シナリオ詳細
<神の門>正すべきもの
オープニング
●
われわれは、主が御座す世界を正しさで溢れさせなくてはならない。
ひとは産まれながらに罪を犯すが、主はわれらを許して下さる。
故に、われらはその御心に応えるべく献身するのだ。
――『ツロの福音書』第一節
小さな教会の中で祈りをささげる、シスターと思しき女性。彼女は暫しして祈りを終えたのか、ゆっくりと立ち上がって振り返った。
「――室内で喫煙はおやめなさい」
落ち着いた、しかし凛とした声に、指摘された男性――いや、青年と言ってもいいかもしれない――は肩をすくめた。
「仕方ないじゃないか、僕から煙を取ったら何も残らないよ」
「なら次からは外で待っていていただけますか?」
小さなため息が教会の中に落ちる。2人はそろって外へと出た。男性が煙管をくわえて、それからふぅと煙を吐き出す。一見すれば豊穣に居るような風体の彼は、嘗て煙の精霊種『だった』らしい。
だったらしい、というのは。
「イレギュラーズがこちらへ攻めに来ているようだよ」
「まあ、」
シスターも、男性も、ヒトの理から外れてしまった存在ゆえに。
男性の言葉に眉をひそめたシスターは、くるりと踵を返すと教会の中へと入っていく。暫しして戻ってきた彼女の手には杖が握られていた。
「先にそれを言ってください。他の遂行者も向かっているのでしょう?」
「みたいだよ。でも、わざわざ呼びに来てあげたんだから、感謝してくれたっていいんじゃない? ジゼルちゃん」
心にもないことを。内心ではそう呟きながらも、シスター――ジゼルは「ありがとうございます、ドゥイーム様」と彼へ返した。
彼、ドゥイームは遂行者ではない。彼がここにいる理由も、神の国へ攻めいらんとするイレギュラーズと交戦する必要も、特定の状況でない限りはない。そして今回はその『特定の状況』でもない。
ドゥイームを突き動かすのは、基本的に『楽しいこと』が待っているかどうかだけだ。
「……今回は貴方の心に響く何かがあったのですか?」
「ん? んー、そうだなあ。そうかもしれないね。『あの人』が動いているからというのもあるけれど、イレギュラーズが来ているから」
ふふ、と小さく笑うドゥイーム。彼の脳裏に浮かぶのは、イレギュラーズとなったかつてのオモチャ。
(ああ、会いたいな。弄ったら楽しいことになりそうな気がするんだ)
そんな彼の心をジゼルが知るわけもなく、しかし遂行者たちと同じ意図をもってイレギュラーズを排除しに行こうとしているとも思わない。
「乗ってください」
空から舞い降りた幻影竜にジゼルが飛び乗り、次いで飛び立とうとする他の幻影竜にドゥイームがしがみつく。
「振り落とされそうなんだけど!?」
「頑張ってください。落ちても迎えには行きませんよ」
これ以上イレギュラーズを侵入させてはいけない。より厳密にいえば『多少侵入したところで歴史の修正を止められるとも思わないが、最善を尽くすならば止めるべき』だ。
(天義が『正しく』天義であるために……何者にも邪魔はさせません)
我らが正義だ。悪は総じて挫かなければならない。
●
「ボクはペリドット・ハート。よろしくね」
ローレットにて資料を広げたペリドットはイレギュラーズたちを見渡す。イレギュラーズの幾人かと同じウォーカーである彼女は、ローレットへ属さず聖騎士団の外部協力者として『神の国』や『遂行者』の状況を追っていた。
現在、一部のイレギュラーズが『神の国』へ招待されている。招待と言えば聞こえはいいが、帰りは保証されていない以上、こちらから安全なる帰り道を作ってやる必要があるだろう。
加えて、一度作った道をあえて相手に塞がせる必要はない。このまま喉元まで攻め入り、急所を狙うべきだ。
「傲慢な魔種だから、というべきかな。傲慢であるがゆえに、己が実力を過信しているみたいだよ」
遂行者たちの作戦は、イレギュラーズたちの介入により失敗続きだ。それでも相手には一片の焦りすらも見えてこない。
だが、もし想定よりも此方が強く、追い詰められていると感じさせることができたなら――奥に潜む冠位さえも引きずり出せるかもしれない。いいや、この件を解決するためには引きずり出さなければならない、がより正確か。
「とはいえ相手も此方を侮れるだけの実力がある。ボクも深い場所までは潜入できなかったんだ」
神の国へと通ずる『審判の門』、そして審判の門から続く『レテの回廊』。まずはここを突破する必要がある。しかしレテの回廊には幻影竜なる赤い竜が飛びまわり、炎の息吹で聖痕を持たぬ者を焼き殺さんとしてくるだろう。
当然、審判の門とレテの回廊にいるのは幻影竜ばかりではないはずだ。
「……あと、遂行者らしくない魔種が1人、神の国へ入っていったんだよね」
ペリドットは頤に指をあて、その時の状況を思い出しているようだった。しかしやがて、小さく首を振る。
魔種は遂行者の統一色ともいうべき白を纏わず、代わりに絶えぬ煙を纏っていたという。風で運ばれてくる不快感は軽いものであれど、間違いなく原罪の呼び声の気配であろう。
遂行者でない魔種がいった何の用で現れたのか。あるいは、遂行者として活動するために訪れたのか――いずれにしても、厄介な敵が1人増えたことには変わりないわけだ。
「気を付けてね。遂行者にも、その魔種にも」
●
怒号、剣戟、異言。それから、それから。
飛び交う無数のそれらをかいくぐり、あなた達は走り続ける。門が近づく。門を抜ける。目の前に広がる回廊へ飛び込んでいく。
迷うことなき道を駆けていたあなた達は、しかし周囲を取り巻いた煙に足を止めた。そこに火などないのに、モヤモヤと揺れる煙は不気味だ。
「これは……っ?」
「――やあ、ようこそイレギュラーズ。僕『は』歓迎するよ」
上空からの声にはっと顔を上げたなら、挨拶と言わんばかりに幻影竜が炎の息吹を吐く。間一髪でよけると、もともと立っていた場所で火がゆらりと揺らめいた。
あれが――ペリドットの言っていた『遂行者ではない魔種』か。
改めて空を仰げば、幻影竜の背中に若い男が乗っていた。異質なのは、彼の身体から絶えず煙が起こっていることだろう。
「ドゥイーム様、歓迎しないでください。少なくとも、わたくしは歓迎していません」
呆れたような声に視線を下げると、レテの回廊の反対側から、ゼノクロシアンらしき騎士たちを従えたシスターが歩いてくる。その手にした杖に手をかけ――すらり、と抜刀しながら。
「天義が天義として『正しく』在るために……不正義を良しとさせないために。あなた方に邪魔をされるわけにはいかないのです」
イレギュラーズたちは彼女の言葉に武器を構えた。戦闘の前に対話を、などという悠長はことは言っていられなさそうだ。
「ジゼルちゃんとだけじゃなくて、僕とも少し遊んでくれると嬉しいな。なに、本気でやりあうつもりはないよ」
今のところはね、なんて含み笑いをして。ドゥイームと呼ばれた魔種は手にした煙管をふいと揺らす。
するとどうだろうか。周囲を取り巻いていた煙の一部がむくむくと形を取り出し、不格好なヒトの姿を取ったではないか。イレギュラーズたちは全方位への警戒を余儀なくされる。
その姿を幻影竜の背から見下ろすドゥイームはにぃ、と笑みを張り付けた。
「それじゃあ――楽しませてもらおうか?」
- <神の門>正すべきものLv:50以上完了
- GM名愁
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年10月27日 22時06分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
幻影竜の背から見下ろすその男を見上げて、『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)はわなわなと肩を震わせた。
何故、どうして。あの時確かに――殺したはずなのに。
「どうして……どうして、お前が生きている、ドゥイーム!!」
「そりゃあもちろん、殺し損ねたからさ」
軽薄な笑みが癪に障る。ちゃんと息も脈も止まっていたことも、ピクリとも動かないことも確認したはずなのに。それでも殺せなかったということは、何か細工をしていたということだろう。
(だが、何故死を偽造して潜伏していた? それに、何故ここで出てきた……?)
いいや、そんなことを気にしている場合ではない。今すべきことは回廊の突破であり、魔種が2人もいる以上は其方に集中しなければ。
自己暗示をかけ、チェレンチィは視線を滑らせる。魔種ジゼル、騎士らしい姿をしたゼノグロシアン。上空より降りてくる煙からは人の形をとった何かがゆらゆらと近づいてくる。
「強者との闘いとは……くぅ~ワクワクしてきたぜよ!!」
『特異運命座標』金熊 両儀(p3p009992)はそれらの先、ジゼルを見据えてにっと笑みを浮かべる。
彼女だけではない、どうやらイレギュラーズの中で遂行者側につくと決めた者たちもいるらしいではないか。日銭を稼ぐためにローレットを訪れたが、このような戦いにめぐり合わせるとは運が良い。
「まずは魔種までの道を切り開きます」
「ほいじゃ、周りの雑魚は任せるぜよ! 儂ぁ、魔種に専念じゃ」
チェレンチィに大きくうなずき、両儀は得物を引き抜いた。
(天義が天義として『正しく』在るために……不正義を良しとさせないために……か)
仲間へ支援を施しながら、『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)はだが、と目をほそめた。
確かに以前の天義に本当の正しさはなかったかもしれない。けれどいつぞやの事前を境として、天義という国自体が変わり始めているのも事実のはずだ。果たして、今の天義は――これからの天義は『正しくない』のだろうか?
