PandoraPartyProject

シナリオ詳細

無邪気な妖精は歌う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●悪気はないのだけれど
 幻想中央のテュペ村には、古くから多くの妖精が住み着いている。
 小人サイズに蝶の様な羽根を持つ見るからに妖精な彼等は、村が神の居住地として崇める大岩より生まれ出で、人々の喜楽の感情エネルギーを少しだけ分けて貰う代わりに、ささやかな自然の恵みを分け与え共存していた。
 今年も、新たな妖精三人が生まれ、大岩の上で楽しげに会話をしていた。
「ふんふふんーん、ふんふーん♪」
「なになに、楽しそうな歌だね。何の歌?」
「知らなーい! 生まれた時から覚えてた歌だけど、よく分からないんだよね。まーこの歌しか知らないし楽しげだからいいじゃーん」
「なあに、それ。でも確かに楽しそーだからみんなで歌おう」

 ふんふふんーん、ふんふーん♪

 リズムに乗って皆で合唱。何処までも響く歌声に、村人達も笑顔となる。

 ――が、それは歌ってはいけない歌だったのです。

「た、大変だー! ゲプラーの群れが大岩に向かってるぞー!」
 魔物道士ゲプラーはその名の通り魔法に長けた魔物だ。まるで何かに引き寄せられるように村の外の森より現れ、大岩へと向かう。
「まあ! たいへん! 早く隠れなきゃ!」
「ふんふふんーん、ふんふーん♪」
「いつまで歌ってるの! 早く隠れるのよ!」
 歌い始めの妖精を引っ張り込んで妖精達は大岩内部の住処へと隠れる。
 しかし呼び寄せられたゲプラーは、大岩内部に潜む妖精達のことがわかっているのか、大岩へと魔力を放出しはじめた。
「いかん、このままでは神の住処が! 妖精達が危険じゃ!
 領主様は……間に合わんじゃろう。ならば、あそこへ頼むしか在るまいて!」
 村長の決断は早かった。
 村の住人たる妖精を救うため、ローレットへと依頼が舞い込んだ。


「というわけで、急ぎの依頼よ。
 テュペ村の大岩を守り、呼び寄せられた魔物道士ゲプラーの群れの撃破ね」
 未だ大岩は持ちこたえているようだが、到着と同時に壊れかねない。急ぎ村へと駆けつけて注意を引く必要があるだろう。
 ところでゲプラーって? そんな疑問にも『黒耀の夢』リリィ=クロハネ(p3n000023)は迅速に答える。
「魔物道士ゲプラー。フードを被った人型の魔物よ。その内部は空洞で充満する瘴気が本体とも言われているわ。
 特筆すべきは潜在的な魔力量ね。特異運命座標ちゃん達が使う”魔砲”に類する魔力攻撃を連発できる魔力をもっているわ」
 魔砲連発とは穏やかではない。魔道士の類に漏れず接近戦には弱そうだが、距離を離されれば、相手の思う壺だろう。
「魔砲にさえ気をつければそう危険な相手ではないけれど、とにかく数が多いわ。
 一体、二体に集中している間に距離を取られて魔砲で蜂の巣……なんてことがないように気をつけてね」
 依頼書へと情報を書き込んだリリィはそうして依頼書を手渡した。
 準備が出来たら急ぎ向かおう。
 あとは……そう、再発防止の案も考えたいところだ。
 思案顔のイレギュラーズが席を立った。

GMコメント

 こんにちは。澤見夜行(さわみ・やこう)です。
 原初の記憶より出づる歌。
 まさかのエンカウントソングに妖精さんもびっくりです。

●依頼達成条件
 ゲプラー十体の撃破

■依頼失敗条件
 大岩の破壊
 妖精の死亡

●情報確度
 情報確度はAです。
 想定外の事態は起きません。

●ゲプラーについて
 魔物道士、その名もゲプラー。
 赤いフードが人の形をなして浮いており、その内部は空洞。充満した瘴気が本体という話もあるが定かではない。
 特筆すべきその魔力量で、超射程攻撃”魔砲”を連発するのを得意とする。
 魔道士の類に漏れず接近戦を苦手としており、詰められると距離を取る行動ルーチンをもっている。
 神秘攻撃力に優れ、命中、特殊抵抗が高い。反面、反応、防御技術、回避は低く、そこが弱点となる。

