シナリオ詳細
<英雄譚の始まり>未知なる洞窟に鉄を求めて
オープニング
●プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)より南西へ
プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)より南西へ進むと、とある低山地帯が存在する。
低山とはいえ、立派な山であり、その腹の内には鉱物資源を蓄えている場所だ。
そこでは幾人かの職人、或いはゼロ・クールたちが、鉱物資源の採取を行っていた。今日も新たな採掘地点を求めて、大きな丸太を柱に拵えて、新しい穴を掘り進めていたわけだ。
「そろそろ、この山も堀つくしちまうものかな」
と、職人の一人が言う。だいぶ、山のはらの内を掘りつくしてきた。元々大きな山ではなかったから、何年もの時間をかければそうもなるのは間違いない。となると、そろそろ閉山だろうか。
「最後に、でっかく当たるところにぶつかるといいんですけどね」
別の職人が苦笑する。蝋燭の最後の火、ではないが、派手に頑張ってもらいたいものだ。まぁ、腹を掘り進められた山自身は、人間の言葉に苦笑しているかもしれないが。
とにかく、そんな世間話をしている最中、があん、と音が響いた。どうやら、『開通』したらしい……いや、おかしい、と職人たちは思った。元々、この先は埋まっているはずなのだ。つまり、土や石、鉱石などが満載であり、『開通』、つまり『別の道に通じることなどはあり得ない』。
「マッピングミスか? どこにつながっちまった?」
職人たちが慌てて手元の地図を見るのへ、
「いえ、この先は間違いなく新しい場所です」
と、答える。
「……つうことは、俺たちの知らないうちに、誰かが洞窟を掘ってたってことか?!」
職人が叫んだ瞬間、作業用のゼロ・クールの少女が吹っ飛ばされて、職人の足元に転がった。
「おい! どうした! 大丈夫か!?」
無表情のままこくこくとうなづく少女が、
「大変です。おそらく、魔物の巣につながったものと予測できます」
淡々とつぶやく。見れば、洞窟の先から、ギラギラとした瞳の輝きが見て取れる。そこにいたのは、例えば毛むくじゃらで、巨大なモグラのような魔物や、コウモリのような魔物、或いはかつてこの巣に迷い込んだ死者のものか、スケルトンのそれすらもある!
「やべぇ! おい! 全員、逃げるぞ! でかい荷物よりいのちが最優先だ! ゼロ・クールもだぞ!」
職人がそう叫ぶのへ、人々は大慌てで走り出した。すぐに巣から、大量の魔物たちがあふれ出して、職人たちを追い掛け回し始めたのである――。
「という状況だと伺っています」
そう、ゼロ・クール『Guide05』、ギーコと呼ばれる少女がいった。
「こっちでもよく聞く話だけど」
あなたの仲間である、ローレット・イレギュラーズが声を上げた。
「やっぱり異世界でも、鉱山ほってたら魔物の巣に~なんてあるんだねぇ」
「どこにでもいるんだろうなぁ、魔物ってのは」
仲間の一人が苦笑する。確かによく聞く話だが、職人たちにとってはたまったものではあるまい。
「今回の『依頼(おつかい)』ですが、この鉱山の奪還になります」
「魔物たちを全部追い払うのね?」
イレギュラーズの一人がそういうのへ、ギーコが頷いた。
「それから、スポーン・オーブの破壊も」
「何それ?」
「昔、わるい職人がいたずらに設置してしまった、魔物を呼び寄せる道具だそうです。魔術調査の結果、その存在が発覚したのですが、魔物の数が多いため近寄ることができなかったと伺っています」
「迷惑な奴ね」
苦笑する仲間に、ギーコはにこりと笑った。
「皆様もそうおっしゃっています」
「えーと、じゃあ、洞窟に入り込んで……スポーン・オーブを破壊する、が優先でいいか?」
「ええ。それを破壊すれば、内部の魔物そのうち散り散りに出ていくだろう、という予測が建てられているそうです」
「ダンジョンアタックかぁ」
仲間の一人がそういうのへ、あなたもうなづいた。
あなたは「まかせてほしい」と告げると、ギーコもこくりとうなづいた。
「皆様には期待してます、と、職人一同仰っていました。どうぞお仕事を、よろしくお願いいたします」
そいういうギーコへ、あなたたちはもう一度、力強くうなづくのであった――。
- <英雄譚の始まり>未知なる洞窟に鉄を求めて完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年08月31日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●鉄よ、鉄よ、
鉱山には今日も、大地の息吹が満ちている。
そのうちに蓄えた、鉄の顔をのぞかせて。
がん、ぎん、がん、ぎん、鉄を掘る。
その音が、今日は聞こえない。
代わりに聞こえるのは、魔物の雄たけび。
不慮の事故から、魔物の巣につながってしまった鉱山は、今はやむなく臨時休業――。
「というのも、昔のわるい職人のせいでいありまして」
『忍者人形』芍灼(p3p011289)が、むむむむ、と唸る。
プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)より南西へ進んだところにある、小さな鉱山である。
前述のとおり、不慮の事故から鉱山が魔物の巣につながってしまったわけだが、そもそもここに魔物の巣ができてしまったのは、昔、悪い職人がいたずらで設置した、『スポーン・オーブ』なる、魔物を呼び寄せるアイテムのせいなのだという――。
「理解しがたいものでござるな……悪戯で、魔物を誘き寄せるオーブを?
