シナリオ詳細
<XEOIX>22219
オープニング
●恐怖かくありき
老人と、本と、庭の光景であった。
ウッドデッキに揺れる安楽椅子。
葉の落ちきった枝の揺れようが、首筋を寒くさせるようだ。
しかし男は木製の椅子に腰掛けて、半袖のTシャツと丈の短いジーンズパンツのみを纏っていた。
遮光眼鏡のブリッジを押して、口の端だけで笑う。
肌の皺の寄りようから七十台ほどだろうか。グレーの頭髪は豊かで、冬の突風に随分と乱暴に靡いている。
同じく突風に靡いた本のページを押さえて、文章の一部をなぞる。
「母様は、なぜ我々をこんな風にしたのだろうな」
文章の一部にあった『恐怖』という文字で指が止まる。
男は苦笑し、本を放り投げた。
上半身だけの男と、下半身だけの女にぶつかり、本は土に転がる。
取り外された部位は、うずくまるフードパーカーの男女がそれぞれ貪るように食べていた。
「お前たち。なぜそんなにゆっくりと食べる」
「落ち着いて食べなさいと、スティーヴン……あなたが」
食べかけの腕を握ったまま、振り返るフードパーカーの男。
黒人男性に酷似した肉体。首から上が巨大な芋虫の頭。紛れもない怪物の男。
顔を上げた女も、また同様であった。
スティーヴンと呼ばれた男は、遮光眼鏡を外して振り返る。
彼の目は。
彼の目だけは、蝶のような複眼であった。
「そうだった。落ち着いて食べろ。人間はみなそうするらしい」
●情報屋は語る
「全く別の事件だったんだ。『恐怖公』を見つけたのは」
夜更けの酒場。グラスの端についた滴がコースターへと落ちる。
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はフードの端をつまんで、苦々しく言った。
「芋虫の怪物。その『貴族級』と目される個体が発見された。いや、集団というべきかな」
もとは巨大な芋虫であった怪物たちは、急速な進化によってまるで人間のような形態をとり、その中でもとりわけ優れた能力をもった者が集まり貴族を名乗った。
兵隊たちはレギオニーター。貴族級の指揮官はアリストクリエイターだ。
彼らはとある幻想領主の城を占拠。無数の芋虫頭の怪物たちは9体のアリストクリエイターによって指揮されていたという。
彼らは城を守る6体と、城下町を蹂躙すべく出かけた3人に分かれ、さらなる行動を進めている。
ローレットにもその討伐依頼が回り、このチームはそのうちの一つである『恐怖公』スティーヴンの討伐が割り当てられていた。
「おっと……そう、『恐怖公』の話だったね。
発覚の始まりは死体だった。
食い殺されたわけでも、殴り殺されたわけでもない。
ショック死さ。恐怖に顔を歪めてね」
調査と情報収集の結果分かったのは、『恐怖公』スティーヴンが対象の恐怖を反射する能力を持っているということだ。
「彼は潜在的恐怖にとりつかれ。それによって羽化した貴族級の怪物。アリストクリエイターだ。
対象の精神を暴き、恐怖の幻覚によって支配する。
恐怖を克服できなければ、群がる配下のレギオニーターたちにゆっくりと食い殺されることになるだろう」
ショウはグラスを手にとって、少なくなったブランデーを傾ける。
「奴の攻略法はただ一つ。恐怖を克服するんだ。それも、己から出た恐怖をね」
- <XEOIX>22219完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2019年01月16日 21時30分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●きみはその名前を知っている
石を踏んで進む車輪。雪になりかけた小雨が、馬車の屋根をはねた。
『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981)はローブの襟首をつまむように引いて、首元を吐息で暖める。
馬車は一路、人食いの怪物が選挙したという領主の館……もとい、館から出て周囲の人間を襲い始めているというアリストクリエイター『スティーヴン』のもとへとはしっている。
「XEO……想像以上に進化が早いわね。はやく『母体』を見つけ出さないと。手に負えない個体が出てくるのも時間の問題かしら……」
