PandoraPartyProject

シナリオ詳細

正気にては大業成らず!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●アジアンカフェ漣
 ここはシレンツィオ・リゾート。海洋、鉄帝、豊穣、はてはラサ、竜宮からの資本と文化が混じり合う欲望と解放の島。波立つ世界情勢の余波を受けて観光客は減り気味だが、秋の行楽シーズンもあり、ゆっくりと回復へ向かっている。
 そのシレンツィオに、商人ギルドサヨナキドリの支部があることは知っているだろうか。サヨナキドリは、各国での商人の相互扶助と保護・教育の名の下、多くの傘下を持つ経済界において一大派閥となったギルドだ。あの覇竜の開拓へも一役買ったというから、その規模と業績は偉大である。輝かしい勲章は、日々の地道なあきないによって成り立っている。もちろんシレンツィオでも、彼らのあきないは続いている。
 たとえばここ、直営アジアンカフェ「漣」。
 その名の通り、さざなみのようにゆるやかな時間をコンセプトにしたカフェだ。烏龍茶の飲み比べが楽しめるほか、各種飲茶がおいしい。最近では某料理界の重鎮によって軽食メニューも充実した。食の喜びを謳歌できるのはもちろん、この店にはもうひとつの特色がある。
 スケスケアオザイ。
 店長であるうさぎの獣種、カトルカール (p3p010944)を始めとするスタッフたちが皆、きわどいまでの薄衣をまとっているのだ。彼彼女アンノウンらが身にまとうそれは、さながら天女の装い。清楚さとエロティックさが混じり合い、見た者を非日常へ誘うおくゆかしいアトモスフィアが漂う。
 常連客の間では、人混みを避けた時間帯に入り、メニューを見ずにダァホンパオを頼んでゆっくりと味わい、しかるのちお気に入りの店員へ花とチップを渡してチェキをとるのが通の嗜みとされている。

●漣・スタッフルーム
 カトルカールは勤怠表にチェックを入れて、元気な声を張り上げた。
「それじゃ! ミーティング、始めよっか!」
「はい!」
「おっけー」
「……」
「ん、いい返事! でも、もうすこし大きな声出せる?」
「はい!!!」
「おっけーだけど?」
「……」
「よーし、今日のスタッフの点呼を取るぞ! はい、まず僕、店長! カトルカール!」
 びっと手を上げたのは、ほっそりとした美少年だ。もとが珍しい水色の毛皮を持っているせいか、青みがかった淡い青の長い髪と、それに合わせた浅葱のアオザイが儚いまでの美しさをかもしだしている。
「上司(ヒヒヒ)からの派遣だ! つまりミッションだ! 万事全力、零・K・メルヴィル (p3p000277)!」
「はいっ! 今日もがんばるわ!」
 水着+スケスケアオザイのコンボからくる羞恥も、なんかもうふりきった零。ぐっと拳を握る。
「零くんの友達、実力未知数、ほのぼのアルバイター、アルム・カンフローレル (p3p007874)!」
「よろしく、いろいろやってみたいよ」
 ふわっと笑う青年はウォーカー。神の一柱であり、神格を高めている最中だ。その一環として、社会勉強をしているらしい。
「で、銀の瞳の遂行者! アーノルド!」
 頭を抱えてしゃがみこんでいたアーノルドは、顔をしかめたままようやく立ち上がった。
「そんなに600字を虚無へつっこみたいの?」
「黙れ、食い逃げ未遂」
 すぱっとカトルカールから言い返されて、アーノルドはまたしゃがみこんだ。
「……仕事したから自分ご褒美でお忍びへ来ただけだったのに、まさかEMAちゃんに財布スられてるなんて思わないじゃん」
「バイン・ヤ・ロン代は働いてもらう」
「……あとでちゃんと払うから、ほんとだから」
「社会的信用がマイナスなくせに何言ってんだよ」
「……ちくしょう、こんなことなら、もっと食べとくんだった」
「人の金で食う飯はうまいか?」
「働くよ! 働けばいいんだろ!? そのスケスケアオザイを着ればいいんだろ!?」
「よくわかってるじゃないか。ああ、衣装代も合わせて請求するからな」
「タコツボじゃん」
「遂行者に人権があると思ってんの?」
 もう何を言ってもこの世慣れたうさぎ少年には勝てないと悟り、アーノルドはバニーじゃないだけマシかとしぶしぶバイト契約書にサインした。
「さて」
 カトルカールがあなたを見上げた。
「もちろんアンタもがんばってくれよな」