一体何をあったらそんなことをしようと思うのか……若輩なそれがしにはトンとわかりませぬ……」
むむむむー、と頭に手をやる芍灼。『あの子の生きる未来』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は肩をすくめた。
「世の中にはいろんな『悪い奴』がいるもんだ。
わかっててやる奴。ついやっちまった奴。のっぴきならない事情があったやつ。
ま、今回のは――どうなんだろうな? その辺の情報はないし、知る必要もないんだが」
「そうだねー。簡単・単純・気楽なお仕事だものね!」
にこにこと笑うのは、『瑠璃の刃』ヒィロ=エヒト(p3p002503)である。
「こういうお仕事、ボク大好きなんだー。
目標は明確だし、誰の目も憚る必要ないし、何より相手に斟酌不要なことが多いから!
好き勝手できるってサイコーだよね!
ね、美咲さん!」
心底から楽しそうに、ヒィロが笑う。
「まぁ、確かに。目標は明確。誰の目にもはばかる必要もなし。斟酌も不要。
行って、倒して、壊してくる――その通り」
『玻璃の瞳』美咲・マクスウェル(p3p005192)が苦笑する。とはいえ。
「でも、あんまり暴れちゃだめだよ。
本格的に閉山したわけじゃないし、こっちも地図が生命線。好き勝手に掘ったりしたら、こっちが不利になっちゃう。
普通にやれば問題ないところで生き埋めとか冗談じゃないんだから。
ヒィロ、これ、フリ、とかじゃないからね?」
「もー、わかってるってば!」
それでも、何の後腐れもなく体を動かせるのが楽で楽しいのだろうか。ヒィロはご機嫌の様子だ。
「あー、俺達の方でも注意しとくよ。なるべく綺麗なままで、鉱山は返してやりたい」
バクルドがそういうのへ、美咲が苦笑した。
「ほんと、鉱山つぶれて大失敗! なんてのは勘弁だからね」
無論、そうはならないように全員注意しているわけなので、これは戦いの前の小粋なジョークというやつである。
「それにしても、本当に、迷惑なことをした人がいるのね?」
『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が、困ったように眉根を下げた。
「うーん、どんな世界でも人間って色々いるものよねぇ……対処が大変ね。
どうしてこんなことしたのかしら。魔物を集めて……何かするでもなく、放っておいて」
「うーん、ほんとにいたずら目的だけ、って気がしてきたね」
『山吹の孫娘』ンクルス・クー(p3p007660)が肩を落とした。
「もしくは、手に負えなくなって、フタをしてみない振りしちゃったのかなぁ。
なんにしても、迷惑すぎる……」
「なんだね。ボクとしては、本当に全く、しりぬぐいに駆り出された気分だけどね」
少し不快気に、『ロクデナシ車椅子探偵』シャルロッテ=チェシャ(p3p006490)が声を上げた。
「鉱山の中か。車いすで移動するには足場がよくない。車輪もガタガタになりそうだ。
これは冗談なんだけど、毒ガスでも流し込んでふたしちゃうのはどうだい?」
「目が笑ってないぞ、本音だろう」
『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が苦笑した。
「そうしてもいいが、そうなるとスポーン・オーブを破壊しに行くのが面倒だろう。
それに、鉱山としては運営を再開する予定なんだ。本末転倒にならないか?」
「そこはほら、手軽さとトレードオフって奴さ。
それに、定期的に毒ガスをまいて、魔物ホイホイみたいな感じで使った方が便利じゃないかい?」
「えー、斟酌不要で好き勝手したいよー」
ヒィロが不満げに言う。仲間たちは苦笑した。
