PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ニホンジンならスシを食え

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●姓はヤマダ
「シャイネン・ナハトは良いなあ。みんなにこにこして、こっちまであったかい気持ちになるってもんだ」
「そうだね。ゴリョウ君、次は年末年始ってところかな」
「ぶはは、そりゃあ落ち着く暇もねえな」
 ケーキを堪能して乾杯したばかりだ。
 暖かい家に戻ると、我が物顔で居座るヤマダがいる。
 居候の姿にも、さして疑問を覚えなくなってきた頃かもしれない。
 この人物の名はヤマダ。
 シルク・ド・マントゥールの狂気に巻き込まれ、一度は一命を落としかけたものの、ゴリョウ・クートン(p3p002081)の輸血により一命をとりとめた人物だ。
 性別も、下の名前すらも周りには知れ渡ってはいないものの、それをきっかけにして知り合い、ゴリョウとは割とうまくやっている。
「年末か……何を食うかねえ」
「それなんだけどね」
「おっ、何かあるのか?」
「ゴリョウ君、”スシ”って知ってるかい?」
「スシ? ああ、おめぇさんが良く言ってる、ニホンの食べ物か?」
「そうなんだよ。ここでも似たようなものは作れるけれど、本当に故郷の味とまで呼べるものはなかなか難しくてね。でも、ちょうどいいことに、海洋でぴったりの魚が獲れるらしいんだよ」
「ふむふむ」
「それで、ちょうどこの魚の研究依頼がボクを通じてローレットから出ててね。破格だよ、ゴリョウ君。なんたって捕まえたらちょっとサンプルを献上して、あとは好きに処分していいっていう条件だ。見てくるといいんじゃないかな?」
「なるほどな……待てよ。おめぇさん、ローレットから仲介料はとったのか?」
「そんなことしないよ」
「そりゃないだろ! 命の恩人の俺にはきっちり請求する癖に……いや、まあいいか、この際」
 ローレットには気前が良いくせ、ゴリョウに対しては財布のひもが固い。
「食べたくない? スシ」
「俺がとってくる魚でか?」
 しょうがねえなあ、と、ゴリョウは立ち上がる。
 美味しいもののためならば。
「じゃあ、行ってくるぜ」
(まあ、魚って言っても、マグロなんだけど……)
 マグロを捕まえるのは……この世界でも結構大変だろう。
 ヤマダは海で奮闘するゴリョウに思いをはせた。
「まあ、ほかの用意は任せておいてね」

●寿司パーティーなのです!
「今夜は寿司パーティーなのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は言ってからしばらく沈黙した。
「間違ったのです。寿司パーティーのための……”マグロ”を捕まえてくる依頼なのです! えっと、違うです! マグロのサンプルを持ってくる依頼でした」
 どうやらテンパっているようである。
「でもでも、ほとんど変わらないのです! 必要なのはちょっとだけ。残りは、好きに処分するようにと……すなわち、終わったらみんなで寿司パーティー、なのです! だから、なんとしても成功させるのです!」
 ユリーカは羽をパタパタさせる。
「とあるたしかな情報筋から仕入れた情報によると……開催は今夜夕方から! こぞって集え、だそうです! レッツゴー!」

GMコメント

関係者依頼でございます。
お寿司、食べたいなあ……!

●目標
 海洋オオマグロを手に入れて、しめやかにニホン式の寿司パーティーを行う。

●状況
<海洋オオマグロ>
・海洋王国の近海を周遊する魚。
 市場に出回れば高値で取引されるマグロ。
 100キロを優に超える。

 厳しい冬、限られた場所にのみ生息するという海洋オオマグロは、すさまじい早さで海を泳ぎ回る。確保するのは非常に困難だ。
 常に泳いでいないと死んでしまう。

 冬の海に引き締められた、脂ののった身は絶品。

 弾丸のようにこっちへ向かい、弾丸のように去って行く。
 逃げるマグロをどのように追うか、漁師の腕前が試される。また、仕留め方に工夫があれば、それだけ美味しいマグロであることだろう。

 確保もたいへんですが、解体にも結構苦労しそうです。

●天候・時刻
 海洋王国。
 やや霧がかった晴れの日の早朝、あたりは非常に寒い。
 マグロを追うのは一日がかりになるだろう……。
 お昼ご飯持参のこと。

 ローレットの手配した船を使用できるが、持ち込んでも良い。

●寿司パーティー
 ヤマダ氏協賛、今夜夕方から立食パーティー。
 マグロがとれる前提で、醤油とわさびと、大量の酢飯、そして海苔や、必要なものが用意されている。
 基本的には、手巻きが基本となっている。
 今夜は寿司パーティーだ!