●実践
 カトルカールがシフト表を眺めながら言った。
「えーと、まずはー、食料が足りないからおつかいいってきてくれる? でも遂行者に現金もたせるの怖いな。なんか代案ない?」
「帳を下ろすと、なぜか小麦粉とか卵とかをドロップするてきとうな雑魚が湧いてくるから、そいつらから食材を調達できる」
「意外と協力的だな、アーノルド」
「……バイン・ヤ・ロンがおいしかったから、おまけ」
 え、デレ? デレなのかな……。って零とアルムがひそひそしている。カトルカールはあなたを再度見上げた。
「じゃあ食料調達のために『スケスケアオザイで』バトルしてもらうよ。そのあとは自由にしていい。だが必ずスケスケアオザイは着てもらう!」

GMコメント

みどりです。ご指名ありがとうございます。いま笑いながらシナリオ書いてます。正気でGM業なんてできませんよ!

やること
必須)スケスケアオザイの詳細またはイラストのURL
前半)食料調達バトル
後半)漣で「接客だオルァ!」or「客だが?」

プレイングは8・1・1くらいでいいんじゃないかな!?アーノルドくんはもちろん接客です。

●エネミー
量産型天使
 神の国から降りてくるとされるエヴ●量産機みたいな見た目の天使
 なぜか食料をドロップする
 てきとうに全滅させるとてきとうに帳が晴れる
 戦場ペナルティとかはない

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

名声先は豊穣と海洋です。

  • 正気にては大業成らず!完了
  • のんびりできるのもいまのうちですけん
  • GM名赤白みどり
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年11月21日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
※参加確定済み※
志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
アルム・カンフローレル(p3p007874)
昴星
※参加確定済み※
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
有原 卮濘(p3p010661)
崩れし理想の願い手
カトルカール(p3p010944)
苦い
※参加確定済み※
安藤 優(p3p011313)
君よ強くあれ

