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シナリオ詳細

トラシアの泉の縄張り争い
トラシアの泉の縄張り争い

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生存競争
 深緑西部の高地にはトラシアの泉と呼ばれる水場がある。
 滾々と湧き出る清水は、まるで底浅い湖のような広さで、周囲の自然を育むまさに命の水と言うべき場所だ。
 透明度の高い水は見る者を癒やすだけには留まらず、貴重な水資源としても活用されてきた。
 一年通して気候も涼しく、人に限定されず多くの動物達が訪れ喉を潤し、憩いの場として利用されていた。
 しかし、そんな場であるからこそ、縄張り争いというものは起こるものである。
 今、トラシアの泉ではまさに一触即発の状況に置かれていた。
 泉近くに棲息する二種の魔物。
 敵対行動を取らなければ比較的大人しい魔鳥コルクス。高い神秘性を持ち氷を操る。危険性はそう高くないが、その魔力を侮ることはできない。
 そしてそのコルクスを狙うように鋭い視線を向けるのは魔獣ドルトン。狂犬を思わせるその風貌通り、獲物と見れば手当たり次第に襲いかかる危険な魔獣である。その鋭い爪と牙は、分厚く硬い鉄をも引き裂くと言われている。
 魔物達は泉の左右に分かれて、睨み合いを続けている。一度争いが始まれば、互いに全滅するまで争い合うはずだ。
 憩いの場として利用されているトラシアの泉で、魔物とは言え多くの血が流れるのは忍びない。
 泉に程近い村の自警団は、どうにかこの事態を収められないかと考え、そして噂に聞く彼等へと対応を委ねたのであった。


「そんなわけで、トラシアの泉の縄張り争いを止めるのが今回の仕事になるわ」
 『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)はそう告げて依頼書を手渡す。
 泉の上で行われる魔物達の縄張り争い。
 放って置くのが生存競争というものだろうが、折角の綺麗な泉が魔物の死体で埋まるというのも問題か。対処を考えるというのも頷けない話ではない。
「対応方法はこちらに任されているわ。
 大人しい魔鳥コルクスに加担してドルトンを殲滅する。逆にドルトンに加担してコルクスを殲滅する。或いは両者を殲滅するなり撃退するなどね」
 やり方によっては倒すことなく追い払うことも可能かも知れないが、相手は魔物ということもある。言葉が通じる相手では無い以上、やや強引な手段になってしまうのは仕方がないかもしれない。
「湧き水だから、ある程度の血が流れてもすぐに浄化されるでしょうから、戦闘場所もそうこだわらなくても良いかも知れないわね。ただ死体の後処理だけはお願いね」
 第一義として泉の景観の問題がある以上それも仕方がないか。
 さて、どのように対応すればよいか、しっかりと相談する必要があるだろう。
 イレギュラーズは依頼書を眺めながら、対応方法の思案を始めるのだった。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 綺麗な泉で魔物たちの縄張り争いが始まりました。
 大戦争になる前に手を出してこの争いを収めましょう。

●依頼達成条件
 泉の景観を取り戻す(魔物との戦闘は避けられないでしょう)。

●情報確度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態はおこりません。

●魔鳥コルクスについて
 比較的大人しい氷を操る魔物。数は十五匹。
 大柄の鳥で、羽根を広げると二メートルは超えるサイズになる。
 物理的な攻撃は苦手で、防御技術も低いが、回避に優れ神秘攻撃力も高い。
 基本的にカウンタータイプの魔物で、敵対行動を取らない限り攻撃性を発揮することはないでしょう。
 ただし仲間がやられると全力で反撃します。
 泉は自分達のものだと、領有権を主張しているようです。

