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シナリオ詳細

魁、メタリカ女子学園! 命短し、鍛えよ乙女!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●正しき乙女心は! 正しき肉体に宿る! 命短し、鍛えよ乙女!
「ごきげんよう」
「ごきげんよう……」
 百合の花咲く庭園を抜け、女子高制服を纏った乙女たちが行く。
 長い黒髪をそよかぜにのせ、おっとりと振り向く乙女に……白銀のトマホークが投げつけられた。
「――ッ」
 翳した二本の指がトマホークを顔の横で停止させる。
 が、それはあくまで初撃に過ぎない。
「ごめんあそばせ!」
 美しき花壇から跳躍した金髪の乙女が足に乙女心を集中し、流星のごとき蹴りを繰り出した。
「帰国子女流! 寧丁武素美駆!」
 圧倒的アドバンテージから放たれるスムース過ぎる蹴りは万人の意表を突き反撃をおろそかにさせる帰国子女流の必殺技である!
 舞い散る花弁。
 舞い上がる風。
「獲りましたわ!」
 蹴りは黒髪の乙女に直撃した……が、しかし。
 攻撃がヒットしたということは、相手の攻撃がヒットする距離にいるということ。
 奢るなかれ! 敵の窮地は、己のピンチ!
「清楚委員長流」
 顔面に学生靴をめり込ませたまま。
 大きくのけぞったまま。
 黒髪の乙女は左の拳に乙女心を集中させた。
「葬流有無」
 反撃の一瞬にのみ繰り出される一点突破のプレッシャーパンチはあらゆる反撃を圧殺し完膚なきまでに相手を葬る清楚委員長流の必殺技である!
「ギャア!?」
 乙女ならざる声をあげ、金髪の乙女……否、金髪女は吹き飛んでいった。
 その姿にご学友たちは一瞥すらもくれることはない。
 乙女らしさを喪った時、彼女はこの場にいる資格を喪うのだ。
「語学を学んで、出直すことね……」
 そう、ここは修羅と乙女が同居する場所。
 その名も――鉄帝メタリカ女子学園!
「どうやら、委員長の座を狙ってギャル派が動き出したようですわね……」
 乙女の黒髪を、戦の風が吹き抜ける!

●イロモノだと思って舐めてかかると……死ぬぞ!
『この場にいる中で8名! 今すぐ来られる者はいるか! ローレットへの依頼、大至急だ!』
 そう言われてたまたま鉄帝を訪れていた八名。そのなかに居たのがあなたである。
 ある部屋へ案内されたあなたに提示されたアイテムは三つ。
 お清楚な女子高生制服!
 お清楚なウィッグ!
 お清楚な化粧道具!
 そして告げられる、依頼内容は……。
「今すぐJKに変装し、メタリカ女子学園へ潜入せよ! ――ええいにがさん!!」
 逃げ出そうとするイレギュラーズをとっ捕まえて、ゴリラみたいな女は無理矢理彼らを変装させた。
 全身鏡に映る姿に驚くなかれ。
 そう、伝説の。
『これが……わたし……?』
 である!

「やるべきことはシンプルである!
 ここに記された八人の乙女を見つけ出し、乙女心をもって倒すのだ!」
 シンプルつっただろ! 急に知らない単語を出してくんな!
 そう誰もが思った所に、ゴリラ女は深く頷いた。
「そうか。皆も乙女心は熟知しているか。
 だろうな……その瞳、その所作、乙女心があふれておるわ。まるで現役JK時代の我を思い出すのう! グワッハッハッハ!」
 なんかしらんけどあなたには乙女の素質があるらしい。
 こんな怪獣みたいな人にもその経歴があるくらいなんだから、やればできるのかもしれない。
 あなたは自信をもった(と言うかもってくれ)。
「きゃつらはメタ女の壱年轟組……ギャル派に属する賊どもよ。
 正当なる乙女である清楚派をじわじわとむしばみ、メタ女の伝統をギャル文字で埋めようとする不届きな乙女。
 彼女らの『秘密の逢い引き(アンブッシュ)』は恐ろしく、清楚派は次々と欠席してしまっているという。
 我も増援に駆けつけたいがあいにくOGの身。すぐに身元が割れてしまうであろう。
 ゆえに……鉄帝を知りながら顔の知れていない貴様たちに潜入を依頼したのだ! グワッハッハッハ!」
 そう言ってゴリラ女は八枚の写真とプロフィールメモを手渡していった。
「このギャル派のうち半数までを撃滅せしめれば、清楚派は守られよう。いざゆけ! 新たなる乙女たちよ……!」

GMコメント

 このシナリオは!
 乙女シナリオである!
 全参加者は!
 強制的に!
 乙女と化すのだ!
 ええいにがさん!

【乙女潜入】
 皆さんはメタリカ女子学園へ潜入し、指定された八人のギャル派を(乙女的に)抹殺する任を任されました。
 JK制服とウィッグ、そしてスーパー化粧により何でか知らんけど皆さんはびっくりするくらい美少女です。
 元から美少女の方もJKバージョンとなり、元からJKだった人は実家のような安心感に包まれます。
 ここではできるだけ乙女らしさを演技しておきましょう。
 具体的にはできるだけ上品なことばを使い、折角なら名前の語尾に『子』をつけましょう。

 ターゲットの場所は知らされているので、捜索プレイングは必要ありません。
 派手に登場し、勝負を挑むプレイングに割いてあげてください。乙女らしく。

 潜入中は1~2人組のチームに分かれ、学園のあちこちに点在しているギャル派に接触。勝負を挑み、そして倒しましょう。
 単独でもみっちりしたプレイングが書ける上、戦闘レベルもかなり高いぜという乙女は単独で。そこまでみっちり書く予定はなかったりレベルもそんなに高くないというかたは二人組を作りましょう。

 戦闘によって倒された乙女の多くはその乙女らしさを喪い、この学園での立場を失います。
 中には倒されても乙女を喪わない鋼の乙女も存在しますが、今回指定されたギャル派たちはせいぜいが委員長狙いの格。一度の敗北で乙女を喪うであろう!

【バトルターゲット】
・スマホ使いの八丁堀
 高速フリック入力で魔術を行使するギャル。
 クラスはハーミット。
 戦闘フィールドは裏庭。

・サークラの瀬文
 中学時代に所属する全てのサークルをクラッシュしてきた経歴を持つ悪魔のギャル。
 多くの手下を従えているが、今回は一人になったところを狙えるので問題はない。
 クラスは姫騎士。
 戦闘フィールドは空き教室。

・バレー部の五反田&六本木
 長身から繰り出すスパイクボールは必殺の一撃。
 所属するバレー部は鉄帝の魔女と呼ばれている。
 が、二人は中でもベンチ組。実力は低いはず。
 クラスはウィッチ。
 戦闘フィールドは体育館。

・サバゲー部の四谷&三越
 スナイパーのハズミ、ファイターのシノブの仲良しコンビ。
 連係プレイが得意だがここの実力は低め。
 サバゲ部所属の乙女。戦闘フィールドは裏山。

・剣道部の二子玉&市ヶ谷
 剣術をおさめるギャル乙女。
 剣道場での練習中を狙うのだ! 戦闘フィールドも勿論道場。
 クラスは侍。
 一刀両断によるコンビアタックが厄介だぞ!

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 魁、メタリカ女子学園! 命短し、鍛えよ乙女!完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年12月03日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師

リプレイ

●花散るまでが乙女なら、生涯散らぬ花もあれ!
「ごきげんよう……」
 完全無欠の乙女と化した『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)はJK制服の裾をつまんでうやうやしくお辞儀をした。
「なにやら皆様阿鼻叫喚のやうですが、私は普段と変わりありません。乙女であると云うことを殊更に誇るのだけ慣れませんが……転校生のすることは常に一つなのですよ」
 ギラリと光るメタリカ女学園の校章バッジ。
 肩に妖精をのせていた『フェアリィフレンド』エリーナ(p3p005250)は強めに咳払いをして声の調子を整えた。
「乙女心をもってギャル派の乙女を乙女的に抹殺……乙女がゲシュタルト崩壊を起こしそうですが……」
「心配いりませんわエリーナ……いいえエリ子様」
「力を合わせれば私たち乙女は無敵ですわエリ子様」
 『期間短し、リクせよ乙女』江野 樹里(p3p000692)と『魔砲使い』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)の二人がシンクロナイスドコロンビアポーズをしていた。
 説明しよう。シンクロ略ポーズとはコロンビアという単語で連想される二つのポーズを二人交互にとりあうことで見る者の概念を崩壊させる必殺技である。
「やってきましたわメタリカ女学園……なるほどこれがゆうしゃのがっk」
「いけませんわ愛工作子(らぶくらふこ)様、おタイムリーが過ぎましてよ」
「あら江野樹里子様、わたくしったらうふふ」
「おハーブ生え散らかしますわ」
「「うふふふふ」」
 史上最狂のフリーダムコンビが爆誕していた。
 もうなにをやっちまうか予想もつかない。
「ごきげんよう、樹里子さま、愛工作子さま」
 『祖なる現身』八田 悠(p3p000687)はそんな二人を見事にスルーしながら乙女を演じていた。
「アオイ……いいえ葵子さま。わたくしのことは悠子とお呼びくださいまし」
「なんでみんなこの状況を素直に受け入れてるんだろう……」
 『機工術師』アオイ=アークライト(p3p005658)はきゃわいいJKフォームへ強制チェンジさせられたまま、ひらひらするスカートの裾をおさえていた。
「ええい、やってやりますよこのくらい!」
「葵子さま」
 悠もとい悠子の視線を受けて、葵子は咳払いをした。
「失礼。ええと……やってさしあげますわよ!」
「お見事ですわ。お見事ですわ」
 『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)がロボットみたいなぎこちなさでがちがちしていた。
「お、おい……わ、わたくしはチャロ……ちゃ、茶ロ子」
「茶ロ子?」
「茶子と申しますわ!」
 二言はございませんわ! とかいいながら剣を掲げるチョロ子さま。ちがう。茶子さま。
「わたくしたちの任務は乙女にあるまじきギャル派女学生たちを乙女的に葬ること……」
 『白銀の剣』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)がちゃきっと白い剣を構えて振り返った。
「みなさま、まいりまひゅわよ!」
 空に。
 一陣の風が吹いた。
「まいりますわよ!」
「言い直しましたわ」
「なかったことにしましたわね」
「くう……っ!」
 アルテロン子さまは顔をてろんてろんにしながら校舎へと走っていかれましたわ。
 あらあらうふふふ。

●乙女と乙女が出会うとき、交わす火花は戦の炎。燃えよ乙女、青春は暁の如く也!
 花咲く裏庭。清楚な乙女たちの通り抜ける渡り廊下。
 そんな乙女たちが、今だけは裏庭に寄りつかぬ。
 清楚派の新入生を闇討ちしていると噂のギャル派乙女がスマホ片手に花壇に腰掛けていたからである。
 ゴッドプレス(神の宿る親指)と呼ばれた彼女の親指は恐ろしい速度でフリック入力をし、恐ろしい速度でなにかを電子の海へと飛ばしている。
「あなたが……」
 裏庭への入り口にキープアウトテープをはって、一人の乙女が現われた。
「スマホ使いの八丁堀さま……ですわね」
 JK制服の上にフードパーカーを羽織った八丁堀はフードの下からその乙女をみやった。
 つやめいた靴と細い足。
 どこか謎めいた乙女は制服の襟を払うと、ヘイゼル――乙女平子は指を翳した。
「乙女と乙女が一対一で相対して、する事など一つしか無いのですよ。
 私の転校生流は一寸した手妻に過ぎませんが、故に謎を解かねば破ることは出来ないのです」
 どこからともなく取り出した魔力針を投げる平子。
 八丁堀は高速入力でアカウントブロックをかけると、飛来する針を破壊した。
「転校生は大人しく転校し直すのがよろしくてよ」
「ええ、ですが貴女にも『転校』が御似合いなのですよ。私だけではなくね」

 所変わって夕暮れ空き教室。
 机に腰掛けてものうげに夕焼けを浴びる乙女は、コルクボードに貼り付けたサークル表にダーツを構えていた。
「さぁ~て、次はどのサークルを壊しちゃおっかなぁ~」
 甘くとろける声で述べる彼女は清楚派が力を持つサークルへ編入しては人々の感情を操って内部抗争を引き起こす悪魔のギャル乙女。
 男性相手では戦術核レベルの破壊力を誇る彼女は乙女だけのメタリカ女学園でもそれなりの成果を出そうとしていた。
 だが。
 そんな未来は訪れない。
「そう、わたくしがこの学園に転入したからには――」
 コルクボードへ飛ぶダーツを二本指でとらえ、シフォリィ――乙女紫鳳院アルテロン子は優雅に白髪を振った。
 その瞬間、サークルクラッシャー瀬文は悟った。
 彼女が入部を恐れるサークル。それは絶対的な芯を持つサークルだ。
 折れぬ剣が突き刺さった聖域のごときサークル。
 その剣が、今まさに眼前に現われたと錯覚した。
「あなたは……?」
「メタリカ魂胸に抱いて、気高く咲いた花一輪。時代遅れと笑われようと、決して譲れぬ乙女道――!」
 剣をとり、アルテロン子は折れぬ輝きを見せつけた。
「紫鳳院アルテロン子改めシフォリィ・シリア・アルテロンド、この身に宿した乙女心、いざ刮目あれ!」

