PandoraPartyProject

シナリオ詳細

依頼はローレットより出でる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ローレットにて
「……っくしゅん」
 冬がこんなに寒いものだとは知らなかった。
 うう、と思わず唸る『Blue Rose』シャルル(p3n000032)。珍しくも渋面を浮かべた彼女は手のひらで腕を擦る。
 元々そういうものなのか、それとも彼女が花の精霊であったが故なのか。肌を刺すような寒さはどうも好きになれないらしい。
 加えて。
(皆、どういう風に服を選んでるんだろ)
 ローレットにいる者を、そして外を歩く者を眺める。冬服と一括りにしてしまえばそれまでだが、色合いも上下の合わせ方も十人十色だ。秋のファッションショーも見たが、それらを皆はどう選んでいるのか、皆目見当もつかなかった。
「──珍しいですね、シャルルさんが難しい顔をしているなんて」
 不意に声をかけられ、シャルルは視線を女性へ──マリーへ移す。
「……そんな顔、してたかな」
「はい。私で良ければ聞きますよ?」
 隣に立ったマリーは「それで?」というように首を傾げてみせる。シャルルはその姿を、頭のてっぺんからつま先まで眺めた。
「マリーは……服、どうやって選んでる?」
「服? 店に行って、自分に合いそうなものを選んでますが」
「合わせ方がわからない」
 は、とマリーは思わず目を丸くする。けれどもシャルルの表情は至って真剣だ。
「これまでは確か、踊り子のような服を着られてましたよね」
「うん。違和感なかったから」
 これが、と示されたのは彼女に絡みつく蔓薔薇。成程、彼女自身の好みだけで選んだわけではなかったらしい。
「秋にファッションショーを見に行ったのはどうでしたか? 色んな服装を見られたと思うのですが」
「……自分に合うかと言われると、やっぱり」
 眉根を寄せるシャルル。マリーはその様子を見て頤に手を当てた。
 聞いたところ、彼女の感性の問題だろう。
(元は精霊だと言っていましたし、そういった好みを持つ必要がなかったのかもしれませんね)
 以前聞いた話では、こちらに召喚される際このような姿をとったと話していた。その時纏っていたのが踊り子の服だったのは本人も話していた通り、『自然体でいられる服装』なのだろう。
 けれども冬もまだまだ厳しくなる(かもしれない)状況で、その薄布1枚はいただけない。好みがわからないなら、これからそれらを知っていけば良いのだ。そしてそのためには──頼りになる仲間が必要だろう。
「シャルルさん、依頼を出しましょう」
「は? いや、何を言って、」
「イレギュラーズを、仲間を頼るんです。お金は私が出しますから。もし気にするのであれば……あなたが精霊だった時のこと、思い出したら真っ先に教えてください」
 ね? とマリーは押し黙るシャルルへにっこり微笑んだのだった。

GMコメント

●すること
 服を選びに行ったり、ファッションについて話す

●詳細
 OPの通り、「どんな服を選んだらいいかわからない」というシャルルの手助けをして頂きます。

・似合いそうな服を見立てて試着してもらう
・自分が「こういう合わせ方もあるよ」と見本を示す
・自分が今来ている服をどうして選んだのか話してあげる

 等々、シャルルに色んな服の着方を教えてあげてください。

●NPC
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)
 元は薔薇の庭を漂う姿なき精霊でした。今は人の姿を取っています。
 自らの好き嫌いに疎く、着たい服や一般的な色の合わせ方もあまりよくわかっていないようです。シャイネン・ナハトは適当に着込んでいました。蔓薔薇が落ち着かなかったそうです。
 今のところわかっているのは以下の2点です。
・原色は落ち着かない。
・ぴったり肌につく服は好まない。

●場所
 服屋の並ぶ商店街です。色々なジャンルの取り扱いがあります。
 小物やアクセサリーを置いている店もあるようです。

●ご挨拶
 愁と申します。私は冬の方が好きですが、シャルルはそうでもないようです。
 これまで色々と書きましたが、要約すると「(NPCと)ショッピングしようぜ!」です。皆様が楽しく服を選んでいれば──最悪NPC抜きでお友達とショッピングしていても、NPCはそれについて来たていで勝手に観察します。
 NPCと絡まなきゃダメ、なんてことはありません。どうぞお気軽にご参加ください。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • 依頼はローレットより出でる完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年02月06日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サンティール・リアン(p3p000050)
雲雀
ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
謡うナーサリーライム
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

