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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2018>シャンシャン光るよ鈴の音が

完了

参加者 : 21 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここは港町ローリンローリン
 その片隅にある小さな孤児院。男の子たちは目を覚ますなり、窓へかじりつきました。
「雪だ!」
「雪だ雪だ! いっぱいつもってる!」
「やったー、雪だー!」
 窓を開け放って飛び降りた少年、ザスは腰まで雪に埋もれ「うへええ寒ぃー!」と転げ回りました。爆笑する少年たち。
 その騒ぎを聞いた隣の部屋では少女たちが「バッカじゃないの」と辛口な反応をしつつ髪をとかしたり着替えをしたり。お布団から出てこない幼女チナナを引きずり出したのは無口な少女、リリコ。自分も大きなあくびをしました。
 今日は待ちに待ったシャイネンナハトの日。
 子どもたちは朝食と掃除を終わらせると倉庫へ殺到しました。なかからあふれだしたのは使用済みのダンボールの山。
 シャイネンナハトのこの日は、ダンボールでそりを作り、スピード勝負をするのです。
 勝者はヤドリギの冠をかぶり、ケーキを最初に食べる権利を得るのです。
 料理に舌鼓をうったあとは、ベッドからお布団を持ってきて講堂に敷き、みんなで雑魚寝をするのです。
 たわいないおしゃべりを続けて続けて、やがて雪が積もるように眠りに沈んでいくのです。
 そんな素敵な一日をもっと素敵なものにするために、子どもたちはローレットへおてがみを出しました。

 はいけいイレギュラーズさま(はいけいってなに?)(わかんないけどシスターが付けろって言ってた)
 シャイネンナハトの日に、手づくりそり大会をひらきます。とってもたのしいから、イレギュラーズさんも、さんかしてくれるとうれしいです。よろしくおねがいします。けぃぐ。

 みんなで考えて書いたお手紙。封筒へ入れて、切手を貼って、ポストへいれたのがつい先日のこと。最年長のベネラーが不安そうに言いました。
「イレギュラーズの人たち、来るかな?」
「きっと来てくれるよ、きっと。あ、そのダンボール俺が狙ってたやつー!」
「ふふーん、速いもの勝ちよ! 見てなさい、ヤドリギの冠はあたしのものだからね!」
 ベネラーに答えた少年ユリックが、少女ミョールにお目当てを奪われちゃいました。
 さあ、材料を脇に抱え込んで、はさみとカッターとガムテープを用意して。楽しい楽しい工作の時間。イレギュラーズはまだかなあ?

GMコメント

雪の一日を遊びつくそう。
同行者はIDとフルネーム、または待ち合わせ用共通タグでくくってください。

行動例
【雪】
 そり大会でタイムを競います。お手製のダンボールそりで優勝を狙いましょう。大人気は捨てろ。有効そうなスキルがあれば評価します。
【寝】
 男女混合。ごろ寝してぶっちゃけトークとかしましょう。パジャマで。

手作りダンボールそり大会はヨーロッパの方の町おこしでちょいちょいやってるらしいです。
箱型だったり舟型だったり、ダンボールでスキー板を自作して取り付けたりと、本格的でした。
そんな話題をお届けするみどりですが、じつは寒いのが猫より苦手でウィンタースポーツ? なにそれおいしいの? って感じです。冬はこたつでみかんがジャスティス。住むならヨーロッパよりベトナムとかがいい。

こどもたち
 12才男ベネラー おどおど 僕
 10才男ユリック いばりんぼう 俺
 8才男ザス おちょうしもの オレ
 8才女ミョール みえっぱり あたし
 10才女リリコ 無口 私
 5才女セレーデ さびしがりや わたし
 5才男ロロフォイ あまえんぼう ボク
 3才女チナナ 泣き虫 自分の名前
 院長 シスターイザベラ ヤドリギの冠を用意しています。

  • <Scheinen Nacht2018>シャンシャン光るよ鈴の音が完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2019年01月02日 22時00分
  • 参加人数21/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 21 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(21人)

鳶島 津々流(p3p000141)
かそけき花霞
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
武器商人(p3p001107)
闇之雲
グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
ニーニア・リーカー(p3p002058)
辻ポストガール
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ラルフ・ザン・ネセサリー(p3p004095)
我が為に
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
神埼 衣(p3p004263)
狼少女
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
メイメイ・ルー(p3p004460)
祈りと誓いと
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ロク(p3p005176)
クソ犬
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
閠(p3p006838)
真白き咎鴉

