PandoraPartyProject

シナリオ詳細

シスターママさん大ピンチ!

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●中洲で動けず……
 その日、スズ=レームは普段、珍獣ハントを行う仲間と共に珍獣狩りへと出かけていた。
 見た目は少女にも見える彼女だが、こう見えて『見習い剣士』ヨハン=レーム(p3p001117)の母親。
 鉄帝でシスターを行っている……らしいが、こうして外で珍獣ハントをしている彼女を見かける頻度が多いのは気のせいではないだろう。

「さーて、どうしようかね」
 スズは今、とある海洋の河、中洲で動けぬ状況となっていた。
 この場にいるのは、彼女他鉄騎種のハンター4人で合わせて5名。
 中洲には、一つ大きな木が生えている。
 そこにロック鳥が巣を作っており、彼女はその卵を狙ってやってきていた。
 しかしながら、スズ達が1m程度ある卵を確保した直後に運悪く、親鳥が戻ってきてしまった。
 1体しかいないが、全長10mもある鳥というのはさすがに圧巻だ。
 鉄騎のハンターですらも、その威容には迂闊に手が出しづらい。
 しかも、彼女達が動けぬ状況なのは、この巨鳥だけが原因ではない。
 河にはいつの間にか現れた肉食のアリゲーターが2体、中洲の周りを泳いでいる。
 そいつらは先程、水しぶきで木から巣を落とし、ロック鳥の雛鳥を1羽ずつ丸呑みして水中へと戻っていった。
 スズたちも巨大な卵を抱え、ここから脱出を考えたのだが……。
 まず、午前中に豚の珍獣と一閃交えてやや疲弊しており、万全といえる状態ではない。
 また、ロック鳥は子供を全て奪われ、親鳥が激高した状態。
 重ねて、アリゲーターどもも、腹が十分に満たされぬのか、スズ達を今度は獲物とするべく中洲の周囲で様子を窺っている。
 下手に動けば、中洲を繋ぐ橋ごと食われかねない。
 まして、河は水深が深い上に流れも速く、泳いで渡るなど論外。空はロック鳥と八方塞がり。
 個別ならまだ対処しようもあるが、さすがにロック鳥、アリゲーターと同時に相手するのは厳しい。
「これは、助けを呼ぶしかないかね……」
 直に、馬車の荷物番が中々戻らぬ状況を察して、こちらに来るはず。
 そこから、ローレットに助けを呼ぶなら、半日といったところ。
 それまでは待つしかないと、スズ達も観念したようだった。

●珍獣ハンターを救出せよ!
 ローレットにスズ達の救出依頼が届いたのは、それから数時間後。
 スズを助けたいと思う者、また、珍味に興味があるもの。巨大な敵に戦闘意欲を燃やす者などが集まってきた。
「珍獣ハンターとして活動する、スズ=レームさんが今、危険な状況にあり、本人から救助依頼が出されています」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が集まったイレギュラーズ達へと、情報説明を行う。
 情報元は、スズの仲間である珍獣ハンターの男性。
 彼に戦闘能力はなく、今回も馬車で荷物番をしていたのだが、スズ達仲間が危機に陥ったこともあり、馬車で救援を呼びに幻想までやってきていた。
 説明が終われば、この馬車で現場へと直行することができる。到着は夜になる見通しだ。
「海洋にある河、中洲でロック鳥の卵を取っていた際、合わせて河にやってきたアリゲーター2体に囲まれる状況になっているようです」
 スズ達はロック鳥の卵を確保済み。朝に狩った珍獣の豚肉も所持している。
 アリゲーターは中洲の木に水しぶきで攻撃。
 巣が落ちてきたことで雛鳥をそれぞれ丸呑みしてしまった上、スズ達をも食べようと狙いつつ中洲の周辺を泳ぐ。
 ロック鳥は低空を飛びながら、アリゲーターを優先して狙うようだが、卵を所持するスズ達にも目を光らせている。
「どうにかして、この窮地を脱したいようですが、せめてロック鳥か、アリゲーターのどちらかはどうにかしたいところです」
 とはいえ、アリゲーターだけつり出すと、高確率でそれを狙うロック鳥がついてきてしまう。
 ロック鳥だけのつり出しは、スズが卵を持っている以上難しい。
 移動すれば、アリゲーターが中洲へとかかる橋ごと食らいつき、破壊する恐れがある。
 河の水深は2~30mはある上、流れもそこそこ速い。
 泳ぎながら水中戦が得意なアリゲーターと戦うのはかなり無謀だ。空からは、ロック鳥も黙っていないだろう。
 敵データを書面で手渡しつつ、アクアベルは告げる。
「ともあれ、海洋までの移動も考えれば、幻想を発ってから馬車内で話す方がよいかと思います」
 どうやって、それぞれの敵と相手するか。
 そして、どのようにして、スズ達を助け出すか。
 それらを考えつつ、現場へと向かいたい。
「……以上です。準備は急いでくださいね」
 こうしている間にも、スズ達珍獣ハンターたちはローレットからの援軍を待っているはずだ。
 できる限り現地へと急ぎ、彼女達を救出してほしいとアクアベルはイレギュラーズ達へと願うのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
 関係者依頼ですが、どなたでもご参加いただけます。
 また、難易度はノーマルですが、EX依頼ですので予めご了承くださいませ。

