シナリオ詳細
<Je te veux>聖像はそこに在りて
オープニング
●狙われる収集器
幻想王国を襲った冠位色欲の凶行を何とか斥けるに至ったイレギュラーズ。
だが、その中に『レオン・ドナーツ・バルトロメイ』の姿はなかった。ギルドオーナーの代理として各国の情報収集や依頼遂行の可否を決定するのはユリーカ・ユリカとなる。
まだ年若い情報屋は亡き父の栄光を追いかけ、父代りであり兄代りであったギルドオーナーの背を見てきた。
「まったく、レオンは何時も勝手なのです。何処かをほっつき歩いて……ですが、ボクたちはやれることをしましょう!」
そう告げる彼女からイレギュラーズに伝達されたのはラサ南部砂漠コンシレラの変化だった。
R.O.Oで観測された終焉の獣『ベヒーモス』。通称をでっか君と呼ばれたそれは微動だにせず蹲っているらしい。
だが、その背中から小型の終焉獣がぼろぼろと崩れるように現れ始めた。それらは宙空より何処かに転移陣を開き移動していく。
その移動先が各国に存在するパンドラ収集器の元であり、目的が『収集』であることが分かったのだ。
ベヒーモスが何を糧にするか分からないが、この行動によりまるで酸素のようにパンドラを飲み込み、滅びのアークを吐き出しているかのようである。
パンドラ収集器はイレギュラーズならば誰しもが持ち得るものだ。ローレットに属さぬイレギュラーズ達も思い思いの品がその収集器となって居る。
集まったパンドラは空中庭園のざんげの持つ『空繰パンドラ』に蓄積されるが、どうやら何らかの影響のせいで滞っているらしい。
ローレットはそのパンドラ収集器を小型ベヒーモス(通称ちっさ君)に奪われぬように保護、そのまま収集器をざんげの元へと届け、その役目を解いて持ち主に返却することにした。
……レオンならば『持ち主に返さなくて良いように取り計らった』だろうか。そんなことも出来ない甘ったれた少女(ユリーカ)はその選択をしたのだ。
●守るべきものは
天義の国で困っている人達がいないか探してみようかな。
『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)はそう考え状況を注視していた。
だから、だろうか? 今回の話はスティアの耳にいち早く届いた。
パンドラ収集器を巡り起こり始めた事件。この事件の問題は「全てのイレギュラーズがローレットに所属しているわけではない」ことにも起因する。
つまり、ローレットに入ってくる情報が一手遅れることも多く……だからこそこういう事件が起こるとも言えるわけだが、防げば何の問題もない。
そしてスティアが今回掴んだ情報はやはり、そういったローレットに所属していないイレギュラーズに関連するパンドラ収集器であった。
「名前は、名もなき聖女の像、なんだって」
それが何処の誰であるかは分からない。イレギュラーズのものであるからには天義とは全く関係のない誰かの像であるのかもしれない。
しかし、そのパンドラ収集器たる「名もなき聖女の像」の持ち主であるイレギュラーズは如何なる理由か像の側にはおらず、そもそもそのイレギュラーズが誰であるかも分かってはいない。
ただ「名もなき聖女の像」は天義のとある町の小さな神殿に安置されており……その像を目指し小型のベヒーモス……通称「ちっさ君」が進撃してきている。
持ち主のイレギュラーズが何らかの守りをかけたのか神殿の位置が分からずウロウロしているようだが、それももうすぐ解けてしまうものと思われた。
「今すぐ行って聖女像を守らないと……!」
そう、名もなき聖女像を守らなければならない。ちっさ君に奪わせるわけにはいかないのだ……!