 メタリカ女学園剣道部は乗っ取りの危機にさらされていた。
 主要な清楚派乙女部員たちがこぞって病欠し、道場はギャル派たちのいいなりになっていたのだ。
 力の弱い清楚派乙女たちに課せられるのは道場の雑巾がけと焼きそばパンの買い出しのみ。苦渋に折れては乙女たらぬと歯を食いしばる彼女たちのもとへ、二人の新入部員が現われた。
 そう、まばゆい逆光を背負った二人こそ――。
「茶子――」
「エリ子――」
「あら、お二人は入部希望者かしら」
「わたくしたちのルールに沿うなら入部を許してもよくってよ」
 部を実質的に支配しているギャル派の二人、二子玉と市ヶ谷は竹刀を握って振り返る。
 対して。
 淡い炎とポニーテール。
 乙女道着を纏って氷床を踏むチャロロ――乙女茶子は機構剣を突き出した。
「わたくしたちの目的は入部ではございませんわ」
 靡く金髪。舞い踊る妖精たち。
 エリーナ――乙女エリ子は妖精剣を引き抜いて見せる。
「わたくしたちはいわば道場破り。私たちとお手合わせ願います!」
 二人の剣を向けられ、二子玉たちは乙女的に微笑んだ。
「あらあら」
「うふふ」
「「わたくしたちの四腕二刀に」」
「「はたしてあなたがたが勝てるかしら!!」」
 二人の竹刀が乙女力に包まれまがまがしく変形する。

 メタリカ女学園サバイバルゲーム部は今紛争のさなかにあった。
 清楚派乙女とギャル派乙女は部の実権を奪い合いあちこちで激突。夜襲暗殺ネガティブキャンペーン。あらゆる手段をもって清楚派乙女を痛めつけるギャル派たちに清楚派は苦戦を強いられ、協力することで轟組学級委員長と副委員長のポストを約束されていた四谷と三越がギャル派分隊の指揮をとっていた。
 ジャングルのごとき深い森を進む二人。
 目指すは清楚派のフラッグ。
 だが、それを知っていたかのように二人の乙女が樹幹の影より現われた。
「乙女とは華、華が美しいのは前提、故にその価値はどれだけ長く咲き誇れるか」
 悠――乙女悠子が概念歪曲をお越しながら姿を見せる。
 風もないのに靡いた髪が、複雑な色にきらめいた。
「どちらの花が美しく咲き続けられるか、勝負でございます」
 アオイ――乙女葵子は紺色の艶髪を中指で払う。
 風も無いのに舞い上がる木の葉。
 落ち葉を踏んで歩く二人に、四谷と三越はアサルトライフルの乱射で応えた。
「立ち塞がる目標は」
「排除するのみですわ!」
 手を翳す葵子と悠子。
 全ての殺傷魔術BB弾が着弾したにもかかわらず、肉体が破壊を拒むように逆回しで回復していく。
「その華のなさこそが」
「敗北の理由ですわ」

 メタリカ女学園バーレボール部のレギュラー争いは卑劣な作戦によって歪められつつあった。
 ギャル派の選手だけをレギュラー入りさせるべく教師を誘惑し、それを阻もうとする清楚派乙女たちと次々と殺人スパイクで闇討ちしていたのだ。
 体育館の端で体育座りするしかない乙女たち。
 その苦渋に折れてはならぬと歯噛みする。
 だがそんな時間は続かない。
 体育館に鳴り響く開幕のホラ貝。
 まばゆい光と共に体育館中央に跳躍した二人の乙女に、皆の視線が集まった。
「「ハッ――!」」
 体育館のライトを逆光にして交差するふたつの影。
「聞こえる聞こえる……クリスマスピンナップを求める人々の声が……」
「自由すぎるメタ読みを躊躇するなという視聴者の声が……」
 着地した二人は交差するポーズで振り返る。
「乙女――江野樹里子!」
「乙女――愛工作子!」
「「ふたりは!」」
「リクキュア!」「セーラーウィザード!」
 最後の最後でぜんぜんばらばらの名乗りを上げる二人に、バレー部ギャル派の先鋒五反田と六本木が戦慄した。
「なんというチームワークのないお二方なの」
「けれどなぜかしら。フリーダムすぎるスタンドプレイが恐ろしく噛み合っていらっしゃるわ」
 拳をぶつけあい、バレーボールを握る二人。
「けれど、この部をギャル派が制圧した暁には委員長の座が約束される」
「負けるわけにはいきませんわ!」
 鳴り響くホイッスル。
 『死合』開始の合図である。

●メタリカ女学園校則第九条! 乙女心を喪った時、乙女は生徒失格となる!
「「邪道抹殺剣!」」
 左右対称な軌道で繰り出す二子玉と市ヶ谷のコンビネーションブレードアタック。
 チャロロもとい茶子は機構剣を握り込んで突撃。二人の攻撃を一身に受けると道着のあちこちから炎を吹き出した。
「まだまだっ――ですわ! 踊ってくださいませ!」
 二人の剣を巻き込んで跳ね上げると、反撃を恐れて市ヶ谷たちは跳びのいた。
「先輩直伝の抹殺剣が通じないなんて」
「ただの道場破りではございませんわね!」
「その通り――ですわ!」
 エリーナは妖精剣で突きの構えをとると、乙女仕様となった妖精ネリーを剣の鍔へとのせると、カタパルトのように発射した。
「ネリー、この方達に乙女心の何たるかを教えて差し上げなさい」
「その程度の突撃――」
 乙女心を込めた竹刀で弾く市ヶ谷。
 しかし弾かれたネリーは回り込むように飛行すると市ヶ谷の肩口を切り裂いていった。
「くっ、なんという乙女心!」
「隙ありだ――ですわ!」
 剣のレバーを握り込んで刀身にそうように炎を吹き出した茶子。
 突撃と共にくりだした斬撃が市ヶ谷を切り裂いた。
「ぐわあ!?」
 乙女らしからぬ声を放ちギリギリな下着を晒す市ヶ谷。
 もはや彼女に乙女たる資格なし。
「所詮はギャル派副委員長の器。あとは私が引き継ぎますわ」
 二子玉は竹刀を二本に増やすと、怒濤の二刀流剣術を繰り出してきた。
 必死に受けようとするも竹刀に込められた乙女心が茶子の頬や脇腹を切り裂いていく。
 皆も知っていよう! 鋭く放たれた乙女心は鉄をも切り裂く刃となるのだ! 運動部の先輩の心を射貫くラブレターのように!
「確かに強いよ。オイ――わたくしでも耐えられないくらい、ですわ! けれど」
「二人が力を合わせ信じあうことこそ乙女の道! 愛を教えてあげなさい、アモル!」
 剣を振ったエリ子の風に誘われて飛びだした妖精アモルが茶子の心と体を癒やしてく。
 試合に負けて挫折しそうになった先輩を立ち直らせるように、熱い乙女心は人の命すら救うのだ!
 力を取り戻した茶子の斬撃が、二刀流となった二子玉の道着を切り裂いていく。
「くっ……これほど、とは……無念……!」
 崩れ落ちる二子玉。もはや彼女を気遣う者すらない。
 乙女心を失った者に、居場所などないのだ!

 ネガティブツイートの弾幕が中庭を飛ぶ。
 不吉なツイートや心を縛るツイートがヘイゼルもとい平子へと直撃していく。
 通常ならばアカウントを停止するか闇ツイートばかり呟く承認欲求ゾンビと化してしまうような恐ろしい弾幕。
 しかし平子の存在を害することはできなかった。
 ぶつけられた魔術を振り払い、平子は拳に乙女心を集めていく。
 フードを跳ね上げた八丁堀はスマホに高速スワイプ入力をしかけるとヘイゼルの住所や家族構成を晒し上げようと試みた。
 しかし――。
「これは、どういうことですの?」
「個人情報の暴露とは感心しませんわね」
 画面を凝視する八丁堀。しかしヘイゼルは構うこと無く急接近を仕掛けるとスマホごと八丁堀の顔面に乙女心実直拳を叩き込んだ。
 まっすぐな乙女心は陰険な嫌がらせも打ち破り相手の鼻っ面をへし折るものである!
「ぐぎゃあ!?」
 醜い悲鳴と共に花壇へ倒れた八丁堀。
 もはや彼女はこの世にいないかのように乙女たちが通りがかり、目をくれることもなく過ぎ去っていく。

 サバイバルゲーム部ギャル派の斬込隊。四谷&三越のコンビは追い詰められていた。
 否、殺傷BB弾と浸食塗料グレネードを駆使して悠子と葵子を物理的には追い詰めていた。
 しかし……。
「弾切れですわ」
「こちらもですわ……」
 二人は乙女心でコーティングしたゴム製コンバットナイフを抜いた。
 いくら弾幕を浴びせても悠子と葵子は傷ひとつ残ることなく、集中攻撃を浴びせてやれば悠々と木々の奥へ下がってしまい、追いかける間に傷を治癒してしまう。
 どころか悠子へ浴びせた弾幕の一部は跳ね返ってくる始末だ。
 攻め手を欠いて焦る四谷と三越。対して悠子と葵子は余裕そうに姿をさらしている。
 ざくざくと木の葉を踏んで近づいてくる二人に、四谷たちは恐怖した。
「に、逃げますわよ」
「いけませんわ。そんなことをすれば先輩方がなんていうか」
「けれど――」
 ヒステリックになる四谷に、悠子の手が伸びた。
「あ゛あ゛っ!?」
「華は散るからこそ華でありましょう。ですが、散った華が種を残し、そこから再び咲くのも道理です。わたくしと葵子さまの華に少しでも魅せられたのでしたらば……再び華を、より美しく咲かしてくださいまし」
 ひからびた四谷が草の上に落とされる。
「お、おのれ――!」
 ナイフで突撃をしかける三越――の腕を、葵子の星光が打ち抜いた。
「ぎゃあああ!?」
 手首を押さえて悲鳴をあげる三越。
 自らの失態に口を塞ぐも勝利は既に決していた。

「「東洋魔女流殺人スパイク!」」
 人を殺す速度で飛来するバレーボール。
 対して!
「トス!」
「レシーブ!」
「リクエスト申請!」
 樹里子と愛工作子はフリーダム過ぎるリアクションで反撃してきた。
 ナースコスプレをした愛工作子がキリッとした顔で茄子を差し出し、リクエスト文をクリップボードにコピーした樹里子が窓空きの一瞬を狙ってリクエストを飛ばす。
 機を狙った乙女心はあらゆる障害を突き破る。
 殺人スパイクなどピンボール遊びにすらならなかった。
「反撃ですわよ」
「よくってよ」
 向かい合って胸をつける樹里子と愛工作子。
 二人は両手を組み合いフラメンコのリズムで一度振り返りなおすと――。
「「乙女の必殺――」」
「樹里の魔法!」「ネオアーム(中略)エリザベス砲!」
 なんでかしらんけど放たれた巨大な乙女心のビームがネットを貫通して五反田&六本木ペアを粉砕した。
「「ギャアアアアア!?」」
 コートの外へと吹き飛んだ二人に、バレー部の乙女たちはもはや目もくれない。
「お見事ですわ樹里子さま、愛工作子さま」
 松葉杖を突いたバレー部主将乙女が現われ、ぱちぱちと手を叩いた。
「お二人の自由さはまさに魔女。わが部に欲しいアタッカーですわ」

「痴情もつれの陣!」
 誰が誰を好きという話題が行き交い誰も信じられなくなるサークルクラッシュ空間が教室内に広がっていく。
 常人であれば気が触れそうな空間にありながら、シフォリィもといアルテロン子は剣を垂直に構え祈りの姿勢をとったまま動かなかった。
「なぜ心乱れないのです。わたくしのサークルクラッシュ術が通じない者など――」
「笑止!」
 目を見開くアルテロン子。
 教室に差し込む茜色の夕焼けが彼女を照らし出した。
「自らを信じて乙女心。己を貫いて乙女道。困難に立ち向かって乙女魂」
「これは――」
 瀬文が慌てて剣をとる。自ら手を上げた瞬間姫騎士はただの騎士。斬りかかる瀬文の剣を紙一重で回避すると、アルテロン子の剣が瀬文の髪を切り落とした。
「ひぎい!?」
 醜く髪を切られ悲鳴をあげた乙女はもはや乙女にあらず。
 膝から崩れ落ちるその姿を背に、アルテロン子は剣を納めた。
「自らサークルを作って出直すのですね……」

成否

大成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 かくして、メタリカ女学園に一時の平和がおとずれたのだ!

 皆様が個性を爆発し空気になじみ美味しいロールプレイをしまくった結果、美味しい美味しいとリプレイを書き続け文字数が足りず涙目になって削るという久々の経験をしました。
 我が熟練の腕をもってしてもあふれる乙女心見事なり! これは大成功判定をだすほかあるまい!

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