要だろう。

「十分に気をつけてね」
 今日の情報屋からはかなりの懸念が感じられたが――まずはこの依頼を受ける仲間が揃うのを待とう。
 全てはそれからだ。


 月明かり。
 白亜の聖都に一人の騎士が佇んでいた。
 線は細いが、騎士装束が良く似合っている。麗しの貴公子と言っても差し支えあるまい。
 いかにも生真面目そうな眼差しの奥には怜悧な――けれど底知れぬ光が宿っている。そんな男だ。

「……さて。そろそろですか」
 その石畳を踏みしめ、名門エストレージャ家の騎士団長カマル・フェンガリーが歩き出す。
 今頃ローレットのイレギュラーズは、配下の騎士達と合流している筈だ。
 仕込みは――全て終わっている。
 おそらく暴徒達と共に居るであろう魔物――背後には魔種(デモニア)の気配もあるのは承知しているが、そのためのローレットでもある。
 国難とも言える事件が度重なっているが、おそらくローレットなしでは重篤な事態に陥っていた事だろう。

 さしものカマルもローレットに所属するイレギュラーズ達の実力そのものは評価せざるを得なかった。
 ローレットという存在は、彼女を手に入れる為の巨大な障壁となるだろう。
 とはいえ彼にとっても、この国(ネメシス)が廃墟となっては意味がない。

 厄介極まるローレットではあれど、こうした未曾有の事態への利用価値はある。
 ならば上手く使えば良いのだ。
 眼前の国難そのものが、己に絶好の機会を与えてくれたとすら言えよう。

 ローレットに対し、いくらか伝えていない事はあるが。現状、手が回らぬのは事実ではある。
 指摘があれば率直に詫びれば良い。
 下げる頭など持ち合わせていないが、スロープレイは得手である。
 見かけなら、いくらでもやってみせよう。

 手配した襲撃者からも足が着く余地はなく、かの『峻厳たる白の大壁』でもなければ見通せまい。
 無論そのような場に引き出される愚など侵そう筈もなく。
 己が逃げ道とて入念。
 後はあくまで天義の騎士として清廉潔白に振る舞えば良い訳だ。

 今回上手くいけばそれも良し。
 そうでなくとも今後有利に立ち回れる状況を構築出来るだろう。
 内心ほくそ笑み。しかし表情一つ変えず。

 ――かならず彼女を手に入れる。

 カマルの自信は確信めいていた。

GMコメント

 pipiです。全体依頼+関係者な感じです。
 こちらの依頼に参加した方は、天義から直接ご指名があったということになっています。

 背景情報は複雑ですが、為すべき事は単純です。

 難易度自体はHARDです。
 攻略に徹するも良し、事態をより最終的解決に近づけるも良し、あんなあいつに一杯食わせてやるも良し。
 後は皆様次第です。

●目標
『成功目標』
・月光人形マルティーナの討伐(必ず殺す)
・暴徒の鎮圧(生死逃亡問わず)

『やるはめになること』
・魔種と取り巻きの魔物を撃退(生死逃亡問わず)
・突然現れる襲撃者を撃退(生死逃亡問わず)

 魔種等『やるはめになること』の存在はプレイヤー情報ですが、もちろんプレイングに盛り込んで頂いて構いません。

●ロケーション
 罪を犯した人達が弔われている広大な地下墓所です。
 皆さんは共闘する騎士達と合流し、ここへ来ます。
 暴徒と魔物がおり、後ろに魔種とマルティーナが居ます。

 棺や祭壇、柱なんかがありますが、雰囲気です。
 とっても広いです。
 地形や灯りの心配も無用です。

 中にはマルティーナと魔種アストリア、とりまきの魔物が居ます。
 不利になった場合、あるいは一定の時間が経過すると謎の黒装束集団が襲撃してきます。

 どれもやっつけて下さい。

●敵(最初から居る)
『月光人形マルティーナ・ディ・パッティ』
 当人の人格そのものは非常に真っ当ですが、操られるがままに交戦してきます。
 神秘属性遠距離の回復や攻撃を行います。
 弱くはありません。

『魔種アストリア』
 非常に強力な魔種です。
 枢機卿服を纏った銀髪紅眼の少女に見えます。
 属性は『強欲』です。
 月光人形を操っているようです。
・ラヴィッシュ(A):物近単、出血、必殺
・ガンマ・レイ(A):神超遠貫、万能、致命、弱点、暗闇
・スターフレア(A):神遠範、火炎、炎獄
・ウルサ・メイヤーα(A):???
・ロバーソウル(P):物理通常攻撃が連、HP吸収を持つ。
・グリードヘイロー(P):???

『バリィド』×8体
 アンデッドです。
 至近から殴るだけですが、弱くはありません。

『ゲニウス』×2
 遠距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『グリード・ワーム』×2
 近距離攻撃を得手とするモンスター。なかなか強力です。

『暴徒』×25名
 統制も連携もなく襲いかかってきます。
 武器は持っていますが、普通の人々です。
 とても弱いですが、原罪の呼び声による狂気伝播の影響下にあります。
 言葉が通じる状態ではないでしょう。

●敵(突然現れる)
『黒装束』×15名
 リーダー一名以外は強くありません。
 しかし数は厄介です。
 ダガーやボウガン等で武装しています。

●味方NPC
 普通に共闘してくれます。

『カマル・フェンガリー』
 今回のマルティーナ討伐隊の指揮官。
 天義名家エストレージャ家お抱えの騎士団長です。
「本件はそもそも我が身の不徳が至る所。どうかご助力を」
 などと丁寧に述べます。

 依頼にシュテルンさんが参加した場合、彼は大いに驚いたそぶりを見せます。
・連れ戻しに来た訳ではない。
・シュテルンが居た事を父(バーロン・エストレージャ)には言わない。
・守る。
 三点を約束してくれます。

『騎士』×10名
 カマルの部下達です。
 それなりに戦えます。
 防御技術とHPが高め。

●情報精度D
 背景情報に不明点が多数あるためです。
 記された情報自体に嘘はありません。
 攻略に絞るなら敵能力の不明を考慮したとして、B-程度でしょうか。
 がんばってみてください。

●同行NPC
・『冒険者』アルテナ・フォルテ(p3n000007)
 皆さんと同じぐらいの実力。
 両面型。格闘、魔力撃、マジックミサイル、ライトヒールを活性化しています。
 皆さんの仲間なので、皆さんに混ざって無難に行動します。
 具体的な指示を与えても構いません。
 絡んで頂いた程度にしか描写はされません。

  • <クレール・ドゥ・リュヌ>ウルフスベイン Lv:8以上冒険中
  • GM名pipi
  • 種別EX
  • 難易度HARD
  • 出発日時2019年05月18日 23時59分
  • 参加人数 10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険中です。結果をお待ちください。

参加者一覧(10人)

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
幸運:E
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
祈る暴走特急
ティミ・リリナール(p3p002042)
儚き雫
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
朱鬼
アベル(p3p003719)
未来偏差
風巻・威降(p3p004719)
瞬風駘蕩
最上・C・狐耶(p3p004837)
狐狸霧中
シュテルン(p3p006791)
星頌花

PAGETOP