 海に出かけるのだから、マグロの他にもなにか手に入るかもしれない。
 何か持ち込んでも良いし、混沌風のオリジナル寿司を開発してもいい。

 その他、何か食べ方の工夫があればどうぞ!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • ニホンジンならスシを食え完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年01月13日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
約束の力
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫

リプレイ

●狙うは海洋大マグロ
「海洋オオマグロですかー。わたくしも、常日頃から口にする魚ではございませんでしたわねー」
『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)は海洋の貴族階級の出身だが、家の方針で令嬢らしからぬ技術も持ち合わせている。
「とはいえ、大型の魚を絞めたり解体するのは経験がありますので、色々とお手伝いできると思いますわー」
「頼もしいわぁ。お仕事でお酒代が稼げるだけじゃなく、とれたてぴちぴちのお魚でお寿司パーティーができるなんて!」
「美味しい、マグロ……美味しい、スシ……そ、そんなの…食べてみたいに、決まってます……!」
『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)はにこにこと笑い、『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)は小さな声を絞り出した。
「お寿司といえばニホンシュ……熱燗に冷酒、ああでもやっぱりパーティーらしくジョッキでエール、いえちょっとお洒落にシャンパンでも!」
 欲望は際限なく湧き出てくる。
「がんばり、ましょう……!」
「えぇいとにかく! さくっと獲ってぱーっとやるわよぉ! えいえいおー!」
「えい、えい、おー」
 アーリアに合わせて、メイメイは一生懸命ぴょこんと手を挙げた。
 これでもいつもよりも声が少し大きい。
「祝い事で食べる料理は美味しいに決まってるじゃないか! 美食ギルドの支部長として何が何でも味わってやるぞ!」
『聡慧のラピスラズリ』ヨルムンガンド(p3p002370) はじゅるりと舌なめずりをする。
「刺身、寿司、茶漬け、鍋……いや待て、気が早いぞ私」
『五行絶影』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)もつられ、慌てて口を拭く。
「まずは釣れるかどうかだ。気張っていくぞ! 一本釣りの釣り竿、定置網漁の道具も借りて来よう。撒き餌や釣り餌も調達するか」
「とってからの準備も必要だな……」
 かなり本気だ。
 イレギュラーズたちは心を一つにする。全ては、心に思い描いた料理(スシ)の為に。

 寿司という料理に心当たりがある者たちもいる。汰磨羈もそうであるし、『水底の冷笑』十夜 縁(p3p000099)もまたその一人だ。
「寿司って言やぁ、胡瓜やら玉子やら……後はあれだ、いなり寿司とかいうやつなら食ったことがある」
 縁はふうと息をついた。
「おっさんはああいうのが好みだねぇ。……ま、流石にここじゃ獲れねぇから、ないものねだっても仕方ねぇんだが」
「海産物以外か? なら弁当はせっかくだから、さっぱりした弁当にするか」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は腕をまくる。
「そりゃありがたい」
「スシか、私もあまり食べたことが無いが大層美味だったなあ。それにソバなるものもあったな」
『カオスシーカー』ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)もまた、懐かしい響きに思いをはせる。
「おっ、知ってるのか。皆結構、いろんな世界から来てるよな」
「此方は元の世界でも食べていたが、今思えばあの国を滅亡させたのは大失敗だった。本当に勿体ない事をした……」
 かつての世界でのラルフは数多の災厄を引き起こした大犯罪者。
 特異運命座標の過去はさまざま。そしてそのような者たちの運命が交錯するのも、この世界の面白さか。

●準備
「漁に出るのも、久々ですわー」
 メリルナートはぐいと伸びをする。
「じゃ、待ってるぜ。乗りたい奴は準備が出来たら乗ってくれ」
 縁は自分の船の上から手を振った。
 アーリアはパトロンに頼み込み……というか困ってるそぶりを見せると好意で小型船を回してもらえた。
「他に仲間が必要そうにしているものも、お願いねぇ?」
 アーリアがウィンクをする。

 アーリアとメイメイ、ゴリョウは昼食の支度にとりかかる。
「それじゃあ、昼食のお弁当でも用意するわねぇ~」
「はい……!」
「お腹が空いたら戦は出来ないしねぇ~」
「腹が減っては、だな」
 メイメイの作るサンドイッチやおにぎりは一口サイズだ。
「あら、可愛いわぁ~おつまみによさそうねぇ」
「あ、ありがとうございます……」
 最初は二人にはさまれびくびくしていたメイメイも、時間が経つにつれて慣れてきたように思える。
「ほい、完成だ」
 あっという間に、おしゃれな軽食ができあがっているのだった。
 ラルフは漁の道具のほかにも、野菜や雑穀、調味料と色々取り揃えていた。それを少しばかり借りつつ、味を調える。
「ありがとよ、助かるぜ」
「構わない。定置網用の大型網ももちろんだが、料理の準備も必要だ」
「おっ、これが七輪か」
「焼き魚もいいわよねぇ~」
「あとは、マグロもそうなんだが、海洋チョウザメも欲しいところだ」
「あれはー、たしかにおいしいですわねー」
「あれは卵のみならず身、骨も高級食材と友人に聞いたのでね」
 ラルフとメリルナートが談義に花を咲かせていると、ヨルと汰磨羈がやってきた。
「詳しく聞かせてくれ、いや、実際に味わった方が早いか」
「ああ、確保するまでだ。道具は調達できた」
「こちらもマグロを冷やすための氷水と桶だ。スルメはあったが、イカは難しかった。ただ……私の世界のマグロと同じならば、好物であるイカがいる所にマグロが来ている可能性は高い。なので、現地でイカを釣って確保する事も可能な筈」
「イカか……イカもいいな」
「ヨルちゃんの荷物、重そうねぇ~」
 アーリアがちらりと視線をやると、港の男たちが船に荷物を運び込むのを手伝ってくれる。
「ありがたいものだ」
「助かりますわー」

●マグロを求めて
 縁はひらひら手を振って、船を緩やかに発進させた。
 移動の激しい大マグロ、熟練の漁師すらその正確な場所は知らない。
「あっ私は船酔いするから、先にお酒に酔っておくわぁ」
 アーリアは流れるように酒を飲み始めた。
 アーリアの代わりにファミリア―が空を舞い、情報を伝える。アーリアの鳥が飛び立つのと入れ違いに、メイメイが呼んだ海鳥が舞い降りてくる。
「えっと……こっちに……大きな群れがいるみたいです……」
「よし、いくぞ!」
 ヨルの肺活量から繰り出される大音声が、ぴりぴりと波を揺らした。それに反応して、生き物たちが集まってくる。
「オオマグロ……そうだな、弾丸の様に泳ぐ魚はどの辺りを泳いでいるだろうか? もちろん、タダでとは言わない」
 ヨルは小魚と釣り用の撒き餌を撒いた。
「ふむふむ……」
「なるほど、こっちだね」
 ラルフはヨルの情報からルートを割り出し、簡単なマップを製作した。
 漁場を決めると、潮の流れから他の魚ごと狙える箇所に定置網と釣り竿を設置する。
 しばらくするとラルフの竿が引いた。本命の魚ではないが……。
「おっ、これぞ海洋チョウザメだね」
「副目標達成か。イカも確保だ」
「あら、小魚と貝を拾ってきてくれたのねぇ。助かるわぁ」
 アーリアは鳥からこまごまとした海産物を受け取る。
 となれば、あとは肝心のマグロだ。
「本気でやるのか」
 縁の言葉に、ゴリョウは頷いた。捌いた以下から墨袋を受け取り、スルメを身につけるとぱんと胸を叩く。
「ぶはは、いっちょやってやるか」

●囮
「いくぞ」
 ラルフがロープを結び付けた浮き輪を投げる。
「あ、あっちから……来るみたいです」
 メイメイが下から声を張り上げる。
「……速いもんだな。まあ、避けられないほうでもねぇか」
 縁はマグロとの距離を測る。
「ゴリョウくん、12時の方向よぉ」
 水中のえさ……もといゴリョウは、ファミリア―を通じてのハイ・テレパスで、アーリアからの伝達を受けとる。
 黒い影がぐんぐんと迫ってきていた。ただし、このままでは漁船の横を、ただ通り過ぎてしまっただろう。
 だが、縁が的確に船を操り、マグロの退路を断っていた。前方に障害物アリ、としたマグロはスピードはそのままに泳ぐ方向を変える。導かれるように、ゴリョウの方向へ。
(餌……じゃねぇや、囮のゴリョウが潜ってる辺りはあのへんだ)
 縁はそのまま煙管をふかし、あとを仲間たちに託した。
(ま、あとはなんとかするだろ。……というか、俺なら間違いなく逃げる、この面子おっかねぇ)
 なんたって相手は、獲物を前にした狩人たちである。
「こっちよぉ」
 アーリアのマギシュートが、マグロを直撃し、マグロの軌道をこちら側に逸らした。船に強い衝撃が走るが、ヨルの保護結界が功を奏した。
 マグロが姿を消すと同時に、ぐいとロープが引き、ゴリョウの姿が沈んでいく。
「よしきた」
 ゴリョウはマグロの体当たりを防ぐ。マグロは、どこかで逃げねばと思っていつつも、オークから目が離せない。招惹誘導。
 圧倒的な存在感に、突撃を繰り返す。やわらかくお腹に跳ね返されながらも、マグロは進路を変えられなかった。
 つけていた墨袋がはじけ、視界を覆う。
(よしよし、こっちだ)
 マグロが網にひっかかった。
 ゴリョウは口を開けたマグロに、釣り針を投げ、ぐいと捕まえて浮き上がる。マグロは必死に抵抗したが、オークのもちもちから発生する浮力にはかなわなかった。
 ゴリョウはマグロをがっちりとホールドすると、水に身を任せて浮かび上がり、頭上に300kgを放り投げた。
「獲ったどぉーッ!」
 水しぶきが舞う。
「ヨル君程のパワーは無いが、役には立つだろう」
「いくぞぉ! 竜の力を見せてやろう……!」
 ヨルとラルフはロープをたぐりよせた。
 あと、少し。
「狙う箇所は二つ――脳天かエラ、だ!」
 汰磨羈の絶剣・千法万狩雪宗がエラを切り落とし、マグロの身を傍から凍らせていく。しびれをきらしたヨルは網でマグロをぐいと引き寄せ、船から飛び出す。牙を剥くと、思い切りマグロに噛みついた。
 ワールドイーター。マグロはなすすべもなく息絶えた。
 あとは地上戦。
 ラルフは飛び掛かるマグロの体重を利用し、アルケミックアーツを奈落砕きを見舞う。ゴキリと致命的な音がした。
「仕上げよぉー」
 アーリアのフロストチェインが、身を凍てつかせる。海面から飛び出したマグロはそのままの姿勢で甲板へと落っこちた。
 目標達成。
 船に引き上げられたゴリョウは晴れやかな笑みを見せた。
「よし、ここからだ」
 汰磨羈は素早く刃をマグロに突き立てる。
「できれば解体した状態で保存するのが一番ですが……余裕がありませんわねー」
 メリルナートは素早く動脈を切って血抜きを行う。
 一度冷凍したことで、寄生虫の心配はない。氷水でゆっくりと解凍を進める。素早く急所を突かれて絶命したマグロは、今にも泳ぎ出しそうなほど生き生きしている。
 ヨルは再び海上に魚を集め、情報を丁寧にまとめていた。
「研究が進めばもっと手軽に食べれるようになるかもしれないからな……!」