「ま、何にしてもだ」
錬が言った。
「今回の仕事は、毒ガスで敵全滅じゃなくて、マインな地下でクラフトってやつだ。
職人の一人としては、異界の鉱山探索のためにも全力を尽くさないと、という個人的な興味もあるがそれはそれ。
とにかく、ダンジョンアタックで、スポーン・オーブを破壊する。
ここまでは、いいだろう?」
もちろん、仲間たちに異議はない。ハイ・ルールは常に順守されるべきものであり、今回で言えば、依頼内容は絶対であるという所だ。
「鉱山内部の地図はあるんだよな?」
「はい! こちらに!」
錬が言うのへ、芍灼がずずい、と地図を差し出した。
「とは申しますが、魔物の巣、の辺りの地理は不明のようです。
鉱山地帯の地理が明確なのは、僥倖にござりまするが」
「情報なしでアタックするよりはずっといいわ」
ヴァイスがにこりと笑う。
「そうだね。前半はだいぶ楽ができそうだ。後半の方の作戦を練っていきたいところだね」
美咲が言うのへ、ヒィロが頷く。
「片っ端からやっつけてく、ってわけにもいかないもんね。ボクでもさすがにばてちゃうよ」
「効率的に行きたいよね。ヒィロに無理させたくないし」
美咲が苦笑する。魔物の数は甚大だ。いちいち相手にしていては、スポーン・オーブに到着する前に息切れしてしまうだろう。
「あ、先頭は私が担当するよ。こういうダンジョンならば、ちょっとばかし精神の強い私は適任だからね」
ンクルスがそういうのへ、シャルロッテが頷く。
「それは助かる。じゃあ、ボクは後方支援というやつで行こうかな。
バトラー、メイド、ナイトホーク。どれも使える子たちだ」
オートマタたちへ捜索の命令を出しつつ、続ける。
「あとは、まぁ、基本に忠実、というやつでいいんじゃないかな?」
「おう。俺からは、罠の設置だな。暗闇に住むような奴は、光じゃなくて音を頼りにするもんだ。
ちっとは時間稼ぎになるだろうぜ」
バクルドがそういうのへ、仲間たちはうなづく。
「よーし、それじゃあ、さっそく参りましょう!」
芍灼がそう告げるのへ、皆はうなづいた。かくして、準備万端のダンジョンアタックが、今ここに始まったのである――。
●鉱山から巣へと
さて、鉱山部分である。
残されていった魔法の灯りが、鉱山の彼方此方を照らしている。素人目には滅茶苦茶な迷路のような作りに見えるが、地図と照らし合わせてみれば、どうしてこう掘り進めて行ったのか、という、当事者たちの苦悩やら努力やらが見えるような気もする。
「別に、無秩序に掘ってるわけじゃないんだよな」
錬が言う。
「そう言う視点から見ると、まるで生き物の体内だ。成長する、枝葉といってもいいな。
どうしてこうつながったのか。ここで足を止めてしまったのはなぜか。再開と、停止と……」
興味深げに錬がつぶやく。さすが職人、己の業を披露するための材料、それの大元にも興味があるらしい。
「おっと! 索敵の方もよろしくお願いいたしたく!」
芍灼が、むむん、と唸りながら辺りを見やる。幸いというか、この辺りに敵の姿は見受けられないようだった。
「たしか、モグラのような魔物もいるのでござったな。
そのあたりを適当に掘られてなければよいのでござるが」
「報告があってから、あまり時間はたっていないわ」
ヴァイスが言う。
「おそらく大丈夫だと思うの。仮に掘られていても、そんなに複雑に放っていないと思うわよ」
ヴァイスの言う通りだろう。いくら魔物たちが強靭で高い体力を誇っていたとしても、鉱山エリアをぐちゃぐちゃにするほどには時間も体力も足りるまい。
「とりあえず、行き止まりの方に鳴子の罠を仕掛けておいた」
バクルドが言う。
「ちょっとした足止めにはなるだろ」
