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シナリオ詳細

進め!鉄帝地獄の行進曲(デスマーチ)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●楽しい訓練
「ゼシュテル鉄帝国ーー!」
 ここはゼシュテル鉄帝国。
 いつものごとく、演習場に声が響き渡っている。
「ファイ! オー! ファイ! オー!」
 旗を持ち、一斉に行軍する全身鎧たち。……ノリが部活めいているのはともかくとして。
 必死に足を動かし、息を合わせる。笛の音が鳴り響くと、いったん動きを止め、ガチャガチャと音をたてながら反転する。
「ゼシュテル鉄帝国--!」
「万歳! ファイ・オー! ファイ・オー!」
 暫く反転と行進を繰り返していた。
「そこ、足並みが乱れておるぞ! けしからん!」
 将軍の檄が飛ぶ。
 過酷な訓練に、兵士たちの息が上がっていく。
「ぜえ、ぜえ……」
「何をしておるかーーー! 乱れておるぞ! 根性だ! 根性!」
「っていうか無茶ですよ、全身鎧でパレードとか! せめて装備をもう少し軽くするですとか」
「何を言うか! ワシはやれたぞ! 全身鎧で領地を一周! お前らもやってみるか!?」
「遠慮します」
 筋骨隆々の鉄騎種(オールドワン)と比べてはいけない。
「もう……だめ……」
 ついに新人が倒れた。
「喜べ―! 1km追加ーーー!」
「ひいい……」

●訓練の夜と怪文書
 兵士宿舎。
 疲れ果てた新人は、いびきをかいてベッドで寝ている。さもありなん、とベテランたちは思う。ベテランの兵士たちでもこの訓練はキツい。
 自分たちの時もそうだった。
「新人の仕上がりはどうだ?」
「頑張ってはいるが、まずい、まずいな……たぶん何人かは、戻ってこれない」
「だよな……」
「そもそも、要求が無茶なんだよな」
「だな。最近ますます過激になってる気がするしな」
「助けを呼ぶか……」
 兵舎に集まった兵士が、ろうそくの明かりを頼りに手紙を書いた。

『このままでは
やつに ころ される
たすけて ください』

●依頼本文
「やあ。え? 殺害予告? いや、そういう話ではないな」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)はそっけなく言った。
「いや、確かにちょっと誤解を招く依頼書ではあったんだが……まあ、座って話を聞いてくれ。急を要するものじゃない……」
ショウは緩やかに椅子に腰かけ、イレギュラーズたちにも椅子を勧めてくる。
「今回の依頼は、鉄帝所属軍隊から寄せられたものさ。
 勇猛果敢で知られる、ウォーレス・ガンジョー率いるウォーレス隊。
 今度の『記念式典』で、フル装備でパレードを行う。その道筋たるや、全身鎧を着て20km」
 ショウはゆっくり頷いた。
「ああ、普通に考えて死ぬ。
 鉄騎種(オールドワン)であるがあまり、滅茶苦茶頑丈だ。だが、そうでない部下もいる。名目上は、見学とか支援や、なんとかを装って、手助けして欲しい、とのことだ。いやいや、将軍を暗殺とかではなく……」

GMコメント

●目標
ウォーレス隊から重傷者を出さないでパレードを完遂する。
(万一、ロールプレイなどの兼ね合いでイレギュラーズたちから重傷者が出たとしても、それは問題ありません)。

●パレードの参加者
全身鎧を着ての20kmの行軍。
対策を施さなければ、何人かが倒れること必定。
全身鎧のため、顔は見えない。

鼓笛隊はさすがに軽装備。
ベテランは問題ないと思われるが、新人5名が心配だ。

なんたって彼らが倒れると、無限にノルマが追加されていったり、行動不能になった新人を担いで行軍しなくてはならない。予行演習では延々と終わらずに日が暮れた。

筋骨隆々の馬が5頭いるが、馬からは降りて歩くこととなっている。

なお、イレギュラーズのメンバーで参加したいというと、普通に歓迎される。
装備品は軽鎧~重鎧まで自由。イレギュラーズの参加者が脱落しても隊のメンバーにペナルティーはない。

