PandoraPartyProject

シナリオ詳細

花粉撲滅運動

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●花粉の季節がやってきた

「へっくし!」
「ぶえっくしょい!」

 冬の雪が溶け始め、草花に春を感じ始めれば──混沌にも花粉が飛び始める。
 ある者は目を盛んに瞬かせ。ある者は鼻水をズビッと吸い込み。またある者はいがらっぽい喉に顔をしかめてみせた。
 そう、彼らは花粉症と呼ばれる病気に罹っている。
「もう我慢できねぇ」
「ぞゔだぞゔだ」
 毎年のことながら、しかし今年はとうとう我慢がきかなくなったらしい。住民たちは血走った目で──何名かは花粉症による充血だが──一様にある方向を睨みつけた。

 その先にあるのは、花粉を飛ばす木が密集した山である。

●ローレット
「……というわけで、山の木をぜーんぶなくしちゃいたいらしいのです」
 ぜーんぶ、のところで大きく両腕を広げた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 幻想のとある町では不幸なことに、町民全員が花粉症にかかっているのだそうだ。町の近くには山があり、花粉の塊とも言えるそれを『どうにかしてほしい』と領主には願い出ているのだが──。
「全く取り合ってもらえないそうなのです。動物やモンスターの生態が変わってしまうかも、という懸念みたいなのですが」
 当事者たちにとってそれらは二の次、最優先すべきは花粉を飛ばす木々たちなのである。
「すでにその話を聞きつけた領主さんが、山に警備を置いてるのです。全部で10人、そこそこの手練れみたいですが……きっと大丈夫なのです! 皆さんならコテンパンにできるはずなのですよ!」
 よろしくお願いします! とユリーカが出したのは依頼書と地図、そして──。
「「え??」」

(マッチと……)
(……火打ち石……?)

 ゴロゴロッと置かれたそれらにイレギュラーズの視線が釘付けになる。火を使うなんて話はどこにも出ていなかった、はずだ。
 ユリーカもまた一同の様子にキョトンとした表情を見せ、次いで「ああ!」と両手を合わせた。
「山を丸裸にするとしても、1本ずつ切り倒してたら時間がかかるのです。ここは延焼に気をつけつつ、まるっと燃やしちゃっていいと思います!」

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

●成功条件
 山の木を全滅させる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、敵の位置などいくつかの点は行ってみなければわかりません。

●貴族私兵(剣)×10
 領主である貴族の私兵。
 至近〜近接距離を中心に戦います。
 HPと物理攻撃力高め、反応はそこまででもありません。

3連撃:物至単。物理攻撃力を上げた攻撃を放ちます。

●貴族私兵(弓)×5
 領主である貴族の私兵。
 中距離〜超遠距離を中心に戦います。
 命中と回避が高め、防御技術はそこまででもありません。

乱れ打ち:物中範。素早く連射する範囲攻撃。

●ロケーション
 山です。時刻は昼、天候は良好。
 周囲には草原が広がっています。

●ご挨拶
 愁と申します。花粉なんてなくなってしまえ。
 どうしても山を燃やしたかったわけではないのですが、手っ取り早い方法がこれでした。木がなくなるなら火じゃなくても良いです。
 敵は単体での戦闘能力はさほどでもありません。しかし揃って山への侵入者を警戒しているため、不意打ちを狙うならそれなりの工夫が求められるでしょう。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 花粉撲滅運動完了
  • GM名
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年03月20日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
蒼の楔
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
クーア・ミューゼル(p3p003529)
めいど・あ・ふぁいあ
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
ジェック・アーロン(p3p004755)
鎮魂銃歌

リプレイ

●憎き花粉
「ヴぁー、混沌に来ても花粉とか何なのかなぁ? マスクの性能が駄目ダメなんで余計に酷いんだよ」
 ん"んっ。う"あー。
「今年は殊更酷いぜ。俺も鼻と喉をやられてなァ」
 ずるずる。
「むぐぐ……目が痒くなってきた気がするっす」
 ごしごしごし。

 花粉の魔の手はイレギュラーズたちへも容赦なく伸びていた。
 依頼場所へ近づくにつれ症状が顕著となった『Code187』梯・芒(p3p004532)と『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)、『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)。3人の様子を見ながら『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)は「大変だなァ」と他人事のように呟く。
「幸い、オレはまだ平気だからな。全部焼き尽くしてやんぜ、任せとけ!」
 山を前にニッと笑ってみせることほぎ。だが『まだ』である。今後発症しないとも限らないし、何より今から花粉をこれでもかと飛ばす山へ立ち入るのである。本日花粉症デビューも十分有り得るのだった。
「……山1つ燃やしてカイケツになるのかナ?」
 ことほぎの言葉に白髪の少女──『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)は首を傾げる。大気汚染対策のガスマスクは花粉症程度に屈しない。取れぬソレによって花粉の辛さを知ることはできないが、知らないというのはある意味幸せな事かもしれなかった。
「解決になるかわかりませんが……花粉症が流行る度に山を燃やされるこの国をどうにかした方が良いと思うのは、気にし過ぎッスかね……」
 どこか遠くを見るような目で山の方へ視線を向ける『繊麗たるホワイト・レド』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)。
 そう、花粉で山を燃やすという依頼は前もあった。確か1年前の今頃。馬鹿みたいな話だが本当なのだ。
(……そんな馬鹿みたいな依頼に2回も関わってる私も私の様な気がしますが……)
「マア、いいんじゃナイ? 依頼人の言葉に沿うダケですよット」
 肩を竦めたジェックは視界に入った『クリムゾンティアラー』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)へオヤ、と声を上げた。どことなく、顔色が良くないような。
「キミも花粉症ってヤツ?」
「そんな低レベルな症状が出ることはないわ。でも……そのね……」
 言葉を濁したロザリエル。確かに目が痒そうにしているわけでもなく、鼻を啜っているわけでもないが──花粉症に関しては何やら思う事があるらしい。
 ロザリエルは小さく頭を振り、山をきっと睨みつけた。皆と理由は異なれど、花粉をなくしてしまいたい気持ちは同じである。最早1秒だって止まっていたくない。
「さあ、さっさと燃やしましょ! さっさと!」


●先手必勝
 レイチェルとクローネの鳥が山の上空を旋回する。木々が密集している場所は私兵たちがいるのか定かでないが、それでも上空から新たな情報を手に入れる事はできる。
「私兵は見つからないっスね……あ、良く燃えそうな枯葉です」
「どこだ?」
 レイチェルがもらってきた地図を広げ、クローネが空から見た位置を指し示す。その傍らでことほぎは式神を召喚した。人の形をした式神にジェックが首を傾げる。
「ソレ、何にツカうのさ?」
「囮だよ」
 既に領主は、そして私兵たちはこの山に向かう住民の存在を知っている。武装をし、歯向かってくると考えているかもしれない。
 ──なら、いかにも無力な村人と遭遇したなら? 気を緩めるかもしれない。それが一瞬でもあれば大きな隙となる。
 レイチェルたちのファミリアーが索敵を行っている範囲に、とも考えてことほぎは「いや、」と小さく呟いた。山に入ってしまえば空を木々が覆う場所は少なくない。
「ある程度の人数は、侵入者を森に入る前に止めようと森の外側に置いていると思うわ」
「じゃー、そっちを行かせてオレたちは後を追っかけるか」
「外側を探すなら、尚更気づかれないよう気をつけなければなのです」
 真剣な面持ちで──しかし嬉しそうな様子は隠すこともなく──『こげねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)は皆より更に後ろを付いていくと告げた。
「まとまってナくて大丈夫カナ?」
「固まりすぎていると見つかるかもしれないのです。はぐれなければ問題ないと思うのですよ」
 クーアの答えにジェックが頷き、芒を始めとして草原での痕跡探しが始まった。
「巡回してるなら動き回った跡があると──……う"ぁあ」
 相変わらず花粉が酷いらしい。芒は草原を見下ろしながら顔を顰める。レッドも目をこらそうとしつつも、花粉によって充血した目が痒くてイマイチ集中がきかない。
「これが花粉症ならば、ボクも山焼きに賛成っす……花粉症、辛いっすね……」
「サッサと燃やせば楽になるヨ、多分」
 花粉をものともしないガスマスクガール、ジェックは草原に残された跡を探しながら聴覚にも意識を向けた。
 風。草擦れの音。木々のざわめき。鳥の羽ばたく音。──何者かの足音はまだ、ない。
(でも、燃やしたら逆に花粉広がらないかな?)
 ふと目を瞬かせた芒は、しかしすぐに「まあいっか」と痕跡探しに意識を戻す。
 ファミリアーと視覚を共有させていたレイチェルは山の状況に「お、」と小さく声を洩らした。
「反対側の麓は木が幾つか切られてるみてェだな」
「……本当ッスね」
 クローネのファミリアーもそちらへ行きつき、まばらとなった木──そして切り株を視界に収める。木材としてどこかへ持っていかれたのだろう。
 すれ違った鳥と一瞬視線が合い、そこで『レイチェルのファミリアーだ』と気が付く。視線さえなければ先程から見かける野鳥と同じ種類なので気が付かなかったかもしれない。野鳥に詳しい者でもいない限り、私兵たちも気付く事は無いだろう。
「これかしら?」
 ロザリエルの声に一同は揃って彼女を振り返った。不自然に折れた草を見て芒が頷く。
「山に沿ってるから、巡回してるみたいなんだよ」
「よし、追いかけようぜ」
 ことほぎの式神が山沿いに動き、イレギュラーズたちは木々の影に潜みながらそれを追いかける。更に後方ではクーアが仲間たちの動きで敵の有無を確認する。
 その動きが変わるのに、さほどの時間は要さなかった。木々から飛び出していく影。銃声と変化した仲間の咆哮。クーアも仲間たちの元へ、敵の意表を突くべく駆け出す。
(早く、美しい炎で包むのです)
 今、皆を助けるために炎が望まれている。この山を丸ごと焼き、美しい景色を作り出す炎が。
 木を滅すると生態系が乱れるという正論。同胞とも言うべき獣たちが巻き込まれて滅する可能性。それらも炎の前には些末事なのだ。
 敵陣へ飛び込めば剣を持った男が2人と、弓を持った男が1人。クーアはいかにも不調を抱えた剣持ちの男へ肉薄して焔舞を放つ。──けれども、その視線にクーアは留まらない。
 それは既に放たれていた無痛の呪い。どうして? なんて問いを持たせずに、彼らの視線はただ1人へ向けられる。冷静になればその異常性に気付けたかもしれないが、呪いが解けるまで気づくことはないだろう。
 茨槍、火炎瓶、銃弾などを受けてなお刃を向けてくる兵士たち。ことほぎは防御姿勢を崩さずに彼らへ呪詛を撃ちこみ、時に治癒符で自らを癒す。
(オレだけじゃ火力に欠けるからなァ)
 こういう時は適材適所。ことほぎがすべきは火力に特化した仲間が心置きなく攻撃できるよう、引き付け、癒すことである。
 不意に弓を持った男のこめかみから赤の華が咲いた。倒れた男の魂は白き死神が掻っ攫っていったのだ。
「ヘッドショット! ……ナーンてね」
 死神の使い手──ジェックは小さく呟きながら他の敵へ視線を送る。もう間もなく決着がつきそうだ。
 クローネの放った氷の鎖が兵へ絡みつく。しなやかな銀狼となったレイチェルの咆哮が衝撃波となって周囲の木共々、兵士を飲みこんだ。
 それでも負けまいと踏ん張るその姿勢は天晴であったが、多勢に無勢。1人はレッドの投げた石に昏倒し、もう1人はロザリエルの哀れな獲物となる。足がはじけ飛び、戦闘不能となった男の傍で芒は小さく笑みを浮かべた。
 ──彼女にとって、最後の一押しさえあれば十分だ。

