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シナリオ詳細

アンダー・ザ・ローズ~恐怖の節

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とある画家の恐怖
 私は描き続けていた。
 人が見れば目を背けるような、恐怖の絵を。見れば悲鳴をあげるような、おぞましい絵を。
 けれど、足りない。足りない、足りない、足りない!
 何かが足りないのだ、何かがこの絵には足りない。
 いや、この絵そのものが間違っているのかもしれない。でも、何を描けばいい?
 ――判らない。私は、何を描けば良いのだろう……

 ……そうだ。
 知り合いの画家が、ローレットにいる。
 経験豊富な彼らなら、或いは私の知らない“何か”を提示してくれるかも知れない。
 この懊悩は、誰かの手を借りなければ解決出来ないものだ。
 そして彼らならきっと、最高の恐怖を私に描かせてくれる……!


●ローレットにて
「僕には友人がいてね」
 一枚のキャンバスを差し出す、グレモリー・グレモリー(p3n000074)。そこには黒と紫で、迷彩模様が描かれていた。これは何だろうか。
「名前はニナ。恐怖を描く画家だ」
 これも彼女の作品、とグレモリーも覗き込む。うん、よく判らないね、と顔を戻した。友人の絵にそんな感想でよいのだろうか。
「彼女は今、大大大…スランプ中でね。猫の手ならぬローレットの手も借りたい、と僕を通じて依頼してきた。君たちには、ニナに“恐怖”を語って欲しい」
 一人で絵をかいてたら、こういう事もままあるんだ。と彼は言う。他人の意見を取り入れて初めて、納得できる絵が完成することがあるのだと。
「ニナは……これは秘密だが、ちょっとした魔法が使える。そういう友人は何人かいる。ニナの使える魔法は、筆先を向けた人間に“恐怖”を見せるというものだ。そしてそれが何なのか、知覚を共有することが出来る。つまり、君たちを通して君たちの恐怖を体験するわけだね」
 その魔法にかかって恐怖を見ればいい。君たちは戦っても逃げても隠れても構わない、とグレモリーは続ける。
「どんな行動をとろうとも、それらすべてがニナにとっては新鮮な刺激になるはずだし、君たちの肉体には傷はつかない。――どうだろう。行ってくれるだろうか」
 グレモリーは小首を傾げた。君は行かないのか? と誰かが問うと、行かない、と頭を振る。
「だって、多分そこには折れた筆が落ちている。僕はそれを見たくない」
 なんとまあ、勝手な話である。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 グレモリーの友人がネタ切れを起こしました。
 画家にはよくある事ですが、助けてあげてください。

●目的
 奇怪画家「ニナ」を助けよう

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●立地
 あまり広くはない一戸建ての借家です。
 いたるところに絵や画具が置かれています。

●エネミー
 ニナの作り出す幻影

 真っ暗闇の中に、貴方が思い描いた「恐怖」が現れます。
 貴方は逃げても良いし、戦っても良い。隠れてもうずくまっても良い。
 一定時間が経つと恐怖は消え去り、元の景色が戻ってきます。


 基本的に恐怖シーンは個別描写です。
 また、アドリブ描写が多めの傾向がありますので、プレイング通りに記載して欲しい!という方も明記をお願い致します。
 では、いってらっしゃい。

  • アンダー・ザ・ローズ~恐怖の節完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年02月19日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
赤羽・大地(p3p004151)
ホンノムシ
カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)
海淵の呼び声
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)
黒鴉の花姫
シャラ・シュヴァイツァー(p3p006981)
深い緑の蒼

