PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

Bad End 8

「……ふむ。その様子では提案は袖にされた様子。
 悲しいかな。何時の世も、真に相手を憂いて飛び出した言葉は信用されにくいものじゃないか」
 茶化すようにそう言った男――『アークロード』ヴェラムデリクトの言葉はあくまで芝居掛かっている。
 嘆いてもいない事を嘆いてみせ、心にもない友情を口にする――
 人を食ったような性質と言えばそれまでだが、『この男は本当に易々と人を喰らってしまう』。
 先刻承知の出来レース――『現担当』ルクレツィアと『終焉』の話し合いは案の定と言うべきか最悪の不調に終わったばかりであった。
「だから言ったのだ。『無駄な工程』だと」
 神代の破滅の如く尊大に、『咎の黒眼』オーグロブがせせら笑った。
「同格の壊滅の惨状に、まだ自分だけは等と考える時点で何処までも『冠位』らしい。
 実力こそ十分あれど、属性に拠らぬその幼稚な精神性こそ事これに到る敗因であろうに。
『そんな事にすら気付けぬのだから』最早出番の旬は過ぎ去ったというものだ」
「……α世界の観測は近日中のCase-Dの顕現を肯定した。
 でも、不確定要素がかなり多い。多過ぎる。
 荒ぶる可能性の獣は、決定された未来にまだ幾重の波紋を投げかける事が出来る。
 要するに、まだ確実とは言えないわ」
『ステラ』の『星詠み(かんそく)』は謂わば近距離に向けた神託である。
 審判の日に向けた残り時間は恐らくはルクレツィアが思うより短い。
 同時に彼女がそう判断するよりも神託の成就は安穏とした状況には無いのも間違いない。
「……全然、頼リニナラナイ話ダッタワネ」
「『冠位』は力はあるんだけど、ね」
『ホムラミヤ』の言葉に『黒聖女』マリアベルは肩を竦めるだけだった。
「あるからに余計に厄介だという話であろう?」
『全剣王』ドゥマ――『七重反転』を果たした魔種は冷ややかに言った。
「下手な敗退は混沌の天秤をパンドラへと傾ける。
 黒聖女よ。これは、君の『話し合い』が温かったばかりの有様ではないのかね?」
 ローレットが溜め続けた救世の可能性(パンドラ)と滅びの成就(アーク)は恐らく競りに競っている。
 冠位がもう何体かでも『勝ち切った』ならば話は別だっただろうが、彼等が貯め込んだ分は彼等の敗退の分で随分と相殺されている。元より滅びを願う魔種なれば、その勝敗も生死も余り関係が無いのは確かだが、特異運命座標が成し遂げた何かでパンドラを獲得するならば、冠位の撃破は格好の御馳走と言う他はあるまい。
「これだから青二才は困るのである」
「あらあら、王様は相変わらずね。
 たかだか王様が私にそんな口を利けると思っているなんて――本当に冗談が上手いんだから」
「――そういう話じゃないんじゃないかな?」
 形の良い眉を吊り上げたマリアベルの怒気を逸らすようにナイトハルトが場の空気を攪拌した。
「喧嘩なんてしてる場合じゃないよね。相手は『あの』七罪を悉く退けた連中なんだぜ?
 仲良く――上手くやらないなら、ルクレツィア様を笑う事も出来ないよ♪」
「……」
「ようやく……ようやくようやくようやくようやく!
 あのクソったれた神畜生の思惑を一から十までブチ殺せる手前まで来てるんだぜ!?
 ……いや、まぁ可愛い後輩達の健闘は嬉しくない訳じゃないけど、それ所じゃないって分かるよね!?」
『始原の旅人』を自称するナイトハルトは『召喚された事それそのものを極めて深く憎んでいる』。
 一瞬だけ漏れ出た本質を空虚な笑顔で塗り固めた彼は「王様も、ね。僕達は目的を一にする仲間じゃあないか」とデュマの肩をポンとやる。
「フン」と鼻を鳴らして鬱陶しそうにその手を払ったデュマも一先ずはそれ以上を何も言わない。
「それで、どうするのだ? 黒聖女殿。
 我々も含め――原罪殿には『終焉』の差配を委ねられているのだろう?」
 ヴェラムデリクトの問いにマリアベルが応じる。
「ルクレツィアの意向に関わらず、私達も私達の仕事を始めますとも。
 ……まぁ、彼女の担当は『幻想』。私達の担当は『混沌』ですもの。
 それなら、何ら信義則に反するお話でもないでしょう?」
「それで良い? ファルカウ」とマリアベルが水を向けた。
「良いか悪いかで言えば肯定はしません。
 しかし、事これに到るまで、混沌は争いに満ち過ぎた。
 私はこの怒りを制御出来ない。
 誰もがそれを望むなら、全てを滅びの眠りに包むのも止むを得ない事でしょう」
『魔女』ファルカウが幾分か悲し気に言葉を紡ぐ。
「戦いも、森を焼く炎も――これが最後の最後、全ての『終わり』なれば」
 虚ろばかりを抱えた『混沌』に目に見えた救いは無い。
 幾多を抱えて、或いは投げ捨てて――『終焉』の八人が動き出さんとしていた――


 ※『何か』が始まろうとしています……


 ※『プルートの黄金劇場』事件が終幕したようです……!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM