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シナリオ詳細

インタビュー・ウィズ・イレギュラーズ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある雑誌記者の主張
 ギルド・ローレットをご存じでしょうか?
 数年前から活動をはじめ、世界崩壊の未来を回避すべくその因子であるパンドラを収集する集団。
 彼らは特異運命座標(イレギュラーズ)と呼ばれ、そのあらゆる活動がパンドラの収集源となっているのです。
 それゆえローレットは世界の何でも屋であり、世界の中立であり続けるのです。
 ですが皆さん。
 皆さんは本当に、ローレットのことを、イレギュラーズのことを知っているでしょうか?
 彼らは先のレガド・イルシオンで起きた砂蠍事件や、サーカスの狂気や、海洋国家で起きた大渦事件やラサの蠍大討伐作戦に加わり大きな戦果をもたらしましたが、それゆえに彼らの戦闘力……つまりは傭兵としての側面ばかりに目がいってはいないでしょうか。
 皆さんは知るべきなのです。
 イレギュラーズという集団が……いや個人が、本当はどんな人物であるのかを。
 彼らが普段どのような仕事をして、どのように生きているのかということを。
 そのために私は、彼らの素顔に迫ることにしました。
 彼らが『ローレット』でない時、一体どう過ごしているのかに――迫ります。

●取材の依頼
「皆さん、取材のオファーを受けていただいて。ありがとうございます! なのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が依頼書を手に酒場へとやってきた。
「取材内容は事前に依頼書で伝えたとおり、イレギュラーズ個人としてのインタビューなのですが……この雑誌を見たことはありますか?」
 ユリーカが取り出したのは『レガドウォーカー』という雑誌であった。
 ファッションやガジェット、化粧品や貴族、飲食店やギルド……ローレットの依頼受付広告もここに出ている。要するに大衆向けのトレンド雑誌である。
「この雑誌で、イレギュラーズの素顔に迫る! というインタビュー記事を掲載する企画があるそうなのです。
 皆さんに受けて頂いたのは、そういう依頼なのです」
 取材形式は一対一の対話式。といってもほぼイレギュラーズが一方的に語るというもので、語る内容は『普段の自分』である。
「普段というのは、ローレットで依頼を受けていない時の皆さん、ということなのです。
 お花屋さんをしていたり、先生をしていたり、ワルなことをしていたり、普段からちっちゃい依頼を受けて生計を立てていたり……ですね。
 皆さんの普段の仕事。生活。そんなものを聞かせて欲しいそうなのです。
 この場合、『本業』って言い方が正しいかも、なのです」
 ユリーカは取材の日時を説明すると、コインをテーブルに置いた。
「当日までに話す内容を決めておいて貰えると嬉しいのです。
 急に言われると困るかもですから、この場で普段何をしているか自己紹介しあって、話す内容を洗い出しておくのがいいと思うです」
 今置いたコインは、つまりはそういうことなのだろう。
 ここの払いは持つから、自己紹介をしてお互いの空気をほぐし合っておいてくれ、と。
「では、よろしくお願いします! です!」

GMコメント

 このシナリオは雑誌のインタビューに答えるというものです。
 テーマは普段のイレギュラーズ。
 依頼を受けていない時の皆さんの様子を語ってみましょう。
 『依頼が本業だよ』という方もおられるでしょうが、その場合はどんな依頼を中心に受けているのかとか、普段どうやって依頼を探しているのかとか……考えてみると案外おもしろいかも知れませんね?

●今回の相談会場:大衆酒場『シロッキー』
 大衆向けの安いメニューとお酒&ソフトドリンクが並ぶわいわいした居酒屋。一番人気は唐揚げと山盛りポテトフライ。
 個室席をとってあるので、ここでテーブルを囲み、お互いの自己紹介をしてみましょう。
 もしかしたら自分と全く同じ仕事をしている人に出会えるかもしれませんね。
(※当依頼では巡り会った仲間と街角感覚のロールプレイをはさんでの依頼相談をお楽しみ頂けます。互いのPCの癖や性格も把握しやすくなりますので、ぜひぜひお楽しみくださいませ)

  • インタビュー・ウィズ・イレギュラーズ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年04月10日 20時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
無敵鉄板暴牛
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

リプレイ

●interview with 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)
 ローレットイレギュラーズの集まる酒場……から徒歩3分ほどの距離にある芝生の広場。
 格闘訓練や技の試し撃ちなどが行なわれるここで、ひとりサッカーボールのリフティングをする男――彼は日向 葵。吸血鬼の元サッカー少年である。
「面白い話はないっスけどね。オレはウォーカーである前に一応高校生っスから、勉強こそ学生の本分ってのはあるな」
 あくまで元の世界の価値基準で考える彼の日課はトレーニングと勉学。そして親族の様子見である。
 王都の図書館から歴史理解力や文章読解力を鍛えるための書籍を借りては自主学習を行ない、日中は決まったルートをジョギングする。
「依頼が無いからってだらけてるとどうしても体力と技術が落ちて、後々依頼で支障が出るっス。
 常日頃からもっと上を目指そう、とまでは考えてないっスけど……」
 継続することが重要。彼は当たり前のように語り、走るペースを速めた。

 葵のトレーニング風景は独特だ。
 特殊な網目構造をした革ボール。『サッカーボール』と彼の呼ぶそれを器用に弾ませ、煉瓦の壁にぶつけては帰ってきたボールをまるで手足の延長であるかのように自在に操る。
 このボールは彼にとって武器であり、手足であり、そして存在の証明でもある。
 かつての世界から持ち込んだ価値観のよりどころ、なのかもしれない。
 トレーニングの休憩中、彼は妹の写真を見せてくれた。
「陽っていうっス。
 陽は昔っから体が弱くてな、ただの風邪でも死にかけるような奴っス。
 だからたまに陽の様子を見に行って、元気かどうかチェックするんスよ。
 そうした方が……まぁ、お互い安心するからな」
 世界を変えても生き方は変えない。
 それが、日向 葵というイレギュラーズである。

●interview with『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)
「リュカシスと申します。本日は宜しくお願い致しマス!」
 きをつけの姿勢で深く頭を下げる少年。彼こそ無敵鉄板暴牛リュカシスである。
 鉄帝のセルフ焼肉屋が呼び始めたという二つ名に似合わず、折り目正しい少年だが……。
「自分は普段、鉄帝の軍学校に通っております。校訓は二つ!
 《力こそパワー》《筋肉は裏切らない》デス!」
 やはり鉄帝。気性は前のめりであるようだ。
 今日は学校へ通う姿を追うことになった。

「学校は愉快なこともあるのデス。毎日職員室に奇襲訓練(カチコミ)する生徒がいて、成功すれば成績がプラスされるんです。
 学校では教師は仮想敵、クラスメイトは戦友デス!
 もめ事や部費は決闘で決めるし、授業の殆どは訓練デス。
 けどそれが鉄帝の屈強な軍人を育てる……らしいデス!」
 そんな彼の今季の目標は『先輩のすこと』。
 曇り無いクリスタルのような目で語った。

 毛色こそ鉄帝的だが、軍学校という側面から見れば適切な教育方針と言えるだろう。
 豪快で大雑把な面が見られがちな鉄帝において、誠実かつ実直なリュカシスは鉄帝という国を支える思想の体現といってもいいかもしれない。
「自由時間ですか? 体を鍛えたり、鉄のパーツを改造したりしておりますね。
 こんな風にデス!」
 ガントレットからブレードが展開するさまを披露するリュカシス。
 自らの体質と向き合いながらも、ポジティブに利用して生きているのだ。
「ローレットとどちらが大変かと言われれば、
 それは言うまでもないことだけれど、どちらも大切!
 これからも頑張りますので、どうか応援してくださいネ」
 鉄帝の学生リュカシス。彼もまた、イレギュラーズのもつ多様性のひとつなのだ。

●interview with『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
 ぴ~ひょろひょろごー。
 物憂げに窓の外を眺めダイヤルアップ音を口ずさむ美女。エリザベス。
 今日は彼女の一日を追ってみたい。

