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シナリオ詳細

<英雄譚の始まり>新人魔法使いモニカの依頼

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 プーレルジールのとある村。
 村のはずれにある古びた家がなにやら騒がしい。敷地の外から興味本位で覗いてみれば、まだ幼さの残る顔立ちの少女が、家の中を一生懸命に掃除している。
 この家は住む者がいなくなり放置されてから久しく、そのため賃料が安くまだ稼ぎの少ないこの少女のような年頃の子でも借りることが出来たのだろう。
 数日かけて積もった埃を掃除し経年劣化していた壁や床を応急処置すると、少女は家の外に一枚の看板を立てた。
 そこに書かれていたのは「モニカのアトリエ」の文字。
 このプーレルジールという世界には魔法使いと呼ばれる者たちがおり、魔法使いは魔法によってゼロ・クールというしもべ人形を作ることが可能なのだ。
 ゼロ・クールは個体ごとに様々な特性を持ち、家事や荷物運びなどの雑用をこなす者から、武器を持って外敵と戦う者まで様々となっている。
 プーレルジールの住民たちはそれぞれの目的に合ったゼロ・クールを作成して貰い、魔法使いはその対価を得る。アトリエとはつまり、魔法使いが開いているゼロ・クール販売店のようなものなのだ。
 そして、このモニカという少女がアトリエを開いたということは、魔法使いでありゼロ・クールを作成可能という事でもある。
 だが、モニカはこの業界に入って間もない新人である。何か大きな実績があれば話は別だっただろうが、なんの実績もない年若い少女が作るゼロ・クールというと、ちゃんと動くのか暴走しないのかといった不安からかなかなか依頼人は現れない。

「暇だー!!」

 最初はすぐに客が来てくれると思っていたが、看板を立てただけで来てくれるなど考えが甘いと言わざるを得ない。数日かけて遂にそのことに思い立ったモニカは、どうしたら客が来てくれるのかを考える。

「やっぱり、見本みたいなのが必要よね。
 最初の一体がちゃんと動いていれば、皆も安心して依頼できるだろうし。
 でも、いざ作るってなるとどんなの作るか悩むなぁ~」

 客からの依頼であれば注文を基に作ればいいのでそこまで苦労はしないが、今回は完全なオリジナルを作ることになる。
 雑用用か戦闘用か、それとも観賞用か。あぁでもないこうでもないと、店の奥にある作業スペースで設計図を書いてみたり素材を組み合わせてみたりしながら、暫く引きこもって作業を続けているとその時は訪れた。

「あぁ! 素材がない!!」

 作ってはやり直しを繰り返していた結果、一部の材料が無くなってしまったのだ。なんとか補給しなければならないが、せっかくの第一号は一般で買えるような素材ではなく質の良いものに拘りたい。
 どうしたものかと考えていると、モニカはある噂を思い出した。


 プリエの回廊。そこはプーレルジールの中心であり、地下へと伸びていくダンジョンの中に出来た美しき回廊である。
 そこには数多くのアトリエが並んでおり、大部分の魔法使いがここ拠点としているが、その中にアトリエ・コンフィーという場所がある。
 そこには多くの「お手伝いさん」が存在し、依頼をすれば困りごとを解消してくれるという。

「本日のご依頼を紹介します」

 アトリエ・コンフィーの案内嬢を務めるのはGuide05、通称ギーコと呼ばれるゼロ・クールだ。
 その日届いた手伝いの依頼書を並べると、それぞれがどういった内容の依頼かを説明していく。

「こちらは新人魔法使い様からのご依頼です。
 見本用ゼロ・クールを作成するにあたり古代遺跡で素材を採ってきて欲しいとのことです」

 その中にはモニカからの依頼も含まれており、その依頼を紹介すると遺跡の地図や魔物の情報を記した紙を幾つか添える。
 依頼の詳細を確かめ自分ならばなんとか出来るだろうと判断した「お手伝いさん」たちは、この依頼を受ける事をギーコに伝え、指定された古代遺跡へと向かうのだった。

GMコメント

●ご挨拶
今回は新たに渡航可能になった異世界プーレルジールでのシナリオです。
よろしくお願いします。

●目標
 ロックゴーレムの核を回収する

●フィールド
 古代遺跡「岩人のねぐら」が今回の舞台となります。
 プーレルジールの平野部に存在する遺跡で、草原の中に大小さまざまな岩が人為的に並べられたような場所であり、大昔には何らかの儀式場だったのでは? という噂がありますが、今回はその辺の事情はあまり関係ありません。
 岩で出来た魔法生物系の魔物が多く現れることからこの名前が付けられました。
 開けた屋外であり天候も良好であるため、障害は前述の岩が攻撃や視線を遮ることがあるくらいでしょう。