●戦闘地域
 幻想中央のテュぺ村になります。
 陽の高いお昼過ぎになります。
 村の中での戦闘となりますが、障害物は少なく視界は良好でしょう。
 
 そのほか、有用そうなスキルやアイテムには色々なボーナスがつきます。

 皆様の素晴らしいプレイングをお待ちしています。
 宜しくお願いいたします。

  • 無邪気な妖精は歌う完了
  • GM名澤見夜行
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2019年01月31日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
鴉羽・九鬼(p3p006158)
Life is fragile

リプレイ

●ゲプラー包囲網
「来た! ローレットの方々じゃ!」
 大急ぎでテュペ村にやってきたイレギュラーズに、待ち構えていた村長達が歓待の声を上げた。
「ささ、大岩はあっちですじゃ! 宜しく頼みますぞ!」
 急ぎイレギュラーズを案内する村長。案内に従い村の外れへと駆けていくと、なるほど、赤いフード――ゲプラーが大岩を包囲しようとしているのがわかる。
「それじゃ、みんないくよ!」
「ノンストップだけど、一気に引きはがさないとね!」
 『命の重さを知る小さき勇者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)と『夢見る狐子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)が大岩に群がるゲプラーを挟み込むように左右に展開する。
 作戦はこうだ。
 左右に展開した前衛盾であるルアナとヒィロがゲプラーの敵視を稼ぐ。そうして、ゲプラー達を得意とする魔砲の射程外まで大岩から引き離す。
 当然その最中も左右にわかれたイレギュラーズが攻撃し、さらに攻撃によってゲプラーを吹き飛ばし距離を稼ぐ考えだ。
 抵抗力の高いゲプラーに対し、どれだけの敵視が稼げるか、そして引きつけることを抵抗された場合、どのようにゲプラーを大岩から引き離すか。それが重要になるだろう。
「ルアナとあそぼー!」
 左翼に展開したルアナが先手を取ってゲプラーの注意を引く。
 突如現れた少女の名乗りは、大岩に引きつけられていたゲプラーの注意を見事に引いた。蠢くフードが敵意を持ってルアナへと振り返る。
「上手く注意を引きつけられたようだね。ならこっちは大岩を守るよ!」
 ルアナの後に付けていた『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)がゲプラーの間を縫って移動し、大岩を守るように立ちはだかる。
 大岩を狙うゲプラー達が、邪魔をするなと言わんばかりに近距離術式を放つ。サイズは鎌を回し悉くそれらを受け止めた。
 サイズが身を挺して守ったお蔭で、大岩は崩れることなく守り切れたと言って良いだろう。
「中にいる妖精たち、聞こえるかい?
 俺達はイレギュラーズ、村長から話は聞いた! 君達は俺達が守る!
 この戦いが終わったら、皆で遊ぼう!
 だから今は岩から出ずに、静かに隠れていてくれ!」
 声を上げながら大岩とゲプラーの間に飛び込むのは『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)だ。
 飛び込むと同時、大きく身を捻り抜き放った流星の如き真一文字の剣戟が並み居るゲプラー達を大きく弾き飛ばす。リゲルは残心から一呼吸取ると、すぐさま地を蹴ってゲプラーを再度間合いに入れた。
 繰り返される流星の如き剣閃でどんどんゲプラーを大岩から引き離していこうという心算だ。
 そうしてゲプラー達が少しずつ大岩から離れてきたところで、『闇之雲』武器商人(p3p001107)が大岩の傍で聞き耳を立てる。
 ――ふんふんふーん♪
 ――だから歌ってる場合じゃないってば!