 ――『乙女のぱんつと宝石は等価 出れば勝ち確』

 イレギュラーズエリザベスの朝は早い。
 朝日が出るより先に起き、支度を始める。
 自身の体調や天候、気温、湿度――仕事に影響する全てを確認する。些細な変化が結果を大きく左右する。それを知っているからだ。
 そして向かう先は――ベッド。
 二度寝だ。
「もうたべられないよ」
 昼過ぎ。合計12時間の睡眠をとったあと、彼女は活動を開始する。
 ――それはなんですか?
「依頼報酬です。5000Gはあるんじゃないですかね」
 彼女が向かった先は、闇市。
「闇市を何回ガチャれるか。それがイレギュラーズの強さを左右するといっても過言ではありません。
 乙女のぱんつは10000G。10連闇市が二回引ける額。
 つまり二回に一回乙女のぱんつを引き当てたなら無限にガチャることができ私の強さは最高潮にまで引き上がるということです。
 見ていてください。闇市ブレイカーと呼ばれたこの私の引き運にかかれば――」

 夜、大量の『おっさんの靴下』と『なんかの枝』に埋もれたエリザベス氏が酒場のカウンターに突っ伏していた。
 テーブルに置いた一斗缶から灯油ちゅるちゅるを使って口にガソリンを押し込んでいる。自棄ガソだ。
 目からガソリンが漏れているのは吹き込む勢いが強すぎたせいか、それとも、涙か……。
『わたくしの普段の生活でございますか?
 そうですわねぇ。朝陽と共に起き、近所の小洒落たカフェでお茶を嗜み、午後は編み物等の趣味に励む。そして日没と共に就寝。
 そんなつまらない生活ですわ。
 自分自身の生活より、皆様の刺激的な日々をウォッチングする方が楽しみですわね』
 ろくろを回す姿勢でそう語っていたエリザベス氏はそこにはいない。
 そこにいるのはただの闇市敗北者。これもまた、イレギュラーズの実態のひとつ、である。

●interview with 『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)
「お届けものでーす!」
 革の鞄から小包を取り出し、窓越しに配達サインを受け取るスカイウェザーの少女、ニーニア・リーカー。
 幻想の町で郵便配達員として働く彼女もまた、イレギュラーズである。
「生活するためにお金を稼いで、たまには贅沢なんかして……。
 普通がこうなのかは分からないけど、僕自身は召喚された前後でこの生活が変わったとは思ってないかな。
 ローレットは仕事を強要したりしないし、イレギュラーズにはなったけど依頼は受けずに普通に生活してるだけって人もいると思うな」
 配達客に手を振りながら次の配達先を確認するニーニア氏の横顔に、不思議な影がさした。
「最近のローレットは外国に行くことも増えたから、ついでの配達を委託されることもあるかな。
 外国へのお手紙や小包はとっても送料が高いから、個人便乗を利用するひとはちらほらいるよ」

 昼休憩の間、郵便配達員の仕事や生活について尋ねた。
「このお仕事はやってて楽しいよ。
 色んな場所に行くし、その過程で仲良くなれる人も沢山みつかるから。
 例えば海洋ではオススメの温泉を教えて貰ったしね。
 ローレットからの臨時収入……っていうのかな。そういうのがあるから、前よりちょっぴり贅沢できてるかも。
 美味しい者食べたり、温泉巡りしたり。幸せだよ~」
 休憩の時間が終わることを察したニーニア氏はサンドイッチを口に詰め込み、再び空へと飛び立った。
 町の郵便配達員ニーニア・リーカー。
 そんな彼女もまた、イレギュラーズのひとりである。

●interview with 『女王忠節』秋宮・史之(p3p002233)
「おかえりなさいませ、旦那様。お嬢様。ごゆるりとおくつろぎくださいませ」
 執事喫茶で記者を出迎えた少年、彼こそが今回取材に応じてくれたイレギュラーズ、秋宮史之である。