「それよりもまずは、目の前の『貴族級』、アリストクリエイターですわー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は確認するように資料の束を取り出す。風にめくれるページの中に、過去イレギュラーズたちが依頼のなかで遭遇したレギオニーターやゼノイーターの情報があった。
「以前に戦った時より、ずっと戦闘に適した形態。恐ろしいまでの進化速度ですわねー。魔のものだから、と言ってしまえばそれまでですがー」
「それにしても、残念だわ」
『祈祷鬼姫』六車・焔珠(p3p002320)が、首を傾げるように壁にもたれかかった。
「言葉が喋れても一緒にはいられないのね。貴方達は食べたいし、私達は食べられたくない。本当に残念ね」
まだ見ぬ、今から会いに行く相手に語りかけるように。
「弱肉強食。これも世の習いかしら」
別の馬車は、少しばかり雰囲気が違う。
『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)は黙々と奇妙な器具の手入れをし、『性的倒錯者で快楽主義者』ニエル・ラピュリゼル(p3p002443)は深く被ったフードマントに全身を隠して卵のように丸くなっている。丸い卵が内側から柔らかい殻を押すような、そんな光景が馬車の壁際にある。
『絵本の外の大冒険』アルメリア・イーグルトン(p3p006810)はそんな二人に前と横を囲まれ、居心地悪そうに膝を抱えていた。
世の中には色んな人がいるというが、その極地を見ているような気分になる。
「ねえ、思ったんだけど」
『観光客』アト・サイン(p3p001394)が劇薬の入った瓶を鞄から取り出して、小さく振った。
いかにも毒々しいパープルの液体が、細長いガラス瓶の中でゆれている。
「芋虫にだけきく毒をクラッカーに混ぜて土や石にまけば、やつらのたうち回るんじゃないかな」
「えっと……」
葉っぱを食べる害ある虫をよけるべく殺虫剤をかけるさまを、アルメリアは想像した。
「それですむなら、もうやってるんじゃないかな」
空から殺虫剤をまき散らす飛行種の姿を想像しながら言ってみると、アトはスッと表情を真顔にした。
「それもそうか。殺虫剤で死ぬならダンジョン攻略なんてする必要ないもんね」
アトは瓶を鞄に戻し、拳銃をかわりに取り出した。
この人もこの人で、なにかの極地にいる人間であるらしい。
馬車は、寒空を割いて進む。
浅い、雪と氷のあいだにあるような路面を、『黒耀の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は御者席から見つめていた。
路面には無数のわだちが残るが、その左右への乱れようから住民たちの混乱がうかがい知れる。
この場にはもう、人など残っていないのだ。
あるとすれば、死体か虫か、自分たちだけ。
「恐怖。恐怖……で、ござるか」
口にすると不思議な言葉だ。
恐怖そのものをイメージするとき、必ずなにかの象徴をとる。
しかし本当の恐怖とは、本人しか感じ得ないもの。
木の棒や鞠ですら恐怖する者がいるように、他者から簡単には観測はできないものだ。
「恐怖の戦いとは己自身との戦い……拙者が潜在的に恐れている物とは、何でござろうか?」
アリストクリエイター・スティーヴンは、それを教えると言うのだろうか。
●語る前から、それはある
老人と、本と、庭の光景であった。
ウッドデッキに揺れる安楽椅子。
この寒空の下、男は木製の椅子に腰掛けて、半袖のTシャツと丈の短いジーンズパンツのみを纏っていた。
アリストクリエイター・スティーヴン。
サングラスを外し、こちらを見る。
口の端が僅かに上がったように、見えた。
「やあ」
瞳が。瞳だけが蝶のような複眼の、得体の知れない視線。
視線を感じる。
否、何も感じない。
視界が歪み、五感が狂い、脳が世界への認識を狂わせる。
まるで自分の眼球の中身を見ているようなゆがみの中で。
己を、見る。
(怖い、怖いこわい動けない!)
アルメリアは、自らの全身が拘束されたさまを意識した。
立ったまま身動きのとれない自分に、レギオニーターがゆっくりと歩み寄ってくる。
フードパーカーを纏った男女。しかし首から上は巨大な芋虫のそれである。
ぐわりと開いた芋虫の口が、アルメリアの腰や指や、耳や髪の毛をはうように食い始める。それこそ緑の葉を虫食いにしていくようにだ。
このまま虫に食われて死ぬか、心を潰されて死ぬのか。
(勝手に召喚されて、何も為せないままこんな若さでお母さんやお父さん泣かせたり、もう物語が読めないなんて、絶対、絶対……!)