リプレイ

●恐怖は見える処から
 かくして、グレモリーの案内で恐怖画家の手伝いをする事になったイレギュラーズ。彼が書いた判りやすい(簡素すぎるともいう)地図を頼りに、薄暗い路地を行く。
「ねぇ? こっちで本当に合っているのかしらぁ?」
「ええ、間違いございません。あともう少しかかる予定ではありますが」
 『宵越しのパンドラは持たない』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が周囲を見回しながら進む一方で、『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)は何のこともなくスタスタと歩む。
「それにしても、恐怖を教えて……か。似たような仕事を前にやったけど、この手のは本当」
「ロクなもんじゃねェ、ああ、俺もそう思う。でも恐怖を絵にするってのはちょっと興味があるかな」
「あんたもなかなか、悪趣味だ」
 『D1』赤羽・大地(p3p004151)の呟きに、『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)が肩を竦めた。ニナに関して思うところは様々あるようだ。
「私は……自分が何を怖がっているのか判らないから、どきどきする、かな」
 『黒鴉の花姫』アイリス・アベリア・ソードゥサロモン(p3p006749)は興味を瞳に宿して輝かせながら、空を見た。あ、カラスだ。たくさんいる。
「それには同意だ。自分の知らない恐怖というものもあるかも知れないからな? 己を知るには良い機会なんじゃないかな」
 『海淵の呼び声』カタラァナ=コン=モスカ(p3p004390)が笑う。だがその口ぶりは、己の恐怖を既に理解しているかのようだ。
 イレギュラーズは薄暗い路地を進んでいく。やがて、ぽつりと一つだけ街灯が点る道に出た。整備されていない剥がれかけた石畳。屋根に群がるカラスの群れ。
「すごい雰囲気デスねぇ……」
 『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)が周囲を見回す。けれど、ある一軒を除いては、明かりの一つもついていなかった。そう、その一軒こそが。
「此処が、ニナさんのお家……」
 蒼い瞳を瞬かせ、『深い緑の蒼』シャラ・シュヴァイツァー(p3p006981)が呟いた。
 そう、此処が恐怖画家ニナの住居である。

「もしもしコンニチハ」
 エリザベスがドアの持ち手で扉を叩く。ごんごん、と重い音がして、――暫しの沈黙。
「……。」
「出て来ないデスね?」
「ま、まさか中で倒れていたりとか……」
「いえ、これはアレよぉ。画家によくある居留守。つまり……」
「成る程? アレか」
 何人かが頷いているが、大地やアイリスは首を傾げている。
「ええっ、なんデス!? なんデスか!? ご病気デスか!?」
「いヤ、そんな深刻なモノなら行動に移しているだろウ。だがしなイ、というコトは」

「……家賃の取り立てじゃないんですね?」

「ひいええええ!?」
 シャラが文字通り飛び上がり、ペッカートの後ろにぺったりくっついた。オイオイ、俺は壁じゃねェぞ。剥がそうとするけれど、こういう時の女子の腕力は侮れなかったりする。
 気付けば木扉が少しだけ開いて、中からぼさぼさの金髪をした女が一同を見ていた。
「家賃の取り立てじゃないなら何……? 葬式の案内にしては大勢ね」
「おや? 話が行ってないのか。僕たちはグレモ」
「グレモリー!!!!」
 カタラァナが口を開き説明しようとした刹那、ニナが大声を出して扉を開いた。絵具の匂いがふわりと立ち込める。エプロンドレスはその通り絵具で汚れ、片手にパレットを持ったニナは、打って変わって一同を見回した。
「グレモリー! の! 紹介!? で! 来てくれたのね!?」
「え、えぇ~。なんでも、ニナさんのお手伝いをして欲しいってぇ」
「ああ~! 天の助けだわ! あいつ本当にローレットにいたのね……! どうぞどうぞ、パンとスープとコーヒーしかないけれど入って! 説明は中でするわ、早く入らないと大家が」
「大家?」
「……。と、とにかく入って! どうぞ!」

「ごほん。というわけで、私がニナ・トッカータ。恐怖を主に描いている画家よ。話は聞いているわよね?」
 金色の癖っ毛をある程度整えて、ニナは言う。椅子が足りないので、一同は立ったままだ。
 周囲にはキャンパスやイーゼルがたくさん。書きかけのものや、大きくバッテンがつけられたものもある。
「ええ。貴方の“魔法”で恐怖を見て欲しいと」
「そう。私は昔、魔法使いのもとにいたことがあるの。画家仲間数人と一緒にね。これからかけるのは、その時に覚えた魔法よ。貴方達は己の中にある“恐怖”を見る。私もその知覚を共有して、見させて貰う。それだけ」
「痛みはないのか?」
 カタラァナが片手を挙げる。ニナは大きく頷いて。
「ええ、痛みはないわ。幻覚の中で戦っても、転んでも。周りから見れば、眠っているように見えるでしょう」
「え。じゃあ、どんなに怖くてもギブアップできないの?」
「いいえ。ある程度時間が経ったら私が現実に引き戻します。危険度が高い場合も同様に」
「妙に便利な魔法なんだナ?」
「そうかしら。ただ、これだけしか覚えられなかったけどね」
 肩を竦めるニナ。あの時の仲間はどうしているかしらね……と、少し遠い目をして。最後に質問だ、とペッカートが。
「暇な間は絵を見ても?」
「えっ!? え、い、良いけど……最近スランプだったから、ロクな絵はないわよ?」
「構わねェよ。スランプの様子を見るのも楽しいからな」
「まあ、意地悪ね。あなたにはしっかりと魔法をかけてあげるわ。……じゃあ、始めるわね。ああ~、ネタが目の前にたくさん~!」
 わくわくしてきた~! と俄然やる気のニナに、一同は苦笑する。
 そうして一人ずつ呼ばれ、彼女の筆先に心を預ける事となったのだが――