 史之氏の日常はフレキシブルだ。
 朝早く起きた史之氏はギルド・ローレットへ立ち寄り依頼書をざっと見回す。
「世界中では物騒な事件が多いですから。特に女王陛下の海を乱す輩には――」
 そう語る史之氏の目には熱い炎が宿っているように見える。
「めぼしい依頼がない日や、出張の必要がない日などはアルバイトと決めています。
 飲食店が多いかな。多分向いてるんだ」
 そう語る史之氏の得意分野は給仕。なかでも紅茶を入れることにかけては自身があると語る。
「これも社会勉強だよ。
 イザベラ女王陛下をおもてなしするのが、夢かな……」

 史之氏の暮らしは質素だ。
 アパートの一室に寝起きし、パンとコーヒーを主食にして生きている。
 アルバイトやローレットの依頼報酬で稼いだ金がどこへ来ているのかと尋ねた記者に、史之氏はにこやかに別室を案内してくれた。
「大体は、これに使ってますね」
 女王イザベラのポスター、カレンダー、ベッドシーツ、ぬいぐるみ、缶バッジ、ラバーストラップ、抱き枕、絨毯、カーテン。棚には記念硬貨、フィギュア、絵はがき……。
「うん、俺の部屋って感じ」
 部屋を見回す史之氏の横顔は幸せそうだった。

 最後に、イレギュラーズになったことについて尋ねてみた。
「最初は不安だったけど、自分が成長していけてるのが実感できてうれしいね。
 誰かの役に立つことができるんだ、がんばろうって思えるよ。
 ふふ、女王陛下バンザイってね!」

●interview with『D1』赤羽・大地(p3p004151)
 図書館で司書をつとめる年齢不詳の青年。赤羽大地。
 ギルド・ローレットに所属するイレギュラーズでもある彼の、普段の生活に触れてみた。
「ぶっちゃけ、こちらの業務での収入はあまり無い……というか、むしろローレットでの収入を、こちらの運営資金なりに回してる事がある
 ローレットが本業なのか、司書が本業なのか……というと、難しい質問だな」
 どこか苦笑交じりにそう語る大地氏は読書中だった。
 本を開いている間が最も考えがまとまるというタイプなのかもしれない。
 彼の普段の生活は本と共にある。
 自費で運営している図書館での貸し出しや仕入れ、清掃や虫干しといった作業で日常は費やされていく。
 異世界にはあちこちに図書館があって当たり前の国というものがあるらしいが、混沌はそうではない。
 図書館が公共事業化しているのは一部の裕福な土地に限られ、それ以外は大地氏のように自費で運営されるケースがほとんどだ。
 それそらできない場合に備え、大地氏は移動図書館を運営していた。
 馬車に沢山の本を積み込み、白馬に引かせて田舎町を訪れる。
 娯楽の少ない土地にとって、彼のもたらす本の影響は計り知れない。

 移動図書館を引くさなか、大地氏に図書館運営のやりがいについて尋ねた。
「俺が元いた世界では決して見られないような内容の本が手に入った時は、心が躍るな。
 この世界の文化とか、著者の考えが読み取れるようなモノだと、尚の事良い。
 ……ぶっちゃけ俺の秘蔵にしてしまおうか、って悪心が湧くことも無くはないけど。それを他の人とも共有するのが俺の仕事だ」
 だが良いことばかりでもないだろう。
「利用するお客さんはマナーも良いし、貸し出した本も期日までに返却されてるか、貸出の延長をちゃんと頼んでくれるから、そこは問題ないんだけども……」
 大地は『財布がカラだ』のジェスチャーをして苦笑して見せた。
「もし我が自由図書館に古本を寄贈してくれる人が沢山いれば、嬉しいところだな」

●interview with 『魔法少女インフィニティハートH』無限乃 愛(p3p004443)
「『惑える民に正義を啓く愛の陽光!魔法少女インフィニティハート、ここに見参!』
 ……さて、始めましょうか」
 真顔で一連の動作をこなす魔法少女無限乃 愛、21歳。
 このインタビューで魔法少女を目指す方が増えてくれるといいと語る彼女は、常在戦場永遠の魔法少女であり、イレギュラーズである。

「私の本業は魔法少女です。
 魔法少女とは可愛い女の子にして、愛と正義の名の下で戦う戦士でもあります。
 私も勿論その一人、普段からこの姿で日々弱きを助け悪を挫く生活をしています」
 ろくろを回す姿勢でそう語る愛氏に、早速仕事の様子を見せて貰うことになった。
 業務の殆どは町のパトロール。
 怪物のようなマスコット『ラヴ』に跨がり、町の決まったルートを巡回していく。
 ――皆見ていますが。
「魔法少女を期待と羨望の目で見るのは自然なことです。
 むしろ直視できない人がいたなら、恐らくやましいことのある人間でしょう。
 つまり、私の出番です」
 そう言ってマジカルサイズを握り込む愛氏の目は、仕事人のそれである。

「助けた市民の顔が安堵に変わる瞬間、そして悪を倒し張り詰めた空気が解ける瞬間。遣り甲斐を感じるとすればそこでしょう。
 確かにこの仕事に収益はありませんが、お金以上のものを得ていると思っています。
 悪即魔砲。古より変わらない私の矜持です。
 危険なことのように見えるでしょうが、愛が心にあれば負けることなど無いのです。
 元の世界で命懸けの戦いが日常だった私が、今ここに座っている、それこそがその証明と言えるでしょう」
 そう語る愛氏は、今日もラヴに又借り町を巡回していく。
 明日もまた、回るという。

●interview with 『不戦の職人騎士』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
「はじめまして、よろしく頼む。しかし……やっぱり少し緊張するな」
 そう言って膝にうさぎのぬいぐるみを座らせる青年、イーハトーヴ。
「落ち着いて、いつも通りでいれば大丈夫? そうだなオフィーリア、君の言うとおりだ」
 ぬいぐるみと語る彼の様子に不思議さは感じるものの、彼自身から不気味さや禍々しさを感じることは無かった。
 彼は自分のことについて、そしてその証明でもあるぬいぐるみについて語ってくれた。

「俺は普段、趣味で作っているぬいぐるみ達を養子に出して生活しているよ。
 どの子も、愛情を込めて縫い上げた、俺の大切な子供達だ。
 迎えが来る日には、とびきり……おめかしを……」
 語りながらハンカチを取り出し、涙をぬぐうイーハトーヴ氏。
「すまない、ちょっと色々思い出してしまって。
 ……それで、そう、とっておきの衣装を着せて、その子を望んでくれた人に手渡すんだ。
 そうして皆、笑顔になってくれる。
 混沌ではぬいぐるみは愛を注ぐ対象だから、俺も安心して彼らを送り出せるよ。
 それが、すごく嬉しいんだ」
 彼の出身は異世界であったようだが、その世界でぬいぐるみが愛を注ぐ意外のどんな対象であったのかを聞くことははばかられた。
「あれはぬいぐるみを作っていて良かったと思う瞬間だ。
 強いて言うなら、別れの辛さが、逆に大変だと思うことだろうか」

 最後に、イーハトーヴ氏にぬいぐるみの魅力について尋ねてみた。
「俺は、この愛らしい造形、これこそ天が与え給うた奇跡だと思う!
 人の心を癒し! 友として傍らにあり! あるいは……なんだいオフィーリア? ちょっと喋りすぎ? 相手が困っている?
 おっと、いけないな。すぐに周りが見えなくなるのは、俺の悪い癖だ。
 どこまで話したかな。では造形美について――」
 彼のぬいぐるみについての語りは、12時間に及んだ。





 こうして八人のイレギュラーズの私生活を追ったところで、記者にはある感情が芽生えていた。
 彼らもひとりひとりの人間であり、それぞれ別個の価値観で生きているということ。そしてその気づきから生まれる親近感である。
 彼らは滅びを回避する存在であり魔種を倒した存在ではあるが、それ以前に、大切な何かをもつ人間たちなのだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 そして明日も、彼らは日常に生きていく。

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