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シナリオ詳細

ブラディブルク銀行襲撃計画

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ブラディブルク銀行とは鉄帝に存在する地方銀行である。
 規模としては決して大きくなく、まぁよくある程度の施設なのだが……
 しかしそれは表向きだけの話。
 実はこの銀行は――『裏』の組織と繋がりがあるという。
「裏?」
「要はマフィアの金庫番になっている、と言った所か。それから壊滅したはずのバルナバス帝派残党とも繋がりがある……という未確定情報もある」
 集まってくれたイレギュラーズに語るのはゲルツ・ゲブラーだ。
 要は薄暗い組織と密接な関係にあるのがブラディブルク銀行。
 鉄帝国保安部は色々と調査を行っているらしい、が――
「中々尻尾が掴めなくてな。そこでイレギュラーズに頼みたい事がある。
 ――ブラディブルク銀行を襲撃してくれ」
「証拠を掴め、と?」
「いや金庫から可能な限りの資金を奪取してほしいんだ。つまり……」

 『銀行強盗してほしい』という事である。

 銀行に、マフィアなどとの繋がりがある証拠が保管されているとは限らない。だが多額の金が保管されているのは間違いないのだ……ならば運営資金となっているソレ自体を奪取してしまえばマフィアらの弱体化に繋がるのは必然。
 あるかないか分からないものよりも確実な効果と成果を求める。
 だが保安部がそんな強引な突撃をする訳にはいかない。曲りなりに治安機関だ……
 故に何でも屋たるローレットに白羽の矢が立った訳である――!
「やれやれ。泥を被れ、と」
「そう言ってくれるな。まぁ、とはいえ薄汚い金を正常に戻すんだ……
 お前達の悪名が高まる事はあるまいよ。こっそり着服したら話は別だが」
「はいはい」
 ともあれ重要なのは可能な限り銀行から金を持ち出す事だ。
 幸いにして襲撃前に準備する時間はたっぷりとある。
 馬車を用意してもいいし、大量の袋を用意しておいても良いだろう。
 そして後は実際にどう襲撃するか、だ……
 裏から隠密作戦で侵入していく事も可能だろうが、それなりの技能や工夫が要求される。
 いっそ表から堂々と覆面でも被りながら行くのも手か――? 正に『強盗だ、金を出せ!』と映画ばりに正面玄関を制圧し、銀行員らを脅し付け金庫を開けさせる。騒ぎが起こればやがてマフィアの手の者が駆けつけてくるだろうが、全部ぶちのめして強引突破も実に鉄帝魂溢れると言えよう!
「保安部の権限で現地の警察を援護させる事って出来ないのか?」
「それは難しいな。現地にはマフィアと繋がっている者がいないとも限らん……事前に話しておくとバレる可能性がある。情報は外に漏らしたくないな……ただ、マフィアや警察の介入を遅くさせる事は不可能ではない。俺が外で工作をする必要はあるが」
「ふむ……」
 そしてゲルツ自体も援護はしてくれるそうだ。
 二つの手がある。ゲルツも内部に突入し、イレギュラーズの動きを支援する事。
 保安部が大々的に介入する訳にはいかないがゲルツ一人ぐらいならば支援出来るが故に……そしてもう一つは外部に残り、マフィアや警察が銀行に辿り着くのを遅くする工作援護。どちらでも好きなようにしてくれとの事だ――
「いずれにせよ具体的な作戦は任せるよ、イレギュラーズ。
 元々は無辜なる民から搾取された金だ……必ず取り戻してくれ」
 ゲルツは告げる。国家に属さない君達だからこそできる事があるのだと。
 あぁ――さて如何に『銀行強盗』をしようかと思案を巡らせようか。

GMコメント

●依頼達成条件
 ブラディブルク銀行から可能な限りの資金を奪取する。

●フィールド・シチュエーション
 鉄帝に存在するブラディブルク銀行です。
 この地は裏の組織――例えばマフィアやかつての新皇帝派の残党など――と繋がりがあるとされています。皆さんにはこのブラディブルク銀行に強盗に入ってもらいます。

 可能な限りの資金を奪取し、脱出してください!

