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シナリオ詳細

<果ての迷宮>月色天蓋

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 それは長い間、放置されていた物置の様な。煤けたかおりをしていた。
 重厚な扉――それは、門と呼ぶべきであろうか――から振り仰げば昏い地底とは掛け離れた早急が見える。
 イレギュラーズが攻略した果ての迷宮の階層『蒼穹の回廊』の澄み渡るような蒼さはその心を軽くさせるかのようなもので。
「さて、ここからが『未知』だわいね」
 それより先は『総隊長』ペリカ・ロジィーアンであれど、足を踏み入れた事のない場所であった。
 明滅する魔法陣の上でペリカはじ、と掌を見遣り、唇で何事かをもごもごと呟いている。

「へえ……」
 魔法陣。シュペル・M・ウィリーなる人物が作ったといわれるセーブポイントを見下ろした『男子高校生』月原・亮(p3n000006)は見慣れぬ神秘と新たな冒険の気配に心を躍らせる。
「この先が――」
 轟轟。音立てて開いたその先。
 鮮やかな蒼空とは一転して煌めく星々が印象的な階層が広がっていた。
「そう、前人未到。
 数々の冒険者達の夢。未知と呼ぶに相応しい場所。それがここだねい」
 果ての迷宮。冒険者であれば一度は夢見たその場所。
 昏く、静まり返ったその場所に生唾を飲み込んで総隊長はイレギュラーズを振り返る。
「さて、前回と同じ。撤退の条件は決めさせて貰うわさよ。
 無理は禁物。冒険者たる者、引き際は見定めなけりゃいけないわさね」
 幼い外見をしているが、彼女はそれなりの熟練の冒険者だ。
 その言葉の重みは確かなもので。彼女と共にこの迷宮を踏破することを目指した人々の遺骨を目にしたことのあるイレギュラーズもいるだろう。
 広がる夜空。煌めく星々。
 そして、一歩、踏み出すのだ。


 果ての迷宮――それはその前の階層が『そう』であったように無数の世界が連なっているかのように思えた。
 例えば、青空広がるのどかな階層。例えば、夜空に犇めく星々の階層。
 それは外に出たわけでもないのに確かな風景として存在している。
 蒼空の回廊を振り返れば白いのっぺりとした階段が連なっている。
 ひとつ、ひとつと、この場所まで続く様に。
 対する夜色の世界は月や星を思わせるオブジェクトが点々と繋がっている。
「あれは――」
「ジャンプして渡っていけばこの階層を超えられるってことわいね」
 月や惑星を移動するように。
 小さな手足をふんと降って慣れた様子でペリカがぴょんと飛ぶ。
「案外しっかりしてるわいね」
 見下ろせばそこにあるのは途方もない闇だ。
 しかし、きらりと光る大きな恒星を思わせるものが其処にはあった。
「あれは――」
「あれが、第一の関門ってわけだねい」
 銀に輝くそれを目指して下っていけばいいのかとペリカは小さく呟いた。
 此処からは前人未到。
 誰もが『訪れた事のない場所』だ。
 ぴょん、ぴょんと飛びながら下ればどこかには着くようだ。
 勿論、『階層守護者』も存在しているだろう。戦わずに済む階層もあるのかもしれないがここでは武力が物を言うのだろうとペリカは直感で認識していた。

 跳ねて、跳ねて。
 月色の天蓋がぐぐ、と音を立てる。
「おや、まあ」
 ペリカはぺろりと舌を出した。
 どうやらこの階層は奇妙なギミックが働いている。
「のんびりしてちゃ、ぺちゃんこわいね」
 そう笑って。
 さて、どうこの階層を攻略したものか。