●魔獣ドルトン
 中型の魔獣。数は二十体。
 狂犬のような性格で、食べれそうと思えば手当たり次第に襲いかかる危険性の高い魔物。
 その見た目通り物理的攻撃手段を豊富に持ち、必然物理攻撃力が高い。EXAも高目で、連続攻撃が得意。
 防御技術、回避は平均的だが、特殊抵抗が低い。
 群れで狩ることを主体とし、一匹が狙うと次々にフォーカスして襲いかかってくる。
 逃げ足は早く、逃げるときはバラバラに逃げるでしょう。
 美味そうな獲物がいるぜ、とコルクス達を狙っているようです(ついでに泉を我が物にしたい)。

●戦闘地域について
 トラシアの泉での戦闘になります。
 泉は浅く戦闘に支障は出ないでしょう。泉の側には平原と森があります。
 障害物はないので、戦闘となれば乱戦となるのは免れないでしょう。

 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • トラシアの泉の縄張り争い完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年05月08日 22時35分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
黒のガンブレイダー
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
朝を呼ぶ剱
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
守護天鬼
藤野 蛍(p3p003861)
学級委員の方
桜咲 珠緒(p3p004426)
要救護者
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
白薊 小夜(p3p006668)
盲の剣士

リプレイ

●交渉
 トラシアの泉の縄張り争いの対応へと動くことになったイレギュラーズは、この縄張り争いを止めるために一つの回答をだした。
 その選択に善悪の是非を論ずることは無用だろう。人の手による介入を決めた時点で、それは観点によって善とも悪とも言えるからだ。
 さて、介入の方針が決まったところで、まずはそのことを依頼主へと伝える必要があるとイレギュラーズは考えた。
 依頼主の要望は『泉の景観を取り戻す』というものだったが、これをコルクスを含めたもので構わないか、という確認だ。
 そういった心配を抱いた『学級委員の方』藤野 蛍(p3p003861)は早速トラシア泉の近傍にある村へと足を運び、自警団及び村長に話を聞いてみた。
「――というわけで、ボク達としては危険性の少ないコルクスとは敵対しないつもり。そして人の力を見せ、縄張りへの侵入、共生を願い出ようと思っているわ」
「なるほど。お話は理解できました。
 魔物とは言え泉で生きる生き物。私達ではどちらかを切り捨てる選択ができず貴方達に委ねてしまいました。
 貴方達は良く考え決断してくれました。
 私達に異論はありません。その方針で、進めていきましょう」
 村長を代表に、村の総意は確認することができた。村人たちは協力的で、後始末なども出来うる限りの協力を約束してくれた。
 村の協力を得たところで、イレギュラーズはトラシアの泉へと歩みを進めた。コルクスとドルトンの戦いが始まる前に、コルクス側にも話をつける必要があるだろう。
 泉へと向かう道程で、『要救護者』桜咲 珠緒(p3p004426)はふと思ったことを口から零した。
「景観の維持という言葉、『管理する側』である前提の目線に思えます。
 様々な種の均衡を考えると、自然そうなるものなのでしょうか」
 珠緒自身はそのことに理解が及ばないが、先ほどの会話を聞くに『管理する側』であっても、その管理法に思い悩んでいたようにも思えた。
 命が絡む物事だ。そう簡単に答えが出る物ではないかもしれないが――であったとしても一方的な都合で狩るのだから、片方で済ませたいと珠緒は思うのだった。
 泉へと辿り着くと、その輝くような景観に思わず声がでる。同時に泉の左右に分かれる魔物達のピリピリした雰囲気が伝わってきた。
「なるほどのぅ。
 黙って見ていれば、どこぞの動物チャンネルのような光景を拝む事が出来そうじゃのぅ」
 『Hi-ord Wavered』ルア=フォス=ニア(p3p004868)はそう言いながら油断なく双方を眺め見る。
 話に聞いていたとおりコルクスは大人しそうに水を飲み、身体の汚れを水浴びによって流していた。
 そんなコルクスを付け狙うように、ドルトンがジリジリと間合いを詰めては牽制するのを繰り返す。