 規模としてはそこまで大きな銀行ではありませんが、地下にだけは大掛かりな金庫があります。物質透過などでは擦り抜ける事が出来ない分厚さです……破壊も容易ではないでしょう。銀行員に脅しをかけてロック解除の為の手順を吐かせるなど、なんらかの対策が必要そうです。

 襲撃時刻は昼でも夜でも選べます。
 昼の場合は一般人や銀行員もいますが警備員の数が少ないです。
 夜の場合は視界が悪くなりますが、警備員の数が増えます。

 その他「こんな事が出来るんじゃないだろうか?」という作戦を実施してみても構いません。直接的な戦闘力よりも非戦などの技能の方が重要になるかもしれませんね。

●敵戦力
・警備員×複数名
 銀行のあちらこちらにいる警備員です。
 銃などを所持しています。戦闘力はそこそこ程度で、左程強くはありません。

・銀行員×複数名
 銀行に勤めている者達です。
 マフィアと繋がっている者や、無関係な者など色々います。
 金庫の開け方を知っているのは銀行員の誰かでしょう。

●ゲルツ・ゲブラー
 鉄帝国保安部に属し、ラドバウ闘士でもある男です。
 内部突入の援護か、外部で強盗発生の感知を遅らせる工作を行うかが出来ます。

●その他
 なお依頼成功時……こっそりと少額着服する事も可能です。プレイングで記述してください。依頼成功時、売却用のアイテムを入手出来ます。ただし着服した場合付与される名声が「悪名」となります。
 特に何も記述がなければ着服は行いませんのでご安心ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • ブラディブルク銀行襲撃計画完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年10月09日 22時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
エマ・ウィートラント(p3p005065)
Enigma
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶

サポートNPC一覧(1人)

ゲルツ・ゲブラー(p3n000131)
鉄帝国保安部員

リプレイ


 イレギュラーズ達は件の銀行前に集っていた。
 それは勿論自分達の私腹を肥や……違う。この国の未来の為に、だ!
「……大丈夫だよな、お前達?」
「ゲルツ。何を心配していますの? 私だってこの国の未来を大事に思っていますもの。よーく考えてごらんなさい……奪ったお金を着服するだなんて、そんな事をするはずがないでしょう? 私のこの目をしっかりと見て、お分かりにならなくて?」
「まさかゲルツ君、ヴァリューシャを疑ってるのかい?
 はぁん? それはヴァリューシャに失礼ではないかい?
 君の要請があったからここまでやって来たんだよ? 信じるのが誠意じゃないのかい!」
「いやしかし、うーん。いやうーーん。うーーーん……」
 でもゲルツは心配だった。だって集まったメンバーの中には『絶対に嘘をつかない信用できる女』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がいたから……って、なんだこの称号は!? すごい虚偽が含まれている! が。そんな疑惑の目を潰すように『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は言の葉を畳みかけるものだ。
 クッ、このヴァリューシャ全肯定者を信じていいのか本当に……!?
 だが確かに信じる事は大事だとゲルツは納得した――瞬間。

「バカめ隙ありッ今ですわ! 喰らいなさい――メガネミサイル!!」
「ヴァレーリヤなぜ俺の足を掴ん、ぐあ――ッ!!」

 銀行の窓ガラス目掛けてヴァレーリヤがゲルツをぶち込んだ! 頭から、頭からだ!
 あぁゲルツが痙攣してる! 思わぬ衝撃を受けたのか意識が無さそうだ……
 ――ヨシッ!
「見まして、マリィ? 迂闊にも背を見せて油断した面倒な見張りを始末して、ついでに突入口も確保する私のファインプレー! さぁ今の内ですわ! 金庫をさっさと開けるのですわ~~!!」
「ひゃっはー!! さすヴァリューシャ!!
 メガネミサイルだなんて素敵だね! 新技かっこいいよ!!
 はー! ヴァリューシャが天才すぎて生きるのが辛い!!
 ヴァリューシャ成分を吸って落ち着かないと……」
「――マジすっごい凡庸で俗な陰謀が隠れ潜む事もなくドストレートに突っ込んできたわねコレ」
「わわわ。ゲルツさんが酷い目にあってる気がするんだけど……いや、見なかったことにしよう。これも作戦だよね。うん」
 そして突入。『オラー! この袋にさっさと金を詰めなさい!』と本職さながらの行動を見せる某イレギュラーズを『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)や『暖かな記憶』ハリエット(p3p009025)は後ろから見据えていた。
 いやある意味見なかった事にしたいが、まぁこの依頼自体にはちゃんとした正当性があるのでアレもやむを得ない演技だと信じよう! 『ホントに大丈夫かな』なんて困惑するハリエットだが、とにかく後に続いて銀行強盗だ!
「な、銀行強盗だと!? しかし此方には偶然にもご高名なエッダ殿が……!」
「ぐあーこれはダメであります。ホールドアップであります。へるぷみー」
「エッダ殿!?」
 銀行員が振り向いたその先には――既に内部に一般客に扮して潜入していた『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)がいた、が。速効降伏した……!?
 当然それは演技。そう強盗犯の人質になるための、だ。
 いいかよく聞いて欲しい。曲りなりに治安維持機関が手出しはマズいと言うなら軍籍をも持つ自分が参加するのもマズいのでは? と言う訳でエッダちゃん神算鬼謀タイムの末に導き出された結論が……そう、コレ!
 エッダ自身が人質となる事である――!
 こうしておけば『あのエッダが人質になるような強盗犯』として銀行側も無用な抵抗はしてこないだろう。ん? 人質になるようなタマかって……? 細かい事は良いんでありますよ。
(――人って自分の見たい物だけ見るものでありますし? それになにより)

 ――正面突撃しか知らない馬鹿と呼ばれたくない!
 ――諦めろ。それはこの地のお国柄だ――

 気絶している筈のゲルツの声が脳髄に響いた。コイツ気絶しながらツッコミを……!?
「……ゲルツ。窓破りに使われながら、しかし、それでも魂が、生きている、のだな……」
 さすればエッダ同様に一般人の中に紛れ込んでいた『金の軌跡』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)が雑に捨て置かれたメガネミサイル(ゲルツ)の介抱を一応行っておこうか。あとで着服――げふん。お小遣い――を見逃してくれるかもしれないし。

「み~! み~! へるぷみー! ごしゅじーん!!><;」

 瞬間。なんか見知った声が――『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ!
 しかしその恰好は!?
「私の名はたぬきち。エクスマリアちゃんのペットだぽぉん☆
 無害で可愛い、お手も待ても伏せも出来るアイドルペットだぽぉん☆」
「と言う訳でコレが今日の私達の玩具、たぬきちね」
「誰がたぬ、そ、そうだぽぉん☆ よろしくだぽぉん☆」
 着ぐるみ着込んだ怪盗アラーイ・タヌキキャットの姿であった――!
 説明しよう。汰磨羈はやむを得ない事態になると魂の均衡と誇りを引き換えに『たぬきち』になる事が出来るのだ! \たぬ! 着!/ の果てに今日の設定はごしゅじん(エクスマリア)のペットで、はぐれて迷っちゃった、とーっても可愛いうるうる目のたぬきだぽぉん☆ 
 ――これも銀行側を油断させる為に必要な処置。
 だから正気に戻る訳にはいかない。ゼファーの言に一瞬たぬきちから汰磨羈に戻りかけたが戻ると(心が)死ぬので生存本能が無理やりたぬきちモードへと! ぽぉん☆ ごしゅじん~どこだぽぉ~~ん!
「おぉ、ヨシヨシ。皆、抵抗は、無用だ。
 恐らく、下手に抵抗すれば、皆殺しにされる可能性も、ある。
 このたぬきちも……犠牲になってしまう、かもしれな、い」
「そうでありますな! というわけで大人しく相手の言う事に従って待て誰じゃ今ドツいたのゴルァ!!」
「イヤー! エッダ、私、私ですわ!
 お待ちになって冷静に、あッ! アッパーが私の顎を――!」
「あ、ヴァリューシャ~! 大丈夫、傷は浅いよ――!」
 あーエッダさんがヴァレーリヤさんを殴り返した! これ以上ない程の美しいアッパーによりヴァレーリヤが天を舞い、あわあわとマリアがキャッチを試みる。あ、失敗して下敷きに!
 最早大混乱の極み。騒ぎを聞きつけ警備員達が駆けつけてくる、が。
「ふむ、皆様はっちゃけておりんすなあ。愉快の極みと申しましょうか……さて。
 お呼びでないお歴々が訪れたのなら――相応の対処が必要でごぜーますでしょうねぇ」
 所詮地方銀行の警備員如きが歴戦のイレギュラーズに抗えようものか! 『Enigma』エマ・ウィートラント(p3p005065)の放った邪悪を罰する光によって薙ぎ払われていく――ついでにそこの強盗犯たちも邪悪判定で薙いでいいかもしれない。ダメ?
 さぁとにかくだ。順調に警備員達は無力化しながら、人質役だったはずのエッダはヴァレーリヤを締め上げて、たまきちは『ごろにゃ~ん♪』と甘え続けている。
 ……よし、順調だな!
 このまま金庫に突き進むとしよう――! 順調だって言ったら順調なんだ!!