●キッチン
 陸についたら、さっそく調理開始だ。
「まずは解体しますわねー」
 メリルナートはマイ包丁セットから出刃包丁・刺し身包丁を取り出し、美しい姿勢でマグロに刃を入れた。
 一刀一刀が鮮やかで、骨と身を美しく引きはがす。
「ゴリョウ君、ちょっといいかな? 食べたいものがあってね」
 キッチンに立つゴリョウをラルフが呼び止める。
「なんだ?」
「まず……海洋風漁師鍋、なんていうのはどうだろう? 海洋由来の酒、調味料、獲れた魚で出汁を取るんだ」
「そいつは美味そうだな」
「呼ばれたきがするわぁ?」
 酒と聞いてアーリアがやってきて、一杯味見していった。
「で、それにこれを加えるんだ」
 ラルフが差し出したのは、フカヒレ……いわば高級食材である。
「おっ、チョウザメか」
「これに、野菜、雑穀、海の幸を具材とし煮込んだ荒々しい鍋……なんていうのはどうかな」
「そりゃあ、いいなあ」
「野性的な風味と強烈な旨味が特徴だ、漁師の特権だね」
 鍋の下ごしらえをしながら、思いをはせる。
「で、寿司なんだが、”炙り”と”軍艦”なんてどうだろう?」
「それはどういう……いや、やってみるとするか」
 ゴリョウはラルフの言う通り、脂が乗った大トロに隠し包丁を入れ、切れ目に薬味を塗ると軽く炙る。表面でぱちぱちと油がはじけ、美しく光り輝いている。
「なるほどな……」
「シンプルにして頂点、大トロの持ち味をフルに活かした逸品だね」
「こりゃあいいな」
「次は、海洋軍艦尽くしだ」
「軍艦ねぇ」
「オオマグロの中落ちの上にチョウザメの卵を乗せ軍艦巻きに……こう、くるりと巻くんだ、横に」
「なかなか難しいな。こうか?」
 とはいえ、一発目で成功している。
 明らかにオークの体躯にあるまじき器用さだ。
「素晴らしい。高級食材を余すことなく使った豪華な逸品だ。そうだな、あとはだね……」
 まるで、夢のようなひとときである。
「オイル漬けやなめろうは酒にも合うし、カマトロのだし茶漬け、かぶと煮、漁師鍋や豪華海鮮盛りも良いな!」
 聞いたレシピと普段の料理スキルから、ゴリョウは鮮やかに料理を作り上げていった。もはや、並のレストランの食事ではない。
「うわあ、急ごしらえの設備なのに……」
 ヤマダは感心してみている。
「自慢のFB-10をナメんなよ! 百花調理道具とレシピさえありゃ独壇場よ!」
 食べる喜び、作る楽しさ、振舞う心の温かさ。丁寧に次から次へと料理を仕上げていくゴリョウは、まるでコンサートの指揮者のようだ。
 仲間たちも、思い思いに寿司をアレンジしていた。
「あ……もしかしたら……ですよ? 醤油漬けにした、マグロのお刺身は……クリームチーズと合わせても美味しいのでは……?」
「何!? 慧眼だな……」
「天才だ」
 ヨルと汰磨羈は目を輝かせ、さっそくメイメイの提案を試してみる。……美味しい。
 メイメイはほわりと笑顔を浮かべる。
「こちらもできましたわー」
 メリルナートはマグロを解体し終えると、刺し身のオリーブオイル漬けとマグロのカルパッチョをこしらえていた。
「何々!? お酒にあうわぁー!」
「うーん、これをー、天ぷらにするのはどうでしょうかー」
 メリルナートは首をかしげた。
「天ぷら? 何それぜったいいけるわぁ~」
「何事もチャレンジだな」
 手巻き寿司をひょいとつまみ、衣をつけて寿司を揚げる。
「いいわねぇ~」
「邪魔するぜ」
 台所に縁がやってきた。
「余ってる部分はあるか? 近所に住んでる野良猫に、ちっと遅めのお年玉をやらねぇといけねぇからよ」
「おう、この辺、持ってってくれ」
 縁はスプーンで魚の身を削ぎ取る。