リプレイ


「はぁ~。いくら空中庭園を経由してワープできるって言われても、長旅はこたえますねぇ~」
『君よ強くあれ』安藤 優(p3p011313)はソーサーを手にしてコーヒーの香りを楽しんでいた。インスタントだが。とはいえ、最近は練達製のやつが流れこんできているので、馬鹿にできるものではない。
「スケスケアオザイ? よくわかりませんが、皆さん大変ですねぇ」
 優はゆっくりとカップへ口をつけ、一口目を舌に乗せる。かすかな酸味と深い味わい。
 すぱーん!
「なにやってんだ優! アンタも着るんだよ!」
「なんでぼくが!?!?!?!」
 店長こと『苦い』カトルカール(p3p010944)に後頭部を叩かれた優はおもいっきりコーヒーを吹き出した。正面に立ってたアーノルドがコーヒーまみれになる。
「何すんだよ!?」
「おっとこれは着替えないといけないなスケザイに! そうだろ、アーノルド!」
「離せ! いいから離せ! 僕は逃げないから安心しろ!」
『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)が背後からアーノルドを羽交い締めにした。ほっそりしてみえる零だが、筋肉はしっかりついている。体脂肪率が低く、しなやかな青年の肉体からは、香り立つような色気が立ち上っていた。もちろん彼が着ているのは、グリーンカラーのしっとりしたスケザイ。下から覗く水着は、若い体へ張り付いているかのようで、何も隠してないに等しかった。
(……流石に女性に進めるつもりは微塵もねぇが、誰か一人ぐらい俺と同じタイプのアオザイ着て同じ気分味わってくれねえかなって思うんだよな……なんで俺だけ水着セットなの? 水着の時期に提案されたのが運の尽きなのか?)
「どーん」
「うわっ!」
 うしろから頭突された零は振り返り、『崩れし理想の願い手』有原 卮濘(p3p010661)の姿を見て目をむいた。
「俺と同じタイプ!!!」
 いやまさか女性が俺と同じ格好するなんて思わないじゃないですか。後に零はそう語ったという。
 卮濘は出るとこ出てひっこむところはひっこんだ体を、薄衣に包んでいた。むっちりしたおむねとへそしたには、きわどいビキニ。ていうか紐じゃん?
「ふははははは。この日のために肌白くしてきたからな?」
 そこまでやるのか、こいつ本気だと、零は卮濘を前にごくりと固唾をのんだ。卮濘のスケザイは黄昏のような濃い赤。白い肌が燃えたぎる夕日を受けているかのようで艶めかしい。白ギャルチックな見た目の髪に、きちんとかぶったノンラーが映えている。片足をかるくあげ、小首をかしげてウインク。有原卮濘は、自分の見せ方をよくわかっていた。
「どうだアーノルドとやら、私かわいい、最強」
「あーそうだね、美人だねー」
「こっちを向いて言え」
 タオルで顔を拭きながら、アーノルドが答える。
「なんで肌白くするわけ? 黒いほうがいいよ絶対に」
「えっ、私の努力全無視?」
「石炭みたいにつやつやした漆黒のほうがいいよ。にくにくしさが足りないし、触手もあったほうがいい」
「おいいいい、いま脳内で誰と比較してんだ。正直に言え」
 やだよ、とアーノルドはあかんべえをした。絶対誰かと比べただろって卮濘は思った。
 更衣室から出てきた『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は、呆れの混じった吐息をこぼした。その白い、透けるような肌。陶磁器を思わせる白さに、シックで伝統的、そして正統派でファッショナブルなホワイトのスケザイ。黒のオーガンジーに包まれた御御足ときたら、同性ですらため息をつくほどの曲線美。ひとつに束ねた黒い髪が、遊び心とともに揺れている。そして、レースを用いたフェミニンな黒ビキニ。
「どこかで見たことのある遂行者と、どうして一緒に働くのかと思えば、少々斜め上の回答が」
 知った顔がやらかしたらしい。本当に、顔を知ってるだけの間柄だが。ともあれそいつの犯行なので、心苦しい点がなくもないというか。そう考えるあたり、瑠璃は案外世話焼きなのかも知れない。まあ、とにかく。
「……同僚である間は優しくしてあげましょう、アーノルド。次があったら、遠慮なくボコりますが」
「ふーん、僕は強いけどね」
「私の知る物語では、自分でそういうやつは大体において型落ちするものです」
「うるさいやい。氷像にしてやろうか?」
「おうおうおちつけや、アーノルド!」
 間へ割って入ったのは、おお、みよ。彼こそが勇者『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。ハロウィンSDもアオザイ姿だ。すばらしい。漣の依頼と聞き、駆けつけてくれたのだ。筋肉の上へほどよく脂肪が乗った太い体。その肉体をさらに強調しているのが、このスケザイである。清涼感のある水色の下に何度も死線をくぐってきた鋼の肉体、豪快な気風を表すかのような赤いハイビスカス柄が眩しい。影ですらどっしりとしているこのオークには、南国の日差しとスケザイこそがふさわしい。