GMコメント

 果ての迷宮。続く2段。夏あかねです。
 この階層から下は前人未到。皆さんが拓く場所です。

●目的
 次の階層に進み、次なるセーブポイントを開拓することです。
 また、誰の名代として参加するかが重要になります。

※セーブについて
 幻想王家(現在はフォルデルマン)は『探索者の鍵』という果ての迷宮の攻略情報を『セーブ』し、現在階層までの転移を可能にするアイテムを持っています。これは初代の勇者王が『スターテクノクラート』と呼ばれる天才アーティファクトクリエイターに依頼して作成して貰った王家の秘宝であり、その技術は遺失級です。(但し前述の魔術師は今も存命なのですが)
 セーブという要素は果ての迷宮に挑戦出来る人間が王侯貴族が認めたきちんとした人間でなければならない一つの理由にもなっています。

※名代について
 フォルデルマン、レイガルテ、リーゼロッテ、ガブリエル、他果ての迷宮探索が可能な有力貴族等、そういったスポンサーの誰に助力するかをプレイング内一行目に【名前】という形式で記載して下さい。
 誰の名代として参加したイレギュラーズが多かったかを果ての迷宮特設ページでカウントし続け、迷宮攻略に対しての各勢力の貢献度という形で反映予定です。展開等が変わる可能性があります。

※メタ的情報
 どういう階層であるかは分からないのですが、ペリカの直感ではこの階層は
・『星々をジャンプで渡って大きな恒星につく』こと
・『そこにいるゲートキーパーを倒す』こと。
 前回の階層から思うに3回程度は戦闘が必要であるかもしれません。
・天井がギミック仕掛けになって時間経過により、迫ってきている。
 どういう戦法を取るかが重要になりそうですね。

●リポップ
 敵は倒されてから一時間で、再び沸くようです。死体も消えます。
 時間と残存HPAP等の配分で、ペリカストップがかかる場合があります。


『月色の天蓋』:煌びやかな星を飾った天井です。時間経過で迫ってきます。
『足場の惑星』:小さな惑星です。跳ねることや飛行で渡る必要がありそうです。
『恒星の門番』:惑星を渡ることで辿り着くことができる場所です。どうやら開けた場所です。

●同行NPC
・ペリカ・ロジィーアン
 タフな物理系トータルファイターです。

 皆さんを守るために独自の判断で行動しますが、頼めば割と聞き入れてくれます。
 出来れば戦いに参加せず、最後尾から作戦全体を見たいと希望しています。
 戦いへの参加を要請する場合は戦力があがりますが、それ以外の危険は大きくなる恐れがあります。

・『男子高校生』月原・亮(p3n000006)
 皆さんと同等程度の戦力。愛刀で頑張るファイター。
 指示があれば従います。なければ無難な戦闘を取ります。
 ダンジョンってワクワクするよな? 俺はする!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はDです。
 多くの情報は断片的であるか、あてにならないものです。
 様々な情報を疑い、不測の事態に備えて下さい。

●Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

  • <果ての迷宮>月色天蓋Lv:7以上、名声:幻想30以上完了
  • GM名夏あかね
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年04月16日 22時30分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
エマ(p3p000257)
こそどろ
セララ(p3p000273)
魔法騎士
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
神話殺しの御伽噺
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
エリシア(p3p006057)
鳳凰

リプレイ


 煌めきに、ビロードの様な空。
 晴天からは大きく景色を変えて見せた『次の階層』。
 果ての迷宮とは、前人未到であり、そして冒険者ならば誰もが憧れた場所だろう。
「さて、いくだわさ」
 その姿は幼い少女のようであり、纏う空気は熟練の冒険者であり、アンバランスな気配を醸すペリカ・ロジィーアンは『セーブポイント』へと振り返った。
 9つの影。どれもがこれから先の未知へと進む冒険者のものだ。
 ちらほらと飛び石の様に暗闇の中を照らした足場は恒星か。宇宙そのものを思わせる階層にぴょいんと跳躍した『女三賊同盟第一の刺客』エマ(p3p000257)はたれ目がちの瞳で新たな冒険の気配に胸躍らせる。
「前人未踏! よい響きですね! ひっひっひ! 盗賊魂がうなるってもんです!」
 すん、と鼻先鳴らして。
 エマが感じ取るのは確かな『気配』か。
 ゆっくりと見上げた闇の中、ずずん、と重たい音をさせた天井が命の危機を感じさせる。
「……とはいえ、濃厚な死のにおいもしますね。つぶされるのはご勘弁です」
「迫る天井とは、古典的、な。いっそ壊せれば、裏道でも、できないだろうか」
 エマの傍らにそうと降り立った『沈黙の御櫛』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は超嗅覚を駆使し周囲のにおいを感じ取る。獣の匂いはしない――敵の気配はまだ遠いか、それとも『獣ではない匂いが感じ取りにくい存在』でもいるのかだ。
 見下ろす足場は透視は可能であるが、足場以上の役割を果たしてはいない。天井は見上げる限り『上の階層がある』だけだ。
「果ての迷宮、鬼が出るか蛇が出るか……その程度で済むならば、容易い、が」
 果て。それは何を指してそう言うか。エクスマリアの呟きにペリカは「迷宮が何所まで続いているか――それさえ、分からない事だわさ」と神妙にそう云った。
「変な音も聞こえないですし、ひひっ、ササッと進みましょうか」
 セーブポイントから決定した隊列に沿って行動を開始する。
 まずは、とエマとエクスマリアが索敵しながら進むその背を追い掛けて不意の事がないようにと慎重に進む『濃紺に煌めく星』ラノール・メルカノワ(p3p000045)。
「油断せず、迅速に、だな。頑張ろう!」
「そうだね! 今回も『わくわく』する階層だ!」
 ラノールの傍らでは王にこの迷宮の冒険譚をプレゼントすると約束した『魔法騎士』セララ(p3p000273)が楽し気に足場を渡る。
 楽し気な少女と対照的に落ち着き払った雰囲気ではあるがラノールとて冒険者だ。未知なるものとなれば心躍らずにはおられまい。それはペリカ達冒険者が感じる高揚と確かに同じだ。
「傭兵として生きていた時は中々体験できなかった事だから純粋に楽しみだな!
 ……とはいえ危険度も未知数。しっかりと生きて帰ろうとも。帰りを待ってくれる者もいるからね」
「ウンウン、アイされる場所じゃないもんね!」
 巨体をものともせずに足場を渡る『矛盾一体』ナーガ(p3p000225)。旅人である彼女は「これはダンジョン? なのかな?」と愛らしく首を傾げる。
 ダンジョン――冒険者の夢。それは、ナーガの元居た世界にもあったのだそうだ。
「ナーちゃんはいったことないけど……とてもタノシミだな! わくわくだね!
 ダンジョンのバンニンさんにもアイをとどけられればいいなぁ」
「『アイ』の意味は――聞かずとも、かしら」
 唇に品の良い笑みを浮かべて見せた『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はふわり、と足場に着地する。
 冒険者としてダンジョンを踏破したいという気持ちはもっともなものなのかもしれないがーーレジーナは明確に理由があってこのダンジョンへ挑んでいる。
「ダンジョンの踏破は幻想貴族の責務であり、夢。
 ならば、実績と成果を残せたなら! ぽんこつと言われないのでは……!?」
 レジーナの脳内には「ふふ……本当に『お可愛らしい』こと」なんて何処か小ばかにしたように笑う青薔薇のお嬢様が浮かんでいる。寧ろ、そう言われるのも満更ではないのだが褒められたいし、認められたいと言うのも本音の所だ。
