シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>凶恐禍恨に水花咲きて
オープニング
●
――遂に、その時が来るでごぜーます。
空中神殿の聖女がそう告げ、ローレットは最終決戦を仕掛けるべく準備を始めた。
影の領域、影の城のイノリ達を倒し、Case-Dの顕現を回避。それがイレギュラーズたちがなさねばならないこと。そしてそれをなすためには影の領域へと直結しているワーム・ホールを通って敵の本丸へ乗り込み必要がある。生身でまともに飛び込めば辿り着く前に狂ってしまうかも知れないという危険はあるが――ざんげがパンドラで確保してくれるとのことだ。
一斉に乾坤一擲の大勝負に出るのだ。各国にもその旨を伝え、各地でも闘いの準備が整えられていく。
それは勿論、覇竜でも。
「此度はわしも出よう」
戦いに出る者たちは準備に忙しい。行き先がヘスペリデスよりも奥にある『アスタ』であるから住民たちは迂闊には出向けないが、戦闘派集落ペイトの師範代である瑛・天籟(p3n000247)は違う。常ならば里長の護衛につくのだが、今危険なのはアスタで、そこが落ちれば危険はペイトやフリアノンへと迫る。
アスタのワームホールをどうにかせねばならない。それは覇竜に住まう者――竜種も、考えは同じであった。如何に人間と有効的でなかろうと、世界が滅びてしまっては困るのは竜種も同じなのだ。
『或が暴れている』
「……それは、先日会った亜竜種の魔種のこと?」
お母様と声を掛けたオデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の言葉に水竜がぐると喉を鳴らして肯定を示す。
天籟とともにペイトを発ち、竜種メファイル・ハマイイムの背に乗せられ空を行く。雲はバチバチと稲妻を抱き、風はごうんごうんと鳴いている。世界が滅ぶ風景とはどんなものかと思い浮かべたら、わかりやすくこの空を思い浮かべる程に――世界に滅びの気配が満ちていた。
『或は相当数手にかけておる』
どうやら先日出会った魔種の女はひたすらに――熱心なほどに亜竜種たちの集落を潰して回っているらしい。それに気付いたメファイル・ハマイイムが滅そうとしたところ、逃げられた。龍種たるメファイル・ハマイイムはどうしたって目立ってしまうため、姿を覚えられたこともあって気付かれるとすぐに逃げられてしまうのだそうだ。
『加護を』
「ああ」
少ない言葉での会話なら、アーマデル・アル・アマル(p3p008599)とて負けない。一言で意図を汲んで顎を引くと、一緒に理解したオデットも顎を引く。
「……加護を与えるから倒せ、で良かっただろうか」
ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)が一応確認を取ってくれる。間違っていないようで、否定は返らない。
「メファイル・ハマイイム殿は近寄らず、加護を与えてくれる。そして我々は魔種を倒す」
「そうだ、弾正」
『合図を天へ』
「ふむ。合図を放てば加護をくれる、と」
だいぶ理解してきたぞ言いたげに冬越 弾正(p3p007105)が頷くと、『吾は無防備となる』とメファイル・ハマイイムが平坦な声で告げ、「えっ!?」とオデットが心底吃驚した声を上げた。
「お母様が無防備に!?」
アスタ周辺――つまりはワームホールの傍へと行くのだ。ワームホールからは絶えずモンスターや終焉獣たちが這い出てきており、そこで無防備になっては竜種とてただでは済むまい。
「では、わしが護衛につこうかの。ぬしらは務めを果たすと良い」
会話を聞いていた天籟が挙手をして応える。オデットは悩む。
守りが必要ならば、自分が守りたい。
けれど、竜は勇者を好む。勇姿だって見てもらいたい。
「メファイル・ハマイイム殿。相当数手にかけている、とは」
『或は無数の魂を喰らっている』
ぐうと言葉を飲み込むオデットの隣でアーマデルが問えば、件の魔種に喰われた魂は喰らった者が死なねば開放されない。
(ヒトは生まれ、生き、巡って捩れ、縺れて巡り、いつかは逝き、また生まれ落ちる。我が守神、『一翼』はその巡りのうち、死者の旅路を見送るもの)