見開いた目の奥に、死と『なにもできなくなる恐怖』が映り込んだ。
ニエルは地面に横たわっていた。仰向けに、空だか天井だかを眺めていた。
「…………」
人間は人間を見て己の形を認識するという。
であるならば、人間を見なくなった人間はどのように自己を保てばよいのか。
こどく。
孤独という言葉ですら、人間の形をしている。
しかし本当に誰も、なにも、一切がなくなったとしたら、それはもはや孤独ですらない。
ない。
時間の流れも、血の流れも、眼前に映る物体の色彩ですら、価値をなくす。
世界の終わりとは、こんなものだろうか。
だというのに。
なぜ自分は今すぐに終わらない。一瞬が、永遠のように引き延ばされていく。
ニエルの瞳の奥に、『おわらない恐怖』が映り込んだ。
朝起きると、咲耶は虫になっていた。
硬い背をまるめ、無数の足をおって布団に横たわっている。
声を出そうにもぎいぎいという音が歯から発せられるのみであった。
自分の姿が変容することが恐ろしいのか。
が、そうは思えない。不便や恥を感じても、それが恐怖だとはとても。
……それから数ヶ月して、咲耶は虫になりきっていた。
以前は他人を慮ったり、身なりを気にしたりしていたはずだが、何も気にならなくなっていた。
……それから数年して、咲耶はなりはてていた。
目の前の餌と外敵から身を守るすべ以外考えなくなっていた。安全な場所で身を丸くすることで得られるのはただ身を丸くしたという事実であり、安心も恐怖もなかった。
咲耶の目の奥にわずかに、『きえてしまう恐怖』が映り込んだ。
ぼうっと立ち尽くす咲耶たちを、スティーヴンは椅子に腰掛けたままじっと眺めていた。
レギオニーターのキャリーとクージョが襲いかかろうとするも、それを手で制して止める。
「見ろ。恐怖を喰おうとしている者がいる」
ジョセフの全身を棒状のドリルが削っている。
その事実を観測してなお、ジョセフには一切の痛みがなかった。
「苦痛は恐怖たり得ない」
破壊される頭蓋骨。舌と眼球だけになりながら、ジョセフは語る。
「たとえ貪り食われようと、私にとって苦痛は愉悦。そして愛。恐るべきは、無」
何者でもない、なんでもない物質になりはてる事実を恐れ、ジョセフは脳から指令をおくり自らの眼球にドリルを打ち込み始めた。
「僕はまだ貪り足りない。もっと苦痛を! 愉悦を! 刻み込め! 僕の全てよ、消えぬ疵痕となれ!」
焔珠の周囲には死体。
手には血。
暮れる黄昏の平野のように、あたりは赤く染まっている。
「お別れは、つらいわね」
人間は今に生きていると誰かがいった。
過去の全ては今の経験によって上書きされる。あんなことがあったねと笑うように、あんなことがあったのにと泣くように。
その今を全て破壊する死と別れ。過去の累積が多ければ多いほど、それは悲しい今で塗り変わる。
目の前に倒れる死体。見覚えの深い顔。
「嫌なことを、思い出させてくれたわね」
焔珠は手首をかざし、刀の刃をそえ、目を瞑る。
鉄のつめたさ。
呼吸をとめ、一息に引いた。
裏路地でパンを盗んだ少年が殴られている。
奴隷の作った服が山と積まれて売られている。
縛られた異種族の夫婦に石を投げる祭りが開かれている。
メリルナートはラッパとバイオリンによる陽気な祭り囃子の中を、バスケットを手に歩く。
健康煙草を吸う少年。
経済的効率と奴隷商売を語るカフェテラスの男女。
豊かな暮らし。平和な日常。
歩く際に虫を踏んでしまうのは仕方の無いことだ。きみもそう思うだろう。
シルクハットの紳士が言う。花を売る少女に1セント相当の硬貨を投げることを善行とせよと。
「ええ。ええ。きっと多くの人は、そう言うのですわ……」
けれど。
決めたはずだ。
手にした剣が、自らの胸に突き立てられる。
「日常(これ)を壊してでも」
悪を裁くことに、決めたのだ。
守る力があることと、守れることは別。
守る意志があることと、守る力があることは別。
アルテミアの手が熱い血で汚れている。
それが『あのひと』の体温であると知って、アルテミアは目を見開いた。