 まさに一触即発の気配に、目の見えない『盲の剣鬼』白薊 小夜(p3p006668)が納得するように一つ頷いた。
「縄張り争い、ね。
 話に聞くように荒々しい気配がドルトンかしらね。こんなにも凶暴そうな魔獣が住み着くのはやはりよくないでしょうし、予定通り比較的大人しいコルクスの方に加担させて貰いましょう」
 小夜の言葉に、『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312)も頷く。
「自然の争いに加担するのは、人の都合でしょうが、これもまた、一種の生存競争でしょう。
 湧き水とは言え、両者が争えば、暫く使えぬ程度には穢れることでしょうから」
 目の前に広がる輝くような美しい泉が、魔物達の血で朱に染まるのは痛ましいことだと、雪之丞は思う。無駄な血を流させる前に片をつけたいところだ。
 泉の上での正面衝突は避けたいところである。
 『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はドルトン達を誘引したい泉の外側へと歩みを進める。そうしてまるで奇術でも行うかのように腕を大仰に振る。
「自然に手を加えることで人と自然とは共生できると、聞いたことが御座います。
 自然淘汰に任せておいては、時間がかかる上に他の動物達や地元民にまで被害が及ぶでしょう。しかし、被害が出てからでは遅いのです」
 そう、これから行うことは『必要悪』なのだと、幻は言う。
 そうして幾度となく腕を振るえば、生み出される疑似餌の数々。ドルトンが目にすれば思わず飛びついてしまうだろう精巧な疑似餌と、イレギュラーズによって用意された食料が、幻のギフトによって再現され、その場に出現する。
「姿だけではありませんよ。皆さんから受け取った食料の匂いも可能な限り再現致しました。
 さあ、その鋭い嗅覚と目でしっかりとご覧下さいませ」
 幻の疑似餌に気づき、ドルトン達が、その歩みを疑似餌へと向けようとしていたその頃、コルクスの元に、『くっころして!』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)と『闇夜の双刃』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)が近づいていた。
 シフォリィは思う。縄張り争いに加担するというのは、やはり人の傲慢であると。しかし、だとしても、この泉は全ての物が必要としている憩いの場であり、安らげないということはあってはならないのだと、そう思う。
 だから、シフォリィは自身の力をもって、コルクスとの交渉に出た。
 コルクスはやはりドルトンへと警戒を強く持っているようで、被害が出ればすぐにでも集団で反撃する考えをもっていた。
 それを引き留めるようにシフォリィが思いを伝える。
「私たちがドルトンを倒します。あなた達には手を出させません。
 代わりにこの泉を――泉に訪れる人や他の動物とも共有させてくださいませんか?」
 この交渉はドルトン相手であれば無効だっただろう。獲物を喰らうことしか考えないドルトンには、この泉に訪れるもの全てが獲物だ。
 翻ってコルクスの場合、この交渉は有効となる。コルクスとしても自分達に危害が加わらないのであれば、人や動物たちなどそう眼中にないと言った所で、共生するのはそう難しくないという考えだ。
 ただシフォリィが危惧したように、コルクスは人の力をあまり信用していない。本当にドルトンを退治できるのか、疑問符を浮かべているようだった。
「ふん。
 なら、しっかりとそこで見ているんだな。俺達だけでドルトンをしっかり追い払って見せるさ」
 並び立つクロバがそう言って、コルクスに力を誇示する。
 縄張りを奪うつもりはないが、人の利益もあるのだということをコルクスに見せ付けるつもりで伝えるクロバは、動き出したドルトンを横目に武器を構えて歩み出した。
「皆さんはここで見ているだけで結構です。後は私達が片付けますので」
 シフォリィも最後にそれだけ伝えると、クロバの後を追う。
 二人の背を、コルクス達はしっかりと見つめ続けていた。
 コルクスとの交渉が終わるころ、ドルトンは見事に幻の疑似餌に引っかかって、その位置を泉の外縁へと向けていた。
 獰猛なドルトン達は警戒などせずに、我先にと疑似餌へと向かい走り出す。その様子をイレギュラーズは隠れて観察し、そして囮に掛かったのを確認すると同時に、ドルトンへ向けて奇襲を敢行する。
 トラシアの泉の縄張り争いは、斯様な事態をもって、人と魔獣の戦いへと進展していったのだった。