 なんて、妖精達のやりとりが聞こえてくる。武器商人は「ふむ」と事前に調べたことを思い出していた。
 ゲプラーは瘴気によって形作られた魔物である。その性質は邪であり、聖なるものを忌み嫌う。もし妖精の歌うメロディが聖なる加護を持つものであれば、ゲプラーをこれを嫌い狙いをつけるだろうことは推察できる。
「その歌は悪い奴等を引きつけるようだね。止めといた方がいいよ」
 妖精達に武器商人が声を掛けると、妖精達が「だからいってるじゃない!」だの「あなたはもう歌うの禁止!」だのというやりとりが聞こえて、ようやく歌は止まった。
 歌が止まったのを確認した武器商人は、そうしてようやくゲプラーを引き離してる仲間達の元へと向かった。
「ほら、こっちだよ!
 ボクがいくらでも相手してあげる!!」
 右翼からゲプラーの注意を引くのはヒィロだ。闘魂を宿し、燃え上がらせてゲプラーの敵視を稼ぐ。ルアナが半分を引き連れ、もう半分をヒィロが確実に抑えたいところだったが、やはりゲプラーの抵抗が高い。全てを引きつける事は叶わなかったが、半数以上を引きつけたのだ、十分だろう。
 ヒィロは引きつけられなかったゲプラーからの魔砲に注意しつつ、ルアナとの距離を測りながら、同じように大岩から離れていく。もちろんゲプラーに大岩を背負わせる形だ。
 それを追うように『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)が駆ける。
「一方的ないじめはそこまでだ。次は、貴様らが蹂躙される番だと知れ!」
 走りながら放つ”飛ぶ斬撃”は浮遊する赤フードの体制を崩す。そうして二撃、三撃と飛翔斬を放ちながらゲプラー達を徐々に追い詰め囲んでいく。
 リゲルの流星剣と汰磨羈の飛翔斬のかみ合わせはかなり良く、ゲプラー達を取り囲んでいくのに素晴らしい連携を見せたと言えるだろう。
 この二人のフォローもあって、ヒィロが引きつけられなかったゲプラーも、問題なく大岩から離された。そうして今一度闘魂を燃やしたヒィロによって、今度はガッチリと敵視を固定する事となる。
「お歌が好きな妖精さんたちを、これ以上怖がらせないよ。覚悟してね!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は左翼側からルアナの引きつけたゲプラー達を相手取る。
 一人で突出しないように、周りへと良く目を配らせて、全員と移動距離を同じくしながら足並み揃えてゲプラーを取り囲んでいく。
 ゲプラー達との立ち位置は目まぐるしく変わる。そんな中焔はゲプラーが包囲網から抜け出ないように立ち位置を変えようとするゲプラーへ向けて炎で出来た爆弾を牽制として投げ込んでいった。範囲に巻き込まれるのを嫌うゲプラーがどんどんと追いやられ集まっていく。
「フワフワ浮いて、どうにも掴み所がない相手ですね。
 しかし魔力だろうと、瘴気だろうと……斬るッ!」
 『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)が右翼側よりゲプラーへと接近する。
 得意距離ではないが、致し方ない。魔砲の効果射程に入るよりはマシというものだ。
 腰だめに構えた霊刀【因業断】。全身の力を抜くと同時に両の手に力を籠めて、自然、かつ神速の剣閃を放つ。巻き起こる太刀風はゲプラーの赤いフードを切り裂いて、瘴気を血潮を噴き上がらせた。
 イレギュラーズの作戦は、見事に上手くいったと良いだろう。前衛盾の二人が敵視を取ると同時にゲプラーの得意技である魔砲を封じられているのが大きいだろう。近距離攻撃を行うゲプラーはあまりにも脅威を感じさせない。
「よし、このまま一気に殲滅しよう! 確実、全て倒しきる!」
 リゲルが声を上げて仲間を鼓舞する。
 大岩から引き離され、イレギュラーズに取り囲まれたゲプラー達。
 ここにゲプラー包囲網が完成したのだった。