「確かに。貴族の知り合いはアーベントロート家しかないからな……。
 何かいいお土産を持って帰れるといいが……」
「いいえ、『持って帰らなくてはならない』の」
 使い魔を空に侍らせていたレジーナに『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)はなるほどというように小さく頷いた。
 隊列を乱す事無く飛行しサイズが近づいたのは鮮やかな色味をした天蓋だ。まるで何処までも続いてるかのような星空は確かに『天井』のようで。
「どうかしら」
 足場をひとつ飛んだ後、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)はサイズへと問うた。事前にチェックした他階層の仕掛けとも異なる足り『果ての迷宮』とは随分と凝った趣向のようだ。
「迫りくる天蓋……たらたら進むとぺしゃんこか……。
 恐ろしい迷宮だな……だがこういう時間制限があるところほど色々と仕掛けや宝があるはずだ……頑張るか」
 呟くサイズはイーリンを見下ろす。彼自身が接近した天井がぐぐぐと音を立てて迫ってくるあたり何かのからくりが仕掛けの物だということが感じられた。
 天蓋の星と足元ーーそれは足場を指すーーはどうやら異なっている。薄明かりで照らしている辺りは確認できるが門番がいる所への最短ルートにならないようだ。
(まるで星座だな……いや、混沌世界にもそういった星詠みはあるのだろうか……)
 探すようにして調査を続行する彼を見上げて自身の眼前の星に焔を発生させた『鳳凰』エリシア(p3p006057)はその炎がすり抜け見えた様子に「この星はフェイクか……」と呟いた。
 サイズはこういった場所には何らかの報酬が眠っている気がすると告げていた。エリシアは報酬、と呟きぱちりと大きな瞳を瞬かせる。
「我は宝などは余り興味はないのだがな。……うむ、新たに得た力を試すのにちょうど良い試練だと思ってな。役目はしかりと果たす」
 その為には生きて帰るが最重要事項だ。お宝かあ、とのんびりとした口調で呟いた『男子高校生』月原・亮 (p3n000006)にエリシアは「お前はそのようなものに興味があるのか?」と首を傾ぐ。
「なんていうか、ロマン感じない?」
「ええ、確かに。こうして星と星を渡るように踊る。
 これだってロマンチストなら十分喜ぶわ。どうしてそのロマンを天井でぺしゃりと潰してしまうのかしら」
 不服だというように告げたイーリンへと蝙蝠と共に夜闇を渡る『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が「確かにロマンだ!」と両手を叩く。
「俺達がこの階層の踏破に失敗したらまた天井がぐぐんと上がって煌く星がこんにちは、だろ?」
「ええ、そのようね。以前の領域と同じ。
 敵が再度時間を置いてポップするように階層もリセットされる――道が同じであるかはわからないけど」
 足元の星を確認するようにすい、と爪先を動かしたイーリン。亮は「と、いうと?」と首を傾げる。
「たとえば、私が今ジャンプしたその場所の星が『今、足場であるか分からない』ということよ。ダンジョン自体が時間の経過でリセットされるなら次にこの階層を攻略するときに完全なルートが確立されてるとは限らない」
「ああ、しかも今回は『攻略本』っていう有難い代物はない。
 此処からが未踏領域。俺らが一から切り開く道。武が物を言うとは面白い……血が滾る」
 乙女がするには余りにも猛々しい笑みを浮かべてレイチェルが喉を鳴らす。
 前行くラノールが一先ずは大き目の場所へ進もうと仲間へとかける声が周囲へと反響する。
「……壁、近いのかしら」
 黒に塗りつぶされ光る星。それはトリックアートのようにも見え、この階層の広さを錯覚させる。
「さあな……? ペリカは今回もサポート頼んだぜ。命綱は任せた。この迷宮の果てーーパンドラの箱の底を見てみたいンだ」
 レイチェルの言葉にペリカはにぃ、と唇を吊り上げ大きく頷いた。