●エリザベスの恐怖
 最初に選ばれたのはエリザベス。気付けば真っ暗な空間にいた。
 これは死ではない、と彼女は思う。彼女は死を恐れない。たとえ体に限界が来ようとも、情報のバックアップさえあれば別の素体にリカバリーが出来る。個体としての死は、彼女の恐れる処ではないのだ。
 では何が怖いのか。――彼女の目の前にあったのは……
「こ、これは……! これみよがしにライトアップされた台と謎のボタン! でございますね……恐ろしい……まさに押してくれとばかりに……!」
 彼女の恐怖は人とは異なる。というかもうなんかセンス自体が異なっている。鉄板だと思った話が滑った時とか、大事なプリンが忽然と消えてたとか、めちゃ美味そうなラーメンやん!と思ったら麺がのびのびだったりとか、そんなのが彼女は怖い。
 ……まんじゅうこわい、ではないが、怖いの意味をはき違えていないか?
 ともかく。そのボタンから遠ざかろうとするエリザベス。ああ、でもしかし、足はボタンへと近づいてしまうのだ……
 押したい、とても押したい……! 明らかに粉とか水とか降ってきそうなのに、それでも押さずにはいられない……!
「あぁぁ、これはいけません、いけませんわニナ様……! しかしポチっとな~!」
 悶絶しながらも手を伸ばすエリザベス。ボタンを押す硬い感触と、広がる閃光――


●大地の恐怖
 大地は逃げていた。背後を時折振り返り、攻撃を繰り返しながら。
 ちょき、ちょき。
 鋏が追いかけてくる。大地の身体を切り刻もうと追いかけてくる。
 あの日のことを思い出す。「俺」が殺された日のことを。菫のような三色の魔力が弾け、鋏を吹き飛ばす。けれどまた、追ってくる。
 思わず首周りを片手で隠す。怖い。今の俺なら無抵抗に切り刻まれる事だけはないはずだ。でも、ああ、刃物が傍を横切るのは今だって嫌なのに!
 ちょき、ちょき。
 やめろ、その音を立てるな。やめろ!
 ――後ろを振り返ろうとした瞬間、足が縺れて闇の中に転んだ。痛みはない。成る程、そこはニナの言った通りだと嘲笑い……誰かの足が、目の前にあるのが見えた。

 女がいタ。「俺」を消える寸前まで追い詰めた女。
「……ハハ」
 笑いが漏れる。大鋏を携えた女が、俺を見ていル。そんなもの人様に向けるなヨといったところデ、直りやしなイんだろウ。
 ゆっくりと立ち上がる。夢の中ではあるけれド、仕返ししなけりゃ気がすまなイ。
 かかってこないなら、コッチからいってやル。
 広がる閃光の中で、「俺」は――


●シャラの恐怖
 わたしの怖いもの。前は、深緑の外の世界が怖かった。何があるか判らない、木々の少ない世界が、怖かったんです。
 でも、パパとママと離れて――また会えなくなることが、今は一番怖い。

 目の前に、男性と女性の影が立っている。
「シャラ、寒くない?」
「シャラ、こっちにおいで」
 彼らに駆け寄り手を伸ばした彼女だけれど、砂の城のように儚く崩れてしまう。
 もう会えないの? わたしを置いて行っちゃうの? ――ううん、置いて行ったのはわたし。召喚という形で突然消えたのは、わたし……
 寂しくて、辛くて、胸が潰れそう。
 また会える? 会えるよね? きっと会えるって、わたし、信じてるから。信じたいから!
 ……追いかけるのは、もう終わり。そう、シャラは決めた。待っていよう。信じよう。心を強くもって信じていれば、きっと、パパとママにまた会える。
 幸せな時間が、また戻ってくるって――


●カタラァナの恐怖
 僕は街角にいた。楽器を持って、雑踏を見ている。
 此処を通りすがる人には、その人の人生があって。それらが連なって、営みとなっているんだろう。見ているだけの僕もまた、その一つ。
 でもね、そういう人々の営みを台無しにするのも、僕。