「――オラッ! さっさと金を出しなさい!
 この世に珍しい白たぬきが血を流すところを見たいのかしら!
 いいのかしら? 鉄帝動物愛護団体が黙っちゃいないわよ!
 こーんなに愛らしい白ぽんたぬきが犠牲になったと知ったらねぇ!!」
「ぽお~~ん! たすけてぽぉ~~ん!!」
「うう。このままでは、たぬきちが。たぬきちのふわふわな、命が、失われてしまう」
「くっ、なんて卑怯なッ!!」
 そんなこんなでたまきちの首根っこ掴んでゼファーは声を張り上げる。槍をたまきちに突きつけ、動物好きらの同情と愛護団体の圧力が掛かるぞと脅しかけるのだ……!  傍にいるエクスマリア渾身の演技も加われば、その行動は真に迫るもの。
 誰が疑おうか。この面々が繋がっているなど――! いや疑うか? 疑う気もするな、なんか怪しいもんな……てか何故たぬきが此処に……?
「いいから協力しなさいよ。汗水垂らして働くのも結構ですけど、だからこそ、こんな突飛もないペイデイがあっても許されるとは思わない?」
「な、なにぃ……?」
「アンタはこの銀行の事情、知ってる側でしょ? なぁにちょっとだけ協力しなさい。そしたらちょいと高跳びして他所に逃れれば足なんて付かないわよ。誰も彼もがハッピーってね」
 同時。ゼファーは様子が他とは異なり冷静に眺めてそうな行員に目を付けようか。
 裏に手を染めているのならば、薄暗い欲望があるだろうと。
 金の誘惑。戦利品の横流しを約束して協力を要請するのだ――
 それでももし金庫開けを渋るのであればハリエットが鋭い眼光を向けようか。
「ここ、金庫だよね。開けてくれないかな? 悪いようにはしないよ、たぶん。
 うん――優しい口調の内に従ってくれると、助かるかな」
「そうさ。私達が、いやヴァリューシャがニッコリしている内が、君達の命を保証する時間だよ! さぁさぁお金を詰めたまえ! さっきから言ってるけど、元々ヴァリューシャのお金なんだから君は気にせず袋に詰めればいいんだ。なーんにも心配する事は無いよ。安心して、君達はお金を返すだけなんだからね」
「な、なにを言っているんだ……!? ここのお金は預かったもので――ぐぇ!」
「うるさいなぁ、ヴァリューシャのものだって言ってるじゃないか!」
 半ば脅し。半ば説得で銀行員に金庫を開けるのを強制させる――!
 そして開けばもう用無しだ。マリアは手刀と共に煩い事言ってた銀行員を気絶させて……袋の中に詰め込んでいこう。ヴァリュ、違う。酒代、違う。この国の未来の為に!
「待て、お前ら! そこの金塊に触れるな! それは只の金塊では……」
「おやぁ? 只の警備員が只の金塊でないとご存じとは……やはりこの銀行が碌でもない連中と繋がりがあるのをご存じのようですねぇ。ま、無駄でごぜーますけれど。歯向かってくるのなら其方の財布も頂戴いたしんしょうか――」
 出しておくんなまし。出せ。
 金庫の扉を突破せんとした所へ駆けつけてくる警備員達をエマは再び一蹴。満面の笑顔――と言っても目は笑っていないが――でぶちのめして『説得』していこうか。うん。後はよーくわかってくれた警備員かはお金も預かっていこう。うん。これぐらいかまいやしぃせんで。
「あー、ヴィーシャを追いかけていたらたいへんなものをみつけてしまったー。
 どーしたものでしょうかー……いやこれはよそーがいで、こまったでありますー」