「助かるよ」
ンクルスが、ぴかぴか光りながら――光源担当なのだ――笑った。
「でも、遠足気分はここまでだよ」
美咲がくぎを刺すように言った。
「ここから先が、魔物の巣だからね。警戒は怠らないこと」
「ふふん、大丈夫だよ、美咲さん! なんたって、今日のボクは劇場版だからね!」
ぴっ、とポーズをとって見せるヒィロ。なんだか、今日は特に楽し気に感じる。
「劇場版か。派手な展開を期待するよ」
シャルロッテが苦笑しつついう。
「いや、待って……劇場版? 爆破オチとか、そう言うのは勘弁してほしいけど?」
「……あら、劇場版って、爆発するのかしら」
ヴァイスが小首をかしげる。バクルドが、くっくっと笑った。
「大変だなそりゃ……!」
「大丈夫! 私なら何とか耐えて見せるよ!」
ンクルスがそう言って胸を張るので、仲間たちは笑った。緊張は必要だが、適度に緩めるときは緩む必要がある。もちろん、彼らは油断をしているわけではないし、御遊び気分などではないことは記しておく。事実、ここから先、魔物の巣に踏み込んだイレギュラーズたちの行動は、実に冷静沈着と呼ぶにふさわしいものであったからだ。
さて、魔物の巣に先には、灯りなどは当然ない。ここから先は、ここの『視力』であったり、ンクルスの光源頼みであったりする。暗闇に出光るという事は、必然、敵にも察知されやすい。また、ここからは地図のない、本確定なダンジョンアタックだ。敵とのエンカウントを避けるという意味合いでも、慎重に進む必要がある。
「ん……ンクルスさん、少し光を抑えられる?」
「大丈夫だよ! 何かあった?」
美咲がそういうのへ、ンクルスが発光を抑える。んー、と悩みつつ、
「直感、かなぁ。こっちの道は、あんまりよくない気がする……」
「なるほどね、ファミリアーを飛ばしておくよ」
シャルロッテがそう言いつつ、コウモリを道の奥へと飛ばした。
「ああ、直感が当たったね。結構大きな群れだよ」
「潰すか?」
バクルドが言う。
「連戦になるが」
先ほど、イレギュラーズたちは避けられぬ戦いを制したばかりだ。相応の傷が、彼らの体に残っている。
「僭越ながら、スポーン部屋の事を考えると、戦闘は避けた方がよいかと……」
芍灼が言うのへ、錬もうなづいた。
「できれば避けたいな……鳴子は?」
「あるにはあるが、離れたところに仕掛けたいな」
「んー、じゃあ、魔物の好きな香りと、物まねでおびき寄せてみる?」
「いいと思うわ」
ヴァイスが言う。その手に、モグラの魔物が砕いたのであろう石が転がっている。
「こちらの方にも、道がつながっているもの。さっき、『聞いた』の。
魔物たちを適当な方に追いやって、私たちはこちらの道に進む。
美咲、こちらの道からは、嫌な直感はする?」
「ううん、大丈夫だと思う。
シャルロッテさん、念のため索敵、密にお願いね」
「任せてよ」
シャルロッテが、別のルートへの道を探り始めた。少しののちに、こちらのルートは安全そうであることが分かった。
「それじゃあ、ヒィロ、お願い」
美咲が言うのへ、ヒィロが頷いた。
「まかせて!」
すぐに、魔物の好きそうな香りと、ヒィロの声真似が響く。果たしてこれで、魔物をどれくらい引き付けられるかは未知数だが、しかし無策で移動するよりはずっといいはずである。
果たして――神がダイスを振ったのであれば、此度のダイス目は良いものであったのだろう。今この場のトラブルがイレギュラーズたちに降りかかることはなく、一つ、体力を温存しつつ、先にコマを進めることができたのだから。
●いたずらの末路
果たして、幾度目かの選択、熟考、そして突破を経て、イレギュラーズたちはスポーン・オーブの存在する部屋にまで到着していた。ここまでは順調に到着できた、といっても問題ないだろう。
「……そりゃ道中の量を考えたらかなりいるとは思ったが相当だな。
面積的に増えるにも限度があると思ったがモグラがいりゃそっちも広げられるってわけか……」
バクルドが嘆息する。スポーン・オーブのある部屋は、どうにも雑に掘り進められていたようで、岩盤が無秩序に顔を出している。中には、10匹前後の魔物の群れがいて、モグラとかコウモリとか、スケルトンの姿が見える。間違いなく、今回遭遇した中で最大の群れであろう。
「悩んでいても始まらないよ。それに、スポーン・オーブが情報通りの能力なら、放っておけば敵が増えるだろうからね」
シャルロッテの言葉通りだろう。迷っていれば、それだけ不利になるわけだ。
「そうね。それじゃあ、優雅に押しとおろうかしら?」
ヴァイスが言うのへ、芍灼が頷いた。
「それがしの忍術の出番でござるな! おまかせあれ!」
ぐっ、と気合を入れる芍灼。美咲が頷いた。
「そうだね。じゃあ、ここからは斟酌なしで」
「りょうかーい!」
ヒィロがにっこりと笑う。錬が苦笑した。
「……鉱山は崩さないでくれよ?」
「努力はするよ!」
ンクルスがうんうんとうなづいた。さておき、一行の決意は固まった。あとは踏み出すだけ。
「ボクと美咲さんがつっこむよ! みんなは続いて!」
ヒィロが声とともに、美咲の手を引っ張る。美咲は頷いて、その手を握った。
「それじゃあ、戦闘開始!」
美咲の言葉とともに、仲間たちは一斉に武器を抜きはなつ。果たして、戦場に真っ先に飛び込み、動き始めたのはヒィロ、そして連鎖して行動する美咲だ。
「ボクはまさに劇場版ヒィロMk2!
さぁ、どっからでもかかってきなよ!
美咲さんがお前達を許さないから!!」
「ええっ、私任せなの? ……まったくっ!」
美咲が、手近にいたスケルトンを、手にした包丁で切り裂いた。視れば、斬れる。そういうものだ。そうある様に、スケルトンは真ん中で寸断された。
「敵の全滅が仕事じゃないのに、これじゃあ、全滅させないとスポーンオーブに近づけない!」
「そうだろうよ! 此処が踏ん張り時だ!」
バクルドが叫び、ライフルを構えた。一気に引き金を引く。超絶技巧の早撃ちが、弾丸の驟雨となって魔物たちに降り注ぐ。ぎいぎぃ、とモグラがその爪で顔を覆った。生意気にも防御するつもりらしい。
「だがな、その程度貫けねぇで、ここまで生き延びてねぇのさ!」
バクルドが素早くライフルを構えなおすと、今度は一度だけ引き金を引いた。死神の、狙撃。それはモグラの爪を粉砕して、その脳天を貫く。
「さぁて、宣言通り、ボクは後方支援とさせてもらうよ」
シャルロッテはパチン、と指を鳴らす。すると、動き出すはレギオン。戦闘人形機械の群れが、主の群れを遂行する。命令は援護。行うは支援。戦闘人形たちが掲げる軍旗が、魔力を伴うエールを謳い、仲間たちの背中を押す――!
「おお、なんだか体が軽くなり申した!」
芍灼が軽やかに跳び出し、片刃剣を振るう。シャルロッテの援護によってパフォーマンスを向上させた芍灼の一撃が、空を飛行していたコウモリを吹き飛ばし、そのまま壁へと叩きつけた。
「おっと! これ以上部屋を広げないでくれよ!?」
錬が軽口をたたきつつ、式符を投げつける。その符は陰陽の鏡となり、内より出でる暗黒の雫で、魔物たちを根こそぎ薙ぎ払った!
「! 錬殿の攻撃も、なかなか部屋を広げそうなのでは……!?」
「いや、俺のはそういうやつじゃないから!」
苦笑を浮かべる。一方、ンクルスは、爪をぎらつかせるモグラと相対していた。
「おや、これは奇遇――私も武器は両手だからね!
でも、私の両手は、貴方に負けない!」
ぐっ、とンクルスは敵をつかむと、そのままバックドロップを叩き込んだ。あんまり両手関係ないな……。
さておき、イレギュラーズたちの猛攻は、部屋の中にいた魔物たちを、一気に押し込んでいった。無論、それなりの抵抗を受けてはいたが、ここまで戦い、ダンジョンをこえて来たあなたたちだ。こんなところで負けてたまるか、という気持ちの方が勝っているに違いない。
そんなわけだから、順調に、敵はその戦力を減じていった――そして。
「てりゃっ!」
ヒィロが残ったスケルトンを蹴り上げて、美咲の方に押し付ける。美咲はちらりとそれを見ると、無造作に包丁を振るって、一息でそれを断裂させる。
「あとどれくらいかな?」
「そこのモグラで仕舞だよ」
バクルドがライフルを構えて、そのままモグラを撃った。ばちん、という音とともにモグラの爪が砕けて、その隙をついた錬の相克斧が叩きつけられる。ぎゅあ、と悲鳴を上げて、モグラが倒れ伏し、そのままずぶずぶと地面へと還っていった。
「ええ、ええ。こんなものね」
ヴァイスがにこやかに笑うと、そのまま無造作に、スポーン・オーブの方へと近寄る。
「やや、早く壊してしまいましょう!」
芍灼が声を上げる。
「ええ、もちろん」
ヴァイスはにこやかに笑うと、白き儀式短剣をオーブへと突き刺した。それであっけなく、オーブは粉砕された。
「おや……なんだか雰囲気が変わったね?」
ンクルスが言う。どこか重苦しかった空気が、些か清浄なそれになったようだった。おそらく、オーブの魔力が消えたのだろう。
「それじゃあ、帰ろうか。まったく、車いすがダメになりそうだよ」
シャルロッテのぼやきに、仲間たちは苦笑した。
いずれにしても、用をすませば長居は無用だ。一行は元来た道を、再び慎重に戻るのであった――。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様の活躍により、スポーン・オーブは消滅。
しばらく後に、魔物の姿も消えたそうです――。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
ダンジョンアタックと行きましょう!
●成功条件
スポーン・オーブの破壊
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
プリエの回廊(ギャルリ・ド・プリエ)より南西へ向かったところにとある低山があり、そこでは鉱物資源を確保するための鉱山が存在します。
蜘蛛の巣のように張り巡らされたその鉱山、最後の採取先につながる穴を掘っていたところ、どうやら魔物の巣とつながってしまい、魔物たちが逆流してきたようなのです。
しかも、その魔物たちがそこに根付いてしまったのは、昔に悪い職人が、スポーン・オーブという魔物を呼び寄せる道具を居たずれに設置してしまった故とのことなのですが……。
鉱山の作業を再開するためにも、さっさと魔物たちを追い払う必要があります。
皆さんは、この鉱山に入り込み、スポーン・オーブを見つけて破壊してください。
鉱山内の地図は、皆さんに与えらえるものとします。また、スポーン・オーブがどこにあるかも、地図に記載されています。
スポーン・オーブへのルートは一つだけではありませんので、うまく敵を避けたりするようなスキルやプレイングを用意して、最小限の被害でスポーン・オーブを破壊しましょう。
なお、スポーン・オーブの周辺には魔物が群れを成しているため、最終的には大きな群れと戦う必要があります。
作戦結構エリアは鉱山。中には、職人たちが残した灯りが残っているエリアと、そうでないエリアがあります。なお、洞窟内の狭さによる武器の取り回しや、戦闘エリアは何十メートルになるの? と言った問題は、今回は無視して問題ないです。ゲーム的な都合です。
●エネミーデータ
ちかほりモグラ ×???
大きなモグラのような魔物です。手の鋭い爪で穴を掘り、巣を拡張したりする仕事をしているようです。
見た目は結構かわいいのですが、狂暴な魔物なので油断は禁物です。前述した爪での攻撃は、『出血』系列を付与してくるかもしれません。
キィキィバット ×???
1mほどのサイズに成長した魔物コウモリです。超音波を発して、ソナーのように侵入者を確認する性質があります。
遭遇するとしたら、かなりの数の群れになるでしょう。一体一体は弱いですが、数の暴力を駆使してきます。
一気に薙ぎ払ってやるのが手っ取り早い解決方法になるでしょう。
鉄砕きのスケルトン ×???
かつては鉱山で働いていた職人などが、不慮の事故で死亡し、その死体がスケルトンになったもののようです。
手にしたつるはしの冴えは衰えておらず、協力な一撃を加えてくるアタッカーになるでしょう。
シンプルな前衛アタッカーというステータスです。盾役でしっかり引き付けてやったり、遠距離攻撃で沈めてやると楽かもしれません。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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