●登場
将軍・ウォーレス・ガンジョ―
 筋肉みなぎる鉄騎種(オールドワン)。
 頭はつるつるの大男(本人は別に気にしていないようだ)。
 口癖は『元気があればなんでもできる』『やる気、元気、根気』『熱血』『力こそパワー』、そして『最近の若者は……』。
 かつては前線で戦っていたが、今は後輩の育成にあたっている。
 良い人物ではあるのだが、自分を基準にして考えるために兵士たちはしばしばついてこれない。全身鎧で領地一周を成し遂げたとの逸話がまことしやかにささやかれている。
 やや古い気風の持ち主だが、パワーこそすべての思想には変わりがない。

 良い根性を見せる者が大好きで、何か見込みがあるとみれば自分の隊に勧誘している。
 ひょろい新兵を鍛えるのが趣味。
 イレギュラーズが来ると聞いてはり切っている。

 なお、「効率のためにも、ここに休憩を増やしては」といったような改善アドバイスには、筋が通っていると思えば採用するが、パレードそのものの難易度を軽くしたりはしないと思われる(部下談)。去年は下手な話し方をしたらむしろ増えました(部下談)。助けてください(部下談)。

●行程
・街を抜けて領地を出発、演習場を抜けてひとつの丘を越えて隣の町へと行っておしまいだ。

~4km地点
 整備された街道が続く。問題はなさそうだ。
4~10km地点
 同じく街道。やや上り坂である。
・10km地点
 心臓破りの丘がある。ただの小高い丘だが、全身鎧には天敵だ。
・昼休憩
・10~15km地点
 ちょっとした木々の生えている地点。
 下りとなるので、少しは楽になる。
 ただ、道が整備されておらず、ややたいへん。蛇行しており、カーブを描くように行軍する予定。
 将軍は、木を目印にして行軍するようだ。
15km~ゴール
 平坦な道が続く。
 障害物はないが、日を遮るものがなく、暑い。最後の難所だ。

<心臓破りの丘>
・緩やかなようで結構きつい丘。
・丘を越えると、振り返ってもこちらは見えなくなる。
<昼休憩>
・一時間ほどの休憩があります。
・お弁当は自由。
・水筒には水のみ、厳守のこと。
 ジュースを持ってきているのが将軍にバレたら1km追加。

●小細工について
 将軍は一番前を歩いていて、異変を感じたり、何かトラブルがあるとやってくる。
 豪快な人間だからか、結構大胆なことをしても気が付かれない。
 ぶっちゃけ、2人くらいいなくなっても気が付かないくらい。
 休憩時間と、最後のつじつまさえあえば……。

 プレートメイルをこっそり軽いものにしたり、馬に交代で乗って休ませたり、先輩はそれぞれ工夫して乗り切ってきたようだ。
 バレなきゃいいのだ。

●ペナルティについて
 将軍がペナルティを命じると、行程(距離)が増える。
 何かのズルがバレた時に宣言される。
 不可抗力によるものはセーフ。また、よほどわざとでなければセーフ。転んだりしても別に増えない。

●想定されるトラブル
・諦める新兵
・張り切りすぎてペースを上げすぎて脱落する新兵
・心臓破りの丘での新兵の脱落
・新兵の熱中症
・ジュース持ってこようとする馬鹿(運が良ければバレないかもしれない)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 進め!鉄帝地獄の行進曲(デスマーチ)完了
  • GM名布川
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年11月06日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
ハニーゴールドの温もり
東雲・弟切(p3p000320)
エンプティ・ダンプティ
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
刀根・白盾・灰(p3p001260)
煙草二十本男
アベル(p3p003719)
未来偏差
ハロルド(p3p004465)
聖断刃
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
ゲーミング
河鳲 響子(p3p006543)
天狗

リプレイ

●発進
 集合時間、数時間前。
 規律に厳しい軍隊だ。兵士たちは集合場所の訓練場に集まりつつあった。
 精神統一をするもの、万一の事態に備えて親しいものに書をしたためるもの。なぜか、遠足にでも行くかのようなテンションのやつもいる。
「水筒にジュース詰めてきたの!?」
「スポドリなら見た目水だしさあ……」
 こそこそとしていた兵士たちは、足音に姿勢を正した。
「お、お早いですね」
「ああ、今日はよろしく頼む」
『聖剣使い』ハロルド(p3p004465)は兵士たちをゆっくりと見回した。
「ところで、この木箱って壊してもいいやつか?」
「は? ええ。まあ……」
 ハロルドはおもむろに聖剣リーゼロットを脇に置くと、掌に光を集中させる。すさまじい一撃と共に、木箱は木っ端みじんとなった。
 赫灼によるオーバーキルだ。
「ペナルティは連帯責任だ。まさか他人に迷惑を掛けようなどと思っている奴はいないよな?」
 ハロルドが笑顔で凄みを聞かせる。
「はい!」

