PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Cherry pinkはすれ違う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●恋のお話
「もうすぐシャイネン・ナハトですね! 皆さんはその、恋人とかいるんでしょうか?」
 そう問う『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)もやはり女の子。恋に恋するお年頃なのかもしれない。
「今回はですね、喧嘩をしてしまった2人から同時に依頼が舞い込んだのです」

 片やは『彼女とどうしたら喧嘩の回数を少なくできるか相談させてほしい』。
 片やは『彼と仲直りするキッカケがわからない』。

 なんともまあ、一部からは野次を浴びせられそうなカップルである。
「命にかかわるとかそういうのではありませんし、一緒の依頼として出そうと思うのです。それで仲直りまでしてもらいましょう」
 つまり、相談に乗って仲直りのキッカケを作るところまでがお仕事。実際に仲直りできるかどうかは本人たちにかかっているということだ。
 話を聞いている限り、別れそうではないとのことだが──。
「これまで何度も同じようなことがあったそうなので、今後も続くと別れ話とか……出ちゃうかもしれませんよね? きっと辛くて仕方ないに違いないのです」
 聞けば、それぞれが喫茶店などで話を聞きたいとのこと。もし恋人のいるイレギュラーズがいれば、経験談なども聞かれるだろう。
「シャイネン・ナハトは間に合いそうにありませんが、グラオ・クローネだってあるのです。恋人のイベント前に、お2人の仲直りを手伝ってください!」

GMコメント

●やること
 男女双方の相談に乗る。

●男性側
 喫茶店で待ち合わせ、会話します。飲食物は男性の奢りです。
 彼は大変優柔不断で、これまでも女性がしびれを切らして喧嘩となってしまったようです。彼女とは幼馴染です。
 大切な人との付き合い方で気をつけていることがあれば、それを話すと喜ばれます。

●女性側
 こちらも別の飲食店で待ち合わせ、会話します。女性が奢ってくれます。
 彼女はやや気が強くてせっかちさん。後からやってしまったと後悔するタイプのようです。彼とは幼馴染です。
 大切な人との喧嘩や仲直りエピソードがあれば、それを話すと喜ばれます。

●ご挨拶
 愁と申します。
 2人が喜ぶエピソードは上記に限りません。色々な解決方法を提示してみましょう。……というのをメインに、皆さんの恋バナとか是非聞かせてください。こんな人と付き合いたい、でも大丈夫です!
 相談期間が5日となっております。お気を付けください。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

  • Cherry pinkはすれ違う完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2019年01月06日 21時40分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
サンディ・カルタ(p3p000438)
金庫破り
ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)
子守りコウモリ
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
シラス(p3p004421)
超える者
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手