●泉を巡って
 泉の外縁、森側の地面に撒かれた疑似餌。匂いすらもあるその餌にドルトン達はまんまとひっかかり、我先にと奪い合う様相を見せた。
 掛かった。イレギュラーズはそう認識すると一斉にドルトンへと向け攻撃を開始した。
「まずは泉から完全に引き離す――! 喰らえ!!」
 刹那の時、瞬間に放たれるクロバの一閃は、魔眼として定義された左目によって見抜かれた心を切り裂く。
 超射程より走る雷が、ドルトンの一匹に直撃するとショックと共に体勢を崩し、怒りの形相でクロバを睨み付けた。
「さあ、こっちだこい!」
 引きつけるように声を上げれば、ドルトン達の注意を引く。
 攻撃されたドルトンが怒りの遠吠えを上げると、一斉にクロバへ狙ってドルトン達が駆け出した。
「皆々様、いらっしゃいませって多すぎじゃぁ!」
 声を上げつつ、ルアがクロバを狙うドルトンの側面を奪う。多くのドルトンを狙える好位置に付けば、武器を構えて狙いを付けた。
「まとめて重力の餌食となるがよい!」
 ルアは高次波動による大気への干渉を行うと、高濃度の重力子を錬成する。照射される高濃度の重力子がドルトンの一団を巻き込む位置へと至れば、強烈なまでの潮汐力が発生する。
 抗いようのない強大なエネルギーがドルトンの一団を飲み込み、変形、破砕へと導いていく。直撃を回避する者も多かったが、直撃した者は重力子の残留によって質量が増加し、その動きを鈍らせていた。
 攻撃に巻き込まれたドルトンがそのフォーカスを変え走り出す。本能的に危険と悟れば、それを排除にかかるのだ。
「いやん、儂ってば大人気☆ ……とか言ってる場合じゃないのでへるぷみーじゃ!」
「ふざけてる場合ではないわね。
 後ろへ。引きつけは私が請け負うわ」
 狙われたルアの前にでるように小夜が立ちはだかる。
 構えをとった無防備な”誘い”は、魔獣であるドルトンの目にさぞ美味そうな獲物として映ったことだろう。一斉に小夜へと襲いかかる。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……数が多いわね。けど――!」
 目の見えないハンデを物ともせずに、小夜がドルトンの襲撃を巧みに躱す。優れた回避力に高い防御技術を持つ小夜は、ドルトンの絶え間ない連続攻撃を躱し、時に受け流して損害を軽微に押さえることに成功した。
 また事前に付与していた茨の鎧が、そうして受けに徹する小夜の立ち回りにかみ合っており、手を出せば出すほどにドルトンは傷を負っていくのだった。
「さすがの小夜さんですが、ドルトンの攻撃も激しいものですね。無傷というわけにはいかないでしょう。
 蛍さん、補佐しますので二人で支えていきましょう」
「ありがとう珠緒さん! 心強いよ!」
 珠緒と蛍は戦線を支えるヒーラーだ。二人の活躍なくして、多くの敵を押さえるクロバと小夜の活躍は結びつかないだろう。
 保護結界を展開しながら、適宜位置取りを行い、回復漏れが無いようにする珠緒。時折咳き込んで吐血する様はまさに『要救護者』だが、珠緒の『囁き』なくしてこの戦いの勝利はないだろう。
 蛍の活力を賦活しながら、自らの防御も固める。そうしてサポート体制を作り上げれば、蛍の手が回らない仲間を回復して回っていた。
「あちらが危なそうですね……」
 乱戦になりがちな今回の戦い。陣形を維持するのは難しく、また蛍を中心とした展開ということもあり、珠緒による回復が必要な場面は間々あった。
 また、そうして動き回ることで珠緒は戦場を俯瞰し把握する。戦場の把握は、即ちサポートの必要な場所や、敵の隙を突くことのできる状況を導き出す。
 得意のテレパスによってそれらを伝え、戦況を優位にする珠緒の活躍は、まさに縁の下の力持ちと言った所だろう。
 そんな珠緒と共に回復を一手に担う蛍。
 奏で上げる天使の福音は神聖なる救いの音色に他ならない。自身を中心にヒールエリアを作りだし、仲間の傷を癒やしていく。
