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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>失われし芽吹きのイチゴ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神託のときが来りて
 天義決戦を以って冠位七罪の内、『色欲』ルクレツィアを除く六体までもがイレギュラーズに敗退した。
 残るルクレツィアも幻想を巡る三つの争いに手痛い一敗を喫し、混沌は多少の安定を得られるようにも思われていた。
 しかし、そんな希望的観測を嘲笑うように遥かな昔、『神託』の観測した『決定付けられた未来』はすぐそこまで迫っていた。
 絶対的破滅、通称『Case-D』の決定的接近により、混沌各地に世界そのものを崩壊に導くシュペル曰くの『バグホール』が頻発したのである。
 神託の到来、即ち破滅的影響は最早不可避のものとなっており、状況が誰の目にも明らかになったという話である。
 更に悪い事に――そして当然と言うべきか、この世界的な混乱に乗じて魔種達も新たな動きを見せていた。
 神託成就の日に向けて、『滅びのアーク』をかき集めんとする彼等は、これまでの七罪のような『縦割り』の仕事ではなく、全世界を相手に同時多発的に活動を強めている。
 それは冠位に率いられ、或る意味でお行儀良く影響を及ぼした事件とは異なり。
 もっと無軌道で、出鱈目で、一つ一つは大掛かりではなく、そしてどうしようもない程、堂々と大胆なものだった。
 それは或る種の勝利への仕上げを謳う彼等の宣戦布告に他なるまい。
 近い未来にこの混沌は滅びるのだ。恐らく、特異運命座標が何も出来ないのだとしたならば。
 出来ないのだと、したならば。
「つまり、気の長い『神託』の無限にも思われた義務猶予(モラトリアム)が尽きた、と。要するに時間切れ、ここから先が正念場ってそういう事だ」
 ローレットのギルドマスター・レオンは、そう居並ぶイレギュラーズへと語る。
 シュペル曰く、世界各地で観測された次元崩壊――『バグホール』って便宜上呼ぶ事にした――は終末(Case-D)接近による破滅的な影響であるらしい。
 これは魔種が直接どうこうして産まれたものではないらしいが、連中からすれば福音みたいなものなのだろう。
「オマエ達が持つ武器である可能性、即ち『空繰パンドラ』に対して魔種連中は『滅びのアーク』を集めていた。これまでは世界各国の『担当』冠位連中が取り仕切り、それぞれの暗躍でその獲得と混沌の混乱を目指していたんだろうが、今度は違う。見て分かる最終局面を前に、連中はこれまでより大規模かつ無軌道な実に堂々たる宣戦布告をしてきたよ」
 そう……バグホールと合わせて、もう世界中で大きな混乱と被害が観測されているのだ。
「俺達に現状で出来る行動はその対症療法しかないが、少しでも連中の目論見を挫かない訳にはいかない。『その先』は俺も、お偉方も考えるだろうから、一先ずは魔種連中を中心とした事件被害を防いでくれ。宜しく頼む」
 対症療法。なんとも不安な言葉ではあるが、そうだとしても対抗策はこの手の中にある。
 それだけは、確かな事実なのだ。

●失われし芽吹きのイチゴ
 それは、大粒のイチゴであったという。
 寒い冬。雪に閉ざされし中で白い実をつけ、そのイチゴは淡い輝きを放つと伝えられている。
 食べれば身体の中がほのかに暖まり、そのイチゴが見つかるというのは春が来ることを示すともされていた。
 その名は「芽吹きのイチゴ」。鉄帝で長く愛されたそのイチゴは、乱獲により大分昔に消えてしまった。
 しかし……そのイチゴが最近ラサで見つかったという噂があった。
 何故ラサに? それは疑問ではあるが、しかし同時に納得できる部分もあった。
 何故ならばラサは雪とは縁遠い国だ。そんなラサに「芽吹きのイチゴ」があるなど、誰も考えるはずがない。
 ないが……どうにもそれがある場所は、ラサの砂漠の中に存在している名もない地下遺跡であるという。
 そこにある「芽吹きのイチゴ」を回収して育てれば、あるいはまた芽吹きのイチゴが世界中で見られるようになるかもしれない。
「その遺跡の場所は特定した。しかしどうにも怪しげな部分がある」
 『ガストロリッター』アヴェル・ノウマン(p3n000244)は集まった面々にそう切り出した。
 ラサの砂漠の中で新しく見つかった地下遺跡。しかしながら、その遺跡の入り口にどうにも叩き壊さた跡があったようなのだ。今の状況でそんなことをする連中は、そう多くはない。
「そう、終焉獣。奴等が中に入り込んでいる可能性がある」
 入り口を埋めてしまってもいいが、中で進化して出てこられても困る。此処で倒す必要があるだろう。
「協力してほしい。芽吹きのイチゴも手に入れば更に言うことはない。そんなところだな」

GMコメント

ラサの砂漠の地下遺跡を探索し終焉獣を撃破、芽吹きのイチゴを見つけましょう!
芽吹きのイチゴは白い大粒イチゴで、結構甘いらしいです。
見つけたら皆さんで食べる&ガストロリッターが保護する分はあります。
なお、遺跡の入り口にはガストロリッターの小隊がいるので遺跡が埋まってしまうことはありません。

●地下遺跡
ラサの砂漠の地下に見つかった遺跡です。どうやら昔の地下神殿か何かだったようですが、迷路のような構造であり最奥に泉があります。そこに芽吹きのイチゴもあるようです。

●敵一覧
・オオカミの終焉獣×40
ラグナヴァイス。滅びのアークそのもので作られた獣達です。
黒いオオカミの姿をしており、素早い動きで爪と牙で攻撃してきます。
・『変容する獣』type盗掘団×1
 体の中身が透き通っている蒼白い終焉獣です。四足歩行をしていますが徐々に二足歩行→対話能力を身に付けると人間に進化していくようです。
今回の『獣』はラサでよく見る盗掘団のような姿に進化したようです。非常に強力な敵です。シミターを振るい、斬撃によるカマイタチをも放ちます。オオカミたちを制御する力もあるようです。

●友軍
『ガストロリッター』アヴェル・ノウマン
ガストロリッターの1人。放っておいても死なない程度の力はあります。剣術と単体回復魔法を使用します。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <グレート・カタストロフ>失われし芽吹きのイチゴ完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
観音打 至東(p3p008495)

サポートNPC一覧(1人)

アヴェル・ノウマン(p3n000244)
ガストロリッター

リプレイ

●地下遺跡へ
「イチゴのショートケーキ。絶滅種の確保もそうですが、終焉獣がらみとあれば放っておけませんね。観音打至東、これより探索行に同行いたします。イチゴジャム」
 思考がすっかりイチゴで埋まっている『悪縁斬り』観音打 至東(p3p008495)がそんなことを言っているが……今回はそれを探すのも仕事のうちの1つだ。
「鉄帝にあった果物がラサにあるなんて、確かに不思議な感じだね。それだけそこの遺跡が寒かったりするのかな?」
「ラサに鉄帝のイチゴが、ねぇ。浮島がラサまで流れて落ちて地下遺跡に、てのを幾つか見たことあるがその類だろうか。ま、それはそれとして面白い話だ。是非持ち帰って増やしてみたいね」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)と『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)がそんなことを言い合うこの場所は、ラサの地下遺跡だ。つい最近見つかったばかりのこの場所にはしかし、終焉獣たちが潜んでいる。
 だからこそラダは味方をサポートする動きを徹底していた。この薄暗い場所で見逃しがないようにサイバーゴーグルを使っているのも、その一環だ。これで周辺警戒の手伝いになるようにしているわけだが……だからこそラダは思わず呟いてしまうことがある。
「にしても40体もいつの間に入りこんだのやら。南部はすっかり終焉獣の巣窟だ」
 言いながらラダは行き止まりの道に印をつけながら最奥を目指すべく、隊列の中程を進んでいく。
「索敵はある程度味方に任せて(ちょうど非戦スキルを切らしておりまして)、イチゴ大福、私も目視で周囲警戒をいたしましょう。イチゴのクレープ。獣であれば、人とは呼吸が違うはず。日頃は人斬りなどイチゴのムースしている私ですが、そのあたりの阿吽を上手く切り替えられればいいのですが」
 至東もイチゴから思考が離れていかないが、それでも仕事をきっちりとこなしている。
 同時にアクセルも日輪結晶による過酷耐性(弱)によって遺跡がどんな状態でも動きやすいようにしつつ、広域俯瞰である程度上からの視点、超視力で道の先を見て迷路の踏破や終焉獣がいないかを確認するのを自分の役目としていた。
(オイラの得られる情報が視覚情報に寄ってるから、みんなと随時情報を合わせて遺跡踏破のための情報源にしたいな)
 そんなことを考えるアクセルだが、幸いにも『狐です』長月・イナリ(p3p008096)が暗視で視界を確保するのに加え、エコーロケーションと聞き耳で周囲の音を聞き分けて敵の接近を警戒してくれている。正体不明の存在が接近して来る等の状況の場合は味方に情報伝達してくれるだろう……隙は無い。
「芽吹きのイチゴか。種子を少し分けて欲しいわね……研究とか品種改良に必要になりそうだしね♪ とりあえず邪魔者を蹴り飛ばしてイチゴをGETするわよ」
 そう、イナリは4本足の何かが此方に向かってきているのを察知して仲間たちへと合図する。段々と速度を上げてくるそれは、オオカミの終焉獣だ……!
「楽園追放……黒い狼達を駆逐する!」
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)のパラダイスロストを放ち、オオカミ終焉獣を消し飛ばす。こうして散発的に来てくれるのであれば楽だが……ずっとそういうわけにもいかないだろう。それでもヨゾラは明るい態度を崩さない。
「食べたら体が暖まるって不思議なイチゴだね。味も気になるし、頑張って探してみよー! ついでに終焉獣も退治すれば一石二鳥って感じだし!」
 『天義の聖女』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)がそう言えば、ヨゾラも「そうだよね!」と笑う。
「ラサの遺跡に、芽吹きのイチゴ……素敵な奇跡だ……! 終焉獣は全部倒すし、芽吹きのイチゴも楽しみ! アヴェルさんもよろしくねー!」
「ああ」
 『ガストロリッター』アヴェル・ノウマン(p3n000244)が短く返し、『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)もコャーと鳴く。
「コャー、まさかそんな遺跡の中まで終焉獣が入り込んでるとはねぇ。芽吹きのイチゴも楽しみにしているわたしなの。しっかり確保して堪能したいの」
 そんなことを言う胡桃は罠に注意しながら炎狐招来で索敵を行っていた。
「まぁ、そんな変なのは沸いてないみたいだし、普通の遺跡探索でモンスターがいる感じのいつものを想定する感じでよさそうなの。終焉獣に気を付けるのは良いとして、この遺跡は普通に入った場合の探索難易度はどんなもんなのかしら」
「元神殿のようだからね……あまり悪辣な罠はないかもしれないな」
「そうね。道に迷わぬように気を付けるのは前提だけれども、万が一にでも罠とかあるならばそっちも気を付けねばなの」
 ラダとそう言い合いながら、胡桃は周囲をしっかり確認していく。今日の胡桃は穴掘七箇条を今日は心得ている。何かあっても大丈夫だろう。
「ん、アラームの罠があるの」
 なるほど、そのくらいはあるだろう。とはいえ、ロクに整備もされていない罠だ……何の問題もない。
「この調子でいけば、余程の事がなければ大丈夫なはずなの」
「うん、しっかり警戒していこうね!」
 スティアもしっかりと周囲を警戒していたが……罠がありそうだと思った時は近くにある石などを投げてみていた。それで反応する罠ばかりではないかもしれないが、長い棒と同様に罠探しの基本の1つだ。
「こういう時の直感って当たったりするから! あ、星詠みの秘術でも占ってみようかな? 当たらないかもしれないけど何もしないよりは良いから!」
 そう、どんな手でも使ってみるべきだろう。それが冒険というものだ。そう、イチゴのためにもだ。『冬結』寒櫻院・史之(p3p002233)も、まだ見ぬ芽吹きのイチゴのことを考えていた。
「イチゴっておいしいよね。種がしっかりしててプチプチした食感を楽しめるのもなにげにいいところだよね」
 そう、イチゴは種類にもよる部分はあるが基本的に種が小さいがしっかりしている。果実と合わせた2種類の食感はイチゴの魅力だろう。
「珍しいイチゴ……妻さんに持ち帰ってあげたいなあ。あの子は甘いものが大好きなんだ」
 そのためにも、この遺跡に潜む敵をどうにかしなければならない。だからこそ史之はしっかりと先鋒に立っていた。
 仲間を頼りにしつつも自分でも五感を働かせてトラップがないかを確認しつついくその姿は先鋒に相応しいものだ。
 しっかりと分かれ道に印をつけて迷わないようにしつつも、トラップによるダメージはある程度覚悟しながら進むつもり……なのだが。トラップに関しては胡桃を含む対策をしてきた面々の前ではしっかりと無効化されていた。
 そんな史之は今日は『刀神』ミサキにも協力を要請していた。
「ふむ、ここは俺が行こう。史之、おまえたちは待っているがいい。なに、たまには役に立ちたいものだ」
 そう言いながら歩いていくミサキは、先行して安全を確かめる役目も負っていた。
 勿論無理はしなくていいと再三告げてはいるが……その働きは確かなものだ。
 だからこそ、前衛としての役割を余裕を持ちつつこなす余裕もあった。
「おいでおいで、みんな八つ裂きにしてあげようね」
 放つH・ブランディッシュは、しっかりとオオカミ終焉獣へと命中していた。どうやらこの調子なら、最奥まで辿り着くまでに大分余裕を残せそうだ……!

●芽吹きのイチゴ
 その場所は、オアシスとでも呼ぶべき場所だった。地下にコンコンと涌いている泉は飲用にも耐えうるレベルで綺麗であり……しかしその場所には、終焉獣たちがいた。だからこそ、此処を取り戻さなければならない。そうして始まった戦いは、実に激戦であった。
「まさかご丁寧に最奥にいるとはな……! 背後を突かれることは覚悟していたが!」
 言いながらラダは蜂の巣にするべくデザート・ファニングZRを放っていく。
「お前は苺なぞどうでもいいだろう。退いてもらおうか!」
「そうだね! イチゴに被害が出る前にどいてもらうよ!」
 アクセルもケイオスタイドを放っていくが、ここまで数を削ってきたせいかオオカミ終焉獣の数も少ない。想像よりも余程有利な戦いへとなってきていた。
「盗掘団の魔力か何か食べたのかは知らないけど…イチゴは奪わせない! 貴様等なんかに、素敵なイチゴは奪わせないし滅ぼさせないよ!」
 そしてヨゾラは『変容する獣』type盗掘団相手に星の破撃で殴りかかっていた。見た目は盗掘団に似ている変容する獣だが……こうして目の前にしてみれば、明らかに人ではないと分かる。ならば容赦する理由は1ミリもない。
 その状況を作り出すためにスティアも史之と協力して、敵の注意を引くことで抑えを担当していた。
 スティアが鳴らす福音はオオカミ終焉獣たちを確かに引き付けていて、必要であれば攻撃にも回復にも回れるように戦場の把握も怠ってはいない。
「おまえ、しゃべれるの?」
 そして史之は変容する獣をメインに斥力発生Ver.4を発動させていく。
「言葉を使うみたいだけど意思の疎通はとれるかな?」
「……」
 変容する獣は無言。喋れるかどうかは分からないが、確かな知性を感じる目だと史之は思う。
(俺たちの言葉を理解して作戦を裏読みしてくるレベルの知性を持っている……かどうかは分からない、けど)
 それすら理解している可能性もある。だからこそ史之は声掛けによる連携をストップし別の形へ切り替えるための合図を送る。
 どれだけ優位にたっていたとしても、最後の瞬間まで油断はしない。それが勝つための法則だと史之は知っている。
「いい感じね! このまま追い詰めていくわよ!」
「わかったの」
 そしてイナリもオオカミ終焉獣をまずは片づけるべく三光梅舟を放っていき、完全逸脱とあふた〜ば〜な〜で自己強化した胡桃のこやんふぁいあ〜が変容する獣へと放たれていく。
「ええ、このまま手傷を負った敵の排イチゴのマカロン除に努めましょう」
 もうすっかりイチゴ言語になっている至東もオオカミ終焉獣へと識術【獅子吼内観】からの観音打三劫流新理『人為三劫剣』イチゴのゼリーを仕掛けていく。
 ちなみに正式名称は観音打三劫流新理『人為三劫剣』であってイチゴのゼリーは関係ない。
 とにかく戦闘は終始こちらに有利に進み……イナリがついにトドメの一撃を放つ。
「最後だから出し惜しみは無し、一気に畳みかけるわよ!くらえ……(溜息)……決め台詞が思い浮かばない!!」
 浮かばなかったらしいがルーラーゾーンが変容する獣を打ち砕き……そうして、全ての敵が倒れ伏し消え去っていく。
「あー!」
 サンプル回収しようとしていたイナリがそう叫ぶが……まあ、消えてしまったものは仕方がない。
「仕方ない……イチゴを採取&味見して依頼終了だわね。もちろん種子も獲得出来れば頂いていくわよ」
「ああ、好きに持っていけ。元々誰のものでもない」
 アヴェルに言われ、イナリは採取を始めるが……どうにもアヴェルはすでにしっかりと株を保存しているようだった。
「しかし、こういうものなのね……」
 そんなアヴェルはさておきイナリはイチゴを見るが……「芽吹きのイチゴ」は果実が白く、確かにほんのりと輝きを放っている。
 不可思議だ。不可思議だが……これならば確かに雪の中でも見つかるだろう。僅かな暖かさも、その助けになるのだろう。
「そうだとしても乱獲せず、私は私でいただける分だけ頂戴いたしますね。ふゝ……帰ったらどんなスイーツを作ろうかなあ。イチゴのパフェ、イチゴのタルト、イチゴのロールケーキ、イチゴのソルベ、イチゴのフルーツサラダ、イチゴのエクレア、イチゴのチョコレートフォンデュ、イチゴソースのパンケーキ、イチゴのコンポート、イチゴのパンナコッタ、イチゴのババロア、イチゴの以下略」
 至東は今から作るものを考えているようだ……何を作るかはたっぷり悩んでほしいところだ。
「イチゴと聞いてコンデンスミルクは持ってきたけれども、甘いのならそのままでも美味しそうなの。もうちょっと増えたらジャムにしたりとかもできるかしら~」
 胡桃もそう言っているが、実際に増やせばたくさん食べられるだろう。雪の中でも育つような強い品種であれば、難しくはないはずだ。
「白いイチゴってさ、高級品なんだよね」
 史之も言いながら芽吹きのイチゴへと触れる。本当に美味しそうなイチゴだ。その艶が、まさに絶品であることを示している。
「すごいな、宝石みたい。やっぱりこれ、妻さんに食べさせてあげたいや……ぜったい喜ぶと思う。妻さんの笑顔がみたいなあ~最近依頼ばっかりでぜんぜんかまえてないもんなあ」
 史之が単身赴任のパパみたいなことを言っているが、まあさておいて。
「流石にスペシャルする量はないし、我慢かなぁ。いっぱい食べる人もいない気がするし……」
 スティアもそんなことを……どうやら今回はスペシャルではないらしいが、それはともかく。
「今回はイチゴクレープを作ってみるね! まずは最初にイチゴジャムを少し作る! その次にモチモチの薄いクレープ生地を作って、甘さは少し控えめの生クリームを用意! 生地にクリームを塗ったら切ったイチゴとジャムを綺麗にトッピング。後はぐるぐる巻いて、天辺にイチゴとイチゴジャムを添えて完成!」
 そうして出来上がったクレープは、芽吹きのイチゴの特性もあり美味しい時間は短い。けれど口に含めば……「おいしい!」という声が出るのは確実だ。
「これが、芽吹きのイチゴ……」
(これでガストロリッターさん達もイチゴを保護できる……地下遺跡に残っててくれて、本当にありがとう)
「白いイチゴ……普通のイチゴと違った色だけど、味はどうなんだろ」
 ヨゾラとアクセルもそんなことを言い合いながら、1つ口に含む。そうするとその深い甘みと……お腹からじんわりと暖まってくるような、そんな不思議な感覚になる。
「わぁぁ……甘くておいしい……!」
「これがガストロリッターに保護されて、普通に見られるようになったら、きっと素敵だよね」
「うん。失われなかった芽吹きのイチゴ……ガストロリッターさん達の所で育てられて、実って、また食べられる日が来るといいなぁ」
「苺の群生地は枯れる心配はないとして――乱獲の心配はガストロリッター達がいれば大丈夫そうだな」
 自分の商会でも育ててみようと思いながら、ラダはそう呟く。そう、失われし芽吹きのイチゴは、こうして再生への道が繋がった。
 ならばいつか……また芽吹きのイチゴが人々に春を告げる日が、来るのだろう。

成否

成功

MVP

スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!

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