PandoraPartyProject

シナリオ詳細

その瞬き1つ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●目を閉じて、開く
 瞬きによって訪れるのは、真っ暗な闇だろうか。それとも真っ白な光だろうか。
 その中にあなたがいる時間は、一体どれほどか。

 これはただのキッカケだ。些細で、どこにでもある内の1つ。
 光とも闇ともつかぬそこで思い浮かぶのは敵か。味方か。家族か。恋人か。或いは。

 刹那とも、永遠とも言える時間の中。
 ──あなたは何を考え始めるのだろうか。その思考が彩る色は、何色か。

●木漏れ日の下
 『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はそっと瞳を閉じる。視界が暗闇に閉ざされて──いいや、ちらちらと光が舞っていた。
(……木漏れ日か)
 春の日差しが薄い瞼越しにシャルルの視界へ差し込んでいる。それは混沌に召喚される前を思えば、随分と違うことなのだろうなとシャルルは他人事のように考えた。
 ゆっくりと瞳を開け、瞬きを1つ。ふと耳へ手をやれば、石のついたイヤリングが指に触れる。

 ただ、森でのんびりと過ごしているだけではない。これもれっきとした依頼であった。
 ローレットで情報屋から渡されたこのイヤリング──練達製だというこれは持ち主が思ったことや感情に合わせ、色を変化させるのだという。最初は無色透明だったそれを渡され、試しに使ってみて欲しい、とのことだった。なんでも、上手くいくなら商品化するらしい。
 あの国で作られた、というだけで若干疑いにかかってしまうところはある。だがしかし、こんなアクセサリーが爆発したり何か騒動を引き起こすとも思えない。故に、シャルルはこのイヤリングを見に着けていた。

 視線を伏せ、シャルルは再び思考の海に溺れる。
(……精霊のボクは、あんな感じだったのか)
 思い起こすのは先日まで忘れてしまっていた記憶。消えてしまった召喚前の出来事。その、一欠片。
 精霊であったと、そうであったのだという認識はある。けれど実際に過去を垣間見て違和感を感じるのは、混沌で"人"の体と記憶と──そしてイレギュラーズを始めとした周囲の環境に慣れてしまったからなのだろう。
 人の体を得て、人として生活することに特段何かを思うわけでも無い。それでも自分の過去には多少なりとも興味があって、先日思い出したソレが何だったのか知りたいとも思うのだ。
 ──いったい、あれは何だった?
 考えてもわからないけれど、考えずにはいられない。答えが出るはずもないと言うのに、記憶の一部を思い出して以降は暇さえあれば考え始めてしまう。
 また、何かの折に思い出せるだろうか。知ることができるだろうか。
 思い出したら──自分は何か、変わるのだろうか。
「……いくら考えても、仕方ないんだよな」
 自嘲的な色を含んだ声音が、木々の揺れる音に紛れて消える。見上げた空の色に彼女の瞳もまた、青味を強めて。

 その耳元で揺れるイヤリングは、青とも紫ともつかぬ不思議な色へと染まっていた。

GMコメント

●概要
 思い思いに考え事をする

●詳細
※これはほぼ心情描写のみのシナリオです。
 目を瞑り、開く。それをきっかけに考え事をしましょう。
 場所は問いません。また、内容は何でも構いません。先日受けた依頼の振り返りだったり、過去をふと思い出してみたり、好きな人の好きなところを延々挙げても良いでしょう。
 但し、参加者以外の名前は出せません。また、依頼名を挙げられても参考にできません。プレイング内で収めてください。
 心情を掘り下げるという内容ですので、基本的に個々の描写となります。複数人同時の描写は可能です。ただ傍らにいるだけでも、口数少なく言葉を交わす程度でも良いかと思います。(沢山話すのは、シナリオの趣旨的に控えて頂ければ幸いです)
 尚、イヤリングは依頼後回収されます。

●ご挨拶
 愁と申します。練達からのお仕事、という名の心情シナリオです。
 皆様はどんなことをふと考えるでしょうか? 私は夜ご飯の献立が多いです。
 恋愛でもシリアスでもどんとこい……ですが、行動描写は必要最低限となりますのでご注意ください。
 ご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • その瞬き1つ完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年05月27日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)
希うアザラシ
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
チモニー(p3p004642)
星状レグレス
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
沁入 礼拝(p3p005251)
足女

