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シナリオ詳細

<シトリンクォーツ2019>スパ!de GOGO!

完了

参加者 : 24 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それは安寧を祈り長閑を祝う日
 シトリンクォーツは探求都市国家アデプト、通称練達にも訪れる。
 もっとも住民たちにとって休みなんてあってないようなものだ。なにせ己が手で神の領域へ踏み込もうとする曲者たちが勢揃い。皆みな自分の研究に夢中で仕事と遊びの境界線なんてないに等しい。
 ところがそんな練達にもまっとうな感覚でまっとうに商売している(練達住民いわく)酔狂な人々もいる。
 駅からでる直行バスに乗れば、そうそこは一大リゾート施設「スパ・ホワイトバタフライ」。シトリンクォーツの間だけワンドリンクサービス、水着・衣装貸出つきの大盤振る舞いで営業している心ときめくスポットだ。

●スパ・ホワイトバタフライのパンフレットをどうぞ。
 いらっしゃいませ! スパ・ホワイトバタフライへようこそ。ドーム型のガラス屋根に覆われた完全屋内水浴施設です。シトリンクォーツの期間中は、お客様の日々の疲れを癒やすため、全力全開で営業中!

 この施設の目玉はふたつ。
 ひとつは地上30mから滑り落ちるウォータースライダー。
 ふたつめは水中カメラ付きの飛び込み用プールです。

 ウォータースライダーは練達の建築家が集まり腕によりをかけて建てた(しかも作るだけ作って飽きた)自慢の逸品、流れる水に身を任せ、急回転急旋回三回連続縦回転とスリル満点。最後にはシトリンクォーツの花を散らしたひんやりと冷たいプールへシュート! 生まれ変わったかのような爽快感が得られると大好評です。

 飛び込み用プールは一対の飛び込み台がついたシンプルなプール。ただし、水深はなんと10m。底までたどりつけるでしょうか?
 このプールには水中カメラが設置してあり、記念撮影をすることができます。ドレスを身にまとってダイブすれば水の中で肌に絡む布地ゆらめく儚くも美しい、まるで天使のような絵が撮れます。もちろんペアで飛び込んでもOK。

 他にも、ガチ泳ぎに適した50mプール。お子様も安心の浅い温水プールがございます。ぜひご利用を!
 泳ぐのに疲れてまったりしたいあなたには、ドリンクバースペースをお薦めします。
 サウナと水風呂が併設されたここでは、飲食ブースの他にも、畳でできたご休憩どころ。泥パックなどのエステルームなどなど、さまざまな施設が目白押し。きっとあなたの気に入る場所が見つかるでしょう。お手軽にリゾート気分が味わえるスパ・ホワイトバタフライへどうぞお越しください!

GMコメント

あ・つ・い!
ちょっと最近は春と秋が短すぎませんかね、もう日差しが夏ですよ。みどりです。
というわけで、ひと足お先に水着シナリオ。もちろんドレスとモーニングでもいいのよ?
プレイングでは行きたい場所をタグで指定してください。
必ず合流したい人がいる場合はグループタグを添えてください。

【1】
ウォータースライダーです。流れに身を任せて心頭滅却するもよし、「ふにゃごろべあばたぁ!」とおにぎりもびっくりのころころりんをするもよし。最後はみんなでひんやりプールへどぶん。

【2】
飛び込み専用プールです。水中カメラが設置してあり、記念撮影することができます。仮装してとびこんで変顔するなりなんなりご自由に。

【3】
その他の施設です。総合施設なのでだいたいのものは生えてきます。20歳以上はアルコールを嗜むことができます。

●書式
一行目:【行き先】
二行目:【グループタグ】なければ適当に混ぜくります。
三行目:プレイング

  • <シトリンクォーツ2019>スパ!de GOGO!完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年05月15日 21時45分
  • 参加人数24/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 24 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(24人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
セララ(p3p000273)
魔法騎士
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
キミと、手を繋ぐ
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
カレン=エマ=コンスタンティナ(p3p001996)
妖艶なる半妖
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
アニー・K・メルヴィル(p3p002602)
零のお嫁さん
アリシア・ゼラムコード(p3p002717)
鍵の守護者
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
リナリナ(p3p006258)
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

リプレイ


「んおぉ~!! 不思議スベリダイ! 不思議スベリダイ! るら~っ! トツゲキ~~!!」
「あーーお客様困ります! ウォータースライダーは座ってご利用ください!」
 係員の声を尻目にリナリナは入り口へ飛び込んだ。流れる水に足を取られそうになるも、そこは直感で先を読む。いつしかリナリナは流れと一体化し、恐怖の縦3回転すら抜けてみせた。
 が。
 出口がちょっと上向きになってるとは思わなかった。飛び込みの要領でプールの中へ……。
 びたーん!
 めっちゃ腹打ちした。
 うつ伏せたまま無反応なリナリナだったが、なんの前触れもなく突然起き上がった。
「おぉぉ~。何だコレ! 超楽しい!! リナリナもう一回やるゾッ!!」