「う、うぅ……ハッ。此処は一体、皆、今状況はどうなって……」
「――ようやく起きたでありますかゲルツ。今はプランB真っ最中!
 ゲルツは外の警戒を。情報統制と臨機応変な対応を!」
 プランB――? やっと意識を取り戻したゲルツ、を。白々しい演技を行いながら金庫に踏み込んだエッダは即座に指示を飛ばして外に追いやらんとする! だって奴が見ていると横領……ゴフン。回収がやりにくいではないか!
 と言う訳で邪魔者を退けて略奪タイム!
 お金や金塊やら宝石やら、おうおう随分ため込んでるなぁ。へへへ。
「これで奪ったお金は、根こそぎ私達のものでございますわ〜〜! さあ、この袋一杯にお金を詰め込みなさい! これが福袋になるか死体袋になるか、貴方達に選ばせて差し上げますわ〜!」
「ひぃ~~! なんなんだコイツらは~~!」
「おほほほ、そうそう。お利巧さんにしていたら解放してあげますからね。お金を詰め終わったら馬車まで運びなさい。言っておきますが妙な真似をしたらタダではおきませんわよ。明日の鉄帝湾に何か浮かぶニュースが出てほしいというなら別ですけど!」
「大丈夫! 悪いようにはしない。ここにいる人達は皆善良なイレギュラーズだからね。安心するといい――ほら、サボってないでキリキリ詰め込むんだよ! お仕置きが必要なのかな?」
「あ、悪魔だ――!!」
「悪魔ァ? そもそもだね! この世全てのお金はヴァリューシャの物なんだから着服もクソもあるものか! ヴァリューシャが使い、ヴァリューシャが回収する。それが世の真理さ! はん! これだから物を知らない者は困るんだよ……!」
「まぁ、まぁ。二人共。やりすぎないように、な。
 必要以上の恨みつらみを買っても、詮無い事だ」
「皆、普段よりなんだかイキイキとしてない?
 絶好調というか、なんだか、こっちの方が本職のような……
 気のせいだよね? ね?」
 ノリノリで悪人の演技……演技? を行い、人質をも使って効率的に金庫を荒らしていくヴァレーリヤにマリア。ハリエット君、安心してくれた前――全部演技だからね(迫真)。
 ヒャッハー! と行動していく二人――を諫めるのはエクスマリアか。
 猛獣使いの心得を宿すエクスマリアにとってヴァリューシャ、マリア(猫)を統制するなど容易い事だ……あれ? この二人、動物扱いされてる? ん? ともあれ過剰に銀行側を挑発しないようには気を付けておいて……その時。
「皆、脱出を急げ! 外から応援が駆けつけてきたようだ、包囲されるぞ!」
「はいはいこっちも確認できるでごぜーますよ。
 騒ぎを聞きつけた憲兵か、それともマフィアか……なんにせよ、そろそろお暇の時間で」
「なるほど、な。さて、それでは。
 仕事は頑張ったのだし、少しばかり、お小遣いをもらっておこう、か」
「待て! 簡単には脱出させんぞ――!」
 ゲルツが大声を張り上げた。そう、銀行の騒ぎが外に知れ渡ったのである。
 さすればエマやエクスマリアは脱出の準備を急ぐものだ。一応不殺の意志を込めた一撃によって道を切り拓かんとする――それでもマフィアたちも威信にかけて逃さんとするのか立ち塞がって来る数も多い!
 ――で、あれば。
「ぽん、ぽん、ぽぉん」
 なんか変な気配がした。アレは、なんだ! 鳥か、天狗か、いや――!