リプレイ


 雪が降り積もって、どこもかしこも真っ白です。木々はこんもりとしろがねの冠を戴いています。イレギュラーズたちが入口の門を開いた途端、ドアを押し開いて子どもたちが飛び出してきました。
「イレギュラーズさんだ!」
「こんにちは!」
「こんにちは、ようこそ!」
 津々流とニーニアが子どもたちへ近づくと、子どもたちが雪を押しのけるようにかき分けて、次から次へと飛びついてきました。
「大歓迎だね。うれしいよ。雪も見事に積もって空は快晴。絶好の雪遊び日和だね」
 津々流はロロフォイを抱き上げ、チナナの頭を撫でました。
「今日の僕は君たち年少さんと一緒に参加しよう。丈夫なそりを作ろうね」
 水色のエプロンの少女セレーデが照れたように笑い、津々流にそっと身を寄せました。
「まずはみんな並んで並んで」
 ニーニアが両手を上げ、みんなの注目を集めます。取りいだしたるのはカラフルなポストカード。シャイネンナハトのツリーが描かれた絵葉書です。
「素敵なお手紙をくれた皆に、郵便屋さんからのお返事だよ。はい、あせらないあせらない。ちゃーんと全員分用意してあるからね!」
 わっと集まってきた子どもたちの元気さに押され気味のニーニア。でもそこはイレギュラーズ、冷静に一枚一枚渡していきます。
「それじゃあみんなでソリ大会だね、がんばろー!」
 おー! と、広い庭に歓声が響き渡りました。

 講堂いっぱいにダンボールをちらかして、大人も子供も年上も年下も、みんなそろってそり作りに夢中です。
 独りで黙々とそりを作っていたリリコは蜻蛉とメイメイのライバル宣言を受けていつも以上にやる気になっていました。もっとも、表情にはでないのですけれど。
 そこへふらりと影が落ちます。顔をあげなくても、誰なのかはわかっていました。リリコはほんのりと微笑んで武器商人を見上げます。
「ヒイラギの冠をお望みかぃ?」
 胸の内を見透かされたリリコは恥ずかしげに頬を染めます。
「いいとも、それをキミが望むなら我(アタシ)はキミを助けよう。だからしっかりソリに掴まっているんだよ」
「……ありがとう」

 シスターイザベラはリリコを見て微笑みを漏らしました。
「いつも独りでいるから心配していたけれど、少しずつお友達が増えているようね」
「見ただけでわかるもんなのかい?」
「ええ、だって毎日欠かさず成長記をつけていますから」
「そりゃすごい」
 みつきはイザベラの一言に舌を巻きました。
「いつも忙しいらしいじゃねえか。貴族の対応やら役所の書類作りやら、そのうえ子どもたちを逐一見て回ってるってのかい?」
「ええ」
「ちとおつかれな時もあるんじゃねえか」
「ふふ、そうなんです。というわけで写真判定用の撮影をお願いします」
「は?」
「ゴールの真横から撮ってくださいね」
 にこにこと圧をかけられて、まあやることがあるのならとみつきはシスターからカメラを受け取りました。