 そんなリナリナの脇をシュテルンとカレンが通り過ぎていく。
「なかなか手強そうな乗り物だのぅ、シュテルン、怖くはないか?」
「シュテ、楽しみ! カレンと、一緒、おでかけ、うれしい!」
 うきうきと歩くシュテルン。その長い金髪が足元で踊る。黒に銀のラインが入ったワンピースの水着がよく似合っていた。カレンはそんなシュテルンをほほえましく思い、彼女と手をつないだ。おとなしいわんこのようにカレンへ寄り添うシュテルン。恥ずかしげにまつげを伏せ、こう囁いた。
「でも、ちょっと、怖いから。ひとりづつ、じゃなくて、カレンも一緒、乗って?」
「うむうむ、では妾はシュテルンの後ろに座ろうかのぅ」
 ウォータースライダーの入り口についたふたりは、係員の指示に沿って座った。カレンは後ろからシュテルンを抱きしめた。密着していたほうが安全だからなのだが。
(ん……、これは少々扇情的だのぅ)
 水気を含んだシュテルンのうなじが目の前にある。頭を振って邪念を払い、ふたりは水の流れへ体を任せた。とたんにめくるめく世界。壁の鮮やかな色彩が次々と後ろへ飛んでいく。
「んんっ、これはまた面白いのぅ!」
「きゃー! きゃー! あははっ、楽しー!」
 出口からぽいっと放り出され、かぐわしいプールへざぶん。
「ねっねっカレン、もっ一回乗ろ? ……ダメ?」
「気に入ったかシュテルン、何を隠そう妾もだ。さあ行くぞ」
「やったやったー! 行こ行こっ!」
 乗り場へ戻る道すがら、シュテルンがカレンの手を取った。
「おでかけ、とぉーっても、楽し、ね? ねっねっカレン、またどこか行こっ?」
「そうだなシュテルン。また一緒に出かけようのぅ」

「うわぁー! ウォータースライダーとは大きなものなんだね! とっても楽しそうだ!」
「そうだね王子! わたしね! わたしね!! サーフィンしたい!!」
 巨大さに目を丸くしているのは王子ことクリスティアン。
 相槌を打つのは、まごうことなく犬(コヨーテだっつってんだろ!)のロク。
 入り口への階段を登りながら、彼女の提案にクリスティアンは、はてと首を傾げる。
(サーフィン? つまりロク君が直接滑らずに、ぼくがロクくんを膝に乗せて滑ればいいって事だろうか?)
「よし、僕がボードになってあげよう!」
「ほんと!? うれしいよ王子! でもすりおろされない? まあいっか!」
「……え? すりおろ……」
 地獄への道は善意で出来ている。入り口に到着したクリスティアンはロクに背中を蹴られ、内部へ放り込まれた。うつぶせのまま滑っていくクリスティアン。蹴った本人はちゃっかりクリスティアンの背中に乗っている。
 さあ、楽しい楽しいサーフィンの始まりだ。まずは軽くアップダウン、と、思ったら急旋回、壁のような高さを水流に押し流されて乗り越え、一気にスピードアップ。
「ヒャッハー! すごいよ王子! 今、私は流星! 風を読み夜空を突っ切る一筋の流れ星!」
「ちょ、ちょっとガボッ待っておくれ! オボボ、僕が想像した、ガホッウボア、乗り方となんだか違、ボボボボ、ような……!」
 ざぶーん。
「あー楽しかったね王子、あれ? 浮いてこない。まあいっか!」

「はじめて練達に来ましたが、こういう施設があるのですね……、びっくりなのです」
 アリシアはいつものメイド服を脱いで水着を装備。黒を基調に白いリボンとフリルのついたかわいらしいビキニだ。でもなんだかすーすーして落ち着かない。貸衣装の中にパレオというものを発見したので、それも装備、ちょっと露出がさがった。
 準備は万端、いざいかんウォータースライダー。水の流れに乗り、つるんと中へ飲み込まれた彼女は小さく息を呑んだ。
「ちょちょ、ちょっと速すぎるのです。ゆーっくりいくのです」
 背中の羽を最大限広げて、風の抵抗を味方につけて。のーんびりすべっていた彼女は出口でひっかかった。よいしょっと自分からプールへ飛び込む。
「うーん、気持ちがいいものです。来てよかったのです。今度は少しだけスピードをつけて滑ってみるのです」