「ぶはははっ、久しいなアーノルド! 暦と合同訓練して以来か? バンヤロンを美味しく食べてくれてありがとうな!」
「あれ君のレシピだったの?」
「そうよ、この俺よ! 漣のアレンジレシピ考えた甲斐があるってもんだ! オークが考えた豚の皮ケーキってのも洒落が効いてるだろ?」
「……まあ、その、おいしかったよ。ほどよく甘くて、食感も良かったし」
 ぼそぼそ返事するアーノルドに、ゴリョウは破顔した。
「そうかそうか! 楽しんでくれたか! ぶはははは! 料理界の重鎮と呼ばれてそれなりになるけどよ、やっぱり作る側としては、肩書や地位より、うまいって感想がなによりうれしいもんだ! な、優!」
「はひっ!?」
 こっそり後ろを通って抜け出ようとした優を、オークの大柄な手が、がっちり捕まえた。そこに立っていたのは……『芽生え』アルム・カンフローレル(p3p007874)にバケツヘルムを奪われたスケザイ青年だった。だったのだが。
「あれぇ。優君お顔隠れちゃってるよ?」
「わっ、アルムさん、やめてください、いいんです、ぼくはこのメカクレで!」
 アルムの手からあたふたと逃れるのは、ワンサイズ大きなスケザイを着た優だ。真っ赤なスケザイに、白のワイドパンツ。翼を広げた鷹の刺繍が、胸元からふとももにかけて大きく縫い込まれている。鷹を愛でていれば同時に優の細身な肢体も楽しめるという寸法だ。羞恥のせいか真っ赤になっている優は、だぶついた袖で顔を隠す。もちろんスケザイなので隠れちゃいない。結果的に何が爆誕するかと言うと、ぼくっ漢萌え袖目隠れ見た目は青年なかみはショタのテレ顔という超弩級飛び道具である。
「ふわぁ~、なんだか俺、自信なくなってきちゃったよぉ……」
「えっ、そんな、ぼくよりずっと似合ってますよ! アルムさん!」
 そうかなぁとアルムは自分を見回した。青みがかった緑のスケザイが、健康的な白い肌へふんわりと乗っている。それはまるで雪をいただく緑のように神秘的で、聖なるかなすら感じさせる。散りばめられた花模様が、中性的な容姿を際立たせていた。長い、長い耳で冬の輝きを放つカフ。濃い青へ染まっていく灰色の髪、豊かな色彩を帯びた緑の目。優しい、それでいて男らしさを感じさせる手足が、スケザイによってあらわになっている。
(ていうか、ついに俺もか、って感じだよね。最初はなにかの間違いじゃないかと思ったんだけど……)
 でも、とアルムは顔をあげた。
「ゴリョウさんも零君も二回目だけあって気合充分みたいだし……恥ずかしがってたら俺が浮く……!」
 よーし背筋伸ばすぞーと決意したアルムは、ようやく更衣室から出てきた『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)の姿に目を丸くした。
「なにか?」
「いや、すごく堂々としてるなぁって……」
「いや、これでも、逡巡はしたぞ? 衣類とは露出を抑えるものだと思っていたからな。これは衣類の機能を果たしていないのでは?」
 アーマデルは黒のホットパンツをはいている。女性用かと思ってしまうほどキワを攻めたパンツだ。それ以外は、スッケスケだった。普段暗色に身を包んでいるせいか、甘い褐色の肌へスケザイはよく似合っていた。トライバルタトゥーに似た刺繍が全身へ走り、つい目で追ってしまう。伸び盛りのしなやかさと硬質な雰囲気は針葉樹のような深みを感じさせ、スケザイの紺色は夕闇の静けさ。無造作なショートカットの、重めの前髪の下、こんじきの両眼が、月のように輝く。
「なんだかツワモノ感すごいよ?」
「そうか。制服を着ただけでそう言ってもらえるのは奇妙な気分だ」
 アルムの前で襟元を整えたアーマデル、その背後の更衣室の扉が開き、アーノルドがうんざりした顔で現れた。
「30近い男の格好じゃない」
「聞き捨てならないな」
 カトルカールが顎をしゃくる。その薄く、細い、ガラス細工のような肢体。淡い水色のスケザイは甘やかな香りすら漂わせて、年若い少年から店長の風格を感じさせる。そのままカトルカールは語りだした。
「このアオザイは……たしかに、最初は嫌だろう。何を隠そう、僕とてそうだった。いい年した男がこんな服着て接客とか恥ずかしくないわけがない。だが」
 重々しい空気にみんな静かにカトルカールの言葉を聞いている。
「竜宮がありなんだから、スケザイぐらいでギャーギャーいうな! あそこはバニーだぞ、格式ある正装が!」
 もっともだった。もっともすぎてみんなうんうんうなずいた。
「漣のコンセプトを紐解けば、こういうデザインだってのもわかる。シレンツィオは常夏のリゾート地だから、見た目が涼しくてきれいな方がウケが良いもんな。実際、僕のアオザイはたいしたもんだろ。デザイナーには足を向けて寝られないな」
 ま、そんなわけで、とカトルカールは前置きし、ふんぞりかえった。
「此処は立派な僕のシマだ! つまり僕が法律だ! いいな!」