「遂行者。加えて空には詳細不明な魔種に、竜の爆撃か……」
確かにこれでは潜入に手間取るだろうと『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)は眺め見る。広域俯瞰で見れば、回廊のあちこちを竜が旋回しているようだ。煙は自身らの周辺ばかりに存在しているため、魔種が操っているのだろう。
(でも。だとしても、私たちは止まらない。止まれない)
仲間を救出し、歴史を書き換えさせないために。
何者にも侵されない結界を張った『ベルディグリの傍ら』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)は精霊たちを探して視線を走らせる。
(……いない?)
煙に紛れているからかと思ったが、精霊の気配もしない。神の国であるが故か、それとも幻影竜や魔種たちに恐れをなして逃げているのか。
(もしくは、あの煙を警戒しているのかしら)
幻影竜の背に乗った――チェレンチィと知己であるらしい――男、ドゥイームから発せられている煙はイレギュラーズたちを取り囲んでいる。あまり触らない方が良さそうだと思ってはいたが、精霊が忌避するのであればなおさらだ。
「……アタシたちは、仲間を取り戻すためにここへ来たの。『正しさ』について議論する気はないわ」
金色に輝く水晶の瞳がジゼルを見据える。自分たちの行動を不正義だと断じる権利は誰にも存在し得ない。
「仲間たちのために――ここを通してもらうわよ!」
ジルーシャの言葉と同時、雷を帯びた無数の斬撃が走る。チェレンチィの放った奔流をゼノグロシアンは受け止めたものの、煙人形たちは抵抗する間もなく流されていった。
「あの煙人形、大した力はなさそうですね……」
問題は、煙が周囲を取り巻いているが故に煙人形が出現し続けるということか。羽ばたき続けていれば煙は寄せ付けないかもしれないが、魔種を前にしてそればかりにリソースを割くことは難しい。
(幸いにして、ドゥイームは積極的に戦う素振りはなさそうですが……果たして、何が目的なのか)
彼について何も読めない以上、彼自身も、煙だって寄せ付けるべきではない。何としても仲間たちを守らなければ。
「さて……私が相手をしよう。誰からかかってきても構わない」
敵の群れへと突っ込んでいった沙耶はゼノグロシアンたちを見回す。
煙人形はとてもではないが全てをカバーしきれないし、幻影竜はこの口上が届かない上空にいる。なにより、ドゥイームが何かの拍子に積極的な干渉をしてきても困るのだ。
ゆえに、沙耶が狙うのはゼノグロシアンたち。彼らの剣筋を見ながら、沙耶は器用に紙一重で避けて誘導していく。――と、不意にがくんと足が重くなった。
「っ!?」
目を丸くして下を見れば、足に煙が取りついている。そこに目などないはずなのに、何故だか煙人形と目があったような錯覚を感じた。
「させないよ」
その煙が斬撃に切り刻まれ、消えてゆく。オニキスはあたりの煙人形を一層し、すぐさま魔力を練る。思っていたよりも煙人形は弱いようだが、あたりの煙からすぐさま生み出される様子からして倒してもキリはなさそうだ。
(一番は魔種たちを退けることかな)
大本たる煙の魔種をどうにかできれば良いが、その前にかのシスターをどうにかしなければ、2体同時に相手取るのはリスクが高い。
だが幸いにも、煙を発している大本の魔種は高みの見物である。
(ま、様子見気取りは有難く其のまま様子を見てて貰いましょう)
軽やかにかけ、『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)から舞う様に放たれた槍の大薙ぎがゼノグロシアンたちへ叩き込まれる。
「手の内をじっくり見せてやるのは癪ですもの、早いところ退場してもらいましょうか。勿論、貴方たちにも退いてもらうわ」
「ラインブレイクはランプレーの華ですからね。退けて、突破しましょう」
『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の構えた自動拳銃がゼノグロシアンたちを捉えた。より精密さを増した弾丸が彼らの動きを止めていく。
魔種が2体、そしてその他の敵も存在していること。魔種たちが仲間たちに縁のある人物であること。それらが事情を複雑にしているように見えるものの、状況としては至ってシンプルであり、すべきこともまた明確だ。
この戦いは押し通れるか、あるいは止められてしまうか。このどちらかである。
「まずは、目の前の脅威から片付けるとしよう。ふざけた輩をぶちのめすのは後回しだ」
さらりと挑発をなびかせた『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は、広域俯瞰で見た敵の位置をもとに魔力で敵を吹っ飛ばす。
彼女を前に重さは意味をなさず、沙耶に釣られなかった敵が彼女の方へと吹っ飛ばされていった。そこは味方が集中砲火するポイントだ。沙耶に釣られていようとそうでなかろうと、そこにいるだけで攻撃の雨を浴びることになる。
「煙だろうが何だろうが関係ないわ、全部泥の底に沈めてあげる!」
『優しき水竜を想う』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)の指し示した先がぼこぼこと隆起する。否、おどろおどろしい泥のような何かがゼノグロシアンたちを飲み込まんと大きな口を開けたのだ。
「行って!」
オデットの言葉に仲間たちが走り出す。そちらへと手を伸ばそうとした煙人形は頭上から降り注いだ泥にべしゃりと潰され、形を維持することなく霧散した。
(けれど油断はできないわ)
視線を巡らせるオデット。彼女たちの周囲には依然として魔種の煙が漂っている。姿かたちを撮らない限りは何も起こらないようではある――が、いつ意思を持って動き出すかわからない以上、気を緩めずにはいられない。
加えて、頭上を飛び回る幻影竜もいる。それを両儀は一瞥し、魔種へと視線を向けた。
(本来なら、儂も梅雨払いのつもりじゃったがなぁ)
仲間たちの得手を加味した結果、強者の元へとたどり着くことになった両儀。他のイレギュラーズよりも遅れを取っている――それは召喚された時期なども考えれば致し方ないことと考えられる――が、それならばそれなりの戦い方をするのみだ。
「ジゼル? 言うとったか。さぁ、一緒に斬り合いば楽しむぜよ!」
「わたくしは、斬り合いを楽しいと思ったことはございませんが……お相手いたしましょう」
両儀とジゼルが正面から切り結ぶ。両儀が離れたそこへ圧倒的な速力でゼファーが飛び込み、ジゼルを弾き飛ばした。
「個人の感情を優先するなら、『正しい天義』なんて御免なのよね。どう見ても合わなさそうなツラとナリをしてるでしょ?」
「合うかどうかは、外見に左右されません」
「あら、ご立派なことね」
でも実際そうなのよ、とゼファーは歌うように告げて肉薄する。突き出された槍をかわしたジゼルは彼女の懐に刀身を叩き込まんとした。
(温厚な尼さん、って空気じゃあ無いわね)
最も、珍しいものではない。武闘派なシスターにはいくつか心当たりもあるし、何より相手は魔種である。見かけ通りと思えば痛い目を見るだろう。
「貴女……いえ、貴女達はこの天義が気に入らない?」
「ええ。今も、過去も……不正義に塗れた天義を、誰が好むというのです」
だから歴史を変えなければいけないのだ。だから正しく導く必要があるのだ。傲慢の魔種はさも当然のように口走りながらイレギュラーズたちと切り結ぶ。
ふいに、ジゼルの周囲を昏く重い香りが漂った。鼻をすんと効かせた彼女は、はっとした様子で勢いよく飛び退く。
「あら、『気づいた』?」
ジルーシャがうすらと笑う。逃げ損ねた煙人形は『それ』の吐いた息になすすべなく、さらさらと霧散していった。煙人形たちが居た、そして今は何も居なくなった空間を、強大な魔力の本流が突き抜ける。
「歓迎しないっていうのは、私が居るべきではないからかしら――母よ?」
ロレイン(p3p006293)は静かな口調で、実の母たるジゼルへ視線を向ける。ジゼルはロレインの姿を見て、それからゆっくりと首を振った。
「いいえ。私はイレギュラーズを……誤った正しさを信じる者たちすべてを、歓迎しないのです」
「……誤った正しさ、ね」
小さく呟いたロレインは魔力を練り上げ始める。
母が遂行者として立ちはだかるだなんて思いもしなかったけれど。遂行者が味方に転じるなどありえない。魔種が世界の味方にはなりえない。
だから――いずれは倒すしか、ないのだ。
●
翻す翼を追いかけ、ジゼルの刀が迫る。間一髪でよけたチェレンチィはコンバットナイフとダガーを構えた。その頭上からブレスが迫り、チェレンチィの服を焦がしていく。
「あちらはお任せを」
上空へ視線を映した寛治の銃弾が幻影竜へと向けられる。彼らは空高くを飛んでいるが、寛治にとってそれは障害足り得ない。
「おっと、怖いね?」
ドゥイームは翼を撃ち抜かれる幻影竜を見て驚いて見せるが、本心ではないだろう。あれは自身の乗る竜が狙われていないと気付いている目だ。
「僕を狙わなくていいのかい」
「我々もリスクを背負う必要はありませんから」
「リスクがあるからこそ楽しい場合だってあるさ」
ねえ? とドゥイームが嗤う。背後から熱風を感じた寛治は咄嗟に横へと飛び、自身を狙ってきた幻影竜へ銃口を向けた。