 その頃、アニーと零は入り口でガクブルしていた。何せウォータースライダーは高さ30m。
「高い……なあ……」
「た、たたた高いのです……! こんな高い所から……大丈夫なんでしょうかっ。スライダーもぐねぐねしてて滑ったらどうなっちゃうのかな……」
「は、はははだだ大丈夫だ……大丈夫だからこうやって遊べる場所になってるんだしな……!」
 係員に促され、意を決してスタート地点に座るふたり。まるで地の底へ続くかのようにぽっかりとあいたスライダーに二人の恐怖はもう開始前から限界突破。
「ひいぃ……だだだ大丈夫ですよね、さっき滑っていったスカイウェザーさんも大丈夫そうでしたしぃ……」
「……俺も一緒に滑るから、うん、死なせはしねぇから…うん…うん!!」
 だいじょうぶ、きっと、たぶん、メイビー。だってこんなに人が並んでるし、リピーターだって多いし、きっとこれは楽しいもの、だよな? 練達の建築家さぁん!
 背後から刺さる順番待ちの視線に、もうさすがに粘ってもいられなくなってきた。
 勢い込んで、GO!
「うぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
「ふぇぇぇぇぇぇーーーーー!!!」
 恐怖のあまり、ふたり抱き合ってごろんごろん転がりながら流されていく。脳内真っ白、ホワイトボード。ときめいてる場合じゃない。悲鳴だけが書き込まれていく。
 ざぶーん!
 ぷかぁ×2。
「れ……零さまぁ~ふぇぇ~~……」
「次は流れるプールとかにしよう…ぜ…」

「前の人の悲鳴、すごかったですね、シエラちゃん」
「セレネは怖くないのかな? 私はこの未知の器具が普通に怖い!」
 泣き入ったシエラの鼻先を、セレネがピンと弾いた。シエラの緑と白のフリルがかわいい水着がふぇぇと揺れる。
「こういう時、下は見ないこと! ……と、誰かが言っていました。正直私も高いところは苦手です。でも親友が一緒なら怖くありません」
「セレネ……うれしいよ。あのね…」
「なんでしょうシエラちゃん」
「セレネが前で私が後ろでいい?」
 セレネは微笑んだ。青色チェックのワンピースが色白の肌に映えている。
「舵役は任されましたっ」
 ちいさな猫耳がぴこぴこ動く。シエラはそんなセレネの背中にそっと抱きついた。
「それではいざ出発です」
 セレネにリードされ、シエラはスライダーへ。想像以上の速度が二人を襲う。
「速い! 速いよセレネ! これは命がジェットで飛んでいくスピードだよおぉぉーーー!」
「思ってたより、けっこう速いね! シエラちゃん……!」
 急旋回で二人の姿勢が崩れ、ばらばらになる。
「セレネ!」
「シエラちゃん!」
 手をつなぎ、なすすべもなく流されていく二人。急激なアップダウンと鋭いコーナーに振り回される。先にぷちんと何かが切れたのはシエラだった。
「私達は誇り高きブルーブラッド! さぁ華麗なアクロバットを決めるのだー!」
 出口から空中へ放り出された二人、大きく胸をそらし、ポーズをとる。その瞬間ふたりは確かにスライダーを乗りこなしていた。

「いぃぃぃぃぃぃぃやっふぅぅぅぅぅぅ!!」
 座っていた浮き輪もろとも宙を舞ったのはニーニア。ウォータースライダー用の取っ手がついている浮き輪なだけに醍醐味を十分に味わえる。スピードを全身で味わい、最後にプールへ突っ込む爽快感にやみつきだ。もう何回挑戦したのかもわからない。
「練達の人たちは変な物いっぱい作ってるけど、やっぱり物づくり技術はすごいよね。こういう遊べる物ならいくら作ってくれても大歓迎だよ」
 もう一度列へ並び直し、順番を待つニーニア。そんな時間は得意のおしゃべりでひまをつぶす。前後の人へ話しかけ、いつしか咲く笑いの花。
「やっぱりスリルがあるほど楽しいよね」

