シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>イミテーション・イレギュラーズ
オープニング
●ウィルヘルミナの依頼
Case-Dと称された滅びの概念が影の領域に顕現するとの報せがもたらされて以来、『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)は多忙な日々を送っていた。次々と舞い込んでくる依頼の情報を整理しては、それに参加するイレギュラーズを募って送り出していく、その繰り返しだ。
そんなユメーミルの元に、『バシータ領主』ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース(p3n000144)が訪れた。
「今日は、如何したんだい?」
「世界の終焉が迫っている、と聞いた。それなのに、座して待っている気にはなれんのでな。
敵の本拠、影の領域とやらに、殴り込むつもりだ。ついては、同道するイレギュラーズを募りたい」
「影の領域への殴り込み、ねぇ……」
ウィルヘルミナからの依頼に、ユメーミルはふむ、と考え込んでから、快活な笑顔を浮かべた。
「良いことを聞いたよ。それなら、アタシも同道させてくれるかい? そっちの方が、アタシの性に合いそうだ」
「それは良いのだが、情報屋の仕事は如何するのだ?」
「ああ、勘蔵にぶん投げるとするよ。世界が終わるかどうかの瀬戸際ぐらい、しっかり働いてもらわないとね!」
ウィルヘルミナの問いに、ユメーミルはかつての教育係だった『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)の名を出した。普段は非常に怠惰で、教育される側であるはずのユメーミルの手を焼かせてくれたのだ。こんな時ぐらい、しっかり働いてもらってもいいだろう。
「勘蔵か……確かに、そうだな。では、イレギュラーズ達の募集と、情報屋の仕事の引き継ぎと、準備を進めてくれ」
「ああ、任せておきな!」
得られた答えに納得した様子を見せたウィルヘルミナは、準備をユメーミルに依頼する。自信満々に応じたユメーミルは、両方の準備をすぐに終わらせた。
●『姿見の』リフレとイミテーション・イレギュラーズ
影の領域を突き進み、影の城に突入したイレギュラーズ達。だが、突然その周囲の空間が歪む。
イレギュラーズ達が何事かと思う間に、辺り無限に拡がる異空間に変貌していた。
「ようこそ、イレギュラーズの皆様。貴方達を、イノリ様の元に行かせるわけには参りませんの。
ですから、ここで死んで頂きますわ」
白磁のような肌に、流れるような長い銀髪。そして魔性を感じさせる紅い眼の、白銀のドレス姿の女性が、優雅に一礼してみせてから、そう告げる。
すわ戦闘か、と身構えようとするイレギュラーズ達に、女性はふぅ、と嘆息すると、悠然と続けた。
「せっかちですわねぇ。もちろん、貴方達を通すつもりはありませんけれど――まずは、これを見てからにして下さらない?」
クス、と微笑む女性の前に、凝縮した滅びのアークの気配が幾つも漂いはじめる。そして――。
「なっ……馬鹿な!」
「アタシ達の、コピーだって言うのかい!」
ウィルヘルミナとユメーミルが、驚愕する。それも無理からぬ事で、イレギュラーズ達の眼前に現れたのは、イレギュラーズ達――正確には、その姿を模した終焉獣(ラグナヴァイス)――だった。
「そうですわ――と、自己紹介が遅れましたわね。私は、『姿見の』リフレと申します。
こうして創り出した貴方達のイミテーションたる終焉獣と共に、貴方達を屠る者ですわ」
そこまで告げると、リフレと終焉獣らはイレギュラーズ達に対する殺意を漲らせ始める。
しかしイレギュラーズ達とて、屠ると言われてハイそうですかとは行かない。敵の殺意に応じるかのように、イレギュラーズ達も臨戦態勢に入っていった。
