＜グレート・カタストロフ＞破壊の行進

オープニング

●ペイトへと迫るもの
　それは、ゆっくりとペイトへ迫っていた。
　ズン、ズン、と。重たげな音を響かせながら迫る。
　その数は、総勢４０。細身でのっぽな、巨人のような姿。
　形として見れば細い……しかし丸太のような手足が大地を揺るがしていく。
　その先頭に立つのは、黒いローブを纏った人型だ。
　その進む先には障害などない。いや……なくなっていく。時折ある岩のような障害物は巨人がビームを放ち破壊していくからだ。
　そう、それはまさに破壊の巨人の群れ。そして星界蹴門の群れだ。
　巨人のその姿が、何処かで古代遺跡のエネルギーでも喰らってきたのだろうか？
　どことなくではあるが「そちら方面」の面影を感じる……そんな姿だ。
　そして巨人が星界獣であるということは当然、この黒いローブの人型もまた星界獣であるということだ。
　そう、これこそは完全人型星界獣。人間そっくりの外見を有した個体である。人語を解し、人間相手に語りかけることもできるという。
　しかし、角が生えていたり腕が肥大化していたりと、どこか一部が異常な形になっていることが多いようだが……ローブの男もまた、顔のあるべき場所に黒い闇が溜まっていた。
　なぜ戦っているのかと問われれば「すべてを喰らい尽くすため」「世界を滅ぼすため」と応える、そんな男は……その名を「地均しのヴェスパ」といった。
　そのヴェスパたちの進む先は……なんと亜竜集落、ペイトである。

●チャルネたちからの依頼
「と、いうわけで……ペイトの近くにそいつらが近づいてきてるってことらしいの」
　チャルネ・エクリアは集まった面々にそう告げた。
　星界獣に限らず全世界に様々な終焉の魔の手が伸びてきているが……ペイトもまた例外ではないということなのだろう。
「なるほどな……まあ、いつ来るかって話ではあったな」
　『不屈の太陽』ジェラルド・ヴォルタ（p3p010356）の言葉に『優しき刃』ヴァシウス・アキュアも「そういうことだな」と頷く。
「とはいえ実際にそいつらがペイトを目指しているのか、たまたまかは分からないけど……それはどうでもいい。放っておけばペイトに辿り着くってことが問題なんだ」
「そういうことだね。ペイトを攻撃できるような場所に辿り着かれる前に撃破するのが一番いい。そして、迎え撃つのに最適なポイントは僕たちがすでに見つけてあるんだ」
　ブレン・レミルタもそう頷き、書かれた地図の一点を差し出す。そこはどうやら２つの岩山に囲まれた広い場所であるようで、そこを通らなければ……空でも飛ばない限りはペイトには辿り着かない、そんな場所だ。
「相手の進行方向が良かった。この場所で必ず迎え撃てる」
　星界獣たちが来るまでには、ある程度の時間がある。そのときまでには絶対に着くし、何かしらの迎撃手段を整えることも出来るだろう。
「ペイトは絶対に守り抜く……どうか、力を貸してほしい」
　３人を代表するように、ヴァシウスはそう言って頭を下げるのだった。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

●迎撃準備
「さて、今回の仕事は星界獣とやらを倒す事だ。まず反応の速い敵の数が多い事が気になるな。強力な奴もいるが、囲まれて殴られないように注意しなければ」
　『侠骨の拳』亘理 義弘（p3p000398）のそんな言葉が響く此処は、亜竜集落ペイトである。三大集落の１つであるこの場所では今、とある幼なじみたちが顔を合わせていた。
「おう、久しぶりだなヴァシウス、ブレン、チャルネ」
「ああ、本当にな」
「たまにはこっちに顔だしなよね」
「まったくよね、こういうことでもないと帰ってこないってどうなの？」
「いや、そこまで言われるほどじゃ……あー、すまん」