- <Je te veux>聖像はそこに在りて完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2024年02月09日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●聖女の像を守るために
小神殿は、本当に小さな場所であった。小さすぎるというほどではないが、あまり大多数の人間が入れる構造にはなっていない最低限の造りと、その周囲の小さな境内。天義の様式に則りつつも省スペースを実現した構造の小神殿は、天義の小さな町では比較的ありふれたものだ。そして……そんな場所にパンドラ収集器「名もなき聖女像」はあった。
なんとなくだが、優しそうな表情の女性だ……聖女というに相応しいようにも見える。けれど「名もなき聖女の像」の名前の通り、この像が何処の誰なのかを知る者はいない。
そう、モデルとなった女性が何処の誰であり、どんな人物を模したものか、此処に安置した本人もいない状況では知りようもない。しかし、此処に安置された名もなき聖女像を守るため、あるいは町の人をも守るためだろうか。展開された力は……しかし今、尽きようとしていた。これを守るイレギュラーズが何処にいるのか分からない現在、此処にいる面々でどうにかするしかないのだから。
「直接的な攻撃や防御じゃなさそうだけど、終焉獣の探知を阻害するなんて不思議な力だね。それを使ってモンスターとかから町を守ったりしてたのかな。どこにいるかはわからないけど、持ち主のイレギュラーズが悲しんだりしないようにパンドラ収集器の聖女像を守り抜かないとね!」
「うん。名もなき聖女の像……どんな人が持ち主だったかはわからないけどちっさ君に奪わせるわけにはいかない。敵は全部倒して守り抜くよ!」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)と『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がそう頷きあう。だからこそヨゾラも保護結界で周囲を保護し、広域俯瞰やハイセンス、鳥のファミリアーを駆使して周辺の警戒をしている。この小神殿のあたりは「名もなき聖女の像」の持ち主であろうイレギュラーズの力で守られてはいるが、それももうすぐ消えてしまう。そうなれば、此処は戦いの場になるのだ。
「ローレットに行ったとき、ユリーカさんが気丈にふるまっているのが分かったのです。ここはしっかりお仕事を成功させて、安心してもらえる様に頑張ろうと思うです」
『ひだまりのまもりびと』メイ・カヴァッツァ(p3p010703)もそんな決意を再確認しながら今の状況を思い返す。
「んとんと……。住んでいる人が隠れてくれているのは助かるですね。怖い思いも痛い思いもさせたくないですしね」
あくまで敵の狙いは名もなき聖女像だ。そういう意味では余計な被害が出ないのは助かると言わざるを得ない。
「名も無き聖女の像……随分と変わった物でパンドラを集めているんだねぇ。信仰心の深い人だったりするのかなぁ?」
小神殿に納められているところからみてもそうではないかと、そんなことを『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は思う。
「持ち主が気になるけど今はそれ所じゃないよね……まずはちっさ君を追い払うのが先決! 奪われたら戻ってくるかもわからないし、良い事が起きないことだけは予想できるしね。って事で全力で守ってみせるよ!」
「どんな形であれども。奪わせるわけにはいきませんからなあ。と言う訳で、ちっさ君とやらはとっととお帰り願いましょか。どんなに人に化けたところで人の機微には叶いませんわ。油断なく倒しましょ」
『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)もスティアに頷き、段々とこちらに近づいてきているちっさ君たちを見る。小神殿を守る淡い光はどんどん弱くなってきている。そのせいで、ちっさ君たちが名もなき聖女像の場所を把握してきているのだろう。
戦いのときが近づいているのを感じながら『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)も戦意をあげていく。
「ちっさ君って何処のどいつのネーミングセンスかしら? こいつら全然可愛くないんだけど? アタシは忙しいの、世界の危機より恋路が優先なの、分かる?? 邪魔してくれてんじゃねえよ、ぶち殺すぞテメェら?」
今にも襲い掛かりそうな京だが、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)はちっさ君たちの動きに1つの戦略のようなものを見ていた。
「こちらの戦い方が模倣されている? まだ拙いが、戦術的行動を有効なモノとして認識している点は侮れないな。将来的にはより強い脅威となる、と考えておいた方が良さそうだ」
そう、その動きは陣形というものを考慮しているようにも見えた。まだ大分荒いし汰磨羈の言うように拙いが、イレギュラーズのものを模倣している可能性は充分に考えられた。
「ふふ、素直で分かりやすいね」
だからこそ『無尽虎爪』ソア(p3p007025)も、その状況をしっかりと把握していく。
「ちっさ君は8体、みんなが同じ強さではなく役割分担があるみたいだね。何百という戦いを経験したから何となく直感でわかるよ。あの奥まって守られてるような位置にいる個体、多分ヒーラーだ。それを、喰う」
作戦開始の時間はすぐそこだ。すでに戦略は……組み立てられている。
●聖女の像を守れ
それは、黒い人型だった。人と呼ぶにはあまりにも歪で、けれど人型としか呼びようのない姿。
ちっさ君。そう呼ばれるそれらはこの場を攻略するのに適した姿として存在しているのだろう。ベヒーモスとは似ても似つかないが……脅威としては、あまりにも充分に過ぎる。
その動きはイレギュラーズのような陣形をとっているように見えて、まだ稚拙だ。恐らくは陣形をとる意味を完全に理解できていない……ということなのかもしれない。しかしそれは、こちらが付け込む隙が多いということでもあった。
だからこそ、観察する時間もあったこちらに大きく有利に働いた。
「先ずはこいつからだね」
ソアは回復ちっさ君を狙い纏雷からのジャンピンを発動させていく。
(仲間もみんな同じ考えだって分かる。皆はヒーラーを守る終焉獣を退ける行動が多そうだね。それならボクはシンプルにヒーラーを最短で仕留めにかかるよ!)
