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シナリオ詳細

<グレート・カタストロフ>絆と闘争

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●滅びの福音
 世界各地に出現した通称『バグホール』――それは世界を崩壊に導くブラックホールそのものだった。更に魔種を中心に強まった『滅びのアーク』により、大量に発生した『終焉獣』が各地を脅かす。混乱に陥る人々は、滅びゆく未来の訪れを感じた。

『明日、世界が滅亡しますです。
 あ、嘘です。明日じゃないかも知れませんが、近い将来、世界は滅亡するでごぜーます』

 状況が示すのは、まさに神託の到来。魔種たちにとっての滅びの福音だった。
 可能性(パンドラ)の力は、どこまでを覆せるのか。どこまで抗うことができるのか。
 例え一時凌ぎの手段だとしても、魔種たちによる被害を見過ごす訳にはいかない――。

●ヘスペリデスの奥地
「瑶琥(ようこ)! もう戻ろう!」
 亜竜種の青年は、離れた場所を歩く亜竜種の若い女性、瑶琥に必死に呼びかけた。青年は何かを警戒するように、声を押し殺す。
 瑶琥は呼びかける青年、露珠(ろじゅ)のことを気に留めつつも、森林の奥に目を凝らしてゆっくりと歩みを進める。
 露珠は更に瑶琥との距離を詰めた。すると、瑶琥は制止しようとする露珠にまくし立てる。
「確かに見えたの。青い角と傷ついた翼が──」
 見間違いかもしれないと遮られても、瑶琥は強く主張した。
「彩瑠(さいる)は、きっとまだ生きてる! 私たちを逃がすために犠牲になったのに、見捨てられる訳ないでしょ!!」
 涙目になる瑶琥に露珠は同情したが、集落に帰ろうと説得を続ける。
「瑶琥……君も見ただろう? 魔物を食らって新たな力を得ているあいつらを。次は俺たちの番かもしれないんだ──」

 ──バキッ。

 2人はあるものの気配、枝葉を踏み鳴らす音を察知して身構えた。気配の正体は、すぐそばにある大木の影から姿を覗かせていた。
「さ……彩瑠?」
 右半身だけを見せた状態でたたずむ彼女は、虚ろな眼差しで名前を呼んだ瑶琥を見つめる。
 翼も髪も肌も、すべてボロボロの状態の瑶琥は恐ろしく不気味に見えた。瑶琥はその姿にも臆さず、ゆっくりと距離を縮めようとする。
「彩瑠……ごめんね、遅くなって。『アスタ』に帰ろう」
 彩瑠が反応を示すことを期待した瑶琥だったが、彩瑠は何も言葉を発さない。次の瞬間、彩瑠は大木の影から衝撃的な姿をさらけ出した。彩瑠の左半身は、無数のフジツボのようなものに覆われ、おぞましい姿へと変貌を遂げていた。
 彩瑠は獣のような雄叫びをあげ、正気とは思えない形相で瑶琥を威嚇した。
「う、ウソだ……彩瑠……!!」
 目の前の現実を受け入れられない瑶琥は、ただ震えることしかできない。しかし、迫り来る危機が容赦なく露珠へと食らいついた。
「ぎゃあああ!」
 露珠の悲鳴を聞いた瑶琥は我に返り、露珠の翼に食らいついた魔物の姿を直視する。
 成人並みに大きいトカゲの魔物を振り払おうと、露珠はもがく。そのトカゲの表皮も、フジツボのようなものが密集し、ゴツゴツした醜い見た目をしていた。
 瑶琥は携えていた槍を構え、魔物の首筋を狙って突き出した。魔物を貫くことはできなかったが、その体は勢いよく突き飛ばされ、地面を転がった。
 トカゲの魔物は1体だけではなく、瑶琥たちはすでに多くの群れに囲まれていた――。

●亜竜集落『アスタ』
「――アスタという集落では、『星の祠』を祀っているという話だ」
 ピュニシオンの森を越えた先、竜種の里であるヘスペリデスの更に奥地を目指し、終焉により近い場所にその集落は存在するという。新たに発見された亜竜集落『アスタ』について語るのは、覇竜観測所の所員、ミロン・メレフであった。
 調教されたワイバーンの手綱を取る『竜剣』シラス(p3p004421)と共にその背にまたがるミロンは、同行するイレギュラーズを集落まで案内する役目を担っていた。
 シラスとミロンを乗せたワイバーンの背には、更に荷物が積まれている。それらは、アスタの亜竜種たちを支援するための医療物資だった。シラスらと同様にワイバーンに乗って飛行する者もいれば、各々の飛行能力を駆使して共に集落を目指す者もいたりいなかったりした。
 存在が明らかとなって間もないアスタについて語るミロンに対し、シラスは静かに耳を傾ける。
「アスタは今まで、その星の祠のお陰で亜竜や竜種を遠ざけることができていたんだ――」
 不可思議な星の祠の力によって、アスタは竜種らの脅威から守られていた。しかし、その力が通用しない存在によって、アスタの平穏は脅かされている。
 世界の滅びの気配と共に現れた魔物、星海獣はアスタの集落周辺にも侵出している。アスタの亜竜種たちは、集落の近辺から追い払おうと奮戦している。そのせいで、多くの怪我人が絶えない状況は見過ごせない。
 星海獣が周囲にうろついている状況は、狩りを生業とするアスタの住民に苦境をもたらしていた。また、ミロンはアスタの里長である『星の巫女』についても言及する。
「俺もまだ直に会ったことはないんだが……なんでも最近は、星の祠に毎日祈りを捧げていて忙しいらしい」
「祠に、星の巫女……」
 アスタについての情報を整理するように、シラスは誰に言うでもなくつぶやいた。
「祠についての詳細は、まだ不明だ。それよりも、今は人命を優先するべきだろ?」
 飛行する方角を確かめながら、ミロンは続ける。
「アスタは集落の外との接触がまるでない。それなりに警戒されるのも無理はないだろう。星の祠の調査は、アスタとの友好を深めてからでも遅くはない」
 アスタについての興味深い話を聞けたシラスは、ミロンに感心を寄せる。
「よくそこまで調べられたな」
 日頃から所員としてフィールドワークに励んできたミロンは、得意そうに口角をあげた。その直後、ミロンはワイバーンの降下地点を示す。
「あそこだ! 木が切り倒されている場所があるだろ?」
 ヘスペリデスの豊かな森林が広がる光景が続いていたが、そこには異なる光景があった。
 ミロンが示した場所には、地下へと続く大穴が地面に開いていた。ワイバーン1体も余裕で入れるほどの大きさだが、更に奥まで物資を運搬するのは難しいだろう。
 一行は大穴の横で荷解きを始めたが、シラスは遠くから響く何者かの悲鳴に気づき、森林の向こうに視線を向けた。
 ただならぬ空気を感じたミロンも同様に反応し、
「誰かいる……行ってみよう」
 真っ先に声が聞こえた方角を目指して駆け出した。

GMコメント

 今回の依頼で付与される名声は『覇竜』側のものになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●シナリオ導入
 悲鳴を聞いたあなたたちは、星海獣の群れに襲われている亜竜種2人の下に駆けつけた。
 もう1人は、亜竜種に似た竜人の姿をしているが、異様な見た目をしている。そして、明かな敵意が伝わってくる……。

●成功条件
 星海獣の群れを討伐、あるいは撃退し、瑶琥たちの安全を確保すること。

●戦闘場所について
 日中の時間帯。
 ヘスペリデスの奥地。ある程度開けた森林内で、二車線道路くらいの幅がある。

●ミロンについて
 集落までの支援物資の運搬を手伝ってあげると喜びます。
 アスタの集落について気になることも多いでしょうが、長居しようとすると「他にも手伝ってもらいたいことは山ほどあるんでね」と急かされます。
 戦闘中は特に指示がない場合は、亜竜種2人を守ることを優先します。