彼の目的は不明だが、少なくとも幻影竜は彼を味方だと思っているし、ある程度の指令は聞いてくれるのか。あるいは、幻影竜が勝手に合わせているのか。
(どちらにしても、面倒ですね)
視界の隅で、回廊の奥からやってきた幻影竜の姿を認める。この竜も煙人形と同じく、倒してもキリがないと見たほうが良さそうだ。
寛治が幻影竜の注意をひきつけ、仲間たちがゼノグロシアンたちを対処しているおかげで、ジゼルと相対している者たちは彼女1人へ集中することのできる時間ができていた。
「何が正しいのか、決めるのはその時を生きてる人間でしょう?」
柔らかな光がジゼルへと急接近する。それを投げつけたオデットへジゼルの視線が向けられた。
「だから時として真実が隠され――」
「――嘘はまことになる。勧善懲悪と言いますもの」
「わかってるじゃない」
ひらりと刃がきらめく。オデットは面白くなさそうに鼻を鳴らした。
死者に口なしというやつだ。所詮は生き残った者の言のみが正当化され、その者が正しく述べない限り、真実は歴史の闇へと葬られる。
「だったら、他者に依存した『正しさ』なんて無いと思うのだけれど」
「同じ方向を見ている者同士であれば、『正しさ』は共有できるのです」
なるほど、依存ではなく共有ときたか。オデットは距離を取りながら高位術式を組む。先ほどの陽光はジゼルへ少なくないダメージを与えたようであるが、未だ健在。あらゆる手を使って更に攻め立てる必要がありそうだ。
(上にいるもう1人が協力的でなさそうなのは、不幸中の幸いかしら)
ロレインは魔力を練る間にちらりとドゥイームへ視線を向ける。幻影竜の背に乗った男はこちらを観察している様子だが、煙をおろす以外に特段何かを仕掛けてくるわけではなさそうだ。
「母よ。教えてもらえるかしら」
娘(ロレイン)に関する予言があったのか。ここでめぐり合わせたこともそうであるが、もしロレインが母のもとへ戻るというような予言がされていないか。
「――"イレギュラーズ"に、教える義理はありません」
「母娘の縁じゃろうに」
息を一つついて、両儀は視線を走らせる。だいぶ周囲に雑魚どもが集まってきたか。そろそろ蹴散らしておきたいところだ――が、ジゼルを巻き込むには味方が多いか。
「ならば、こうするのみよ!」
両儀は自分からゼノグロシアンや煙人形たちの元へと飛び込んでいく。煙人形が腕に、足にと引っ付いて動きを鈍らせてくるが、構うことなく得物を大きく振り回した。
「せいぜい吹き飛ばないよう踏ん張ることじゃな!」
周囲に作り出される暴風が煙人形をかき消し、ゼノグロシアンを巻き込んでいく。頭上から幻影竜のブレスがこようとも、ゼノグロシアンが襲い掛かろうとも、仲間たちへ行かせるものか。
「やれやれ、裏方だけじゃなくて役者として舞台にも上がれとは、ね」
「そう言わないでよ。相手は魔種なんだから、手伝って」
オニキスの言葉にペリドットは仕方ない、と言うように肩をすくめる。ペリドットも全く戦えないわけではないのだから、と言われてしまえば否やとは言えない。まっすぐな回廊で隠密できるような場所は見当たらないものの、確実に倒せる敵を相手取ってもらえれば良いだろう。
「それじゃあ、私はあっちだね」
弾体に魔術を込めた迫撃砲。オニキスの放ったそれはジゼルへの射線を通すように、周りのものを巻き込んでなお突き進む。合わせて汰磨羈が放った魔力はゼノグロシアンへと向かい、そのまま外周の煙をも押しのけていく。
(さて、煙は払えるか――)
一瞬は向こう側が見えた。しかし煙は意思を持ったように動き、煙のなくなった部分へと流れ込んで再びイレギュラーズを取り囲んでしまう。
「なるほど。吐き出す当人に似た、ずいぶんとふざけた煙だな?」
「え、ちょっと失礼じゃないかな?」
「なんだ、自覚がなかったのか」
視線を上げてふざけた煙の元――ドゥイームを見上げる。あの様子だと特に怒ったりはしていない。むしろ、言い返してきたことを面白く思っていそうな節すらある。
(煙を払えないのであれば、無理に其方を狙う必要はあるまい。それよりも狙うべきはゼノグロシアンか)
騎士のなりをしたそれらは、煙人形と違って簡単に倒されてくれるわけではないらしい。しかし元がヒトというわけでもないので、気兼ねなくぶちのめせるといったところか。
「ねえ。貴女、天義を誰が好むのかって言ったでしょう」
ゼファーの槍がジゼルを捉える。敵を封ずる冴えを見せた技に、ジゼルが片眉をひそめた。
「……あなたは好むとでも?」
「ええ。少なくとも、私は過去の天義より今の天義は居心地が良くて好きだわ?」
誰もが気に入るような環境は作り出せないかもしれない。けれどその環境さえも、決して少なくはない人間が命をかけ、漸く切り開いた未来なのだから。
「分かり合えませんね」
「誰かにとっての正義は誰かにとっての不正義だもの。まぁ分かり合えないわよね!」