 スクール水着のセララに、青と白のボーダーワンピースに身を包むハイデマリー。
 噂のウォータースライダーに興味津々だ。長い列を並び、これまた長い階段を登り、入り口へたどり着く。
(う、高い。勢いをつけすぎたらどうなるか。若干危険な気がしないでもない)
 うっかり下を向いてしまったハイデマリー。ゆっくり腰を下ろし、スライダーのスタート地点へ。お尻が濡れてちょっと冷たいななんて思っていたら……。
「マリー覚悟! セララタックルだー!」
「セララ!?」
 突然後ろから、暖かくやわらかい感触がハイデマリーを襲った。どんと突き出されて、ふたりはスライダーへ一直線。風が耳元で荒れ狂い、水流がふたりを押し流す。見えるのはカラフルなパネルの数々とセララの笑顔。硬直していたハイデマリーがようやく意識を取り戻す。
「セララ! びっくりした!」
「えへへ、セララタックル大成功! うわっ! なにこれギューンてした! きゃー! わー! たーのしー!」
 水流にもまれて右へ左へ。髪はもみくちゃ、今どのあたりかもわからない。とにかくふたりで抱き合って、上の下のと大騒ぎ。ハイテンションで楽しむセララに、いつしかハイデマリーもほだされ、一緒にきゃーきゃーと悲鳴を上げる。
 どぼーん。ふたつの水柱が立った。水面から顔を出したセララの頬をもにっとつまんでハイデマリーは。
「次はちゃんと二人乗りでやりましょう」

「一人! 最高!」
 お花のモチーフがかわいらしいビキニドレスを着たシフォリィが仁王立ちで叫んでいた。去年作ったお気に入りの水着、ちょっとサイズがきつくなってるのは内緒。
「あー、楽しい。ウォータースライダー最高ですぅー。こういうので一つのところでひたすら遊ぶのは一人でしかできないですからね……!」
 ソロの楽しさは身軽さ気軽さにあり。シフォリィはせっせとウォータースライダーへ通いつめ、爽快感を堪能した。とはいえ何事も飽きが来るもので、うつぶせですべってみようなどと考えたのがよくなかった。
 どっぱーん。いつまでたっても浮いてこないシフォリィ。
(まずいまずい、おにくがはみでてる……!)


 狭い飛び込み台の、不安定な足場の上で、弥恵は踊りを披露していた。臙脂色のパレオの下の伸びやかな足を持ち上げれば、美しくもどこか扇情的な刺青が見え、周りのギャラリーがほうとため息をついた。
 足場の上下動も計算に入れてターン。見せ付けるように大きく反り返り、流れるような動きでうつむき姿勢を低く。それは銀月の舞姫と呼ぶにふさわしい軽やかで抜き身のナイフのような鋭い動きだった。
 と、ここまではよかった。
 BGMの終局へ向けて動きが激しくなり、足場は更に不安定に。そして曲が最も高鳴った瞬間、思い切りジャンプ! ぼっちゃん。足を滑らせ弥恵は水の中へ。それも演出と思われたのか、盛大な拍手を水の中で聞いた。

  \きらめけ!/

  \ぼくらの!/

\\\タント様!///

(エレガントハイセンスブリリアントポーズ!)

「ご覧くださいなクローネ先輩! この真っ白なドレス風水着。まさしくわたくしのためにあるような水着ですわ!」
「……う、うんうん。似合ってるッス……」
 後輩の勢いにちょっと押され気味のクローネは、黒いフリルのついたゴシックなワンピース。
「さあ先輩! 飛び込み台で最高のショットを撮りましょう!」
 後輩に手を引かれ、クローネはガラス張りの天井を見上げた。一人だとまず来ない場所、ましてや飛び込み台だなんて。
(……後輩と一緒だとこうも変わるもんですか…)
 前を行く後輩は名前のとおり太陽のような娘。その輝きにあてられるのも、嫌じゃない、と思う。飛び込み台の上に並び立ち、お互いの腰に手を回す。
「い、意外と高いですわね。緊張いたします」
「……大丈夫…私が受け止める…はず…。…自分でいいと言っておいてなんだけど、やっぱ少し恥ずかしいなこれ…」
「それでは参りますわよ、クローネ先輩!」
 抱き合ったせいか、いつもよりちょっとだけ高い体温。悟られてしまう前に、タントとクローネはせーので飛び込み台から飛んだ。
(綺麗……)
 お互いの瞳をのぞきこんで、二人同時に同じことを思う。
「って、がばばば、わたくしたち泳げないのですわ!」
「……浮き輪浮き輪! あった!」
 できあがった写真には、ふたりの天使が写っていた。係員があのと声を掛ける。二人の写真はサンプルとして大きく飾られることになった。