●星海獣について
 無差別にエネルギーを喰らう飢えた獣。喰らったエネルギーによってその外見を大きく変化させる性質を持つ。特に星界獣が好むのは、イレギュラーズが持つ希望の力である。対峙した場合、イレギュラーズは優先的に狙われる。
●人型の個体について
 亜竜種を食らったことで、人型に進化したようだが、知能面は不完全なようだ。しかし、その凶暴性は脅威である。
 故人のものらしき槍を手にし(物近単)、相手に攻撃を加えようとする。また、フジツボのような表皮の間から凝縮したエネルギーを花火のように打ち出す。煌めく閃光が視界を染め上げ、対象の動きを封じようとする(神中自範【識別】【ショック】【恍惚】)。
●トカゲ型の個体について
 計20体。2メートル近い巨大なトカゲ。鋭い牙や爪(物近単【出血】)で獲物に攻撃する。トカゲ型も人型と同様の能力(神中自範【識別】【ショック】【恍惚】)で攻撃する。

 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしております。

  • <グレート・カタストロフ>絆と闘争完了
  • 「ごめんね、遅くなって……」
  • GM名夏雨
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2024年01月26日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
シラス(p3p004421)
超える者
白薊 小夜(p3p006668)
永夜
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
火野・彩陽(p3p010663)
晶竜封殺

