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シナリオ詳細

<ラケシスの紡ぎ糸>シルバーバレットVSブラックバレット

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 爆発する馬車。放り出された商人アウストロはその恰幅のいい身体を地面に転がした。
 思わず顔をあげれば、傭兵たちが剣や銃を抜き『それ』に襲いかかる所だ。
「なぜ」
 アウストロが声を上げる。
「なぜここまで接近されるのに気付かなかった!?」
「旦那、違うぜ。気付かなかったんじゃない」
 剣を手に『それ』へ斬りかかる傭兵。しかし『それ』は右手に癒着した銀色の銃で剣を防ぐと、強烈な蹴りでもって傭兵を突き飛ばした。
「先行した隊がまるごとやられたんだ。こっちに連絡をよこす暇すらなく、な」
 突き飛ばされつつも起き上がり、再び斬りかからんと立ち上がった――その瞬間。『それ』は右手に癒着していた銀色の銃をぶっ放した。鉛のように堅い弾丸が傭兵の脳天を貫き、ひゅっという声だけを残してその場にくずおれさせる。
 アウストロは悲鳴をあげ、這うように逃げ出し……そして、銃声を聞いた。
 それが、最後の音だった。


「終焉獣の調査は、続ければ続けるほど何かしらの事件が出てくるな。時代は本当に滅びに向かってるってことなんだろうか……」
 ライ・ガネット(p3p008854)がそんな風につぶやきながら、テーブルの上にいくつかの資料を並べていった。
 世界の滅びの足音を聞かせるが如く、昨今は終焉獣に関する依頼は増え続けている。
 中でも目を引くのは人型に変容する終焉獣の存在だ。
 どうやらこちらの戦い方を学習し、人型をとりつつあるという話なのである。

 ライが広げた資料はラサの商人がモンスターに襲われたという報告を纏めたもので、その一部は変容した終焉獣たちによるものだと推察がついていた。
「終焉獣の厄介な所は、こちらを学習しつつあるということだ。パドラ、お前もどうやら例外ではなかったらしいぞ」
 ラダ・ジグリ(p3p000271)がそれらの資料の上に重ねたのは、『銀色の銃を持った終焉獣』の存在を示すものだった。
 撮影された写真を、パドラは身を乗り出して覗き込む。
 パドラ――彼女はマガキ傭兵団に属する女であり、かつて紅血晶をめぐる騒動のなかでイレギュラーズと深い絆を結んだ傭兵であった。
「これは……私?」
「それにしては、黒っぽくありませんか?」
 そう声をあげたのは同じく写真を覗き込む水月・鏡禍(p3p008354)だった。
 彼の言うように、パドラにしては黒っぽい。被っているカウボーイハットも黒一色だ。
「黒いパドラ……か。きっちりこっちを学習して、マネまねしてきたってことだよね」
 シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が困ったねと肩をすくめる。
 パドラは『シルバーバレット』の異名の通り銀色の大口径リボルバーを武器とした一撃必殺のスタイルを得意とする傭兵だ。
 それを真似たということは、この終焉獣もかなりの手練れと見て間違いないだろう。
「これもアタシの蒔いた種……なのかなあ」
 やれやれといった様子で肩を落とすパドラ。
「オーケー、わかった。こいつを狩りに行こう。これ以上商人に犠牲が出てもいけないし、ね。依頼料は弾むし、終わったら酒も奢る。それでどう?」
「いいな、乗った」
 ラダが手を翳し、ライもそれに乗じる。
 僕も! と鏡禍が手を上げ、シキは『当然でしょ』とばかりに手を振ってみせる。
「決まりだね。それじゃ、行こうか……」

GMコメント

●シチュエーション
 ラサの一角、オアシス街から続くペルトス道にパドラそっくりの終焉獣が出現しました。
 このまま放置していれば道をゆく商人たちが再び襲われてしまうでしょう。
 現地へ向かい、終焉獣を倒すのです!

