PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キノコの山を焼け!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ある里の事情
「まずいなあ……」
 くたびれた藁葺き屋根の家に、男が数人ひざを突き合わせていた。
 一様に眉根を寄せて唸る男たちは一目で悩んでいると分かるが、深刻と言うよりはただただめんどくさそうな、そんな態度で言う。
「……ローレットに頼む?」
 そんな投げやりで適当な言葉に、「いいんじゃね」「じゃあそれで」とさらに無責任な同意の声が重なり、全員が安堵に頬を緩めるのであった。
 ただ一人、依頼しに行く役目を押し付けられた男だけ、一層険しい顔になったのだが。

●キノコが増えすぎた
「皆さん、アカオニフスベって知ってますか?」
 ギルド・ローレットに現れた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が小さなメモを手にそう言った。
 きょろきょろとユリーカが視線を巡らすと、「オニフスベなら」とその場にいたイレギュラーズの何人かが手を上げる。いわく、『爆発して胞子を撒き散らすキノコ』だと言う。
「なのですなのです! それなのです! 今回はそのオニフスベに似た、アカオニフスベの駆除をお願いしたいのです!」
 説明の手間が省けたとばかりに笑顔のユリーカがメモを掲げる。
 メモにはざっくりとアカオニフスベとやらの特徴が書き込まれていて、周囲のイレギュラーズが目を凝らして注目する。

 アカオニフスベ。
 食用にも用いられる巨大キノコ。
 非常に成長が早く、ある地方では食料兼流通品として重宝される。
 しかし成長し過ぎると毒を持ち、爆発して毒入り胞子をばら撒くという厄介者である。

「――と、言うわけなのです」
 メモの内容を読み上げたユリーカは笑顔のままだ。言外に「察するのです」と聞こえる。
 言われなくとも周囲の者は大体察したらしく、げんなりとしていた。
「依頼の目標は対象地域内の『赤いアカオニフスベ』の駆除なのです。まったく、ちゃんと管理して欲しいのです。お仕事しないとダメなのです」
 そう言って可愛らしく怒るユリーカ。そのユリーカが持ってきたメモを覗き込んでいた一人が同意しつつ、皮肉っぽく「ユリーカはお仕事ちゃんとするもんな」と言うと、彼女は満面の笑みで「もちろんなのです!」とピースサインを突き出した。

「ちゃんと報酬のキノコ払いを断固拒否したのです!」

 良い笑顔で胸を張る彼女を、イレギュラーズの拍手と溜息が包んだのだった。

GMコメント

節分シナリオです。(たぶん)
よろしくお願いします。

以下、依頼詳細です。
●依頼内容
・とある森に群生する『赤いアカオニフスベ』の駆除
・駆除する範囲はそれなりに広く、歩き回るだけで数時間かかります
・期間はおおよそ半日、日帰り依頼です
・駆除方法は一任されています
・『赤くないアカオニフスベ』を減らしすぎると怒られます

●アカオニフスベ
・最大で人間の頭くらいの大きさまで成長します
・最初は白いのですが、成長するにつれ赤くなり毒を持ちます
・ある程度成長したアカオニフスベは衝撃を与えると破裂します
・アカオニフスベの毒は吸い続けると死に至りますが、身体に残らないので逃げれば平気です
・毒を食べるとお腹を壊しますし食べ過ぎると死にます
・食用だけどあんまりおいしくないです
・毒はもっとおいしくないです

●アカオニフスベの戦闘データ
毒胞子:物至範:ぷしゅーっと毒の胞子を撒きます
毒爆発:物近範:ぼんっと毒の胞子を撒きます
殻飛散:物中ラ:破片が飛び散り、当たると結構痛いです
・ダメージを受けると直後に毒爆発と殻飛散を使い、死にます
・BS【炎】付きの攻撃を受けると焼け死にます。爆発しません
・松明とかでも燃やせます
・よく燃えます
・めっちゃよく燃えます
・毒の胞子はしばらく同じ場所に留まります

●とある里
 依頼主です。
 食料をアカオニフスベに頼っていますが管理がずさんです。
 やたらと勝手に急成長する物を好み、アカオニフスベの他、アオニガタケという竹も特産としており、一部ではタケノコの里として知られています。
 基本的に適当な……もとい、寛容な方が多く、依頼にも完璧を求めません。が、生活を脅かす様な事をすると流石に怒られて依頼失敗になります。

●その他
・現地まではめんどくさそうな顔した案内が付きます
・森の入り口に待機している案内役に駆除完了を伝えると依頼終了です
・後日、現地のチェックがされます
・余談ですが、森で火災が発生すると里の人達の本気を見学できます

  • キノコの山を焼け!完了
  • GM名天逆神(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月13日 21時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
棗 士郎(p3p003637)
 
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
アルテーラ・ルアルディ(p3p004563)
電波系魔法少女
ブローディア(p3p004657)
静寂望む蒼の牙

リプレイ

●とある里にて
「こいつは驚いたな……!」
 案内役の男がイレギュラーズを見て感嘆の声を上げた。
 そこにはロバと馬を引き連れ、完璧に準備を整えた八人が揃っていた。
「遠出で荷物いっぱい持ってこれなかったんだよ……。少しでも借りさせてくれると、嬉しいなっ!」
 加えて『電波系魔法少女』アルテーラ・ルアルディ(p3p004563)が純粋な瞳でじっと男を見ながら言うので、「これ以上に用意するつもりだったのか……!?」と恐怖さえ覚え始める。
「布と油、おがくず、スコップ、バケツ、たいまつ、双眼鏡……。この辺りを借りたいのだが」
 馬に積んでいた樽を下ろしながら『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が具体的に名前を上げると男は頷く。
「この季節は燃料は貴重なんだが……まあでも、あんた達マジメだしな。双眼鏡はないし、他は粗末だけどね。あと水は井戸から汲んでね」
「分かった。ありがとう」
 指示されて汰磨羈は水汲みに、アルテーラは道具を取りに向かう。
「アカオニフスベは幾らか採取しても構わないだろうか」
「いくらかなら良いよ。その樽いっぱいって言われると困るけどさ」
 ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)がロバを引きながら訊くと、色よい答えが返ってくる。道具の事といい、適当、もとい寛容なのは本当のようだ。
 しかしながら、交渉はここからが本番である。
「いくつか訊きたい事がある。まずはノルマについてだ。無論最高の仕事はするが、最低限の基準を教えてもらいたいな」
 と、『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)が持ち前の交渉術からなる話術で問いかける。
「あと大まかなキノコの位置等分かれば教えてもらえないかな?」
 続いて『梟の郵便屋さん』ニーニア・リーカー(p3p002058)が得意の人心掌握術で畳み掛けることを選択し、
「説明不足のように感じる。知ってることは教えてもらうぞ」
 合わせてラノールの背後から『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)が眼光をぎらつかせて睨みつける。
「今惜しみなく協力してくれれば、それだけ後程面倒な事態を避けられる。どうだろうか?」
「小さなことでもいいから教えてもらえないかな? 僕達できる限りのことはしたいんだ!」
「やる気がないのは別に構わんが、こちらも仕事で来ている。通すべき筋は通してもらいたいのだが」
 詰め寄る三人。三者三様の話術と迫力に、男は泣きそうな顔になりながら有りっ丈の情報を吐き出したのだった。


●情報戦
「ここのキノコは不味いのか……」
 ラルフから文房具を借り受けた『ショタジジイな魔術師』棗 士郎(p3p003637)が残念そうにつぶやきなからファミリア―のカラスを召喚する。それを一撫ですると、今度は盾になにやら魔術を掛け、浮き上がった盾にサーフィンの要領で乗った。
「飛行偵察部隊の出番だね!」
 ニーニアも自前の飛翼を羽ばたかせ、周囲を確認するように首を巡らせる。
 一行はアカオニフスベが群集しているという森の入り口に辿り着き、早速駆除活動へと取り掛かっていた。
 第一陣は偵察。アカオニフスベの密集地帯などの確認だ。
「情報誌の通り、だいぶ鬱蒼とした森だな」
 最新ニュースを調べながら『静寂望む蒼き牙』ブローディア(p3p004657)が言うと、その契約者である少女がこくりと頷く。 少女が手にした最新キノコ情報誌には、この時期のキノコの多くは落葉広葉樹林以外で見られると言う。
「つまり、どういうことだ?」
「湿気が多いから火を使っても延焼しにくいだろうが、木々が生い茂っているせいで空からの確認はしにくくなるだろう」
 ハロルドの問いにブローディアは「一長一短だな」と返す。
「あんたら、ホントマジメだねえ……」
 案内人の男は背負ってきた竹の籠をおろす。男はここで待機し、イレギュラーズは仕事が終わり次第ここに帰ってきて報告する事になっている。
「……意外としっかりしている、と言うべきか?」
 男は愚痴こそ多かったが、案内はきちんとこなしていた。おかげで道中に危険はなく、疲労も最小限で森へと辿り着いたのだ。
「俺らみたいな根っからの面倒臭がりはな、いっちばん面倒なことだけは避けるんだ。――たとえば、都市部で貴族に媚びつつ盗賊に怯える暮らしとか、な」
 男は笑う。彼等にとっては辺境での不便な暮らしのほうが面倒が少ないのだと。
 まったく、酷い皮肉であった。


●前哨戦
「地図が出来たぞ」
「私の方も。あ、私は頭の中に地図が出来てるから、先行するね」
 数十分後、帰還した士郎とニーニアが手書きの地図を仲間へ渡す。二人は連携しながら探索したため、短い時間でかなり精巧な地図が出来た。加えてニーニアはギフト『マッピング』の効果により、自分が担当した方面での探索ではまず迷わずに済むだろう。
「ふむ……やはり難所は中央部か」
 ラノールが地図を見て唸る。
 案内役の男から聞き出したノルマは、指定地域中央の広域密集地の駆除。最悪他はどうにかなるが、そこだけは一般人では死傷者が出かねないレベルだと言う。
「あの里には働き手が少なすぎる。駆除しようとして重傷でも負えばそれこそ面倒な事になりかねない、か」
 たかがキノコの駆除、しかしそれをイレギュラーズに頼む理由は有るようだ。
「キノコは中心部以外は点在って感じ。あと指定地域外周にも言ってた通り竹の柵があるよ」
「その外側は赤キノコだらけだった。天然の獣避けとして機能しているな」
「やっぱり説明不足だったな。ヘタしたら柵の外まで駆除しに行ってたかも知れねーぞ」
「そうだな。しかしこれで憂いは無い」
 事前情報と引き出した情報、第一陣の調査結果全て合わせて、情報は完全に揃ったと言っていいだろう。これで情報不足から不測の事態に陥るなんて事は無い。
「この辺のは待ってるあいだに全部ヤキ入れたよっ! もうこの辺に赤いアカオニフスベはないみたいっ!」
 アルテーラが元気よく報告する。『自然会話』を駆使してそこらの木々に話しかけてみた結果、歩き回ることのない彼ら植物からはアカオニフスベの居場所は聞き出せなかったが、周辺に取りこぼしがないかの確認はできるようだった。
 また、赤いアカオニフスベはそれはもうよく燃えたとのこと。
「さあ支度は終わった。そろそろ駆除を始めよう」
 ラルフが言い、皆が応えると、イレギュラーズは二班に分かれて森の中へと入って行った。


 イレギュラーズは半々に分かれて行動する事にしていた。
 かなりの密集地帯以外はわざわざ八人が固まって動くことではない。それは全く正しい判断だった。
「思った以上にすぐ燃えるな」
「やはり持ち込んだたいまつの方が使い勝手が良い」
「青竹にボロ布巻いて廃油染みこませたたいまつだからな」
「それでも無いよりはマシだよね」
 ブローディア、汰磨羈、ラノール、ニーニアの四名は第二班として動いていた。
 延焼対策と消火活動の徹底も伴って駆除は順調だった。キノコを見つけては枯れ枝や落ち葉を除けてから焼却処分に移る。
「方位磁石にも狂いはなし」
「白いキノコの被害も少ないな」
 収穫して持ち帰る準備もしていないし、したとしてもそれでは余計に時間が掛かる。それでも被害は最小限。まったくもって完璧な仕事だった。
 が、
「っ!?」
 ギィン!と甲高い音を立ててブローディアが何かを弾く。
 弾いてから気付く、それがアカオニフスベの破片だと。
「いつの間に……?」
 すぐにブローディアの異変に気付いた三人も周囲を警戒し、その破片がやや遠方にあるアカオニフスベが爆発したものだと悟った。
 しかしながらそれはこれから向かう先に有り、当然誰も手出しはしていない。それがなぜ爆発したかと言うと――

「――成長だ」

 汰磨羈が言う。
 それを聞いて、皆が納得する。
「そっか。成長しきったら衝撃を与えなくても爆発するんだっけ?」
 ニーニアがポンと手を打つ。
「もともと爆発して胞子をばら撒く、というものだったな。当たり前過ぎて逆に対策していなかった」
「地雷にして時限爆弾か。悠長に作業をしていると毒に呑まれそうだ」
 ラノールとグローディアも唸るが、しかし完璧な対処が出来るものでもない。
「とにかく、作業速度を上げるしかない。それと周囲の警戒を」
 周到な作戦をもってしても絶対に安全とはいかないようだ。
 四人は今一度気を引き締め、より慎重に作業に当たることにした。


「油断大敵だったな」
 と、ラルフが身体に付いた毒胞子を払いながら言う。
「無事か?」
「死んだかと思ったぞ」
 空から探索していた士郎と『ハイセンス』を駆使してキノコを探していたハロルドがラルフに近寄って来る。毒胞子は大分散ったが、周囲は飛び散った破片でボロボロになっていた。
 こちらは第一班。先程ラルフが自然爆発したアカオニフスベに毒と破片を浴びせられたところである。
「と言うか何で赤い奴を採取しようとしてんだ?」
「興味があってな……」
 心配する二人をよそに、いっそう興味を深めたラルフが笑う。「ところで、多少の毒なら効果があるみたいだ」と二人へ布を配り、いざという時は口元に当てるように促した。
「少しずつ胞子を噴き出す物も多いな。近付く時は注意しなければ」
「そうゆう時は私が大活躍するねっ!」
 胸を張ってアルテーラが宣言する。彼女が使う『リトルフラワー』は噴き出す胞子の範囲外からキノコを燃やせる。爆発しない限り安全圏から確実に処理できるのだった。
「頼りにしてるぜ。ああ、次はあっちだな」
「任せてっ!」
 ハロルドの言葉に、張った胸をドンと叩いて走っていく。
 その時、空へと戻っていった士郎が遠くに煙が上がっているのを見付けた。
「のろしだ」
 第二班のブローディアが上げた合図だ。
 どうやら向こうは終わったらしい。
「最後の大仕事の前に、こっちも他は片付けておかないとな」


●最終戦
 状況は最悪。
 成長の早さから食糧難に喘ぐ冬場の救世主ともなるアカオニフスベだが、しかし成長が早すぎるが故にたった数日で死地を作りだしてしまう。
 今回依頼された最低限のノルマにして最大の障害も、そんな死地へ飛び込めと言うものだ。
「いやはや。これは、うんざりする量だな」
 汰磨羈が呟く。
 おおよそ前方視界の全てがアカオニフスベで埋め尽くされていた。
 断続的にそこら中のアカオニフスベが胞子を噴き出し、濃霧に似た毒煙は晴れないどころが少しずつ範囲を広げていた。
 何よりも恐ろしいのは、可能性は論じていた『アカオニフスベの連鎖爆発』だ。
 指定地域の中央部の中心地では、それが起こっている。微かに空気を揺らす爆発音。立ち昇る毒煙。爆発したアカオニフスベの破片が別のアカオニフスベにぶつかることで連鎖的に爆発を引き起こしている。
 ニーニアとラノールが息を呑む。しかし全域を燃やせば山火事は必至。面倒だろうと危険だろうと、これまで通り慎重に端から焼いて消して進むしかない。
 そこにラルフ達第一班が合流し、続いてブローディアが合流した。
「支度は終えた。陣地構築、完了だ」
 里から借りていたスコップをブローディアの契約者が地面に突き立てもたれかかる。用意したのは毒・破片避けの溝や土塁。延焼に繋がる様なものも既に撤去されている。
「とは言え、それは外周部のみ。ここから先は進みながら構築するしかない」
 イレギュラーズが頷き合う。
 作戦も準備も万全を期した。ならばあとは、挑むのみ!

「よし、やるぞ!」

 ラノールの言葉で一斉に行動を開始する。
「前線は任せろ!」
「我々も前へ出よう」
「サーチ! アンド! デストロイ!」
 骸の壁を生み出したブローディアと持ち前の生存力を盾にしたハロルドが最前線を務め、多少の毒などものともせずに突き進む。その少し後ろから続くアルテーラは二人の影から攻撃を仕掛ける。
 先陣を切った三人が次々と火を放つと、その後ろに続くラノールが焼け死に潰れたキノコに水や砂を掛け消火していく。更に広域で密集しているものには里で貰ったおがくずをばら撒いた。
「よし、準備は出来た! 汰磨羈殿!」
「承知した!」
 ラノールから合図が飛べば、距離をあけた汰磨羈が手製の火矢を撒かれたおがくずに向かって射掛ける。素人細工の上に材料は粗悪品、武器としては効果が無いが、しかし条件さえ揃えば放たれた火矢は一面を焼き尽くす。
 ともすれば延焼し山火事を起こしそうな勢いで炎が上がるが、しかしそれも既に対策されている。
 士郎とニーニアはバケツを手に飛びあがり、爆発の範囲外から泥水を撒いて延焼範囲を区切っていた。汰磨羈の火矢で燃え上がるのは士郎とニーニアが区切り、ラノールがおがくずを撒いた範囲のみだ。
 降下して来たニーニアが奏でるバラードに後押しされ、ハロルドがアカオニフスベを燃やしては踏み潰す。アルテーラも次々と火を点けて回り、キノコがしぼみ次第ラノールは砂を掛けて消火していく。
「あいたっ!?」
 遠方から飛んでくる破片に打たれてアルテーラが呻けばブローディアかその前に立ち壁となる。
「盾も長くはもたないな」
 呼び出した骸の盾は毒や破片を防ぎはするが、一分程度で土へと還る。APもHPも有限だ。
「中毒が出れば退いてくれ。私が診よう」
 後方、取りこぼしを潰しながら進むラルフは、持ち前の医療知識と持ち込んだ救急箱によって応急処置を施せる。長い戦いとなれば応急であろうと有無の差は雲泥の差。その頼もしさに後押しされ、前衛組は一層果敢に前進を続けた。
「良いペースだ! 確実に減って来てるぞ!」
 ファミリア―を通じて残りのアカオニフスベを確認しながら士郎は叫ぶ。泥を撒き、時折降下し火を点しながら。
 充満する毒煙も炎と熱風に煽られて散っていく。
 土塁を重ねて破片を阻み、泥を撒いて延焼を防ぎ、火矢を放って一掃し、快進撃は続く。
 毒を吸い込み過ぎた者は時折下がってラルフの治療を受け、新鮮な空気の中で深呼吸してからまた駆除を再開する。
 また、残せる限りの白いアカオニフスベは残していた。遠方からの攻撃で連鎖爆発を狙えばより簡単に駆除できただろうが、その場合は無害なアカオニフスベまで巻き添えでグシャグシャになっていただろう。
「これで最後だ!」
 士郎が叫ぶ。
 最後の一群、アカオニフスベの密集地。
 森への侵入から数時間を掛けて続けた戦いはいよいよ最後を迎えていた。
 その最後の時を前に、全員が退く。いや、汰磨羈だけが一歩前に出た。
 そして、弓を引く。
 番えた矢は火矢ではない。狙うのもおがくずではない。
「終わりだ」
 放たれた矢は密集地のど真ん中にあるアカオニフスベへと直撃し、爆発を引き起こす。
 爆発は爆発を、更なる爆発を、更に更なる爆発を―――!