 ぼくの すきな きれいなものは
 くちゆく さんご くじらの むくろ
 うしなわれていく なにもかも♪

 済んだ水面に墨を落とすように、歌を歌う。いつか。いつかきっと、僕の欲望は、滅びを求めて大きく育って――でも、破裂する前に、出会っちゃったんだ。
 人の中で生きるという事にさ。この暮らしと引き換えてまで、絶望したいのか? って、思っちゃったんだ。

 ――おじさん。目の前からくるりと反転していなくなってしまったひと。
 大事なものを守ろうとしたんだろう。その結果、大事なものを捨ててしまったんだろう。
 僕は多分“そういうもの”が怖いんだ。

 ねえ、ニナさん。見てるんでしょ? ほら、一緒に近くで見ようよ。
 いつか喪われるものが、それを拒んで必死に生きる輝きを。
 喪われてしまう悲しみを――


●ペッカートの恐怖
 振り返った瞬間に見えたそれを吹き飛ばした。
「……なんだよ、退屈とか焦りが怖いってちゃんと言ったはずなのになァ」
『それは可哀想に。救ってあげるよ』
 脈絡もない。後ろにまた現れたそれ、今度は首を刎ね飛ばす。
 声を聞くだけで鳥肌が立つ。不快だ。嫌いだ。何一つ言い訳も聞きたくない。
『怖いのかい? 安心して』
『君の味方だよ。だから、救ってあげる』
 それは、カミサマのお人形ってやつだ。性懲りもなく表れたそれを、吹き飛ばす。
 壊す。
 壊す。
 壊す。
 これが俺の恐怖? これが? 俺はこれの屍で作った山の上に立っているのに?
『こちらにおいで。もう寂しくないよ』
 吐き気がする。壊されても壊されても、善意という名の鈍器で俺を殴りつけてくる。
 もういいだろ。なあ、いい加減にしろよ。俺は、
『さあ、私を受け入れて』
 どつ、と心臓部に走る衝撃。見下ろせば、突き刺さる剣。
『もう辛いことも、寂しい事もない。 ゆっくりお休み』

 これが俺の恐怖だってのか?
 ああそうかよ。……俺はな。全くこれっぽっちも理解できないあの思考が。
 あの執着が。
 あの存在全てが、怖いんだろうよ。


●美弥妃の恐怖
 其処には、何もなかった。
 光がなかった。音がなかった。誰もいなかった。
 美弥妃ははて、と周囲を見回して……恐怖さん? と呼んでみる。でも、何も応答はない。
「あの、……もう始まってるんデスかぁ?」
 答えはない。
「えっと……誰かぁ?」
 誰もいない。
 美弥妃は不安になった。どちらが夢で、どちらが本当なのか、判らなくなってきた。ニナに会うまでの薄暗い路地。カラスの群れ。今は何も聞こえないし、何も見えない。
「あの、」
「誰か……」
 返事はない。歩いたら何か見えるだろうかと、美弥妃は歩く。歩けど歩けど、誰もいない。なにもない。自分の両手すら、闇に紛れて消えそうだ。

 ねえ、ほら、いつもなら何故かバナナの皮があったりするはずデスよね? いつもなら不幸だ! って悲しくなるデスけど、今はいいんデス。出てきても、いいんデスよ?

 そんな願いも、届かない。
 美弥妃の周りには、何もない。
「………嫌デス」
「嫌デス、もう嫌デス……! 怖い、怖いデス! もう十分デスよね? 怖い思いしたから、魔法はとけマスよね? 独りぼっちは、何もないのは、嫌デス!」

 あらあら、泣き出してしまって。怖がらせすぎたわね。
 美弥妃の目の前、トンネルの終わりのように、光が差して――


●アイリスと宝石の恐怖
 私は何を怖いのか、今まで出会ったことがなかったから、わからなくて。
 どんなものなんだろうって、どきどきしてた。
 大きな怪物かな? 誰かが死んでしまうところ?
 でも、そのどれでも、なくて。
 狭い路地。“わたし”が、そこにいて。
「……あ」
 あれは、“わたし”。あれに捕まったら、私は、今の私じゃなくなってしまう。
 だから逃げた。さっきのような路地で、たくさん逃げた。隠れられるところを探して、物陰に座り込んで。何とかしなきゃ、って思ったのだけど。
 私は、死者の力を借りるアイリス。……そうじゃなかったら。胸の宝石(アベリア)に生かされただけの、無力な“わたし”。
 ……怖い。
 ひとりぼっちがこんなに怖いだなんて、思わなかった。そう思った瞬間、周りに暗闇が落ちてきて。
 閉じ込められた、と自覚した瞬間、すごくすごく怖くてたまらなくなった。
 違う、これは私の恐怖じゃない。私を生かしてくれる宝石の恐怖。そう判っているのに、でも、怖くてたまらなくて。
 呪術を、死を呼ぶ霧を、めくらめっぽうにばらまいた。誰も近付けないように。

 ――ねえ、アイリスって、そんな子だったの?