開放して見送ってやらねばとアーマデルは瞳を伏し、その横顔を弾正は静かに見守った。
「……隕石か」
アスタの近くにあるワームホール。それが見えるよりも前に、空からは降り注ぐ隕石が見えてくる。ワームホールから湧くように出てくるモンスターだけではない最悪の状況にゲオルグは眉間に皺を刻んだ。
『吾が居る』
先にワームホール周辺の状況を知っているメファイル・ハマイイムは『それ』も込みで動けなって無防備となる、ということだ。術を展開し続けねばならぬせいだろう。
『さあ子等よ』
見つからないようにいつの間にか低空を飛んでいた竜が降りよと促す。これ以上近寄っては、魔種の女に逃げられる。
「お母様、ありがとう」
必ず帰るからとオデットが約して飛び降りた。
ワームホールから出てくる星界獣たちが多く向かう方角がある。
人の生と死と血の香りで咽ぶような――少し離れたところにある集落。
そこで、張・紫萱が殺戮を行っている――。
- <終焉のクロニクル>凶恐禍恨に水花咲きて完了
- GM名壱花
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年04月03日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
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焔火纏う巨大な岩石が天から降り注ぐ。
地を這う亜竜はとうに逃げ、人々はただ恐怖に腰を抜かした。逃げようとした者もいただろう。その背に終焉から来たりし獣が襲いかかり、いとも容易く命を刈り取っていく。
「うふっ、ふふっ、ふ……あはははははははは!」
悲鳴と血、恐怖と死。蔓延るそれらの中央で笑う女が居た。
「あら」
「ひっ」
カランと音がして、物陰に隠れていた少女に気がついた。足から血が流れる様からして遠くへは逃げられない。
「生きたい?」
女が問えば少女は必死に何度も頷く。涙に濡れている少女の瞳は、幾度も女の横にある『男』へ向けられた。はくはくと動くだけで言葉らしき言葉を発しない唇は『とうさん』と動いていた。
その姿に女は笑みを浮かべ――
「だぁめ」
女の操る『動く死体』が少女の胸を抉った。
「……とんでもないな」
終焉とは『このこと』と言わんばかりの景色に『妖精■■として』サイズ(p3p000319)が眉を顰めた。天からは隕石が降り注ぎ、大地には大小のクレーター。ワーム・ホールからは星界獣たちが数え切れぬほど吐き出され――此処は既に人の生きる環境ではない。
「厳しいな」
無尽蔵に湧かれては、体力や気力を持たせるのは難しい。仲間たちの疲労具合にも目を向ける必要があると静かに思考する『優穏の聲』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)の視界に、イレギュラーズに気がついた星界獣たちが映った。向かってくる軌道を抜け目なく読み神聖秘奥の術式を編めば、通常の技よりも有効なのだろう、星界獣が耳触りの良くない声で煩く鳴く。メファイル・ハマイイムから飛び降りて地を駆け始めてから出来るだけ後方を気にしないようにと前を見据えた『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)も彼に続けば、人類の敵たちは焼き払われた。
「さあて、格好悪い所を見せる訳にはいかないもの。気張っていくわよ?」
「ちょっと、ルチア……!」
今の攻撃だってきっと見てくれているはずよ、なんて口にした『高貴な責務』ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)に、オデットが少し慌てる。オデットが『母』と呼ぶ竜種、メファイル・ハマイイム。彼女は今後方で、支援すべき時が来たらすぐに術を発動できるようにと待機しているはずだ。こんな時でも――いや、こんな時だからこそ茶目っ気をくれる親友の存在がありがたくはあるが、耳聡い竜に聞かれてなければ良いと気になってしまうのは仕方がない。
「あの集落か」