リプレイ

●いざ、目的地へ
「身軽なのもいいけど、羽毛がないそんな体じゃ風邪引くぜ?」
 そう告げて肩を竦める赤毛の青年──『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)に、『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は彼をまじまじと見た。その視線にカイトはややあって「ああ」と1人納得する。
「今日は服選びだからな。普段は鳥人の姿が多いんだ」
 シャルルも納得がいったようで、その視線は自分の腕に。確かに羽毛はないな……なんて小さく呟く。
「……ところで俺、女性ものの服ってそんな詳しくはないんだけどな? 男目線でいいのか……?」
「いいんじゃないか? 誰かの意見が手助けになるはずだ……!」
 『暴食の守護竜』ヨルムンガンド(p3p002370)が視線を向けるとシャルルが首肯する。本人が良いのなら良いか、とカイトも頷いた。男性もカイト1人というわけではなく、『天翔る彗星』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は「ファッションなぁ」と小さく言葉を零す。
(正直、今までは服装とかそんなに興味無かったんだけど)
 これを機会に、もっと服装へ興味を持ってみてもいいかもしれない。
「ねえ、シャルル」
 『跳ねる足音』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)があのね、と声をかける。
「ワタシ、鹿ぐらしが長かったから、お洋服選びが難しいなって気持ち、とってもよくわかるの。今日はシャルルと一緒にお勉強させてもらうつもりよ」
「わたしも、シャルルさんと一緒に、服を選んでみようと思いますの」
 こくりと頷く『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。シャルルの強張っていた表情がいくらか和らいだ。
 期待と、不安と。服選びに慣れないと自負する少女達に『雲雀』サンティール・リアン(p3p000050)は小さく笑みを洩らす。
 自分のために、或いは誰かのために、纏うものを変えること。それは、まるで洋服と自分の呼吸を合わせるかのような。
(なんてことない――でもそれは、とってもたのしいこと!)
 ウキウキとした気持ちになるのは『不戦の職人騎士』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)も同じ。いや、彼のほうが気持ちは強いかもしれない。初めての依頼、初めての服選び──しかも、それは『武器』としてではない着飾りなのだから。
「シャルル嬢! 一緒にとっておきを見つけよう!」
「うん、頑張る」
 と言いながらちらり、とシャルルが視線を寄越したのはイーハトーヴのクマ。視線に気づいた彼はからりと笑ってみせた。
「体調が悪いわけじゃないんだ。むしろわくわくしているよ!」
 いくらか安堵の様子を見せるシャルルたちの後ろを、『宵越しのパンドラは持たない』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はニコニコのんびりとついていく。
(お話と買い物がお仕事なんて嬉しいわぁ)
 こんな仕事なら大歓迎だ。
 アーリアは商店街へ着く前にと、『ある女の子の話』をし始めた。
 とある女の子は、神様の色とされる白ばかりを纏っていた。そんな少女の常を変えたのはある人物との出会い。鮮やかな色を身に纏ったその人物は、少女に服と言葉を与えた。色鮮やかな服を。そして『似合う』という言葉を。
「その言葉が嬉しくて、女の子は色んな服を着るようになったの。お洋服はね、その子の可能性を広げてくれたのよぉ……きっと、ね」
 話が終わると共に、アーリアがたたっと駆けだす。彼女はシャルルの前に立って大きく両腕を広げた。
「だからね、今日は私たちがシャルルちゃんに沢山の可能性をご紹介!」
 辺りに広がるのは鮮やかな布たち。目を白黒させるシャルルの手をヨルムンガンドが握り「行こう」と促した。
(マリーには仲間や友達が沢山出来たって所見せて、話も聞かせてやりたいなぁ……! それに、何より……シャルルが困ってるって言うなら、手助けしてやりたいからなぁ)
 シャルルの姿は昔の自分を見ているよう。ヨルムンガンドは小さくはにかんだ。
「ふふ、気に入る服……一緒に探そうな!」


●服選び
 一同はカイトに連れられ、とある店へ。変哲もない、どこにでもありそうな外観だが──。
「穴あきタイプとかオーダーメイド出来るんだぜ」
 カイトは得意げに言いながら店へ入って行く。彼自身も世話になったことがあるのかもしれない。
 基本となる服に手を加えていく形なので、店にはサンプルの商品がずらりと並んでいた。どうやらまだまだ冬物が多いようだ。折角だから和服を、とカイトは彼女へ着物をチョイスする。
「何色がいいかな。やっぱ青色か?」
「シャルルちゃんに合う色でしょ~? 薄い水色とかどうかしらぁ」
 あっという間に白の羽織まで持たされ、試着室へ連れて行かれかけたシャルルは咄嗟にアーリアへ試着の補助を頼みこんだ。
「うふふ、任せて~! 素敵に着付けちゃうわよぉ」
 他の面々は彼女らを試着室の外で待つこととなったわけだが──。
(怒られるから我慢だ、我慢するんだ、俺!)
 カイトは目を瞑り、眉根を寄せていた。少しでも気を抜けばその目を開いてしまうだろう。そして──試着室を透かし見かねない。年頃の男子なのだから。
「お待たせ、こんな感じでどうかしらぁ?」
 満足げなアーリアが試着室から出てきて、その後ろをシャルルが付いてくる。着慣れぬ和服に困惑気味だが、嫌そうな表情ではない。
「シャルル、とってもきれい!」
「ああ、似合ってるよ」
 サンティールとウィリアムが頷く傍ら、シャルルはぺたぺたと着物に触れて暖かいと呟いた。
「そりゃあ布地が多いからな。腰の部分に穴開けてもらって、蔓薔薇を出せば居心地も良くなるはずだ」
 まだこれはサンプルなので穴は開いていないが、羽織も蔓薔薇を考慮して短い丈を選んである。けれど1着だけでは心もとない。さらに似合う服を探して一同は店を移動した。
「やっぱり色は──」