　『不屈の太陽』ジェラルド・ヴォルタ（p3p010356）はヴァシウス・アキュア、ブレン・レミルタ、チャルネ・エクリア……幼なじみの３人に冗談交じりの文句を言われて何ともいえない懐かしい気持ちになる。
　本当に冗談だと分かるからこそ、それが暖かく感じたのだ。しかし今はそれに浸っている場合ではない。
「世界で異変が起きてるって話は聞いてたが……ま、ここも例外じゃねぇって事だよな。ペイトの皆を守る為にもここは絶対に通させねぇぞ！」
　言いながらもジェラルドは思う。
（本当に暫くぶりだ。こうして四人で戦うのも初めてに近い……そりゃ鍛錬は四人で戦いもしたが本番となんざ比べもんになんねぇ……）
　とはいえ、３人と共闘できるのは有難い話ではある。だからこそジェラルドは集落周辺の地形知識を罠担当の仲間と共有してもらい、罠設置の手伝いをしてもらいつつ、星界獣への対処へ合流してもらうことに決めていた。
「さて。お前ら、ペイトを守る為なら手段は色々ある。この辺りの事、教えてやって欲しい。俺は此処に来るデカブツを抑え込んでおくからよ！　その後は星界獣の方が数が多い、そん時にひとッ暴れ頼むぜ！」
「亜竜集落ペイトも、何も誰も食らわせない……完全人型でも完全とは言い切れないみたいだけど……奴等はここで倒す！　３人もよろしくね！」
　『【星空の友達】／不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン（p3p000916）もそう３人に声をかけながら有刺鉄線も使いながら塹壕等を作り敵を少しでも足止めできるようにしておけるような仕掛けを作っていた。
　塹壕等は他の仲間の罠の邪魔にならないような配置を心掛け仲間から配置希望などを聞くことで更に使いやすいようにしていくつもりだ。更にはハイセンスや、広域俯瞰、鳥のファミリアーと五感共有することでで全体把握と索敵も並行していた。
　ファミリアーは迎撃準備中に敵の位置と襲撃タイミングを把握する為に用いるものだが……これは必ず役に立つはずだ。
「そうだね。しかし集落の一つや二つを文字通り踏み潰せる様な兵力とは厄介な……物量も勢いも相手に利するけれど、こちらにだって手がない訳じゃない。確りと迎撃する準備を整えさせて貰おうか！」
　『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト（p3p008357）もヨゾラと分担し罠を仕掛けていく。
「無策で強敵に挑むのは愚の骨頂、迎撃場所も都合が良いし、十分な罠を設置して迎え撃とう」
　使えるスキル全てを活かして効率的に相手の足を止められる落とし穴作成が最初のカインの仕事だ。
　そこから落とし穴を掘った穴の分の土を使って他の仲間の罠を阻害しない様な位置に土嚢を積み上げてバリケード、簡易的な塹壕の様な物を幾つも用意していく。
「僕らが隠れて壁として使うのも良し、障害物を破壊する動きもあったし相手の動きを一手使わせるだけでも十分だからね」
　そう、バリケードで止め切れるとは最初から考えていない。しかし敵の動きを僅かでも妨害できるだけで意味はあるのだ。
「ああ、それに準備時間があるのはありがてえ！　バレないよう罠を仕込みまくるぜ！」
　そして『ガイアネモネ』紅花 牡丹（p3p010983）もやはり罠を仕掛けに回っていた。
　隠蔽工作をした上で罠を仕込んでいくその姿は、やる気に満ちている……が、勿論時間は無限にあるわけではない。
　だからこそ牡丹は仲間と手分けして効率よくできるようにしていた。
「狙い所は落とし穴と落石トラップだ。落とし穴は深く作るには時間かかるし、数或いは範囲で引っ掛けるの重視かね。底を水で泥にしたりしてとにかく足止め重視だな。粘着罠とかでもいいが、敵の動きを僅かでもいいから潰してえ。敵のビームが曲がらない限りは落とし穴に落とすことで射線を通させないかもだしな！　あとは……そうだな。落石はせっかく２つの岩山に挟まれたって地形だからそれを利用してえ。速度の代わりに脆いかもだし、倒せずともダメージ＋岩をどかすまでは相手の反応下がるだろ。落とし穴に落ちた所に蓋代わりにもできるかもだしな！岩山への爆薬設置など、落石の高所への仕掛けもやっておかないとな」
