シナリオ詳細
<ジーニアス・ゲイム>盗賊少年は武力で襲い来る
オープニング
●南北からの挟み撃ち……?
ラサから落ち延び、勢力を復活させた『盗賊王』キング・スコルピオの軍勢は今まさに幻想南部を侵していた。
ローレットの対応、イレギュラーズの活躍もあり、幻想体制側は彼等の魔手をかなりの局面で挫く事には成功したが、少なくない街や拠点が『新生砂蠍』の手に落ちたのは事実だった。
陥落せしめた拠点を橋頭堡に、幻想王都メフ・メフィートを狙う砂蠍。
貴族軍もそうはさせじと考えるが、最悪のタイミングで北部戦線の名将ザーバ――鉄帝国の軍勢も動き出さんとしていた。
帝都スチールグラード近郊。そこに存在する穀物倉庫が焼かれたのだ。
越冬の為の備えを害するという最悪の凶行を果たした下手人は挙がらず、帝都は不穏な空気に包まれているという。
ザーバは『何としても自身等を動かさんとする意思』の存在を確信し、不本意なるこの機会を活かす事を決めたのだ。
幻想側にローレット――特異運命座標の助力がある事を危惧する副官に彼は言う。
「問題ない。『こちらも依頼を出せば相殺になる』」
不敵に言った彼は続ける。ギルド条約はローレットの生命線だ、と。
――『神託』とやらへの熱心さは兎も角、ゼシュテルもその一員なら、連中は正式に請われれば政治的な中立を保つ他はない。
――敵は敵にしなければ敵にもならん。あの『蒼剣』はどっちが勝とうと構わんのさ。
「俺が知る限り奴はそういう合理主義者。例のパンドラを集められれば手段は問わぬだろうよ」
果たして、幻想・鉄帝両国から助力の依頼は届けられた。
ギルドの方針は『どちらも受諾する。それが、ローレットがローレットとして成立する最低条件』だ。
北部戦線幻想側、北部戦線鉄帝側、そして南部新生砂蠍への対応――。
イレギュラーズの直面する依頼は、かつてない程に複雑な状況を見せるだろう。
結末はまだ、見えない。
●新生・砂蠍部隊討伐依頼
幻想ローレットには、多数の依頼が並ぶ。
そのほとんどが、北部戦線へとの加勢、もしくは『新生・砂蠍』の討伐依頼である。
「幻想は今、大変な状況になっていますね……」
この事態に不安もある『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)だが、彼女なりにイレギュラーズ達へと依頼を伝えようとしていた。
幻想南部では『新生・砂蠍』が陥落した箇所に拠点を置き、橋頭堡として幻想王都メフ・メフィートを狙っている。
「強力な軍隊と化した砂蠍の目的は国盗りに違いないようですね。予断は許さぬ状況です」
幻想貴族達も策を講じているらしく、有力貴族は北部戦線へと対応を行っている。
それ以外の貴族、騎士が砂蠍へと対抗準備を進めており、ローレットにも加勢の打診が来ている。
北部戦線の方にも、幻想、鉄帝の両方から助力要請が届いているのだが、そちらは今回のアクアベルの依頼とは別件となる為、割愛する。
もちろん、北部も大変な状況ではあるが、幻想南部での砂蠍との対決も重要であり、混沌を極める状況を打開せねばならない。
さて、アクアベルの依頼は、『新生・砂蠍』の一員である少年、ライナー・ヘットナーが率いる部隊のこと。
「この部隊が以前占拠した町の区画を、再度奪いに向かってくるようです」
前回は占拠された街の奪還だったが、今回は逆の状況。
あちらもイレギュラーズがどう攻めて来たのか、把握している為にそれを踏まえた対策を取りたいところだ。
自警団は今回、集落民の避難に動いている為参加できないが、「幸い、貴族軍の援護を受けることが出来る。
「とはいえ、数も実力は向こうの方が上だと思われます。地の利を生かした作戦を取りたいところですね」
貴族軍はある程度、イレギュラーズの意に沿って動いてくれる。
遠距離攻撃が得意な兵もいるので、うまく活用したいところだ。
もちろん、指揮官、部隊長はこちらで対応したい。こちらはこちらでうまく対処する為の作戦が必要だろう。
「大まかではありますが、以上です。……検討をお祈りします」
最後にアクアベルは戦地に赴くイレギュラーズ達を、そう激励したのだった。
- <ジーニアス・ゲイム>盗賊少年は武力で襲い来る完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2018年12月12日 21時50分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●陣取りゲームの開幕