リプレイ

「ぎゃあああ!」
 露珠の悲鳴を聞いた瑶琥は我に返る。露珠の翼に食らいついた魔物の姿を直視した瑶琥は、更に血の気が凍るような思いに襲われた。
 瑶琥は必死の思いで槍を突き出し、どうにか露珠に覆いかぶさろうとしていたトカゲを地面に転がした。
 すでに多くの群れ、トカゲの魔物に囲まれている状況に対し、2人は絶望的な思いを募らせた。同じ集落の仲間である彩瑠を取り込んだに違いない魔物、星海獣も距離を詰めようと踏み出し、瑶琥はますます表情を引きつらせる。
 恐ろしくおぞましい見た目の星海獣が迫る中、その光はどこからともなく現れた。
 飛び交う無数の光球が蛍の光のように辺りを照らす。幻想的な光景が垣間見えたが、次の瞬間にはトカゲの一部であるフジツボのような部分が弾け飛ぶ。次々と周囲で爆発する光球に混乱し、トカゲたちは逃げ惑う。光球の出現によって、人型の星海獣も瑶琥らから注意を逸らした。
 『竜剣』シラス(p3p004421)は真っ先に襲われている2人を視認し、瞬時に光球を放って混乱を生じさせた。シラスは間を置かずに瑶琥らの前に駆けつけ、続々と姿を見せるイレギュラーズやミロンに星海獣の注意が注がれる。
 即座に身構える面々の内の1人、『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は亜竜種2人の姿を見つけ、つぶやいた。
「これはまた、実に分かり易い大ピンチっぷりだな」
 ──何やら、気になる存在もいるが。まずは、あの二人を救わねば!
 殺気にも似た霊気をみなぎらせ汰磨羈の身体には、明らかな変化が生じる。あふれる膨大な霊気の一端を現すかのように、汰磨羈の髪は見る見る内に腰元まで生え揃い、白髪をなびかせる。
「我はニャンタル・ポルタ! お主らを助けにきてやったぞ!!」
 『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)は堂々と名乗りを上げる。そうすることで、星海獣らの注意を引きつけることもできた。
 負傷した露珠は瑶琥に支えられながら、大木の根本に倒れ込むように移動した。トカゲの群れから距離を置くことができた2人を守ろうと、ミロンや『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)は周囲の守りを固める。
「これまでよく持ち堪えたね。もう大丈夫だよ」
 腰を抜かしたようにへたり込む2人に向けて、ハリエットは穏やかな口調で言った。
 『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は星海獣の掃討に臨むよりも、露珠の傷の手当を優先する。
 心優しいヨゾラは、傷の治療をしながら露珠に語りかけた。
「心配しないで、この場は僕たちにまかせて」
 ヨゾラたちが2人の安全を確保する間にも、『永夜』白薊 小夜(p3p006668)らは危害を加えようとするトカゲを一掃しようと果敢に切り込んでいく。
 白杖を手にした小夜はその中の刀身を抜き放ち、大口を開けて威嚇するトカゲらと対峙する。
 ──さて、これはどういう状況かしら。
 そう心中でつぶやきつつも、小夜は持ち得る感覚──視覚以外の感覚を研ぎ澄ます。小夜の目に光が届くことはないが、明らかに敵意を向ける目の前の存在を探る。
 わずかに踏み出す動きを見せた小夜は、一瞬の間にトカゲの内の1体──トカゲAへと迫った。突き技に特化した小夜の直刀は、一瞬にしてトカゲAのアゴを貫いた。
 突きを放った直後を狙い、複数のトカゲが小夜に襲いかかる素振りを見せる。しかし、小夜の動きに合わせてひらめく桜吹雪が唐突に現れ、トカゲたちはびくりとその身を強張らせた。美しい幻影のようにも見えた無数の花びらが静かにトカゲの表面をなぞると、たちまち切創が刻まれる。
 鋭い切れ味を放つ桜吹雪の動きに翻弄され、トカゲらは小夜のそばから退いていく。汰磨羈は更にトカゲの群れを吹き飛ばそうと、自らの力を発揮する。空間からしみ出すように現れた泥が汰磨羈を中心にしてサークル状に出現し、爆発四散するように飛び出す。飛び出した勢いによって、被弾したトカゲらは激しく吹き飛ばされた。
 2丁の銃を構えるハリエットと共に、『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)は押しやられたトカゲらに向けて弓矢の狙いを定め、心中でつぶやく。
 ──気になる事もあるけどまずは安全確保、やね。
 矢に込めた魔力、霊力を引き出す彩陽は、その威力を存分に発揮する。
 トカゲBの目の前、地面に突き刺さった矢を中心にして強烈な衝撃波が巻き起こる。複数のトカゲが衝撃波にさらされた。まともに受け止めたトカゲBは、四肢を地面に投げ出したまま動かなくなった。
 2体、3体とトカゲの数が削られたのも束の間、人型の星海獣は飛びかかるようにして距離を詰めてきた。双剣を構えるニャンタルはその標的となり 手にした槍をめちゃくちゃに振り回す人型に応戦しようとする。人型は獣のように荒々しい動きでニャンタルに食い下がるが、押し負けまいとするニャンタルも、放った一突きで人型を圧倒しようと動く。
 反撃に転じようとするニャンタルの動きを察知したように、人型はニャンタルの間合いから退いていく。その直後を狙って、『無尽虎爪』ソア(p3p007025)は人型に対し接近戦を仕掛ける。
 虎の精霊であるソアは、自身の鋭利な爪で人型を切り裂こうと腕を突き出した。自身が持つ雷の力を最大限まで引き出すことで、ソアの攻撃は地上に落ちる雷のごとく捉え難いものと化す。一閃と化して放たれたソアの一撃は、人型の表皮に亀裂を刻んだ。
 ソアが距離を取る間もなく、人型は次の攻撃に出た。表皮を覆うゴツゴツした殻が割れたような穴の間から、火花のような発光体が次々とあふれ出す。
 人型の周囲は、花火の光に照らされるように眩い光に包まれた。視界が眩むのと同時に、星海獣が発散させた発光体は、周囲のイレギュラーズの体力を奪っていく。一気に体力を消耗するような感覚に襲われ、ソアは膝を付きそうになる。
 仕切りに全身を震わせるトカゲの群れも、人型にならうように発光体を発散させる。無数に爆ぜる光体の勢いが、イレギュラーズの攻勢に歯止めをかける。
 シラスは星海獣が放った光体を相殺しようと、無数の光球を放って対抗する。
「テメーらには勿体ねえ花火だろ?」