『終音』冬越 弾正(p3p007105)とともにワイバーンにも似た星界獣にギィィと断末魔の声を上げさせた『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が前方に見えてきた集落へと視線を向ける。
メファイル・ハマイイムが示した集落。そこに――
「殺した者の死体や魂を"駒"にするなど醜悪なやつであるな。今すぐにでも余が討伐したいところであるが」
先日件の魔種と遭遇したことのあるイレギュラーズたちから情報を聞いた『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)も視線を向ける。虐殺が行われているであろうことは想像に易く――であるならば、散る前の命をひとつでも多く救うべきだとイレギュラーズたちは考えた。救わない、ということだって出来る。だが、救える命がそこにあるのだ。ローレットに所属する多くの者は『救いたい』と思ってしまう。異世界から来訪せし魔王だろうと、それがローレットの意向なれば。
(死者の命は還り、巡るが世の定め。生あるところに死があり、死あるとこには生がある……後者は忘れられがちだが。――殺戮の先に未来なし)
『黒のステイルメイト』リースヒース(p3p009207)も真っ直ぐに集落へと視線を向けている。自然に巡る命であれば問題はない。弱者が強者の肉となることもあろう。それは自然の摂理。だが、殺戮は違う。
(……悲しみに溢れている)
集落で奪われた生命たちの怨嗟が聞こえてくる。悲しみが聞こえてくる。
――早く、開放してやらねばなるまい。
イレギュラーズたちは襲いかかってくる星界獣を退けながら集落へと急いだ。
集落に足を踏み入れる前から、死の気配に気付いていたイレギュラーズたちは多い。絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた方角へルーチェが真っ先に駆けていき、オデットが彼女の後を『凍狼の子犬』オディールに追わせる。リースヒースも二羽のファミリアーのカナリアとともにまた別方向へと駆けていく。死の気配があまりにも濃く、救出には一刻を争うだろう。
「弾正」
「ああ」
頼めるか、とアーマデルが視線を向ける。役割は解っていると、弾正は顎を引いた。
アーマデルは紫萱を、弾正は彼が戦闘に集中できるようにと集落の人々の救命を。隣を離れはするが、ともに全力でなすべきことを。
(アーマデル……永遠の愛を誓った彼と、共に無辜なる混沌で生き続ける。その為に世界を守るんだ!)
集落へと向かう間までに測った、隕石のタイミング。それは約50秒置き。多少のズレはあるものの、巨大な隕石はそれくらいの間を置いて落ちてくる。イレギュラーズたちが合図を送るまでは水竜の術も展開されないため、充分注意が必要だ。特に隠れている人々や生死確認等はあっという間に時間が過ぎていくから大変である。
アーマデルと互いに信頼の視線を、ひとつ。弾正もまた仲間たちから離れ、救助活動へと向かった。
「この先よ」
俯瞰の視界を持つルチアの先導で、イレギュラーズたちは集落の奥へと向かっていく。
その先で。
「あああああああああ――ッ」
少女が集落の民と思われる動く死体に胸を穿たれていた。
「ッ」
それを目にしたゲオルグは足場の悪さをカバーすべく騎乗しているタイニーワイバーンを素早く操った。
「ゲオルグ」
任せたと名を呼んだアーマデルが動く。
「あら、また会ったわ――」
最後まで言わせず、圧倒的な速度が力となり、女――張・紫萱の体が吹き飛ばされ、胸を穿たれた少女との距離が開いた。
動く死体の空虚な眸が迫るゲオルグへと向けられ、彼へと血塗れた腕が差し向けられんとし――集落に入ってすぐに自強化をしたサイズが編み出した黒顎がその腕を『ばくん』とやった。
「お母様、お願い!」
すかさずオデットは『ゲーミング林檎』を空へと投げた。ピカピカと七色に光る林檎は、きっとメファイル・ハマイイムは感知することだろう。
(天籟のこと信じてないわけじゃないけど、お母様が無防備になるのならなるべく早く片づけなきゃ)
欲を言えば守る役目を仕りたかったが、早く片付ければ済む話。天へと水の膜が――真下のオデットたちからはわからないが遠目には水の蓮が花開き、周囲一帯に水の気が満ちていく。広範囲に渡る水竜からの支援『水花の天蓋』は同時にイレギュラーズたちの体に薄い水の膜を張り、加護を与えた。