●フィールド
 ペルトス街道
 舗装された土の道。平野になっているため戦闘には不自由しないでしょう。
 基本的に馬車で突っ込んでいって現れた所を逆に襲撃する形になるはるです。

●エネミー
・獣型終焉獣
 大量に随伴している獣型の終焉獣です。人型を処理するにはまずこいつらからかたづけないと苦戦することになるでしょう。

・人型終焉獣『ブラックバレット』
 パドラを学習したとおぼしき終焉獣です。銀の銃を摸した右手を持っており、そこから必殺の銃撃を繰り出してきます。
 一撃の威力が凄まじく高いため、抑えにはタンクやヒーラーの活躍が期待されます。

●酒盛りパート
 戦闘が終わったらオアシス街でパドラが酒(未成年にはジュース)を奢ってくれます。
 今回の感想を話したり、ひたすら飲んだり食べたりしましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ラケシスの紡ぎ糸>シルバーバレットVSブラックバレット完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年12月01日 23時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る菫、友に抱かれ
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ライ・ガネット(p3p008854)
カーバンクル(元人間)
リゴール・モルトン(p3p011316)
司祭

リプレイ


「これがラサ……」
 空気からして天義と異なるその風土に、そしてこの季節にあろうと焼き付くような熱に、『司祭』リゴール・モルトン(p3p011316)は流れる汗を幾たびもハンカチで拭った。
「大丈夫?」
 心配そうに尋ねてくるパドラに、ええと小さく答えるリゴール。
「すみません、私は天義の街からあまり出た事が無く……ご安心下さい、すぐに慣れるでしょう」
「そうだね、すぐに慣れると思う。イレギュラーズって皆そうだし」
「そういうものですか……」
 自分で言っておいて感心してしまうリゴールである。
 さて気を取り直して……と依頼書を見直すと、そこにあるのは終焉獣の討伐依頼。
 しかもただの終焉獣ではない。
「早速出やがったな、これだから学習型は厄介なんスよね。
 早いとこシメとかねぇと、被害どころかパドラにまでエグい飛び火が来るな。
 学んで真似た所で偽物は偽物だって事も、きっちり教えてやらねぇといけないっスね」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が苦々しく言うように、今度はパドラをコピーしたかのような終焉獣が出現したというのだ。きっちりとパドラを学習し、変容した個体ということだろう。
「そのうちこうなるだろうなとは思っていたが、想像よりもずっと早い。
 他所ではすっかり人と間違うばかりの奴も出てきている。
 これは思ったよりも早くに事が動き出すのかもしれない」
 『灼けつく太陽』ラダ・ジグリ(p3p000271)が深刻そうに言えば、『水底にて』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)が小首をかしげて振り向いた。
「動き出す、とは?」
「終焉獣にもそれなりの目的があるかもしれないってことだ。今はなんとも言えないがな」
「なるほど……。
 それにしても、性質のコピー……ですか、厄介なものですね。
 味方が心強ければ心強い程に、敵も強大なものとなる。まるで影のように」
 ヴァイオレットは自分がコピーされるさまを想像してぞっとした。高い戦闘能力を学習し模倣する。そんな存在なのである。
「無辜の民が襲われてしまう事は捨て置けません。微力ながら助太刀致しましょう」
「さて本格的に学習型が蔓延って来たかぁ。
 自分のコピーって聞くと嫌だよね、まあそれが悪さしてるなら叩くしかないんだけど」
 内心を読んだように言う『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)。というより、誰でも同じ事を考えるものだというべきだろうか。
「とりあえず大掃除としゃれこもうじゃないか。
 全部綺麗になったら楽しい晩酌の時間だぞー! いえーいタダ酒だー!」
 ルーキスはといえば気分をさっと切り替えてしまえるタイプらしく、機嫌良さそうに現地への足取りを速めていた。
 その後ろをつくように歩くのは『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)たちだ。
「パドラを模した終焉獣か…あそこまで高精度に真似できるものなんだな。
 そこまで模倣できる情報を何処で集めてきてるのかは気になるが……ま、色々考えるのは後でもいいか
 とりあえずアイツをぶっ倒さないとな」
「集める?」
 パドラが尋ねてきたので、ライは顔をあげて言葉を足した。
「今までの終焉獣って、形状もタイプもバラバラな獣たちだったろ? それが急に『変容する獣』ばかりが現れ始めた。一斉に自然変化したなんてわけがない。どこからか出所があるんじゃないかって考えだ」
「なるほど、ね」
 かくいうパドラは学習された張本人だ。内心では気が気でないのだろう。
 それを察して『夜鏡』水月・鏡禍(p3p008354)がそっと声をかけた。
「パドラさんは依頼を持ってきてくださったり何度も遭遇されてますからね。
 遅かれ早かれだったんでしょう
 大丈夫です、パドラさんのことは僕らもよく知ってますし。
 だからこそ戦いやすいってこともあるでしょう?」
「まあ……手の内が分かってるって意味じゃあ、未知の敵よりマシ、なのかな?」
「まったく厄介なものだね、終焉獣ってやつは。黒いパドラ……固有の人間まで真似してくるとはね」
 『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)がパドラの方をぽんと叩く。
「までも、かわいいパドラの姿で被害を出されるのも嫌だしね?
 いつだって強くて優しいパドラのこと、みんなに知っててほしいもん」
「か、かわいい!?」
 顔を赤くして照れるパドラを、シキは肘でとんと小突いてやった。