 スズさんからの珍獣ハント依頼最終回です。
 今回の依頼において読了は不要ですが、
「シスターママさんと珍獣退治!」、「シスターママさんとキノコ狩り!」の2作の続編にあたります。

 最後になる分、濃い内容にできればと考えております。
 すでに珍獣を複数討伐し、疲弊しているスズさん達を
 助けていただきますよう願います。
 もちろん、事後は美味しく珍獣をいただくことができます!

●敵
○ロック鳥
 体長10m以上ある大型の体を持ち、ゾウすら持ち上げる巨大な白い鳥です。
 スズさん達の目的はこの鳥の卵(全長1m程度)でした。
 ワニに大事な雛2羽(全長1.5mくらいです)を食われ、非常に気が立っています。

 近距離でくちばし(物近範)、急降下(神中域・窒息)
 遠距離で、羽ばたき(神中扇・崩れ)、羽投擲(物遠扇)
 基本、地上から20mの間を飛行します。

 さすがに討伐例が少なく、食べた者も少ないようです。一応、鶏肉などと同様の扱いで食べられるようですが……。

○アリゲーター×2体
 全長5m。どうやら番いのようです。
 肉食です。ロック鳥の雛を狙って近づいていたところ、鴨がネギを背負ってくる……といった具合にスズさん達にも狙いをつけにやってきたようです。
 すでに、ロック鳥の雛を1体ずつ丸呑み済み。
 ほとんど水中から出る様子はありませんが、餌があれば陸地に上がってくると思われます。
 
 近距離で食らいつき(物近単・出血)、尻尾(物近範)
 遠距離で飛び掛かり(物中単・水中のみ)、水しぶき(神遠扇・弱点・水中のみ)

 倒せれば、ステーキ、唐揚げなどにできます。
 食感は鶏肉に似ており、臭みがない上ジューシーとのことです。

●NPC……珍獣ハンター5名(荷物番1人は除外)
 いずれも数々の珍獣を倒した歴戦の猛者です。
 ただ、一戦交えた後ということ、強敵を一度に相手する状況とあって、慎重になりながらも救助を呼んだ状況といったところです。

 すでに、スズさん達は珍獣討伐を1つ済ませ、豚肉を入手済み。
 ある程度下処理を済ませて一部所持。残りは馬車に積んでいるようです。
 元々、この豚肉とロック鳥の卵でベーコンエッグを食べようとしていたようですが……。

○スズ=レーム
 猫耳らしき突起をシスターベールの下に持つ、某世界日本出身の元シスター。また、ヨハン=レーム(p3p001117)さんの実母です。
 戦いでは、近距離でツーハンドソード、遠距離でロングボウを使用できます。
 基本的には自分の考えで動きますが、要望があればそれに合わせて行動させていただきます。

 今回、自身の馬車で救援を呼びに行かせています。
 馬車には、調理器具などを用意しております。

○珍獣ハンター×4人
 スズの珍獣ハント仲間で、20~30代の鉄騎種です。
 2人は男性で弓、魔法の遠距離支援。
 2人は女性で拳、両手短剣の近距離戦メイン。
 基本、スズさんの指示で動きますが、イレギュラーズの要望に合わせて行動もできます。

●状況
 海洋の大きな河(幅は2,300mはある河です)、
 途中の中洲に(100m×65m程度あります)、スズさん含め5名の珍獣ハンターが取り残されております。
 中洲は巨大な木と草むらのみ。スズさん達は草むらに身をかがめ、救援を待っています。
 木製の橋が架かっていますが、さほど大きなものでない上、アリゲーターに食われて破壊される危険があります。

 彼女の馬車で一人がローレットへと救出依頼を出しに戻ってきています。この馬車で基本的には現場へと向かいます。
 到着は夜。大体スズさん達がこの状況に陥ってから半日後くらいです。

 事後は川辺で料理、食事の流れです。
 状況によって、食材が大きく変わると思われます。
 基本的に、スズさん達が持つ豚肉、巨大卵、倒せればロック鳥、アリゲーターの肉といったところでしょう。
 それらをバーベキューにするなどにすると、美味しく食べることができるでしょう。
 
●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • シスターママさん大ピンチ!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月23日 21時15分
  • 参加人数10/10人
  • 相談5日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
主人=公(p3p000578)
ハム子
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
シラス(p3p004421)
超える者
クロガネ(p3p004643)
流浪の騎士
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に