「オデット、あなたの『お母様』ってすごいのね」
弾正が紫萱を吹き飛ばしたが、たかが10m。彼女の支配下にある『駒』は正常に動いている。もっと離したらどうなるのかとルチアは考えを巡らせるが、全員が同時に吹き飛ばさない限りは難しそうだ。
「ゲオルグ、その子は大丈夫そう?」
必要であれば《デウス・エクス・マキナ》を。視線を紫萱から外さずに問えば、瀕死の少女を連れて動く死体から離れたゲオルグが顎を引いた。怪我が心臓から僅かにそれて助かった少女はの『穴』を《無穢のアガペー》が傷を塞いでくれた。失った血は戻らないが、命が喪われてはいない。
「……おと……さん……」
「……父親か」
動く死体は生前、少女を護ろうとした父親なのだろう。そして父親の命を奪った上に少女を殺させようとした。点と点は容易に線を繋ぎ、反吐が出るとサイズが冷ややかに紫萱を睨んだ。なるべく遺体を損傷させたくはないが――難しい。
「いきなり女性を突き飛ばすだなんて」
(……これが『怒り』なのだろう、多分な)
何事も無かったかのように、されど困った子供を見たときにように頬に手をあてて困ったような顔をする紫萱へ、アーマデルは怒りを覚えた。死者が往くべき場所に往けぬよう縛り付け、その上で生者を弄ぶ。そうしてまた魂を縛る。この女は斃さねばならない、明確な敵だ。
隕石が降る。大きな隕石に当たればイレギュラーズとてただでは済まぬし、力なき者は死へと到ろうか。最初にその空を見上げた時、人々は絶望した。絶望して自らの手で生命活動を終えた者も多かろう。それほどまでにこの光景は『終焉』に塗れている。
降り注ぐ隕石が、『何か』にぶつかり音も立てずに崩れた。降りかかるのは砕けた岩のみ。岩ではあるが高熱に達しておらず――崩れる前の状態よりもずっといい。
「メファイル・ハマイイム、麗しき御仁よ。加護による助力感謝致す!」
幾度か言葉を交わしたことのあるリースヒースは頭上に広がる水の膜の効果を正しく理解し、謝辞を口にした。かの水竜にはきっと届いていることだろう。
リースヒースが頭上へ声を発すると、物陰から小さく息を飲む声が聞こえた。慎重に敵ではないとゆっくりとした言葉を気をつけながら覗き込んで見ると年若い女性が怯えた目をリースヒースへと向けており、落ち着かせようと膝をついた。
「集落にまで居るか」
イレギュラーズを見つけるとすぐに襲いかかってくる星界獣に舌打ちをしながらも掃討し、ルーチェは生存者を探していた。息も絶え絶えな生存者は――よくはないが――まだいい。紫萱によってばらまかれた恐怖の種により怯えている者には中々信用してもらえない。
「ここで死んだら貴様にも残っているであろう希望が完全に潰えてしまうであろう。まずは生きてここから脱出することだけを考えろ。大丈夫だ、ほかのことは余らに任せておけ」
故に、言葉を発する。
襲いかかる星界獣を倒し、操られている死体ではないと証明する。
頭上でピチチと鳴いたカナリアがハイテレパスでリースヒースからの言葉を告げ、ふらりと立ち上がった生存者を合流できるように案内した。
(少ないが、生存者はいる)
既に幾度隕石が降り注いだか解らない。随分と小さくなった岩に音波を当てて破壊した弾正は周囲を見渡した。
(……どこだ)
確かに誰かが助けを求める息遣いが――もう言葉を心に編むことも出来ぬ悲鳴、それを人助けセンサーが拾っている。だと言うのに周囲に倒れているのは死体か……動き出した死体が残した血溜まりのみ。その地獄に、微かに幼子のすすり泣きが聞こえた。
なればと歌うのは、子守唄だ。覇竜の――それもフリアノンの人々さえ知らない覇竜の奥地に暮らしている人々に伝わっている子守唄は知らない。けれど伸びやかに、優しい声を心がけて歌う。1T(10秒)で歌えるフレーズはほんの僅か。故に見つかるまで時間を惜しまず。歌いながら探し回れば――苦しみながら息を引き取らんとしている女性の体の下から幼子を見つけ出した。女性はもう助からない。傷を塞いでも、流れ出た血は戻りはしないから。
「…………」
優しい手つきで幼子を抱き上げた弾正は、幼子の害とならぬ速度を心がけ、リースヒースとルーチェの元へと連れて行った。
