シナリオ詳細
<神の王国>聖拳よ、血塗られし曲がらぬ拳よ
オープニング
●遂行者エクス
復興中の鉄帝には今、全剣王と呼ばれる者の作り出した塔が現れ更なる混乱を招いていた。
それでも人々は鉄帝魂を発揮して日々を頑張っていて……そんな鉄帝のとある町にその日、帳が降りた。
町は一気に塗り替わり、住人たちは異言を話すもの(ゼノグロシアン)と化した。
あっという間の侵略であった。降臨した神の国は……しかし、秩序に満ちた場所であった。
壮麗なる白き町。石造りの建物が広がり、空には綺麗な蒼空。空気は澄み、気温は春先のように暖かい。
そして……町には常に白い鎧の騎士たちが巡回し、町の些細な場所も安心であるように努めていた。
神経質にも思えるが、非常に真面目。一切の不正などない高潔なる正義によって守られた町。
しかしそこには敵の姿などなく、ただ安心と安定だけがあった。
「遂行者たるエクスよ。これが貴方を象徴する神の国なのですか」
「致命者たるニギよ。これはそんな大層なものではない」
『聖拳』エクス・ヴァイン(p3n000338)は致命者ニギと呼ばれた少年へと、そう答える。
「全ては『神霊の淵(ダイモーン・テホーム)』が核となっているが故だ」
「しかし、それは」
「ああ。確かにこれは俺の力の源であり、俺自身でもある」
エクスは6角形のエメラルド色の水晶のような箱を取り出し、そう頷く。
『神霊の淵(ダイモーン・テホーム)』。遂行者と関係が根強い物が入れられており、遂行者の命の核そのもの
でもある、ルストの聖痕が刻まれた聖遺物容器だ。
この中には確かに入っている……かつて正義そのものと呼ばれ、それ故に敵対者に謀殺された騎士の鎧の欠片が。
名誉を奪いつくされ歴史から葬られかけ、その名誉が回復されたときには名前すら失われていた、騎士の聖遺物。
この神の国は、それを核として降臨したものだ。
「連中は来るぞ、ニギ」
「はい。この命にかえても叩き潰しましょう」
「そうだ。俺たちに退路はない。来る者は全て、殴り砕く……!」
●神の国へ
「鉄帝のとある町に神の国が降臨したです」
旅するグルメ辞典】チーサ・ナコック (p3n000201)はは集まった面々にそう切り出す。
神の国。いま世界中に降りてきた神の国は、どうも今まで以上に強固な何かであるようで……しかも、その内部に遂行者の姿が確認されている。
そして今回の対象となる神の国にも、1人の遂行者の姿が確認されていた。
「エクス……か」
『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)の言葉通り、今回の目的地である神の国にいるのは『聖拳』エクスだ。何度も何度もやりあってきたエクスだが……どうにも今回はその神の国から離れず、かなりの軍勢も引き連れてきているようだった。
「決戦……ちゅうわけかねえ」
「だとすると、激しい戦いになりそうですね」
『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)と『星を掴むもの』シュテルン(p3p006791)もそう頷きあう。
実際、この戦いがエクスとの決戦になることは恐らく間違いはないと思われた。
「そっか……今回で、決着がつくんだね」
「負けはしねえ……この因縁もここで終わりだ」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)と『Star[K]night』ファニー(p3p010255)も、そんな決意を秘めていた。
遂行者エクス。様々な場所に現れ因縁を作っていった男との戦いも、ついにここで決着がつく。
それは決して平和な終わりでないだろうことは、すでに誰もが気付いていた。
- <神の王国>聖拳よ、血塗られし曲がらぬ拳よ完了
- 決戦、遂行者エクス
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年12月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●秩序の町へ
神の国「秩序の町」。白い石で構成されたその町は美しく、何処か寒々しくも思える場所だった。
明快に維持された治安、薄暗いところなど何1つなさそうな光景。それはある意味で理想のような町だ。
「此処にエクスが……」
『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がそう呟き周囲を見回す。
整然としたこの場所には何処にも嘘はない。一切の隠し事も欺瞞も感じられず、しかしそれが正しいかは……また別の話だ。
だからこそ、それぞれがそれぞれの想いを抱いてこの場所に臨んでいる。『星を掴むもの』シュテルン(p3p006791)もまた、。その1人であった。
(エクスの理想は私ではきっと理解なんて出来ないのかもしれない。未熟な私では……きっと。それでも特異運命座標である限り……エクスを理解してその思いを撃たないと、ですよ、ね?)