『──私たちの請け負った依頼内容に、兵の生死は関わってないッスからね。受け答え1つでこの先が変わるッスよ?』
 クローネの言葉に残された兵は息を呑んだようだった。うろたえた視線がこと切れた仲間へ向けられ、その瞳は諦めたように閉じられる。
 兵士の口から言葉が零れ落ちた。この山の地理、他の私兵の場所と人数、そして巡回ルート。イレギュラーズたちは生き残った兵士を縛って転がし、聞き出した情報と仲間のファミリアーによる索敵を元に今なお巡回している他の私兵たちへ奇襲攻撃をしかける。
 そして──。
「これで9人目……残りの6人は固まってるって言ってたっすね」
「そうッス。正確な場所まではわからないって言ってましたけど……」
 石を投げて兵士を気絶させ、クローネを振り返ったレッド。巡回はわかり易かったが、山の中となるとそうもいかない。ファミリアーによる索敵にも引っかからないところをみると、木々の深い場所にいるのだろう。
「ボヤ騒ぎでもオこそうか」
「ええ。警備である以上、無視はできないでしょうし」
 ジェックの言葉にロザリエルが頷く。火は任せて欲しいっす、とレッドはたいまつを出した。木の根元へ火をかざすと草がメラメラと舞い、木の表皮を滑って黒い煙を出す。乾いた木材ではないから燃えにくいだろうが、煙さえ出てしまえばこちらのものだ。
「よし、隠れるぜ」
 レイチェルの言葉に一同は木々や草むらへその身を潜ませ、兵士の訪れを待った。
 空へ煙が立ち上って暫し、ジェックが不意に山の奥を見る。
「……キたみたいだね」
 その耳が捉えたのは、地面に落ちた小枝が踏まれて折れた音。何度かその音を響かせ、それらがこちらへ慌ただしくやってくる。
「──おい、ここだ!」
「くそっ巡回は何をやってる!?」
 たどり着いた兵士は6人。ユリーカの情報や兵士の言葉に相違ない。気配を消していたジェックがライフルを構え、兵士の1人がはっと振り向くと同時にレッドが背後からフェアウェルレターを見舞う。
「敵だ!」
「この辺の人間じゃないぞ、気をつけろ!」
 剣や弓が構えられながらも、その言葉は僅か遅かっただろうか。ことほぎに数人が注意を持っていかれ、しかし数名はその呪縛からどうにか逃れる。だが、さらに降りかかるのは別の呪い。幻覚とも呼べるもの。狂心象に足掻きながらも飛び込んできたクーアへ蹴りをくらわされ、正常な兵士たちの意識は無防備とも言うべき彼女へ向かう。
 そしてことほぎへ引きつけられた兵士が剣を振り下ろすと同時、芒はその懐へと突進した。急所を打つか、それとも失敗するかという賭けのようなものを秘めた突撃。運の女神が微笑んだのは──芒の方だった。
「がっ」
 血塗られた道路標識が弓を持った兵士に刺さる勢いでぶつかる。蹲った兵士はまだ戦えるようだが、決して楽観的に見られないダメージだろう。
「このメイドと黒髪の女からだ!」
 芒が敵の頭数を減らしたいと思うように、相手も防御の薄い者を狙う。芒はその瞬発力と移動力を生かして遥か後方へと下がり、必然的に攻撃の手はクーアへ向かった。
 矢が刺さり、剣がその柔肌を傷つける。ことほぎの回復支援を受けながらも、あっという間に満身創痍となったクーアは──されど、こんなところで倒れるわけにはいかなかった。
 これから放つ炎は、クーアの目にかなうような美しい紅蓮かもしれない。それはぬるい炎では飽き足らない、彼女の願望だ。
 まだ倒れない──その思いをパンドラが叶え、クーアへその『運命』を覆す力を与える。同時に敵の懐へと潜り込んだロザリエルが旋風を巻き起こした。
「ささっと終わらせてちゃっちゃと燃やしましょ!」
「そんなことさせるか!」
 ことほぎが簒奪する強欲でしのぎながらも引きつけている間に、そこから零れ落ちた兵士とイレギュラーズで乱戦状態に陥る。だが、──少しずつ、形勢は後者へと。
 クローネの生成した有毒ガスを含む霧は兵士たちへまとわりつき、周囲へも少しずつ霧散していく。植物も酸素を得ているのだと思いだし、クローネは『毒ガスも吸うだろうか』なんて考えて。
(よく考えれば山を燃やさなくても、木を潰してしまえばいいんッスよね。……これで上手く腐ってくれたりしませんかね……)
 視線をそれとなく巡らせてみるが、そうすぐに効果が出るものでもないのだろう。クローネは再び視線を敵へと向ける。
 ジェックの安定した射撃は敵の腕を貫通し、背後にあった木の枝をも折る。ガスマスクのレンズ越しに淡々とした視線が腕を押さえる敵を射抜いていた。相手は折れた枝を一瞬気にしたようだが──。
(ドウセ全部燃えるんだから、タショウ折れてたってカワんないよ)
 このあと山一帯は火の海となる。燃えてしまえば一緒だ。その時はもう遠くない。
 クーアがぼむで近場から遠くまでを纏めて燃やし、レッドの火炎瓶に併せてことほぎの焔式やレイチェルの放った紅蓮の焔が兵だけでなく木々も巻き込み始める。
「──さあ、地獄の業火よ。害悪を燃やす尽くす時だ」
 レイチェルの声に呼応するように血で描かれた陣から噴き出した焔が燃え盛る。兵士を襲い、木々を飲みこみ、花粉でさえも喰らってしまおうと言うように。
 火に飲み込まれ、或いは茨の槍に体を貫かれ破裂させられ──仲間が1人、また1人と減っていく様を見た兵士は悔しそうに顔を歪めた。
「……くそっ! 撤退だ!!」