リプレイ

●急行する馬車の中で
 海洋の河。
 そこを目掛け、馬車が駆ける。
 天義の守護騎士の『戦花』アマリリス(p3p004731)は普段は王子様然とし、悪を討つべく凛として立ち振る舞う……のだが。
「美味い飯! それだけで救わない理由はない!!!」
 今回はどうにも、珍獣ハンター達が狙い、食べようとしていた食材、食事に興味津々な様子。
「……ゴホン、人命がかかっているという事なら、仕方ありません!」
 それを声を出してしまったことで、仲間達の注目を浴びたに気づき、アマリリスは一つ咳払いして。
「珍獣たちには申し訳ありませんが、倒させていただきます!」
 食べるのが大好きなようで、アマリリスは思わず垂らしかけた涎をじゅるりとすすって。
「いつもよりテンション上がるよぉぉ~ねっ、アラン!」
 声を掛けられたその相棒、切れ長の瞳の『勇者の使命』アラン・アークライト(p3p000365)は神妙な表情のまま。
「巨大な鳥に巨大なワニ……おまけにそいつらに囲まれた人質か」
 被った帽子を吊り上げ、テンションの高い相棒の姿に一つ嘆息して。
「ったく、上手い飯のためだ。大暴れしてやるぜ。……テンションは上がらんがな!!」
 喝を入れるように、アランは叫ぶ。
 それを近場で見ていたメンバー達。
「ヒヒ、同時に2種類の大型獣を相手取る羽目になるとは不運な」
 民族衣装を纏った銀の長髪を持つ『闇之雲』武器商人(p3p001107)が小さく笑って。
「でもまァ、首尾よく生き残れば、さぞ手に汗握る冒険譚になるだろうね」
 もちろん、珍獣ハンター達が生き残ればの話だ。
「ま、なんつーかね。スズさんには結構世話んなったし……。今度は私が返す番ってな」
 黒い長髪、華奢ながらも豊満な胸を持つ『茜色の恐怖』天之空・ミーナ(p3p005003)は過去に2度、珍獣ハンターの1人、スズ=レームからの依頼に参加している。
 珍獣を倒したことで、ミーナはスズより依頼の礼も兼ねて食事を提供してもらっていた。
 ミーナはそれを少なからず、恩義として受け取っていた様子だ。
 ただ、今、スズ達は武器商人が言うように、空は全長10mもあるロック鳥、河には全長5mもある2体のアリゲーターと、大型獣に囲まれている。
 片方だけならどうにかする実力は十分あるハンター達だが、さすがに同時に相手をするとなれば厳しいといった状況だ。
「心配だよね。みんなでヨハン君のお母さんたち、助けようね!」
 自らのギフトで今回は女性のアバターで参加する異世界の学校制服を纏う女子高校生の『ハム子』主人=公(p3p000578)が仲間達へと告げる。
「友達のママとその友達、私たちが守らなきゃ」
 自称妖精、ややぼうっとした振る舞いをした『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)もそれに応じ、当事者へと視線を向ける。
 どうやら、今回の事態を受け、セティアや『魔法騎士』セララ(p3p000273)、『鳶指』シラス(p3p004421)らが母親救出の為にと、ローレットとしての活動から身を引きかけていた『見習い剣士』ヨハン=レーム(p3p001117)を呼び戻してきたらしい。
 この依頼で何か、ヨハンが決意を示すのは間違いない。
 もしかしたら、心変わりするかもしれないという淡い期待もあったのかもしれないが……。
「さて、僕の最後の戦いだ」
 鉄騎種ではあるが、小柄で可愛らしい印象を抱かせる少年、ヨハンが何か決意を秘めた瞳と口調で呟く。
 ――僕は、英雄にはなれなかった。
 彼は幾度か依頼に参加し、他のイレギュラーズの仲間と数々の依頼を解決に導いてきた。
 しかし、その結果、ヨハンは自らの無力さを感じてしまっていたのだ。
(このお仕事を最後に、鉄帝へ帰ろう)
 非凡な才能を持つ仲間と、一緒に戦えていただけで十分。
 この気持ちが濁り、嫉妬の炎で自らの身を焦がしてしまう前に。
 今回の母親の救出依頼を最後に、鉄帝に帰ろうと決めていた。
「お母さんも僕を許してくれるだろう。平凡な生き方だったが僕は満足だ!」
 ――満足して、ローレットを去るのだ!
 すでに硬く決意をしていたヨハンの独白を、獣耳を生やした長髪の少女にも見える『流浪の騎士』クロガネ(p3p004643)が耳にして。
「己を貫け。為すべき事を成せ」
 クロガネはヨハンへと諭すように語り掛け、さらに一言。
「助けるのだろう? この盾は、そのために使おう」
 自身はこの身にできることをするだけだと、クロガネは金属鎧を纏うその胸を叩く。
 他のメンバーはただ、ヨハンを見守り続けるのみだ。
「作戦の最終確認。セララ団長」
「うん、もう一回確認するよ。ヨハン君もいいかな?」
 親友のセティアの呼びかけを受け、騎士の格好をした自称『愛と正義の魔法少女』であるセララが改めて、今作戦について仲間達へと語る。
 セララの傍には、かなり大きな豚肉(下処理済み)がある。
 その日の朝のうちに、珍獣ハンター達が討ち取った豚の珍獣らしい。
 これを使って、スズ達を救出する為の作戦を、イレギュラーズ一行は立案していた。

●珍獣ハンター救出大作戦!
 現場となる河に到着したのは、星空に月が浮かぶ頃だった。
 馬車の手綱を握っていたハンターの1人によれば、大体半日くらいはこの状況が続いている。
 その間、スズ達ハンターは河の中洲で卵を手に、じっと身を潜めている。
 また、子供を奪われて空を跳び続ける巨大なロック鳥。そして、獲物を狙い続ける2体のアリゲーター。
 硬直した状況の中で、大型獣達もまた緊張感を抱いたままで攻撃のタイミングを窺っていた。
「とにかく中洲に向かう、まずはロック鳥をなんとかしたい」
 セティアが言うように、イレギュラーズ一行はまず中洲上空を舞うロック鳥の撃破を目指す。
 ただ、これには問題が2点ある。
 1つは、ロック鳥は中洲で卵を抱えるスズ達を敵視しており、おびき寄せが困難であること。
 そして、下手に中洲へと掛けられた橋を渡ろうとすれば、アリゲーターが襲ってきて、橋を破壊される恐れがあること。河は流れが速い上に深く、泳ぎながらではアリゲーターの相手は困難だ。
 この打開の為の一手として使われるのが、先ほどの豚肉である。
 馬車の荷物番をするハンターも肩を落とすが、仲間達の無事には変えられないと観念していた様子。
「本当、大きな豚肉ですね!」
 ヨハンも干し肉を用意をしていたが、それは人が食べやすいサイズとなっている。
 一方、豚肉も下処理はしているが、販売も想定していたようで、相当に大きな塊だ。食べる為に一部は切り分けてはいたが、これなら5mもあるアリゲーターを引き付けるには十分。
 まず、セティアがモルフォ蝶のような翼を、そして、ミーナもまた朱に染めた翼を羽ばたかせて飛行しつつ、その豚肉を中洲から離れた場所へと投げ込んでいく。
「折角のだけど、ごめんね」
 ハンター達へと謝り、セティアは豚肉を水の中へと投げ込む。
 ドボオオオォォォン!
 重い音を立て、水の中へと沈んでいく肉。
 それに、アリゲーター達はすぐさま近づいていく。
「ようお前ら、その肉は食っていいぞ。もっと美味い肉を食いたきゃ大人しく待ってるんだな!」
 ミーナが動物疎通を使って、アリゲーター達へと伝える。
 それを聞いてか、相手は早速その肉を美味しそうに食らい始めていたようだ。
 そのタイミングで、ヨハンも時間稼ぎの為にとワニどもから離れた位置に干し肉を投げつけ、仲間達と共に中洲への橋を渡り始める。
 橋は木造の粗末なもの。一応は大雨などでも耐えられる程度に補強はされているが、ワニの顎に噛まれればあっさり粉砕はしてしまうだろう。
 その上を、セララ、公、アマリリス、武器商人とメンバー達が渡っていく。
「すごく危なっかしい橋だな」
 シラスは思った以上に速く流れる河の流れも感じ、中洲へと小走りに移動する。
 アランは仲間達が肉を投げ込む間、近場で1m程度ある卵型の石を確保していた。
 見た目や色は石そのものだが、布に包むことで卵に偽装しつつ、それを背負ってダッシュで中洲へと向かう。その後を、遅れてヨハンが駆けていく。
 空を飛ぶセティア、ミーナも向かっていくのを確認し、クロガネは最後に橋を渡り始めたのだった。

●空を舞う巨鳥を撃ち落とせ!
 アリゲーター達は河に投げ込まれた豚肉に夢中となっており、今のところ中洲へと近づく様子はない。
 ロック鳥もワニどもが肉をがっつく姿を横目で見てはいるが、まずは卵をキープしている珍獣ハンターが先だと睨みを利かせ続けている。
 まずは、宙を舞うセティアが迫り、『聖骸剣ミュルグレスIII-2』でロック鳥へと切りかかる。
 氷精の守護を得たその刀身は、巨大なロック鳥の体に傷をつけ、傷の周囲を凍り付かせていく。
 相手もこちらが空を飛ぶメンバーがいることで少し高く飛翔しようとするが、ナナカマドの枝から作られた『捻れ七竈』を手にしたシラスがそれを許さない。
「ちょうど良い的だぜ」
 魔力弾を発し、彼は相手の翼を撃ち抜いていく。
 公もまたウェポンシールドから魔砲を発射し、相手する巨大鳥を地面に叩き落そうとしていた。
 ただ、なにせ全長10mもある巨大な相手だ。
 多少の攻撃で落とせるほど柔ではなく、敵も大きな翼を羽ばたかせて強風を巻き起こし、中洲に集まるメンバー達の態勢を崩そうとしていく。
 公と合わせ、クロガネはアリゲーターの動向を窺いながらも、ロック鳥へと名乗りを上げる。
「クロガネだ。何かあるならかかってくるといい」
 また、前に立つセララも作戦がうまくいったことで、両手に持つ聖剣から鋭い突きを繰り出し、ドヤ顔でロック鳥を挑発しようとする。
 とはいえ、ロック鳥も簡単には挑発に乗ってはくれない。
 自身の翼から羽を投擲し、この場のメンバー達の体を撃ち抜こうとしてきていた。
 なかなか相手の気を強く引くのがうまくいかぬ状況だが、クロガネは相手を後方に通さぬようにと身構え、自己再生を行いつつ壁役になろうとしていたようだ。
「よう、鳥さんよ。悪いが私らも仕事なんでな、諦めて狩られてくれや!」
 ミーナは空を飛び、凍えるような殺意を宿した指先で相手に触れる。
 少しでも相手の態勢が乱れるか、体が凍り付きさえすれば。
 軽槍『グロリアス』を手にするミーナは、相手の巨体を切り裂くことのできるタイミングをはかっていたようだ。
 アランは一度だけ憎悪の剣を手に己の力を高めていたが、草むらに身を隠すスズやハンターらと合流する。
「もう大丈夫です、お任せください! あとで美味しい料理、楽しみにしております!」
「ああ、任せときな」
 アマリリスも同じく呼びかけると、スズは疲れを感じさせず、ローレットの参戦に気を良くしていた。
 脇で、アランもスズと接触し、ロック鳥の撹乱の為に草むらの中で岩と卵を交換した振りをする。
「何を言わずに、そのまま頼む」
 その上で、アマリリスは草むらの前で、珍獣ハンター達のカバーへと当たって。
「貴方は不運な鳥かとは思いますが、命の重みを感じて美味しく食べるから!!」
 すると、敵は鋭い爪を光らせて急降下してくる。
 それだけで広範囲を引き裂こうとするのは、その巨躯ゆえか。
 ただ、近づきさえすればこちらのものと、アマリリスはしっかりとマークし、相手の抑えを始めていた。
「お母さん!」
「ふふ、待ってたよ」
 息子の呼びかけに、スズが気づく。
 母の無事を確認したヨハンは満面の笑みを浮かべて。
「見習い剣士のヨハンです!」
 仲間同様に名乗りを上げ、ロック鳥の注意を集めようするヨハン。
 すると、ようやくロック鳥はイレギュラーズ達に強く注意を払うようになる。
 近場へと寄ってきたそいつはくちばしで広範囲をつついて来たり、爪による通常攻撃を始めてきていた。

 相手の注意を引くことができれば、後はロック鳥の体を傷つけていくのみ。
 珍獣ハンター達も攻撃支援に当たってくれるが、スズのみ卵の守りの為に草むらに隠れたままという状態だ。
 その間、気になるのは、アリゲーターの動向である。
 まだ、動く気配はないが、それなりに時間は経っている。直にこちらへと来てもおかしくはない。
 ロック鳥が自分達を無視できなくなったのは、シラスにとって狙い通り。
「後で食うからな。綺麗に仕留めてやるよ」
 相手が地上付近から攻撃を仕掛けてくるようなら、シラスも大技を使う。
「内臓を傷つけると、肉が臭くなるって聞いたことある」
 ならばと彼はロック鳥の頭に狙いを定め、空間を瞬間的に圧縮していく。技による消耗は激しいが、のんびり相手するわけにもいかない。
 というのは……。
 そこで、公やクロガネがロック鳥よりもさらに前方の様子に警戒を強めて。
「どうやら、食べ終えたようだね」
 武器商人は前に出る仲間が多いこともあり、少し下がってワニへと警戒を強めていた。
 中洲へと近づいてくる敵を、武器商人は待ち構えるようにして橋から離れた場所で相手の足止めへと当たる。
 アリゲーターの抑えが足りないと判断したクロガネはロック鳥の抑えを仲間に任せ、そちらのブロックへと向かっていく。
「橋が無事なまま迎え撃てているのは、ありがたいな」
 最悪、クロガネは橋が落ちた際は水中での戦いも想定していた。
 その場合、中洲へのおびき寄せを行うつもりではあったが、その場合だとパンドラを使うこともやぶさかではない状況となっていただろう。
 相手もしばらくは水中からの攻撃を繰り返していたが、埒が明かぬと判断してか、中洲に上がってくる。
 そうなれば、クロガネ、武器商人の両名は名乗り口上をあげ、水中には逃がさず、しっかりとその場での押さえつけに当たっていたようだ。
 中洲のイレギュラーズ、ハンター達は2種の大型獣に襲われる形となっていたのだが、先に相手を始めたロック鳥の全身がかなり傷んできている。
 公は降下してきた相手に対し、手にするグリードマンを刃として斬りかかっていく。
 抵抗力の高いロック鳥だが、公の一撃で恍惚としてしまえば、セララが自らにフェニックスのカードをインストール。
 内に力を秘めたまま光翼のブーツで跳び上がった彼女は、超高熱の一閃を浴びせかけてロック鳥の体を焼き払う
 重ねるようにアマリリスもまた炎の術式を浴びせ、敵の羽毛の一部を燃え上がらせていたようだ。
「穴を開けるにはいい翼だな……!」
 ここにきてなお、空を飛び続けるロック鳥に対し、アランは地面を抉る程に強く踏み込み、『偽千剣=フラガラッハ・レプリカ』で神速の突きを繰り出す。
 我流での一撃だが、その威力はかなりのもの。
 相手も翼に穴を開けながらも、子供を守ろうとする為か死力を尽くして襲い来る。
 だが、抑えるヨハンも、この戦いには特別な想いを抱いて臨んでいた。
 莫大な雷エネルギーを放電し、彼はロック鳥の嘴攻撃から仲間達を守り続ける。
 ヨハンに守られながらも、セティアはその場で流麗な舞いを敵へと見せつけながらも、相手の全身を切り刻んでいく。
「さすがに弱ってきたな」
 ミーナはここぞと、軽槍グロリアスで刺突と斬撃を繰り返す。
 無形の術『五月雨』。
 そのミーナの武術は絶え間ない攻撃でロック鳥の羽毛を切り刻み、その全身から血が流れ出す
 幾度目かのミーナの斬撃が相手の体へと深く突き入れられると、ロック鳥の目から光が失われる。
 そいつは羽ばたきを止め、ついにその体を中洲の上へと落としていったのだった。

●貪欲なるワニども
 ロック鳥を倒した後も、クロガネ、武器商人の2人は陸へと上がってきたアリゲーター2体を相手にし続けていた。
 一撃の威力だけなら、ロック鳥を上回る。
 クロガネはリジェネレートの効果で自らを自己再生しつつ、相手の強力な食らいつきや尻尾での薙ぎ払いを抑え続ける。
 後方の戦いが落ち着いたことは把握し、クロガネも僅かだが気を楽にしていた。
 対して、武器商人はやや厳しい状況だ。
 2人で分担はしていたが、アリゲーターの攻撃の威力は単体であればロック鳥よりも大きい。
 武器商人は攻撃を繰り返す敵に反撃を浴びせ、気力を奪いながら交戦を続けていたのだが、相手の食らいつきで喉元をかじられてしまう。
 彼は運命の力に頼りつつ、この場を持たせていたようだ。

 ただ、アリゲーター達はある程度腹を満たしており、その動きは幾分が鈍っているようにも思えた。
 なおも貪欲に餌を求める敵目掛け、アマリリスは不惑の心を目覚めさせ、ロック鳥と同様に焔の術式でワニを攻め立てる。
「よー、待たせたな。そんじゃ約束の美味い肉……そう、お前らだよ!」
 豚肉投擲時に呼びかけたミーナは相手に迫り、こちらのも死神の指先でそっと触れ、喉元を凍り付かせようとしていた。
 後方から、男性の珍獣ハンター達が弓と魔法で援護してくれる。
 さらに、公が接敵し、こちらもロック鳥と同様に斬撃を浴びせてアリゲーターに不運を呼び込んでいく。
 相手がうな垂れたのを確認し、アランが相棒へと呼びかける。
「アマリリス! 連携して一気にやるぞ! 俺に合わせろ!」
 相手目掛け、アランが相手の喉元へと戦神の大剣のレプリカを素早く突き刺して。
「命令すんな!! 言われなくてもやってやるわよ、働かざるもの食うべからずキーーック!!」
 呼びかけに応じた……というより、文句を言いながらも従ったアマリリスがその剣の柄を蹴りこみ、刃を首の上部へと貫通させた。
 これにはアリゲーターも耐えられず、潰れるようにして地面へと倒れてしまったのだった。

 そして、もう1体。
 こちらは、仲良しな親友同士で組み、対していた。
 前線で相手の気を引くセララが不死鳥を思わせる一撃で、アリゲーターも焼き払っていく。
 シラスがこちらも相手の頭を狙って、空間を圧縮させる。
 とはいえ、負担も大きくなっていたからか、彼はサポートへと回っていたようだ。
 その手前に出たヨハンが仲間を守るべく立ちはだかる。
 前線で構えながら、彼は『霊樹の大剣』で光の斬撃を十字に放つと、脳天を裂かれたアリゲーターは苦しそうに悶える。
 血を撒き散らし、そいつは尻尾を叩きつけてきた。
 元々、番いだったワニ達だ。伴侶が倒れたことで、そいつも自暴自棄になっていたのだろう。
 そこで、ロック鳥の卵を仲間のハンターに預けたスズも参戦する。
「さすがに、少し見苦しいかね」
 彼女はロングボウから矢を放ち、息子のつけた十字の傷の中央を射抜く。
 そこで、セティアが続けざまに宝剣……もとい、聖骸剣ミュルグレスで別れの文字を刻み込んでいく。
 頭へとさらに深手を負ったアリゲーターは血飛沫を上げ、僅かに河を赤く染めるようにしてその水辺に崩れ落ちていったのだった。

●皆で楽しくバーベキュー!
 無事、事なきを得て……。
 すでに、時刻は深夜に差し掛かっていたが、敵対する獣の姿も全てなくなったことで、イレギュラーズ達と珍獣ハンター達は食材の調理を始めていた。
「アラン、火を下さい、火。これ、焼きますから!」
 アマリリスは早速、ワニ肉を口から尻まで串刺しにしてアランへと種火を要求する。
 お腹を空かせていたアランも調理自体には大賛成だったのだが、問題はアマリリスのその状況。
「……っておい、アマリリス! 俺の剣を串代わりにすんな! 火をくださいって俺はライターか!?」
 毒づきながらも、アランは指先に灯した炎で、集めた薪を燃やし始める。アマリリスは火が怖いのか、アランの背中へと隠れていた。
 そんな2人に、シラスもアリゲーターの丸焼きをやってみたかったと手を貸す。
「こういうの憧れなかった?」
 アランの剣は最後まで使用されていたようだが、それはさておき。シラスもその剣を回転させつつ、ワニ肉を火で焙っていく。
 シラスはその傍らで、ロック鳥の肉を捌き始める。
 彼はここからが本番と腕を振るい、レバーやハツを使った焼き鳥をと肉を切り出す。
 多少足りない調味料や食器は、「こんなこともあろうかと!」と武器商人が取り出してくれ、シラスはセララと共に串を打って塩を振り、焼いていく。
「新鮮じゃないと味わえないはずだよ」
 内臓などはすぐに悪くなってしまう可能性も高い。
 だからこそ、こうした場所で手早く調理し、食べることができるのは貴重だ。
「……ロック鳥の卵って、そんなにおいしいのかな」
 興味を抱く公の視線の先では、スズが卵焼きを作っていた。
「本当はベーコンエッグにしたかったんだけどねえ」
 そのベーコン部分は倒したアリゲーターの腹の中。
 スズ達が自分達が食べるようにと残していた肉では足らず、卵焼きへと切り替わった。
 なお、味見させてもらった公。その卵の味は非常に濃厚な味だったようだ。
 ところで、豚肉を使用してしまったことをハンター達も咎めはしない。何せ、下手をこいたのは彼ら自身だと自認していたからだ。
 珍獣ハンターなる者、別段こういったことは初めてではないらしく、大人な対応を示して見せた。
 その代わりに手に入ったのは、ロック鳥とアリゲーターの肉。
 すっかり焼けたそれらの肉を、早速メンバー達は口にしていく。
「ロック鳥やアリゲーターもどんな味なんだろ」
 公はまず、ロック鳥の肉を口にしていく。
 串に刺さった鳥肉は焼き鳥といった具合。味も鶏肉に近くはあるが、思った以上に脂がのっており、なかなかに絶品だ。
 先ほど、シラスが作っていたレバーやハツ。
 これらは非常に歯ごたえがあり、コリコリして噛むほどに肉汁が溢れてその味を堪能することができる。
 差し出された武器商人は、非常にゆっくりとその味を噛みしめていたようだ。
 ミーナが黙々と口にしていたのは、丸焼きにしたアリゲーターの肉。
 ワニ肉料理というのは、とある世界の日本においては極めて珍しくはあるが、全く食べられないものではない。
 ステーキや唐揚げにして食べることができるのだが、この場のメンバーは敢えて丸焼きにチャレンジ。
 やや大きなその姿に火を通すのは苦慮していたようだったが、こんがりと焼けたその肉は意外にあっさりしているとのこと。
 やや肉質は固めだが、それだけに歯ごたえは十分。
「なるほど、珍獣も食べてみるものですね。食べ物に感謝しなくては」
 アマリリスはしっかりと自らの分をキープし、美味しそうに頬張る。
 戦いに調理と、お預けを喰らっていたアランはたらふく食ってやると仲間の元に座るが、アマリリスがキープしていた量を目にして、目くじらを立ててしまって。
「俺の分まで取ってんじゃねぇ! 食うな! お前は!」
「嗚呼、偉大なる我らが神よ。今日のめぐみに感謝します、アーメン」
 しかし、そんな相棒の姿に、アマリリスは事も無げに神へと祈りを捧げていた。
「こうした肉でバーべキューって、なかなかないもんね」
 公は珍しい機会に立ち敢えたことを喜び、それらの肉を口にしていた。
 卵料理や、邪魔なワニの尻尾を肉料理として作っていたスズがある程度調理を済ませ、自らもすっかり空いてしまったお腹を満たすべくそれらを食べようとすると。
「あのねスズさん、これみたことある?」
「ん、なんだい?」
 その料理をいただきつつ、セティアがスズへと差し出したのは、秘蔵のシャル=アルメリアのショタ本。
「この本のキャラ、ヨハンさんにすごい似てない?」
「さすがに母親に見せるもんじゃないねえ」
 笑うスズは、あられもない息子似のキャラに戸惑いを隠せなかった様子である。
「………………」
 ただ、当のヨハン本人はやや硬い表情。
 何かを言いだそうとして、なかなか言えずに肉を口にしている。そんな様子だった。
「己の成すべき事は、見つかったか」
「はい……」
 そんなクロガネの問いかけに、ヨハンは小さく頷いていた。