リプレイ

●色と感情
「ふしぎふしぎなイヤリング! つけるとなにがみれるのかな!!」
 未知の体験。それを前にして『星状レグレス』チモニー(p3p004642)が感じるのは不安などではなく、純粋な楽しみ。
 おかーさんもたのしみだよね、とチモニーは腕の中にある母──の、されこうべをギュッと抱きしめて。『森アザラシと魂無き犬獣人』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)は抱っこしてくれているグリュックへの愛を考えてきた、と元気に言うが──徹夜したからか、その目はとても眠そうだ。
 その傍らでは『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)がしげしげと手元のイヤリングを眺めていた。
「興味深いものの、需要がどこまであるのかは未知数ですわね」
 ジョークグッズとしてなら試すかもしれないが、使用者の感情に合わせて色が変化するのだ。もしも破廉恥なことを考えていたとしてもバレバレなわけで──。
(──ハッ! まさか、その手の趣味に全世界の人々を目覚めさせる壮大な計画……!?)
 目を見開くエリザベス。そのような計画が果たして本当にあるのかはわからないが──少なくとも、そういうことを考えたら即バレであることは確か。特に、色の変化を記録している『D1』赤羽・大地(p3p004151)は気づくのが早いだろう。
 大地は皆の言動や、早速イヤリングをつけた者の色を視線で順に追っていく。言葉となった感情は勿論イヤリングに反映されるようだが、言葉にしない感情もやはり、という状態だ。
(皆、何を思っているんだろう……)
 そうして皆を観察していた大地も、また──思考の海に、深く落ちていく。

●ecru beige
 それは、赤羽・大地でなかった頃。
 それは、三船大地だった頃。

 それは、どこにでもいるような──1人のありふれた学生だった頃。

 今でも思い出せる、窓の外の森。視線はすぐに教科書へ。……正確には、教科書に隠した小説へ。
(先生の言葉なんて耳に入らなかったな)
 退屈な授業の内容は、例え聞こえていたとしても右から左に流れていた。けれどそんな時に限って当てられて、慌てて教科書を読んで答えて。
 真面目な生徒、とは言えなかっただろう。けれど赤点は逃れていたし、得意科目はそこそこ褒められたりもしていた。不真面目とも言い難い──上でも下でもない、中くらいの位置、というべきか。
 そんな日々は流れて、少しずつ大学受験というものが近づいてくる。大地も机に向かい、苦手を埋めようとしていたことがあった。
 志望校に受かりたい。大学生になったらあれがしたい。これも、それも。そうして未来を思い浮かべることは、そんな未来を思い浮かべることは、何1つとして特別なものではなかった。
 ありふれた、どこにでもいる人間だった。

(──少なくとも、俺があの女に殺されるまでは)
 思考の海から引き上げられる。薄目を開けるとローレットの床が見えた。どれだけ顎を引いても見えないが──大地の首には、傷がある。
 ぐるりと首を一周するこの傷によって、ただの学生はいなくなった。その頃にも、もう戻れないだろうと思う。
(……だけど、何もかもが懐かしい)
 もし、もしも。あの時に戻ることができるのなら──。

●rose mist
 イヤリングを手に『足女』沁入 礼拝(p3p005251)はかくりと首を傾げる。
(人の心を映すなんて、不思議なイヤリング……)
 自分の感情が、心が色になるのなら。美しく、人を慰める存在であれと作られた礼拝の心は、何色になるのだろうか。
 イヤリングを耳につけ、そっと目を閉じる。瞼の裏にすぐ浮かんで、張り付いて、取れないのは"彼"の顔。すぐに目を開けるけれど、ひと度思い浮かんだ彼の存在はなかなか消えくれない。──否、心の表層に浮かばないだけで、常に心には彼が居続けている。
(この場に貴方が居れば、どうするのでしょう)
 不思議な玩具を見て、子供の様に目を輝かせるかもしれない。
 その顔が仮面で見えずとも。それでも最近は、その気持ちが分かる時がある。彼を1つ、また1つと知っていく。
(ああ、でも、)
 目を閉じたまま零れ落ちる小さな吐息。そこに含められたのは悲しみか、落胆か。
 彼を深く知れば知るほど、礼拝が最も愛されているわけではないことも知る。いいや、初めから知っていた。知っていて、好意を寄せた。
 だから筋違いだとわかっているのに──無邪気に『あの方』と礼拝を引き合わせる彼を、恨めしく思わずにはいられない。

 ──私は補助輪のようなモノ。
 ──1人歩く貴方が、誰かと歩く前に使う杖のようなモノ。

 そういうモノ。私はそういうモノだ。
 けれど──信頼を裏切り、傷つけ、この手の中へと閉じ込められてしまえたら。彼が礼拝の傍以外で生きる気力も、希望も持たなければ。
 それはとても安心できて、平穏な日々を過ごせることだろう。
(でも、それではだめなのです。それでは私も貴方も決して幸せには成れない)
 だから代わりに──願い、祈る。

 どうか貴方の道行きに光がありますように。
 何時か貴方の愛が、貴方を蝕むことから解き放たれますように。
 貴方が本当に自由になり、幸せに満たされますように。
 私の手から飛び立って、いつか、いつか、

 ──貴方の意思で私の手にとまってくれますように。

●cream yellow
 イヤリングをつけて目を瞑ったチモニーは──唐突に脳裏へ描かれた世界にパッと目を開けた。その体を小さく震わせ、唇を戦慄かせて。
 真っ暗な、真っ暗な。一面が塗りつぶされたような、世界。何かがドロドロしていて──。
(だめ……おもいだしたくない……!)
 ぶんぶんと頭を振ったチモニーは大きく深呼吸をした。腕の中にいる『おかーさん』をぎゅっと抱きしめ、もう1度と目を瞑る。
 思い出したくないものは思い出さなくていい。思い出すのは、そう──。

(こんどは、あかるいの)
 ぼんやりとした光の中、チモニーはぐるりと視線を巡らせる。
「あ、おかーさん!」
 そして『母』を見つけたチモニーはそちらへ一直線。優しい『母』は向かってきたチモニーを抱きしめた。
(いいかおりの、やさしいおかーさん)
 ふふ、と笑みが漏れる。なんだかとても擽ったくて、温かくて──。

「んふふ、おかーさん……」
 くすくすと笑みを浮かべていたチモニーは、はっと目を開けるとそれを盛んに瞬かせた。
 先ほどまで『母』に抱きしめられていたはずなのに、気づけばローレットで。どうやら椅子に腰かけたまま微睡んでしまったようだ。
「おかーさんつぶれてなーい? おかーさん小さいから、チモニーが守るからね!」
 腕の中のされこうべを持ち上げて、チモニーは自らの目線に合わせる。そして眼窩に視線を向けるとにっこりと──おかーさんの大好きな表情で──笑った。

●amber rose
 そもそも、貧乏性には考えることが多いんだ──『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は溜息でもついてしまいそうな心地だった。
 考えることがなくなるなんて早々ない。今日だって夜メシにどこでいくら使うかとか、このままだと恋愛の1つもせずに逝きそうだとか、あと何回嘘をついたら天義で指名手配されるかとか──とにかく次から次へと考えざるを得ない。
(ああ、だんだんしんどくなってきた)
 結局吐き出された息に、殊更気持ちが沈んでいく。もっと世の中が単純であればここまで考え事を抱えず済むというのに。
(誰かにとっちゃ今でも十分単純なんだろうな)
 自分と誰かは違う。それは理解できる。けれどもその理由が強いから、弱いからで決められて欲しくない。
 強くなったとしても、その強さは時と場合で反転する。だから、サンディは弱くあることも強くあることも望まない。
 はあ、と再び溜息が落ちる。
(どっかあの辺の、動かないタイプの商人の若旦那みたいにボケーッと楽に生きてみたいもんだぜ)
 もしくは『何かを斬ることしか考えていない』どこぞの剣豪のような単純さがあれば、或いは。──けれどサンディは小さく頭を振った。自分がマネしたところで、自爆するだけだろう。
 正義はとても窮屈だとかの国で十分に思い知ったが、さりとて自由もなかなか程遠い。この手が届くには、まだ。
(っつうか、俺にとっては実際に『面倒くさい』からこそ、それを逆手に取れば『力』にできるんだ)
 目を開いたサンディは自らの手を見下ろし、ゆっくりと握りしめた。その口元には仕方ねぇな、というような笑みを浮かべて。
(まー、アニキってのはそーゆーもんだよな。ガキ共にゃ扱えねぇ「力」は、俺が使うしかねぇんだ)
 それがアニキの役目なのだから──そんなことを考えて、サンディは目を1つ瞬かせた。考える事が多いと思って始まった考え事が、いつの間にやらつまらない話になり始めている。それならもっと別のことを考えよう。何かワクワクして、楽しみになるような。

 ──明日の夕飯、なににしようかな?