　何処まで設置できるかは敵の侵攻速度次第ではあるが、やってみる価値はあるだろう。
　一方の『竜剣』シラス（p3p004421）はワイヤーツールセットを活用し、地形を活用し効果的な場所へと罠を仕掛けていた。
　そう、罠を仕掛けて迎えうつためにも地形をよく確認することは重要であり、広すぎたら罠が散ってしまうし、狭すぎても戦闘に支障が出る。だからこそシラスは、ほどほどの場所を選定するようにしていた。
「ここがいいな」
　シラスの罠の目的は、足止め用の罠を広げて進行速度を遅めることだ。具体的には敵が一定の区域を進む際にその機動力を削ぐイメージであり、そのためにワイヤーツールセットを活用していた。
「くくり罠や、単に鋼線を張り巡らせるだけでもいい、とにかく時間稼ぎ用だ」
　限られた時間でたくさん作りたいので罠設置の技とギフトによる器用さを活かして素早く作るようにしていた。
「連中は空を飛んだりはしないらしいから、まあまあ食らってくれると期待したいところだが」
　実際、相手の侵攻ルートが限られているのであれば効果をある程度発揮するのは間違いない。
「……戦いの、気配……行かなきゃ、戦わなきゃ……悪を、滅ぼす為に……少しでも多くの悪を、道連れにするために……戦わ、ないと…」
「さてペイト──我が故郷を攻めようとするならばと思い馳せ参じた。我が身は未熟なれども、容易くやられる女だと思うなよ」
　『黄昏の影』ヴァイオレット・ホロウウォーカー（p3p007470）もファミリアーを飛ばし、『不退転』レオナ（p3p010430）も精霊爆弾を持ち込み罠を仕掛けていた。
「敵数は多く、反応も機敏となると此処を抜けられると追いつけない可能性あり。となれば……」
　ヴァイオレットも他の仲間同様に足を止めさせる罠に着目し、落とし穴や粘着罠を主に作成していた。
「落とし穴は掘る。只管掘る。なに、元々故郷でも似たような事はしておったし慣れている。偽装は任せるが……粘着罠は地元である以上周辺の自然知識は備えている」
　そう、ヴァイオレットは使えそうな物品がないか植物疎通も使用して草花や虫を捜索し、旅でのサバイバルをしていた際のように調合し、即席の罠を作成していた。
「油の如く粘り足を絡めるもよし、想定と違い滑るのならそれも良し」
　更には持ち込んだ精霊爆弾を岩山の高所に設置し、爆破し落石を仕掛けられる用意も施しておく。敵を潰すなり、道を塞ぎ破壊させる手間を増やすなりに使えれば……というわけだ。
　そうして罠を仕掛け終わったころ、警戒していた面々が敵の襲来を告げ始める。さあ、戦闘だ……！

●破壊の行進を止めろ
　罠はどれもその役目をしっかりと果たした。僅かではあろうと決まった足止めは、その速さに足かせを与えたのだ。
「おっと、負けらんねえよ」
　何としても出鼻を挫いてやりたい。そんな想いと共に真っ先に飛びだしたシラスが放つのはエビルストリングだ。
「それだけスピードに特化させたなら相対的に他の星界獣よりは守りが薄いはずだ……！」
　そう、そのスマートな体型からして防御能力が高い相手ではないのは目に見えている。
　そして速さならば負けない自信がシラスにはある。皆で作った罠による足止めもある現状、そこで負ける理由はシラスには微塵もない。そして……牡丹の連鎖行動と罠の組み合わせによりシラスに続けて仲間が敵より早く動けたからこそ、牡丹の輝くもの天より堕ちも的確に敵へと突き刺さる。
「いくぜ皆！　ガス欠だって恐れねえ……！」
「楽園追放……敵に食われる前に探索したかったなぁ古代遺跡！」
　此処に古代遺跡のエネルギーを食べて出来たっぽい巨兵型がいるということは、その何処かにあったかもしれない古代遺跡はもう壊れているかもしれない。それを残念に思いながらもヨゾラはパラダイスロストを放つ。