四象の力がジゼルへ襲い掛かる。オデットは魔眼で彼女を睨み据えながらすぐさま次の術式を構築した。
「でもその正義を他人へ押し付けてくるあたり、傲慢だなぁとは思うのだけど?」
「誰にだって持ち合わせているものですわ。もちろん、あなた方だって」
「――それでも。貴女が押し付けてくるものを、ボクたちは許容するわけにはいきません」
神速の一撃がジゼルへと肉薄する。ジゼルを捉えたチェレンチィは、雷を帯びた斬撃を彼女へと叩きこんだ。
「ッ……わたくしも、それは同じ。正しい天義はあなた方の先にございませんもの」
受け身をとったジゼルがすぐさま斬り返す。前に出たゼファーが得物で彼女の攻撃を受け止めた。その横合いから、膨張した黒の大顎がジゼルを飲み込まんと口を開く。その反動に数歩たたらを踏みながら沙耶はジゼルを見据えた。
「しかし、天義は変化しようとしている。その変化を良しとせず、保守的になろうとするその精神もまた傲慢ではないのかな?」
「変化が良いことばかりではありません。それを止めるのもまた、正しさを知る者の務め」
「それは大層な志ですね」
寛治の抜き打ちがジゼルの肌を朱に染める。続いて汰磨羈の放った魔力がジゼルを後方へと吹き飛ばした。飛ばされたジゼルは受け身をとり、素早く体制を立て直してイレギュラーズへと肉薄していく。
(さすがは魔種ね)
ジルーシャの纏う紫香を対価に、美しき旋律と癒しの霊薬が周囲へと広がる。仲間たちの士気を下げぬようにと立ち回りながらも、ジルーシャは横目でドゥイームを見た。
今のところ彼が動く様子はない。……が、今ばかりはそれが有難い。ジゼルとドゥイームの2人を同時に相手取るのは、いくら優れた力を持つ者が多くとも危険だ。一気に形勢逆転されないよう、今でもいっぱいいっぱいだと言うのだから。
ペリドットが煙人形を次々と屠っていくものの、絶えぬ煙から新たな人形は新しく生まれていく。それを横目に見ながら、ロレインはジゼルへと斬撃で仕掛けていた。母の身体を薄く朱が走る。
「母よ……私は、強くなったわ」
「ええ」
知っていますとも、とジゼルは歌うようにロレインへささやく。娘のそれは、ドゥイームでもゼノグロシアンたちでもなくジゼル1人に向けられていたから。
「貴女が居なかったから、そうするしかなかったのよ」
強くなれば、生きる道は増えていく。世界は弱肉強食だから。
「ええ、ええ。……全ては誤った天義のせいだわ」
ロレインの言葉に、ジゼルが悲しそうに目を伏せた。
「……私は寂しかったわ」
「それなら――」
――母と一緒に来ますか?
ジゼルの言葉にロレインは目を細めて、それからゆるりと否を示す。
「正しい天義は、魔種の存在を許さない」
ロレインも反転してしまえば、それは例外ではない。それがロレインにとって『正しい天義』であるが故に。
そう、と小さく呟いたジゼルは一瞬だけ寂しそうな顔をした、気がした。しかしすぐさまゼファーの槍が振り下ろされ、その真偽を確認することはできなくなる。
「母娘の再開は喜ばしいけど、仲間を連れていくような行為は見過ごせないのよね」
「不正義に染まっていれば、こちらが正しいと考えられないのは仕方がありません。正しきへ導くは当然ではございませんか」
イレギュラーズたちは不正義。魔種をはじめとした遂行者の作り上げる神の国こそ正しい天義であるのだと。ジゼルは自身の信じる『正しい天義』を死ぬまで主張しつづけるだろう。
(母よ……他の何を犠牲にしても成し遂げるべき理念が、その『正しい天義』にはあるのかしら)
ロレインは魔力を練る。
(母よ……『正しい天義』では親の反転という過ちを、どう清算するのかしら)
魔種へ向かって、放つ。
ジゼルを見るたびに引っかかるものを感じて、ロレインは眉をひそめた。
彼女の周りはずっと続く回廊に、取り巻く煙。そればかりのはずなのに。
(……母よ。私は何故、貴女に血の海の光景を重ねて見てしまうの……?)
真っ赤に濡れた光景を。充満する鉄錆の匂いを。そんなものはまやかしであるはずだと思っても、ふと重なるこの光景は――一体?
「数的有利の確保は難しいか」
仲間の邪魔をする敵を最優先で叩いていた汰磨羈だが、倒しても現れる煙人形はどうやっても消えてはくれない。しかし対処していればゼノグロシアンへの攻撃リソースを割かれる。
(邪魔な敵を迅速に叩き潰していくしかない)
だが、倒しにくい敵は上空にも存在するのだ。
「頭上、炎が来るわ!」
オデットの言葉に一同が飛び退けば、圧倒的な勢いのブレスが地面へと叩きつけられる。「お見事!」なんて、ドゥイームが楽しそうに手を叩いて笑う声が煙の向こう側から聞こえた。
(あの魔種は……この期に及んで、特に動きを見せないの?)