(この階層は短期決戦が求められるが、私の火力は正直かなり低い。
 ならばパーティの被害を軽減し、各々が全力を出せるよう尽くすのが良いだろう)
 そう、小さく呟いたはラノール。最前線を歩むエマとエクスマリアの探査指示に従い慎重に、それでいて迅速に歩を進めていく。
「隊列が崩れては何が起こるかは分からないからな……」
「ウン、ナーちゃんもバンニンさんにアイを届けなきゃだから」
 ふん、と両手に力をこめて跳躍し飛ぶナーガは仄暗く続く暗闇を見下ろす。
「このサキってナニがあるのかな?」
「ひっひ……一寸先は闇、ですね……」
 振り仰ぎ、耳を済ませたエマの肩が小さく震える。それはエクスマリアも同じだ。この先に何かがいるということか。
「ペリカさんには要望通り、後ろからのチェックをお願いしましょう。
 亮さんは戦士としては私より専門的ですね? ガンガン戦ってもらいますよ! えひひっ!」
「お、おう……がんばる、な!」
 震える声音でそういった亮にエマは「大丈夫ですよ、えひひひひっ」と笑う。
「そういって盾にする気だろ?」
「いやぁ……」
「いいぜ、俺がエマの盾になってやる!」
 ドヤと、胸を張った亮にセララはくすくすと笑う。
「今回はスペースセララが主人公かと思ったけど、奥が深い物語(マンガ)になりそうだー!
 そのキメゼリフもらっちゃうよ。スペースセララいっくぞー!」
 やる気十分のセララの声に反応したように天蓋(うえ)を調べていたサイズが帰還する。機械仕掛けのようにも感じられる動く天井に飾られた星。そこから見た風景を事細かに話したサイズにイーリンは「配置が重要になるなら、星座とかかしら」と首を傾ぐ。
 一つ一つの調査の結果を簡単にまとめて進まなくては待ち受けるものへの攻略も困難を極める可能性があるからだ。
「星座? 混沌って不思議なんだよね。いろいろ調べたよ!
 もしそれと一緒なら、星座の形で『到着地』にそのモチーフの敵がいるかも?
 あ、それに宇宙には色んな惑星があるからガス状惑星とか燃える惑星、重力惑星とかあるかも?」
 わくわくとした調子のセララにイーリンが「そうね、そうだわ」と小さく呟く。
「星座のモチーフ、それは有り得なくはない話だもの」
「サイズとセララの話を纏めりゃここは『さそり座』の尾の途中――ってか?」
 レイチェルはなるほどなァと小さく、呟いた。エリシアがゆっくりと指を差した先には炎がぱちぱちと音を立て、燃えながら待っている惑星が存在している。
「あれらは『こちらを待ち受ける試練』か?」
「……できれば待っていてほしくはなかったが、そのようだ」
 エクスマリアがぼんやりと呟き、レジーナは「お嬢様の心のように清廉な炎だわ」と冗談めかす。
 ががん、と音を立てて進む天井。サイズが早くと急かすその声にレイチェルがゆるりと頷いた。
「天蓋に潰されるのは御免だ。待ってくれてる彼の為に……俺は帰還する」
「ああ、迅速に行こう」
 砂狼の巨大戦槌を手にぐんぐんと進むラノール。気づけば流星の様に飛び込むモンスターの姿が目立ち始める。
 隊列を乱さぬようにとエクスマリアとエマができる限り気配の薄いほうに誘導する中で、コインをトスして足元を確かめるセララと焔を持って物質を確認するエリシアが小さく頷いた。
 ナーちゃん流に『えいえい><』とポーくんを振り回したナーガ。そのアイは飛び込み続けるモンスターにも向けられ続ける。
 罠が仕掛けられていないかどうかを確認しながらも癒しを送るエリシアは穏やかな笑みを浮かべ、堂々と言葉を続ける。
「お前達を支えるのは我が役目。お前達は心置きなく戦うが良い」
「ええ、そうさせてもらうわ」
 神がそう望まれるのだから、ここで『油断』も『手抜き』もしないというのがイーリンだ。
 魔術書を手にしたイーリンは魔力を注ぎ込み攻撃を続けていく。ふと、背後で巨大な獲物を抱えて進むペリカの姿を両眼に映し、穏やかに笑みを零した。
「ねぇペリカ。最初に降りてくれてありがと」
「あたりまえだわいね。若い子達より老い耄れが先を――なんてねい」
 楽しげに笑うペリカ。殿は、任せろとでも言う様に堂々と胸を張ったペリカが亮をこつりと小突く。
「小娘、小僧を守るのも『隊長』の仕事だねい!」
 天蓋の距離を確認しながら前線のエマとの情報を共有するイーリンは空より帰還したサイズがいった『天井は徐々に動き出している』の言葉を確かめるようにその距離を確かめ続ける。
「エマ、時間は使う物よ!」
 ここには誰も訪れたことがない、未踏の地なのだということを情報のなさや人気のなさ、そして『踏み荒らされてはいない真新しい惑星』を確かめるようにエクスマリアが進む。
「ここは本当に『未踏』なんだな」
「えひっ……でも、ヒントはたくさん揃ってますね……」
 突然現れた流星は進むごとにその姿をケンタウロスのように変えていく。引かれる弓がひゅん、ひゅんと飛び交い、それを反射神経で避けるラノールに続きレジーナは「まるで人間のようね」とモンスター知識を生かしてそう告げた。
 不知火をも足場に使いケンタウロスの放つ弓を――その様子をセララが「射手座だね」と笑い、レジーナは「美しいたとえだわ」と笑みを浮かべた――弾く権能は天鍵の女王にふさわしい。
 そうして、辿り着いたその場所は開け、美しい星空が覗いている。
「あれ? もう終着点(ゴール)なのかしら?」
 首を傾げたレジーナにエクスマリアが「いや、それならば門番がいるはずだ」と周囲を見回す。
「エマ」
「えひひっ、いますよ……ね、ほら……」
 エクスマリアが自身が感じ取ったものを確かめるようにささやくその声にエマが小さく頷く。 
 戦列より緊張したそぶりで顔を出したサイズが「でも、何もいないが……」と暗闇を眺めれば、ぽつり、ぽつりと焔の手が上がり始める。
「焔……?」
 焔を纏うのは鳳凰たる彼女もだ。エリシアはあがる火の手の中に確かにモンスターの姿を映しこむ。
 焔が形作られ、そして、鎧のように硬質さを感じさせるフォルムがそれを包み込む。
「おっと、ゲートキーパーのお出ましだねい」
 ペリカの言葉に頷いて、ナーガとレイチェルが戦闘態勢を整えた。
 全員が辿り着いた足場の星以外、気づけば彗星は動きを止めて、戻ることはもうできない。
「天井は?」
「動き続けている」
 がこん、がこん。音を立てる天井を確かめたサイズにイーリンは「それじゃ、倒さなくちゃいけないわ」とゆっくりと顔を上げた。