 スタート地点に二台のソリが並びました。
 リリコのちんまりとしたソリと、ヨルムンガンドのシンプルなソリです。
「よーい、スタート!」
 みんなの掛け声で両者、飛び出しました。ヨルムンガンドのほうが拳ひとつ分速いです。
「ふふ……すまないなリリコ。勝負事とあっては手を抜く訳にはいかないなぁ……! それに、ケーキを食べる権利か……絶対勝ちに行くぞ!」
「ふれー! ふれー! どっちもがんばえー!」
 チナナが体中を使って旗を振っています。
「私の凄さを見ているがいい! 雪の上にヨルお姉さんあり……だぞ!」
 鋭い眼光が只者でないオーラを放ちます。
「この速さだ、もうだいぶ引き離しただろ……おお!?」
 いつのまにかリリコのソリが横に並んでいました。彼女の背中を風の精霊が押しているなんて誰にもわかりっこありません。そう、ただひとりをのぞいては。
(大人が大人気ないのなら、子供がちょいと小賢しい手段を使っても問題ないよねぇ?)
 武器商人が、くつりと笑いました。ヨルムンガンドが闘志をメラメラ燃やします。
「ならば見せてやろう……雪上の流星を!!」
 ソリの前の方へぐっと体重をよせて、スピードアップ! リリコのソリも負けずに猛追。両者ほぼ同時にゴールへ滑り込みました。
「あら、さっそく写真判定だわ。みつきさんお願いします」
「はいはい、意外と人使い荒いんすねシスター。えー……結果は、ヨルムンガンド!」
「やったー! やったやった!」
 ヨルムンガンドが飛び上がりました。
 静かに顔を伏せたままのリリコの頭を武器商人が撫でます。
「悔しいかぃ。悔しさは両足へ込めれば、立ち上がる力に変わる。ヒヒ……不思議なことにね」
 リリコはうなずくと穏やかな顔でヨルムンガンドへ近づき、握手を交わしました。

「蜻蛉さま、これを、どうぞ。……んしょ、んしょ」
 首筋を包むぬくもりに、蜻蛉は思わず微笑がこぼれました。メイメイが着付けてくれたマフラーが、それ以上に彼女の心が暖かくてうれしくて。
「ごめんね……でもぬくといわ、ありがとう」
「いいえ、すこしでも……暖まれば」
 そう言ってメイメイはもふっと蜻蛉にくっつきました。ふたりでいっしょにソリへ入ります。ソリの側面には仲の良い猫と羊の絵が綴られていました。
 その隣には津々流のソリ。チナナを先頭に、ロロフォイとセレーデ、彼らを抱えるように津々流が乗っています。簡単に壊れないように、二重にしたダンボールには、こちらもすてきな雪降る庭の絵が描かれていました。
(子供たちの楽しい思い出の一ページになりますように)
 津々流はにこにこと年少さんたちの相手をしています。
 そして満を持してスタート地点へ乗り入れたのは、ルチアーノとノースポール。ソリの先端はロケットのように尖っています。前にルチアーノが、後ろにノースポールが着席。三台のソリは一斉に雪の斜面を下りおりました。速い、速い、ロケットソリ。堂々の一位でゴールです。
 が。
「えっ。これどうやって止まるんだっけ、ねえポー!」
「えー、むりだよルーク。ブレーキついてないもん」
「へー、そうなん……うわあああああ!」
 雪原でバウンドしたロケットソリ、あわや転倒かと思いきや。
「どすこおおおおい!」
 何者かがロケットソリを正面から受け止めました。
「た、助かったよポー……」
「ありがとう、えーと」
「ぶはははっ! 怪我とかすんじゃねぇぞ皆の衆! 俺はゴリョウ、ゴリョウ・クートンだ!」
 どうやら持ち前のもちもち腹でロケットソリの衝撃を吸収してのけたようです。
「ほら、かまくら入って休憩していけ。って、ぬおぁー! 凍えた手を俺の腹につっこんで暖を取ろうとするんじゃない! ギフト使って周囲ごと暖めるぞこんにゃろう!」
 ルチアーノとノースポールに追い回されるゴリョウの姿に、蜻蛉とメイメイは大いに笑いました。
(おかげさんでええ時間やった)
 何もかもすべてがいとおしく見えて、蜻蛉はにじむ視界をハンカチでそっと押さえました。
「……これ」
 借りていたマフラーをメイメイの首へ戻し、彼女の視線に合わせてにっこり。
「メイメイちゃん。うちと巡り合うてくれて、おおきに」
 蜻蛉のぬくもりが残るマフラーに触れ、メイメイは感激のあまりつっかえつっかえ一生懸命しゃべりました。
「私も……嬉しい、です。蜻蛉さまと、大切な思い出が、たくさん。これからも……どうぞ、よろしく、ですよ……!」
 そしてマフラーの半分を寒そうな蜻蛉へ巻き返し、ふたりでぬくもりをはんぶんこ。