「私もこの死の行脚に参加しますぞ! ゼシュテル・スチールの全身鎧です!」
『BS<死の宣告>』刀根・白盾・灰(p3p001260) の黒い重装鎧が、太陽の元できらりと輝いた。
 兵士たちはざわつく。灰はあの鎧で行軍に参加するというのだ。それも、死の行脚ということを正しく認識したうえで……。
「良く手入れされた鎧である」
「共に歩みましょう!」
 イレギュラーズたちの間を歩いて回っていた将軍は、不意にハロルドの武器に目を止める。
「む。その剣……実に素晴らしい。良い戦士は良い武器を持っているものだ」
「ああ」
 ハロルドは相手の力量を推し量る。
(この将軍、強いな。一対一で真っ向勝負が出来ればさぞ楽しいだろう)
 手合わせを申し込もうかという気が頭によぎるが。
(まぁ今回は行進に参加させてもらうだけで我慢するが)
「兵士のサポートかぁ。なーんだ。てっきり、死んだ兵士か将軍の魂の回収かと思っちゃったよぉ」
『エンプティ・ダンプティ』東雲・弟切(p3p000320) はにこやかに笑った。
「万一、死者が出た場合は東雲殿の出番でしょうかな!」
「うん、頑張るねぇ」
 どこまで冗談なのかわからず、兵士たちはひきつった笑みを浮かべている。
「此度はこの輝けるパレードへ参加させて頂き有難うございます」
『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442) は将軍に向かってビシっと敬礼する。
「うむ、良い気合だ! 力こそパワー!」
「イエス、サー! 力こそパワー! 獅子奮迅なる気概でもって尽力致します!」
「今日は見学及び訓練への参加許可有難う。色々迷惑かけてしまうかも知れないが、宜しく頼む」
『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)は将軍へのあいさつを終えると、兵士たちに向き直る。
 ふわりとした茶髪が風にそよぎ、一瞬だけ時が止まった錯覚がする。
「今日は宜しくな?」
 美人だ。
 ポテトの姿に、兵士たちは色めき立った。
「初めまして、今回の依頼でご一緒させていただきます河鳲 響子って言います。皆さん頑張りましょうね!」
『特異運命座標』河鳲 響子(p3p006543) が朗らかな笑顔を見せると、兵士たちはもはや歓声をこらえきれなかった。
(和服美人だ……!)
 かつての看板娘の微笑みの相乗効果だ。
(あまり賑やかだと怒られるかと思ったんですが)
「おっ、おい、メイドさんもいるぞ!」
 やってきた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270) に、兵士たちは期待に満ちた目を向けるが……。
「はっ」
 エッダは何気なく一歩下がると、その場にあった訓練用の人形を一体、打ちのめしてみせる。それも、背中側に立っていた人形を。
 錬鉄徹甲拳の極意である。
「で、自分をメイドと呼ばわったのは空耳でありますよね?」
 エッダの言葉に、あたりはしんと静まり返る。
「おお、フロールリジの! さすがの腕前ですな! うむ、素晴らしい」
 兵士たちの甘えは、こうして打ち砕かれつつあった。
「このように、ほかならぬ兵士たちの提案により、今日は特別講師を招いておる! どなたも、熱心で大変すばらしい!」
 将軍が『破片作り』アベル(p3p003719)の横を通った。アベルは目立たぬよう、頷くにとどめる。
 アベルはいかにも軽装なのであるが、兵士たちに交じっていてもあまり違和感がない。立ち振る舞いの巧みさにより、上手く将軍の死角を突いている。
 兵士たちは集まり、開始前の円陣を組み始めた。
(なんで俺がこんな事してるんですかね? 熱血だとか訓練だとかそんなのは方向性違いでしょうが)