「「「淡いブルー」」」

 幾人かの声が綺麗に揃う。
「マフラーの色と同じだしなぁ……!」
「あと、蔓薔薇の花言葉には『爽やか』とかあるらしい。爽やかな青の色合いにピッタリじゃないか?」
 ウィリアムの言葉に、しかしシャルルは困ったように眉根を寄せた。
「ブルーで、どんな服、とか……考えられるかな」
 そこへシャルルさん、とノリアが顔を覗き込む。
(わたしには皆様が仰っていることが、さっぱりわかりませんでしたの……)
 そんなノリアが、彼女へ話せる事。──服を選んでみようと思った理由、だ。
「まず、とても素敵で、眩しくて、大切な誰かを、思い浮かべてほしいですの。それから、自分がその傍にいることを、ですの」
 それはずっと焦がれていた──隣にいてもいいのかと不安になってしまうような相手。『構わない』と言われて湧きあがったのは”嬉しさ”と”恐ろしさ”だ。
「……わたしが至らないせいで、その方の素敵さまで翳らせてはしまわないか……と」
 視線を落としたノリアは、しかしすぐに顔を上げて微笑みを浮かべる。そうならないように服を選び、素敵な自分を演出するのだと彼女は告げた。
「何かに合うように、でも。そんな考えかたは、きっと、シャルルさんが服を選ぶ助けになりますの」
 ノリアが言葉と共に力強く頷く。そこへ口添えするように、ヨルムンガンドがそっと口を開く。
「着るならやっぱり、自分の好きなモノもいいと思うぞぉ……!」
 大切な誰か、に自分を当てはめたって構わないのだ。自分が喜ぶもの、好きなもので囲まれたいと思えば必然的に纏うものを選ぶことになる。
「だから、まずは……好きなモノを探したり、作るのがいいんじゃないか?」
 探すという言葉にシャルルの視線が動く。沈黙、暫し。おもむろにシャルルが顔を上げ、一同へ向けて頷いた。
「ボクも、淡いブルーがいい。服、探すの手伝って」
 任せて! と皆が力強く頷いた。これはどうだろう、あっちのほうが、なんて会話に耳を傾け楽し気にポシェティケトはあちらこちらとうろつく。
「踊り子の服が違和感ないなら……動きやすい服とかがいいのかなぁ?」
 防寒しつつ動きやすさも考えると、少しずつ探す範囲は狭まってくるだろう。ヨルムンガンドとイーハトーヴは薄水色のワンピースに目をつけて、シャルルへと見せてみた。
「どうだろうか? ふんわりとしたシルエットでゆったりと着やすいし、愛らしい君によく似合うと思う」
 考え込み、首を傾げるシャルル。そんな彼女を見ていたサンティールは「ね、シャルル」と声をかけた。
「似合ってるかな、へんじゃないかなって……背伸びしたときは不安になるけれど。そんなときはみんなに相談してみるの! 悩んでたことを笑っちゃうくらい、すてきな魔法をかけてくれるんだ」
 満面の笑みを浮かべる彼女にシャルルは「魔法?」と呟いて。イーハトーヴのやや緊張した面持ちを見た後に、その両手を差し出した。
「試着したら……見てもらってもいいかな?」
「! ああ、勿論だ!」
 ワンピースを受け取り、試着室に入るシャルル。その間にウィリアムはサンティールとアーリアを見遣る。
「折角の機会だし、可愛らしい格好させて貰ったらどうだ」
「えっ僕も!?」
「いいわねぇ。『かわいい』も『格好いい』も誰にだって自由なこと、おねーさんが教えてあげましょー!」
「そうだな。ボーイッシュなのもいいけど、やっぱ可愛い服とかも着てみるのもいいと思うぞ」
(まってまって心の準備が!!)
 同意するカイト、慌てかけるサンティール。しかしシャルルの入っている更衣室を見て彼女は我へ返った。そう、他の人ばかりではなくて──サンティールも良い所を見せたい!
「わかった、でもウィルも道連れだからね! いいね!!」
「――はぁ!? 俺も道連れって待てよ!? 俺は別に、」
 思わずそう言い返したものの、既に断れる雰囲気ではない。その先の言葉を飲み込み、代わりに出たのは小さな溜息だった。そうして2人がアーリアに連れ去られしばらく──試着室が開けられてヨルムンガンドはわぁ、と歓声を上げる。
「素敵だ、シャルル……! 裾が花弁みたいで似合ってるぞぉ……!」
 他の服もいくらか見せてみるが、どうやらシャルルは最初のワンピースが気に入ったらしい。嬉し気にイーハトーヴは頷き、更に彼女へ提案を持ちかける。腰部に開けた穴の周りにレースを刺繍すれば、機能性も見目も失わずに済む事。
「それから……叶うなら、何か君の好きなモチーフを、裾にぐるりと刺繍させてほしい」
 着る楽しみはイーハトーヴも完全にわかったわけではない。けれど皆がいたから、服を着るという事は人の心を弾ませる事なのだと感じられたのだ。だからシャルルにも心を華やがせる──着るのが楽しみになるような何かを、刺繍してあげたい。
「……それなら、さ。マフラーの薔薇に似た刺繍、お願いしていいかな?」
 彼女の言葉にイーハトーヴは満面の笑みで頷く。
(シャルルも好きみたいだな)
 ヨルムンガンドは「薔薇の刺繍が似合う」と言うつもりだったが、他ならぬ彼女が望んだのだ。黙って微笑みを浮かべる。戻って来たサンティールとウィリアムたちも何やら買っていた──正確にはアーリアが買って贈った、だが。サンティールはイーハトーヴがシャルルの服を持っていることに首を傾げ、その理由を聞くと瞳を煌かせた。
「僕の服の裾にもシャルルとおんなじ刺繍をいれてほしいなあ、なんて。ダメかな?」
「そんな……駄目なわけがない! 是非、やらせてほしい」
 満面の笑みを浮かべたイーハトーヴ。服を預け、サンティールはシャルルの上着や小物を見繕う。
「これならみんなの選んでくれたお洋服に合わせやすいと思うの」
 サンティールが見せたのはスエード生地のコート。温かくて柔らかく、蔓薔薇を傷つける事もない。他にも春を先取りするような淡い色合いのブーナッドも勧めたり、可愛らしい赤い靴を手に取ってみたり。
「ケープもどうだ? 丈が短めなら、蔓薔薇も気にならないだろうし。あとは靴も探しに行って──」
 マフラーは、と言いかけてウィリアムはシャルルの首元に目を留め、ふっと小さく笑う。
(……いらなそうだな)
 ヨルムンガンドは白いポンチョコートをシャルルへ着せてみせて。
「後は手袋とファー付きムートンシューズ……耳当てかベレー帽とかどうだろうか……!」
 その言葉にポシェティケトが店の中を抜けていき、帽子などが置かれているコーナーへ。両腕にたんと抱え、シャルルの元へ戻る。
「シャルル、いちばん手触りが気持ちいいもの、選ぶのも良いと思うのよ」
 ふわふわのイヤーマフに、淡い色合いのベレー帽。最終的に彼女の手に残ったイヤーマフにポシェティケトは笑みを深めて。不意に彼女の腕に残ったそれらから、アーリアが1つをひょいと手に取って見せた。
「これ、ポシェちゃんにどうかしら~」
 角に飾られたもこもこの飾りにポシェティケトは目を瞬かせ、鏡を見て──「素敵!」とはにかんだ。