 作り上げたばかりのソリを引いてスタート地点についた閠。
「こ、これで本当に大丈夫かなあ……」
「だーいじょうぶよっ、このあたしが一緒に作ってあげたんだから!」
「そうだって、自信持って閠にーちゃん!」
 ミョールとザスに背中を押されるも、どうにも不安な出だしの閠。だってお隣が。
「僕のこれかい? スノウホワイト・クリス号だよ! 大事な馬を模して作ってみたんだ」
「これは犬じゃなくて狼だよ。狼の頭飾り」
「わたしはねえ! ほら! ロバ! ロリババアの頭作ったよ! 見て、この美しい造形……すばらしい生き物だよ……」
 お隣りのソリがケルベロス仕様なんだもの。音楽性の違いとか絶対起こらないんだろうなというクリスティアン、衣、ロクの仲の良さ。
「スタート!」
 号令にええいままよと飛び出していく閠。隣のケルベロスソリも軽快に、軽快に?
(うわあああ、空中分解しちゃってるううううう!)
 閠の眼の前でソリは消え失せ、三人そろって雪玉と化してゴールへなだれこむケルベロスチーム。
「まずはひとぉつ! 続けてふたぁつ! 残ったみっつぅ!」
 ゴリョウが次々と雪玉を受け止めていきます。頼もしいことこの上ありません。
「ほら、かまくら入った入った、体あたためとけ!」
「ロクちゃん、だっこしてあげる」
「衣ちゃん暖かい……」
 ソリを丈夫に作っておいてよかった。そう思い知った閠でした。

「それでは総合優勝者を発表します」
 シスターは、こほんと咳払いをしました。
「ルチアーノ&ノースポール!」
「「ばんざーい!」」
 同時に飛び上がった二人に、子供たちがおめでとうの歌を歌います。
「ハァイみんな! 最後に全員でもうひとすべりしない?」
 そこへニーニアが大きなソリを押しながらやってきました。
 子供たちはもちろんシスターも。イレギュラーズだって全員、下で待機していたゴリョウも加えて、ソリは斜面を滑り始めました。風がびゅんびゅん吹いていきます。雪がぱちぱちと顔に当たります。なんとも爽快です。いつのまにかみんな声を上げて笑っていました。もう一回、もう一回と、みんな童心に帰ってソリ遊びを楽しんだのです。

「さあごはんの時間だぞ、みんな」
「リクエストには全部答えたぞ。思う存分食べてくれ!」
 ポテトとリゲルが得意満面にそう言いました。食堂にはずらりと料理が並んでいます。どれもこれも私を食べてと言っているようです。
 中央にはスクエアタイプの大きなケーキ。リゲルの持ち込んだシャイネンナハトのブーケが飾られています。拍手に包まれ、ノースポールとルチアーノが照れながらケーキナイフを手にしました。なんだかケーキ入刀みたいです。
 リゲルは大切なフィアンセに向かって言いました。
「ポテト、おつかれさま。あれだけの料理を用意するのは大変だっただろう」
「リゲルもお手伝いおつかれさま、みんな喜んでくれてるし成功だな」
 にこりと笑うと、ポテトはリゲルの口に何かを押し込みました。軽やかな甘みが口いっぱいに広がりました。クリームが舌の上ですっと溶けていきます。
「ケーキを一番に食べるのはソリ優勝者の特権だけど、味見は作った人の特権だからな。内緒だぞ?」
 いたずらっぽく笑うフィアンセに、リゲルは苦笑を返し、すばやく唇を奪いました。ポテトの舌先に、クリームの甘さが宿ります。
「これで共犯だ、ポテト」
「なんてことをしてくれたんだ。みんなに合わせる顔がないじゃないか」
「なら俺だけを見ていればいい」
「言うなあリゲル。シャイネンナハトの魔法かな?」