たとえ理解できたとして、やはりやるべきことは変わらない。だからこそシュテルンの出した結論は正しいのだろう。
互いに曲がらない、曲げられない以上はそうするしかない。そしてこの場が敵地……そして決戦の地であるからこそ気を抜くわけにはいかないと、全員で固まって移動しているのも確実に決着をつけるための策の1つだ。
住宅街→商店街→中央広場の順で回ることをすでに決めており、シュテルンも天啓とオラクルでエクスを探るつもりだった。
「まずはエクスを探さないとな」
『運命砕き』ルカ・ガンビーノ(p3p007268)もエキスパートで強化したエネミーサーチで敵の場所を探りつつ、直感でエクスを探していく。
敵との接触は出来るだけ避けて最低限の戦闘でエクスの元まで向かうつもりではあるが、この町は異言の騎士が町の治安を守るためにかなりの頻度で巡回している。何か怪しげな行動をとれば彼等が即座に敵に回るのは疑いようもない。
「できれば騎士の皆様が寄ってくる前に早期にエクスを発見し損耗が大きくなる前に仕掛けるのが良いとは思うの」
『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)も炎狐招来を偵察に使って、加えてハイセンスと広域俯瞰を組み合わせてエクスを探してみたりしている。
「さて、何処にいるか……」
『Star[K]night』ファニー(p3p010255)もまた広域俯瞰+超視力と透視、白いハトのファミリアーを併用することでエクスを探そうとしていた。発見したらハイテレパスで情報共有し、最短距離かつ敵の少ないルートを先導するつもりだが……今のところは見つかっていない。
「さて、上手く見つかればええんやけど」
超視力に広域俯瞰、エネミーサーチで索敵と不意打ち防止をしながら『晶竜封殺』火野・彩陽(p3p010663)も周囲をしっかりと探索していき、ヨゾラもハイセンスに広域俯瞰、ファミリアーなどを活用し、自身のギフトである興味への道しるべも使用していく。
「……エクス。これがお前の神の国なんでありますね」
『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)も超視力で油断なく付近を索敵する。
「退く気は毛頭ない。……奴の正義は……ここで終わらせる……!」
言いながらムサシは拳を強く握る。そう、ここで終わらせる。その覚悟はもう出来ているのだ。
そのためにも、移動中敵に遭遇する前にソリッドシナジーを付与しておいて長期戦に備えるつもりだ。
「想いの根幹にあるものは同じなのに戦い合わないといけないのは悲しいね。皆、誰かを救いたいと願っているのに」
「そう、ですね」
『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)にシュテルンも頷く。
ままならないものだ。しかし正義というものが行きつく先は、こんなものであるのかもしれない。
「だからといってこのまま手を拱いていることはできない! 私にだって譲れないものはある! これまで積み上げてきたモノや紡いできたモノを否定させる訳にはいかない! だから決着をつけにいくよ」
そう、だからこそスティアは精霊操作を使用し、精霊にエクスの居場所を探って貰っていた。
できるだけ敵の少ない場所を選んで進むことで、住宅街、商店街、中央広場を順番に回っていく……。
そうして見つけたのは、中央広場に堂々と立つ遂行者、エクスの姿だった。
●決戦、エクス
「来たか」
エクスはただ一言、そう告げる。そこには何の感情も籠っておらず、しかし籠める必要はないのかもしれない。
何故ならばこれから行うのは決戦であり、互いの主張がどうであろうとぶつかる以外に何もないからだ。
だから、だろうか。ヨゾラもその言葉を投げかける。
「エクス……久しぶり、って言っても覚えてないかもしれないけど。僕も君をぶん殴りに、倒しに来たイレギュラーズの1人だから。……これが最後だ。しっかり禍根を絶たないとね!」
「確かに、これが最後だ。俺は貴様等を打ち倒す」
その言葉と同時に、周囲にいた人々の視線が敵意に満ちたものへと変わっていく。
「理想を追い求める様も理想の通りに動く様も正直羨ましかった」
『星を掴むもの』シュテルン(p3p006791)も、そう呟くようにエクスへと語りかける。
「私はずっと自由に生きると言う理想からずっと逃げていた。あなたの理想は行き過ぎてしまったのかもしれないけど、私はそれで動かされた気がします」
「ならば貫き通せ。動くと決めたならばそれが責務だ。とはいえ、貴様の命運は此処までではあるが」
「いいえ、私は生き残ります」
「そう。そして言ったはずだ、遂行者エクス」
ムサシも、そう宣言する。
「数多の人々の嘆きや悲しみや苦痛の上に立つ正義なんて…この宇宙保安官ムサシが許さないと!」
「ならば互いに潰し合うしかない。最初から、結論はそれであったはずだ」
そのエクスの言葉に彩陽も「せやな」と頷く。
「言葉はもうあんまりいらんよな。お互い語りつくしたやろうし。後は己の武器を持ち出して。己の意義を、意思を。これをぶつけあうだけやろ? せやろ、エクス!」
「その通りだ。議論で済む時期はとうに過ぎ去っている。あとは実力で語れ」
「そうかい、それならやってやるさ」
ファニーも、そう言いながら戦闘態勢を整える。
「エクス、テメェの顔も見飽きたぜ!!」
そう、それが戦闘開始の合図。致命者ニギもその場に出現し、総力戦といったこの状況で……最初に動いたのは彩陽だ。
彩陽が狙うのは異言の騎士とゼノグロシアンだ。
それは味方がスムーズにエクスに取り付けるようにするためであり、味方を巻き込まないように気をつけながら「我冀う。その力を奇跡と成す事を」を発動させていく。
「回復はさせない。確実に仕留める……!」
「おのれ、邪魔をするか……!」
「ああ、するとも! それが今の自分の役目だ!」
「そうか。だが上手くいくとは思うな」
「エクス!?」
そう、ムサシからはまだ離れた位置。そこにエクスが輝く拳を構え、オーラを輝く衝撃波にして放つ。
聖拳波動撃。そう呼ばれる一撃はムサシを呑み込み、しかしそれではまだムサシは倒れない。
「くっ、やはり強い……が、そのくらいで倒れはしない!」
そのタイミングでファニーは黒く歪む星からの指先の一番星を放っていく。僅かな隙でも逃しはしない。そんな心意気が見えるかのようだった。
「回復は任せて、ください!」
シュテルンの幻想福音がムサシを回復し、その開幕からの激しい戦いの中でシュテルンは思う。
(天義の騒動にただ憎しみだけで行動していたけど憎しみを当てる相手を間違いてはいけなかった。なればそう……ちゃんと……特異運命座標として、その戦いの末路を見届けなきゃ…!)
「俺たちの覚悟を甘く見るなよ……!」
クリムゾン・ジョーカーをルカがニギへと放ち、その凄まじい威力にニギが「くっ……」と声をあげる。
その様子を見て、スティアは当初の予定通りにニギは仲間に任せていいと判断する。
「いくよ、エクス……!」
スティアが奏でるのは福音。自分に狙いを向け抑えようというのだ。勿論簡単に抑えられる相手ではないが、スティアとて相応以上の実力は持っている。
だからこそ、そんなスティアを信頼してヨゾラは星空の泥を放っていく。
「このまま一気に押し切るよ……!」
「コャー。まあ、それが一番なの」
胡桃もこやんぱんちをエクスへと繰り出していくが、尽蔵のゼノグロシアンよりもエクスを優先していきたい感じであった。実際、最終的にはそれで帳尻が合うはずだ。
(特にわたしは単体攻撃の方が得意なのもあるし)
そうして戦っていけばニギが倒れ、やがて狙いはエクスに絞られていく。
「待たせたなエクス。決着をつけに来たぜ」
「俺は待っていない」
「そうツレねえことを言うなよ!」
ルカは黒犬(偽)を両手持ちに切り替えて、クリムゾン・ジョーカーを叩きつけていく。
「一応聞いておくが、降参する気はねえよな」
そんな、ルカは自分自身ですら全く期待なんてしてない事を聞いてしまう。
しかし、思うのだ。エクスは敵だが、気に入ったやつだと。一本筋の通った生き方はどうしても嫌いにはなれなかった。
「当然断る。まさか俺が是と言うと微塵でも思っていたわけではあるまいな」
「ま、お前ならそう言うと思ってた。それに俺はお前のそういう真っ直ぐなところが気に入ったんだ」
「そうか。ここにきて失望させられるかと思っていたぞ。少しばかり安堵というものをした」
「ああ、そうかい。そりゃ光栄だ」
袖にされて安心しちまう自分に苦笑いを浮かべるルカではあるが、敵としては認められていた事実に、苦笑の中に多少違う意味の笑みが混じる。
「さて。今回ばかりは俺も引くわけにはいかん。だからこそ、見せよう。俺が俺である証を、この世界が欺瞞に満ちた偽りである、その1つの欠片を!」
正義の欠片。そう呼ばれる聖遺物が6角形のエメラルド色の水晶のような箱が展開し露出していく。
『神霊の淵(ダイモーン・テホーム)』。そんな名前の箱に収められていたのは……古びた鎧の欠片。
正義であったが故に恐るべき濡れ衣を着せられ名誉も名も全て消され、遥か未来に名誉を回復されたときには名前すら何処にも残っていなかった「無名の騎士」の鎧の欠片。すなわち、拭いきれぬ闇の残滓。それはエクスの核であり始まりでもある、まさにそんな代物であった。
「この世界は間違っている。世界を見ろ、足元を見ろ、己を見ろ。どうしようもないものばかりがはびこり、その全てを贖うことなど出来はしない。ならば……正しく再構築するしか道は残っていない!」
それは正義故の傲慢だ。闇に蹂躙され、その激しき怒り故の誤りだ。
「だが、俺の正義に貴様等が阿るとは微塵も思わん。故に砕け散れ。その先の新しき世界で救われろ」
「例え今日世界が終わるとしても例え今日正義が為されるとしても。わたしが変わる事はないと思うの。ただ、きっとそれでもいいの」
「ああ、貴様はそれでいい。これはただの主義主張のぶつけ合い。俺たちは永遠に交わらぬ」
構えるエクスに合わせ、胡桃も構える。
「今回は決着まで付き合うつもりのわたしなの。そちらが奥の手を出すというのなら、わたしも後先考えぬハッピー★エリクサー使用で対抗するの。お互いに、燃え尽きるまで」
そう、これはまさに最後の手段と呼べるもの。しかし、本気で殴り合うならば必要なものだ。
「そなたの理想の世界はつまらないものではなかったの。優しい世界であったの。正義を語るより、それが何倍もわかりやすかったの」
「そうか。その言葉は正しき世界で新しき貴様が忘れても覚えていると誓おう」
「必要ないの。そんな世界は来ないの」
胡桃のこやんぱんちが放たれ、その一撃を真正面から受けながらエクスは拳を握る。
「見せてやろう。俺の正真正銘の最大の一撃を……!」
エクスはそのまま地面が爆砕するかという勢いで地面を殴りつける。
そこからエネルギーが溢れ出すように一瞬で広がっていく光の柱は……まさしく今のエクスが使える最強技「グランドピラー」。
その威力は凄まじく、時間をかけてはいられないとムサシは悟る。
「それが貴様の本気か……エクス!」
放つのは焔閃抜刀・撃。二天一流・宙の技の一つ、「火」の技であるそれをムサシは放っていく。
「だが我々も……引くつもりはない! ここで……終わらせる!」
「ここで倒す……!」
ファニーの指先の一番星が放たれ、その間にも彩陽が異言の騎士たちの相手をしていく。その献身的な彩陽のサポートが、仲間たちに活路を開いていく……!
(強くはなったけど攻めるチャンスでもある一気に破壊してしまおう)
スティアもそう考えながら、今こそ放つべきときだと神滅を発動させる。
「貴方という騎士の生き様を目に刻みつけ、その上で越えてみせる! 天義を任せても良いと思って貰えるように……」
「やってみろ! 俺の正義を否定するならば、その力を俺に見せるがいい!」
神滅の、その名に相応しい一撃が命中し、それでもエクスは立っている。
「エクス、貴方は高潔な騎士だったんだろうね。故に理想を思い求めてしまった……その手段の歪さに気づかずに」
エクスに、スティアはそう語りかける。
「もしかしたらルストに利用され、歪められただけかもしれないけど……でも安心して欲しい。貴方の誰かを救いたいという想いは私が背負っていくから!」
「その言葉は重いぞ。恐らく貴様が考える、その数倍は」
「分かってる」
「ならばいい」
一見和解にも思えるこのやりとりは、しかし断じてそうではない。戦いは更に激化し、誰もがボロボロになっていく。
そんな中で、ルカがついに倒れそうになり……それでも、踏みとどまる。
「耐えるか、その傷で」
「お前の技をまともに食らえば死にかけるのはわかってた」
何度も戦ってきたエクスの強さを、俺は誰よりも信じていたからな、と。ルカはニヤリと笑う。
「だからこそ、だ。お前を倒すには生半な攻撃じゃあ駄目だ」
「それでどうする。貴様の手札はもう見尽くした」
「ああ、そうだな。死にかけの今だからこそ【復讐】を最大限に発揮した一撃を使える! お前に守るべきもんがあるように、俺にも守りてえもんがある! 勝ち取りたい未来がある! だからここで膝をつくわけにはいかねえんだ!」
ルカが取り出したのは終焉のレーヴァテイン。敵を焼き自分も焼きかねない、万物を焼き尽くす一撃を放つための鍵。その覚悟に、終焉のレーヴァテインは確かに応えた。充分すぎる運命のダイス目を出すことによって。
「これが俺の最強の一撃だ!! 受けろ、エクスーーー!!」
放たれたのはクリムゾン・ジョーカー。竜を斬る為に鍛え上げてきたその威力は、確かにエクスの装甲を深々と切り裂き、「正義の欠片」をも砕く。
「……見事だ」
「こんな事を言うのはなんだけどよ。楽しかったぜエクス」
あばよ、戦友……と。消えていくエクスにそうルカは呟く。答えは当然のようにない。エクスも、すでに消えて。この神の国も消え去るだろう。
「体の部位じゃなく、何かの欠片? ……なるほどね」
遂行者の中には聖遺物から作られた存在もいるらしいから。エクスも、そうだったんだね、と。ヨゾラもそう呟く。
「エクスの事も、消えて行った神の国の事も記憶や記録には残り続ける。さよなら、遂行者エクス……君みたいな強い一撃、僕も自力で目指してみるよ」
そしてシュテルンも戦いの終わりを感じながら……思う。
(正義を諦めた人を知っている。ずっと自分を責めてばかりで、いつも悲しい顔をして記憶がなかった頃だったけど私なりに励まそうと頑張った人がいた。それでも彼の孤独は晴れる事は無かったみたいだったけど)
それはシュテルンの、1つの過去の話だ。
(それでも私を……何も知らなかった私を悪夢で魘されていた私を救おうと努力はしてくれていた。私は彼を救う事が出来なかったけど。エクスを見てると……彼の正義ももっと理解してあげられたなら違ったかなって終わった後に気づいたのです)
過去は変えられない。けれど……それでいいと、決めたのだ。
そう、それでいい。過去を変えず、未来を守ると決めた。世界を救うと再度誓った。
それが、エクスという1人の「正義」を掲げる者に打ち勝った者たちが向かうべき道なのだろうから。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
遂行者エクス・ヴァインの物語はこれにておしまいです。
皆さま、最高にカッコよかったです……!
GMコメント
遂行者エクスとの決戦です。
鉄帝の町に降臨した神の国「秩序の町」に潜入し、エクスを倒しましょう!
●秩序の町
白い石で構成された秩序ある町。誰もが平和に正しく過ごし、かなりの頻度で騎士団が見回っています。
住宅街、商店街、中央広場の2つで構成されています。
●敵一覧
・『聖拳』エクス
『遂行者』を名乗る人物の一人。非常に真面目で正義感が強い。
ただし、それが一般的大多数の正義と合致するかはまた別の話であるのですが。
オーラを纏った拳による格闘攻撃と、輝くほどのオーラを纏った、超破壊力の拳『聖拳撃』を組み合わせて使用します。また、オーラを輝く衝撃波に変えて放つ『聖拳波動撃』も今回使用してきます。
また今回、『神霊の淵』から聖遺物である壊れた鎧の破片『正義の欠片』を露出することでリミッターを解除し全体的な能力の大幅UP、そして地面を殴りつけ自分を中心とした巨大な光の柱を生み出す範囲攻撃「グランドピラー」を使えるようになります。
●致命者ニギ
かつて天義で死んだ少年に似た姿をした者。本人ではないようです。
飛行することが出来るほか、範囲攻撃の「断罪の祈り」、範囲回復の「赦しの祈り」を使用します。
●異言の騎士×たくさん
ゼノグロシアンの一種であるようです。純白の鎧をまとっており、いざ戦闘となれば剣と盾を使い果敢に戦うでしょう。
●異言を話すもの(ゼノグロシアン)×たくさん
住民が狂気に陥り、『異言(ゼノグロシア)』を話すようになってしまった状態です。
元が住民である場合は倒すことで正気に戻り、そうでない場合は倒すことで消滅します。
戦い方は色々です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
Tweet