そう、その迷いのない攻撃は確かに回復ちっさ君にダメージを与えて。続けて汰磨羈のケイオスタイドが放たれる。
彩陽の封殺範囲攻撃を軸とした火力圏を意識する行動だが、壁役ちっさ君を行動阻害しつつ、味方にヒーラーである回復ちっさ君を先に倒せる状況を作りつつ整えるつもりだった。だからこそ「我冀う。その力を奇跡と成す事を」を放っていくが……そこに更にアクセルのケイオスタイドが放たれる。
「役割分担に連携は確かに強力だけど……自分の力を活かす必要があるし、戦法がオイラ達に寄るなら戦い方はたくさんあるよ!」
アクセルは後衛から、ちっさ君たちが突破できないような位置で戦場を動き回るのが役目だ。
そう、この戦いは名もなき聖女の像を守る戦いだ……間違ってもそちらに行かせてはならない。
「多分だいじょぶだと思うですが、念のため」
だからこそメイもルーンシールドで自分を守りつつ、聖女像のすぐ近くで、壊されないように、奪われないように守るようにしていた。そしていざという時は抱え込むつもりですらいた。サイズ的に、体で庇えば何とかなりそうだからというのが理由だが……そうならないように今、メイも含め全員で頑張っていた。
「メイ、こないだ狙われて真っ先にやられたですから、今回はちゃんと最後まで動くのです」
皆さんの後ろに上手に隠れたりして、ちっさくんの攻撃対象にならないよう気を付けるですよ、と。そうしっかり気合を入れていた。ちっさ君たちが戦術というものを知っているのであればメイを狙ってくるかもしれない。そんな当然の懸念によるものだ。
「像が欲しかったらまずは私達を倒すことだね」
だからこそ、スティアも抑えを担当し、敵の注意を引いて陣形をかき乱すべく動いていた。
響かせる福音はちっさ君たちを引き付けるためのものだが……スティアはそうしながらちっさ君の反応も見ていた。
(パンドラ収集器の近くでどんな反応をするのか、そして何をしようとしているのか分かる範囲で情報を集めておいた方が良いからね!)
今のところ、ちっさ君たちはスティアたちの排除を優先しているようだが、何があっても対処できるように常に観察していく意味は、確かにある。
「君達に恨みはないけど……絶対に奪わせない!」
ヨゾラのパラダイスロストがちっさ君たちに命中し、回復ちっさ君をとにかく倒すべく動いていく。それを倒せるだけで戦況は大きく変わる。
「くっ……!」
魔法ちっさ君のレーザーがヨゾラを貫き、しかし戦闘に影響するほどではない。
「敵の役割、見た目で分かりやすいのは助かるね……!」
「そこは同意だわ!」
京もヨゾラに同意しながら魔離槍からのミヤコ流わからん殺し!を放っていく。
「てか何よ、ちっさ君て? 舐めてんのかしら、だんだん腹立ってきたわね。名前つけた奴ぜってー改めて蹴り飛ばすわ」
そんなことを言いながらも、その動きは真面目そのものだ。
「悪いけど、死に様なんて選べると思わないでよね。アタシもあんま分かってないんだわ、相手がどうなってんのかさ? 倒したら一緒でしょ、倒したら?」
そんな京に前衛ちっさ君が両腕の剣を振るい切り裂いていく。
「この……っ」
「えい!」
連携攻撃ともいえる前衛ちっさ君たちの攻撃を受けた京にメイの熾天宝冠が放たれその傷を癒していく。
ちっさ君たちは強い。8人組でやってきたのもイレギュラーズを意識しているからだろうと、改めてそれを思い出させる程度の強さを持っている。しかし、だからといって負けるわけにはいかない。
「とにかくこの勢いでボコる……!」
彩陽が再度気合を入れ直すように叫び、ケイオスタイドを放っていく。
「いくよ、防御無視の攻撃だー!」
スティアの天穹が回復ちっさ君を貫き、汰磨羈の絶禍・白陽剣がトドメを刺す。
「よし、これで回復役は倒れた……! これ以上学習される前に一気呵成に勝負をかける!」
「よーし、この勢いで一気に仕留めちゃうよ!」
ソアの無尽虎爪が傷ついていた壁役ちっさ君を打ち倒す。戦いの中で学習の度合いを深めていただけに苦労したが、ここまで来れば負けはない。アクセルのケイオスタイドも放たれ、そうして戦いは京が最後のちっさ君にトドメを刺して終わる。
