PandoraPartyProject
闇、終焉――立つ風の
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_bustup/85017/181dd137864db62faae86ffb3fe0a354.png)
石造りの無機質な部屋に、闇がわだかまっていた。
そこはがらんどうのようでもあり、中央の椅子と座している男だけが異質である。
暗紫色の玉座で、豪奢な衣装に身を包んだ壮年の男が、肘を突きながら脚を組んでいた。
それは優雅に貴族然としており、堂々たる居住まいは――あるいは闇の王のようでもあった。
「わずか十年だと――まったく忌々しい。せめて百年は起こすなと言ってあったろうが……」
男はおもむろに腕を上げて指を鳴らす。
すると部屋は一転、瀟洒な調度品へと置き換わった。
「他でもない、この私が! わざわざ目覚めてやったんだぞ、いいからさっさと映せ」
低い声音はいかにも不快げであり、また皮肉げでもある。
目玉のような怪物が石壁へ投影した映像は、幻想王国レガド・イルシオンの王都、その街並みだった。
「大通りの活気! 希望に満ち溢れんばかりの民草! 一体全体なにが起こっている!」
男は口角を引きつらせると、脚を組み直す。
「この国はとっくの昔に腐り果てて居たんじゃあなかったのか、ええ?」
誰に問うでもなく、男は独りごちていた。
「それがどうして、ずいぶんまっとうな国になっているじゃあないか!」
その表情は陰鬱であり、憎々しげである。だが仮に他の者がいれば、不思議な諦念も感じられたろう。
「――もういい、たくさんだ。下がってよろしい」
男が立ち上がり、大げさな身振りで腕を振った。
目玉の怪物は恐れ入ったように、後ずさり退散していく。
「とはいえ多少の揺らぎは、冠位色欲がどうとでもするだろう。あれは他と違って勤勉だからな」
男がひとさし指を立てると、眼前に浮かび上がった分厚い魔道書のページが次々とめくれる。
「さて、ならば何から始めればいい。面倒だが仕事を探してやろうじゃないか」
そこにはざっと、この十年ほどの歴史が記されていた。
大きな変化があったのは、六年ほど前のことになる。
空中神殿に大量の特異運命座標(イレギュラーズ)が召喚されたのだ。
そんなことは前代未聞であり――だが如何に滅びの運命へ抗う存在だとしても、この馬鹿な世界『無辜なる混沌』は混沌肯定『レベル1』なる愚かな所業を行う。救世主共の力は押さえ込まれ――
「――我々(デモニア)の足元にも及ばんはずだ」
それがどうしたことだろう。
男のこめかみが引きつった。
「馬鹿め、冠位が滅んだだと?」
――強欲、嫉妬、怠惰、憤怒、暴食。
最も古く最も強い魔種『オールドセブン』は、長き永劫を常勝不敗だったはずだ。
いや強欲は一度だけ退けられたのだったか。
些末はともかく、それが僅かな間に五柱もが滅んだというではないか。
更にはかの滅海竜を鎮め、覇竜領域さえ踏破とは。
全く馬鹿らしいにも程がある。
前代未聞の話どころではない。
完全な絵空事だ。虚妄だ。ありえない。
「何もかもが、台無しじゃあないか! ええ!?」
だが男の知った事は、どれも覆すことの出来ない事実だった。
色欲は勤勉なようだが、傲慢はこの期に及んで遂行者共を遊ばせているだけか。
「そんなことだから彼奴等めが、果てを越えプーレルジールまで至るのだ」
男は目眩さえ覚えた。
「この私が! わざわざ! 冒険者なぞに身をやつし、この七面倒くさい血統主義の国で一代貴族に成り上がり、遠くクラウディウスの血を継ぐくたばりかけのディストラーディ家に婿入りしたのは何のためだ。そうまでして不和の元凶になってやったのは、いったい何のためだと思っている」
苛立ち隠せぬ物言いは、しかしどこか懐かしげにも響いていた。
「強欲の国で老修道女からの『成り立て』に、人生のやり直し方というものを教えてやったが、そうか。アストリアはもう居ないのか。時の流れは早いものだなあ。
その前は、どうだ……。あの時は確か、そうだ。蛮族イミルの姫君をだまし討ち、当時の有力氏族共をつぶし合わせたのだったかな。あの時も私はクラウディウスとやらの族長までのし上がったのだったか。
勇者アイオンと魔王イルドゼギアは確かに厄介だったが、よくぞ愚かにもつぶし合ってくれたものだ。勇者が果ての迷宮へ消えた時には胸がすっとしたものだな。あの時ばかりは、お陰様でぐっすりと眠れた。
もっと古い話もあったなあ。あの古代よりさらに昔々の、かの帝国は面倒だった。
超古代! アーカーシュ帝国には恐れ入ったが、まさかたたき落としたはずの浮島が一つ残っていたとは! あまつさえ冠位憤怒を焼き殺さんばかりの勢いだったというではないか」
そして冠位魔種最強たる『憤怒』は滅んだのだ。
イレギュラーズの手によって。
しかし――男が首を捻った。
冠位が、それも五柱も滅んだとなればやり方を変えねばなるまい。
ローレットのイレギュラーズとやらは、いったいどんな奴らなのか。
そして疲れ切ったとでも言いたげに、何度か首を横へ振った。
「つくづく面倒なことだ。しかしそう言えば、ああ十年程度か。なら……運が良ければ生きているかもな」
――この私『アークロード』ヴェラムデリクトが愛娘リーラよ。
※無辜なる混沌では、終焉の闇が蠢いているようです……
※プーレルジールでは、魔王城への進撃が開始されました!
※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!
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