ちらりと視線を配ってみるが、幻影竜の1体に騎乗した男は地上の様子を眺めてはいるし、自身へ向いた攻撃や流れ弾はいなしているようだが――それだけだ。戦いを厭うタイプだろうか。チェレンチィがあれだけ警戒している以上、何かはあるとは思うのだが。
「そこまで気にしなくてもいいよ。空気みたいなものさ」
「魔種を空気と言うには……無理があるのでは?」
「そうかい?」
ジゼルの言葉にくつくつと笑うドゥイーム。彼にとっては楽しいかもしれないが、イレギュラーズたちからすれば必死なのだ。どんな動きをしても気づけるようにと沙耶はその様子も広域俯瞰で視線を送る。
その視界に、仲間の背後で実体化する煙人形を見た沙耶は咄嗟に振り返って声を上げる――その前に。
「やはりそう来ますか」
寛治の放った鉛玉が人形の頭を打ち抜き、霧散させる。しかし1体だけではない。次から次へと現れ始めた煙人形たちに、寛治は小さく息をついた。
「歓迎の意を込められている……と捉えるべきでしょうか?」
「そうかもね。いいや、そうでもないかも」
どっちつかずなドゥイームの言葉が空から落ちてくる。煙の魔種らしく気まぐれなのだとでも言いたいのだろうか。
「全く――皆さん、私が多少の時間を作りましょう」
応戦体制をとるペリドットや仲間たちへ向けて言い放った寛治は、戦場のただなかで無防備に立った。その異様な光景は、普段よりもより広範囲へと印象付けられる。
「お客様、握手の順番は守っていただかないと。順番待ちのお相手をさせていただきましょうか?」
ゆらり、と。
煙人形たちがゆらゆらと揺れながら寛治の方を見て、体を向けて、1歩を踏み出す。いくらかのゼノグロシアンたちもまた。
「長くは持ちませんよ」
特段打たれ強いというわけでもなく、加えてこの数だ。寛治の言う通り、長時間任せきりにできるほどではないだろう。
それでも、彼の行動により、イレギュラーズたちはジゼルへと集中するためのさらなる時間を得た。
「まったく、元気な尼さんだこと!」
姿勢を低くしてゼファーの放った大薙ぎを避け、下段から切り上げるジゼル。体をねじってそれを避けたゼファーは再び得物で応戦する。
多少前方を遮る程度では、この魔種を抑えることはかなわない。それならば純粋に火力で体力を削っていくほかないだろう。
「外見で判断するからではございませんか? かつては騎士として剣を握っていましたの」
「成程? この実力は魔種になったからだけじゃないって事ね」
聖職者らしからぬ体術も、得物のさばき方もそういうことであれば納得がいく。かつての彼女はきっと真面目や厳正といった言葉が似合う、天義らしい国民だったのだろう。
(けれど、ここで負けるわけにはいかない)
傷を自ら癒したオニキスが、最大の一発を放つべく魔力を込める。これまでのどの攻撃よりも濃く、圧縮させて。
「超高圧縮魔力充填完了。皆気を付けて!
マジカル☆アハトアハト・クアドラプルバースト――発射(フォイア)!」
全力の攻撃がまっすぐに飛んでいき、ジゼルを飲み込む。煙の向こうまで届いて消えた魔力の本流の、先に。
「まだ立っているとはね……」
ゼファーが軽くひきつった笑みを浮かべる。さすが魔種というべきか、末恐ろしいものである。
だが、肩で息をしている魔種に余裕があるとは言えない。加えて、彼女の死角からゆらりと何かが立ち上がった。
「キェェェェェェェイ!!!!」
突如として挙がった叫び声とともに、ジゼルのシスター服が朱に染まる。顔をゆがめたジゼルは、それでも機敏な動きで次の攻撃を避けるとカウンターを仕掛け、大きく後退した。
「……力尽きてはいなかったのですね」
「そう、見せたのじゃよ。儂ぁ、練度が低く――弱く、感じたじゃろう?」
弱者など早々に排することができる。確かに、他のイレギュラーズは両儀よりよほど強いだろう。ゆえに、その油断を逆手に取ったのだ。
両儀もボロボロであるが、パンドラによる奇跡でどうにか立っている。倒れた時に戦っていた相手が意思疎通のできるヒトであったならバレたかもしれないが、煙でできた人形やゼノグロシアンと相対していたことも幸いだっただろう。
――が、ジゼルから受けたカウンターにこらえきれず膝をつく。ぱたぱたと朱が地面へ零れ落ちるが、両儀は一太刀浴びせたことに、にぃと笑みを浮かべていた。
慌ててジルーシャが香術で両儀を癒しにかかると同時、不意にドゥイームが動いたのを見て、チェレンチィは地面を蹴った。天へと力強く羽ばたき、ドゥイームの揺らした煙を吹き飛ばす。
チェレンチィへ牙を剥こうとした幻影竜は、オニキスの放った攪乱弾が爆風で上空へと押し返した。
「皆さんに……手出しは、絶対させません」
「手出しはしないよ」
にぃと笑みを浮かべたドゥイーム。眼前へと煙が押し寄せ、咄嗟のことに視界を奪われたチェレンチィは、すぐ脇を抜けていく風の流れにはっと振り返った。
「っ!」
とっさにジルーシャが破邪の結界を張ろうとするが、それよりも早くドゥイームが宙を抜ける。かすめた香りにドゥイームが興味深げな表情を浮かべた。
「へえ……香りを媒介にしているんだ。面白いね」
「あら、アタシの香りが気になるならもっと包まれてみる?」
気力は底をつきそうであるが、そんな様子を表に出さず。ジルーシャが微笑みを浮かべて見せれば、ドゥイームはにこりと笑い返した。
「気になりはするけれど、また今度にしよう。ね、ジゼルちゃん?」
「……ええ、そういたしましょう」
視線を向けられたジゼルは小さく息をつき、ゆっくりと立ち上がる。その傍らに立ったドゥイームに、汰磨羈はそっと視線を向けた。
(あの煙管……奪うなり壊すなりできるか?)