「今日は特別にホットミルクで夜更かしをしちゃいましょ~!」
 アーリアはマグカップにたっぷりの温めたミルクとスプーン一杯のコンデンスミルクを溶かして、ほやほや幸せそうに笑いました。ゆったりしたパジャマはもこもこで、うりぼうのプリントが入ったファンシー柄。
「さぁて、パジャマで夜のお話といえば恋のお話! よね~!」
「え? 恋? ……シュテ、恋、わからない、なの」
 シュテルンがさみしげに眉根を寄せました。
「あらあらぁ! シュテちゃんは人を特別に好きになったことがないの?」
「好き、特別な好き、わからない、なの。でもね、お友達、いっぱい、いる、してる、今が、幸せ! それだけじゃ、ダメ?」
「んーん、それも素敵だと思うわぁ。友達が増えるのは笑顔が増えること、笑顔が増えることは、シュテちゃんにとってもみんなにとってもいいこと」
「うん、シュテ、とっても、幸せ、する、してる、していく」
 シュテルンはややぎこちないながらも、それこそホットミルクみたいに笑ってみせました。
「アーリアは、恋、する、した、こと、あるの?」
「……おねーさん? おねーさんは秘密ー」
 アーリアはシュテルンへ甘い声で耳打ちしました。
「そうねぇ。一緒にお酒が飲めて、ちょーっと人を弄るのが好きで、でも優しい人が好きかしらねぇ。ふふー、あとはそうねぇ……もふもふ……」
 ぱっと離れて艶めいた笑みひとつ。
「……秘密よぉ?」
 その楽しげな響き。大人の色香がただよい、シュテルンはくらりとしました。

「遅くなってすまないシスター。不肖の弟子が迷子になってな」
「だから地図が悪いんだよクソ師匠! 「いけばわかる」ってなんだよ!」
「静かにしろバカ弟子」
 シスターがお辞儀をしたので、ラルフとミルヴィは言い争いをやめました。
「子供たちの経過観察をしに来た。少し時間をもらいたい」
「いつもありがとうございますラルフさん」
 ラルフはシスターから信頼されているようでした。
「気にしないでほしい。あの呪いは興味深かった故。手伝いなさいミルヴィ」
 ミルヴィはテキパキと事を進めていきます。ラルフは子供たちの健康診断をし、それぞれにあわせて栄養剤などの薬を処方しました。
「遅くなりましたし、泊まっていかれてはいかがですか?」
「ああ助かるシスター。……それにしても、あんなことがあったのに皆元気だな。何故あのような呪いが起こったのか。突き止めてみたいものだ。子どもを害するものは許せない」
「ラルフさんは子ども好きですね」
「ああ、子供は好きだよ。彼等には無限の可能性がある」
 そのやりとりを、ミルヴィは複雑な思いで聞いていました。
「ちょっといい?」
 そう声をかけ、ラルフの襟首を掴み、廊下へ出ます。
「この際だからハッキリ聞くよ。アンタがその後生大事にしてるそのボロ時計、何でそれにアタシの母さんの写真があるの?」
 ラルフは痛いところを突かれたように顔をしかめました。おそろしい沈黙が落ちます。
「……それで?俺がお前の父として何か変わるのか? お前の父は見ず知らずの女を助け、お前を育てた旅芸人の青年だ。安心しろ、この薄汚い悪党では無い」
 ミルヴィにはわかっていました。ラルフが実父であること。何かと世話を焼いてくれたこと。しらばっくれるだろうことも、もちろん。
「ケド、アタシが勝手に呼ぶ分にはイーよね? パ・パ?」
 ラルフはふっと短く吐息をこぼしました。笑ったようでした。
「勝手にしなさい」

 深夜、月明かりが氷白の人狼の毛皮を淡く光らせていました。彼の衣装はサンタクロース。眠りに満ちた講堂で、彼だけがそっと忍び歩き。
(……孤児院のみんなが……元気にしてるか……見に来たけど……。うん……前よりも……元気にしているみたいだね……良かった……)
 そう思いながら音を立てずに枕元へプレゼントボックスを置いていきます。
(……ベネラーさんも……元気で何よりだよ……)
 そう思いつつ緑の箱を隣へ。
 ひとつ、またひとつ。そうして全員の枕元へプレゼントを配り終えた彼は、来たときと同じように物音一つ立てず去っていきました。

 朝。子供たちは予想外のプレゼントに大興奮。
「サンタだ!」
「本当にサンタが来た!」
 大喜びでプレゼントをあける子供たちの中で、ベネラーだけが包装紙にはさまった銀糸の毛に気づいていました。
(グレイルさん。来てたんだ。挨拶したかったなあ……)
 ベネラーは顔を上げました。まだ外は少し怖くはあるけれど。
(僕も……グレイルさんに会いに行きたいな……)

成否

成功

MVP

グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
MVPはサンタさんをかってでたグレイルさんへ。
総合優勝のルチアーノさんとノースポールさんへは称号「ロケットスターター」をおそろいでお送りしています。
またのご利用をおまちしています。

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