隕石の外へと逃げられれば良いのだろうが――それは戦えぬ人々にとっては更に危険な地へ向かうのと同義である。このアスタ周辺の地ではフリアノン周辺よりもずっと呆気なく亜竜種は死ぬし、隕石の範囲外となれば影の領域の反対側であるヘスペリデスへ逃げる他ない。そこもまた死地である。
故に救助に回った三名は『黒現のアバンロラージュ』へと生存者を乗せると、そこを護り続けることとなった。
泣く子供等を勇気づける歌を。
その背中に生きる希望を見いだせるように、力をもって。
襲い来る星界獣と小さな岩となった隕石を、そして絶望を、打ち砕き続けるのだ。
――――
――
救助に人手を割いた分、魔種たる紫萱と対峙するイレギュラーズたちの戦いは厳しいものとなった。
疲労や気力の消費にゲオルグが気を配り、反応値が低いルチアが恵みの雨の寸前に【光輝】を仲間へ振り撒きメファイル・ハマイイムからの支援を最大限に受けるよう動いた。それが功を成している。
近接して攻撃したいのもやまやまだが、前回遭遇時の彼女の行動からそれを選ばないイレギュラーズたちは距離を取り、また紫萱自身も近接タイプではないから詰めては来ない。
「あんたが何で嫌ってるか詳しくは知らないけどね、そっちが嫌ってるのと同じように愛してるこっちもいるのよ」
魔種に堕ちた理由は、魔種の数だけある。踏みとどまっている者たちにはきっと解りっ子ないもので、オデットはそれでいいと思っている。解りあえない。それはそれでいい。けれど、やってはいけないことに手を出した時点でオデットは許さない。
「嫌ってるから殺していいなんて法則、どこにもありゃしないわ!」
オデットの声に合わせ、サイズが『赫焉瞳』を使用する。彼にとっては魔種を倒すのは、オデットを守るついでだ。彼女が死地に向かうのならば、恩を返したいサイズはその場に赴き大鎌を振るうのみ。
生存者を連れているゲオルグもオデットへと視線を向け、ルチアへと視線を向ける。ルチアは任せてと言わんばかりに頷き、天へとチラと視線を向ける。空を覆う花には法則があった。ドンドンと水が溜まっていき、それが溜まると恵みの雨となって落ちてくる。――そして今もう、既に落ちそうだ。
故にゲオルグが今回復に回らなくとも1Tをもたせるだけの余裕がイレギュラーズにはあり、『赫焉瞳』を使われて忌々しげにサイズを睨めつける紫萱にはあまり言葉を発する余裕もあまりないようだ。
「あんたの愚痴ぐらいいくらだって聞いてやるわよ。後々、助けた人たちに語ってやるわ。だからあんたはここで終わりよ!」
オデットが聖なる光を放つと同時にゲオルグもその攻撃に追従し、倒しても倒してもやてくる星界獣をも屠っていく。
ルチアが光輝を行き渡らせ、空から恵みの雨が降ってくる。
「死者を開放しろ」
幾度も告げた警告。その最後の警告をアーマデルが発した。
「……嫌よ。だって」
紫萱の言葉は最後まで発されることはなかった。瞬きすらも許さぬ瞬撃が紫萱の最後の吐息さえも刈り取っていった。
(……冷静になりきれなかった、か)
怒りを抑えて戦ってきたアーマデルは、血に塗れた手を握りしめる。一刻も早く死者たちを開放してやりたいのに戦いが長引き、焦りも生じていたせいだろう。
だがこれで、紫萱に囚われていた魂たちは解き放たれた。アーマデルは魂を見送らんと手を伸ばし、また離れた場所でも――
(安らかに)
リースヒースが静かに魂への祈りを捧げていた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れ様でした、イレギュラーズ。
GMコメント
ごきげんよう、壱花です。
こちらは覇竜での戦闘となります。
●成功条件
『張・紫萱』の撃破
●シナリオについて
イレギュラーズたちが敵の本丸へと突入するということは、他が手薄になるということです。魔種側も人類圏への猛攻撃を行ってきます。影の城での戦闘を終えて帰還したら一般の生者や住む場所が無くなっていた――ではいけません。このシナリオでは『目の前の危機を挫き、一人でも多く救う』ことを目的としています。
覇竜のアスタ周辺での戦闘となります。OPにある通り、紫萱が近くの集落を襲っています。皆さんはその集落へ急いで駆けつけねばなりませんが、向かう間も星界獣たちは「あ、イレギュラーズだ」と襲ってきます。