 はっとした。違う。私は、私は、こんな子じゃ……
 いやだ。たすけて。ねぇ、誰かたすけてよ。此処から出して! 家に帰りたい! ……でも、家に帰ったって、もう誰も……私に宝石をくれた子も、もういないんだ。
 私は怖い。私が変わってしまうのが、怖い。
 光が瞼を刺す。そうか、怖いって感情は、こんなに――


●アーリアの恐怖
 いつもの酒場で、女は酒を飲んでいる。今日はロックの気分なの、もう一杯頂ける? そう言ってグラスを傾ける女。身を覆うのは黒い靄。あら? あれは誰かしら?
 ううん、判るの。それは私。甘ったるいお酒の香りを纏って……惹かれてきた店員が、一瞬で、ばらり。「人の部品」になって落ちた。

 足りない。
 もっと。
 おいしい。

 そう言って、私は腕を拾う。血を酒に混ぜて、幸せそうに飲み干して、笑う。ああ、――あれは、反転した私。呼び声に抗えず、狂気に身を任せてしまった私。
 ありえない。拒み切って見せる。そう思っても、振り払えない不安。想像しては駄目……想像しては駄目、想像しては駄目! そう、自分に言い聞かせてきたのに!

 誰かがばらばらになっても、静かな酒場。私はまた、別の誰かを「部品」にする。酒に注いで、味わう。また誰かが寄ってきて……ばらばらになって……酔ってきて……
 その中に、見つけてしまった。大事な顔を、見知った顔を。

「    」くん。
「    」くん! 近付いては駄目、やめて、……やめて、やめてやめて、もうやめてぇ!!

 ――『これ以上は、危険ね』
 そんな声がして、閃光が私の目を焼いて――


●恐怖を記して
「「うわーん!!」」
 美弥妃とシャラは、泣きっぱなしだった。。アイリスもよくみれば涙ぐみ、他の者も、沈んだ表情でうつむいている。エリザベス以外は。
「あら、皆様浮かないお顔ですわね」
「だってぇ、あんなもの見せられたら……」
「もう何も言いたくねえ。無理。もーやだ」
「半分は予想していたが、予想以上にイヤだっタ」
 ぐったりとする大人たち。ニナはシャラや美弥妃、アイリスの涙を拭ってから、改めてごめんなさいと頭を下げた。
「で、でも! すごく良い恐怖だったわよ! みんなそれぞれ個性的で!」
「そーかよ……」
「いやあ、僕は色々知れて面白かったけどね。こんな機会はまたとない」
「あなたはちょっと特殊よね。色々と」
 カタラァナにいうニナ。カタラァナは特殊といわれてもニコニコしている。
「うーっ! 絵なら怖くないデス! 絵が出来たらリベンジマッチデスよぅ!」
「そうです! そういえばわたし、ニナさんに絵を教わりたいんです! お詫びに教えてください!」
「あら、そうなの? 絵ならいくらでも教えるけど……」
「ニナさん、出来れば明るい絵を教えてあげてねぇ?」
「そうですわ。若い娘が恐怖画だなんてそれこそ恐ろしゅうございます。何処ぞのカズオなら兎も角」
「はいはい。じゃあ取り敢えず一休み……大人の皆さんはコーヒーしかないけど、良いわね?」
 ニナがコーヒーを淹れに行く。
 奇怪画家が去った後、一同はお互いに顔を見合わせて……

「今日の事は、秘密という事で」
「賛成」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さんそれぞれ違った恐怖をお持ちで、とてもこちらとしても楽しく書く事が出来ました。
怖がる人、強がる人、戦う人。それぞれの立ち位置も色々でしたね。
ニナは皆さんを送り出した後、無事にスランプを抜け出せるでしょうか。ある意味、彼女自身の恐怖(スランプ)へ立ち向かうための依頼だったのかもしれませんね。
参加者様全員に、称号をお配りしております。ご確認ください。
ご参加ありがとうございました!

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