 パドラを学習したとおぼしき人型終焉獣、通称『ブラックバレット』。
 その出現地点は何もない街道であった。
 どうしてこんな場所にと思う一方で、人里でごちゃごちゃした騒ぎを起こされなくてよかったと思うシキ。
「見つけたぞ」
 そう声をあげたのはドレイクチャリオッツを操るラダだった。
「突っ込む。全員しっかり掴まってろよ!」
 宣言通りに加速するラダのドレイクチャリオッツ。それを察したブラックバレットは銀の拳銃型をした右手でもってドレイクを狙い打ちまくる。
 思わずカーブを描いたことで終焉獣の間を突っ切りづらくはなったものの、盛大に数体の終焉獣を馬車によって撥ね飛ばすことに成功した。
 そうして隙間があいた瞬間を、ヴァイオレットたちは見逃さない。
 素早く馬車から飛び出したかと思うとブラックバレットに『名乗り口上』を開始。
「影の如く黒き凶弾。はてさて……本物の影とどちらが疾いか、試してみましょうか」
 ギラリと煌めくヴァイオレットの瞳がブラックバレットの心を掴む。
 その証明にとばかりに、ブラックバレットはヴァイオレットの額めがけて銃撃を放った。
 骨のように堅い弾丸が放たれ、それを紙一重のところで回避するヴァイオレット。
(命中精度が高い……場合によっては避けきれませんね)
 同じ事を察した鏡禍がヴァイオレットの前に飛び出し、ルーンシールドを展開。
 巨大な鏡のような妖力結界が広がり、ブラックバレットを狙う――と見せかけて、ぐるりと身体を反転、先ほど撥ね飛ばした終焉獣たちめがけて『ブレイズハート・ヒートソウル』の妖術を解き放った。
「リゴールさん、僕の後ろに!」
「助かります!」
 耐久性能の低いヒーラーのリゴールは真っ先に狙われかねない人物だ。
 それを見越してリゴールは鏡禍の後ろに隠れる形で陣取り、その間にも鏡禍とヴァイオレットに『聖躰降臨』の術をかけ始めた。
「学習、進化……滅びを伝播する獣が知恵を得れば脅威でしょう。
 これ以上犠牲者を増やす訳にはいきません。ここで杭を打たねば……」
 その間にも無数の獣型終焉獣がリゴールを、あるいは鏡禍を狙って食らいついてくる。
 それを鏡禍は展開した結界で阻み、持ちこたえていた。
 うまく策が嵌まった、と言うべきだろう。
 あとは順番に処理していくだけだ。
 走り、刀を抜くシキ。
「遮蔽物も何もないような街道に出てくれてありがと!」
 おかげで一網打尽にできる!
 シキは獣型終焉獣に刃を走らせると、流れるような動きと速度で終焉獣を切り刻んでいく。
 シキを脅威と見たのか、【怒り】付与の対象になっていなかった終焉獣が長い舌を伸ばしてシキの腕に絡みつけてくる。強引に引き寄せられそうになったシキだが、素早く舌を刀で切断。
「まだちょっとばらつきすぎてるかな。もう少し纏めるよ!」
 シキもまた散っている終焉獣たちに突っ込み『名乗り口上』を展開した。
 走るシキの華麗な姿に見とれ、終焉獣たちがついついシキを目で追い、攻撃してしまう。
「パドラ!」
「分かってる」
 シキを中心とした六発連射。すべての弾がシキを通り抜けて終焉獣にだけ命中していく。
 ガパッと開いたリボルバー弾倉から空薬莢を大胆に放り捨て、親指で弾いて弾倉を回すとその回転数を完璧に把握したかのような指運びで弾をすべてリロード。手首を返すことで弾倉を装填した。
 そしてまた連射を開始。
「さあ、我々も仕事を始めよう!」
 ドレイクチャリオッツによって終焉獣とブラックバレットは分断されている。
 ラダは御者席から飛び降りると、飛びかかってくる獣型終焉獣の牙をライフルで受け止めガードした。
 蹴りつけて距離を取り、素早く発砲。そこから『デザート・ファニングSS』による砂嵐を思わせるような連射を叩き込んでいく。
 散った弾が周囲の終焉獣へと命中し、纏めて吹き飛んでいく終焉獣たち。
 ライが馬車から飛び出し、ラダの身体をサッと診察する。
「怪我は……なさそうだな。だったらこっちだ!」
 ライはぴょんと跳び上がると、額の宝石を眩く光らせた。魔術の光だ。それは赤い『チェインライトニング』の雷光となって迸り終焉獣たちの間を荒れる蛇のように通り抜けていく。
「怪我をしたやつがいたら声をあげろよ。すぐに回復するからな」
「リゴールのほうはいいのか?」
「あっちはブラックバレット対策に手一杯だろ。終焉獣チームは俺が担当するんだよ」
 と言っても、今の戦力差を考えるとライが回復で手一杯になるということはなさそうだ。
 せいぜいシキが何発か喰らったかすり傷を回復する程度だろう。
 だが念には念を。ライはシキに向けて治癒の光線を発射する。
「やっほー! 手荒いエンカウントで失礼しますよ!」
 同じく馬車から飛び出てきたのはルーキスだ。
 念のためにと自らに『Astronomia』の術をかけ無効化結界を張ると、集まった終焉獣の塊に『歪曲銀鍵』を発動させた。
「こっちかなー? いや、これ? まあ全部掃除するからどっちでもいいか」
 ヒュッと翳した手のひら。開く二つの魔方陣。
 まるで鍵でも開くかのように指をねじってみせれば、魔方陣が回転して術が発動する。
 終焉獣たちそれぞれの足元に出現した魔方陣から破壊の波動が吹き上がると同時に、その足を地面に僅かに沈め始める。
 逃れようと暴れる終焉獣たちを狙うのは、葵だ。
 『制圧態勢』と『先取態勢』をそれぞれ付与することで自分と味方を強化すると、手にしていたサッカーボールをぽんと放って蹴りつける。
 オーラを纏ったサッカーボールは終焉獣へと激突。その身体を歪め、粉砕し――そこからバウンドしたボールは更なる終焉獣へと激突、激突、激突をくり返していく。
「残りはこっちで何とかするっス、任せとけって」
 戻ってきたボールを軽くトラップしてから更なるシュートを放つ葵。それによって終焉獣たちは残らず粉砕されていったのだった。