リプレイ

●Female
「はじめまして。マルク・シリングといいます。男性目線の立場から、相談に乗ることができればと思います」
「初めまして、私はポテトだ。役に立てるか分からないが、宜しく頼む」
 挨拶の言葉を交わすマルク・シリング(p3p001309)と『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)に、依頼人の彼女は弱りきったような面持ちで頷いた。喫茶店に入れば各々が紅茶や軽食を頼み、席につく。
 さあ、誰から切り出すか。何を話すか。
 微妙な雰囲気に「ええと」と話し始めたのはマルクだ。
「改めて確認なんだけど。『彼は好きだが優柔不断な所に困っている』のであって、『優柔不断な彼が嫌い』というわけでは無いんだよね?」
 その問いに虚を突かれたような彼女は、しかしすぐ勿論と答える。
「ずっと一緒にいるんだもの。嫌いだったらさっさと別れてるわ」
 その言葉に『特異運命座標』シラス(p3p004421)は微妙そうな表情を浮かべる。
 正直、野次を飛ばしてやりたいくらいであった。勿論そんな心は奥底に秘めておくが、恋人いない歴=生きてきた年月な彼にとっては贅沢な悩みだ──なんて思っているのかもしれない。当然恋バナは話せない。
 その隣では 『白パンのミミ』ミミ・ザ・キャッスルガード(p3p000867)が1つ目を瞬かせる。
(不思議、悩みなの? したいのわかってるのに?)
 したいのなら、すればいい。したいと思っているのなら、できるのではないか。
 ミミはいずれ母となり、父となる人との子を胸に抱いて育て、教えて。家族で歩み、またいずれは父と腕を組んで巣立ちを見送るつもりでいる。そんな彼女にとって、父となる人はイイ人であれば良い。少なくとも今は、そう思っている。
 だからミミにとって、彼女の悩みはうだうだと複雑に考えてしまっている変なこと。けれど、自分と異なる人の観察は楽しくて仕方ない。
 きっと彼女がそうしたいのにできないのはただ単純なことで──。
「──まだ吐き切ってなくない?」
「え?」
 目を丸くした彼女の胸元へぴっ、と指を差してミミは言う。
「胸に依頼を思い立つ想いが残ってる。全部伝えてない。違う?」
「伝えて……ない? そんなわけ、」
「でも、話し合うのは大事だな」
 深く頷いたのはポテトだ。マルクも同意するように頷く。
 彼女ほどではないかもしれないが、ポテトにもイレギュラーズとなってから出会い、共に過ごした大切な人(フィアンセ)がいるのだ。
「多分、周囲から見たら些細なことで、でも私からしたら凄く不安なことだった」
 そうして話し出したのは、大切な人と喧嘩した時のこと。喧嘩して、謝って、原因を話し合った時のこと。
「謝るだけじゃ、その場だけの解決だからな。そう言う事はしたのか?」
「でも、だって、彼が曖昧だからまた喧嘩になってっ」
「……あー。お姉さんは彼氏がもっと積極的になれば、喧嘩しなさそうなの?」
 シラスが頬を掻きながらそう問えば、彼女は「そうよ!」と力強く返した。もっとはっきりした態度を取れば、喧嘩にまで発展はしないだろう、と。
 その答えにシラスは頤へと手を当てる。
 男女で意識の差はあるだろうし、個人で思う事が違うのは当然だ。けれど。
(出来るなら二人のわだかまりを消してやりたいよな)
 そのためには女性視点の意見だけでは足りないだろう。幸い、ここにはシラスとマルクという男性陣が存在した。
「見方を変えてみたらどうかな?」
 そう告げたのはマルクだ。
 優柔不断なのは短所だが、短所と長所は裏表。言い換えれば思慮深いということでもあるだろう。
「軽々に判断せず、決断が自分や周りの人……貴女へどんな影響を及ぼすのか、十分考えてから決める事が出来る人なんじゃないかな」