 空気が震え、破片と毒煙が撒き散らされ、
 そうして、キノコの山にキノコ雲が上がったのだった。


●面倒臭がりの本音
「仕事が終わった」
 ラノールは案内役の男へとそう報告した。
 くたびれてはいたが、戻ってきた全員は酷い怪我もなく、背後の森も燃えてはいない。それを見た男が、「おつかれさん」と返して笑った。
「最後の一群は指定通り爆発させたよっ!」
「あれで数日中にまたキノコが生えて来ると思うぜ」
「そりゃ助かるよ!」
「ちゃんと管理しないと、何度も同じことになっちゃうから気を付けないとダメだよ?」
「あー。うん。もちろんさ!」
「やれやれ。今度は、もう少し早く呼んで貰いたい所だな?」
「ああ! そん時はよろしくね!」
 イレギュラーズの報告や注意にニコニコと応える男。そんな様子に、一同は皆脱力する。
「そういえば一人足りなくない?」
「心配ない」
 作戦終了後、嬉々として指定地域外のキノコに挑み掛かった男が居た。その結果はまあ、大事故にはなっていないだろう。
 男は「そんならいーけど」と特に踏み込まずに流す。この男も相当である。
「ところで、何を作っているんだ?」
 士郎が気を引かれたのは、男が掻き混ぜていた鍋の中身だ。そう言えば荷物を持参していたが、まさか料理を作っているとは思わなかった。
 言われてみると気になるもので、他の面々も寄ってくる。
「これはね、アカオニフスベの味噌汁。うちの里の名物さ」
「ほう! 美味いのか!?」
「いいや? おいしくないよ?」
「ええ……」
「おいしくないけど、まずくもないよ」
 がっかりする士郎に、男が言う。
「面倒臭がりな俺らが、あんな面倒なキノコを好き好んで採ってるのはさ、この美味くも不味くもないけど胸と腹を満たしてくれる味噌汁があるからさ」
「ほう……」
 なるほどと言う士郎に男は椀に注いだ味噌汁を渡す。真っ白な湯気をモコモコと立てているそれは、確かにおいしくはなかったが、不思議と胸に染みる味だった。
「さ、他の人もどうぞー。面倒事が片付いたんだ、あとはたっぷり休んでも罰は当たらないだろ」
 言いながら男が味噌汁を配る。
 思いがけない労いに、おいしくない味噌汁に、僅かばかりの気力が回復するのを感じる。
「なんだ、面倒臭がりの集まった里なんてろくでもないと思ったが、良いとこあるな」
 味噌汁を啜りながらハロルドが言う。
「悪いとこじゃないよ、なにせ面倒事が無いからね」
 ろくでもないという部分を否定もせずに男も返す。
 良かったらまた来てくれよ、と、付け足して言う。

「まあ、たまにキノコ派とタケノコ派で戦争が起きるけど、それ以外は平和なもんさ」

 はははと笑う男の目が、妙に笑っていないのを見てイレギュラーズは思う。
 ああ、やっぱりあるんだ、その戦争……と。
 遠くで立ち昇る毒胞子のキノコ雲を見上げて、ただ静かに味噌汁を飲みながら。



成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

キノコ狩りお疲れ様でした!

情報収集、事前準備、連携と作戦、どれも素晴らしいものでした!
おかげで里でも皆さんの活躍は語り継がれる事かと思います!
それが新たな面倒事を押し付けられる原因にならないとは限りませんが……

とかくこれにてアカオニフスベ事件は解決となります。
アオニガタケ事件はまたいずれ?

それではまた、ご縁が有りましたら!

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