 馬車を回り込み、ブラックバレットの様子を見に行ってみれば……こちらは若干の劣勢にあった。
 ヴァイオレットはかなりの傷を負い、リゴールがそれを必死に治癒するという構図。
 どうやらブラックバレットの攻撃力と命中精度の高さがヴァイオレットほどのタンクヒーラーをも追い詰めつつあったということらしい。逆に言えば、ヴァイオレットはこれだけの人手でこの強力な終焉獣を押さえ込むだけの働きをこなして見せたということになる。
 敵もさるもの、味方も強者。そこへ更なる増援が加われば――こちらのものだ。
「色はともかくこの短期間でよく似せたものだが――何とか言ってみろよ。
 傭兵の真似をして、例の軍勢でも雇われる気か?」
「――」
 返答にまごつくように口を動かすブラックバレット。が、それを待つなんて事は無くラダは容赦なく接近、ライフルのストック部分で思い切りブラックバレットを殴りつけた。
 大きくのけぞるブラックバレット。そこへ更なる攻撃を仕掛けたのは葵だった。
「逆転の芽はここで摘み取っちまえ」
 放つのは『フロストバンカー』。氷の杭を出現させた葵は、それを強烈なシュートによってブラックバレットの身体へと叩き込む。
 反撃に出ようとしていたブラックバレットだったが、その一撃の【封殺】効果によって身体を痺れさせ、動きを大きく鈍らせた。
 チャンス、だ。
「やっと合流できた、さーてお手伝いとこうか! 火力があるのはキミだけじゃないんだなー」
 ルーキスが『禍剣エダークス』を発動。高純度の魔力を凝縮させ、宝石を核とした仮初めの剣を作り上げる。それを一閃。と同時に暴走させることで爆発を起こしブラックバレットを派手にふき飛ばした。
 吹き飛ばされたブラックバレットは地面をバウンドしながらも素早く体勢を整え、こちらにむけて銃を乱射。
 対して、リゴールとライが同時に治癒の魔法を展開した。
 連続でぶち込まれる強烈な弾丸のダメージを、強烈な治癒力の連射で癒やして見せたのだ。
「やるな、司祭のおっさん」
「いえ、まあなんとか……!」
 激しい実戦に汗を流すリゴールと、それを称賛するライ。
 ならばと、ヴァイオレットは攻勢に出た。
 それまで至近距離ではりあっていたヴァイオレットは大きく距離を取り、『セレニティエンド』の術を発動。
 優しく微笑みかけるようなその仕草は相手を殺すための術だ。
 ブラックバレットの身体が大きくゆがみ、ぎしりと腕の銃が悲鳴をあげる。
「なら、僕も……!」
 鏡禍は結界の一部を剣のような形状に変形。それを握りしめると、ブラックバレットめがけて突進した。
 抵抗しようと腕を突き出すも、その腕は醜くひしゃげて壊れたばかり。
 ハッとしたブラックバレットに、鏡禍は鏡の剣を強烈に叩きつける。
 バキンと割れて砕け散る破片。
「今だよ、パドラ!」
 シキは『ユ・ヴェーレン』をまっすぐに構え、ソレを察したパドラも二つ名の銃をまっすぐに構えた。
「コレでフィニッシュ!」
 同時に放たれた銃弾はブラックバレットの頭部と胸部にそれぞれ命中し、凄まじい破壊力を持って炸裂。そのボディを吹き飛ばした。
 最高のフィニッシュムーブに、シキとパドラは拳をこつんをぶつけ合わせて笑うのだった。


「「かんぱーい!」」
 ビール瓶を打ち合わせ、パドラやシキたちは乾杯を交わした。
「やっぱりパドラはかわいくってかっこいい最高の友達だね!」
「ちょっ……! かわいいはいらないって……!」
 顔を赤くして手をブンブンふるパドラ。
「でも、ありがと……シキも……かわいい、よ」
「へっ?」
 きょとんとするシキ。その一方で、鏡禍はジュースをちびちびとやっていた。
「にしても色違いのそっくりさんでしたね。
 パドラさんは心強いですけど同じような終焉獣がたくさん出るかもって思ったら怖いなぁ。
 僕らをコピーされても困りますしね」
「そうだな。全くどこまで、何を目指し進化するのかね。こいつらは」
 ラダは今年の新酒を注文して気持ちよく飲んでいる。
「いやーひと仕事終わった後の酒が美味いっスね。
 それはそれとしてよ。
 まだ学習型はどこかかしこでさばってるって踏むと、いつオレ達が真似されるか分かんねぇな。
 ましてイレギュラーズのトップランカーとか尚更だ、油断はできないっスね」
 葵のその言葉に、ルーキスは確かにねと頷く。
「私も前に似たようなことがあったからねぇ。
 学習不十分の偽物だったからまだ対応できたけど……。
 ま、終わったんなら全てよし! あとやることは、勿論酒だー!
 おすすめのメニューある? じゃんじゃん持ってきてー!」
 盛り上がるルーキス。
 その一方で、リゴールは水を静かに飲んでいた。
「この街は俄に活気づいていて、楽しげですね。
 みな、明るい顔をしています。
 彼らの笑顔を、生活を守りたい……。
 未だ力無き一介の信徒に過ぎませんが……そう思います
 この歳で新たな気付きを得られるというのは喜ばしい事です。
 私もまだまだという事ですね」
 そうだろ、と笑うライ。
「しかし、変容する終焉獣の勢いは止まらないな。
 話を聞く限り、色んな所で暴れてるみたいだし。
 今回みたいな出没は、俺達の戦い方を調べるためのものだったりするのか?
 だとすれば、これから終焉獣は更に強くなってくってことになるな…考えすぎであってほしいもんだ」
「では、度重なり現れた終焉獣との戦いのち、この活気に満ちたラサの行き着く先を占ってみましょうか……」
 ラサの郷土お馴染みの飲み物を堪能していたヴァイオレットが取り出した水晶に手を翳し、中を覗き見る。
 そこには奇妙に、滅びの色が見えた気がした。

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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