「それは……そう、なの?」
 視線を彷徨わせた彼女はその頬をほんの少し赤くする。今までの彼の言動を振り返り、マルクの言葉に当てはめているのかもしれない。
「それに、僕らは往々にして人に何かを期待しすぎる事がある。『決断力』を期待するあまり、決断に時間がかかることが『優柔不断』に見えてしまう。だから、期待と現実との落差にがっかりしてしまってるんじゃないかな」
 期待しているからこそ、そうなってほしいと願う。彼女はその思いが少しばかり強いのだ。
 彼女自身も思い当たる節があるのか、俯いてしまう。マルクはそんな彼女に優しく声をかけた。
「『彼が決めるまで時間がかかる』って事を最初から前提にしていればどうだろう? そんな落差は生じないし、彼も落ち着いて考える事ができると思う」
 マルクの彼女に寄り添った説得は心に届いたようで、先ほどまでの彼へ対する激情のようなものはすっかりしぼんだようだ。
 そこへそっと、シラスが口を開く。
「彼氏さんの態度が煮え切らなかったりするのは、ひょっとしてお姉さんに押され過ぎてしまってるのかも」
 告げられた彼女はこれまでにないくらい目を丸くした。どうやらそんなことは微塵も思ってなかったらしい。
「女の子に求められるよりも、相手を追いかけてたいって気持ちなら俺も分かる気がする」
 それは男性だからこそわかるもの、なのだろうか。
 けれど同時に、それは男性にしかわからないものかもしれない。
「それをただ待ってるのも、お姉さんが退屈っていうか苛々しちゃうと思うからさ。彼氏をお姉さんの手の平の上で転がす位のつもりで、彼氏の方から動くようなアピールしてみるのはどう?」
 今よりも控えめに。言ってしまえば回りくどく。『押してダメなら引いてみろ』ってやつである。
 さらにシラスは彼からの反応にすぐ反応し返すのではなく、焦らすようにしてみたらどうかと提案した。すぐに反応してはダメなのかと彼女は小さく眉を寄せたが、
「もどかしく感じるかもしれないけど、彼氏の方がお姉さん追いかけるのに夢中になったら、もう大変って感じになるかも!」
「た、たっ、大変……!?」
 彼女の顔が赤く染まった。見事に耳まで真っ赤である。恋する乙女の想像力は──妄想力は、一体何を脳裏に思い描かせたのか。
 その後水を飲み、火照りをいくらか冷ました彼女は小さく息をついた。
「その、焦らすとかはまだ、難しいかもしれないわ。でも……控えめなアピール、とか。ちょっと引くくらいはできると思うから頑張る」
 そう考えることができただけでも僥倖だ。
 ポテトは深呼吸をしてみるといい、と彼女にアドバイスする。
「いくらかは気持ちが落ち着く。急に大きく変わろうとしなくて良い。少しずつ、出来ることから変わって行けば良いんだ」
「ええ。そうやって──私も、ちゃんと歩み寄らないとね」
 頷いた彼女は小さく、そしてようやく柔らかく笑みを浮かべた。
「ああ、彼も今のままじゃだめと思っている。2人一緒ならきっと支え合って変わっていけるさ」
 彼女の彼へ対する姿勢が変わりそうな所で、ポテトやマルクたちは仲直りのために考えるべき内容を出していく。それらの考えが纏まれば、話し合いも上手くいくだろう。
 そんな中──。
「ミミ! おしっこ!」
 がたん、とミミが唐突に立ち上がった。明け透けなトイレ発言に皆が唖然としている間にミミはその場を後にしてしまう。
 その先はトイレ──ではなく、外。蝙蝠の翼を広げて空へと向かったミミは、彼氏がいるという喫茶店が見えるくらいの距離を飛ぶ。
(目印で彼氏チームが来るはずだけど、時間かかるかなぁ)
 地図や手帳を見つつ、持っていた干し肉を咀嚼して。ミミは眼下に広がる町を見下ろした。