●エネミー
 ロックゴーレム×1
 体長3メートルほどの巨大な岩製ゴーレムです。
 巨体で重量があるため反応・回避・EXAは低いですが、HP・物攻・防技は高めとなっています。
 なぜか『滅び』の気配を纏っています。
 今回の依頼では、このロックゴーレムの核を回収することが目的となりますが、核は人間で言う心臓の位置にあります。

 ロックスタチュー×4
 一般的な人間と同程度の大きさをした、彫像型の魔物でロックゴーレムの下位種です。
 騎士型や魔法使い型など形状は様々ですが、姿を象っているだけで個体ごとの能力差はありません。
 能力傾向はロックゴーレムと同様ですが、全体的にロックゴーレムよりも一回り弱いです。

●人物
 モニカ
 今回の依頼人です。
 師匠の下から独り立ちしたばかりの新人魔法使いで、経験が浅いため腕前はそこそこですが伸びしろはあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <英雄譚の始まり>新人魔法使いモニカの依頼完了
  • GM名東雲東
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年09月06日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ


 アトリエ・コンフィーの「お手伝いさん」として依頼を受けたイレギュラーズは、受注時に渡された地図を見ながら平原を歩き、件の遺跡を目指していた。
「さて今回の仕事は、ロックゴーレムを倒して核を回収する事だ」
 どうやらそれがゼロ・クールの素材になるらしい。と『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が依頼内容の確認のために言うと、『蒼剣の秘書』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は顔をほころばせる。
「新しい事を始める夢に燃える若者……とっても素晴らしい事なのだわ!」
「試作も頑張っているみたいだし、ぜひ応援したいよ!」
「モニカ君のこれからのためにも、バッチリ依頼をこなしてあげましょう!」
 そんな若者ならば精一杯手伝いたいという華蓮に同意するように、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が続き、『蒼穹の魔女』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)も頷いている。
「ゴーレムの核。これがゼロ・クールの核に……」
「ぶはははッ、良い素材ゲットして良いゼロ・クール作ってもらわなきゃあな!」
 依頼書に添えられていた目的の素材であるロックゴーレムの核を記した図解を見ながら、『愛を知った者よ』グリーフ・ロス(p3p008615)は小さく呟く。
 どうやら、ゼロ・クールという存在になにか思うところがあるらしく、新たなゼロ・クール誕生のためにこの仕事をやり遂げなければと静かに奮起していたのだが、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)はそれを聞き逃さなかったらしい。
 盛大に笑いながら、依頼を頑張ろうとグリーフの背中をぽんと叩く。
「状況を聞くに客が来ないのも当然ともいえるが……」
 皮肉屋めいた言い回しをする『狂言回し』回言 世界(p3p007315)ではあるが、なんだかんだ言っても依頼を受けているのであるから、助けたいと思ったのは間違いないのだろう。
 自身の経営している店の現状と重なる部分があるらしく、仲間意識を覚えてしまったのかもしれない。
「見えてきたノネ! ……なんというか、思ったよりも殺風景デス?」
 話ながら歩いていると目的地の古代遺跡が見えてきて、『高邁のツバサ』エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)が真っ先に気付いて声を上げた。が、その外観を見て首を捻る。
 依頼の資料ではこの遺跡が大昔には儀式場だったらしいという記載があり、壮大な何かを期待していたのかもしれないが、過去がどうであれ現在は岩が平原の中で摘み上がっているだけの場所であり、不自然に岩が積み上げられているのは気になるものの、宗教的な飾りや紋様などはなかったのだ。
 それはさておき、今回の依頼はここでロックゴーレムの核を入手することだ。装備の確認などを済ませると、イレギュラーズは遺跡の中へと脚を踏み入れるのだった。


 イレギュラーズが周囲を警戒しながら遺跡の中を歩くと、何人かが足を止めた。
「音が聞こえるな。重いものが動いているような……」
「あー。あっちも気付いてるっぽいな。こっちに向かってる」
 常人離れした鋭い聴覚を持つ義弘が静かに言うと、世界もその敵意を感じ取っていたらしく気配が近づいていることを仲間へと伝えた。
「あれが依頼のゴーレムですね」
「スタチューも何体か連れてるな」
 眷属化させた鳥を飛ばしたグリーフと上空に視点を設置し俯瞰できるイズマが、より正確な位置と数を確かめたところ、目的であったロックゴーレムとそのお供らしきロックスタチューの姿が確認できたのだ。
 会敵までは間もなく。イレギュラーズはそれぞれに武器を構えて待ち受けることにしたようだ。
「ぶはははッ、随分と硬そうじゃねぇか石頭ども! ちょいとどっちが頑丈か比べてみようぜ!」
 岩陰からロックスタチューたちが姿を現したその瞬間。ゴリョウが口では笑いながら、しかし決して油断なく鋭く睨みつけると、その敵意を感じ取ったらしいロックスタチューが意識を向けた。
「さあ、しばらく私のお相手をしてもらうよ!」
 ロックスタチューから数秒遅れて姿を現したロックゴーレムにはアレクシアが対応する。
 薔薇を模した杖を振るうと、その花弁が舞い散りロックゴーレムに鋭く突き刺さると共に幻影を見せて、アレクシアに対する敵意を増幅させる。
 ゴリョウがロックスタチューを、アレクシアがロックゴーレムをそれぞれ引き付け、互いに離れるように位置取ることで分断に成功したのだ。
「かしこみかしこみ、どうかお導き下さい……」
「消耗は気にせず攻めてください」
 華蓮が祈祷の言葉を唱えると、イレギュラーズは追い風に似た後押しを受けたような感覚を覚え、頭上に輝く円環を浮かばせたグリーフがその光を周囲に広げ、生命力と魔力を同時に供給すれば、攻撃を担うイレギュラーズたちはその勢いのままに攻勢に出る。
「手早く済ませマショウ!」
「どれだけ硬くてもやりようはあるってな」
 翼を広げて飛び上がったエステットが拳銃を乱射すれば、ゴリョウへと迫ろうとしていたロックスタチューたちに銃弾の雨が降り注ぎ、直撃を受けた箇所が音を立てて砕け散っていく。
 同時に、世界が眼を見開き怪しき眼光を放つ。魔眼の輝きに射貫かれたロックスタチューはまるで感電でもしたかのように体を震わせた。
「ふん!」
 そこへ突っ込むのは義弘だ。全身に力を込めて肥大化させた筋肉と共に突撃し、ロックスタチューの硬い岩の身体をものともせずに砕いていくと、更にイズマが追撃を仕掛けた。
 漆黒の刀身に星屑の煌きを宿す細剣を指揮棒のように振るえば、どこからともなく苛烈な旋律が広がっていく。
 その音色はロックスタチューの感覚を狂わせ、自傷や停止を誘発させるがそれだけでは終わらない。隙だらけとなったところに細剣の切っ先を向ければ、魔法陣が広がり圧縮された魔力の奔流が解き放たれて飲み込んでいく。
「その程度じゃ俺は落とせないぜ?」
 イレギュラーズたちの攻勢を受けたロックスタチューたちだが、流石は岩石の魔物といったところか。通常の生物であればこれだけの傷を負えば立っていられないだろうが、岩石であるがゆえに痛覚がないのか気にも留めずに攻撃を繰り返す。
 剣、槍、弓、杖、体と同じく岩で出来たそれらの武器をゴリョウへと叩きつけてくる。だが、ゴリョウの守りは鉄壁であった。
 ゴリョウ自身の硬さに加えて、密かに展開していた対物理魔法障壁によって完全に防いでいるのである。
 イズマの魔法で表面に霜が降りて動きが鈍っている上に、全く攻撃が通じていないにも関わらず闇雲にゴリョウに攻撃を続けるロックスタチューなどイレギュラーズの敵ではない。
「雑魚の相手はこれくらいにして、そろそろ本命に行くぞ」
「はぁああああ!」
 世界が両腕を広げると、権限せし四体の神獣がロックスタチューの一体に襲い掛かる。燃やし、凍らせ、狂わせ、圧し潰す。四つの力に耐えきれなくなったのか岩の身体に罅が走ると、脆くなったその体に拳が叩き込まれ完全に粉砕される。
 その拳の主は言わずもがな、義弘であった。両の腕を振り回し、群れるロックスタチューを次々粉砕していくのだ。
「これで終わりだ」
 最後にしぶとく残った一体も、イズマの放つ絶対零度の魔力砲に飲み込まれれば小売りの彫像へと姿を変え、次の瞬間には粉々に砕け散ったのだった。