●魔砲の光が輝いて
 ゲプラー包囲網が完成し、イレギュラーズ達は優勢のままにゲプラー達を追い詰めていた。
 当然ゲプラー達もこの包囲網を突破しようと目まぐるしく立ち位置を変えながら近遠術式を放っていく。
 イレギュラーズ側に不安要素があるとすれば、それはメインヒーラーの不在だろう。
 この戦いは如何に、超威力たる魔砲を使わせずに、そして前衛盾の体力が持つ間にゲプラー十体を倒せるかどうかの戦いと言えるだろう。
 その為には、火力を集中し、各個撃破を行うことが肝要だ。
 イレギュラーズは声を上げながら、狙うべき敵にフォーカスを合わせ、怒濤の連係攻撃を繰り返していた。
 集団のなかで飛び抜けて高い反応を見せていたのはヒィロだ。
「継続して怒らせるのは中々難しいけれど……!
 諦めないよ! ボクはボクなりの戦いを続けるんだ!」
 燃え上がる闘魂、迸る闘志。誰よりも熱く、誰よりも情熱を持って、この魔物道士の行動を抑制するのだ。
 そこには仲間達を守り切るという信念があり、それを体現するかのようなヒィロのアクセルカレイドは確かな力となってゲプラー達を足止める。
 多くの術式にその身を焼かれながらもヒィロは決して引く事はないのだ。
 そんなヒィロの熱を感じながら、同じく高い反応を見せた焔が隙を見てゲプラーへと肉薄する。
「狙いを合わせて、確実に数を減らすよ!」
 ビートを刻むかのように焔の機動が加速する。振るうガグツチが赤きフードを切り払い、邪悪な瘴気を霧散させていく。
 接近を許したゲプラーは焔から距離を置こうと包囲網の外へと向かい動き出す。
「逃がさないよ! えいっ!」
 カグツチを振るいながら回転した焔が、火炎弾を投げつける。行く手を爆弾でふさがれたゲプラーは苛立たしげにフードをはためかせる。そこを再度距離を詰めた焔が、横薙ぎにカグツチを振るい、ゲプラーの赤いフードを切り刻んでいった。
「痴れ者共が。潔く、覚悟を決めて散り果てろ!」
 距離を取ろうとするゲプラーは多く居る。それらを纏めて一喝し中央へと押し戻すのは汰磨羈だ。全身全霊の大喝が空気を振動させるのみならず衝撃波となって、中空を浮遊する赤フード達を吹き飛ばす。
 そのまま疾駆した汰磨羈は霊光器・霊圏型特種『斫體晃刃』を纏い体勢の整わないゲプラーに肉薄、練り上げた金行のマナを光刃に宿し、リミットを解除した神速の突きを繰り出しその空虚な赤フードの中身を刺し貫いた。怨嗟の声を上げるゲプラーの身体から瘴気が零れ消失していき、やがて、すべてを失ったゲプラーはその特徴である赤フードを残して消滅した。中空に浮かんでいたフードが、静かに大地に落ちた。
「ほぅ、随分と脆いな。攻められる事は想定していなかったか?」
 得意げに声を漏らす汰磨羈。その視線は次なる獲物を見定めていた。ゲプラー達に戦慄が走る。
「十分引き離せたようだ。それじゃ俺も攻撃に加わろうか」
 本体である鎌を回し大岩を守っていたサイズ。十分な距離が稼げたとみれば、自身も包囲網へと加わりゲプラー討伐へと乗り出す。
 サイズは自身の身体を巡る妖精の血の疼きを感じる。そう妖精の鎌として作られたサイズは妖精を守るのだと、まるで本能が叫ぶように狩り立てられている。
 それはまるで呪いのようでもある。
 だがこの状況はサイズにとっては好都合だ。何にしても依頼として受けた以上妖精を守るのは絶対事項であり、本能に抗う必要は一切ないのだ。
「妖精の命は俺が守る!」
 妖精の血によって力を得る大鎌が、妖精を守る為にゲプラーを切り裂いていった。
「距離は十分。あとは逃がさないように倒していくよ!」
 敵視を稼ぎきったルアナは、攻撃へと転じる。
 精神を集中し、光をその身に纏えば、それは信念の鎧となる。自らの防御を固めたルアナは飛びかかるように距離を詰め、一刀の元にゲプラーを両断する。
 上段から切り裂かれたゲプラーが、瘴気をバラ撒く。一歩間合いを取れば、そこを仲間達がフォーカスし攻撃を重ねていった。