●rose dragee
(僭越ながら無機物代表として、製品モニターのお仕事、承りましょう)
 エリザベスの耳元でイヤリングの石が小さく揺れる。付けたばかりは未だ透明だが、これからエリザベスの精神状態によって色づいていくのだろう。
(考える事柄を限定する事によって、意識的に色を変えられるのでしょうか? それとも、深層心理のようなものまで検知してコントロールは不可能なのでしょうかねぇ)
 折角モニターを務めるのだ。色々試しておいて損はないだろう。練達の作ったイヤリングというくらいだから脳波くらいは拾っていそうだ。さらにこの世界の技術も併せているとしたらば、魔法の類も関係しているかもしれない。
(今朝補給した天然オイルは独特の風味がしましたが、美味しかったですわね)
 町の露店で売っていた『面白そうなもの』でつい買い求めた品だったが、思っていたより悪くなかった。あの独特の風味は少々驚いたが、また見つければ買ってしまうかも──。
 エリザベスはそこで一旦思考を中断し、イヤリングを外してみる。時間が短いためか外側は透明だったが、中心は淡い黄色に染まっているようだった。
「では、次でございますね」
 1つ頷いたエリザベスはイヤリングをつけ直し、先日の闇市での出来事を思い出す。イレギュラーズなら全員──とはいかないかもしれないが、まあイレギュラーズになったばかりでもない限り知っているであろうあの闇市。パンツばかり出るあの闇市。何故か有名人やギルドに属する情報屋・冒険者のパンツも流通しているあそこで、何がどうなったかおっさん様のパンツ──ただのおっさんのパンツである──ばかり出たのである。コレクションにも財産にもならない、おっさん様のパンツが。その時の心境と言えば怒りなど通り越して──。
 不意にエリザベスの中で警鐘が鳴る。エリザベスは思い出すことをやめ、ゆっくりと視線を伏せた。感情の振れ幅に回路が追い付かなかったらしい。そうして目を閉じていると、不思議な音がエリザベスから聞こえてきた。
(今日はどのような音が聴こえるでしょうか)
 近頃、目を瞑った時にだけ聞こえてくる音だ。聞こえるといっても聴覚センサーが捉えているわけではなく、まるでエリザベスの体が音で出来ているのかと思わせる。
 その音に導かれるがまま、エリザベスはリズムに乗せて踊る。その耳で揺れる、イヤリングの色は──。

●iron blue
 奪った命、貶めた時間、それは何のためであったのか。それらは腹立たしいほどに憶えている。
 けれども『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)はそれを云うわけにはいかなかった。云ってはならなかった。

 思い浮かぶのは1人の娘。──ラルフの娘。
 彼女は自身の子どもであることが疑わしいほどに良い子だった。それは娘の持つ遺伝子の片割れ──ラルフのパートナーであった人物の血かもしれない。何せ、その眼は本当に似ていたから。
 最初に睨みつけられたときは、まるでそのパートナーに叱られているかのようで。顔には出ていなかっただろうが酷く狼狽したものである。失ったはずのパートナーがここで生き延びていたと。その証を見る事ができただけでも、元の世界で満足して終わった自身には勿体ないものだった。

 ──本当の神なんて言うのは、ただの人の想いの集合体。あんな偉そうにしてる存在とそれは別物、傲慢に怒りに満ちて生きる貴方は自分が恨む存在とまるで変わらない──

 存在としての神を恨むラルフが告げられた言葉だ。当時はまるで理解するつもりもなく、その必要性もないと思っていた。そしてラルフは神──そう呼ばれる管理者を殺し、力と知識を得た。最も、それらは元々備えていたものでも蓄えようとして蓄えたものでもない。忌々しい存在から永久に苦しむようにと、輪廻の記憶を忘れる事がないよう弄られたものだ。
 だから、と言うべきか。元の世界の住人に詫びる気もなければ罪悪感も抱かない。返すのならば感謝だけ。──この偶然がかの想いの集合体だと言うのならば、だが。