- <終焉のクロニクル>イミテーション・イレギュラーズLv:50以上完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年04月06日 22時06分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●偽りの自分達を前にして
「僕等のイミテーションを勝手に作るとか、リフレ、貴様……!」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の憤懣の叫びが、何もなくただただ広いだけの異空間に響き渡る。
ヨゾラが激するのも、無理はない。目の前に現れたリフレと名乗る魔種が、自分達のイミテーションを――それも、よりにもよって滅びのアークを材料にして――創り出したのだから。
何としても、自分達の偽物と、その偽物を創り出したリフレを倒す。その意志を固く宿した蒼い瞳を、ヨゾラはリフレ達へと向けた。
「フフ……ハハハハハハ!」
コピーされた自分達を前にして、『黒一閃』黒星 一晃(p3p004679)はヨゾラとは対照的に、愉快そうな笑い声を上げた。
「混沌に来て幾星霜、己を斬る時が来るとは思わなんだ。
更に、特異運命座標と戦う事が模倣とはいえ出来るとはな。本物を斬るわけにはいかないが故に、助かるぞ魔種よ」
一晃としては、こんな機会をくれたリフレに、感謝すらしたいほどである。
だからこそ、速やかに斬り捨てるつもりだ。それは、目の前の自分達が偽物だからではなく、戦うべき敵は別にいるが故に。
(僕たちの能力を反映させた敵か……)
目の前にいる自分達のイミテーションを前にして、その脅威は如何程のものかと、『策士』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)は沈思黙考する。実力は自分達と同等と考えるならば、相応の脅威ではあるはずだ。だが。
(どういう敵であれオリジナルに敵わないことを、この貴族騎士が証明して見せよう!)
そう意気込むと共に、シューヴェルトは厄刀「魔応」を鞘から抜き放ち、血によって紅く染まった刀身を露わにした。
「自分らの偽物ぉ? はー……よう、用意出来ましたなあ」
『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)がそう言ったのは、感嘆からか、呆れからか。その何れから来ているのかは、今一つ判然としない。
だが、その何れであったにしても、彩陽にとって確かなことは、器だけ用意したところで意味が無いと言うことだ。
イミテーションの自分達が全く同じ能力を持っているとしても、それに伴う感情と、行動と、その他諸々はオリジナルである自分達にしか持ち得ない。そして、それらをイミテーションに持たせられない以上、「仏作って魂入れず」でしかないのだ。
(そういうところ、しっかりとみせたりましょ)
そう考えながら、彩陽は最初に仕掛けるべき相手を見定めにかかっていた。
(なるほど、私たちの偽物……確かに、戦力を集めるよりもより効率的で有益な揃え方。私も、是非その力を得てみたいものです)
敵に敵のイミテーションをあてがうと言うリフレの手法に、『死血の魔女』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は、納得出来るものを感じていた。
(けれど。それでは私も、彼らも倒せない。手の内を知られている駒を有す恐ろしさ――教えてあげるわ、死血の魔女の策略で)
刹那、マリエッタの姿が今までとは違う、白く美しい髪を棚引かせ、金の瞳を輝かせる女性のものへと変貌する。マリエッタの内に眠るもう一つの人格、死血の魔女が表に出てきたのだ。
「な――!?」
マリエッタの狙いどおり、コピーしたはずの敵が突然変容したことに、リフレは驚愕し、それを隠すことも出来なかった。
「コピーを取られるとは、私達も随分と有名に、有力になったものじゃん! ねえ、トール?
ああでも……私が思うにあのトールのコピーはちょっと解釈違いだな。具体的には――いや、これ以上はやめとこう」
「解釈違い、ですか」
『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)は、傍らの『プリンス・プリンセス』トール=アシェンプテル(p3p010816)に向かってそう語りかけ、そして、途中で止めた。トールは具体的に、沙耶から見て何処が如何解釈違いなのか詳しく聞いてみたく思ったが、敢えてその先を聞くことはしなかった。
「しかし私のコピーもまた、きっと杜撰な出来なのかなぁ。自分のコピーはしっかりしててほしいけどなぁ」
沙耶のその言に、確かにイミテーションの沙耶は、オリジナルに比べて何処か完全に模造出来ていない部分があるとは、何となくトールも察して同意する。ともあれ。
「まあ、ある種『自分と向き合える』いい機会か……やってやろうじゃん!」
「そうですね。やってやりましょう!」
前向きに沙耶が気合いを入れれば、トールも相槌をうちながら同じように気合いを入れるのであった。
●本物と、偽物の差
戦端は、偽の彩陽からの彩陽への攻撃によって開かれた。「穿天明星、剔地夕星、煌星燐火」から連射された矢が、次々と彩陽を襲う。避けようもなく直撃するかに思われた多数の矢を、彩陽は見事に回避する。見る者にとって、それは奇跡的でさえあった。もしまともに受けていれば、その攻撃の圧によって彩陽の行動は阻害されていただろう。
(危ないとこやったで……)
内心で冷や汗をかきながらも、彩陽もまた「穿天明星、剔地夕星、煌星燐火」を構える。もっとも、彩陽の狙いは偽の彩陽ではなく、偽のフォルトゥナリアだ。
何時も闘技場で一緒に戦っていることもあり、彩陽はフォルトゥナリアが敵に回った時の厄介さをしっかりと把握している。そのため、彩陽は偽のフォルトゥナリアに次々と矢を射かけた。
直撃を受けた偽のフォルトゥナリアは、その圧によって行動を妨げられた。
彩陽と同時に、フォルトゥナリアとヨゾラも動いている。
「速やかに、彩陽さんと私のコピーを行動不能にするよ! 今落とせるなら落とす! 『SoB』!!」
三頭身にデフォルメされたフォルトゥナリア、と言うべき姿をした者達の軍勢が召喚されると、その軍勢はイレギュラーズのイミテーション達の方へと襲い掛かっていった。
見た目こそ可愛いその軍勢は、イレギュラーズのイミテーション達をしっちゃかめっちゃかに殴打して回り、見た目からは予想も出来ないようなダメージをイミテーション達にしっかりと与えていった。
「呑み込め、泥よ……偽物達を、全部飲み干せ!」
その間にも、ヨゾラはケイオスタイドを自己流にアレンジした魔術を発動する。混沌に揺蕩う根源的な力を用いるのは同じではあるが、ヨゾラの魔術はそれを煌めく星空のような泥に変えたところに特徴がある。キラキラとした無数の小さい輝きが、あたかも星空の海の如く、イミテーション達の周囲で瞬いた。
その輝きによって、纏わり付いた者の運命は漆黒に塗りつぶされた。
「貴方たちコピーに、誰かへの想いを己が力に変えることができますか?」
そう問いかけながら、トールは視線を偽の彩陽の視線と交錯させる。二人の目と目が逢った瞬間、運命に導かれた物語が始まったかの如く、偽の彩陽の視線はトールへと釘付けになった。
さらにトールはもう一度、同じ視線を偽のフォルトゥナリアへと向けて、その視線を自身へと向けさせた。
ちなみに、イミテーション達からの返答はなかったが、トールの問いに対する回答を用意するとすれば、「そもそも滅びのアークによって創られた模造品の終焉獣に、誰かへの想いなど存在しない。当然、それを己が力とすることも不可能」となる。
「黒一閃、黒星一晃! 一筋の光と成りて、姿見の現身を無に帰す!」
一晃はそう叫びつつ、偽の彩陽と偽のフォルトゥナリアを射線上に捉えられる位置へと移動。そして、全ての闘気を収束して、虹の如く輝く光の斬撃を放った。「零式閃刀技・極光」である。
この時点で、イレギュラーズ達はイミテーション達の中でも偽の彩陽と偽のフォルトゥナリアを最優先で倒すべき対象と判断していた。一晃が偽の彩陽と偽のフォルトゥナリアを射線上に置ける位置へ移動してから極光を放ったのも、その判断の故である。果たして、光の斬撃は偽の彩陽と偽のフォルトゥナリアと、そして他何人かのイミテーションを巻き込み、斬り裂いた。
(『俺と同じように』極光を打ち込めるか? 単純な連携しか出来ない模倣の身でな!)