冷たい外気に逃げていく温度が、命の失われるさまに似て、アルテミアは手を伸ばした。
意志があり、力があり、それを実行する手立てがあるのなら。
「もう、立ちすくんだりしないわ」
冷たい血のついた手で、自らの剣を抜く。
振り込むべきは自分の足。
「震えてないで、うごけ!」
彼女が現われた。
彼女が現われたと聞いた。
アトの血がふるえ、魂が沸いた。
だが知っている。こういうとき、運命は全てを台無しにすることがある。
絶好の機会を前に何もかもが終わることがある。
積み上げた努力が一瞬で消え去ることがある。
知っている。
それの名前を、アトは知っている。
あらがうすべは、ひとつだけ。
「絶対値――!」
自らの腹に銃口を押し当て、親指でトリガーをひく。
くたばれダイスの女神(クソビッチ)。この機会、絶対に逃したりはしない。
●恐怖に打ち勝つ、唯一の手段
老人と、本と、庭の光景であった。
「恐怖は自覚することでしか観測できない。自分自身にしか、打破することはできない。
頭を撫でる母も、安全を保証する兄弟も、恐怖を取り去ってくれなどしない。
それを知らぬ者は……私の前に立ち続けることすら、できない」
本を閉じ、スティーヴンは椅子から立ち上がる。
一段高いウッドデッキに腰掛けていたレギオニーターたちも、同じように立ち上がった。
「ここがスタートラインだ。私ときみ、どちらが新たな恐怖たりえるか……決めようか」
意識するよりも早く眼前へと接近。本能的に身構えたメリルナートの両目を覆うように、スティーヴンはそっと右手をそえるた。
それだけでメリルナートの心臓がどくんと吠えるように動き、身体が冷たくなった。
崩れ落ちそうになる身体。胸に手を当て、治癒術式を打ち込む。それでもこらえきれず、メリルナートはその場に崩れ落ちた。
歯を食いしばって立とうとするメリルナート。追撃のために走り出すキャリーとクージョの前に、咲耶とアルテミアがそれぞれ割り込んだ。
「貴殿の相手は拙者でござる!」
二本指で短く印を結んだ咲耶の正面に術式障壁が発生。
障壁にはねのけられたクージョへ向け、逆手に握った忍者刀を繰り出した。
刀身を素手で握り止めるクージョ。人間のそれとはまるで違う硬質な皮が、咲耶の刃を押し止める。
一方で焔珠はキャリーと至近距離の位置で抜刀。抜いたそばから刀身を鬼火が覆い、振り抜く動作そのものが巨大な炎を生み出した。
ダッシュの動作をキャンセルし、素早く飛び退くキャリー。
もう一本の刀を抜き、焔珠は追撃の炎を放った。
巨大な蛇のように姿を変えた炎がキャリーへ迫る。
キャリーの左右から迫るアルテミア。
舞うように水平に繰り出された剣を、キャリーはかがむことで回避。
直後に彼女を飲み込む炎。
剣の柄を逆手に握ったアルテミアは、剣に青白い魔力の燐光を纏わせた。
クイックドロウ。キャリーの肩を切り裂いた燐光が、キャリーのエネルギーを吸い上げた。
転がるキャリー。さらなる攻撃のために距離をつめるアルテミアに、キャリーは両手を伸ばし、ぐわりと口を広げた。
キャリーの手首を切り落とすアルテミアの剣。
アルテミアも腕を食いちぎるキャリーの口。
バランスを崩して転倒。雑草のはえた砂利道を転がるアルテミア。
アルメリアは急いで彼女へ駆けつけ、取り出した包帯と薬剤で止血処理と強制再生処理を施した。
肩の傷を再生し、さらなる攻撃をしかけようと迫るキャリー。
が、アルメリアは恐怖しなかった。
アルテミアの突き出す剣がキャリーの腹を貫き、焔珠の添えた刀がキャリーの首を切り落としたからだ。
ばしゅんと血のふく音をたてて落ちる首。
一方。
咲耶の刀を握り込んだクージョは鋭いハイキックを繰り出した。
側頭部への直撃。ぐらつく咲耶。
が、目は見開いたままクージョをにらみ付けている。
襟首をつかむジョセフ。親指だけを立てた右手が、クージョの耳らしき場所へと豪速で突っ込まれた。
握り、掴み、引きちぎる。
ぼじゅんという奇妙な音をたててはじけるクージョの側頭部。