 刺繍を終えたイーハトーヴは、とっておきを見つけたかと言うシャルルの問いに彼は首を振った。
「いや、まだだ。パーカーが気になるんだが……」
 シャルルへそう返してパーカーの並ぶコーナーへ入っていくイーハトーヴ。その後ろをさりげなくアーリアがついていく。
 そう、アーリアは見ていたのだ。彼が事あるごとに可愛い服へ視線を送り、店内へ陳列されたぬいぐるみへ溜息を零していたことに。
「イーハトーヴくん、これなんてどうかしらぁ?」
「……はっ! アーリア、それは!」
 さっと取り出したのは動物耳の付いたパーカー。イーハトーヴの瞳が輝く。自分の作ったぬいぐるみと、そこに混じるパーカーを着た自分。そんな光景が瞬時に脳裏へ浮かぶ。
「ありがとう! その、早速着てみても構わないだろうか……?」
「勿論よぉ。いってらっしゃ~い」
 試着室へ向かうイーハトーヴへ手を振って見送るアーリア。いい仕事をしたと言わんばかりに口元を緩ませ、自らも春物スカートを探しに店内を回る。そんな途中、手持ち無沙汰なカイトを見つけて。
「カイトくんも一緒に探してみる~? 素敵なものが見つかるわよぉ」
「俺? いや遠慮するぜ、着込むのは得意じゃな──まて、やめろー! 可愛い系はいやなんだー!」
「それじゃあ可愛い系以外ねぇ。そうそう、風見鶏のブローチがあったの~」
 引きずられるように連れていかれるカイト。その後、彼がどうなったかは……2人のみぞ知る。

 いつの間にやらアーリアから深い蒼の髪飾りを手渡されたシャルルへ、ポシェティケトが声をかける。
「ねえシャルル。いやじゃなかったら、髪の毛、触ってもいい?」
 たくさん練習したからヘアアレンジ得意なの、と小首を傾げるポシェティケト。シャルルが頷くと花が咲いたかのような笑みを浮かべ、近くの椅子にシャルルを座らせた。
「どんな髪型がいい? はーふあっぷや、ふぃっしゅぼーんもいいわねえ」
 ポシェティケトは楽し気に、そして丁寧に持っていた櫛でシャルルの髪を梳いていく。
「ハーフアップがいいんじゃないかなぁ……うなじは隠れていた方が暖かいぞ……!」
「ああ、それはボクも思う」
 わかったと頷いたポシェティケトはまず、横髪を三つ編みに。両側に垂れたそれを後ろでまとめ、髪飾りで飾って。姿見の前に立たせて後ろから手鏡を持つ。
「これなら、そんなに難しくないと思うの」
 思わずシャルルの口から『可愛い』が漏れる。三つ編みさえできるようになってしまえば自分でもできるだろう。サンティールもぴょこぴょこと跳ねて存在を主張する。
「ポシェ、ポシェ、僕も! 僕の髪もやって!」
「サティ、もちろんよ」
 はにかんだポシェティケトの手によって、冠の代わりに三つ編みカチューシャを渡らせて。最後にお花のピンを差せば──可愛らしい女の子の、完成。
 最後に、ポシェティケトはシャルルへおまじないをかける。
「青い薔薇の傍らに、ひだまりと豊穣の多くがありますように──」


●ファッションショー
「マリー! 可愛く、カッコよくなったぞぉ……!」
 ローレットで作業をしていたマリーは、ヨルムンガンドの声に顔を上げた。彼女の尻尾で、赤いリボンがゆらりと揺れる。
「僕たち、とびきりおめかししてきました!」
 サンティールはワンピースの裾を小さく揺らし、その隣に立つウィリアムの姿も合わせればまるでお姫様と王子様。
『アーリア、これは僕にはかわいすぎない? ……へいき?』
『大丈夫よぉ、自信持って!』
 試着の時に交わされたアーリアとの言葉がサンティールへ自信を与える。
「これが……王子様ってやつなのか……!」
 カイトの言葉にウィリアムは気恥ずかしさも感じるが、実の所悪くないと思う。それにサンティールの格好も可愛い。
「マリーさんにも、意見を聞いてみたいですの……!」
 いくらか緊張の面持ちでその姿を見せたノリアは、真白のドレス。裾にレースが施されたそれを纏う彼女は、まるで妖精か──。
「人魚姫だ、人魚姫が出たぞ!」
 思わず声に出たカイト。けれどマリーも微笑んで頷く。
「本当に、人魚姫みたいです。可愛らしくて素敵ですよ」
「良かったですの……!」
 ノリアはほっとした表情を見せた。
 そうして、互いに互いの姿を見せあうファッションショー。その中で、シャルルはワンピースの裾を軽く摘まんで──口元を緩ませた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 皆様のプレイングを拝見するのがとても楽しい上にNPCも描写したので、文字数が大暴走致しました。最後まで楽しく書かせて頂きました。

 またご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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