「仕事の遂行を優先する所は学ばなかったようだな。だが、そう簡単にはさせん……ということだな」
汰磨羈がそう総括するが……実際、任務遂行を優先されたらメイの負担が大きく増えていたかもしれない。そうならなかったのは、ちっさ君たちの「経験不足」もあったのかもしれない。しかし同時に汰磨羈たちの積み重ねた経験が活きた、とも言えるだろう。たとえ真似してこようと、積み重ねた経験は上っ面ではない。つまりはそういうことなのだ。
「敵の増援もなく、聖女像も無事……任務完了、か」
「はい!」
彩陽にメイもそう頷くが……同時に、手の中の聖女像に視線を落とす。
「この場にあるってことは、皆さんの信仰のシンボルなのだと思うです」
そう、最初に置かれた思惑はさておき、名もなき聖女像は此処で信仰されてきたのだろう。
だから、メイはこう思うのだ。
「だからあとでお返しすることにしましょうか。折角だしお掃除して綺麗になった姿でお返ししたいですね。後は由来とかも聞けたら嬉しいなって」
返すときにこの聖女像の持ち主であるイレギュラーズに会えるのならば、そういうことも出来るだろう。その際には、思いもしなかったエピソードだって聞けるかもしれない。
「そうだね。名もなき聖女像もざんげさんに届けて、役目を解いてここに返却しないとね」
ヨゾラも言いながら、ふと思う。
「パンドラ収集器の役目を解く、って事もできるんだね……」
言いながらヨゾラは自分のパンドラ収集器である伊達眼鏡にそっと触れる。
(……いつの日か別れの時が来るとしても、その時まで大切にするからね)
と、そんなことをしている間にもスティアは周囲の住人に帰り際話を聞いてみようかとも考えていた。
「聖女の像に伝わるお話とかないかなーって思って。立場的に気になっちゃうからね!」
もしかしたら、何か面白い話だって聞けてしまうかもしれない。
(いずれは私もこんな風に像になったりするのかな? って思ったりして……)
もしかしたら、そんな日だって来るかもしれない。
「まあそんな日が来る事を望む前にやる事はいっぱいあるんだけどね!」
そう、やるべきことはまだたくさんある。その果てに……もしかしたら此処に居る全員が像を作られるなんて未来だって……ある、かもしれない。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
天義の街「ニイル」に向かい、小神殿に安置されたパンドラ収集器「名もなき聖女の像」を守りましょう!
小神殿を中心に構成された町ですが、現在は淡い光が町を覆っています。これがちっさ君を惑わせているようですが、皆さんが準備を終えた頃には消えてしまうでしょう。そうするとちっさ君たちは小神殿めがけて進撃してきます。
小神殿は本当に小さいので、本殿とそれを囲む庭だけです。ご近所の小さい神社などをご想像ください。
住人は基本的に怖がってみんな隠れているようです。
●ちっさ君×8
南部砂漠コンシレラに鎮座する終焉獣……ベヒーモス、アバドーンなどと称される、R.O.Oでは名無しの少女(ジェーン・ドゥ)が連れていた『でっか君』から溢れ落ちた欠片です。外見はベヒーモスに似て……ないです。どうやら変化したようで、黒い人型と化しています。
前衛ちっさ君(両腕が剣)×3、壁役ちっさ君(巨漢の全身鎧風)×1、魔法ちっさ君(薄く輝き、レーザーを放つ)×3、回復ちっさ君(HP回復、AP回復、BS回復)×1といった内訳です。
イレギュラーズを模倣しているのか、回復ちっさ君を庇うなど戦術めいた動きを見せることもありますが、まだちぐはぐです。
●名もなき聖女像
片手で持てるくらいの小さな石像。
聖女とはいいますが、何処の誰なのかは分かりません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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