 眼前に在るのは巨大な蠍であった。
 焔を待とう、蠍――サイズが上空で見た描かれた星の流れ。
 それをセララは「さそり座」と言った。
「さそり座をたどった尾の先には本物の蠍が待っている?
 うんうん、スペースセララの物語としても十分だよね! 亮、さっきのせりふ覚えてる?」
 スペースセララの言葉に亮が「えっ!?」と肩を固まらせる。
 彼女が世界から与えられた技能は所謂『漫画化』だ。ならば、オオコマや面白台詞も求めるというものだ。
「え、えーと……『いいぜ、俺がエマの盾になってやる!』」
「えひっ、任せますよぉ……」
 すすすすと後ろに下がるエマ。ぎょっとした亮の肩をぽんっと叩いてセララがにんまりと笑う。
「スペース戦隊イレギュラーズ! ここで負けるわけにはいかないんだよー!」
 決めポーズ、とカンペがちらり。今回は白い相方の代打に神社の一人息子がポーズを取った。
「いっくよー!」
 セララが地面を蹴る。
 セララの接近に気づいた蠍を誘うようにラノールが「おっと」と小さく笑った。
「狙いは『こちら』だろう?」
 声をかけ、蠍の標的とならんとするラノール。それは戦法として彼という『盾』を用意することで短期決戦を徹底するという作戦の一環だ。
 かわいいペット――そう思っているのはナーガだけかもしれない――を投げ捨てて一気にひだりてを振りかぶる。
「ナーちゃんのアイ、受け取って!」
 ばしん。
 鈍い音と共に吹き飛ばされる蠍、その体を縫い止めるのは赤黒い鞭。
「血を扱う吸血鬼の魔術師ーーそれが俺だ」
 闇の中をすいすいと泳ぐようにして惑星の中で蠍をぴしゃりと打つ赤き鞭。
 レイチェルの口元からぞろりと牙が覗き笑みが浮かぶ。
 聖剣ライトブリンガーを手にしたセララは正義の心に剣を宿す。掲げた正義を揺るがさぬよう十字に切り裂く一撃が蠍の焔を消し去るように振るわれた。
 すべての魔力を使うように、とサイズは全力をぶつけていく。
 サイズ自身、大鎌に染み付いた妖精の魔力を放つ彼の体が赤く、赤く染まっていく。その色はレイチェルには『血潮』であると見て取れた。
 神を恨み嫉み、そして神を刈取る様に呪いを放つ。レイチェルの弓はケンタウロスたちが放った射手座の弓よりもなお、清廉な白を瞬かせ、月光をきらりきらりと輝かせる。
「……俺の魔術は復讐の為に研ぎ澄ませた力。単なる火力だけが武じゃないぜ?」
 神話殺しの御伽噺を口遊むようにエクスマリアが握るは胡蝶の夢。
 静かなる征瞳に魅入られるように動きを止めた蠍の焔の勢いが弱まり続ける。