そこへアトは拳銃の銃口をねじ込み、引き金をひきまくった。
不自然に膨らみ、爆発するクージョの頭。
どさどさと砂利道に落ちる人間めいた肉体。
スティーヴンはそれを一瞥し、顔をしかめて首を振った。
「ああ」
絞り出すような声。
ニエルはすかさず迫り、強く握り込んだメスをスティーヴンの胸へ突き立てた。
刃に塗りつけた危険物質がスティーヴンの肉体へ浸食するが、スティーヴンはニエルの頭を片腕で抱くように強引に引き寄せ、耳元に小さく何かを囁いた。
ばぎんと音が聞こえるほどの強烈なショックがニエルにはしり、右目だけが明後日のほうこうをむく。
耳と片目から血を吹き、ニエルはおおきくよろめいた。
うつぶせのメリルナートが手を伸ばす。スティーヴンの足首を掴み、引き倒すためた。
崩れるバランス。同時にとびかかるアト、咲耶。
彼らの手に握られる剣のすべてが、スティーヴンの背から胸へと突き抜けていく。
焔珠とアルテミアの剣がスティーヴンの首にかかり、半分まで切り込んでいく。
「ああ」
苦しげに眉をよせ、口を不自然なほど大きく開くスティーヴン。
そこへ、ジョセフとアルメリアは二人がかりで酸素ボンベを叩き込んだ。
はじける音。首から千切れ、吹き飛ぶ頭。
ウッドデッキのうえをバウンドし、安楽椅子の足下へとスティーヴンの首が転がった。
「やはり……人間は、こわい」
片目から涙を流し、スティーヴンは、ついに動かなくなった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
アリストクリエイター、スティーヴン――討伐完了
GMコメント
ごきげんよう。こちらは連動シナリオのひとつ。
スティーヴン編です。
オーダー内容は貴族級アリストクリエイター・スティーヴンとその配下2体の討伐となります。
【恐怖抵抗パート】
スティーヴンは対象の恐怖を反射する特別な能力を有しています。
それを用い、討伐に訪れたPCたちを恐怖にとらえます。これに例外や抜け道はありません。
戦闘開始時、PC全員は潜在的恐怖にとりつかれている状態から始まります。
通常であれば5ターン行動不能に陥りますが、『プレイングにPCが最も深く恐怖していること。自らを強く攻撃してでも脱したくなるようなことを書く』ことで行動不能時間を最短1ターンにまで縮めることができます。
行動不能から解かれた状態を便宜上『正気に戻る』と表現します。
(※戦闘中ずっとこの判定を行なうのは無理があるため、開始時に一括で判定しています。メタですが)
【エネミーデータ】
●スティーヴン
形而面で羽化した『貴族級』アリストクリエイター。
70台の老人に似た容姿をしており、目だけが蝶の特徴を残している。
非常に俊敏で強力だが、相手が恐怖にとらわれている間は攻撃しないという修正をもつ。
●キャリーとクージョ
配下のレギオニーター(計2体)。
首から下が人間、上が芋虫の特徴を持つ。
武器はもたず、それぞれ素手で戦闘を行なう。
彼らはスティーヴンが恐怖に捕らえた対象をゆっくりと捕食することがある。
★飢餓感
・レギオニーター及びアリストクリエイターが戦闘開始からある程度のターン経過、ないしダメージを負うことで陥る特殊ステータス。
・主行動に追加で【捕食】を行います。
・一定回数の【捕食】を行うことでのみ解除されます。
★捕食
・周辺の木々、石、肉、その他口に入れば何でも食べようとします。
・HPが回復します。
・アリストクリエイターがこれを行った場合、追加でHP最大値、物理攻撃力、防御技術、命中が上昇します。
・肉を食べた場合、この上昇値が増加します。
【フィールドデータ】
町中。ごく普通の一軒家。近隣住民の多くは殺害され、残りは退避した模様。
スティーヴンは民家の庭におり、そこへ襲撃をしかける予定。
庭の広さはそれなりにあり、路上にも出られるため戦闘に苦労しないものとします。
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