PandoraPartyProject

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神の悪意を名乗るもの

「ははは! 面白くなってきたものだな」
 遂行者、ルルの庭園のはずれ。囚われたイレギュラーズたちと遂行者が一堂に会した『お茶会』の会場から中座し、サマエルは仮面の下でほくそ笑んだ。
 愉快である。どいつもこいつもが、真面目な顔をして腹を探りあっていた。イレギュラーズたちといえば、素直に敵対意識を見せる者もいれば、こちらをうまく出し抜いてやろうという気概のいる者もいた。聞けば、情にほだされ遂行者となったイレギュラーズもいるという。
 なんとも――混沌めいた状況といえた。
「いや、しかし。あの死血の魔女までここに来ては、グウェナエルに怒られるかな。
 謝らなければならないとは思うが――いや」
 サマエルは頭を振った。だが同時に、こうも思うのだ。おそらくは、『イレギュラーズたちがこの状況を打破して見せた方が、より面白い』と。
「存外、何とかするかもしれん。曲がりなりにも救世主を名乗ってきた連中だ。いや、役割を押し付けられた、ともいうか」
 ふ、と笑った。
 サマエルが、その仮面を外して見せた。
 その仮面の下は、天義の騎士、セレスタン・オリオールと全く同じものであった。
「役割、か。私たちもそうであったな、セレスタン」
 静かに、そうつぶやいた。
 セレスタン・オリオールは、天義にて『聖盾』という聖遺物を継承する一族だった。だが、先の冠位魔種との戦いの最中において、その盾は魔種陣営によって奪いとられ、セレスタン自身は不正義として断罪される寸前まで堕とされた。そして、『聖盾』の回収さえままならなかった彼は、そのまま一家ごと没落し、すべてを失った。
「なぁ、セレスタン。これは我々の復讐なのだろう。
 天義という国家に対する。
 いや、君の気持ちはわかる。私は、君のことを一番傍で見ていたのだからね。
 牧師は言った。『神は心の中にいつもおります』。
 私がそうだよ、セレスタン。
 私が、お前の心の中の神だ」
 サマエルは、祈る様に、その手を胸に当てた。
 神の悪意。
 そう名乗ったのは、世界に対しての皮肉だ。
 誰もが神を騙り、神の名の下に、世界に悪意をぶちまける。
 神はいても、きっと世界に手を差し伸べまい。
 システムを作り、あとは放置しているだけに違いあるまい。
 ならば、神の意図を曲解し、神の悪意を作り上げているのは、どうしようもないほどに、人間であるのだ。
 神は何も考えず、ただかくあれかしと唱えるだけ。
 悪意を持つのは、人だ。
 心の中の神。
 それは、人の心の中の最も人であるべき部分。
 心の中の神。
 それは、人の悪意である――。
「ああ、きたかい。随分と遅くなったね」
 サマエルが、愛情を込めた声でそういった。
 薔薇の庭園に、また客が一人。
 漆黒の神衣に身を包んだ、一人の青年。
「君の分の席はもちろん用意してある。紅茶もね。いや、私たちは、コーヒーの方がすきだったな」
 そう言って、笑った。
 愛に包まれた顔であった。
 すべてを包み込む顔であった。
「グウェナエルの献身と、マリグナントの迷妄により、私たちにも手勢が増えた。彼らには心から敬意と謝意を払い、『好き勝手にさせよう』。
 なぁに、これから私たちも『好き勝手にするのだ』。
 そうだろう、私(セレスタン)?」
 サマエルは、現れた自分に対して、そう告げた。
 セレスタン・オリオールは跪き、己が心の中に忠節を誓うように頭を垂れた。
「そうだとも……あるべき、本来の、私の、姿を」
 取り戻すのだ、と――。
 熱病に浮かされるように、セレスタンはつぶやいた。

 ※一部のイレギュラーズが『聖女の薔薇庭園』なる地へと招待されたようです――!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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