 ――遠い遠い、此処ではない世界の伝説。 いつかどこかで聞いた物語。

 それはこの果ての迷宮のこともいつかは語られるのだろうか。
 ペリカが思い出話をしたように、エクスマリアが伝える物語はいつかどこかで聞いたような響きを重ねる。
「マリア、名前の力、借りるわ!」
 距離つめるイーリン。紫苑の煌きと共にエクスマリアと共に蠍と距離つめ、紅い瞳が運命を捻じ曲げる様にその姿を映しこむ。
 瞳の呪いは何処までも深く、刻み込む。
 光の翼を瞬かせたエリシアの識別は仲間たちを癒し、そして蠍を刻み込む。
 速度を生かし、行動するエマが「ひひっ、こういうのは得意なんですよ……!」とささやくように呟いた。
 その声にナーガは「ナーちゃんもこういうの得意!」と楽しげ笑いひだりてを振り上げる。
 蠍は硬質でなかなかにその装甲を固め続ける。傷つけど、止まれば迫りくる天井に押し潰される、その機器を感じながらラノールは蠍の焔にちりりと焼かれ、小さく声を漏らした。
「装甲の間を狙え!」
 彼の声に頷くイーリンは「そうね、焔が吹き出るその場所が柔らかそうだわ」と仲間を振り仰ぐ。
 鎧のような装甲の間を縫うようにしてレイチェルが放つ一撃にぱきりと蠍の体にひびが入った。
「天井は!」
「まだ余裕があるようだ」
 その距離を確かめながらの連携と、そして、行動を重視し短期決戦的に行ったその戦い。
 蠍の焔を縫うようにぐんぐんと進む勇者は正義を煌かせ『決め台詞』を口にした。
「銀河の夜が落ちれば今度は朝日が昇る。なんてね――喰らえ! セララスペシャル!」
 まるで鎧のような蠍の体が落ちてゆく。
 燃える焔が消え去ることをエリシアは「命の灯火だ」と小さく告げた。
「命の――……そう、勝ったのね」
 瞬くイーリン。勝利の言葉を耳にしてペリカは小さく頷く。
 彗星が墜ちるように、弧を描いた『通路』を渡り、辿り着いたその場所の焔の気配が消えていく。
「あいつは」
「おわり、だわさ」
 ラノールはその様子をただ、眺めていた。