「えれえれえれえれえれ」
 物陰で吐血する珠緒。そんな珠緒に蛍が寄り添う。
「なかなか刺激的なウォタースライダーだったわね。珠緒さん、平気? 生きてる?」
「はい、なんとか生還できそおおおおごばあ」
「休憩しましょ、休憩! ねっ!?」
 ところかわって、畳の上。
 珠緒はすっかり落ち着いて暖かいお茶などすすっていた。蛍もひざ突き合わせて茶をたしなむ。
「それにしても尋常じゃなかったわね。ラストで空中に放り出されたときは死んだと思ったわ。縦回転なんてトラウマよ」
「桜咲も実戦の負傷経験がなければ、失神していたやもです。蛍さんのすごい悲鳴が聞こえ、躊躇するも列待ちに迷惑もかけられず」
「そんなにすごい悲鳴だった? お願い忘れて……」
 額に手をやり天を仰ぐ蛍。空気を変えるために次の話題へ。まだまだ顔色の悪い珠緒が気になる。
「珠緒さんはこういうの初めてだったのよね。無理しないで横になって。そのための畳だし……何なら、膝枕だって、ひゃっ!」
 急にぺたりとくっつかれ、蛍の心臓がとんと跳ねた。両目を閉じた珠緒が言う。
「ひとまず、温まらせてくださいませ。やはり、冷えると血流が滞り、よくありません」
「そそそそうね! あ、暖めあえば早く元気になれるわよね。こ、これは治療行為治療行為……」
「ゆったり……今日はこれがよいです」
 続くのは寝息。珠緒の寝顔を眺め、蛍はくすりと笑った。
「次はもっとゆったり楽しみましょうね」


 ゆったりくつろげるまったりサウナ。の、はずが、気がつけばヨシトとエルのガマン大会になっていた。これ以上は危ない。頭の中のアラームがプライドを超えた瞬間、ふたりは外へ飛び出していた。
 水風呂へ飛び込み、至福の時間を味わう。
「フッ、やるじゃねえかエル。この俺をここまで追い込むとは」
「あなたもなかなかのものですね、ヨシト」
 ふたりは水風呂からあがるとドリンクバーを探して歩き回った。温水プールの端を通ると、子どもたちがボール遊びをしているのが見えた。そのボールがヨシトのほうへ飛んでくる。ヨシトは軽くリフティングして子どもたちへボールを蹴り返してやった。とたんに輝く子どもたちの目。
「おにーさん、もう一回やって!」
「なんでだよ!」
 ごろつき風サングラスを手放さないヨシトだが、全身からにじみ出る善人臭と自分より小さな生き物が安らぐ空気が子どもたちの特攻を煽っていた。
「エル、なんとかしてくれ。女だから子供の扱いは上手だろ?」
「おっとそれは性差別的発言ですね。フェミニスト警察が出動しますよ。まあとにかくこういう場合は……逃げましょう!」
 ふたりは脱兎の勢いで逃げ出した。そのうちガラスの壁にぶちあたりそうになってふたりは足を止め、壁の向こうの物体に同じ疑問をいだいた。
「なんだあれ?」
 施術台からはみ出さんばかりの巨体を泥パックしてもらっている謎の物体。
「イノシシか?」
「いえ、いちおう人型ですので、オークかしら」
「当たりだ姉ちゃん。俺はゴリョウってもんだ」
 ゴリョウは体勢を変えてむふんと満足げな吐息を漏らした。
「食ったり戦ったりがメインのオークだが、たまには美容に気を使ってみても良いじゃない! 色々やってみたいお年頃なのよ!」
「効くんですか?」
「大丈夫、練達だよ!」
 そう答えたゴリョウのところへエステのおねえさんたちがやってくる、さらさらと泥パックを落とすと、お肌つやぴかのオークが現れた。
「おぉ、俺のもちもち腹がよりパワーアップしてんな。流石だぜ! ちなみに顔パックのみの無料体験コースがあるぜ?」
「無料! それはいかねばなりません!」
「あででで、なんで俺まで引っ張っていくんだよエルゥ!」

 ミディーセラは流されていた。流れるプールで、イルカさんの浮き輪に乗って。
 だらだら気持ちよくて眠たくてちょっと退屈。ドーナツ状のプールをとめどめなく漂う。
 頭に浮かぶのはよしなしごと。水に落ちたり落とされたりってあんまりいい記憶がないなあとか。そもそもまともな思い出がないわあとか。この浮き輪使ってると意外としっぽが邪魔だなあだの。ひとりはちょっとさみしいなあなんて。目を閉じてうつらうつらと考え事。そのうち本当に眠ってしまいそう。なんて思いながらぽつんとつぶやく。
「アーリアさんが居たらなあ」
 秘めた思いを載せて、イルカの浮き輪は流されていく。
 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

スパ・ホワイトバタフライへご来場ありがとうございました。
皆さんそれぞれすてきな思い出ができたでしょうか。
またのご来場をお待ちしております。

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