 ──いつか偶然の果てに、君とまた会いたいものだ。

●opal green
「早速目を瞑って……」
 瞼を閉じるが早いか、速攻で寝息を立て始めたレーゲン。それを見下ろすグリュックは──グリュックの肉体に宿った何かは、1つの問いを心の内で投げかける。
(……私は何なのだろう。レーさんが軽い睡眠状態になった時だけ思考できる私は)
 この体は抜け殻で、レーゲンが術式により操作などを行っている。その術式が変質してしまったのか、それとも魂の残骸が長い年月で溜まり、新たな魂となったのか。
 いいや、とそれは後者を否定した。それはともすれば首を横にでも振りそうなものだが──それは、自身の意思で体を動かすことができない。レーゲンを撫でるにも、抱きしめるにもレーゲン自身の力が必要だ。そして例え体を動かせたとしても、レーゲンの願いをかなえる事はできない。
 この抜け殻の持ち主はもういないのだ。もし会えたとしてもそれは赤の他人、全くの別人。記憶も思い出も、外見の面影すらないだろう。それをレーゲンは分かっている。それでも抜け殻と共に旅を続け、黒犬の魂を探し続け、この世界へ召喚されてからも魂が転生してやいないかと探し回る。
 それは助けられなくてごめんと、謝るため。そしてお別れをするため。
 終わったらこの抜け殻をどうするのだろう。ずっと共に旅し続けられたら良いのに。私自身に名前が付けられたりしないだろうか。
 そんな欲望や不安はたまに溢れてしまうから、そういう時は世界へ祈る。

 ──雨に幸せが、幸福が訪れますように。

 とある異世界で、レーゲンとグリュックの意味を知ってからだ。それからはずっとそう願い続けている。それ自身ではレーゲンを笑顔にはできないから。何もしてあげられないから。せめてレーゲンの幸せを、と。
(でも……今回だけ役に立てて嬉しい)
 グリュックの腕の中では、未だレーゲンが静かに寝息を立てていた。

●mist
 『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)はガスマスク越しに、ちらりとチモニーを見た。見た目8、9歳程度の相手はジェックに気付く様子なく、手元のされこうべに笑いかけている。
(最近ドウモ、子供にカカわることが多いんだよね)
 それは依頼然り、そうでないところ然り。特に少年を見ていると、元の世界にいた『あの子』を思い出すようで。
 男女別に育てられた幼少期。ある年齢になって武器と共に放り出されれば、そこは大人の世界。ジェックはこの混沌に来るまで、小さな男の子に会ったことがなかった。では異性に初めて会ったのはと言えば──育てられた施設から出てすぐのこと。
(ゆっくりと目をツムって思いだそう)
 ガスマスクのレンズ型に切り取られていた視界が、ゆっくりと暗闇に沈んでいく。

 ──そう、廃墟を歩いてた。隣を向けば、ジェックによく似た少年が1人。
 並んで歩いて、並んで銃を構えて。水源はほとんど枯れて雨も汚染されていたから、生きるために水を求めて依頼をこなして。たまにガスマスクをこっそり外しあって、顔を見合わせて小さく笑い合ったりもして。
 嗚呼、なのに。少年は暫くして亡くなった。空が零した、死へ誘う雨に打たれて。

(……アレ、不思議な景色だ)
 目を開いたジェックは首を傾げた。目を閉じて開いたのだから、いるべき場所はローレット。だと言うのに、目の前に広がったそれはローレットのモノではない。ふと横を見れば、そこには少年が──いいや、少年に似た男の子がいた。違うのは、何か不思議なモノが生えているということ。
(それに目が憎々し気なような、ドウシテだろう。……ン? この顔……どこかで……?)
 記憶の琴線に小さく触れたような、その感覚を掴む前に相手の姿が消えた。気づけばガスマスクもついていて、外れなくて。
 瞬きをすると視界に見慣れた──ローレットが見えて、ジェックは小さく吐息を零した。
(夢……だったのかな? アレ……何を考えてたんダッケ……?)
 霧散してしまった夢の内容に首を傾げ、ジェックは何色になっているだろうかとイヤリングを外した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 色はプレイングと直感です。割合は人によりけりです。

 またのご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

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