 そうつぶやくシラスの光球は容赦ない威力を発揮し、殻のように硬い星海獣の表皮は爆破によって次々と破裂する。その破片が、幾重にも周囲に散らばっていく。
 特に不気味な姿の人型は、動じることなく荒々しい槍さばきを見せつけ、正面から攻撃を受け止めた対象を押し退けるほどの手腕だった。トカゲたちは人型の動きに呼応するように光体を展開し続け、触れる者を苛み続けた。
 ミロンは亜竜種の2人を守るために身構えつつも、人型の星海獣の凶暴さに目を見張る。亜竜種の面影を残すその姿から、ミロンはある予測を立てて顔をしかめた。
「こいつは……亜竜種を、取り込んだってことか……?」
 瑶琥はミロンの背後から、嗚咽を漏らしながら彩瑠の名前を呼んだ。
 現状を受け入れ切れない瑶琥に同情はするものの、刀を構え続ける汰磨羈は引導を渡そうと強く主張する。
「ここで死を与え、その彩瑠とやらの魂を開放してやらねばならぬ」
 互いに相手の出方を窺う緊迫した戦局の中で、ソアは汰磨羈の同意を得るためにも尋ねた。
「私に、少しだけ時間をくれないかな?」
 ソアはわずかな可能性にも賭けたいと考えていた。彩瑠という亜竜種の面影を残しているのなら――もしも寄生されている状態なら、まだ助けられる余地はあるかもしれない。確証がないことも、充分に承知している。
 両者とも距離を詰めようとするトカゲを返り討ちにしながら立ち回り、汰磨羈はソアの言葉に耳を傾ける。
「――考えられる可能性は、試さずに捨てたくはないの」
 奇跡の力を引き出す心積もりであるソアの口調は、どこか許しを求めるようにも聞こえた。
「……邪魔するつもりはないよ」
 汰磨羈はソアと冷静に言葉を交わしながら、すれ違い様にソアの死角に迫ったトカゲを斬り捨てた。
「殺すのは、殺す以外に方法がないと分かった時だよ」
 汰磨羈は殺気をひしひしと感じさせる態度ではあるものの、ソアの意志を尊重することは確かであった。
 どんな結末になったとしても覚悟を決めようと、ソアはその眼差しに強い意志をにじませ、本格的に人型の相手に注力する。
 方針が決まったところで、皆は一層トカゲの排除に集中した。
「楽園追放――」
 ヨゾラは、神聖な力を高める術式を展開する。その力を解き放つことで発生した衝撃波は、多くのトカゲたちを打ち払うほどの威力を示した。
「貴様等の食い物なんてない、潰えろ!」
 語気鋭いヨゾラに続いて、射撃による援護に徹するハリエットも追撃を行う。銃口を向けたハリエットは、確実にトカゲを撃ち抜いていく。彩陽も同様に援護に加わり、構えた弓を引き絞る。放たれた矢が1体のトカゲを貫くのと同時に、巻き起こる衝撃波がトカゲCを吹き飛ばす。トカゲCは盛大に地面を転がったが、すばやく立ち直る。再びトカゲCは徐々に光体を発散し始め、次の攻撃を放つ瞬間を予感させた。
 トカゲCの攻撃を阻むため、ニャンタルは剣を振り下ろそうとトカゲCへと迫っていく。振り抜かれたニャンタルの刃は、風圧で宙に飛んだ光体を激しく揺り戻す。ニャンタルがトカゲCを叩き切ると、宙に舞っていた光体も儚くかき消えた。
 半数以下まで数を減らされたトカゲは、イレギュラーズの勢いに尻込みするように後ずさる動きを見せた。それでもなお攻撃的な人型は、積極的に相手をするソアに向かっていく。
 イレギュラーズという目の前の獲物に対し興奮し、暴走状態とも取れる。それほどに人型は狂暴さを発揮し、目の前のソアを狙って執拗に槍を振り回す。しかし、ソアは冷静な動きで人型に対処し、攻撃をかわし続けた。人型の荒々しい槍さばきを見定めるソアは、反撃の隙を的確に捉え、稲妻が走るような斬撃を放っては人型を押し返した。
 ソアが放った雷の力、衝撃をまともに食らっているにも関わらず、人型の動きは衰える気配を感じさせなかった。その苛烈さに目を見張った小夜は、残りわずかとなったトカゲから、対象を人型に切り替える。
 ソアに加勢する小夜は、人型が構えた槍をへし折ろうとする勢いで、たちまち刀を振り向けた。攻撃が集中する状況になり、人型は圧倒されるように2人の前から飛び退いていく。彩陽はその瞬間を狙うように攻撃に出る。
 混沌に満ちた魔力を自身の攻撃へと変換する彩陽は、泥状に染み出した力を周囲に爆散させる。そして、残ったトカゲ諸共人型に被弾するように攻撃を仕掛けた。その衝撃によって人型の身体は大きく傾いたが、寸前で踏み止まる。
 言葉にならない咆哮をソアに向けて浴びせる人型は、なおもしつこく食い下がる。接線を繰り広げるソアを支援しようと、ヨゾラは治癒の魔力を送り込む。その影響に後押しされ、ソアはせめぎ合う攻防を繰り返した。
 彩陽は矢をつがえつつも、ソアが起こそうとしている奇跡にわずかな望みを託そうとしていた。ミロンに護衛されながら戦況を見つめる瑶琥と露珠のことを、彩陽は一瞥(いちべつ)する。
「ただ殺されるのを、看過する訳にはいかんからね」
 彩陽の言葉は瑶琥たちに向けられたものでもあり、かつての彩瑠への同情にも聞こえた。
「──目の前で誰かが死ぬのを、許容は出来ないから」
 最後まで奇跡の力を信じたいのならそれを尊重しようと、彩陽は彩瑠が解放される瞬間を見届けようとした。
 遂にトカゲたちが残らず始末された状況が見えていないのか、人型は暴走に近い行動、攻撃を繰り返す。一見人型の態勢は揺るぎないものに見えたが、生じる隙は大きい。
 人型の表皮から再度光体があふれ始めたが、ソアはまた意識を曇らされる前に接近する。人型は槍を構えて防御態勢に入ったが、ソアは後に退くつもりはなかった。ソアは槍をへし折るほどの勢いと共に、死せる星のエイドス――救いと奇跡の断片を己の一撃に乗せて解き放った。
 人型の尋常ではない咆哮と共に、激しい明滅がすべての者の視界を支配する。やがて収まった後には、全身から白煙を立ち上らせる人型の姿が視界に映った。人型は虫の息の状態に見えたが、四つん這いになりながらも瑶琥や露珠の下を目指して歩み寄ろうとしていた。片手には折れた槍の切っ先が握られ、その全身は見る見る内に白濁していく。
 瑶琥らとの間に立つハリエットは、人型の動きを警戒して銃口を向ける。必死に体を揺すり、苦しみ悶える人型の様子を誰もが注視していたが――。
「……シ、テ――」
 ハリエットはうめくようにつぶやく人型の言葉を理解し、思わず息を呑んだ。
「殺シ、テ……ォオ……ッ、殺セェ……」
 じりじりと白く濁っていく歪んだ双眸が何を映したのか、確かめる間もなく人型――彩瑠は自らの槍で胸部を刺し貫いた。

 ──このフジツボ……どっから……。もしや、あの穴から降ってきたのか?
 ニャンタルは星海獣とバグホールの関係を気にかけ、瑶琥から聞き出そうと振り返る。しかし、悲痛な面持ちで星海獣の残骸を見つめる瑶琥の姿を前にして、ニャンタルは考え直した。
「彩瑠は、最後に自らの尊厳を守って死んだんだ」
 どこか暗い表情のソアと自身に言い聞かせるように、瑶琥は言った。
 瑶琥は残された彩瑠の槍の一部、穂先の部分を拾い上げる。すると、ハリエットは折られた衝撃で吹き飛んだ柄の部分を瑶琥の前に差し出した。
「貴方たちの大切な人、だったんだよね? ──」
 ハリエットは瑶琥を労るように語りかける。亡骸が無理ならば、せめて遺品をとハリエットは促す。
「あなたたちが連れて行った方が、喜ぶと思う」
 瑶琥は涙ぐみながら槍の一部を受け取った。
 瑶琥と露珠が落ち着いたところで、ミロンは集落に続く大穴まで戻ることを急かした。
「ここにはあまり長居しない方がいい、行こう」
 ミロンは瑶琥ら亜竜種と1度顔を合わせているらしく、気にかかる星海獣についての情報も瑶琥から聞き出そうとする。
「私たちにも、何が起きているのかわからない……こんなことは、今までになかったんだ」
 瑶琥たちはミロンから話を聞くまで、ヘスペリデスの創造主であるベルゼーが亡くなったことも知らずにいた。それほどに隔絶された集落なのである。
「そういえば、瑶琥──」
 露珠は、集落の祠のある特徴について口にした。
「あの祠、なんだか星海獣に似ている気がしないか? 表面にゴツゴツした変わったものがついていただろう──」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました

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