(この歌を歌い続けるのって結構消耗が激しいんだけど……珠緒さんの囁きから力をもらって頑張るわよ!)
 心でガッツを見せる通り、消耗の激しいこの歌を奏で続けられるのは珠緒のお蔭だろう。
 また、蛍の持ち味――眼鏡越しの目配りが戦場で常に変化を続ける仲間の体力を見通して、回復のタイミングを把握しやすくしていた。
 連続攻撃が得意な敵だ。数も多く、気を抜けば一瞬で体力が無くなってしまうこともあるだろう。
 そうした事態に即座に対応できる蛍は、まさに癒やしと生命の光明を司る天使”アルシュ・アンジュ”と呼べるだろう。
 ドルトンが一匹、また一匹と倒れて行く。
 泉から引き上げられ森に近しい場所で戦っていることもあり、泉へ血が流れることは少なかった。
「群れとしての行動が脅威であれ、こうも集まれば、いい的でございます」
 クロバを狙うドルトンの背後を奪った雪之丞が、凍狼を鞘走らせる。極度の集中から放たれた紫電の一閃が、立ち並ぶドルトンを一斉に薙ぎ払った。
 続けざまの攻撃から逃れるようにドルトン達が距離を取ろうと走り出す。
(目で追うのは、難しいところでございますね――ならば)
 全てを目で追うことは難しいと判断した雪之丞は、自身が持つ超聴力を駆使して、敵の把握に努める。足音、息遣い、唸り声……有象無象の情報が雪之丞に敵の位置を知らせるのだ。
 離れ往くドルトンへ向け放った飛ぶ斬撃が、その背に直撃し命を奪う。同時、襲い来るドルトンの鋭い牙を紙一重で躱せば、流れるままに攻めへと転じる。逆巻く波の如し斬撃がその醜く痩せ細った腹を切り裂いた。
「泡沫のひと時を幸せな夢でお過ごし下さいませ」
 幻が腕を振るえば、瞬間ドルトンは目を逸らすことが出来なくなる。奇術を初めて目にする子供のように、ただ夢中に幻の生み出した奇術の虜となった。
「連続攻撃を得意としているようですが、それが自分達だけのものだなんて勘違いなさらないで下さいね。
 さあさ、ショーはまだまだ終わりませんよ。夢の彼方へとお連れする僕の奇術をご覧あれ――!」
 言葉通り、幻の奇術が幾度となく披露され、ドルトンを一匹、また一匹と夢の中へと引き込んでいった。
 恍惚たる状態は多大な隙を生み出して、仲間達の攻撃を後押しする。
 幻は特にフリーのドルトンを狙い、数を減らすことに貢献したと言えるだろう。フリーの敵が減れば後衛に被害が出ることも少なくなり、同時に前衛が押さえる必要のある数も減るので、両得という奴だ。
 高い連続行動同士の対決は幻に軍配があがったと言えそうだ。
「だいぶ数は減らしましたが――まだ掛かってくるつもりのようですね」
 ドルトンと対峙しながらシフォリィが言葉を零す。戦意は大分削ったが、もう一押しが必要だと感じた。
 ドルトンが唸り声を上げながらシフォリィに飛びかかる。
「――ッ!! ハァァ――ッ!!」
 その一撃を身を翻して躱すと、同時に捻ったその身から渾身の裏拳が飛び出してドルトンの側頭部を打ち据えた。
 地面に転がるドルトン。だが、まだその目は死んでいない。
「終わりです――!!」
 気合いとともに繰り出される愚直なほどまっすぐな一閃。目を奪う魅了の太刀筋を受け、ドルトンは断末魔の悲鳴を上げながら絶命した。
 その悲鳴が合図となった。
「逃げる気か――」
「やっと諦めたようね」
 クロバと小夜の周囲に群がっていたドルトン達が一斉に引き始める。そして残るドルトン達も後を追うように逃げ始めた。
「逃がすつもりもございません。可能な限り仕留めて参りましょう」
 雪之丞が柏手を打てば、一部のドルトン達が戦意を高めて振り返るが、それは手の空いたイレギュラーズにとって絶好の獲物といって差し支えなかった。
 程なくして、泉の側にドルトンの亡骸が横たわることとなる。
 逃げたドルトン達の様子を感じ入れば、もう二度と戻ってこないと思われた。
 トラシアの泉の縄張り争いは、こうして人の介入によりコルクス側の勝利となったのだった。
 弛緩するイレギュラーズ達を、コルクスの丸い瞳がジッと見つめていた。

●共生の場
 泉の景観を取り戻す事が今回のオーダーとなる。
 ドルトンの死体を残していては、オーダーの達成とはならないが、その点イレギュラーズに抜かりはなかった。
「ふふん、どうじゃ? 儂の活躍はようみたか?」
「ルアさん、コルクスはあんまり見ていなかったそうですよ」
「なんじゃとー!?」
 コルクスの前で戯れるルアとシフォリィ。こんな機会は滅多にないと言うことで、コルクスを交えて先の戦いの感想戦を行っていた。
 そんな泉の側では――
「結構な数があったけれど、以外となんとかなるものね」
「皮を傷つけないように解体と致しましょう」
「村の人達から包丁を借りて参りました。良く切れそうなよい包丁でございますね。不要な部分の処理は――」
 小夜と雪之丞、そして幻がドルトンの死体を有効活用すべく、血抜きから解体し不要な部分と分けて捌いていく。
「うっ……血がいっぱい……桜咲も思わず吐血してしまいそうなのです」
「た、珠緒さん大丈夫? もうすぐクロバさんがご飯作ってくれるからそれ食べて元気だしましょう!」
 血で血を洗う、なんてことにはならないとは思うが、珠緒の背をさすりながら蛍が声を掛ける。
 そう、イレギュラーズは奪った命、大切に戴こうと、ドルトンの全てを利用するつもりでいた。
「よし、こんなもんだろう」
 クロバが出来上がったドルトンの香草焼を手にやってくる。
 魔物の肉だが、臭みが丁寧に消され、実に美味しそうであった。
 死体処理を手伝った村人達と共に、泉の側で食事会と相成った。
「コルクスも肉を食べるのかしら?」
「さてな……よしんば食べたとして、それが原因で食性が変わったら、それはそれで面倒なことになりそうだ」
 なるほど、とクロバの言葉に小夜は頷いた。
 泉の中で人々の戯れを眺めるコルクスが初めて鳴いた。それは一際おかしな声で思わず、
「「変な声!!」」
 イレギュラーズは声を揃えて口に出し笑うのだった。

 

成否

成功

MVP

白薊 小夜(p3p006668)
盲の剣士

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 ドルトンを排斥する選択は心情的に見てもほぼほぼ選ばれるものだと思います。ゲーム的にはコルクス排斥を狙ってみたり、喧嘩両成敗をするのも楽しそうですが、労力が見合わないかもしれませんね。
 しかし、しっかりとドルトンの死体処理まで行っていて、十分な対応だったと思います。全体的な頑張りがもう少しあれば大成功も見えたかもしれませんね。

 MVPは避けても守っても強かった小夜さんに贈ります。というか避けすぎな上に当たっても硬くて困っちゃいました。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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