●Male
「お兄さんの彼女さんはどんな感じの人?」
 教えて? と小首を傾げる『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)。彼はその問いに照れくさげな笑みを浮かべた。
「ずっと一緒だったんだ。ちょっと気が強くてせっかちなところもあるけれど……いつも手を引いてくれて。偶に涙もろい、優しい子だよ」
「カカカッ、いいねぇ。彼女さんのこと、好きなんだな」
(想い想われ、なんて羨ましいぜ)
 その言葉や口調からはとても大切に思っていることが窺える。見た目に反して善人臭漂う『張り子のヒャッハー』ヨシト・エイツ(p3p006813)はコーヒー片手ににっと笑いかけた。
 『最後の戦友』ワルド=ワルド(p3p006338)はケーキを食べつつ、心の内で小さく嘆息する。
(恋愛経験ゼロの私に何を求めるって言うんですかね……まあ、ぼちぼち頑張りますが)
 何せ、仕事だ。そういった経験がないのなら、想像で補うしかない。
 喧嘩の流れは男性の優柔不断な所に、向こうがしびれを切らしてしまうという感じのようである。
 『アニキ!』サンディ・カルタ(p3p000438)は「あのな、」と彼へ口を開いた。
「『喧嘩を少なくする方法』って聞き方な……多分お前、言葉選びが慎重すぎるぜ」
 サンディの言葉に、彼は「そ、そうなのかなぁ……」と困ったように後頭部を掻く。
「ああ。勿論お前にはお前の良さがあるし、だからお前はここまで来た。そこは忘れんなよ。実は、会話や態度には速度も大事なんだ」
 悩んでいることは正直に喋ってしまえばいい、と告げれば彼は首を傾げた。
「そういうもの……なのかい?」
「そういうもんだ。言葉尻を取られて困るような相手さんでもないんだろ?」
 まあ……と曖昧に頷く彼を見て、スティアは彼女の事を想像してみる。
 気が強めでせっかちさん。そんな彼女がこういう返事をしたり、なかなか悩みを話さないというのは──。
「彼女さん、お兄さんが悩んだりしてるのがもぞかしいか、不安になるのかな? 時にはバシッと決めて欲しいのかも」
 不安な時に優しく包み込んであげればときめくタイプだろう。きっと彼女はリードしてほしいのだ。
 けれど、優柔不断になってしまうのは性格的なところもある。彼自身もそこを改善するのは難しいと考えているようだった。
「無理に直そうとせず、それと上手く付き合っていく方法を彼女と共に考えるといいかもしれませんね」
「良いと思う。態度の方がわかりやすいかも?」
 悩む理由を相談してみるとか、と提案するワルド。スティアもその言葉に頷いた。
 優柔不断なところも、アプローチの方法が違えば受け入れてもらえるだろう。だんまりを決め込んでしまうからいけないのだ。
「『君が大切だから迷ってしまって……ごめんね』とかそういう感じで、素直に悩んでる理由を伝えるべきかな? 何も言わないと、不安を煽っちゃうかも」
「不安、かぁ……」
 イマイチ実感の湧かない様子を見せる彼にサンディは例えを出す。
「俺があるミステリアスな女性に『好きです!付き合ってください!』と告白したとして。『あらフフフ……悪くないわね……どうしようかしら?」って返されたとするだろ」
「……煮え切らない返事だね」
「そうだ。断られてはないけど、届いたかどうかは怪しい」
 例えが伝わったことに内心安堵しつつ、サンディは彼へ頷いた。
 返答に時間をかける、ということは直感に反した答えを出そうとしているように客観的には見えるもの。彼女もそう思っている可能性がありそうだ、とサンディは思う。
 嘘をついているように見える、本心を疑ってしまう。そんな状態であったことに気付いた彼は深い溜息をついた。
「それは……困るな」
「互いに大切な人同士なら、本心を曝け出すのもアリだと思うぜ。まぁ、虚実入り乱れてるのも嫌いじゃないけどな。スリリングで」
 本心を出すというのは簡単ではないし、常に美徳と言うわけでもない。けれどもこのカップルはそうすることで前へ進むことができるだろう。
 サンディの後半の台詞に、彼は思わず苦笑を浮かべる。
「スリリングなのは……ちょっと、いや、だいぶご遠慮したいかな。ハラハラしているのは落ち着かなそうだ。
 なあ、参考までにだけど……その、君たちが大切な人とどう向き合ってるのか、教えてもらえるかい?」
「そういうのは正直、よくわかりませんが……」
 と言いつつ、ワルドが挙げたのは『理想を抱きすぎないこと』だ。相手への理想を持ち、勝手に期待して現実に失望する。そうならないようにするのは簡単なようでいて、意外にも難しい。
「貴方も、『いつも手を引いてくれる』と思ってしまうから喧嘩になってしまうのかもしれません」
 成程、と納得する彼へ次に口を開いたのはスティア。とは言っても、彼女の大切な人は恋人ではなく友人だ。
「相手の性格とか理解して行動することかな? 中には素直になれない人もいたりするしね!」
「素直になれない?」
「そう! 実は思ってることと言ってることは違うって人もいるんだよ」
「そういうのも含めて、『相手のマイナスを知る』ってのは心がけた方がいいぜ」
 コーヒーをひと口。ヨシトがそう告げれば彼は興味津々で視線を向ける。
 他者の粗探し、などというネガティブなものではない。完全無欠の人間がいない世界の中、どう相手と付き合うか考えるためのものだ。
「欠点を見ない振りして付き合うのも一つの手ではある。だが、本当に大切なヤツ相手ならその欠点を覚悟した上で、それ以上の『付き合いたい理由』を見直す方が良い」
「……付き合いたい理由」
「ああ。そいつぁ1つの土台になる。相手が何を言おうと、受け止めるための土台だ」
 土台さえ揺らぐことがなければ、きっといつまでも彼らの関係は続いていく。
 それに、とヨシトは付け足した。
「自分に自信を持ってやれ。そいつもまたオメェさんの土台になる」
 悩み、相談してきたこと。それは誰かから見たら些細なことかもしれないが、彼にとっては前へ進むために踏み出した、大きな1歩だ。
 確固とした理由。自らへの自信。もっと突き詰めていけば、彼にとって揺らがぬ土台となることはもっと多くあるだろう。
「揺らがねぇ土台が多くありゃ、それだけ迷うことも少なくなるだろうさ!」
「……ああ、頑張ってみるよ」
 カカカッ、と笑うヨシトに彼もつられるように笑みを浮かべ。それを見たヨシトはさて、と席から立ち上がった。
「ちょいと気分変えて、軽く歩かねぇか?」
 外は寒いが、風に当たればいい気分転換になるだろう。彼が頷き、一同は喫茶店を出る。
 そうだ、とスティアは彼の元へ寄り、仲直りのアドバイスを。
「きっかけはお兄さんが作ってあげるといいかも? 彼女さんは後悔してて、話を切り出しにくいと思うからね」
「ああ……そうだね。頑張ってみるよ」
 そうして行く当てもなく散歩に出た──と思っている彼の後ろで、ヨシトはそれとなく空を仰ぎ見た。橙色がかった空。その中に、ぽつんと黒い影がある。
(さあ、彼女さんチームと合流だ)
 既に仲直りの土台は作った。あとはその土台の上でどうするか、である。