●見習い剣士の決断
 シラスもヨハンの様子が気になり、自身が焼いた肉を差し出して。
「ヨハン、焼けてるぜ。食えって」
 頷いて受け取ったヨハンはそこで、意を決して仲間達へと告げる。
「シラス君、セララちゃん、セティアちゃん。僕は君たちと一緒に戦えた事を誇りに思います」
 彼は苦楽を共にした親友達に、ローレットの仕事をこれから休むとこの場の面々へと明言した。
 名指しされた3人は、それぞれ違った反応を示す。
「ふーん、帰るんだ……」
 シラスはややそっけなくも、自らに言い聞かせるように繰り返す。
「ヨハン君、故郷に帰っちゃうの? せっかくお友達になれたのに……」
「ヨハンさん、帰る? もう遊べない? えもい」
 セララはもの悲しそうに、セティアも寂しそうにヨハンへと問い返す。
 ただ、ヨハンの決意はもう変わらないようだ。
 そのやりとりを、他のイレギュラーズメンバー、そして、珍獣ハンター達……スズも黙って見守る。
「ぶひ……、行っていいよ」
 しゅんとしながらも、セティアは普段からほっとけないと感じていた彼の決意を認めたようだ。
「鉄帝に来た時には、気軽に会いに来てほしいです」
「うん、離れてたって、ボクらは友達だよ」
 ヨハンの誘いに、セララは鉄帝に行ったら遊びに行くし、手紙で交流もできると返す。
「鉄帝の子供に君たちの戦い方を伝え、身を守れるよう訓練させるつもりです。もちろん僕も鍛えますよ」
 自分の道を志しながらも、いつか絶対君たちに追いつくとヨハンは胸を張る。
「鉄帝の子供達に、イレギュラーズの戦いを教えるっていうのも素敵な夢だしね」
 ヨハンのこれからの展望に、セララも大きく頷いて同意を示す。
「じゃあさ、あっちでスゲー偉くなってよ。鉄帝いったらあのヨハンのダチなんだぜって自慢できる位さ」
 シラスは約束だと手を差し出し、ヨハンとグータッチを交わす。
「また幻想に来て。私たちがやらなきゃいけないこと、ぜったいいっぱいあるから」
 セティアは若干後ろ髪に引かれる思いを口にするが、笑顔を浮かべるヨハンはどう思っただろうか。
「今日はお別れじゃ無い。ヨハン君が夢に向かって旅立つ日」
 セララは自らも手掛けた鳥肉やワニ肉の料理を、ヨハンへと差し出して。
「美味しいお料理を食べて、思い出に残る日にしよう!」
「そうですね……!」
 そのヨハンのそばへ、スズが歩み寄る。
 彼女はしばらく黙って、息子の主張を待つ。
「お母さん」
 ヨハンはその間に、言いたいことを纏め、母へと告げる。
「以前、友達と上手くやっているといいました、あれは嘘です」
 彼は、自らがローレットの天才、同輩にはついていけていないと感じていたことを吐露する。
 自分なりに努力した結果、無力感に苛まれた彼が選んだ選択なのだと。
「嘘ついたら駄目だよ、ヨハン」
 スズは彼の両肩をつかみ、後ろを振り返らせる。
 そこには、大切な親友達。そして、この依頼に駆け付けてくれたイレギュラーズの仲間達がいる。
 だが、ヨハンはその存在を感じるからこそ、認めてほしいと主張する。
「お母さん、鉄帝へ一緒に帰らせて下さい。家族でまた一緒に暮らしたいです……!」
 そして、いつか最愛の人、マナを紹介させてほしいと。
「……そうかい」
 スズは優しく、ヨハンの体を抱きとめて。
「自分の思う道を進むんだよ。皆にどんと胸を張れるような道をね」
 母の抱擁と優しさに包まれるヨハンは、何を思うのだろうか。
 ヨハンの門出に立ち会ったメンバー達はこれからの彼を思い、温かく送り出すのだった。

成否

成功

MVP

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは悩みましたが、大きな決意を抱いてこの依頼に参加し、助け出した母親へと自らの意思を示したヨハンさんへとまた、戻ってくることを願ってお送りします。
 ヨハンさんの悩み、すごく共感しております。
 努力しているのに、その上を行く人たち。自分はどうするべきなのかと、私も考えさせられました。
 今回は参加していただき、本当にありがとうございました!

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