「何といえば良いのか……凄いな鉄帝」
 ポテトたちは遠巻きに喧騒を眺めている。
「知り合いと一緒にピクニックだとでも思うサ」
 ちゃっかりと、アベルは円陣の輪から抜けていた。
「初めての依頼なのですが……すっごい催しみたいですね。もちろん悪い意味でですが」
 響子は穏やかに苦笑する。
「そっちも初めて? オトギリさんも初めてお仕事するから頑張るねぇ」
「二人ともこれが最初の依頼か……」
 ポテトが多少遠い目をした気がした。
「でも頼まれた以上、新兵さんが無事にゴールへ辿り着けるように私達イレギュラーズで精一杯サポートしましょう!」
「そだねー」
「ああ」
「いやー、我が祖国鉄帝の訓練は苛烈さ極まっていますな!」
 しばらくすると、灰がほくほくとした表情で戻ってくる。
「こういうのにはずっと憧れていたのですよ〜! 下品な訓練歌歌いながらランニングとかしたりするのですよね!」
 すでにエッダの叱咤激励により、放送禁止用語すれすれの、いや、すでに修正がかかった言葉が飛び交っている。
「楽しんだもの勝ちかな」
 アベルもノるようだ。
「過激な訓練は俺は好きだが。人に合った訓練法でないと潰してしまう事も知っている」
 リゲルは強く頷いた。
「兵士達の未来の為にもサポートを頑張るぞ!」 

●始まりの道
 こうして、行進が始まった。
 エッダの掛け声を契機に、灰が歌い出したややも下品な行進歌を、アベルと兵士たちが歌っている。
 熱さにがくりと膝をつきそうになる兵士に、灰は何かを差し出した。
「これは?」
「ハッカ油です。気持ちマシになると思うのです! 私は慣れておりますから。さあ、行きますぞ!」
「役立たずのフニャ○○野郎! それでも軍人でありますか!」
 エッダは名乗り口上で兵士を煽り、兵士を引き連れて先を進んでいく。
「無茶ですよぉ、こんなの」
「要求が無茶? フル装備で行軍のひとつも出来ず何とするベテラン共めが。貴様らも纏めて連帯責任であります!」
「ひえー!」
「分かったら貴様らの粗末な○○○をとっととズボンにしまって再出発であります!」
「うおおおお! 俺は走れます!」
「○○カキ野郎! いきり立つ前にダニ程度にでも役に立って見せるであります!」
 はりきりすぎて前を行く兵士。姿勢を正し、行く手を阻むと、エッダはお手本のようなブロッキングバッシュでしばき倒した。
「ぐはあ!」
「ご、ご指導ありがとうございます!」
 鉄帝らしく。軍人らしく。
 ……というのは半分趣味で、半分は陽動役も兼ねている。事実、将軍の目は、ハロルドとエッダに向けられていた。
「うむ、素晴らしい光景ですな!」
「懐かしいものであります。軍団とは理不尽に耐えることで形成されるもの。訓練とは理不尽の中で連帯感の無い者を落伍させるもの」
 エッダは、どこか懐かしそうに兵士たちを見ている。
 一番前では、ハロルドとウォーレスは鍛錬談議に花を咲かせている。
「俺の世界であれば発達した回復魔法で24時間耐久組手などという芸当が出来たんだが。この世界では不可能なのが残念だ」
「なんと!? ううむ、異世界とはうらやましいものだ」
 全身鎧をまとって歩いていながら、二人とも雑談をしながらのんびりとした雰囲気すらある行軍である。
「実は一度火山地帯での熱血マラソンを企画したことが……」
 ランクが超次元を行く会話である。

 早くも心が折れ、膝を折りかけた兵士。
「あ、お飲み物、お持ちじゃないんですね」
 響子は兵士に目線を合わせ、そっと水を差しだした。
「この先はきつい坂ですから、今のうちに補給していってくださいね」
 響子の笑顔を見ていると、あと軽く数十キロはいけそうな気がしてきた。
「ゆっくりで良いから最後まで一緒に頑張ろう」
 ポテトにまでそう言われては、これはやるっきゃない。兵士は気合を入れなおし、再び行軍へ戻っていった。
 一方で、どうにも張り切りすぎる兵士たちもいる。
「すみません」
 灰がそっと男に話しかける。
「私がもう息絶え絶えなので顔を立てるために抑えて下さいませんか?」
「ええ!?」
「目立ちたくないのです! お願いします!」
 そう頼まれ、兵士はペースを落とした。
「ありがたいです」
 やや先行しすぎている兵士は、荷物を落っことす弟切を不思議そうに見た。 
「ごめんね、手伝ってもらえると嬉しいな?」
「あ、ああ、分かった」
 弟切には、どうしてだかつい手助けしてしまいたくなるような魅力がある。
 荷物を拾い終わった兵士は、ふと、弟切に対して急激に興味をなくす。
 弟切のギフト、存在無意義。
 ふらふらと立ち上がると、そのまま弟切を無視して立ち上がっていった。
「うん、あれでオッケーかな」
 少なくともバテてしまうことはなくなっただろう。

「余り早いペースで進まれるとついていけなくなるから、もう少しペースを緩めて貰えないか?」
「あ、ああ」
 良いところを見せようと張り切っていた兵士は、ポテトに呼び止められてペースを落とした。
 ポテトは頷き、颯爽と横を歩いて行く。
「もうだめだ……」
 膝をつき、絶望する新兵に、リゲルが自身の軽鎧を差し出す。
「交換だ。これから坂が待ってる。体力を温存しながら行くとしよう」
「だが、そんなことをしたら、あんたは……」
 リゲルはゆっくりと頷く。
「大丈夫だ」
「……生きろよ……」

●立ちはだかる坂
 最初にして最大の難関、心臓破りの坂だ。
「うおおおおおおおおおお!!!」
 将軍が吠え声をあげて突進し、坂を乗り越えていく。ハロルドも負けじと、強靭なフィジカルでそれに追従する。
「体力のある者は俺についてこい! この丘を越えれば女性陣の豪華なランチが待っているぞ!」
 リゲルの号令で、何人かが猛烈な勢いで走り抜けていく。そして何人かが、耐えられずにずるずると力なく横たわる。
「意気地なしどもが! 続くであります!」
 エッダの一声で、何人かが持ち直した。
「リゲル、将軍が来そうだ」
 精霊から知らせを受けたポテトが、リゲルに合図する。
「分かった。大丈夫か?」
 リゲルに向かって、アベルが頷く。アベルが自分と瓜二つの分身を作り出す。愚か者のBACCANO。アベルのギフトだ。
「ついてきとるかー!? んん? ひいふうみい、ちゃんといるな……?」
「将軍ともあろう者が疲れで目が霞んだか?」
「わはは、まさか! ワシはまだまだ現役だ!」
「さすがだな。それでこそ将軍だ。そうだな、あの看板のところまで走っていかないか?」
「なるほど、勝負というわけか」
 ハロルドとともに、将軍は丘の向こうに消えてゆく。走るとか、そういう単語が聞こえた気がするが。
「脱落者は俺が背負って登りきる!」
「ええ、ここが正念場です」
 リゲルと灰が、せっせと肩を貸してばてた新兵を運ぶ。しばらくそうしていたが、手数が足りなくなってきた。
「よし、馬を使うか」
 アベルが新兵を馬に乗せる。
「なんとか耐えてくれ……」
 馬は前足で地面をひっかくと、危うげなく坂を上り始めた。
「俺はもう駄目だ……」
 諦め、馬から一人が崩れ落ちる。
「女性にモテる秘訣は、諦めぬ強靭な精神を見せつけることですよ」
 リゲルは、不意にポテトを引き寄せると、頬にキスをする。
「あ、あれ、お二人って……」
 リゲルからのキスに、ポテトは頬を赤くする。
「確かに、最後まで諦めない所も好きだぞ」
 不意に、一人が猛烈な勢いで走り出した。
「お前、あんな人に恋人がいないわけないだろ!
「お前はショックじゃないのか!?」
「俺は河鳲さん派だ!」
「エッダ隊長……いや、軍曹殿おおお!」
 それぞれ、にぎやかなようである。

●補給地点
 丘を越えると、つかの間の休憩だ。
「じゃじゃーん、新兵の皆さんの為に私もお弁当を作ってきました! いっぱい食べて残り後半の体力を付けましょう」
 響子がお弁当箱を取り出すと、歓声が上がる。中には、食べやすく配慮されたおにぎりや、黄金色の卵焼き。そして唐揚げ。調理は手慣れたものだ。
「私もお弁当作って来たから良かったら食べてくれ。混ぜ込みご飯のおにぎりにトンカツ、煮物に果物もあるぞ」
「あ、そっちも美味しそうですね」
「交換するか?」
「是非!」
 感極まって泣き出す兵士もいる。しばらくするとおかずの争奪戦がはじまった。まだ元気があるようだ。
「アリ以下でありますか! 列に並ぶであります!」
「イエッサー!」
 エッダの前で、兵士たちはきれいに一列に並ぶ。明らかに練度が上がっている気がする。
 ハロルドはスッと立ち上がる。聖剣の加護だろうか。
「お主、やるな……」
「水分は各自取って貰うとして、糖分と塩分を補うだけでも楽になるからな」
 ポテトは水ようかんを配っている。
 仲間たちも、つかの間休憩だ。
「酸っぱいものは疲れにききますな」
 灰が果物をつまむ。
「おいしー、いや、でも、オトギリさん、ああ見えてインドアだから、鎧着けてないけど、ちょっと疲れる」
「なかなかキツいが、ま、俺は途中でダウンしてもいいんで……」
 軽装のアベルがやや疲れているのには、別の理由がある。行軍の開始前、エッダとともにとある工作をしていたのだ。

「よく頑張ったな!」
 リゲルは、馬に水をやっていたわっていた。ポテトがやってきて、弁当を持って横に座った。
「リゲルもお疲れ」
「うん、美味しい。ありがとう」
「さっきのことなんだが」
 ポテトが何か言いたそうにして、リゲルはそれをゆっくりと待つ。
「……リゲルのそんなところも好きなのは本当だ」

 ポテトへと野花を摘んできていた兵士が、がっくりと肩を落とした。美しい光景だった。二人だけの世界だ。仲間がぽん、と肩を叩く。

●最後の一押し
 ゴールまで、あとすこし。
 最後の行軍を応援するように、心地よい風が吹いている。
 その手助けがポテトのおかげであるとは、兵士たちは気が付いていない。自然の恵みのような、ちょっとした幸運に思われた。
(日差しを遮ることは難しいが、せめて風で涼をとって貰いたい)
 リゲルはそれに気が付いていてポテトに笑みを向ける。
「最後まで全員で頑張ろう」
 倒れかけた兵士を、リゲルはマントで受け止める。
「あと少しですよ!」
「む、……目印が……」
「あれじゃないか?」
 ハロルドが木を指さす。
「むむ、こっちか!」
 そう。エッダとアベルの小細工。木を引っこ抜いて、事前にコースを短縮していたのである。
(大変でしたよ、この小細工)
 曲がりくねった道。照り付ける太陽。少し悪い足場。最後の難関。ちびちびと休みながらも、新兵たちはしっかりついてきていた。
「あとちょっとです」
 響子はよく周りに目を配っていて、くじけそうになるたびに励ましてくれる。
「その程度か、この×××野郎が! 情けないであります!」
 エッダは叫びながら足を休めなかった。額には汗がにじんでいる。叫び通しだったのだ。声は枯れかけている。
 小細工なし、地獄の更新だ。
 どうあっても新兵共と共に最後まで走る。
 それがエッダの行軍だった。
 走りきり、疲れ果てたとしても、膝は付かない。
(口を動かすだけなら誰にでも出来る。しかし己だけ楽をすることは決して許さない。そうであってこそ、自分はフロールリジなのであります)
 まっすぐに誇り高く前を向いて。エッダは進んでいく。
「……続くであります!」
「イエッサー!」

●生還エンド
 ゴールが見えてきた。そして、たどり着いた。無事、かどうかは分からないが、少なくともみんな生きているし、命に別条のある者はいない。
「やった!」
 響子がとびきりの笑顔を見せる。
「みなさん、やりましたね!」
 思えば、長いようで短いようで長いような行軍だった。
(きっとそれはそれで楽しい……)
 アベルはその場にしゃがみ込む。
(そんな風に考えていた時期は俺にもありました、死ぬ)
「お疲れぇ」
 弟切が飲み物を配って回る。
「水だ……」
「あれ、この水……」
 たしかに水だが、清められた聖水だ。
「はい、おにーさんにも」
「ありがとうございます。なんという……厳しさだ……本当に命を失うかと思いましたぜ……」
 灰はきらきらした瞳を向ける。
「でも、体験できてすごく嬉しかったです。憧れでしたし、いつもこんなことしてるのだなって知れて良かったです!」
 ある一人の兵士は、灰が完走したのを見て驚いた顔をする。
「あれ、聞いたことないか? 一介の労働者に過ぎなかったのに、努力で騎士になりあがった男……。あの人じゃないか?」
 それではあの頼み事は自分をいさめるためのものだったというのか。
「帰ったら冷えたお酒を飲みましょうかな! きっといつも以上に美味しいです!」
 灰はそう言って汗をぬぐうと、朗らかに笑った。
「いいな」
 ハロルドが言った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

地獄よりの生還、おつかれさまでした。
皆様の適切な引率により、死傷者、重傷者ともにありませんでした!
驚くべきことに、兵士たちの中には、「楽しかった」「またやりたい」という感想を抱く者も多かったとか。
また機会がありましたら……いえ、これに二度目があるんでしょうか。
ともあれ、また、機会がありましたら、一緒に冒険いたしましょう。

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