●Significant other
 イレギュラーズたちに連れられた彼と彼女は、互いに互いの顔を見て「「えぇっ!?」」と声を上げた。
「な、なんでどうして、」
 ぽかんとする彼とは対称に、彼女は周りのイレギュラーズへ助けを求めるように視線を向ける。それにマルクはにこりと微笑んだ。
「親子だって恋人だって、自分とは違う人だから。話し合いは大事だよ」
「つまりこれは偶然じゃ──」
「今は勇気を出して、頑張って」
 ね、というようにポテトが彼女の顔を覗き込めば、彼女はうっと言葉を詰まらせた。
 「頑張れ」「頑張れよ、色男!」なんて2人にイレギュラーズから声がかけられ、時に軽く肩を叩かれる。
(邪魔をしちゃ悪いですし……まあきっと大丈夫でしょう)
 彼へニッと笑ってスマートに去って行ったヨシトに続き、ワルドもさっさと建物の影へ身を引いた。彼らが踵を返して去ってしまえば、そこにいるのは2人きり──いいや、まだいた。彼女の近くの壁際にはずっと彼女を尾行していたミミがいる。
 ミミは建物の影でぶわりと毛を膨らませた。それと同時に。
『私も、ちゃんと歩み寄らないとね』
「……えぇっ?」
 突然の声。聞き覚えがある──というか、自分の声に彼女は目を白黒させる。彼も目を丸くしたが、戸惑う彼女に小さく笑みを浮かべた。
 それをこっそりと見て、ミミはその場から距離を取った。
(ミミは、ここまで)
 あとは2人の頑張りだ。

「……歩み寄ってくれるの? 僕もさ、仲直りしたいと思ってたんだ」
「…………その、喧嘩になった理由を、考えてみて……」
 ぽつぽつと話し始める彼女に、悩む素振りを見せながらもなるべく早く返そうとする彼。ぎこちないながらも声を荒げることなく、2人の会話は続いていく。

(……すれ違う度に立ち止まって、もう1度歩調を合わせることができれば……きっと、寄り添って歩いていける)
 2人を遠目に見たマルクは、彼らの様子に安堵の微笑みを浮かべる。サンディもまた、緊張から来る助けの声がなくなったことにほっと小さく息をついて。
 ミミは彼らに気付かれぬよう、空を仰いで呟いた。
「2人だけの──輝かんばかりの、この夜に!」
 既に星降る夜(シャイネン・ナハト)は過ぎてしまったけれど。
 その時確かに、2人の元へかの夜は訪れたのだろう。

 夕暮れに夜の帳が落ちる中。空に一条の光が煌めいた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 皆さんの考えに成程、と思いつつ執筆させて頂きました。
 彼女or彼に伝えている、という雰囲気を出すために今回は会話が多くなったように思いますが、お楽しみいただければ幸いです。

 またご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。

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