 がらん、がらんと落ちていくゲートキーパー。
 その付近に散らばっていくのは大量の切符だった。
「ここが、終着点――ってな」
 そう呟くラノールはゆっくりと空を見上げる。そこにある星をセララは『南十字星』だと指差した。
「星座ってなりゃ、冒険者たちとぼんやりと眺めたもんだわさ」
「蠍の焔は自分を焼いて、それで終わったのか」
 まるで奇天烈な列車にでも乗った気分だと僅かに冗談めかしたレイチェルの言葉に、ナーガはことりと首を傾げる。
「ナーちゃんたちがたどり着いたここが最後の駅なの?」
 大きな瞳を瞬かせて、アイしたゲートキーパーの終わりを眺めるナーガの背中にエリシアは自身が生み出した焔を眺めてゆっくりと掌を閉じた。
 命の灯火の如く、空に並んだ星の瞬きは、その星のいのちの終わりを表しているのだという。美しい階層ではあったが、何処となく、命の重さを感じさせたのはこの空間がダンジョンの中だからだろうか。
「この景色がお土産だろうか」
 サイズがそう告げて、星を眺めるようなしぐさを見せればレジーナはふんわりと浮かび上がり「ええ、そうね」と手を伸ばす。
「アーベントロートのお嬢様なら独り占めしそうな程にきれいな場所だが、おっかなさも感じたな」
「あら、きれいな薔薇には棘があるのよ。お嬢様のように、ね?」
 くすり、と笑ったレジーナ。開けた空間を見回した。
「うーん。探せば普通に出口あるのかな? それとも天蓋そのものが?」
 首を傾げたセララははっと、顔を上げて何かに気づいたようににぃ、と唇を緩める。
 気づけば散らばる切符を受け取るように星で飾られた道が続いている。
 その向こうにあるのは先ほどもセーブポイントから突入した際に見かけた『扉』だ。
「見て。ここが『ゴール』ね」
 淡々と、そう告げたイーリン。静かに息をついた彼女にレジーナはゆっくりと宙を仰ぐ。
「きれいな星空だったわ。……お嬢様と見れたらよかったけれど」
 彼女は美しいものが好きだ。美しい瞳を細めてころころと笑ってくれたろうかと深く息をつく。
 天井を確認すれど、何かヒントがないものかと呟いたエリシアは首を傾ぐ。
 天井はゲートキーパーと連携し、その動きを進めていたのか、消滅した動きと共にぴたりと留まり、美しい『星空』を描くだけだ。
「さぁて、それじゃあここに『セーブポイント』を築くかね」
 準備を整えるペリカの小さな背中はどこか高揚を感じさせる。
 成し遂げることが至難であると知っていた階層。
 これから先に何があるのか。巨大な石の扉はまだまだ『果て』があるのだと告げている。
 ここは果ての迷宮――崩れたゲートキーパーを振り仰ぎエクスマリアは動きを止める天井の様子を伺って首を傾げた。
「ペリカ、この迷宮は何処へつながってると思う?」
「さぁねぃ、案外――別の世界だったりしないかねぃ」
 冗談めかして笑った彼女は戦果を伝えようとへらりと笑う。
「ペリカ、ペリカ! また、続巻出すから読んでくれる?」
「何ならサインもつけてくれさね!」
「勿論。たくさん出すよ! フォルデルマンに続きを描くって約束してたからね。
 目指せ、<イレギュラーズ探索紀>ベストセラー!」

 この回想を攻略完了とする。
 そして、また、新たな冒険の気配を感じながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、イレギュラーズ。
 ここからが未知!
 次なる階層はどの様な場所でしょうか?

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