●揺れる赤
 敵の影が見えなくなり、より一層周囲が煙臭くなってくる。ススだらけになりそうだ。
「さあ、もっと燃やすのです!」
 クーアが瞳を輝かせ、声高らかに告げる。彼女以外にも喜々とした表情を見せているのは、花粉症に苦しめられている面々。──と、ロザリエル。
「アンタ、花粉に恨みでもあンのか?」
 ずびっと鼻をすするレイチェルと問われ、ロザリエルは途端に顔を顰めてみせた。忌々し気に周囲の木々を見渡しながらその口が開かれる。
「あのねえ考えてもみなさいよ」
 美しく可憐な少女の姿を取ってはいるが、本来は人間によく似た"植物"である。同じ植物であるロザリエルからすれば──。
「ほんと! ないわ! 品がないわ! どんびくのだわ!」
 きっと眦を吊り上げるロザリエル。彼女には周囲に飛ぶ花粉すらも見えているのかもしれない。
 知能を持たぬ貧弱な一般植物だと思ってしまえばそれまで。だが、ロザリエルの世界ではこんな──ところかまわず花粉をばらまくような──雑ではしたない真似をする植物はいなかった。
「だからもう全部滅ぼしましょ! 私、燃やすための枯葉を集めてくるわ!」
 山の中へと踏み込んでいくロザリエル。その後姿を見ながらことほぎが私兵の傍から立ち上がった。
「そろそろオレらも動くか。山の天辺から下るカンジで着けてくのが効率良いか?」
「ボクは先に風上から火炎瓶ポイポイして、その逆側からも燃やそうと思ってるっす。逃げ道を確保できるなら天辺を燃やしてくれるのは有り難いっすよ」
 丁度風上の反対側はレイチェルたちが見つけてくれた切り株のある一帯だ。元より燃えるものが少ないなら延焼もし難いかもしれないが、レッドとしては念のため先に焼いておきたい。
「芒さんも風上に行くんだよ」
「アタシは周りの草だけカりに行こうカナ。火をツケる便利な機能はナイからね」
 ローレットで渡された火打石を使おうと思っていたジェック。しかし仲間たちには他の手段があるようだし、延焼防止に回ってしまおう。
「じゃ、散開するか。その方が効率も良いだろ」
 レイチェルの提案に否やを告げる者はなく、各々が自分の行きたい場所へ散らばった。

 ある者は炎を放ち。ある者は枯葉を火種にして。
 ところどころに赤が揺らめき始める中、『火事の友』に協力を仰いだクーアが一際派手に放火する。
「──美しいのです」
 今際の際と比べたら劣ってしまうかもしれないが、やはり美しい。しかし外からも見るのならそろそろ山を下りるべきだろう。
(美しい景色はあっという間になくなってしまうのです)
 踵を返したクーアは──しかし肩越しに振り返って、もう1度美しい焔を目に焼き付けたのだった。

成否

成功

MVP

梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。現実ではこうもいかないので花粉対策を万全にしていきたいですね。

 シリアルキラーの貴女へ。山を焼くくらい当然の仕打ちですよねわかります。具体的な探索の方法や自らの長所を活かしていく戦い方は敵に回したくないものです。今回のMVPをお贈り致します。

 それではまた、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。

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