 先にロックスタチューを倒す事を選択したイレギュラーズだったが、その間にアレクシアは単身でロックゴーレムを引き付けていた。
 しかし、ロックゴーレムの猛攻に晒されたにも関わらず、傷らしい傷を受けることなくその役割を完璧にこなしている。
 幻覚を見せる魔法の花弁と物理的な衝撃を吸収してしまう魔法障壁によって、ロックゴーレムの攻撃を完全に無効化しているのだ。
「魔女の護り、そう簡単に破れるとは思わないでね!」
「かしこみかしこみ、どうか私達の敵を掴んで離さないで……」
 そうして防御に徹していると、どうやらロックスタチューを全滅させることに成功したらしい。次々と仲間が合流し加勢する。
 先陣を切ったのは華蓮。白百合の装飾が施された弓を引き絞ると、神威の込められた矢が放たれロックゴーレムの顔面に突き刺さる。と、間を置かずして放たれていた第二射が寸分の狂いもなく同じ場所に突き刺さり、その衝撃によって巨大な岩の身体がぐらりと傾いだ。
「さっさと核を渡して貰おうか」
 その隙に世界が鋭く眼光を放つと、その輝きにロックゴーレムが貫かれる。傷こそ小さく表面を削るだけだが、本命はそこに込められた術式である。
 体を蝕む術式はロックゴーレムにも有効だったようで、その抵抗力を奪っていく。
「ぬぅん!!」
 イレギュラーズからの攻撃を受けてロックゴーレムが反撃に岩の拳を振り上げると、義弘が正面から迎え撃つ。大地を揺るがす巨大な拳に、己の拳を叩きこんだのだ。
 激しい衝突の余波が周囲へと広がるが、ロックゴーレムも義弘もその場から動かず相手の拳を押し切ろうと更に力を込める。
 正面からの力比べに勝ったのは――義弘だった。拳を打ち合わせた箇所からロックゴーレムの腕全体に罅が入り、そこから送り込まれた闘気が内側から爆発。ロックゴーレムの腕が打ち砕かれた。
「代わりましょう。少し休んでください」
「ありがとう! それじゃ、お言葉に甘えて」
 アレクシアの幻覚魔法が切れたところで、ゴーレムはグリーフに狙いをつけたようだ。それを察知したグリーフは、アレクシアと役割を入れ替えるようである。
 左胸に埋め込まれた赤き秘宝の宿す魔性を最大まで引き出すと、その魅力に取りつかれたロックゴーレムにはもはやグリーフしか見えていないようだった。
 砕かれた右腕に代わり、健在な左腕でグリーフを鷲掴みにしようとするが、その手に連続して衝撃が走り僅かに弾かれた。エステットが拳銃の引き金を引いていたのだ。
 一発の銃弾で動かせるのは僅かな距離ではあるが、素早い連射によって何度も撃てばグリーフから反らせる事が出来る。
「なんかいやーな気配がするんだよな、コイツ」
 空振りに終わったロックゴーレムに剣や槍といった様々な武器が突き刺さる。といっても、それは世界が生み出した幻影であり、物理的な攻撃力は一切持たない。
 だが、そこに込められているのは数多の呪い。突き刺さった部分からその呪いの炎が燃え広がり、ロックゴーレムの全身を覆っていき、体内を巡る魔力を侵し、体表の罅割れから放出させるのだ。
「念には念を入れておきましょうか」
 世界によって呪われたロックゴーレムだが、呪いの手はまだあった。グリーフが手を翳すと、ロックゴーレムの足元に黒い渦上の呪いが広がり、そこから伸びる影のような無数の手がその足を掴んで歩みを阻む。
 その間に対物理障壁の展開を済ませたグリーフは、再び仲間への生命力と魔力の供給を開始した。
「ようデカブツ! 俺とも遊ぼうぜぇ!」
「いやいや、私が相手になるよ!」
「このまま私とでも構いませんよ?」
 やがて、ロックスタチューとの戦いでの消耗を回復させたゴリョウが追いつくと、ロックゴーレムはゴリョウ、アレクシア、グリーフの三人に囲まれる。
 いずれも劣らぬ猛者であり、その守りは容易く抜けるようなものではない。
 どれだけ暴れようとも、その三人の誰かが確実に受け止め決して他への被害を出させない。
「もうそろそろ終わりっぽいかな?」
「核を壊さないように気を付けるのデス!」
 守りの合間にアレクシアが杖を振るうと黄色い花弁が舞い散り、それとタイミングを合わせてエステットが再び銃弾を連射する。
 一枚一枚が刃物のように鋭くなった花吹雪の中を、いくつもの銃弾が通り抜けその全てがロックゴーレムに襲い掛かるが、やりすぎては目的である核ごと砕きかねない。
 そのため、胸部を避け頭や左腕、脚に傷が増えていく。
「大人しくしてもらいましょうか」
「逃がさないのだわ」
 逃げようとしてももう遅く、もはやロックゴーレムには勝ち目はない。
 昏き闇を凝縮させた腕を召喚すると、グリーフはその鋭き爪でロックゴーレムの体を抉り、華蓮の放った光輝く二本の矢は再び頭に突き刺さる。
「フィナーレといこうか」
「これで、終わりだァ!」
 鮮烈な音楽を奏でたイズマが、その響きによって動きを止めたところへ魔力による砲撃を放てば、極低温の冷気によって凍りつく。
 そしてそこへ振るわれるのは義弘が放つ渾身の拳。既に限界間近であったロックゴーレムはこの連撃に耐えきることなど出来るはずもなく、胴を残してそのほとんどが砕かれたのだった。


 ロックゴーレムを討伐したイレギュラーズは、早速その核の取り出しを始めた。
 作業を担うのは華蓮。魔法生物相手にどこまで通じるかは未知数だが、科学と工学の知識を修めているため、繊細なパーツの取り扱いには自信があったのだ。
「よかったのだわ、核は無傷だったのだわ」
「あ。それを少し貸して貰っていい?」
「出来れば私も」
 激しい戦闘となったが、皆が意識的に核付近への攻撃を避けたため、核には傷一つなく最高の状態で依頼人へと渡せそうだ。
 華蓮が状態の確認を終えると、アレクシアが元気よく手を挙げてグリーフもそれに続いた。
「ん~。特に変わったところはないか……」
 戦闘中にも世界が感じ取っていたが、ゴーレムは間違いなく滅びの気配を纏っていた。それが素材に何らかの悪影響を与えているのではと考えたアレクシアだったが、どうやら倒した段階で滅びの気配はロックゴーレムの体から抜けていたようだ。
 受け取った核を調べても、危険な気配はなく依頼人には安全な物として渡せそうだった。
「完全に眠っているようですね。
……あなたが新たな命として再び生まれる時を楽しみにしています」
 続いてグリーフだが、こちらは無機物の意思を読み取れる事を活かしてその声に耳を傾けようとしたようだ。しかし、戦闘によって消耗したのか、核は沈黙しており僅かな意思も感じ取れない。
 だが、これも依頼人がゼロ・クールとして蘇らせれば意思を取り戻すはず。その時を思い浮かべ、暖かな微笑みを浮かべるのだった。


「コイツが依頼の品だ。それと、あんたあんまり食ってねぇだろ? こっちはおまけだぜ!」
「うわぁ! 美味しそう!」
 アトリエ・コンフィーに戻ると、イレギュラーズはゴーレムの核を納品するのだったが、待ちきれなくなっていたモニカがその場にいたため、そちらへ直接渡すことにした。
 そしてその際には、ゴリョウが特製の料理を振る舞ってあげることにしたようだ。制作活動へ没頭していたためか、モニカは最近食事を摂っていなかったようで顔色が悪かったのだ。
 絶品なゴリョウの料理に舌鼓を打つモニカに、エステットとイズマが近付く。
「見本用モデルを作りたいなら、能力バランスがパッとした見た目で分かる方が良いのネ」
「ほうほう……」
「迷ってるなら、例えばモニカさんを補佐する個体はどうだろう?」
「なるほど……。二人ともありがとう、参考にしてみるわ!」
 二人ともモニカが製作に行き詰っていると聞いて、どんな方向性で作ったらいいのかアドバイスしたようだ。
 ゴリョウの料理を綺麗に平らげたモニカは、二人の意見も参考にして作ってみると笑顔でアトリエ・コンフィーを後にすると、イレギュラーズもまた依頼完了ということでその場で解散することとなったのだった。


 その後、アトリエ・コンフィーにモニカから感謝の手紙が届いた。
 無事に見本用ゼロ・クールが完成し、繁盛とはいかないまでも少しずつ客が来るようになった、と。
 それは、こっそりと世界が行っていた口コミによるステルスマーケティングや、イズマが録画させてもらっていたモニカが真摯にゼロ・クール製作に取り組む様子の映像が広まったためでもあるだろう。
 未来の大魔法使い――になるかもしれない少女の、これからの活躍に期待しつつイレギュラーズは今日も「お手伝いさん」として依頼に励むのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

核は完璧な状態で取り出されたため依頼人も満足しています。
お疲れさまでした。

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