●マグロパーティ
「それじゃあ、依頼の成功をお祝いして……」
「かーんぱい!」
 アーリアの乾杯は、もう10杯目くらいな気がする。
 宴が始まった。
「よし、待ちに待ったお食事タイムだ」
「凄腕料理人さんがいて嬉しいわあ」
「……何やら、凄いラインナップになっているな? いやはや、実に堪らん!」
 汰磨羈はもうよだれをこらえきれない。
「レシピも助かったぜ。あと、絞め方が良かったなぁ」
「本当は何日も冷蔵状態で熟成するのも、旨味が引き立ちますのでお勧めですわー」
 メリルナートが補足する。だが、間違いなく現時点でのベストと言えるだろう。
 目の前のマグロを我慢しろと言うのは酷な話だ。それに十分に、いや、十二分においしい。
「お魚とお酒のマリアージュねぇ」
 アーリアは食べ、飲み、飲み、飲み、3回くらい杯を乾かして上機嫌にお酒をつまむ。
「……!」
 汰磨羈は料理に舌鼓を打つ。一口食べて納得したように何度も頷いた。
「やはり、マグロは最高だ」
 縁は海苔と酢飯で作ったおにぎりを肴に、持ち込んだ酒をちびちび飲んでいる。
「なんせ海産物の類はまったく食えねぇからなぁ……残念だ」
「それにしても十夜くんは残念ねぇ、せめてお酒くらい付き合うわぁ」
「あの、チーズだけですが……」
 メイメイはおずおずと差し出す。
「ん? ありがとよ」
「おっと、卵焼きだ」
 ゴリョウも抜かりなく、用意しているのだった。
「どうも」
「ん~! とろける様で美味いなぁ……」
 ヨルはほっぺたを押さえる。
「ぶはは、手巻きにルールはないからな」
「何巻いてもいいなら今日獲れた美味い物全乗せの……混沌世界の美食の青巻きだぁ!」
 豪快に巨大な手巻きをこしらえると、一口。絶望の青を丸のみにする。様々な食材が主張し、うねり、調和し、それぞれに主張を伝えてくる。
「あぁ……まさに混沌の海を味わってるかの如く……幸せだぁ……」
 あまりの美味しさに、ヨルはほうと空を見上げる。もちろん、食べる手はとまらない。
「んむ、来年も来てみたいな」
「スシ、最高です……!」
 メイメイはとろけそうな顔をする。
「手まり寿司、なんてのもあるらしいぜ。こんな感じか?」
 すかさず一口サイズの小さな寿司が出される。
「わぁ……おいしいです……!」

 思い思いに飲んで食べ、歓談する。ゆっくりと夕日が沈んでいく。
 いつの間にか奥に引っ込んだゴリョウは、また新たな料理を持ってきた。
「よっと、おまちどうさまだ。締めはマグロのアラで出汁取った混沌新年蕎麦だ!」
「待ってました!」
 ヨルから拍手があがる。
「ついでにざるそばも作ってみたが、食うか?」
「ヤマダくん、こんな依頼いっぱい持ち込んでくれないかしらねぇ……」
「気に入ってくれて良かったよ」
「どうよヤマダ、ちったぁ納得できるスシだったか?」
「もうなんでもありだね、ゴリョウくんは」
 ヤマダは悪戯っぽい表情を見せた。ゴリョウくんが参加する時点で、依頼の成功は分かってましたよと言わんばかりに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします!
「(多くの人にとって)異世界の料理であるところのお寿司の腕前は、デフォルトでどれくらいにしたらいいんだろう……」などと思いながらこのシナリオを作ったのですが、手巻きが基本とかいってすいませんでした。
並んだお料理は、どのお料理も料亭並にハイパー美味しかったんじゃないかと思います。
プレイングがどれもおいしそうで、私はおなかがすきました。
みなさまのお腹いっぱいを応援できましたら幸いです。

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