「ひとーつ、マグロ特盛ねこまんま。
 ふたーつ、天かす山盛りたぬき蕎麦。
 みっつ、綿あめ洗わない。
 盗んでくれよう、怪盗アラーイ・タヌキキャット☆」

 ウインクと共に決めポーズ。怪盗アラーイ・タヌキキャット、推参ッ!
 ……決まったぽぉん☆ ふふ――オイ。どうして誰も彼も固まってるんだぽん?
 『なんだアレ?』『狸か?』って? ふふふ――
「おっるぁあああああ――!! 全部吹っ飛ぶぽぉおおおおおん!!」
「ぎゃ――!!?」
「今よ、たぬきちが引き付けてるわ! 馬車に飛び乗って!!」
「追いかけて来る人は――痛いかもしれないけれど、それぐらいは覚悟してもらおうかな」
「ああ! ハハハ! そら、感電したくなければ諦めるんだね!
 それでも来るなら――虎の恐ろしさ、十分に味合わせてあげよう!」
 たぬきち。やけくそアタックで敵を薙ぎ掃う!
 同時にゼファーも壁へと一撃。逃走経路を確保し、更にハリエットが追い縋る敵の脚を撃ち貫いて時間を稼ごうか。更にはマリアも雷撃を用いて空爆援護。広範囲に被害を齎しつつ、馬車に至らんとするのはパンチ一発てしてし猫パンチ!
 そうしていれば皆次々と到着し、馬車を街中へと走らせる!
 途中でゲルツは降りて憲兵らに『話を付けてくる!』と別行動を行おうか。
 ――よし丁度いい。ゲルツがいなくなったのなら、へへ。
「山分けタイムでありんすねぇ。金塊でもくすねましょうか」
「ええ! こっそり着服したら悪名が高まる……それなら正々堂々と着服しますわ!」
「ハッ! そんな手があっただなんて……流石ヴァリューシャ!」
「え、いいの? え、え、え?」
 勿論よくないよ、ハリエットさん!
 エマ、ヴァレーリヤ、マリアがこっそりと袋の中からあれこれを取り出そうか。正当な報酬以外は貰わないとハリエットは固辞する――あぁ。昔の自分なら、きっとポケットに一杯お金を詰め込んでいたのだろうけど。今は、違うから。
「アッ。流れで一緒に馬車に乗ってしまった。人質の設定だった筈が……まぁいいか。ここならぽっけないないも簡単……オイ。ヴィーシャ? 今何しようとしたぁ? その手に持ってるメイスはなんだぁ???」
「まさかゲルツに続いて私達も気絶させれば――なんてねぇ?
 そんな事を……考えてたんでしょうねぇ。悪いんだけど、警戒してないと思った?」
「あっ。あっ。エッダ、ゼファー、なんですの! これは、そう。ちょっと背伸びしたかっただけで……放しなさい! 苦楽を共にした味方を始末するだなんて、貴女達に人の心は無いんですの!? があああ! お待ちなさい、簀巻きにして馬車から突き落とそうとなど」
「おっと、ヴァリューシャあぶなーいぽん☆」
「あー!? ヴァリューシャぁぁぁぁぁ!? なんてことを!? ヴァリューシャが何をしたって言うんだ! 鬼、悪魔! ヴァリューシャはただ純粋な気持ちで取り分を増やそうとしただけだよ!」
 マリアも叩き落しておこうかしら、なんてゼファーは冗談めかして思考しようか。そう、エッダやゼファーを気絶させて金塊をあれそれ……しようとしたので、後ろを警戒していたゼファーによって即座にアームロック。
 エッダからは冷徹な目を向けられつつ、たぬきちによって馬車から落とされたのである。
 あー! まぁマリアが追いかけて行ったので大丈夫だろう。タブン。
「やれやれ。全く油断ならない奴らだぜ……」
 ため息一つ。なーにはともあれマフィアたちの追撃も振り切れそうだ。
 後はこのままゲルツに別地点で引き渡すだけ。

「…………」
「大丈夫か、たぬきち。迫真の、演技だったぞ。ぽん」
「ええ。たぬきち様のおかげで、鍋の食材が沢山買えそうです――
 メインの食材は決まっておりんすよ。ね、たまきち様!」
「やめろエクスマリア、エマ。たぬネタを振ってきた奴等は呪っておくぞ。私は違うんだ」

 さすれば全ての終わりを察して正気を取り戻す汰磨羈。
 ぐったりと、こんな感じ『_(:3 」∠)_』に燃え尽きている。
 プライドと引き換えに多くの注意を引き付けたのだ――
 誇れ。怪盗アラーイ・タヌキキャット!
 世界は君の再登場を――きっと待っているんだから!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

「あれ、少なくないか? なんか持ち出す時より少ないか? 気のせいか?
 信じていいんだよなイレギュラーズ……!?」

 ――以上。全てが終わった後のゲルツの一声だったとか。
 と言う訳でお待たせしました。ありがとうございました!!

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