「とどめだよ!!」
 今一度、ルアナは大きく踏み込んで、巨大剣を叩きつけるように振るう。今度こそそれは致命傷となって、すべての瘴気を霧散させるのだった。
 また一人仲間がやられて、ゲプラー達が本能のままに距離を取ろうと動き出す。
「逃がさないっていったでしょ!」
 ルアナの名乗りは本能を覆す怒りをゲプラーに与えるものか。幾匹かのゲプラーが怒りのままにルアナへと向かっていった。
 ルアナやヒィロへ向かわなかったゲプラーが包囲網を突破する。その狙いは大岩だろう。
 距離を詰められれば魔砲によって大岩が破壊されてしまうかも知れない。
「――ふんふふんーん、ふんふーん」
 歌を口ずさむのは武器商人だ。妖精達の歌を聞き覚えていた武器商人が歌を口ずさめば、包囲網を突破したゲプラーの足が止まる。
 狙うはやはりその歌なのだろう。邪を祓う歌に忌避感を感じるゲプラーはその根源を絶とうと武器商人に狙いを付ける。
「おっと、ソレはやらせないよ」
 先手をとって放つピューピルシール。得意の魔砲を封じられたゲプラーが攻撃を封じられどうするべきか判断に迷うのが見て取れた。
「囀る鳥へ安息を。群れし乙女へ隷属を。与えよ賦せよ尽きぬ快楽。汝、その身に奪われし者の烙印を刻め」
 武器商人の魔術によって氷の身体を持つ大蛇が現れる。冬に閉ざされたゲプラーは為す術無くその肉体(瘴気)を氷結させ砕けて割れた。
「――ふんふふんーん、ふんふーん……か。
 なるほど、不思議なメロディだけど、どこか清浄さを感じさせるね」
 武器商人の歌った歌を聞きかじり、リゲルも合わせて口ずさむ。
 ゲプラー達はまるで汚物でも見たかのように震え上がり、歌うものへと狙いを定める。
「よほど嫌いみたいだが、止めたかったらこっちへくるんだな!」
 地を蹴り刹那の呼吸で一足飛びに間合いへと踏み込むリゲル。煌めく銀閃の直突がゲプラーの赤フードごと深淵たる瘴気の核を突き刺し砕いた。リゲルは止まる事無く包囲網を突破したゲプラーの側面へと移動し、元の場所へと戻すように流星の如き横薙ぎを振るうのだった。
 イレギュラーズの連携によってゲプラーは次々と撃破されていった。
 しかし怒りを消し包囲網を突破したゲプラーもいた。そのゲプラーは新たに歌ったイレギュラーズを狙い、ついにその得意とする魔砲を放つ。
「魔砲だ! 皆、散開!」
 魔砲への対策として一番重要なのは纏めて喰らわない事だ。
 一人でダメージを負い、全体の体力を維持するのが賢明だろう。
 そうして魔砲を耐え凌ぐ形を作る。
 この間にも前衛盾の二人はダメージを蓄積させていく。
 八体のゲプラーが倒され九体目に差し掛かる頃、ルアナとヒィロはパンドラを輝かせることになった。リゲルが二人を庇いながら追加のダメージを抑え、サイズがライトヒールによる立て直しを図ったことによって、どうにかイレギュラーズは体勢を立て直した。
 そして、九体目を倒しのこり一体となる。
「さあ観念してくださいね!」
 ゲプラーに密接していた九鬼が得意レンジへと間合いを広げる。
 中距離をメインレンジとする九鬼に取ってみれば、今回の戦いは中々にストレスだったかもしれない。
 しかし、残り一体となり、詰みの形となった今、得意レンジからの必勝の一撃が放てるのだ。
「イン、いくよ!」
『心得ている。存分に振るうが良いだろう』
 全身の力を集中し、捻る身から放たれる超常の剣技。相手の魂や精神、そして縁など因果と呼べるものを両断する一撃がゲプラーの瘴気を見事に断ち切った。
 其の力の一部を吸収する霊刀『因業断』。力を奪われ因果をも断ちきられたゲプラーは静かに赤フードを地面に落とした。
 戦場に広がる赤フードの数々。それはまるでゲプラーの血でできた海のようでもあった。
 様子を見ていた妖精達が大岩が顔を見せる。
 そうして脅威が去った事しると、大喜びではしゃぎ出すのだった。