幻想南部の街へと到着したイレギュラーズ達。
「どこもかしこも、砂蠍の噂で持ちきり……か」
手足を機械化させた旅人、『傭兵』ユー・アレクシオ(p3p006118)は今回の相手である『新生・砂蠍』が結構な規模の団体だと聞いていた。
だが、相手より少ないとはいえ、こちらも大所帯だ。
「街に限らず自身の住む場所を護りたい気持ちは、貴族だろうがローレットだろうが変わらないだろうしな。
ユーの後方には街の防衛の為にと、近接、狙撃、魔術兵合わせて50人もの貴族軍がついてきてくれている。
「他の仲間と連携して、人数差もひっくり返すぞ」
ユーの言葉に、まだあどけない少女の容姿をした『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)が同意する。
「ルールは簡単。奪った場所を取り返されなければいいだけ、シンプルだよね」
この戦いを『陣取り』に例えるリンネだが、一筋縄で行くはずもないことは重々承知している。
ただ、集団戦だからこそ、戦場の指揮者たる自身が本領発揮できそうだとリンネは考えていたようだ。
「町中での迎撃戦だね。守る側なら、しっかり準備を整えて迎え撃たないとね」
茶色の髪に丸眼鏡の『絆の手紙』ニーニア・リーカー(p3p002058)は、一本道のメインストリートを見詰める。
だが、裏道はそれなりに入り組んでおり、彼女のギフト『マッピング』は十分に活躍できそうだ。
「『取られたものは取り返す』と、熊のような子達だね」
蝙蝠の翼を持つ少女といった風貌の『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は、そんな態度の『新生・砂蠍』を気に入ったらしく。
「獣ならば獣らしく、争って死ぬのも本望だろう」
自分を飢えた獣と自認する彼女もまた、互いを喰い合うのに何の支障もないと口元を吊り上げる。
「国盗りか」
そこで、赤髪の女性の姿を取る『鳳凰』エリシア(p3p006057)が呟く。
相手の真意はともかく、男として上を目指す心意気だけはエリシアも一通り褒めはしたものの。
「だが……、手段故に、神たる我は許さぬ。裁きを下そうぞ」
マルベート、エリシアは、元の世界で人外であったが故に、それぞれ違った視点を持っているのだろう。
「勝った方がこの町を総取り。さあ始めよう」
リンネの言葉を受け、メンバー達は街中で散開し始めたのだった。
まだ、『砂蠍』の姿は近場にはない。
その為、イレギュラーズ一行はその僅かな間にできる限りの準備を整える。
今回、作戦立案でメインとなったのは、とある世界の日本のJKだという『特異運命座標』藤堂 夕(p3p006645)。
彼女は戦いの展開を大雑把に前後半で分け、戦略を立てる。
「街路にバリケードや罠を設置しよう」
後半は敵の撃滅を目指すが、前半は消耗を抑えつつ敵兵力を削りたいと夕は話す。
そして、夕は貴族軍にバリケードの設置を頼む。
バリケードの素材は、周囲の家々にある机、棚、タンスなど木材の家具など。
白猫の獣種、『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)は40m毎を目標にバリケードをと。また、そのミアがまるるんと呼ぶマルベートは少しでもバリケードの数を多く、そして、硬くしようと主張する。
ただ、短時間で集める素材にも限界がある為、夕の原案通り100m間隔で、かつ1つ当たり丁寧に造ることにする。
敢えて薄い部分も作ることで、敵をそちらへと誘い込むよう工夫する。ミアはそのバリケードの間に銃弾や魔法を通す為の仕掛け窓……銃眼を仕込んでいく。
また、ミアは貴族軍に頼み、バリケードのすぐ後ろにも何やら仕掛けていたようだ。
街路で作業するメンバーの一方、ニーニアはギフトを活かして十分に裏手の道まで覚えつつ、屋根上や屋根同士を繋ぐハシゴなどに細工していく。
こちらはバリケード作成の手伝いをしつつ、呼び出した小鳥のファミリアーと視覚共有していたエリシア。
程なくして、彼女が敵らしき一団の姿を確認し、皆作業に区切りをつけて所定の配置についていく。
「そろそろお客人のご到着だ。派手に出迎えるとしよう!」
エリシアの言葉を小鳥のファミリアー越しで確認し、『特異運命座標』シラス(p3p004421)も故郷の幻想を護ろうと愛杖を手に構える。
マルベートはこれまでに喰らって来た命を自らの血肉へと変換し、盗賊どもを殺戮する為の力としてその接近を待つのである。
●小細工上等!
街に近づいてくる複数の馬車。
「ライナーどの、見えてきました」
「うん、やろうか」
にやりと笑う指揮官の少年ライナーは、赤い軽装鎧の部隊長アッシラと共に馬車から飛び降りる。
他の馬車からも多数の盗賊……いや、一見すれば騎士にも見える軽装鎧着用の部隊員らが降り立つ。
エミリアは建物右手側の屋上でその襲来を確認し、『新生・砂蠍』の部隊へ叫びかけた。
「よく来たな、愚か者共よ! 神の雷をもって歓迎しよう!」
エミリアが『フォールーン・ロッド』を突き出して迸る一条の光を放った直後、傍の狙撃兵が一斉に矢や銃弾を飛ばす。
「さすがに対策してきたか」
念力弾を浮遊させたライナー。
相手は指揮官以外、攻撃手段は近接系のみ。指揮官も迂闊に部下を巻き込むわけには行かぬと考え、矢や銃弾を浴びながらも部隊を前進させていく。
程なくして、敵部隊は街路のバリケード手前に至る。
バリケードは4つ。それらを突破される間に、なんとか敵の数を減らしたい。
(数でこちらが不利な状況である以上、貴族軍の奴らをどう守るかが重要だ)
布陣の最前線に立つユーは、バリケードの薄い部分に近づいてくる敵をしっかりとブロックする。
その上で、ユーは盾のように操る『ミラージュマント』に電撃を溜め、殴りかかってスタンさせていたようだ。
マルベートも別の薄い部分で、バリケード越しに槍兵数名に相手へと切りかからせる。
「これでも本性は狼なのでね」
群れでの狩りを楽しみつつ、彼女はフォークとナイフを模した片手槍を操り、騎士崩れの部隊員を蹴散らそうとしていた。
ただ、相手もバリケードの破壊に動き、さらにそれを乗り越えようとしてくる。
そこはしっかり夕も対策しており、予め近接兵10名に作ってもらっていた油の入った壷や瓶をバリケードに投げつけさせる。
さらに夕はそこへ火を放つことで、しばらく後退の為の時間稼ぎを行う。
「前線部隊を支援するよ」
リンネは後退しながらも、戦いに熱狂させる赤の彩りで率いる魔術部隊を鼓舞すると、彼らは一斉に術を発してくれる。
魔力弾に打ちつけられる部隊員はなんとかバリケードを乗り越えるが、そこに仕掛けられた落とし穴にハマり、くくり縄で足を吊られてしまう。
「ちょろい……の♪」
突破した直後の気の緩みを狙った罠はまさに、ミアの思惑通りだ。
それでも徐々に進軍してくる敵部隊へ、街路の両脇の裏手側からそれぞれ右はニーニア、左はシラスが姿を現して攻撃を仕掛ける。
10名の狙撃兵と共に布陣していたシラスは魔弾を放ち、さらに兵へと矢を射掛けさせていた。
ニーニアはヴェノムクラウドを手紙に仕込んで投擲し、相手を猛毒に侵す。
誰も連れてはいない彼女は敵の標的となり、数体の部隊員が路地へと駆けていく。
しかし、これもまたメンバー達の思惑どおり。
ニーニアはシラスと交換したファミリアーで連絡をとりつつ、相手を誘導していくのだった。
●後退しながらの防衛戦
あくまで、バリケードは時間稼ぎ。
それらを突破されるまでに相手を弱らせられたなら、この作戦の成果は上々といったところ。
「はあっ!」
禍々しい鉾で部隊長アッシラが2基目のバリケードも破壊する中、エリシアは攻め込む敵へと殺傷の霧を浴びせかけていく。
それでも向かってくる敵へ、ミアも魔術兵と次々に魔法と弾幕の嵐で雑兵の数を減らしていた。
「やってくれるね」
以前、この街を占拠していたこともあり、ある程度この街の地形の把握しているライナー。
彼は動ける者に、裏道から攻め入るよう指示を出していたようだ。
一部それに先行し、盗賊達がニーニアを追う。
路地を走り回りつつ、彼女はシラスとタイミングを取って頭上の影の下を通過する。
そこを通りがかった盗賊達の頭上から、バリケードの廃材、土嚢や前回襲撃時の瓦礫が落ちてくる。押し潰された盗賊は動けなくなっていた。
その後、ニーニアは自身の翼を使い、建物の屋根へと着地する。
盗賊達は彼女を追って設置された梯子を上り屋根を伝うが、相手の行動を確認したエリシアが浮遊し、梯子を落としてついて来られないようにする。
うまく行ったとニーニアは振り返りつつ、追ってくる盗賊を次なる罠ポイントへと誘導していく。
「了解、すぐ向かうぞ」
小鳥のファミリアーでニーニアが向かうポイントを把握するシラスも、うまく相手を翻弄して時間を稼いでいたようだ。
中央の街路に視点を戻して。
作戦が功を奏して敵の数は6、7割程度にまで減っていたが、イレギュラーズは焦らず防衛戦を続けていた。
リンネは近接貴族兵達の後方から、エスプリ『軍師』と赤の熱狂で支援強化する。
力で劣る貴族兵だが、バリケードを生かしつつリンネの支援もあって戦う事が出来ている。リンネは時折号令を使い、貴族兵達の回復にも当たっていた。
それもあり、『砂蠍』のメンバーはさらに数を減らす。
「早く、バリケードを壊すんだ」
多少苛立ちげにライナーが指示を出すと、アッシラが回転させた鉾でバリケードを破壊してしまう。
「早く、3基目まで下がって!」
すでに、下がっていた前線のユーが貴族兵達に指示を出す。
100mという距離は微妙に長く、相手が全力で攻め込めばすぐ追いつかれてしまう。布陣が崩れた状態では敵の的でしかない。
ただ、夕はここでも油の入った壷や瓶を撒き、街路を滑りやすくする。
また、火をつければ自然のバリケードともなる。
相手が夕の策略に気を取られているうちに、メンバーは次なるバリケードの後ろで布陣を整え直す。
それでも、迫ってくる敵には、マルベートが相手の獣性を呼び起こす口上をしてみせて。
「『獣の悪魔』たる私、マルベートから逃れられると思っているのかな」
くすりと笑う彼女に気を取られる盗賊達。
「回復をお願い……なの」
その時間を活かし、ミアは魔術兵に回復術で相手から受けた傷を互いに癒させる。
ミアは自身の生命力を気力に変え、再度部隊員に殺意を込めた弾幕を浴びせかけていく。
徐々に、後退するイレギュラーズ達。
屋上から狙撃兵と攻撃を仕掛けていたシラスも、梯子を落としながら移動していく。
ただ、ライナーの指示もあり、相手もニーニアの追跡と合わせ、狙撃兵の排除を試みてくる。
徐々に後退する形となっており、遊撃が厳しくなってきていたニーニアは、シラスやエリシアら屋上からの狙撃班に交じって援護を始めていたが、梯子の罠も警戒され、跳躍して襲い来る敵も出始める。
シラスは治癒魔術で狙撃兵を回復しつつ応戦もしていたが、街路で3基目のバリケードが破壊されたタイミング。
「本体に合流するよ!」
迫られたらこちらが不利と悟り、屋根上のメンバーは梯子を伝って降りていく。
徐々に貴族兵達も倒れ始めていたが、相手も応戦に必死でトドメまで刺す余裕はなさそうだった。
それぞれの勢力は数を減らしながらも、街路奥へと集まっていく。
エリシアの放つ雷が盗賊どもを焼き、ユーが不可視の糸『蒼鋼糸』を放って相手を足止めする。
ただ、敵もバリケードの突破も4基目となれば手馴れたもの。
瓦礫を混ぜた念力弾でライナーが殴りかかり、アッシラが猛然と振るう槍で後の貴族兵ごとバリケードを破壊してしまう。
「もう逃がさんぞ……」
もうバリケードがないことを確信し、アッシラは構える鉾を突きつけてくる。
「チェックメイトだよ。イレギュラーズ」
口元を吊り上げるライナーは自身の傷を念力弾で癒し、呼びかけてきたのだった。
●直接バトル!
残るは、20ほどにまで数を減らした盗賊と、30余り残る貴族兵。8人のイレギュラーズ達は、相手を半数以下にまで減らすことができた。
街の隅にまで追い込まれ、多少被害もあれど、すでに数の利はこちらにある。
恐怖を振り払うユーは率先して攻め込み、電撃を込めた自身のマントで叩き倒していく。
「簡単に街を奪わせはしないからねー」
リンネはここでも、残る貴族兵をエスプリの範囲内に収めるよう位置取り、さらに赤の彩りで鼓舞する。
「簡単に奪わせはしないからねー」
貴族兵達が怒号を上げる。彼らがここまで戦う事ができていたのは、リンネの支援によるところも大きい。
「狩りの詰めだ。勝つよ、この戦いに!」
さらに、マルベートも兵士達を奮い立たせ、ここまで温存していた力をアッシラへとぶつけていく。
「これがコース料理なら、君はメインディッシュだね」
舌なめずりし、彼女は両手の槍を振るい、楽しげに戯れようとする。
マルベートだけではなく、イレギュラーズ達は主に、攻め込んでくるライナーやアッシラを相手取ることになる。
「散々、手を焼かせてくれたな」
アッシラは額に青筋を浮かべて鉾を突き出し、同時に前方へと竜巻のような衝撃波を放ってくる。
「狙いを突破力の要となっているアッシラに」
バリケードをことごとく彼に突破されたのをしっかりと見ているからこそ、夕は仲間達へとそう指示出しする。
ミアもアッシラの広範囲に及ぶ攻撃を行うことや、態勢を立て直す前に倒された貴族兵を見て来ている。
前に出て積極的に攻撃を行うユーやまるるんことマルベートの後でミアは集中し、巨大火砲『NMフリークス』より狙いすました一撃をアッシラへと叩き込む。
エリシアも仲間を巻き込まぬよう気遣いつつ、序盤は殺傷の霧でアッシラを含む敵を包み、1人、また1人と倒していった。
確かに、ここまではめざましい成果を上げているメンバー達。数の差を覆す戦術は夕の戦功で間違いない。
ただ、一行の想定外は、アッシラ、ライナーの力を侮っていたことだろうか。
「僕の顔に泥を塗った返礼はしっかりとさせてもらうよ」
ライナーは戦場を立ち回り、自らの周囲で回転させた念力弾でイレギュラーズを攻め立てる。
フリーとなっていた彼は周回弾を使い、貴族軍を薙ぎ倒す。
さらに、貫通弾を発して疲弊するユーを一度地へと這わせかけた。
数的優位を狙っていたユーだったが、ライナーだけで複数の相手を倒す力は十分に持っている。
その上彼は、念力弾を集中させれば、イレギュラーズですらも倒す殺傷力を持つ。
アッシラと戯れを楽しんでいたマルベートへと今度はその念力弾を飛ばし、背中から撃ち抜いてしまう。
「……やってくれたね」
長期戦とあって、さすがに体力が持たなかったと感じるマルベートはパンドラの力で立ち上がる。そばではユーも同様に運命に頼って踏みとどまり、相手へとオーラの縄を放っていた。
2人へと、練達の治癒魔術を使って回復に当たり始めていたエリシア。
イレギュラーズから攻撃を受けるアッシラが彼女を睨みつけて。
「これしきで倒れるわけにはいかぬ」
フリーとなっているライナーがイレギュラーズと貴族軍の布陣をかき乱していることもあり、アッシラは素早く鉾を操ってエリシアへと切りかかる。
ハンマー型消印で殴りかかるニーニアもろとも、アッシラは愛用の鉾で切り裂いてしまう。
路地に滴る赤い血。
エリシア、ニーニアの2人は共に深手を負いながらも、その身を横たえることを拒絶して、アッシラへと立ち向かう。
これ以上の戦いは確実に、戦闘不能者を生む。
全力で回復に当たる夕の思い通りに早期排除とは行かぬが、イレギュラーズ達は着実にアッシラへと攻撃を畳み掛けていく。
仲間達の攻撃直後のタイミングを狙い、シラスは悪意を具現化させる。黒いその獣は大きな顎でアッシラの身体へと噛みつき、相手を鎧ごと噛み砕こうとしていく。
死力を尽くすマルベートは大きく肩を上下させながらも、両手のフォークとナイフでその命を仕留めにかかる。
「ぐぬ……」
全身から血を流し、アッシラがよろけた。
近寄るライナーが癒しに当たろうとしたところで、ミアが追撃する。
「逃がさにゃい……」
『悪夢』の名前を冠する火砲から撃ち出す一撃に、アッシラは胸部を撃ち抜かれて膝を突く。
「我は……ここで、死ぬ、の、か……?」
吐血したアッシラは石畳の上に崩れ落ちた。
それを確認し、シラスが残る貴族兵や仲間達へと叫びかける。
「いっくぜぇー! 残りの奴らもブチ殺すぞ、オッラァ!」
立っている貴族軍も10人を切っていたが、アッシラを倒したことで士気が高まる。
一方、『砂蠍』は片手で数えるほどにまで減っていた。
そして、信頼を置いていたアッシラの敗北に、ライナーは表情を歪めて。
「イレギュラーズ……! 覚えていろよ」
身の危険を感じて退く彼に続き、残る盗賊達も背を向けて街を離脱していった。
戦いの集結を察し、マルベートは小さく息をついて。
「倒れる前に撤退させられてよかった」
皆、ボロボロになっていたが、それでも街を護ることはできた。
倒れる貴族軍の状態を確認しつつ、イレギュラーズ達はその勝利を喜び合うのである。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
指揮官ライナーこそ取り逃がしましたが、アッシラを討伐、街を護ることができました!
MVPは全体指揮を取った夕さんへ。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいと申します。
●目的
「新生・砂蠍」団の討伐。
●敵……「新生・砂蠍」
◎「新生・砂蠍」メンバー……ライナー・ヘットナー
部隊の指揮官です。
15歳相当の少年で、相当強い力を持っております。
バスケットボール程の大きさをした球体の念力弾を、
自在に操る能力を持っております。
・周回弾(神中特・自分を中心としてレンジ2)
・貫通弾(神遠貫)
・炸裂弾(物中範・出血)
・治癒弾(神中単・治癒)
◎アッシラ部隊
20代の元男性騎士のみで構成された部隊。
砂蠍メンバーである少年ライナーが目をかけるアッシラを中心とした部隊です
○部隊長……アッシラ
禍々しい鉾を持つ赤い軽装鎧の男です。
元々からの砂蠍メンバーであり、ライナーに従っております。
・ローリングスラスト(神遠扇・崩れ)
・ブレイブリークリーブ(物近列)
・デスペネトレーション(物中貫・致命)
○部隊員……65人
動きやすいよう軽装鎧を纏う者達です。
元々の部隊員に加え、
砂蠍本体から移ってきた者も半数ほどいるようです。
至近~中距離の攻撃を得意としております。
・剣兵15人
・槍兵25人
・鉾槍兵25人
●NPC
◎貴族軍……50人
編成は以下のとおり。
ある程度、イレギュラーズの指示に従ってくれます。
力量的に1対1だとやや敵部隊員よりも分が悪い為、
作戦でカバーしたいところです。
・近接兵20人……剣、槍、斧を使う者達。
長くても中距離までの武器を行使します。
・狙撃兵20人……弓、銃を使う者達。
遠、超遠距離の武器を行使します。
・魔術兵10人……魔法を遣う者達。回復もできます。
至近~遠距離まで幅広く動けます。
●状況
現場は石畳の町で、住居も岩、レンガで造られた区画。
敵部隊は街の一区画、500m程度ある街路へと再度仕掛けようとしてきています。
メインストリートとなる街路の裏手にも移動が可能ですし、建物の屋上などから街路を狙うことは可能です。
なお、こちらは『<刻印のシャウラ>占領区画の解放を!』と同じ舞台です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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