 帳をおろしたアーノルドは、ついで冷気を展開しようとし……カトルカールにぶんなぐられた。
「アホ!? アホなの!? おまえの冷気、味方も巻き込むだろ!? つまり僕らのあれやこれやが下がるだろ!?」
「つい癖で」
「癖で戦場ペナルティつけられちゃ困るんだけど!?」
 らーらーらーららー♪ とかやってる間にもなんか荘厳なBGMが流れ、なんか歪な天使が姿を表した。病的に色が白く、うじゅるうじゅるしていて、冒涜的な見た目である。
「カジキマグロ、いない。よし、OK!」
 アーマデルが先陣を切る。カラフルなカジキマグロは恋人の領地の特産品だ。さすがに神の国まで侵食してないので安心してほしい。美味しくなあれの精神が宿ったアーマデルは、ジャミル・タクティールを連発して天使をばちくそにボコしていく。毒系BSは使わない。うっかりドロップ品を巻き込んで、漣が営業停止になったらまずい。彼にもそんな分別はあった。
 同じくジャミル・タクティールをばんばん打ちまくっている瑠璃。
「卵、牛乳、小麦粉、包装済みアイテムが出てくるとは、見た目に反して便利ですね。理想郷システムの応用といったところでしょうか? ところで遂行者的に、コレ狩っても大丈夫なんですか……? こら、顔を背けない。口笛吹かない。あからさまに話題そらしにいかない」
「あのぉ、瑠璃さん」
「なんですか優さん」
「ぼく、底力系タンクなんですけど、あのキモい天使にたかられなきゃダメなんですかね」
「そうに決まってるじゃないですか、さっさと行ってください」
「うわあああああん、やだあああああ!」
 優の金切り声に反応してやってきた天使に、ガクブルブリザードが刺さる。凍りついた天使たちを零が叩き割っていく。そのたびに引き締まった尻やら、危ないゾーンが白日のもとにさらけ出され……。
「っていうか、これさぁ!」
 ついに零の堪忍袋が切れた。
「動きとともに色々なんか危なくってヤバイんだけれど! 男のハダカで金は取れないっていうけどぉ! スケザイ手当とか有りませんかねぇ!?」
「ない」
「店長非情!!!」
「グッハアアア!」
「ああゴリョウ! 言わんこっちゃない、格ゲーフィニッシュ描写みたいにスケザイがビリビリになってるじゃんかあ! やっぱスケザイ手当いりますって!」
「ない」
「店長お!!!」
 なんて叫んでる零もビリッビリになってた。カトルカールは至極冷静に言う。
「安心しろ、手当はないが、着替えならある」
「店長、そいつは安心とはいわねえんだぜ?」
 ゴリョウはもはや隠しようがなくなったたくましい肢体をさらけだし、ヘイトを稼ぎながら遂行者へ顔を向けた。
「おいアーノルド!」
「なに?」
「この帳の下ろし方教えてくれ」
 戦闘が必要とはいえ、ほしい食材が無料でザンザカ入手できるとか、混沌の食糧事情を根底から変えかねない。アーノルドはちょっと困った顔をした。
「教えてあげてもいいけど、お相手さんが泣くことになるよ?」
「おおう、そいつぁ勘弁してくれ」
「ゴリョウさーん、回復だよぉ~! ほ~ら(なんかかっこいい詠唱)」
 アルムが、俺後衛だもんね、服ビリはないもんねってツラでにこにこしている。にこにこしながらもしっかり食材は拾っていくので有能だ。背中のリュックはもうパンパンになっている。
「よーし、いい感じにグダってきたし、ドロップ回収もこのへんで終わりにしよっかー」
 卮濘が黒歴史ノートを掲げた。
「FBイズ浪漫! 火力イズジャスティス! 倒せばいいんだ倒せばさ! 見とけよ、これがダメージボーナス四桁の破式魔砲だあっ!」
 ……これがさ、わたしの本気。ねえ、すこしは、わたしのこと、振り向いてくれるかな? なーんて、えへへっ♪
 卮濘の乙女心が、帳ごと敵をぶっ飛ばしていった。