紫萱と会い「戦闘を始めるぞ!」となった段階で誰かがド派手な合図を空に放つとメファイル・ハマイイムからの支援が飛んできます。
●フィールド『アスタ周辺』
ワームホールが開かれ、空からは隕石が降り注いで地を叩き、大小のクレーターが出来ています。
紫萱はとある集落内で人々を殺し回っています。苦しんで死んだ魂のほうが美味しいし『駒』としては強いので瀕死の状態で放置します。また、瀕死の人が居ると人はそれを守ったり助けようとするので、おびき寄せや枷にもなるので一石二鳥です。
探索すると事切れている人と瀕死の人に遭遇することでしょう。逃げて隠れている人は……呼んでも出てくる確率は低いでしょう。知人の姿(死体)に騙されて出ていった所を殺されたりしています。
戦闘場所は集落内を想定していますが、集落外に出せるだけの説得力のあるプレイングがあれば集落外でも大丈夫です。
メファイル・ハマイイムによる特殊効果が発生しています。(後述参照)
・フィールド効果『隕石』
5Tに一度隕石が降り注ぎます。足場を悪くさせたり、ダメージやBSを受けます。人々を滅ぼすためのものであるため『意識的な破壊』の扱いになります。
●エネミー
○張・紫萱
元亜竜種の暴食の魔種です。魂を食らいます。
こんな世界は滅んでしまえば良いと思っており、亜竜種という種族のことも竜種のことも『アスタ』のことも嫌っています。目的を持って集落を次々と襲っていっており、既にいくつもの集落を陥落させ沢山の『駒』を得ています。
呪術めいた技を使用し、死体も魂も彼女の駒となります。また【棘】が常に付与されているようです。
近接攻撃を仕掛けたり【怒り】を付与したりすると、『駒』を身代わりにします。消費されたものが魂であった場合消滅(輪廻の輪に入れず消えるという意)します。
範囲ブレイク持ち、【無常】【疫病】【滂沱】【塔】あたりを多用します。
○星界獣 … たくさん
無差別にエネルギーを喰らう飢えた獣です。ワイバーンを喰らって成長したため、ワイバーンの形で飛んでいます。
ワームホールから無限に現れてきます。星界獣の好物は『希望の力』――つまるところイレギュラーズたちが持つ力であるため、星界獣はそのエネルギーを得ようとイレギュラーズを見つけると襲いかかってきます。
物理攻撃、出血等。
●集落の人々
血と死の香りが強いです。
生存者は居るのでしょうか……。
●メファイル・ハマイイム
竜種。将星種(レグルス)級、本性は30m程の美しい水竜ですが普段は女人の姿を取っています。
苗字等はなく上記の名前でひとつの名前です。省略は勝手に愛称をつけることなり、機嫌を損ないます。
攻撃タイプの竜種ではないため、今回は皆さんの支援に回っています。
『水竜の加護』※この効果はブレイクされません。
皆さんの体に薄い水の気の膜が張られます。(濡れたり水が飛び散ったりはしません。)
・受ける攻撃ダメージを1割減少させます。(【棘】分は減少しません。)
・命中+30、CT+5、FB-2
・亜竜が寄り付かず、邪魔をされません。
『水花の天蓋』
皆さんの頭上を起点とした半径100mに展開されます。遠くの上空から見ると水で出来た蓮が現れているように見えますが、皆さんからは「水の膜が張られた」くらいに見えることでしょう。
・小さな隕石を消滅させる、巨大な隕石の場合は砕いて両腕で抱えられる岩程度に細かくします。(被弾するとそれなりにダメージを受けます。)
・3T毎(T開始直後)に雨のように水滴を降らせます。HP2000・AP500の回復、BS回復80の効果があります。前のターン終了時に【光輝】が付与されている場合、その効果が加算されます。
・【識別】されており、敵側への恩恵はありません。
●EXプレイング
開放してあります。文字数が欲しい時に活用ください。
此度、関係者の採用はいたしません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは皆様、よろしくお願いします。
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