●無邪気な妖精は歌う
「あなたたちのお歌は、困ったさんを呼び寄せちゃうから別のお歌にしよう」
 戦い終わって、妖精達と歓談するイレギュラーズはそう提案する。
「別のお歌? でもわたし達歌なんてしらないよー」
「えーとえーと、そうこんな感じ!」
 そういってルアナは身振り手振りで音をだし好きなように声を出す。
「手を叩いたり、足を踏み鳴らしたりして音を出しつつ、声を出そう。
 皆で声を出せば、それが素敵な歌になるよ。声を出すって、とっても楽しいよね!」
「わーなんか楽しそう!」「あたしもやるー!」
 妖精達が楽しそうに歌い音をだす。賑やかな雰囲気に大岩に住む妖精のみならず村人達も混ざり始めた。
「音をだすなら楽器が必要だね。後日贈ってあげよう」
 大岩の被害を確認しつつサイズが楽器を作ってあげると約束する。妖精サイズのものを作れるサイズは中々に器用だ。
 カカカッと高い音を出すのはリゲルの作ったミハルスだ。
「妖精チャチャチャ♪ 楽しくチャチャチャ♪」
 歌に合わせて打楽器を奏で、身振り手振りで踊りも見せる。こどもの歌の冊子も妖精達には物珍しくて大人気だ。
「うん、隣人が楽しそうでなによりだよ」
「ねぇねぇなんでそんな真似っこしてるの?」
 妖精には武器商人がなにと見えているのか。不思議な疑問に武器商人は口の端を釣り上げて「さて、なんでだろうねぇ」と笑った。
「傷平気? わたし達のおまじないしてあげようか?」
 傷付いたヒィロにそう言う妖精達。
「わっ、ぜひお願いしちゃおうかな!」
 おまじないは本当におまじないだったけれど、なんとなく痛みは引いた気がした。
「邪なる者が忌避する歌か。
 ――歌には呪い(まじない)の力が備わっていると、私の世界では常識だったが。
 どこかで調べてもらうのもよいかもしれないな。原因がわかればきっとまた歌えるようになるかもな」
 汰磨羈の提案に村長を始め村人達も思案する。もし歌に詳しい学者や研究者がいれば、頼んでみようと言った。
「その歌はなあに?」
「ふふ、パルスちゃんのお歌だよ! アイドルって奴なのさ」
 妖精達に鉄帝のアイドルの歌を披露する焔。妖精達以上に歌が好きなのが伝わってくる。妖精達も楽しそうに一緒になって歌った。
「こうやって……手を取ってくるくるーっと……! はわっ」
 ダンスを披露しつつも転びそうになる九鬼。その様子に妖精達が笑った。
 テュペの村には無邪気な妖精達が住んでいる。
 新しい歌を覚えた妖精達は、楽しげに歌を響かせて、テュペの村はいつまでも歌が響き渡る妖精の村へと変わっていくのだった。

成否

成功

MVP

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

状態異常

なし

あとがき

 澤見夜行です。

 回復をメインにされる方がおらず中々につらい戦いになるかなと思いましたが、ダイス運にも恵まれ多くの敵視を稼げたことから魔砲の脅威にさらされる回数が少なく完全勝利と行かないまでも結構な楽勝ムードとなりました。
 作戦とか良かったとおもいます。

 MVPは総合判断でリゲルさんへ。色々なフォローが良かったですね。チャチャチャ。

 依頼お疲れ様でした! 素敵なプレイングをありがとうございました!

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