今の自身の状況と、仲間の状況と、敵の状況を加味する。魔種たちを倒すことはできなくとも、その手に持つ小物ひとつを破壊することが可能か否か。
(いや、)
それを叶えるには、あまりにもドゥイームに余力がありすぎるか。
「じゃあね、イレギュラーズ」
「待て……っ」
煙の波がイレギュラーズを押しつぶそうと広がる。咄嗟にジルーシャが皆を守ったものの、目を開けていられずに視界を一瞬まぶたの裏に閉ざした。
チェレンチィもまた目元に腕をかざすが、その耳元に声が忍び込む。
「――またね、僕の玩具」
「っ、ドゥイーム!!」
反射的に翼を広げ、羽ばたきで煙を押し返す。
短くて長い、そんな時間ののちに。
「……消え、た?」
ドゥイームの姿はなく、ジゼルの姿もなく。地面に残った焦げ跡や血痕が、戦いを過去のものとして残している。
「態勢を立て直しに行った、ってとこかしらね」
「ああ。私たちも一旦は退いたほうが良いだろう」
ここは制しただろう? と汰磨羈はゼファーへ視線を送る。ゼファーはそうねと肩を竦めてみせると、仲間へ視線を移した。
魔種たちが態勢を立て直す前に踏み込む必要があるだろう、が。今の自分たちでは逆に返り討ちに遭いかねない。
行きましょう、という言葉にイレギュラーズたちは頷く。皆が踵を返す中で、ロレインは回廊の奥を振り返った。
(……母よ)
次会う時には、あの違和感に、重なったあの光景に、答えが出るだろうか――?
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、イレギュラーズ。
先へ進みましょう。
またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
愁です。お久しぶりです。天義です。
地上だけでなく、空中からの襲撃にもお気を付け下さい。
どうぞよろしくお願いいたします。
●成功条件
・魔種の撃退
●情報精度
このシナリオの情報精度はC-です。
信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
不測の事態を警戒して下さい。
●フィールド
神の入り口たる審判の門を抜けた先、レテの回廊です。
戦うには十分な広さを有しています。
●エネミー
・ドゥイーム
傲慢の魔種。元は精霊種であったようです。遂行者ではありません。
戦闘が始まった時点では、直接戦う気はないようです。幻影竜の1体に乗って皆さまの戦う姿を眺めています……が、彼の発する煙がレテの回廊まで下りてきています。
その煙がどのような効果をもたらすのか、全貌がつかめません。
・ジゼル=フォン=ノーザンブルグ
傲慢の魔種であり、遂行者のひとり。過去は天義貴族であり精鋭の女騎士、そして敬虔な聖職者であったと彼女を知る人は言うでしょう。
ロレインさんの母ですが、ロレインさんはこのシナリオを通してその事実に気づいても、気づかなくても構いません。
天義が正しく天義であること。そのために遂行者として歴史を正そうとしています。
個としての戦闘能力は物理・神秘とも非常に高く、逆境に立たされるほど勢いを増す強敵です。
・ゼノグロシアン×10体
遂行者ジゼルの生み出した騎士たち。人が狂気に陥り、『異言(ゼノグロシア)』を話すようになったわけではないため、倒せば消滅します。
それなりの強さを持ち、見た目通りの戦い方で仕掛けてくるでしょう。
・煙人形×??体
レテの回廊へ降りてきた煙より作られたひとがたの何か。
イレギュラーズへ掴みかかり、動きを鈍らせようとしてきます。
・幻影竜×??体
赤き竜です。回廊周辺を飛び交っており、聖痕を有さない者を焼き払います。また、そのうちの1体はドゥイームを乗せています。
降りてきて戦うことはしないようですが、不定期にイレギュラーズたちへ向けて炎の息吹を仕掛けてきます。
●魔種
純種が反転、変化した存在です。
終焉(ラスト・ラスト)という勢力を構成するのは混沌における徒花でもあります。
大いなる狂気を抱いており、関わる相手にその狂気を伝播させる事が出来ます。強力な魔種程、その能力が強く、魔種から及ぼされるその影響は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』と定義されており、堕落への誘惑として忌避されています。
通常の純種を大きく凌駕する能力を持っており、通常の純種が『呼び声』なる切っ掛けを肯定した時、変化するものとされています。
またイレギュラーズと似た能力を持ち、自身の行動によって『滅びのアーク』に可能性を蓄積してしまうのです。(『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と逆の効果を発生させる神器です)
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
また、原罪の呼び声が発生する可能性が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
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