 料理をプロに任せることができるなんて、楽だな。しかもそれがゴリョウ殿と零殿だ。勝ったなガハハ、などとアーマデルは鉄面皮の向こうで呵々大笑していた。ところで、彼、料理できるんだろうか。サバイバル知識は豊富そうだから、煮るとか焼くとか灰汁抜きするとか、その辺はできそうな気がする。ただ、おいしく食べるという点にこだわっているかといわれれば、微妙なところだ。
「アーマデルさん、三番テーブルお願いします」
「了解だ、瑠璃殿。そのカードは?」
「お客様の相手をしようかと」
 漣は満員、外へは列ができている。待ち客へ配る整理券で、瑠璃は一芸を披露した。カードを使った簡単なマジックで場をもたせ、キリのいいところでにこやかに席へ案内する。
「瑠璃さぁん」
「なんですか優さん、そんなところでしゃがみこんで。お盆は顔を隠すものじゃないですよ」
「もうむり、無理です、スケザイとか狂気の産物じゃないですか。それを成人男性が着るって……」
「いいから接客してください」
「でもっ、ぼくの中の尊大な羞恥心がっ!」
 瑠璃はいいんですか、あれ、という目でカトルカールを見た。店長は、まあいいんじゃないか、客が照れ顔ごちですって写真撮ってるし、という顔をした。卮濘は、私こんなにがんばってるのにお給料同じなのって遠い目をしている。踊るような体さばきでテーブルの間を渡り歩き、ちょっと遠いお席まではジャンプ。それでいて、料理は一点の崩れもなくサーブする。もちろん完璧な笑顔でだ。
「卮濘さんすてきだなぁ~。あんなアクロバットはできないけれど、俺も接客がんばるよ」
 注文を取ったアルムが、せっせと料理を配る。
「お待たせしましたぁ~。パクチーたっぷりのフォーだよ」
 美味しいよねぇこれ。甘く無邪気な笑顔を添えれば、うしろからつんと裾を引っ張られる。
「……ちょ、ちょっと、引っ張らな、あわわ」
「踊り子さんには手を触れないでください」
 すかさずアーマデルがガードし、アルムはスケザイパージを免れた。このくらいでめげるアルムでもないので、ちゃんと仕事は続ける。
 一方キッチンでは、ゴリョウが新作を並べていた。
「これが今回の目玉のチェーだ! 甘いスープって意味らしいぞ! アーノルド、オメェさんはどんなのが食いてえんだ?」
 ベースと具材がずらりと並んだメニュー表。それを提供された客は思い思いにカスタマイズしたチェーを注文していく。王道でありながら、決まった形式を持たないチェー。よって、客が迷わないように、ゴリョウ印のおすすめがある。人気は、ジャスミンシロップ、これに仙草ゼリー、南国フルーツ、かき氷を盛ったもの。さらには腹が冷えてしまわないようにと、バナナ、タピオカ、そこへ温めたココナッツミルクと牛乳を注いだ濃厚チェーもある。
 零のほうも負けてはいない。
「これがバインセオ、こっちがミークアン、んでカオ・ルー。そしてこれが肝入りのバインセオアレンジ肉まん。総菜パンっぽいだろ。アーノルド、味見してくれね?」
 もくもく食べていたアーノルドが、ぼそりと「おいしい」とつぶやいた。素直な賞賛の言葉に、ゴリョウも零もにんまり笑う。しばらく黙っていたアーノルドが、口を開いた。
「なんで、僕にかまうのさ」
「アーノルド」
 カトルカールが声をかけた。
「遂行者だろうとなんだろうと、漣の門戸は開かれてる。飯食いに来るだけなら、別にいい。あ、小銭稼ぎたいなら連絡くれればシフト突っ込むし、まかないくらいは出してやる」
 また沈黙したアーノルドが、ゆっくりとキッチンのメンツへ視線を合わせた。
「……ちょっと聞きたいんだけど」

●トロッコ問題?
「一人殺すか、三人死なせるか、そういう状況なら、君ならどうする?」
「なんだそれ、トロッコ問題か?」
 カトルカールの返事に「そんな感じだよ」とアーノルドは投げやりに答えた。零が頭をひねるも、すぐに降参した。
「すぐには答えが出せないな」
「そうだよね」
 アーノルドは顔をそらした。
「一人殺すか、三人死なせるか、めちゃくちゃ悩んでた時期があって、そんな時、さんばんめのこたえを神がくだすった」
 ゴリョウが手を止める。
「それでオメェさん、遂行者になったのか?」
 そうだよ、と銀の瞳が揺れた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでしたー!

みなさんのスケザイ姿、心のアルバムにばっちし収めました。ありがとうございます、助かる。

またのご利用をお待ちしています。

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