　とにかく巨兵型の数を減らすのが目的だが、カインも土嚢の壁に隠れながら、基本的に敵前衛から中距離以上の距離を空けて攻撃するべく地均しのヴェスパへとディープインサイトからのインタラプトを発動させる。
「どうやら罠も役にたっているね……！」
「なるほど。このうざったい小細工は貴様等の仕業か」
「まあ、そういうことだな」
　義弘もそう答えながら巨兵型へと突っ込んでいく。
「こちとら、カタギの皆様を守るためにここにいるんだからよ。気張っていかせてもらうぜ！」
　飛行する義弘のワイルドキングストリームが炸裂し、巨兵型が１体砕け散っていく。
（まずは数を減らして、こちらが囲まれて殴られるのは防がなくてはならねぇ。確実に処理していかねえとな……！）
「殺す……悪は、殺さなきゃいけない……悪を……私を……！」
　自分を追い詰めるようにも聞こえる、悪（魔種や終焉獣）を一人でも刺し違えてでも殺せるように、そう戦意を高めて臨んでいくヴァイオレットは、誰かが死ぬくらいなら自分が死ぬ方が余程良いと考えていた。だからこそ、その戦術は回避盾だ。
　仲間に向かうヘイトを自分へと向けられるように立ち塞がる影を発動させていく。
　そのまるで死に臨むかのような動きはそれ故に確かな力をもって壁と引きつけの役割を果たしていく。
　そしてこの戦場……誰も死なせないことを目的として組み立てたこの場所では、ただ１人の犠牲も許さない。
　だからこそレオナもまずは巨兵型へと突っ込み、罠に加え少しでも攪乱できる様ドリームシアターにて己自身の幻と共に突撃していた。そうして放つのは八岐大蛇だ。時間稼ぎではあるが、いつでもトドメを刺せるように。
「さて、竜由来の集落を襲いに来るなんざいい度胸してるぜ。強敵だろうが何だろうが返り討ちにしてくれるさ！」
「ああ、ヴォルタ家門の力……そして俺たちの連携、見せてやろう！」
「ま、実戦としちゃあハードだけどね！」
「もう、それは言ったらダメなやつでしょ！」
　そんなワチャワチャした状況の中、ジェラルドはこれ以上ないくらいにリラックスした気持ちでカータライズ・アセンションを放っていく。幼なじみたちと一緒に戦うこの状況はいつもとは何か違うものがある。そんな風にも感じたのだ。
　そして、事前の準備がバッチリと嵌ったのもあるのだろう……戦いは常に優勢に進み、残すはヴェスパだけという状況まで持っていくことが出来ていた。
「世界を滅ぼすなんてお断り！　貴様をぶん殴ってぶちのめす！」
　ヨゾラの星の破撃が炸裂し、シラスがヒットアンドウェイで放つ竜剣がさらに削っていく。
「こっからが真骨頂！　夢想一振をぶん回してやらァ！」
　大太刀一振。斬られた対象の夢想は現実を侵食し自身を滅亡へと誘うというその一撃を、ジェラルドは気合と共に繰り出していく。
「竜由来の集落を襲いに来るなんざいい度胸してるぜ。強敵だろうが何だろうが返り討ちにしてくれる！」
　ズドン、と。その一撃がヴェスパにトドメを刺し……断末魔すら残さずにヴェスパは消えていく。
「よし、オレたちの勝利だ！」
「ああ。まあ、文句なしの大勝利……ってとこか」
　牡丹と義弘もそう拳を打ち合わせ、シラスも周囲に敵が残っていないことを確認していく。
　ヨゾラも同様に確認してもう居ないことを確認するが……ふとした疑問をも抱いていた。
「それにしても……星界獣の『すべてを食らう』性質って何由来なんだろうね。星界獣自体に元からそういう性質がある……？」
　それは分からない。分からないが……いつか分かる日が来るのかもしれない。
　そして、何よりもペイトを守り切った。その充足感は……この瞬間に与えられた、何よりの報酬であっただろう。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました！