PandoraPartyProject

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つながったもの

 理想は潰え。
 理想は終わり。
 セレスタン=サマエルと名乗った男の姿はすでになく。
 今、彼が生きていたという痕跡は、ただこの白き聖なる盾のみにある――。
「馬鹿野郎が」
 ゴリョウ・クートン(p3p002081)は静かにそうつぶやいた。
「馬鹿野郎だ、オメェさんは。
 もう少しだけ早く、素直になれてればな」
「……そうですね」
 ジル・フラヴィニーが言う。
「……自分を正当化するわけではありませんが。
 伝えてほしかった、とわがままを言います。
 ……それができない人だったから、僕はあこがれたのですが」
 ジルは悲しげに笑った。セレスタンという男は、些か真面目に過ぎたのだろう。
 理想を抱き、理想に溺れ、窒息しそうな世界の中で生きていた彼は。
 真面目だったのかもしれない。臆病だったのかもしれない。それでも。
 伝えてほしかった、と今は思う。
 人は独りだとしても。決してわかりあえず混ざり合わないのだとしても。隣には、誰かがいる。
「それが祈りだとしても」
 ゴリョウは言った。
「言葉にしなけりゃ、伝わらないんだぜ。
 言葉がなければ、友達にもなれねぇ。
 皮肉だな。オメェさんが壊れちまってからの方が、俺達はずっと、言葉を交わしていた。
 皮肉だな。オメェさんが壊れちまってからの方が、俺達はずっと、分かりあえていた……」
 壊れてから、はじめて大切なものに気付く。使い古された言葉だ。だが、こうもそれを実感させられる事態などもそうそうあるだろうか?
 いずれにしても、セレスタンという男は死に。
 理想は潰え。
 今は広がる現実のみがある。
「ゴリョウ様」
 ジルが言った。
「セレスタン様からの……もしかしたら、サマエルからの。
 貴方の友からの、本当に、最期の願いです」
 ゴリョウが、足元に置かれた真白き盾を見た。
 聖盾。セレスタンが求めてやまなかったもの。彼の正義の象徴。願い。魂。そう言ったもの。
「一度だけなら、きっと力を貸してくれるでしょう。それが、『二人』からの、最期の願いなのです」
 泣きそうになるのを堪えて、ジルは言った。
 ゴリョウはうなづいた。
 その聖なる盾を、つかみ、持ち上げる。
「ああ、重いな。
 こんなものを、オメェさんは背負ってたんだな」
 ゴリョウが小さくつぶやいた。
「使わせてもらうぜ、友よ。
 ただの一度の奇跡だったとしても――。
 あの傲慢野郎の鼻っ柱を折れるなら、それも悪くねぇさ」
 にぃ、と笑う。
「行こうぜ、セレスタン。
 見せてやるさ。オメェさんが本来見るべきだった、本当の『素晴らしきこの世界』の続きを」
 ゆっくりと、歩き出す。
 どこへ向けて? そうさ、決戦の場に向けて!
 今はもうどこにもいない、彼の悲しみを背負って。
 なすべきことを――想いとともに。

 リンバス・シティの空は、泣きそうなくらいに蒼かった。

 ※遂行者、セレスタン=サマエル・オリオールの討伐に成功しました!
 とあるイレギュラーズに、聖盾は力を貸しています――!


 ※神の王国に対する攻撃が始まりました!!

 ※『プルートの黄金劇場』事件に大きな変化があった模様です……

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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