挑むような、試すような視線を、一晃は偽の自分に向ける。この直後、偽の一晃は極光をイレギュラーズ達に打ち込んだが、一晃と同じように、とはならなかった。偽の一晃が放った極光は、対象とした人数こそ本物の一晃の極光より多かったものの、ただそれだけであり誰を最優先で倒すべきかと言う戦術的な判断が欠如していた。
「偽りの僕よ、この僕に敵うか?」
シューヴェルトもまた、一晃と同じように挑むような、試すような視線を偽の自分に向ける。同時に、シューヴェルトはイミテーション達の方へと駆け出して、シェヴァリエ家に代々伝わる剣舞を偽のフォルトゥナリアを含む数人に仕掛けた。偽の自分と存分に戦いたい気持ちはあるが、今はその時ではなく、貴族騎士としては世界の命運がかかっている状況で鼎の軽重を誤るわけにはいかない。
「此花咲夜」と称されるその剣舞には、民を護ると言う意志が込められている。ましてや、今回は世界全てを護るための戦いだ。常よりも鋭くキレのある動きから繰り出される剣の舞いは、敵を強かに斬り刻み、流血を強いた。
「アタシ達を完璧にコピー出来ていれば、また違ったのかもしれないけど、ね?」
リフレが創り出したイミテーション達は、確かにその精度は高かった。だが、完全なるコピーでない故に、開戦早々既に綻びが見え始めている。それは、偽のフォルトゥナリアと偽のヨゾラが偽の彩陽と同時に行動出来なかった事からも、また一晃と偽の一晃とで極光の放ち方が異なった事からも、明らかだった。
クスリ、と嘲るような笑みを浮かべながら、マリエッタは大いなる御業を自らに宿し、自身の神秘力を強化する。そして、前進してイミテーション達との距離をやや詰めると、偽のフォルトゥナリアを中心に堕天の輝きで照らし出して、重苦しい呪いを浴びせた。
堕天の輝きと、それがもたらす呪いにイミテーション達が悶え苦しんでいる間に、マリエッタは遺失魔術のアミュレットで時間に干渉し、追撃を仕掛ける。
高度な掌握魔術によって構築された魔力の糸が、イミテーション達に絡みつく。イミテーション達の身体には斬撃として働いた魔力の糸によって傷が刻まれると同時に、その動きを束縛し制限した。
(さっすが、トール! 彩陽コピーとフォルトゥナリアコピーも、もうしっかり釘付けになってる!)
偽の彩陽と偽のフォルトゥナリア、両方の敵意をしっかりと引き付けたトールの手腕に、沙耶は感嘆し、予告状を送る必要はなさそうだと判断する。ならばと、沙耶はそのそれぞれが質量さえ有するかのような残像を多数発生させ、一斉に偽の彩陽に斬りかかった。
偽の彩陽は、次々と襲い来る軍刀「レヴィアン・セイバー」の刃を避けきれずに、深手を負った。
●イミテーション、全滅
イレギュラーズ達は、目の前に突然現れたイミテーション達に対し、上手く戦ったと言える。もし、戦っているのがイレギュラーズ達とイミテーション達だけであれば、イレギュラーズ達は順調に押し切って勝利を得られていただろう。
だが、イミテーション達への対応はしっかりと意識した一方で、リフレへの対応が甘くなっていたのは、惜しむべき点だった。このため、リフレは自由自在に暴れ回り、イミテーション達と共に一晃、シューヴェルト、ヨゾラ、フォルトゥナリア、マリエッタ、ウィルヘルミナ、そして彩陽の盾となったユメーミルに深手を負わせている。
それでもイレギュラーズ達が徐々に戦況を有利に傾けていけたのは、リフレもまたイミテーション達との連携を十分に取れなかったことと、フォルトゥナリアを回復役として機能されられたかどうかの差によるものだった。
イミテーション達は、彩陽、ユメーミル、フォルトゥナリア、ヨゾラ、マリエッタ、ウィルヘルミナ、シューヴェルトの順に倒れ、残るは一晃、トール、沙耶のみとなった。
最早瀕死となった偽の一晃が、最期の力を振り絞って雷さえ断つ無双の一撃を放つ。
「この一閃、なかなかであった――だが、俺の命には届かなかったな」
袈裟に深々と斬られ、倒れるかに見えた一晃だったが、可能性の力により倒れずに耐え抜いた。そして、これが本物だとばかりに、同じく無双の一閃を放って偽の一晃を袈裟斬りにする。その傷は致命傷と言える程に深く、可能性の力を有しない偽の一晃は耐えきれずに倒れた。
斃れた偽の自分を一瞥した一晃は、一瞬だけフ、と闘争の愉悦から来る笑みを浮かべると、すぐに残る敵へと意識を向けた。
「トール……その程度? コピーとはいえ情けないぞ? その程度だっけ、私が好きだった君の輝きは?
私のAURORA-Ysに負けない、強い輝きを持ってたはずだよ君は?」
失望も露わに、沙耶は偽のトールに問いかける。もっとも、沙耶は回答を期待しているわけではない。
「私は偽りの輝きを好きになったわけじゃないんだ……消えろ、紛い物!」
「オーロラの髪飾り」に手を触れながら、沙耶は眩い程の若草色の輝きをレヴィアン・セイバーの刀身に纏わせる。そして、柄を両手で握りしめて、大上段から振り下ろした。偽のトールはその輝きに包まれ――跡形もなく、消滅した。
(これまで、幾多もの戦場で肩を並べて共に戦ってきました。なので、お互いの癖や呼吸のリズムまで手に取るようにわかっています。
身のこなしは真似できても、互いに渡した輝きまでは真似できなかったようですね)
トールは偽の沙耶をそう断じながら、黄金に輝く剣「真説『プリンセス・シンデレラ』」を中段に構えた。
「このオーロラのブレスレットが放つ若草色の輝きは、世界にたったひとつだけです!」
偽の沙耶にそう告げると同時に、プリンセス・シンデレラの刃が巨大なオーロラの光の刃へと変貌していく。その光の刃で、トールは偽の沙耶の胸を貫いた。刹那、全てを包み込むような眩い光が迸る。その光が収まった時には、偽の沙耶の姿はなかった。
●『姿見の』リフレ、斃る
手駒たるイミテーション達を全滅させられたリフレは、当然イレギュラーズ達からの集中攻撃を受けることになった。
リフレ自身は強力な魔種ではあったが、歴戦のイレギュラーズ達を相手にこうなってしまうと、最早多勢に無勢でしかない。白磁のような肌、流れるような長い銀髪、白銀のドレス。その全てが、自身の血によって赤黒く染め上げられていった。もう、決着が目前なのは誰の目にも明らかだった。
「全員ね。それぞれの技術に対する感情も、自負も、自信も持っとるのよ。
ただの猿真似に、それを乗り越えられる筈はないでな」
諭すように言いながら、彩陽は穿天明星、剔地夕星、煌星燐火による連射を繰り返す。だが、それを言われたところでリフレには最早意味も無く、それに何より。
「く、また……っ!」
展開する反射結界を、ことごとくこの連射によって破壊されてきたリフレは、苛立ちと憤りに顔を歪めた。
(さすがに、もう限界みたいだね。それじゃ、終わらせよう)
フォルトゥナリアは、今は回復するよりも畳みかけるべき時だと判断し、三頭身にデフォルメされたフォルトゥナリアの姿の軍勢を召喚した。多数の軍勢はリフレを寄って集って攻撃し、その生命をさらに終焉へと近づけていく。
「もうイミテーションは作らせない……鏡のように砕け散れ!」
本体である魔術紋を夜空の星の如く輝かせながら、ヨゾラは掌の一点に神秘力を集中させる。そして、掌打をリフレの腹部に叩き付けることで、集中させた神秘力も同時に叩き付けた。
「うごえっ!」
腹部に星の破撃を叩き付けられたことで、リフレは身体をくの字に曲げ、胃液と血の混ざった液体を吐いた。
「一流の美貌を持っても、ドレスの着こなしは二流でしたね。その程度の舞いではシンデレラには届きません!」
オーロラを纏ったかのようなドレス姿の女性に装いを変えているトールは、よろけながらも体勢を立て直そうとするリフレに、巨大な極光の刃を突き立てた。
「ぐえっ!」
ヨゾラの掌打を叩き付けられたのと同じ場所を深々と貫かれたリフレは、傷口に血をじんわり滲ませると同時に、さらに鮮血を口から吐き出す。
「強者である俺達を模倣すれば勝てると思ったか? 強さとはただ上り詰めるだけではない事を知り、黄泉へと行くのだな!」
さらにそこに、一晃が畳みかけていく。リフレの首を狙った横薙ぎの一閃は、しかし首を断つ事は出来なかった。危険を感じたリフレが、反射的に両腕を盾にして一晃の刃を受け止めたからだ。だがその代償として、リフレは両腕の肘から先を喪った。切断面からは、血がドバッと大量に流れ出してくる。
「ああああああ!」
リフレの叫びは、痛みの故か、両腕を喪ったショックの故か。何れにせよ、リフレは一晃の言を耳に入れるどころではなかった。
「偽りは、所詮は偽り。本物の僕等に敵うことはなかったな」
そう断じながら、シューヴェルトは飛竜さえ地に墜とすと言う、貴族騎士流の蹴技を繰り出した。呪詛を足に纏った強烈なハイキックが、リフレの頭を捉える。
リフレの意識は飛び、その上半身が大きくグラグラと揺れる。そのままリフレの身体は倒れるかに見えたが、辛うじてリフレは意識を取り戻して倒れず踏み止まった。
だが、それはリフレにとって死の瞬間がほんのわずかに延びたに過ぎない。
「何も映せなくなったとき、何を見せてくれるのかしらと期待したけど……」
「中々に面白い機会だった。が、もう終わりにしよう」
期待外れだったと言わんばかりのマリエッタと、もうこれ以上は十分だと言わんばかりの沙耶の二人が、リフレに止めを刺すべく同時に動いていた。
血によって生み出された無数の武器が、圧倒的な速度で生み出された残像が、共にリフレを取り囲む。
これでもかと言う程に身体を貫かれ、斬り刻まれたリフレの生命は遂に尽き、その身体は倒れ伏した。
リフレが斃れると同時に、周囲の空間はただ広大な異空間から、元の影の城の一区画に戻った。
「……さよなら、リフレ。僕等はイノリもぶっ潰しに行くからね……!」
ヨゾラはそう言い残すと、仲間達と共にこの場を去り、先へと進んでいった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
シナリオへのご参加、ありがとうございました。
皆さんの活躍により、イノリへの道を阻むリフレとイミテーション達は討伐されました。
今回、自分達のコピーが相手と言うことで、プレイングには非常に頭を悩まされたかと思います。
リフレへの対応が甘いとは判定しましたが、イミテーション達への対応はプレイングを拝見していて本当に舌を巻くほどであり、それだけイミテーション達の方を脅威に感じていらしたのではと察しました。
全体的に見ても、かなりベストに近いベターだったのでは、と感じています。
何方の活躍も素晴らしいためMVPは非常に迷いましたが、序盤、偽の彩陽さんと偽のフォルトゥナリアさんに【怒り】付与によって仕事をさせなかった点をポイントとして、トールさんにお贈りします。
それでは、お疲れ様でした!
GMコメント
こんにちは、緑城雄山です。
PPPの最終決戦、<終焉のクロニクル>のシナリオをお送りします。
異空間に皆さんを拘束してイノリへの道を阻む魔種『姿見の』リフレと、リフレによって創り出された皆さんのイミテーションである終焉獣を撃破して、イノリへの道を開いて下さい。
【概略】
●成功条件
敵の全滅
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●ロケーション
影の城の内部、無限に拡がる異空間。
天には何もなく、地にも何も存在しない、ただひたすらに平坦な地面が拡がっている場所です。
環境による戦闘への補正はありません。
●初期配置
イレギュラーズ達←40m→イレギュラーズ・コピー達←10m→リフレ
イレギュラーズ達、及びイレギュラーズ・コピー達は、戦闘開始時点では密集しているものとします。
【敵】
●『姿見の』リフレ
影の城の、イノリの居所に繋がる道を守る魔種です。
己が認識した者を鏡像のように再現して敵にけしかける権能から、『姿見の』の二つ名がつきました。
攻撃力は(魔種にしては)取り立てて高くは無いものの、状態異常や行動阻害に対する耐性と、攻撃を反射してくる結界が厄介でしょう。
・攻撃手段など
格闘 物至単
エッジドレス 物至範 【出血】系BS
舞うような動きと共に、ドレスの裾に仕込んである刃で斬りつけてきます。
魔力光 神超貫 【万能】【邪道】
反射結界 神至自 【副】【付与】
攻撃の威力を完全に反射する結界を展開します。
●イミテーション・イレギュラーズ
リフレによって即興で創り出された、イレギュラーズ達(後述の友軍含む)のイミテーションである終焉獣(ラグナヴァイス)です。
能力は、皆さんと「基本的には」同等です。
皆さんとの違いは、大きく以下の3点です。
・パンドラによる強制復活が発生しない。
・他者への感情自体が存在しないため、連鎖行動は発生しない。
・アタッカー、タンクなどの役割に応じた動きまではするけれども、高度な連携は行えない。
【友軍】
依頼人であるウィルヘルミナと、依頼を仲介したユメーミルが皆さんに同道します。
基本的には、二人は皆さんからの指示によって戦います。指示については、プレイングに明記して下さい。
指示がない場合は、GM判断で適当に戦います。
●ウィルヘルミナ=スマラクト=パラディース
幻想北方にあるバシータの領主です。今回の依頼人。
世界が滅ぶかどうかの瀬戸際ならば、敵の拠点に殴り込みをかけてやろうと、皆さんに同道を求める依頼を出してきました。
バランス型物理前衛と言ったステータスの持ち主ですが、ソリッドシナジー、クェーサーアナライズによる支援を行うことも出来ます。
●ユメーミル・ヒモーテ
ローレットの情報屋。ウィルヘルミナからの依頼を皆さんに伝えつつ、ウィルヘルミナと共に皆さんと同道することにしました。
以下の2つの武装を切り替えることによって、タンク運用か後方火力運用かの何れかを行うことが出来ます。
どちらの運用をするかは、皆さんがプレイングで指定して下さい。指定がない場合は、GM判断で決定します。
なお、ユメーミルのコピーも皆さんが選んだ、あるいはGMが判断した運用となります。
・”グレート・ウォール・シールド”装備
身体をすっぽり隠してしまうほど大きな盾を両手で持ち、基本的には防御に専念して誰かを庇い続けるスタイルです。
本来低めの防御技術が、大幅に強化されます。
攻撃面は、幸運にもEXA判定に成功すれば、シールドバッシュを繰り出すくらいです。
・“バスター・ビーム・カノン”装備
練達製の据え置き型ビーム砲を携行し、火力支援を行うスタイルです。
武器のデータとしては、神超貫 【万能】【弱点】【溜】/物至扇(※白兵武器として使用時)となります。
一撃の威力は大きいのですが、高速詠唱がないためクールタイムが発生する(ただしクールタイムの間は白兵武器として使える)ことと、範囲が「貫」ではありますが誰かが防御を固めて盾となった場合、そこから後ろには攻撃が通らないのがネックです。
それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。
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